説明

植生管

【課題】作業効率の向上および作業時間の短縮を図ることができる植生管を提供する。
【解決手段】外管11は、生分解性材料から成る。複数の内管12,13,14,15は、生分解性材料から成り、外管11の内径より小径の外径を有して外管11の内部に設けられている。外管11と各内管12,13,14,15との間隙に、種子16が収容されている。外管11と内管12との間隙および各内管13,14,15の内部に、それぞれ種類の異なる植物成長用土壌混入物17,18が収容されている。外管11および各内管12,13,14,15のうち少なくとも1つは内部に送水可能である。外管11または各内管12,13,14,15の内部に吸湿剤を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子の植え付けをおこなうための植生管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の植生管として、生分解性樹脂から成る2層以上の構造の複層管の内部に、肥料成分を含む発泡材または保水ゲルを充填し、多数の孔を設けて成るものがある(例えば、特許文献1参照)。従来の植生管は、樹木の間に埋設し肥料を与えるために用いられる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−348877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の植生管は、施肥の時期に合わせて埋設作業を行う必要があるため、作業の時期が施肥を必要とする時期に集中し、多忙期と閑散期とに分かれ、作業効率が悪いという課題があった。また、種まき作業と施肥作業とを別々に行っているため、双方に相応の作業時間を要し、作業時間の短縮を図ることができないという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、作業効率の向上および作業時間の短縮を図ることができる植生管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成る外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた内管と、前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部に収容された種子と、前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部の前記種子と異なる方に収容された植物成長用土壌混入物とを有し、前記外管および前記内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0007】
第2の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成る外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた第1内管と、生分解性材料から成り、前記第1内管の内径より小径の外径を有して前記第1内管の内部に設けられた第2内管と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部に収容された種子と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部に収容された肥料と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子および前記肥料と異なる間隙または内部に収容された植物成長用薬剤とを有し、前記外管、前記第1内管および前記第2内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0008】
第3の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成る外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた複数の内管と、前記外管と各内管との間隙または前記複数の内管のうちの1つの内部に収容された種子と、前記外管と各内管との間隙または前記内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部にそれぞれ収容されたそれぞれ種類の異なる植物成長用土壌混入物とを有し、前記外管および前記内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0009】
生分解性材料としては、例えば、デンプンを材料とする生分解プラスチックを用いることができる。植物成長用土壌混入物とは、化学肥料・天然肥料・複合肥料などの肥料類および、除草剤・防虫剤・防除剤・植物育成剤・植物ホルモン剤・土壌改良材・発芽抑制剤などの植物成長用薬剤類を意味する。生分解性材料は水溶性であることが好ましい。この場合、外管および内管は、それぞれ水への溶解速度が異なっていてもよい。これにより、植物成長用土壌混入物と種子とを、それぞれ必要な時期に合わせて外部に供給、発芽させることができる。種子は、外管と内管との間隙または内管の内部に所定の間隔をおいて複数収容されていることが好ましい。また、外管および内管は、それぞれ生分解速度が異なっていてもよい。この場合、外管および内管に生分解により肥料となる材料を用いて、肥料効果の持続性を高めることができる。
【0010】
第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、土壌等に埋めて使用される。第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、外管または内管の内部に送水することにより、それぞれの管の生分解を促進することができる。このため、任意の時期に外管および内管を溶かして、内部の植物成長用土壌混入物を外部の土壌等に供給するとともに種子を発芽、成長させることができる。外管および内管は生分解性材料から成るため、分解した後には、自然界の土壌や水中の微生物により分解され、廃棄物処理の労力およびコストを必要としない。
【0011】
第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、田畑を移動しながら作業を行わなくても、埋設作業後、一箇所で各管に送水を行うことにより、埋設した広い範囲で同時期に容易に種子の発芽や植物成長用土壌混入物の供給等を行うことができる。第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、種子と植物成長用土壌混入物とを含むため、埋設作業により種まき作業と施肥等の作業とを同時に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、送水により発芽と土壌への供給作業とを開始することができるので、一定時期に集中して埋設作業を行う必要がなく、作業時期を分散させて作業効率の向上を図ることができる。
【0012】
第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管の内部に吸湿剤を有することが好ましい。この場合、外管または内管の内部に送水したとき、内部の吸湿剤が水を吸収するため、外管または内管の生分解を効果的に促進することができる。
【0013】
また、第1、第2または第3の本発明に係る植生管は、前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管の内部に吸水膨張剤を有していてもよい。この場合、外管または内管の内部に送水したとき、吸水膨張剤が水を吸収して膨張し、外管または内管に圧力を加える。このため、外管または内管を破裂させて、内部の種子の発芽、成長を容易にするとともに、植物成長用土壌混入物を周囲の土壌等に供給しやすくすることができる。
【0014】
さらに、前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管は前記吸水膨張剤が吸水して膨張するとき破裂させるための破裂用切込みを有していてもよい。この場合、外管または内管の内部に送水し、吸水膨張剤が水を吸収して膨張したとき、管を破裂しやすくすることができる。このとき、破裂に好ましい位置に破裂用切込みを管を設けることにより、その位置で破裂させることができる。
【0015】
前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管は厚肉部と薄肉部とを有していてもよい。この場合、外管または内管の内部に送水し、吸水膨張剤が水を吸収して膨張したとき、管を薄肉部で破裂しやすくすることができる。これにより、破裂に好ましい位置を薄肉部とし、破裂が好ましくない位置を厚肉部として、破裂の位置を設定することができる。
【0016】
第4の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成り、内部に吸水膨張剤を有する外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられ、内部に吸水膨張剤を有する内管と、前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部に収容された種子と、前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部の前記種子と異なる方に収容された植物成長用土壌混入物とを有し、前記外管および前記内管の少なくとも一方は内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0017】
第5の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成り、内部に吸水膨張剤を有する外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられ、内部に吸水膨張剤を有する第1内管と、生分解性材料から成り、前記第1内管の内径より小径の外径を有して前記第1内管の内部に設けられ、内部に吸水膨張剤を有する第2内管と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部に収容された種子と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部に収容された肥料と、前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子および前記肥料と異なる間隙または内部に収容された植物成長用薬剤とを有し、前記外管、前記第1内管および前記第2内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0018】
第6の本発明に係る植生管は、生分解性材料から成り、内部に吸水膨張剤を有する外管と、生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられ、内部に吸水膨張剤を有する複数の内管と、前記外管と各内管との間隙または前記複数の内管のうちの1つの内部に収容された種子と、前記外管と各内管との間隙または前記内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部にそれぞれ収容されたそれぞれ種類の異なる植物成長用土壌混入物とを有し、前記外管および前記内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、特徴とする。
【0019】
第4、第5または第6の本発明に係る植生管では、種子は、外管と内管との間隙または内管の内部に所定の間隔をおいて複数収容されていることが好ましい。また、外管および内管は、それぞれ生分解速度が異なっていてもよい。この場合、外管および内管に生分解により肥料となる材料を用いて、肥料効果の持続性を高めることができる。
【0020】
第4、第5または第6の本発明に係る植生管は、土壌等に埋めて使用される。第4、第5または第6の本発明に係る植生管は、外管または内管の内部に送水することにより、吸水膨張剤が水を吸収して膨張し、外管または内管に圧力を加える。このため、外管または内管を破裂させることができる。このため、任意の時期に外管および内管を破裂させて、内部の植物成長用土壌混入物を外部の土壌等に供給するとともに種子を発芽、成長させることができる。外管および内管は生分解性材料から成るため、破裂した後には、自然界の土壌や水中の微生物により分解され、廃棄物処理の労力およびコストを必要としない。
【0021】
第4、第5または第6の本発明に係る植生管は、田畑を移動しながら作業を行わなくても、埋設作業後、一箇所で各管に送水を行うことにより、埋設した広い範囲で同時期に容易に種子の発芽や植物成長用土壌混入物の供給等を行うことができる。第4、第5または第6の本発明に係る植生管は、種子と植物成長用土壌混入物とを含むため、埋設作業により種まき作業と施肥等の作業とを同時に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、送水により発芽と土壌への供給作業とを開始することができるので、一定時期に集中して埋設作業を行う必要がなく、作業時期を分散させて作業効率の向上を図ることができる。
【0022】
第4、第5または第6の本発明に係る植生管では、外管または内管は破裂部を有し、吸水膨張剤が吸水して膨張するとき、破裂部で管が破裂するよう構成されていることが好ましい。この場合、外管または内管を破裂させる位置や方向を任意に設定することができる。破裂部は、外管または内管の肉厚を一部薄くしたり、切れ込みを入れたりして形成される。なお、外管または内管は、肉厚を一部厚くして破裂しにくくし、他の部分で破裂するように形成されてもよい。
【0023】
なお、第1乃至第6の本発明に係る植生管において、外管または内管の内部に、送水する代わりに、液肥などを供給してもよい。第1乃至第6の本発明に係る植生管は、外管と内管または内管同士が、長さ方向に沿って互いにくっついていてもよい。この場合、接着剤で接着しても、互いに嵌合するよう管を成形してくっつけてもよい。また、第1乃至第6の本発明に係る植生管では、外管は、上下が判別できるよう、長さ方向に沿って外面に凸部や凹部などの目印が設けられていてもよい。この場合、上下方向を任意に設定して、埋設することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、作業効率の向上および作業時間の短縮を図ることができる植生管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示している。
図1に示すように、植生管10は、外管11と第1内管12と第2内管13と第3内管14と第4内管15と種子16と肥料17と殺菌剤18とを有している。
【0026】
外管11および各内管12,13,14,15は、デンプンを材料とする水溶性の生分解プラスチックから成る。その生分解プラスチックは、土壌中に埋めたときには、土壌中の水分によりゆっくり時間をかけて溶け、自然界の土壌や水中の微生物により分解される性質を有している。
【0027】
外管11および各内管12,13,14,15は、内部に送水可能であり、内面に吸湿剤(図示せず)を有している。外管11および各内管12,13,14,15は、内部に送水したとき、内面の吸湿剤が水を吸収して直ちに溶解するようになっている。
【0028】
外管11は、横断面がほぼ円形である。第1内管12は、横断面がほぼ円形で、外管11の内径よりやや小径の外径を有している。第1内管12は、外管11の長さ方向に沿って伸びて外管11の内部に設けられ、外管11との間に間隙を有している。
【0029】
第2内管13は、横断面が楕円形で、第1内管12の内径より小径の外径を有している。第2内管13は、第1内管12の長さ方向に沿って伸びて第1内管12の内部に設けられ、第1内管12との間に間隙を有している。
【0030】
第3内管14および第4内管15は、横断面が楕円形であって、第2内管13の内径より小径の外径を有している。第3内管14および第4内管15は、第1内管12および第2内管13の長さ方向に沿って伸びて第1内管12と第2内管13との間隙に設けられている。
【0031】
種子16は、第1内管12と第2内管13との間隙に、所定の間隔をおいて複数収容されている。種子16は、例えば、イネなどの穀物類・キャベツやほうれん草などの野菜類・芋類・豆類などの作物の種子や、園芸用の花の種子である。
【0032】
肥料17は、外管11と第1内管12との間隙に元肥17aが収容され、第3内管14および第4内管15の内部に追肥17bが収容されている。元肥17aは遅効性の有機肥料から成り、追肥17bは即効性の化成肥料から成る。なお、元肥17aには遅効性または緩効性の肥料、追肥17bには即効性の肥料を使用するのが好ましい。元肥17aおよび追肥17bは、有機肥料や化成肥料など、いかなる肥料を使用しても良い。
【0033】
殺菌剤18は、いもち病やうどんこ病などの病害に効果的な、土壌混和用のものから成る。殺菌剤18は、第2内管13の内部に収容されている。
【0034】
次に、作用について説明する。
植生管10は、田畑の土壌に埋めて使用される。植生管10を埋めた後、種子16の発芽時期の前に外管11の内部に送水する。このとき、外管11の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の外管11を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、外管11と第1内管12との間隙に収容されている元肥17aを外部の土壌に供給することができる。
【0035】
次に、種子16の発芽時期に合わせて第1内管12の内部に送水する。このとき、第1内管12の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第1内管12を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第1内管12と第2内管13との間隙に収容されている種子16を外部の土壌に供給し、種子16を発芽、成長させることができる。
【0036】
種子16の発芽や成長に合わせて追肥を行う場合には、第3内管14の内部に送水する。このとき、第3内管14の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第3内管14を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第3内管14の内部に収容されている追肥17bを外部の土壌に供給することができる。さらに追肥を行う場合には、第4内管15の内部に送水する。このとき、第4内管15の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第4内管15を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第4内管15の内部に収容されている追肥17bを外部の土壌に供給することができる。
【0037】
また、作物に病害が発生した場合には、第2内管13の内部に送水する。このとき、第2内管13の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第2内管13を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第2内管13の内部に収容されている殺菌剤18を外部の土壌に供給することができる。
【0038】
このように、植生管10は、水溶性の外管11または各内管12,13,14,15の内部に送水することにより、それぞれの管を直ちに溶かすことができる。このため、任意の時期に外管11および各内管12,13,14,15を溶かして、内部の肥料17および殺菌剤18を外部の土壌等に供給するとともに種子16を発芽、成長させることができる。外管11および各内管12,13,14,15は生分解性材料から成るため、水に溶けた後には、自然界の土壌や水中の微生物により分解され、廃棄物処理の労力およびコストを必要としない。
【0039】
また、植生管10は、田畑を移動しながら作業を行わなくても、埋設作業後、一箇所で外管11または各内管12,13,14,15に送水を行うことにより、埋設した広い範囲で同時期に容易に種子16の発芽や肥料17または殺菌剤18の供給等を行うことができる。植生管10は、種子16、肥料17および殺菌剤18を含むため、埋設作業により種まき作業と施肥等の作業とを同時に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、送水により発芽と土壌への供給作業とを開始することができるので、一定時期に集中して埋設作業を行う必要がなく、作業時期を分散させて作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示している。
図2に示すように、植生管20は、外管21と第1内管22と第2内管23と籾24と肥料25と除草剤26と吸水膨張剤27を有している。
【0041】
外管21および各内管22,23は、デンプンを材料とする水溶性の生分解プラスチックから成る。その生分解プラスチックは、土壌中に埋めたときには、土壌中の水分によりゆっくり時間をかけて溶け、自然界の土壌や水中の微生物により分解される性質を有している。
【0042】
外管21および各内管22,23は、内部に送水可能であり、内面に吸湿剤(図示せず)を有している。外管21および各内管22,23は、内部に送水したとき、内面の吸湿剤が水を吸収して直ちに溶解するようになっている。
【0043】
外管21は、横断面がほぼ円形である。第1内管22は、外管21の内径よりやや小径の外径を有している。第1内管22は、横断面がほぼ円形であるが、図2に示すように、部分的に内径が変化している。第1内管22は、外管21の長さ方向に沿って伸びて外管21の内部に設けられ、外管21との間に間隙を有している。
【0044】
第2内管23は、第1内管22の内径より小径の外径を有している。第2内管23は、横断面がほぼ円形であるが、図2に示すように、内径が変化している。第2内管23は、第1内管22の長さ方向に沿って伸びて第1内管22の内部に設けられ、第1内管22との間に間隙を有している。
【0045】
籾24は、第1内管22と第2内管23との間隙に、所定の間隔をおいて複数収容されている。なお、図2に示すように、籾24のまわりには発芽促進用の薬品28が施されている。
肥料25は、第2内管23の内部に収容されている。肥料25は、即効性の化成肥料から成る。肥料25は、有機肥料や化成肥料など、いかなる肥料を使用しても良い。
除草剤26は、選択性の土壌処理剤から成る。除草剤26は、外管21と第1内管22との間隙に、所定の間隔をおいて複数収容されている。
吸水膨張剤27は、外管21と第1内管22との間隙に収容されている。なお、吸水膨張剤27は、吸水剤と膨張剤とに分かれていてもよい。この場合、膨張剤をマイクロカプセルに収容しておき、全ての吸水剤に水が吸収されてから膨張剤が遅れて作用するようにすることが好ましい。これにより、植生管を畑で使用したとき、送水側近くで外管21が破裂してその破裂箇所より先に水が行き渡らなくなるのを防ぐことができる。
【0046】
次に、作用について説明する。
植生管20は、田の土壌に埋めて使用される。植生管20を埋めた後、籾24の発芽時期の前に外管21の内部に送水する。このとき、外管21と第1内管22との間隙に収容されている吸水膨張剤27が、水を吸収して膨張し、外管21に圧力を加え、外管21を破裂させる。これにより、外管21と第1内管22との間隙に収容されている除草剤26を外部の土壌に供給し、発芽前に除草を行うことができる。
【0047】
次に、籾24の発芽時期に合わせて第1内管22の内部に送水する。このとき、第1内管22の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第1内管22を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第1内管22と第2内管23との間隙に収容されている籾24を外部の土壌に供給し、イネの苗を発芽、成長させることができる。このため、従来苗代で苗を発芽させ、田植えを行っていた場合に比べ、手間を省くことができる。
【0048】
苗の発芽や成長に合わせて施肥を行う場合には、第2内管23の内部に送水する。このとき、第2内管23の内面の吸湿剤が水を吸収するため、水溶性の第2内管23を効果的に直ちに溶かすことができる。これにより、第2内管23の内部に収容されている肥料25を外部の土壌に供給することができる。
【0049】
このように、植生管20は、水溶性の外管21または各内管22,23の内部に送水することにより、それぞれの管を直ちに溶かすことができる。このため、任意の時期に外管21および各内管22,23を溶かして、内部の肥料25および除草剤26を外部の土壌等に供給するとともにイネの苗を発芽、成長させることができる。外管21および各内管22,23は生分解性材料から成るため、水に溶けた後には、自然界の土壌や水中の微生物により分解され、廃棄物処理の労力およびコストを必要としない。
【0050】
また、植生管20は、田を移動しながら作業を行わなくても、埋設作業後、一箇所で外管21または各内管22,23に送水を行うことにより、埋設した広い範囲で同時期に容易に苗の発芽や肥料25または除草剤26の供給等を行うことができる。植生管20は、籾24、肥料25および除草剤26を含むため、埋設作業により田植え作業と施肥等の作業とを同時に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、送水により発芽と土壌への供給作業とを開始することができるので、一定時期に集中して埋設作業を行う必要がなく、作業時期を分散させて作業効率の向上を図ることができる。
【0051】
図3は、本発明の第3の実施の形態を示している。
図3に示すように、植生管30は、外管31と内管32と種子33と肥料34とを有している。
【0052】
外管31および内管32は、生分解プラスチックから成る。その生分解プラスチックは、土壌中に埋めたときには、自然界の土壌や水中の微生物により分解される性質を有している。外管31および内管32は、内部に送水可能であり、吸水膨張剤(図示せず)を有している。
【0053】
外管31は、外面31aおよび内面31bの横断面がほぼ円形であり、外面31aおよび内面31bの中心軸が所定の方向にずれて、肉厚が変化している。外管31は、肉厚の薄い部分の内面31bに、長さ方向に沿って切り込みを入れて破裂部31cを形成している。外管31は、肉厚の厚い部分31dの外面31aに、長さ方向に沿って凸部31eが設けられている。外管31は、吸水膨張剤が吸水して膨張するとき、肉厚の厚い部分31dでは破裂しにくく、破裂部31cで破裂するよう構成されている。
【0054】
内管32は、外面32aおよび内面32bの横断面がほぼ円形であり、外面32aおよび内面32bの中心軸が一致している。内管32は、外管31の内径よりやや小径の外径を有している。内管32は、内面32bに長さ方向に沿って切り込みを入れて破裂部32cを形成している。内管32は、吸水膨張剤が吸水して膨張するとき、破裂部32cで破裂するよう構成されている。内管32は、外管31の長さ方向に沿って伸びて外管31の内部に設けられ、外管31との間に間隙を有している。
【0055】
種子33は、外管31と内管32との間隙に、所定の間隔をおいて複数収容されている。種子16は、例えば、イネなどの穀物類・キャベツやほうれん草などの野菜類・芋類・豆類などの作物の種子や、園芸用の花の種子である。
肥料34は、内管32の内部に収容されている。肥料34は即効性の化成肥料から成る。
【0056】
次に、作用について説明する。
植生管30は、田畑の土壌に埋めて使用される。植生管30は、凸部31eを目印にして、上下方向を任意に設定して、埋設することができる。植生管30を埋めた後、種子33の発芽時期に合わせて外管31の内部に送水する。このとき、外管31の内面の吸水膨張剤が水を吸収して膨張し、外管31に圧力を加える。このため、外管31を直ちに破裂させることができる。これにより、外管31と内管32との間隙に収容されている種子33を外部の土壌に供給し、種子33を発芽、成長させることができる。
【0057】
種子33の発芽や成長に合わせて追肥を行う場合には、内管32の内部に送水する。このとき、内管32の内面の吸水膨張剤が水を吸収して膨張し、内管32に圧力を加える。このため、内管32を直ちに破裂させることができる。これにより、内管32の内部に収容されている肥料34を外部の土壌に供給することができる。
【0058】
このように、植生管30は、外管31または内管32の内部に送水することにより、それぞれの管を直ちに破裂させることができる。このため、任意の時期に外管31および内管32を破裂させて、内部の肥料34を外部の土壌等に供給するとともに種子33を発芽、成長させることができる。外管31および内管32は生分解性材料から成るため、破裂した後には、自然界の土壌や水中の微生物により分解され、廃棄物処理の労力およびコストを必要としない。
【0059】
また、植生管30は、田畑を移動しながら作業を行わなくても、埋設作業後、一箇所で外管31または内管32に送水を行うことにより、埋設した広い範囲で同時期に容易に種子33の発芽や肥料34の供給等を行うことができる。植生管30は、種子33と肥料34とを含むため、埋設作業により種まき作業と施肥等の作業とを同時に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、送水により発芽と土壌への供給作業とを開始することができるので、一定時期に集中して埋設作業を行う必要がなく、作業時期を分散させて作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態の植生管を示す(A)横断面図、および(B)外管および第1内管を切り欠いた側面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の植生管を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の植生管を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 植生管
11 外管
12 第1内管
13 第2内管
14 第3内管
15 第4内管
16 種子
17 肥料
17a 元肥
17b 追肥
18 殺菌剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性材料から成る外管と、
生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた内管と、
前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部に収容された種子と、
前記外管と前記内管との間隙または前記内管の内部の前記種子と異なる方に収容された植物成長用土壌混入物とを有し、
前記外管および前記内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、
特徴とする植生管。
【請求項2】
生分解性材料から成る外管と、
生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた第1内管と、
生分解性材料から成り、前記第1内管の内径より小径の外径を有して前記第1内管の内部に設けられた第2内管と、
前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部に収容された種子と、
前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部に収容された肥料と、
前記外管と前記第1内管との間隙、前記第1内管と前記第2内管との間隙または前記第2内管の内部のうち前記種子および前記肥料と異なる間隙または内部に収容された植物成長用薬剤とを有し、
前記外管、前記第1内管および前記第2内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、
特徴とする植生管。
【請求項3】
生分解性材料から成る外管と、
生分解性材料から成り、前記外管の内径より小径の外径を有して前記外管の内部に設けられた複数の内管と、
前記外管と各内管との間隙または前記複数の内管のうちの1つの内部に収容された種子と、
前記外管と各内管との間隙または前記内管の内部のうち前記種子と異なる間隙または内部にそれぞれ収容されたそれぞれ種類の異なる植物成長用土壌混入物とを有し、
前記外管および前記内管のうち少なくとも1つは内部に送水可能であることを、
特徴とする植生管。
【請求項4】
前記生分解性材料は水溶性であることを特徴とする請求項1,2または3記載の植生管。
【請求項5】
前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管の内部に吸湿剤を有することを、特徴とする請求項1,2,3または4記載の植生管。
【請求項6】
前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管の内部に吸水膨張剤を有することを、特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の植生管。
【請求項7】
前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管は前記吸水膨張剤が吸水して膨張するとき破裂させるための破裂用切込みを有することを、特徴とする請求項6記載の植生体。
【請求項8】
前記外管および前記内管のうち送水可能な前記管は厚肉部と薄肉部とを有することを、特徴とする請求項6記載の植生体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−187202(P2006−187202A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−382796(P2003−382796)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【特許番号】特許第3561269号(P3561269)
【特許公報発行日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(503149646)
【Fターム(参考)】