説明

樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】従来のポジ型レジスト材料とは異なる新規な感光機構を有し、高膜厚であっても良好な感度及び解像性が得られるポジ型レジスト材料として使用可能な、樹脂組成物を提供すること。また、該樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及びプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】トリチオカーボネート構造を有する高分子化合物と、活性光線によりラジカルを発生する化合物と、を含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっき等に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物や、支持フィルムと該支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を用いて形成される層(以下、「感光性樹脂層」という。)とを備える感光性エレメントが広く用いられている。
【0003】
レジスト材料としてはネガ型とポジ型が存在するが、近年、高い解像性が得られることから、露光部が除去されるポジ型の利用が期待されている。
【0004】
ポジ型感光性樹脂組成物を用いてプリント配線板を製造する場合、例えば以下のようにしてプリント配線板が製造される。まず、基板上にポジ型感光性樹脂組成物を含む感光層を形成し、該感光層の所定部分に活性光線を照射(パターン露光)し、活性光線を照射した部分(露光部)を現像液に溶解させて除去(現像)することにより、レジストパターンを形成する。そして、レジストパターンが形成された基板にエッチング又はめっき処理を施して配線パターンを形成させた後、レジストパターンを基板上から剥離除去する。このようにして、基板上に配線パターンが形成されたプリント配線板が製造される。
【0005】
ポジ型レジスト材料としては、例えば、特許文献1には、(A)アルカリ可溶性ノボラック型樹脂と、(B)ナフトキノン−1,2−ジアジドスルホン酸のエステル化合物と、(C)特定のフェノール系化合物とを含有してなるポジ型ホトレジスト組成物が記載されている。
【0006】
このような、従来のポジ型レジスト材料は、アルカリ可溶性樹脂(特許文献1における(A)成分)と、その溶解を妨げる感光剤(特許文献1における(B)成分)と、を含有している。そして、ポジ型レジスト材料の未露光部は、アルカリ可溶性樹脂を含有してはいるものの、その溶解を妨げる感光剤が共存しているため、現像液(アルカリ溶液)で除去され難い。一方、ポジ型レジスト材料の露光部は、感光剤が光によって酸等に変質するため、アルカリ可溶性樹脂の溶解が妨げられず(場合によっては溶解が促進され)、現像液で除去されやすい。従来のポジ型レジスト材料では、このように感光剤の変質に起因した未露光部と露光部との溶解性の差を利用して、レジストパターンが形成されている。
【0007】
ところで、近年、ビニル系モノマーの重合方法として、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)が提案されている(例えば、特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−208222号公報
【特許文献2】特開2000−515181号公報
【特許文献3】特開2010−059231号公報
【特許文献4】特開2007−230947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
厚膜プロセスを必要とする分野、例えば記録ヘッド(磁気ヘッド)の上部磁極の製造分野等においては、3μm以上の厚膜条件下で、高アスペクト比のスペースパターンを形成することが求められている。
【0010】
しかしながら、従来のポジ型レジスト材料は、色が着いているため、膜厚を厚くすると十分な光透過性が得られず、十分な解像性及び感度が得られない場合がある。そのため、従来のポジ型レジスト材料では、厚膜条件下で精密なレジストパターンを形成することが難しい。
【0011】
また、従来、ネガ型レジスト材料を用いる場合には、支持体と支持体上に設けられたネガ型感光層とを備える感光性エレメントを準備し、該感光性エレメントの支持体から基板上へネガ型感光層を転写することが行われている。
【0012】
しかしながら、従来のポジ型レジスト材料では、樹脂のアルカリ可溶性を十分に確保するため、樹脂の分子量を低く抑える必要があった。そのため、従来のポジ型レジスト材料では、フィルム形成性や可とう性を十分に得ることが難しく、仮に感光性エレメントを作製したとしても、感光層が脆いため、感光層の基板への転写が困難であった。このような事情から、ポジ型の感光性エレメントは実用化されておらず、ポジ型レジスト材料は基板上に直接塗布することが一般的である。
【0013】
このように、従来のポジ型レジスト材料には、その材料に起因した問題点がある。
【0014】
そこで本発明は、従来のポジ型レジスト材料とは異なる新規な感光機構を有し、高膜厚であっても良好な感度及び解像性が得られるポジ型レジスト材料として使用可能な、樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、トリチオカーボネート構造を有する高分子化合物と、活性光線によりラジカルを発生する化合物(以下、場合により「光ラジカル発生剤」と称する。)と、を含有する樹脂組成物を提供する。
【0016】
本発明の樹脂組成物におけるトリチオカーボネート構造とは、下記式(1)で表される構造を示す。
【0017】
【化1】

【0018】
本発明の樹脂組成物に活性光線を照射すると、光ラジカル発生剤からラジカルが発生する。そして、発生したラジカルによりトリチオカーボネート構造が分解・開裂して、上記高分子化合物が低分子化する。本発明においては、未露光部の上記高分子化合物と露光部の上記高分子化合物の低分子化物との溶解性の差を利用して、現像を行うことができる。
【0019】
このような感光機構により、本発明の樹脂組成物は、高膜厚であっても良好な感度及び解像性が得られるポジ型レジスト材料として用いることができる。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、上記高分子化合物は、下記式(1−1)で表される構造単位を有していてもよい。
【化2】


[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。]
【0021】
このような高分子化合物は、透明性に優れるため、このような高分子化合物を含有する樹脂組成物は、解像性及び感度が一層良好になる。そのため、当該樹脂組成物によれば、高膜厚であっても精密なレジストパターンを形成することができる。なお、上記高分子化合物は、式(1−1)で表される構造単位を複数有していてもよく、このとき複数のR同士及び複数のR同士は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、上記高分子化合物は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、トリチオカーボネート構造を有する連鎖移動剤との反応を経て得られる重合体であることが好ましい。
【0023】
このような高分子化合物は、トリチオカーボネート構造の両端に、それぞれ同程度の分子量を有する構造が結合している。そのため、高分子化合物とその低分子化物との溶解性の差を十分に得ることができ、樹脂組成物の解像性が一層向上する。
【0024】
上記連鎖移動剤としては、下記式(2−1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】


[式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、アリール基を示し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。]
【0025】
このような連鎖移動剤によれば、分子量分布の狭い高分子化合物が得られるため、樹脂組成物の可とう性等の機械特性を容易に制御することができる。また、このような連鎖移動剤を用いるとトリチオカーボネート構造の両端で重合が進行して、高分子化合物の略中央にトリチオカーボネート構造が位置するようになる。このような高分子化合物では、低分子化物の分子量が高分子化合物の分子量のほぼ半分になるため、一層良好な解像性が得られる。
【0026】
本発明の樹脂組成物において、上記高分子化合物は、熱架橋性基を有していてもよい。このような高分子化合物によれば、例えば、現像後の未露光部を加熱して、高分子化合物を架橋させ、樹脂組成物を硬化することができる。そしてこのような樹脂組成物の硬化物は、永久レジストとして用いることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物において、上記高分子化合物は、下記式(1−2)で表される構造単位を有していてもよい。
【化4】


[式中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは熱架橋性基を示す。]
【0028】
上記熱架橋性基としては、例えば、オキシラン環を有する基又はヒドロキシル基を有する基が挙げられる。これらの熱架橋性基は、熱硬化剤を適宜選択することによって容易に、活性光線の照射によっては架橋せず、加熱によって架橋するようにすることができる。そのため、このような熱架橋性基を有する高分子化合物を含有する樹脂組成物は、ポジ型レジスト材料として一層好適に用いられる。なお、上記高分子化合物は、式(1−2)で表される構造単位を複数有していてもよく、このとき複数のR同士及び複数のR同士は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0029】
本発明はまた、支持体と、該支持体上に設けられた上記本発明の樹脂組成物を含む感光層と、を備える、感光性エレメントを提供する。
【0030】
本発明の樹脂組成物における感光機構は上記のとおりであり、本発明においては高分子化合物の分子量を必ずしも低く抑える必要がない。そのため、本発明の樹脂組成物では、上記高分子化合物の部分構造や分子量を適宜変更することで、そのフィルム形成性及び可とう性を適宜調整することができる。
【0031】
そのため本発明の樹脂組成物によれば上記のような感光性エレメントを提供することができ、当該感光性エレメントの感光層は可とう性に優れたものとすることができる。
【0032】
また、上記感光層の厚みは20μm以上であってもよい。本発明の感光性エレメントにおいては、感光層が上記高分子化合物を含有するため、感光層の厚みが20μm以上であっても、良好な感度及び解像性が得られる。
【0033】
本発明はまた、上記本発明の樹脂組成物を含む感光層を基板上に形成する工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射する工程と、上記感光層の上記所定部分を上記基板上から除去して、上記基板上に上記樹脂組成物を含むレジストパターンを形成する工程と、を備える、レジストパターンの形成方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、上記架橋性基を有する高分子化合物を含有する樹脂組成物を用いて、当該樹脂組成物を含む感光層を基板上に形成する工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射する工程と、上記感光層の上記所定部分を上記基板上から除去して、上記樹脂組成物を含むパターンを形成する工程と、上記パターンを加熱して、上記樹脂組成物の硬化物を含むレジストパターンを形成する工程と、を備える、レジストパターンの形成方法を提供する。
【0035】
本発明はさらに、上記本発明のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング又はめっきする工程を備える、プリント配線板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、従来のポジ型レジスト材料とは異なる新規な感光機構を有し、高膜厚であっても良好な感度及び解像性が得られるポジ型レジスト材料として使用可能な、樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
【0039】
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、トリチオカーボネート構造を有する高分子化合物(A)と、活性光線によりラジカルを発生する化合物(B)(以下、場合により「光ラジカル発生剤(B)」と称する。)と、を含有する。
【0040】
高分子化合物(A)は、下記式(1)で表されるトリチオカーボネート構造を有する。
【0041】
【化5】

【0042】
高分子化合物(A)は、例えば、ラジカルにより上記トリチオカーボネート構造が分解して、トリチオカーボネート構造の一端側に結合する構造からなる第一の低分子化物と、他端側に結合する構造からなる第二の低分子化物と、に分解し得るものである。
【0043】
そして、高分子化合物(A)によれば、高分子化合物(A)と、第一の低分子化物及び第二の低分子化物と、の溶解性の差を利用して、現像を行うことができる。なお、現像液は、後述するように、高分子化合物(A)と低分子化物との溶解性の差が大きいものを適宜選択することができる。
【0044】
また、高分子化合物(A)を含有するポジ型レジスト材料は露光前の段階ではトリチオカーボネート構造に基づく薄いピンク色を有しているが、露光によって低分子化物に分解すると無色透明となる。そのため、高分子化合物(A)を含有するポジ型レジスト材料によれば、色が変化しないことで誤って二重露光したり、露光せずに次の工程に進むといった人為的なミスを防ぐことができる。
【0045】
高分子化合物(A)は、下記式(1−1)で表される構造単位を有していることが好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。
【0048】
このような構造単位を有する高分子化合物(A)は、透明性に優れる。そのため、このような高分子化合物(A)によれば、解像性及び感度に一層優れる樹脂組成物が得られる。高分子化合物(A)は、式(1−1)で表される構造単位を複数有していてもよく、このとき複数のR同士及び複数のR同士は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0049】
におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0050】
におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましい。Rにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。
【0051】
樹脂組成物のアルカリ溶液に対する現像性を向上させる観点からは、高分子化合物(A)は、Rが水素原子である構造単位(以下、場合により「アクリル酸単位」と称する。)を有することが好ましい。このとき、高分子化合物(A)におけるアクリル酸単位の含有量は、高分子化合物(A)の全量基準で、10〜99質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
高分子化合物(A)は、熱架橋性基を有していてもよい。ここで熱架橋性基とは、加熱により架橋構造を形成し得る基を示し、熱架橋性基同士が直接架橋するものであってもよく、熱硬化剤を介して架橋するものであってもよい。
【0053】
熱架橋性基としては、ヒドロキシル基を有する基、オキシラン環を有する基等が挙げられる。これらの熱架橋性基は、熱硬化剤を適宜選択することによって容易に、活性光線の照射によっては架橋せず、加熱によって架橋するようにすることができる。そのため、このような熱架橋性基を有する高分子化合物を含有する樹脂組成物は、ポジ型レジスト材料として一層好適に用いることができる。
【0054】
高分子化合物(A)は、熱架橋性基を有する構造として、下記式(1−2)で表される構造単位を有していてもよい。
【0055】
【化7】

【0056】
式中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは熱架橋性基を示す。
【0057】
高分子化合物(A)は、式(1−2)で表される構造単位を複数有していてもよく、このとき複数のR同士及び複数のR同士は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0058】
におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0059】
における熱架橋性基としては、ヒドロキシル基を有する基、オキシラン環を有する基等が好ましい。
【0060】
ヒドロキシル基を有する基としては、例えば、ヒドロキシアルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0061】
式(1−2)で表される構造単位は、例えば、下記式(1−3)で表される構造単位であってもよい。
【0062】
【化8】

【0063】
式中、Rは式(1−2)におけるRと同義であり、Rは二価の有機基を示す。
【0064】
における二価の有機基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンオキシ基、シクロアルキレンオキシ基等が挙げられ、これらのうちアルキレン基、アルキレンオキシ基が好ましい。
【0065】
アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ヘキサンジイル基、シクロヘキサンジイル基が挙げられる。
【0066】
アリーレン基としては、フェニレン基等が例示できる。
【0067】
アルキレンオキシ基は、−R−O−(Rはアルキレン基を示す。)で表される基であり、Rにおけるアルキレン基としては上記と同様のものが例示できる。
【0068】
シクロアルキレンオキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0069】
高分子化合物(A)における式(1−2)で表される構造単位の含有量は、高分子化合物(A)の全量基準で、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0070】
高分子化合物(A)は、上記以外の構造を有していてもよく、例えば、後述するラジカル重合性物質に由来する構造を有していてもよい。
【0071】
高分子化合物(A)は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、トリチオカーボネート構造を有する連鎖移動剤との重合反応を経て得られる重合体であることが好ましい。
【0072】
ラジカル重合性化合物としては、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)に用いられるモノマーを適宜使用することができる。
【0073】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;が挙げられる。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)に用いられる重合開始剤を適宜使用することができる。
【0075】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド等の過酸化物開始剤;AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、V−65(アゾビスジメチルバレロニトリル)等のアゾ開始剤が挙げられる。これらのうち、低沸点の溶媒を使用できること、副反応が起こりにくいことなどの観点から、アゾ開始剤が好ましく、AIBNがより好ましい。
【0076】
連鎖移動剤としては、例えば、下記式(2−1)で表される化合物が挙げられる。このような連鎖移動剤によれば、式(1)の構造を有する高分子化合物を得ることができ、また、分子量分布の狭い高分子化合物が得られるため、樹脂組成物の可とう性等の機械特性を容易に制御することができる。また、このような連鎖移動剤を用いるとトリチオカーボネート構造の両端で重合が進行して、高分子化合物の略中央にトリチオカーボネート構造が位置するようになる。このような高分子化合物では、低分子化物の分子量が高分子化合物の分子量のほぼ半分になるため、露光時のコントラストがより良好になり、一層優れた解像性が得られるようになる。そのため、このような連鎖移動剤を用いて得られた高分子化合物は、アディティブ法などの無電解めっきを行うためのポジ型レジスト材料として、特に好適に用いることができる。
【0077】
【化9】

【0078】
式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、アリール基を示し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。
【0079】
Ar及びArにおけるアリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0080】
11、R12、R13及びR14におけるアルキル基としては、上記Rにおけるアルキル基と同様の基が例示できる。
【0081】
上記重合反応においては、重合反応に供するラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤のモル比を制御することで、得られる高分子化合物(A)の分子量を調整することができる。
【0082】
また、上記重合反応において、連鎖移動剤の配合量C(モル)とラジカル重合開始剤の配合量C(モル)とのモル比C/Cは、0.2〜30とすることが好ましく、1〜20とすることがより好ましい。モル比C/Cが大きいと、単分散性になる一方で重合反応が遅くなる傾向があり、モル比C/Cが小さいと、ラジカル重合開始剤から直接ラジカル重合性化合物への連鎖移動が起こり、トリチオカーボネート構造を有しない重合体が副生して現像性が低下するおそれがある。
【0083】
上記重合反応は、溶液重合、懸濁重合,乳化重合,固相重合等により行うことができる。これらのうち、高分子化合物(A)として、後述の好適な重量平均分子量を有する重合体を得る観点からは、溶液重合が好ましい。
【0084】
溶液重合は、例えば、ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤と連鎖移動剤とを、生成する高分子化合物(A)を溶解可能な溶剤に溶かし、ラジカル重合開始剤がラジカルを生じる温度まで加温することで行うことができる。溶液重合は、空気雰囲気下;窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下;脱気真空下;などの条件で行うことができるが、コストの面から、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0085】
溶液重合で用いる溶剤は、生成する高分子化合物(A)を溶解可能な溶剤であれば特に制限されないが、重合温度より高い沸点を有する溶剤が好ましい。なお、常圧で重合温度より低い沸点を有する溶剤を用いる場合には、加圧下で重合を行うこともできる。
【0086】
溶剤としては、例えば、メトキシエタノール、エトキシエタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノール、酢酸ブチル、クロルベンゼン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0087】
なお、RAFT重合では、一般的にアクリル成長末端からメタクリレート系モノマーへの連鎖移動は生じ難いことなどが知られている。そのため、複数のラジカル重合性化合物を共重合するときは、その配合手順や組み合わせを考慮することが好ましい。例えば、複数のラジカル重合性化合物を一緒に重合反応に供する場合には、アクリル系モノマーだけの組み合わせ、メタクリレート系モノマーだけの組み合わせ、などとすることが好ましい。また、ブロック重合で段階的に重合体を成長させる場合には、メタクリレート系モノマーを重合させた後にアクリレート系モノマーを重合する、などとすることが好ましい。
【0088】
高分子化合物(A)の重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算)は、通常3000以上であり、5000〜300000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000以上であると、機械強度の高いレジストパターンが得られる。また、重量平均分子量が300000以下であると、現像性に一層優れる傾向がある。
【0089】
高分子化合物(A)の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは、1.0〜1.8であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましい。比Mw/Mnが上記範囲内であると、高分子化合物と低分子化物の溶解性の差が一層顕著になるため、露光時のコントラストがより良好になり、一層優れた解像性が得られるようになる。そのため、このような高分子化合物(A)は、アディティブ法などの無電解めっきを行うためのポジ型レジスト材料として、特に好適に用いることができる。
【0090】
樹脂組成物のアルカリ溶液に対する現像性を一層向上させる観点からは、高分子化合物(A)の酸価は、60〜130mgKOH/gであることが好ましく、80〜120mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であると、未露光部における耐アルカリ性が十分に得られるとともに、露光部のアルカリ溶液への溶解性が一層優れる傾向にある。
【0091】
樹脂組成物中の高分子化合物(A)の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、75質量%以上100質量%未満であることが好ましく、80質量%以上99質量%未満であることがより好ましい。
【0092】
光ラジカル発生剤(B)は、活性光線の照射によりラジカルを発生して、高分子化合物(A)におけるトリチオカーボネート構造を分解して、高分子化合物(A)を低分子化する成分である。
【0093】
光ラジカル発生剤(B)としては、光開始剤として一般的に知られているものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、p,p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p−ジエチルアミノベンゾフェノン、p,p−ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−エチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類;2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジル類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;が挙げられる。
【0094】
樹脂組成物中の光ラジカル発生剤(B)の含有量は、高分子化合物(A)の総量100質量部に対して、0.1〜10.0質量部とすることが好ましく、0.5〜5.0質量部とすることがより好ましい。
【0095】
高分子化合物(A)が熱架橋性基を有するとき、樹脂組成物は、熱硬化剤(C)を含有していてもよい。熱硬化剤は、熱架橋性基と反応して架橋構造を形成する成分である。熱硬化剤は、熱架橋性基に応じて適宜選択することができる。
【0096】
例えば、高分子化合物(A)がオキシラン環を有する場合、熱硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものを用いることができる。例えば、熱硬化剤として、脂肪族アミン、芳香族アミン、イミダゾール類等のアミン化合物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物類;フェノール樹脂;などを好適に用いることができる。
【0097】
また、高分子化合物(A)がヒドロキシル基を有する場合、熱硬化剤としては、エポキシ樹脂、ジイソシアネート化合物等を好適に用いることができる。
【0098】
樹脂組成物は、上記の各成分以外の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、顔料、充填材、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0099】
(感光性エレメント)
次に、本実施形態に係る感光性エレメントについて説明する。本実施形態に係る感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に設けられた上記樹脂組成物を含む感光層と、を備える。本実施形態に係る感光性エレメントは、感光層が上記樹脂組成物を含むため、ポジ型感光性エレメントとして有用である。
【0100】
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10と、該支持体10上に設けられた感光層14と、で構成される。感光層14は、上記樹脂組成物を用いて形成される層である。感光層14は、例えば、上記樹脂組成物を溶剤に溶解して樹脂溶液を調製し、それを支持体10上に塗布して乾燥することによって形成される。また、感光性エレメント1は、感光層14上の支持体10とは反対側の面F1を、保護フィルムで被覆してもよい。
【0101】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では、機械的強度が低下し、感光層14を基板上に積層させる際などに、支持体10が破れる等の問題が発生し易くなる傾向にある。また、厚みが100μmを超えると、支持体10を介して感光層14に活性光線を照射する場合に、解像度が低下する傾向がある。
【0102】
感光層14の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、1〜100μmであることが好ましく、3〜60μmであることがより好ましい。感光性エレメント1は、上記樹脂組成物を用いて感光層14を形成しているため、感光層14が厚い場合であっても高精度にレジストパターンを形成することができる。
【0103】
感光層14の厚みは20μm以上であってもよい。感光層14は、高分子化合物(A)を含有するため、厚みが20μm以上であっても感度及び解像性が得られ、高精度にレジストパターンを形成することができる。
【0104】
支持体10と感光層14との2層からなる感光性エレメント1、又は、支持体10と感光性接着剤層14と保護フィルムとの3層からなる感光性エレメントが好適に使用でき、これらの感光性エレメントは、そのまま貯蔵してもよく、保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管してもよい。
【0105】
(レジストパターンの形成方法)
次に本実施形態に係るレジストパターンの形成方法について説明する。本実施形態に係るレジストパターンの形成方法は、上記樹脂組成物を含む感光層を基板上に形成する積層工程と、感光層の所定部分に活性光線を照射する露光工程と、感光層の当該所定部分(以下、場合により、活性光線照射後の当該所定部分を「露光部」といい、所定部分以外の部分を「未露光部」という。)を基板上から除去して、基板上に上記樹脂組成物を含むレジストパターンを形成する現像工程と、を備える。
【0106】
また、本実施形態に係るレジストパターンの形成方法は、上記樹脂組成物中の高分子化合物(A)が熱架橋性基を有するとき、樹脂組成物を含むレジストパターンを加熱して、樹脂組成物の硬化物を含むレジストパターンを形成する加熱工程をさらに備えていてもよい。
【0107】
基板としては、シリコン、ガラス等の絶縁性を有する基板が好適に使用できる。
【0108】
(積層工程)
積層工程において、感光層を基板上に形成する方法としては種々の方法を利用できる。例えば、樹脂組成物を溶剤又は混合溶剤に溶解して、固形分30〜70質量%程度の溶液とした後、かかる溶液を基板上に塗布して感光層を形成することができる。
【0109】
また、上述した感光性エレメントを用いて、基板上への感光層の積層を行ってもよい。その場合の積層方法としては、感光性エレメントが保護フィルムを備える場合には保護フィルムを除去した後、感光層を70℃〜130℃程度に加熱しながら基板に0.1MPa〜1MPa程度の圧力で圧着する方法等が挙げられる。かかる方法は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。また、積層性をさらに向上させるために、圧着前に基板の余熱処理を行うこともできる。これらの積層条件は、適宜変更することができる。
【0110】
(活性光線)
本実施形態において、活性光線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)などが挙げられる。また、レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザーなどが挙げられる。
【0111】
(露光工程)
感光性エレメントを用いた積層方法では、基板上に、感光層と支持体とが順次積層される。支持体が透明性を有する場合には、露光工程において、支持体上から活性光線を照射して感光層を露光してもよい。また、支持体の透明性が低い場合には、支持体を感光層上から除去し、直接感光層に活性光線を照射してもよい。
【0112】
露光工程では、例えば、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を照射する。活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の活性光線を有効に放射するものが用いられる。
【0113】
(現像工程)
現像工程では、露光部を基板上から除去する。現像工程では、感光層上に支持体が存在している場合には支持体を除去した後、現像液で処理することにより露光部を除去してレジストパターンを製造することができる。
【0114】
現像液は、樹脂組成物中の高分子化合物(A)に応じて適宜選択することができる。例えば、現像液は、高分子化合物(A)の酸価に応じて選択することができ、逆に使用する現像液に応じて高分子化合物(A)の酸価を調整することもできる。
【0115】
現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられる。
【0116】
アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。これらのうち、好適にはアルカリ金属炭酸塩の水溶液が用いられ、より好適には炭酸ナトリウムの水溶液が用いられる。
【0117】
水系現像液は、例えば、水又はアルカリ性水溶液と1種以上の有機溶剤とからなる現像液である。ここで、アルカリ性水溶液の塩基としては、先に述べた物質以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリンが挙げられる。水系現像液のpHは、現像が充分に行われる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
【0118】
水系現像液に用いる有機溶剤としては、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。水系現像液における有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、アルカリ現像性に合わせて調整することができる。水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0119】
有機溶剤系現像液としては、メタノール、エタノール、高級アルコール類、メチルエチルケトン、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等の有機溶剤が挙げられ、これらの混合溶剤を用いることもできる。
【0120】
現像の方法としては、ディップ方式、スプレー方式等があり、高圧スプレー方式が現像性、解像度向上のためには最も適している。
【0121】
アルカリ現像を行う場合、例えば、現像液温度10〜50℃、より好ましくは20〜40℃で、市販の現像機を用いて行うことができる。
【0122】
(加熱工程)
加熱工程では、高分子化合物(A)の熱架橋性基と、樹脂組成物中の熱硬化剤と、が反応し得る温度に、樹脂組成物を含むレジストパターンを加熱する。加熱温度は、熱架橋性基及び熱硬化剤の種類に応じて適宜選択することができる。
【0123】
加熱工程を経たレジストパターンは、永久レジストとして好適に用いることができる。
【0124】
(プリント配線板の製造方法)
上記方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきすることにより、プリント配線板を製造することができる。基板のエッチング又はめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、基板の少なくとも一面上に対して行われる。
【0125】
エッチングを行う場合のエッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液等が挙げられ、これらの中では、エッチファクタが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが好ましい。
【0126】
めっきを行う場合のめっき方法としては、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0127】
エッチング又はめっき終了後、レジストパターンは、例えば、アルカリ性水溶液による現像により得られたレジストパターンの場合には、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液によって剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液が用いられる。なかでも、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0128】
また、溶剤による現像により得られたレジストパターンの場合には、エッチング又はめっき終了後、現像に用いた溶剤より更に溶解性の高い溶剤によって剥離することができる。溶剤を用いる場合には、複数種の溶剤を混合することによってレジストパターンの剥離量を調節することができ、好ましい。
【0129】
レジストパターンの剥離方式としては、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。また、レジストパターンが形成されたプリント配線板は、多層プリント配線板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0132】
(合成例1:高分子化合物(A−1)の合成)
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた0.5リットルのセパラブルフラスコに、アクリルモノマとしてメタクリル酸ブチル20g(0.141モル)、メタクリル酸ラウリル50g(0.221モル)及びメタクリル酸ジシクロペンタニル(FA513MS、日立化成工業株式会社製、商品名)30g(0.136モル)、連鎖移動剤としてbis(2−phenylpropan−2−yl) carbonotrithioate(以下、場合により「RAFT剤A」という。)3.47g(0.010モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.31g(0.008モル)、溶剤としてメチルイソブチルケトン200mlを入れ、窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。12時間反応させたのち反応液をメタノール2Lに投入して、沈殿した高分子化合物(A−1)を回収した。高分子化合物(A−1)の収率は70%であった。
【0133】
得られた高分子化合物(A−1)について、下記の方法で数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び酸価を測定した。測定結果は表1に示すとおりであった。
【0134】
[Mn及びMwの測定]
高分子化合物(A−1)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、分子量分布のクロマトグラムをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、25℃における標準ポリスチレン換算で換算して求めた。なお、GPCの溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、カラムとしてはTSK−gel Super HZ−3000及びHZ−2000(何れも東ソー株式会社製、商品名)を直結したものを使用した。
【0135】
[酸価の測定]
ポリカップに高分子化合物(A−1)1gを精秤し、メチルエチルケトン25mLに溶解した。指示薬としてフェノールフタレイン1滴を入れ、0.1N水酸化カリウムのメタノール溶液を、撹拌しても桃黄色が30秒以上消失しなくなるまで加えた。使用した0.1N水酸化カリウムのメタノール溶液の量から、高分子化合物(A−1)1gを中和するのに必要な水酸化カリウム量を算出し、酸価とした。
【0136】
(合成例2〜6)
アクリルモノマの種類及び各成分の配合量を、表1又は表2に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にして、高分子化合物(A−2)〜(A−6)を得た。収率は、それぞれ表1又は表2に示すとおりであった。
【0137】
得られた各高分子化合物について、合成例1と同様の方法で数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び酸価を測定した。測定結果は表1又は表2に示すとおりであった。
【0138】
(比較合成例1)
アクリルモノマの種類及び各成分の配合量を、表3に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にして、高分子化合物(a−1)を得た。収率は表3に示すとおりであった。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
(実施例1)
高分子化合物(A−1)を35質量%含有するメチルエチルケトン溶液に、光ラジカル発生剤としてIrg−651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバガイギー株式会社製、商品名)0.35gを溶解して、ワニスを調製した。このワニスを、乾燥後の厚み(感光層の厚み)がそれぞれ5μm、10μm、20μm、30μmとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人テトロンフィルム株式会社製、ビューレックスA63)にバーコーターで塗布し、120℃で15分間加熱して乾燥させ、感光層が5μm、10μm、20μm、30μmの感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0143】
得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、下記の方法でパターンを作製し、評価した。評価結果は表4に示すとおりであった。
【0144】
[パターンの作製]
得られた感光性エレメントを銅張り積層板MCL−E−67(日立化成工業株式会社製、商品名)上にラミネートした後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、積層板上に感光層を設けた。次いで、紫外線露光装置を用いて、所定のパターンのフォトマスクを介して露光した。露光量は感光層の膜厚に応じて、5μmの場合は50mJ/cm、10μmの場合は100mJ/cm、20μmの場合は200mJ/cm、30μmの場合は400mJ/cmとして行った。
【0145】
下記に示す現像液を用いて、それぞれ、像の形成ができた場合をA、像の形成がみられなかった場合をBとして評価した。また、感光性エレメントのラミネート性について、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離する際、樹脂層がポリエチレンテレフタレートに転着せずに剥離できた場合をA、樹脂層がポリエチレンテレフタレートに転着して剥離が困難であった場合をBとして、評価した。
・現像液1(溶剤):ブチルセロソルブ/イソプロピルアルコールの50/50(体積比)混合液
・現像液2(準水):ホウ砂15g/Lのジエチレングリコールモノブチルエーテル10%(体積比)水溶液
・現像液3(アルカリ):1%(質量比)炭酸ナトリウム水溶液
【0146】
(実施例2〜6)
高分子化合物(A−1)を、高分子化合物(A−2)〜(A−6)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性エレメントを得た。
【0147】
得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、実施例1と同様にしてパターンを作製し、評価した。評価結果は表4又は表5に示すとおりであった。
【0148】
(実施例7、8)
光ラジカル発生剤を、N−1717(1,7−ジ(アクリジン−9−イル)ヘプタン、アデカアーガス株式会社、商品名)、B−CIM(2−(2−クロロフェニル)−2−(2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−3H−ピロール−3−イル)−4,5−ジフェニル−2H−イミダゾール、黒金化学株式会社、商品名)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性エレメントを得た。
【0149】
得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、実施例1と同様にしてパターンを作製し、評価した。評価結果は表4又は表5に示すとおりであった。
【0150】
(実施例9)
高分子化合物(A−4)80g、光ラジカル発生剤としてIrg651を0.35g、フェノール樹脂(KA−1165、DIC株式会社製、商品名)10g、エポキシ樹脂(HP−4032D、DIC株式会社製、商品名)10g、及び、硬化剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN、四国化成工業株式会社製、商品名)0.2gを、メチルエチルケトン150gに溶解して、ワニスを調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして感光性エレメントを作製した。
【0151】
得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、実施例1と同様にしてパターンを作製し、評価した。評価結果は表6に示すとおりであった。
【0152】
また、作製したパターンを185℃で30分間、乾燥機中で加熱して、パターンを硬化した。硬化したパターンをメチルエチルケトンに30分間浸漬し、パターンを形成する硬化物に剥がれや溶解がないことを確認した。
【0153】
(比較例1〜3)
光ラジカル発生剤を配合しなかったこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして感光性エレメントを得た。得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、実施例1と同様にしてパターンの作製を行い、評価した。評価結果は表7に示すとおりであった。
【0154】
(比較例4)
高分子化合物(A−1)を、高分子化合物(a−1)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性エレメントを得た。得られた感光性エレメントをそれぞれ用いて、実施例1と同様にしてパターンの作製を行い、評価した。評価結果は表7に示すとおりであった。
【0155】
【表4】

【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
トリチオカーボネート構造を有する高分子化合物に光ラジカル発生剤を配合した実施例1〜8の感光性エレメントは、いずれも強度のあるフィルムであり、紫外線露光及び現像により、像形成が可能であった。また、トリチオカーボネート構造及び熱架橋性基を有する高分子化合物に光ラジカル発生剤及び硬化剤を配合した実施例9の感光性エレメントは、強度のあるフィルムであり、紫外線露光及び現像により像形成が可能であって、加熱により硬化して永久レジストとすることができた。
【0160】
一方、光ラジカル発生剤を配合しなかった比較例1〜3では、紫外線露光をしてもフィルムが現像液に溶解せず、像形成ができなかった。また、トリチオカーボネート構造を有しない高分子化合物を用いた比較例4でも、紫外線露光をしてもフィルムが現像液に溶解せず、像形成ができなかった。
【符号の説明】
【0161】
1…感光性エレメント1、10…支持体、14…感光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリチオカーボネート構造を有する高分子化合物と、活性光線によりラジカルを発生する化合物と、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物が、下記式(1−1)で表される構造単位を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】


[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。]
【請求項3】
前記高分子化合物が、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、トリチオカーボネート構造を有する連鎖移動剤との反応を経て得られる重合体である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記連鎖移動剤が、下記式(2−1)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化2】


[式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、アリール基を示し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。]
【請求項5】
前記高分子化合物が、熱架橋性基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物が、下記式(1−2)で表される構造単位を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化3】


[式中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは熱架橋性基を示す。]
【請求項7】
前記熱架橋性基が、オキシラン環を有する基又はヒドロキシル基を有する基である、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む感光層と、を備える、感光性エレメント。
【請求項9】
前記感光層の厚みが20μm以上である、請求項8に記載の感光性エレメント。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む感光層を基板上に形成する工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射する工程と、
前記感光層の前記所定部分を前記基板上から除去して、前記基板上に前記樹脂組成物を含むレジストパターンを形成する工程と、
を備える、レジストパターンの形成方法。
【請求項11】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む感光層を基板上に形成する工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射する工程と、
前記感光層の前記所定部分を前記基板上から除去して、前記樹脂組成物を含むパターンを形成する工程と、
前記パターンを加熱して、前記樹脂組成物の硬化物を含むレジストパターンを形成する工程と、
を備える、レジストパターンの形成方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング又はめっきする工程を備える、プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−177884(P2012−177884A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186167(P2011−186167)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】