説明

植物葉茎刈取機

【課題】緑葉植物の葉茎であっても、刈り取りを十分に行うことができ、葉茎が切断されずに踏み倒されたり根噛みが発生したりすることを抑止しうる葉茎刈取機を提供すること。
【解決手段】走行方向に植生する植物の葉茎を、引起こしリール1の回転によって引き起こして刈取り刃2によって刈取る刈取り機構を具備する植物葉茎刈取機であって、前記引起こしリール1は、走行方向と交差する幅方向の水平回転軸周りに回転しうるタイン11と、タイン11の外周から繰り上げ爪保持板を介して吊着され、所定の位相角を空けて列設される複数の繰上げ爪部12とを有してなる。そして、前記刈取り刃2は、前記繰上げ爪部12の最下位置の直下或いはこれよりも前方に配設されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物(特に緑葉植物)の葉茎の刈取りを行うための植物葉茎刈取機に関する。
【背景技術】
【0002】
成熟した穀類の収穫を目的とするコンバインは、大豆、麦、稲等の作物を圃場より引き起こし脱穀を行うものであり、さまざまな収穫方式のものがある。例えば、作物をリール式引起し装置で引き起こして刈取り脱穀部に搬送して脱穀を行う方式のものがある(例えば、特許文献1参照)。また、作物を引き起こして刈り取った後、穀粒を取得するために穂先部のみを搬送して脱穀を行う方式のものがある。他に、刈取り後、圃場に放置された牧草などを収集し貯留する方式のコンバインも存在する。
【特許文献1】特開平10−127137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のコンバインは穀類一般を収穫することを目的とし、緑葉植物の葉茎の刈取り用として設計されるものではなかった。
【0004】
ここで、緑葉植物の葉茎は穀物一般に対して柔らかくヘタりやすい。このため、大豆を収穫する目的の機械を緑葉植物の葉茎の刈取りにそのまま使用すると、刈取りが不十分であり、葉茎が切断されずに踏み倒されたり根噛みが発生したりしてしまう。
【0005】
そこで本発明においては、柔らかくヘタりやすい緑葉植物の葉茎であっても、刈取りを十分に行うことができ、葉茎が切断されずに踏み倒されたり根噛みが発生したりすることを抑止しうる葉茎刈取機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では下記(1)ないし(6)の手段を講じている。
【0007】
(1)すなわち、本発明の植物葉茎刈取機は、
走行方向に植生する植物の葉茎を、引起こしリール1の回転によって引き起こして刈取り刃2側へ誘導し、刈取り刃2によって刈取る刈取り機構を具備する植物葉茎刈取機であって、
前記引起こしリール1は、走行方向と交差する幅方向の水平回転軸周りに回転しうるタイン11と、タイン11の外周から繰り上げ爪保持板を介して吊着され、所定の位相角を空けて列設される複数の繰上げ爪部12とを有してなる。そして、前記刈取り刃2は、前記繰上げ爪部12の最下位置の直下或いはこれよりも前方に配設されてなることを特徴とする。
【0008】
これにより、繰上げ爪部12の再下降点調整、刈取り刃2のクリアランス調整が、草丈の低い早熟の葉茎若葉にも対応するものとなり、柔らかくヘタリやすい緑葉植物の葉茎であっても、刈り取られた葉茎を、搬送オーガ等の搬送機構へとスムーズに送り込むことができる。
【0009】
(2)前記植物葉茎刈取機において、引起こしリール1は、水平に伸びる水平支持部でタイン11を回転可能に支持するタイン支持アーム14を有してなり、このタイン支持アーム14は、水平支持部内でタイン11の支持位置を前後に調整しうることが好ましい。
【0010】
このようなものであれば、繰り上げ爪部12の位置を前後調整したときに、タイン11に吊着された繰上げ爪部12の最下位置における高さ、すなわち刈取り刃2とのクリアランスを一定に保つことができる。
【0011】
(3)前記いずれかの植物葉茎刈取機において、刈取り機構は、刈取り刃2による刈取り位置後方下部の地面近接位置に、前端部又は下端部の少なくともいずれかが上方へ反り上がった整地板3を具備することが好ましい。
【0012】
このようなものであれば、整地板3の反り上がった部分が刈取り直後の葉茎や地面に均等に接触し、圃場の表面を滑っていくことで圃場が整地される。圃場と刈取り刃2との距離が所定以上保たれるこれにより、刈取り刃2が土をかむことがなく、適切な刈取り高さで葉茎を刈取ることができる。
【0013】
(4)前記いずれかの植物葉茎刈取機は、前記刈取り機構に加え、前記刈取り機構によって刈り取った葉茎を、刈取り位置の後方上部まで繰り上げる葉茎繰上げ機構を具備してなることが好ましい。
【0014】
但し、この葉茎繰上げ機構は、刈り取った葉茎を掻き込む掻き込みオーガ4と、掻き込みオーガ4によって掻き込まれた葉茎を間欠装備した複数のフィーダ刃51によって搬送するフィーダコンベア5と、フィーダコンベア5の下方にてフィーダコンベア5から取り零された葉茎をコンベアベルト71によって補助的にベルト搬送する補助ベルトコンベア7とを有するものである。また、この補助ベルトコンベア7は、コンベアベルト71の両端付近の上部を覆う左右一対のコンベア上部アングル73を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設してなる。
【0015】
上記フィーダコンベア5と補助ベルトコンベア7との上下複式搬送は、例えば図2に示すように、コンベアチェーン53に架設された複数のフィーダ刃51が下部のコンベアリール52を回ってフィーダコンベア5の下面側を順に後方進行すると共に、フィーダコンベア5の下方にて、補助ベルトコンベア7が下部のコンベアリール72を回って表面側を後方進行することで行われる。フィーダ刃51とコンベアベルト71とはほぼ同じ幅寸法であり、フィーダコンベア5とコンベアベルト71とは、所定間隔を保ったまま、前方下部の刈取り位置から後方上部の繰上げ位置まで並行に配される。
【0016】
これによって先ず、刈取られた葉茎は、フィーダ刃51によってオーガ4の出口より補助ベルトコンベア7方向へ掻き込まれる。この掻き込まれた葉茎は続けて、フィーダ刃51によってコンベアベルト71に押さえつけられるとともに、進行するフィーダ刃51の立設刃部によって上部へ引き揚げられる。このフィーダ刃51による葉茎の引き揚げと共に、進行するコンベアベルト71によっても葉茎の搬送が行われる。このとき、フィーダコンベアとベルトコンベアのコンベアベルト71の進行速度を同期させることで、葉茎をスムーズに、また傷付けることなく搬送することができる。
【0017】
またコンベアベルト71のベルト上面近傍には、ベルト両端部にてコンベア上部アングル73が近接配置される(図5、図6)。このコンベア上部アングル73によって、コンベアベルト71の揺れを抑え、また、搬送量過多によるコンベアベルト7の隙間からの葉茎の噛み込みを防ぐことができる。またコンベア上部アングル73は、コンベアベルト71の幅方向左右端部に配置されることで、コンベアベルト71の中央部が上方に開放され、ベルト交換等の調整作業が簡便となる。さらにコンベア上部アングル73は立板部と臥板部が一体となっており、この臥板部がフィーダ刃51とコンベアベルト71との間に配されることで、フィーダ刃51とコンベアベルト71の接触を防ぎ、コンベアベルト71の損傷を防止するものとなっている。
【0018】
(5)前記葉茎繰上げ機構を具備してなる植物葉茎刈取機において、補助ベルトコンベア7は、コンベアベルト71の両端付近の下部を覆う左右一対のコンベア下部アングル74を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設してなることが好ましい。
【0019】
このように葉茎の詰まり易いベルト両端において上下のアングルを設けることで、両端付近での刈取り葉茎のベルト接触を効率的に抑制することができる。またコンベア下部アングル74がベルト幅に亘るものではなく下部開口74bを有するように配設される(図6)。このため、刈取り後の葉茎の重みがかかってコンベアベルト71がたわんだときに、コンベア下部アングル74との不要な接触によるコンベアベルト71の摩擦損傷を防ぐことができ、スムーズな搬送を可能としている。さらに下部開口74bによってベルト交換等のメンテナンス或いは点検時の作業性に優れたものとなる。
【0020】
実施例として例えば、コンベアベルト71のベルト幅400mmに対して左右のコンベア下部アングル74が各70mmだけ幅方向に張り出す形とし、ベルト中央には全体幅の6割以上である幅260mm分の下部開口74bを設けることで、コンベアベルト71の摩擦を低減し、フレーム内で刈取り後の葉茎が詰まることを解消している。また、コンベア下部アングル74によって、全体幅の3割以上である両幅合計140mmを幅方向に張り出すことで、コンベアベルト71にかかる下方向への圧力を在る程度支えている。さらに、仮にコンベアベルト71の蛇行があったときにも、コンベアベルト71の側端がコンベア下部アングル74の内側端よりも内側に寄るような状態を防ぎ、コンベア下部アングル74がコンベアベルト71の下部に常に位置するようにしている。
【0021】
(6)前記コンベア下部アングル74を具備してなる植物葉茎刈取機において、コンベア下部アングル74は、外部側面に立板部を配したL型アングルからなり、この立板部の前方に、下部を切欠いてなる切欠部74aを有することが好ましい。
【0022】
L型アングルを使うことでフレームを補強することができると共に、余分なフレームを取り除くことができ、構造を簡素化することができる。例えば従来のように、ボックス等で補助ベルトコンベア7全体を囲う構造が、必ずしも必須ではなくなる。
【0023】
また、補助ベルトコンベア7の下部付近は、特に刈取り後の葉茎が絡みやすく、ベルトの蛇行等の障害が発生しやすい(図5)。このため、コンベアベルト71下部のコンベアリール72やその付近に絡まった葉茎を定期的に取り除く必要がある。下部への切欠部74aによって、この葉茎取り除き作業を行いやすいものとしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、上記手段を講じることによって、柔らかくヘタリやすい緑葉植物の葉茎であっても、刈取りを十分に行うことができ、葉茎が切断されずに踏み倒されたり根噛みが発生したりすることを抑止しうる葉茎刈取機を提供しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施例1の植物葉茎刈取機の全体構成を示す側面視説明図である。
【0026】
図2は、図1の部分拡大図で、実施例1の植物葉茎刈取機のうち刈取り機構を示す。図3は、この刈取り機構の斜視説明図であり、図4は、本発明の刈取り機構(a)と比較例として示す試作初期型の刈取り機構(b)の刈取り動作を比較する側面視説明図である。
【0027】
また図5は図1の部分拡大図であり、実施例1の植物葉茎刈取機の葉茎繰上げ機構のうち補助ベルトコンベア7の側面視機構を示す。図6は、補助ベルトコンベア7、コンベア上部アングル73、及びコンベア下部アングル74の斜視説明図である。なお図7は、試作初期型の植物葉茎刈取機の全体構成例を示す側面視説明図である。この試作初期型の植物葉茎刈取機は、側面視五角形のタイン11´と、そこから吊設された五本の繰り上げ爪部1と、繰り上げ爪部1の最下位置後方にて斜め下方を向く刈取り刃21´とを具備するものとしている。
【0028】
<本発明の植物葉茎刈取機の全体構成(図1)>
本発明の植物葉茎刈取機は、図1に示すように、走行方向の地面に植生する植物の葉茎を引き起こして刈り取る刈取り機構Aと、刈り取った葉茎を貯留槽9の上方口部まで繰り上げる葉茎繰り上げ機構Bと、任意の走行方向へ走行させる走行機構Cとを具備する。
【0029】
本発明の植物葉茎刈取機は、緑葉植物、特に大麦、裸麦、小麦、オート麦、ハトムギ等の若葉の刈取りに適したものである。緑葉植物の葉茎、特に麦類は葉丈10〜70cm、好適な葉茎の葉丈は20〜50cmである。以下、各構成につき実施例に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0030】
〔A:刈取り機構〕
刈取り機構Aは、大きな構成として、少なくとも引起こしリール1、刈取り刃2、及び整地板3を具備する。これは、刈取機本体の走行方向の圃場に植生する植物の葉茎を、引起こしリール1の回転によって引き起こすと同時に刈取り刃2側へ誘導し、この誘導した葉茎を刈取り刃2によって刈取り、そして整地板3によって刈取り後の圃場を整地するものである。また、タイン11を回転可能に支持するタイン支持アーム14を有してなる。
【0031】
(引起こしリール1)
引起こしリール1は、さまざまな方向を向いて植生した葉茎を引起こすと同時に刈取り刃2側へ誘導するものである。引起こしリール1の構成として、走行方向と交差する幅方向の水平回転軸周りに回転しうるタイン11と、タイン11の外周から吊着され、前記水平回転軸を中心とした所定の位相角を空けて列設される複数の繰上げ爪部12とを有する。
【0032】
(タイン11)
タイン11は多角形の回転体からなり、タイン支持アーム14によって、本体前方上部に回転可能に支持され、回転機構によって、本体の走行と共に走行方向前回り方向へ回転する。この回転軸は、走行方向と交差する幅方向の水平回転軸である。具体的には、多角形の回転体状に骨組みされた部材からなる。本実施例では正六角形であり、繰上げ爪部12の間隔すなわち繰り上げ間隔が比較的短いものとしている。これにより草丈の低い早熟の緑葉植物を刈り取るときに好ましいものとなる。
なお試作初期型の実施例として図7に示すような、側面視正五角形の回転体としてもよい。
【0033】
(繰上げ爪部12)
繰上げ爪部12は、繰上げ爪保持板13を介してタイン11の外周へ吊着され、タイン11の回転軸を中心とした等位相間隔ごとに列をなす。
【0034】
具体的には、各列の繰上げ爪部12は、図3に示すように、繰上げ爪保持板13に複数個が等間隔に幅方向へ並設される。この繰上げ爪保持板13の板長/繰上げ爪部12の爪長の比率を0.5/1ないし5/1、好ましくは1/1〜4/1とし、この場合に繰り上げ爪部の爪長は20〜150mm、好ましくは40〜120mmが採用される。
【0035】
(タイン支持アーム14)
タイン支持アーム14は、刈取機本体の運転席前方から斜め下方に伸び、更にその先で略水平前方に伸びる水平支持部を有する(図1、図2)。この先端の水平支持部には、伸長方向に沿って水平に伸びる水平長孔15が、タイン支持位置調整手段として設けられ、この水平長孔15内の任意の前後方向位置でタイン11を回転可能に支持する。このタイン11の支持位置は前後に調整しうる。
【0036】
(刈取り刃2)
刈取り刃2は、図2、3に示すように、所定の設置高さhをもって地面近傍へ略水平に設置された尖刃保持板22の前方側の側辺に、複数の尖刃部21が等間隔に固定される。刈取り刃2の設置高さhは地面から20〜30mmである(図2)。
【0037】
そしてこの刈取り刃2の複数の尖刃部21が、前記繰上げ爪部12の最下位置の直下或いはこれよりも前方に位置するように配設される。より具体的には、運転走行時、繰上げ爪部12の最下点が刈取り刃2の尖刃部21の付け根(図3)付近に来るように、刈取り刃2の取付け位置を調整してなる。これにより、図4(a)に示すように、刈取り刃2による刈取りタイミングを比較例として示す試作初期型のもの(図4(b))よりも早いものとし、刈取り位置を比較例として示す試作初期型(図4(b))よりも前方側にずらした。もって、繰上げ爪部12や繰上げ爪保持板13による葉茎の押さえが利いた状態で刈取りを行うことができる。
【0038】
すなわち、比較例として示す試作初期型(図4(b))の刈取り刃は、尖刃部21´の先端に繰り上げ爪部の爪先の最下点がくるようになっている。このような位置関係だと、刈取り材を奥へ誘導する位置(図3に示す刈取り刃2の付け根)では繰り上げ爪がタイン11´の回転によって後ろの「上方」へ逃げるため、刈取り材がうまく奥へ送り込まれずに、刈取り刃上に滞留してしまう。刈取り材が滞留すると、滞留した刈取り材が次の刈り取る葉茎と干渉して、スムーズな刈取りが行えなくなってしまう。なお刈取り刃の付け根とは、実施例として図3に示すような、隣設した尖刃部21間に形成される平面視谷状切欠きの最奥部分をいう。
【0039】
これに対して本発明では、刈取り刃2の位置を比較例として示す試作初期型(図4(b))よりも前方にずらし、繰り上げ爪部の最下点の位置を、尖刃部21の先端よりも後方の、尖刃保持板22への付け根(図3)付近に配置させることで、刈取り刃2の上に刈取り材が滞留しないようにしている。繰り上げ爪部の最下点の位置は、少なくとも、尖刃部21の先端よりも後方であれば刈取り材の滞留の効果は生じる。更にいえば、図3或いは図4(a)に示すように、刈取り刃2の尖刃部21の付け根と一致させることがより好ましい。
【0040】
また、タイン11に吊り下げられた繰上げ爪部12が、タイン11のその後の回転によって後方の掻き込みオーガ4と干渉することのないよう、繰り上げ爪部の最下点の位置を、刈取り刃2の尖刃部21の付け根よりも前方、且つ、尖刃部21の先端よりも後方の間のいずれかの区間内、すなわち図2に示す前後区間S内に調整しても良い。
【0041】
(整地板3)
刈取り機構は、刈取り刃2による刈取り位置後方下部の地面近接位置に、前端部が上方へ反り上がった整地板3を具備する。整地板3は、下面が接地し、圃場の表面を滑っていくことで、刈り上げた後の圃場表面を均して整地する。一枚の大きな板からなるものとすることで、従来の傾斜地感知調整(モンローマチック用)機構のような複雑な機構が不要となる。
【0042】
〔B:葉茎繰り上げ機構〕
葉茎繰上げ機構は、刈り取った葉茎を掻き込む掻き込みオーガ4と、掻き込みオーガ4によって掻き込まれた葉茎をフィーダ刃51によって後方上部へコンベア搬送するフィーダコンベア5と、前記掻き込まれた葉茎の搬送を補助する補助ベルトコンベア7と、これらによって搬送された葉茎を後方へ送り込む送り込み回転翼6と、送り込まれた葉茎を貯留槽9へ投入する投入コンベア8と、そして刈り取った葉茎を貯留する貯留槽9とを有する。
【0043】
(掻き込みオーガ4)
掻き込みオーガ4は、掻き込み羽根を周囲に有した回転体からなり、これが前方に回転することで、刈り取った葉茎を掻き込んでフィーダコンベア5へ載せる(図2)。
【0044】
(フィーダコンベア5)
フィーダコンベア5は、少なくとも前方下部及び後方上部にそれぞれ配置された複数のコンベアリール52と、これらコンベアリール52によって側面視斜め後方へ傾斜架設された左右一対のコンベアチェーン53と、この左右コンベアチェーン53間に等間隔に架設固定された複数のフィーダ刃51とを有する(図1)。コンベアチェーン53はコンベアリール52の回転駆動によって周回する。これによってフィーダ刃51は、図2に示すように、コンベアチェーン53の周回に従って、下部のコンベアリール52を回ってフィーダコンベア5の下面側を後部上方へ進行する。
【0045】
(フィーダ刃51)
それぞれのフィーダ刃51は図1に示すように、断面L字板が左右のコンベアチェーン53間を亘って幅方向に立設配置される。断面L字板は臥設部と立設刃部とから構成され、断面L字板の臥設部がコンベアチェーン53の外面に沿うと共に、立設刃部がコンベアチェーン53に対して略垂直に立設する。立設刃部の上辺には等間隔に複数の切込み部が設けられ、各フィーダ刃51の上辺が櫛状に形成される。立設刃部の刃高としては、良好に刈取り葉茎を輸送すべく、20〜120mm、好ましくは40〜100mmの範囲が採用される。
【0046】
櫛状のフィーダ刃51がコンベアチェーン53の周回によって進行することで、先ず、刈取られた葉茎を、掻き込みオーガ4の出口より補助ベルトコンベア7方向へ掻き込み、その後、フィーダ刃51が葉茎を下方の補助ベルトコンベア7側に押さえつけると同時に切込み部で引っ掛けて、引っ掛けた葉茎を、本体後方上部の繰上げ位置へ搬送する。なおコンベアチェーンの駆動速度は繰り上げベルトと同じものである。
【0047】
フィーダ刃51とコンベアベルト71とはほぼ同じ幅寸法であり、またフィーダコンベア5とコンベアベルト71とは、所定間隔を保ったまま、前方下部の刈取り位置から後方上部の繰上げ位置まで並行に配される。
【0048】
(送り出し回転翼6)
送り出し回転翼6は、水平軸周りに複数枚の送り出し翼を有した自由回転体からなり、図1に示すように、フィーダコンベア5の後方、かつ投入コンベア8の上方に配置されてなる。フィーダコンベア5及び補助ベルトコンベア7によって後部上方へ運搬された刈取り後の葉茎が接することで、送り出し回転翼が前方回りに回転し、刈取り後の葉茎を投入コンベア8へ送り出す。
【0049】
(補助ベルトコンベア7)
補助ベルトコンベア7は、フィーダコンベア5の下方にてフィーダコンベア5の繰上げ方向に沿って側面視斜め後方へ向かって傾斜架設されてなる。具体的には、図5、6に示すように環状板体のコンベアベルト71が、コンベアリール72によって斜め後方へ向かって傾斜して架設される。
【0050】
コンベアベルト71は、図1、図2に示すように、フィーダコンベア5のコンベアチェーン53と略等間隔を空けて並行して設けられると共に、下部のコンベアリール72を回って表面側を後方上部へ進行する。このコンベアベルト71は、フィーダ刃51によって掻き込まれた葉茎を下部で受け止め、フィーダ刃51で下方に押さえつけられた葉茎を、フィーダ刃51と共に本体上部後方へと搬送するものである。なお、コンベアベルト71は、フィーダコンベア5から取り零されて落ちた刈取り後の葉茎を受け止め、刈取り後の葉茎を、ベルト搬送によって補助的に貯槽9内へ導くという役割も果たしうる。このとき、ベルトコンベアのコンベアベルト71の進行速度を、フィーダコンベア5のフィーダ刃51と同期させることで、葉茎をスムーズに、また傷付けることなく搬送することができる。
【0051】
また補助ベルトコンベア7は、図5、6に示すようにコンベアベルト71の両端付近の上部を覆う一対のコンベア上部アングル73を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設し、また、コンベアベルト71の両端付近の下部を覆う一対のコンベア下部アングル74を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設してなる。
【0052】
(コンベア上部アングル73)
コンベア上部アングル73は、立板部と臥板部とが一体となったL型アングルからなり、植物葉茎刈取機の左右一対に固定された状態で、左右それぞれのL型アングルの立板部が幅方向両側面外側に配され、かつ、臥せる板部が幅方向中央側に配される。
【0053】
上部にL型アングルを取り付けることにより、コンベアベルト71の揺れが抑えられると共に、ベルト隙間からの刈取り葉茎の噛み込みを防ぐことができる。また両端付近にのみアングルを設け、コンベアベルト71上面近傍の中央部付近をアングル等で覆わないものとしている。
【0054】
コンベア上部アングル73は、フィーダコンベア5と補助ベルトコンベア7との間に常に介在することで両者或いは両者間に挟まる葉茎の不要な干渉を防止している。具体的には、立板部が、フィーダコンベア5のコンベアチェーン53とコンベアベルト7の間に介在することで、上部のフィーダコンベア5のコンベアチェーン53との距離を所定以上に保つことができ、両者の不要な接触や葉茎の詰まりを防止しうる。また、臥板部が、フィーダコンベア5のフィーダ刃51とコンベアベルト7の間に介在することで、フィーダ刃51がコンベアベルト71に接触することを防ぎ、コンベアベルト71の損傷を防止するものとなっている。
【0055】
(コンベア下部アングル74)
コンベア下部アングル74は、立板部と臥板部とが一体となり、外部側面に立板部を配したL型アングルと、L型アングルの臥板部の幅方向内側へ延長すべく同平面内で溶接した所定幅の内延長平板からなる。この立板部の前方には、下部を略L字型に切欠いてなる切欠部74aを有する。コンベア下部アングル74は、植物葉茎刈取機の左右一対に固定された状態で、左右それぞれのL型アングルの立板部が幅方向両側面外側に配され、かつ、内延長平板が幅方向中央側に配される。
【0056】
この切欠部74aによって、葉茎が貯留しやすい下部のコンベアリール72付近を開放させたものとしている。これにより、零れ落ちた葉茎が滞留しにくいものとしており、また、コンベアリール72に絡まり付いた葉茎を取り除きやすいものとしている。さらに、ベルトの交換作業の際にもアングルをはずす必要がなく、コンベアベルト71の交換を含めたメンテナンス作業が容易になる。またL型アングルの臥板部にそれぞれ所定幅(例えば、幅30mm)の平板を溶接固定することで、コンベアベルト71が下方へ撓んだときにベルト中央部分を支えるものとしている。
【0057】
なお、従来は、コンベアベルト71の下面全体を覆うようにして孔開き鉄板が設置されており、これによってコンベアベルト71の荷重を受けるものとしていた(図示せず)。このため、コンベアベルト71下面と孔開き鉄板とが擦れてコンベアベルト71の消耗が激しいものであった。また、コンベアベルト71の交換作業時に孔空き鉄板の取り外しが必要であったり、特に刈取り葉茎がやわらかい場合にはコンベアベルト71と孔開き鉄板との間に刈取り葉茎が挟まってうまく稼動できなかったりした。
【0058】
これに対して、コンベア下部アングル74によってコンベアベルト71を両端付近にて支えており、コンベアベルト71の交換時にこのコンベア下部アングル74を取り外す必要がなく、また、幅方向中央部に下部開口74bがあるために、刈取り材が挟まって詰まることがない(図6)。
【0059】
(投入コンベア8)
投入コンベア8は、葉茎を貯留槽9へ送り込むコンベアであり、フィーダコンベア5及び補助ベルトコンベア7の後方にて、後部上方側へ微小傾斜して架設される。実施例として例えば、補助ベルトコンベア7に一体的に連接され、補助ベルトコンベア7のコンベアベルト7で搬送するものとしても良い。また、投入コンベア8の前部上方には送り込み回転翼6が自由回転可能に設けられる。
【0060】
〔C:走行機構〕
走行機構Cは、植物葉茎刈取機本体を任意の走行方向へ走行させうる機構である。葉茎刈取機上に操作部を設けて自走するものとしている。
【0061】
(刈取り動作)
上記構成の植物葉茎刈取機による動作は下記の通りである。すなわち、刈取り機構Aの引起こしリール1の回転によって引き起こされた葉茎は、引き起こし直後に刈取り刃2によって刈り取られる。
【0062】
この刈取り葉茎は、回転する掻き込みオーガ4によって掻き込まれて、葉茎繰り上げ機構Bのフィーダコンベア5及び補助ベルトコンベア7によって、前方下部から後方上部へ繰り上げられる。後方上部へ繰り上げられた刈取り葉茎は、補助ベルトコンベア7の後方へ連続架設された投入ベルトコンベア8に送られ、投入ベルトコンベア8によって貯槽9内へ投入される。
【0063】
また刈取り後の地面は整地板3によって自動的に整地される。整地板3は前方が反り上がって傾斜した弾性屈曲板からなり、その屈曲部は走行機構Cの接地部よりも僅か数ミリ程度上方に位置するようにしている。このため、整地板3が常に圃場に接し、その弾性反力によって圃場表面が滑らかに整地されると同時に、刈取り刃2が圃場と接触して土を噛むことを防いでいる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の植物葉茎刈取機は、コンバイン等の普通型刈取機に適用でき、麦、稲、豆、牧草など各種の作物の葉茎部の収穫に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1の植物葉茎刈取機の全体構成を示す側面視説明図である。
【図2】実施例1の植物葉茎刈取機の刈取り機構を示す図1の部分拡大図である。
【図3】実施例1の植物葉茎刈取機の刈取り機構を示す斜視説明図である。
【図4】実施例1の刈取り機構(a)と従来の刈取り機構(b)の刈取り動作を比較する側面視説明図である。
【図5】実施例1の植物葉茎刈取機の補助ベルトコンベア7を示す図1の部分拡大図である。
【図6】実施例1の植物葉茎刈取機の補助ベルトコンベア7を示す斜視説明図である。
【図7】本発明の比較例の試作初期型として示す植物葉茎刈取機の全体構成例を示す側面視説明図である。
【符号の説明】
【0066】
A 刈取り機構
1 引起こしリール
11 タイン
12 繰上げ爪部
13 繰上げ爪保持板
14 タイン支持アーム
15 水平長孔
2 刈取り刃
21 尖刃部
22 尖刃保持板
3 整地板
B 繰り上げ機構
4 掻き込みオーガ
5 フィーダコンベア
51 フィーダ刃
52 コンベアリール
53 コンベアチェーン
6 送り出し回転翼
7 補助ベルトコンベア
71 コンベアベルト
72 コンベアリール
73 コンベア上部アングル
74 コンベア下部アングル
74a 切欠部
74b 下部開口
8 投入ベルトコンベア
9 貯槽
C 走行機構
S 前後区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の葉茎を、引起こしリール1の回転によって引き起こして、刈取り刃2によって刈取る刈取り機構を具備する植物葉茎刈取機であって、前記引起こしリール1は、幅方向の回転軸周りに回転しうるタイン11と、タイン11の外周から吊着され、所定の位相角を空けて列設される複数の繰上げ爪部12とを有してなり、前記刈取り刃2は、前記繰上げ爪部12の最下位置の直下或いはこれよりも前方に配設されてなることを特徴とする植物葉茎刈取機。
【請求項2】
水平に伸びる水平支持部でタイン11を回転可能に支持するタイン支持アーム14を有してなり、このタイン支持アーム14は、水平支持部内でタイン11の支持位置を前後に調整しうる請求項1記載の植物葉茎刈取機。
【請求項3】
刈取り機構は、刈取り刃2による刈取り位置後方下部の地面近接位置に、前端部又は後端部の少なくともいずれかが上方へ反り上がった整地板3を具備する請求項1または2記載の植物葉茎刈取機。
【請求項4】
刈取り機構に加え、前記刈取り機構によって刈り取った葉茎を、刈取り位置の後方上部まで繰り上げる葉茎繰上げ機構を具備してなる植物葉茎刈取機であって、この葉茎繰上げ機構は、刈り取った葉茎を掻き込む掻き込みオーガ4と、掻き込みオーガ4によって掻き込まれた葉茎を搬送するフィーダコンベア5と、フィーダコンベア5の下方にてフィーダコンベア5から取り零された葉茎をコンベアベルト71によってベルト搬送する補助ベルトコンベア7とを有し、この補助ベルトコンベア7は、コンベアベルト71の両端付近の上部を覆う一対のコンベア上部アングル73を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設してなる請求項1、2または3のいずれか記載の植物葉茎刈取機。
【請求項5】
補助ベルトコンベア7は、コンベアベルト71の両端付近の下部を覆う一対のコンベア下部アングル74を、コンベアベルト71のベルト方向に沿って配設してなる請求項4記載の植物葉茎刈取機。
【請求項6】
コンベア下部アングル74は、外部側面に立板部を配したL型アングルからなり、この立板部の前方に、下部を切欠いてなる切欠部74aを有する請求項5記載の植物葉茎刈取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−182902(P2008−182902A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16704(P2007−16704)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(501028574)日本薬品開発株式会社 (9)
【Fターム(参考)】