説明

橈脚類を含む海水魚給餌源を使用した養殖魚を生産するための水産養殖システム

【課題】橈脚類を含む海水魚給餌源を使用した養殖魚を生産するための水産養殖システムの提供。
【解決手段】本発明は、海水魚給餌源を使用することによって、養殖魚を生産するための水産養殖システムであって、前記海水魚給餌源は、橈脚類を含む海水魚給餌源の生産方法に従って得られ、稚魚に海水魚給餌源を給餌するための方法に従って得られた前記海水魚給餌源で前記稚魚は給餌され、前記システムは前記稚魚を含む多数の容器からなり、前記の各容器中の水は、バイオフィルターシステムを通して前記容器から水を抜き、そして濾過水を1つ以上の前記容器へ戻すことによって濾過され、それによって、前記容器に新しい非病原性細菌が供給され、かつ毒性アンモニア生成物が前記容器から除去され、そして、特定の稚魚に給餌するために適当な成長段階及び/又はサイズに達した橈脚類が特定の稚魚容器中の前記稚魚に給餌されることを確保するために、橈脚類が前記特定の稚魚容器中の魚給餌として使用されるシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橈脚類を含む海水魚給餌源を生産する方法に関する。
更に、本発明は、稚魚を海水魚給餌源で給餌するための方法に関する。
更に、本発明は、海水魚給餌源を使用することによる養殖魚を生産するための水産養殖システムに関する。
【背景技術】
【0002】
淡水魚種の稚魚とは異なり、海水稚魚は、多くの必須脂肪酸及びアミノ酸を合成することができない。更に、幾つかの海水稚魚は給餌を始める場合、それらは微小藻類の給餌に依存している。更に、非常に低いアンモニア量に対する高感受性、給餌密度等に関する多くの他の問題が存在する。これらの要因の全てが、特定の海水魚種の稚魚/幼魚の養殖を困難にしている。
特に困難な海水魚種の多くは、天然の橈脚類を給餌する。橈脚類は甲殻綱に属する。
【0003】
海水稚魚のための及びまた水産養殖のための給餌として、これらの動物を使用することが自然であり得るが、問題は、これらの動物は、橈脚類が媒介宿主として作用するため、多くの魚の寄生虫の主なキャリヤーであることにあり、そして、それらの自然環境から収集した橈脚類を使用した試みは、稚魚養殖における感染により生産の成否があまりにも大きく変化し、更に、捕獲による供給が、しばしば、あまりにも不安定であるために、決して成功していないことが証明されている。
【0004】
特にノルウェーでは、野生の橈脚類の捕獲に代わる方法が適用されている。外洋から直接、橈脚類を捕獲する代わりに、典型的には、2、3ヘクタールの囲い地が、ダム又は同様の装置によって海から分離される。囲い地内の魚は、橈脚類の感染レベルを減少させるために取り除かれる。
【0005】
その後、橈脚類は、このいわゆる‘‘プール(poll)’’中で捕獲され、そして‘‘プール’’中に吊り下げられたままの大きなプラスチックバッグ中に入れられる。これは、単に海から橈脚類を収集することよりも、より有効である。しかしながら、該方法は、生産の安定性を提供することはできず、この方法では、少量の幼魚しか生産できない。
病気も依然として問題であり、かつバッグ中の給餌密度を制御することは依然として困難である。更に、魚は、生簀中の温度が稚魚のために最適である場合にしか、養殖され得ない。
【0006】
今日、ほぼ全ての孵化場は、クルマムシ及びアルテミアが海水稚魚のための給餌として使用されるところの技術を使用している。この技術において、クルマムシの養殖物は、最初の給餌の早期段階において、稚魚に給餌される。後ほど、孵化場はブラインシュリンプアルテミアに替えるが、それは卵嚢として購入することができ、そしてその後、孵化され、稚魚に給餌される。
これらの動物が有する問題は、それらが、幾つかの海水稚魚のための脂肪酸及びアミノ酸の正しい組成を有さないため、特に、2、3年後に、異常な色素形成、奇形及び1バッチの魚内の成長速度の違いに関する問題が生じるということにある。今日、これらの問題は、クルマムシ及びアルテミアのための栄養価を高めるプログラムの発達によって、幾つかの種の魚において、一部解消されている。
【0007】
また、成長速度において多少の違いがあり、そして、病気に対する免疫反応系は、通常
、望む通りではない。他の問題は、これらの生産システムでは、細菌安定性があまり高くなく、それは稚魚における多くの問題を引き起こすことにある。それ故、これらのシステムにおいて多くの稚魚の生存を得るために、病気問題をなくすよう抗生物質及び化学物質を使用することが、通常、必要とされるが、大抵の孵化場は、それについて非常に隠したがる。
【0008】
90年代初め、ベント ウルップ博士が、完全に感染のない橈脚類の養殖/供給を得るために、大きな密閉式屋外タンク中で、地面の上で比較的多量の動物プランクトン(calanoide copepods)を養殖するための方法を開発した。
大きなタンク中でこれらの橈脚類を養殖すると同時に、稚魚が、幾つかの橈脚類養殖タンクに直接加えられ、そこで、藻類、橈脚類及び稚魚が同時に成長させられる。該方法は、奇形、均一な成長及び病気に対する免疫反応に関して高品質の稚魚を生産した。
【0009】
この技術に関する重要な問題は、この技術を有する孵化場の作業では、比較的少量の魚しか生産できないことにある。10年前、これはすばらしいものであり得たが、今日、この量では、孵化場が競争力あるものであるためには十分ではない。
稚魚の給餌需要が、消費のピーク時でさえもタンク内の橈脚類生産と釣り合わなければならないため、限られた数の稚魚のみが橈脚類養殖タンクに加えられ得る。
【0010】
更に、橈脚類を、温度を制御することができない大きな屋外タンク中で成長させねばならないので、稚魚は温度に非常に依存するために、生産は、1年の内で2、3ヶ月間しか行われ得ない。それ故、この技術は、今日、孵化場が競争力あるものであるために十分な幼魚の養殖を可能にしない。100万の幼魚の少量生産でさえ、最小で10.000m2
の孵化場が必要とされ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、水産養殖の分野では、稚魚を給餌するために有用で、かつ上記問題を欠点として有さない海水魚給餌源が必要とされている。更に、稚魚を給餌するために有効な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、細菌的に安定した環境を含む最適な成長条件を有し、そこで、橈脚類を含む海水魚給餌源を生産し及び稚魚を給餌するために使用し、それによって、稚魚の生存率がかなり増加する水産養殖システムを提供することである。
これは、請求項8記載の水産養殖システムによって達成され得り、前記システムは、前記稚魚を含む多数の容器からなり、前記の各容器中の水は、バイオフィルターシステムを通して前記容器から水を抜き、そして濾過水を1つ以上の前記容器へ戻すことによって濾過され、それによって、前記容器に新しい非病原性細菌が供給され、かつ毒性アンモニア生成物が前記容器から除去され、そして、特定の稚魚に給餌するために適当な年齢及び/又はサイズに達した橈脚類が特定の稚魚容器中の前記稚魚に給餌されることを確保するために、橈脚類が前記特定の稚魚容器中の魚給餌として使用される。
【0013】
橈脚類を含む海水魚給餌源の生産方法を提供することは、本発明の更なる目的である。
これは、請求項1の前文に記載の方法によって達成され得り、該方法では、藻類の養殖物がタンク中の海水中で成長させられ、前記海水は、動物プランクトンの存在を実質的になくすために、50マイクロメートル以下まで濾過され、前記橈脚類は、繁殖の準備ができており、そして前記タンク中に加えられ、前記藻類の養殖物の衰弱を防止するよう、前記藻類の養殖物の成長を維持するために、多数の栄養分が前記タンク中に加えられ、そして所望の定常状態レベルが達成された場合、過剰の前記橈脚類を収穫することにより前記
橈脚類の密度を調節することによって及び/又は前記タンク中の窒素含有量を調節することによって、前記藻類の養殖物がバランスよく保たれる。
【0014】
稚魚を海水魚給餌源で給餌するための方法を提供することもまた、本発明の更なる目的である。
これは、請求項4の前文に記載の方法によって達成され得り、該方法では、前記稚魚を、稚魚給餌タンク中に入れ、前記稚魚給餌タンク中に適当な密度の前記橈脚類を得るために、前記稚魚に対応する特定のサイズ範囲の前記海水魚給餌源の前記橈脚類を前記稚魚給餌タンク中に加え、前記藻類の養殖物の密度が、前記橈脚類のための最適な給餌条件を維持し、かつ藻類の幼生給餌に関する必要条件を満たすために適当であり得ることを確保するために、最初の給餌時前後に、前記藻類の養殖物が前記稚魚給餌タンク中に加えられ、前記稚魚給餌タンク中の前記水は、バイオフィルターシステムを通して前記稚魚給餌タンクから前記水を抜き、濾過水を前記稚魚給餌タンクへ戻すことによって濾過され、それによって、前記稚魚給餌タンクに新しい非病原性細菌が供給され、かつ毒性アンモニア生成物が前記稚魚給餌タンクから除去され、そして前記稚魚給餌タンク中の酸素量が、80ないし110%の飽和度に維持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、細菌的に安定した環境を含む最適な成長条件を有し、そこで、橈脚類を含む海水魚給餌源を生産し、それを稚魚に給餌するために使用することにより、稚魚の生存率をかなり増加させる水産養殖システムを提供することができる。
また、本発明により、橈脚類を含む海水魚給餌源の生産方法を提供すること、及び更には、稚魚を海水魚給餌源で給餌するための方法を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願において、用語‘‘橈脚類’’は、前記動物の特定の成長段階にかかわらず、橈脚綱の動物を示すために使用され得ることに注意すべきである。従って、成長段階のナウプリウス(naupli)、コペポディト(copepodit)及び橈脚類もまた‘‘橈脚類’’として言及され得る。
【0017】
橈脚類は、好ましくは、1000−3500m3/タンクの範囲のサイズの大きな屋外
タンク中で養殖される。好ましくは、地域種の橈脚類が使用され、該橈脚類は、簡便に、近くの海で収集され得り、そしてその後、生産計画が、この種のために最適化され得るが、地域種以外の他種の橈脚類もまた、この本発明の第一の局面に従った方法において使用されることが考えられる。最も好ましい種は、カラヌス目及びキクロプス目に属する。
一旦、種が養殖に適応され、管理様式が該種に適合させられると、生産を開始し得る。
【0018】
魚給餌源中にバランスよく藻類養殖を維持することによって、長期間、橈脚類源を維持することができる。通常、橈脚類の養殖は、4−12週間、タンク中に維持され得、その後タンクを空にし、清掃することが必要とされる。その後、新しい養殖が開始され得る。
従って、橈脚類の連続的な供給又は源が望まれる場合、1つ以上のタンクを準備することが必要とされる。そのため、実用的には2ないし6つのタンク、例えば、3、4又は5つのタンクを準備される。橈脚類養殖物を有するタンク/容器の橈脚類養殖物が完了した場合、それは、新しい第一世代の未熟な橈脚類を有する2つ以上の他のタンクの1つから橈脚類を供給され得る。
【0019】
1つ以上のタンクが準備される場合、各タンクは、1−3週間間隔で始動させるべきである。これは、橈脚類の連続供給が提供されることを確保し得る。これは、容器が空にされ、養殖を再開始する前に、橈脚類の養殖物が、各々の容器/タンク中で2−6世代、繁殖させられることを意味する。
バッチが開始される場合、タンクが清掃された後、最初にすべきことは、濾過された海水上の橈脚類養殖タンク中で藻類の養殖物を始めることであり、そして該海水は、動物プランクトンの存在を実質的になくすために、50マイクロメートル以下まで濾過される。
【0020】
使用される藻類養殖物類は、いかなる種類の藻類養殖物でもあり得るが、生産地に自然に存在する又は使用される特定種の橈脚類が見られる海に自然に生息する藻類養殖物の混合物を使用することが好まれる。
藻類養殖物が成長を始めた段階で、繁殖の準備ができた橈脚類を、現在、成長している藻類の養殖物を有する橈脚類タンクに加える。
【0021】
橈脚類の固体数が、藻類に対する捕食が藻類の成長と調和し得る密度に達するまで、藻類は、養殖物の衰弱なく、連続成長を維持されるべきである。連続成長は、新しい注入海水を加えること及び、必要とあらば純粋な栄養分を加えることにより、より多くの栄養分を徐々に加えることによって確実にされる。
藻類の成長を調節するために使用できるパラメーターは、水中の硝酸塩含有量である。水中に窒素15−40マイクログラムに相当する硝酸塩含有量を有することが望ましい。このような硝酸塩の濃度は、橈脚類が消化可能なサイズ範囲の5−20マイクロメートルの範囲のサイズの藻類の成長を高め得る。
【0022】
橈脚類の固体数密度が増加し、それによりタンク中の藻類の成長とタンク中で生産された藻類の間のバランスがとれた所望の定常状態レベルが達成された場合、過剰の橈脚類を収穫することにより、橈脚類の密度を調節し、藻類養殖物の過剰利用を避けることによって、養殖物はバランスよく保たれる。藻類の濃度が、1L当りの乾燥質量で最小350マイクログラムになるまで、定常状態レベルが達成されないことが好ましい。
他方で、藻類の成長は、窒素の調節によって、調節及び維持される。窒素投入量は、藻類が橈脚類によって食され、糞として水体積へ戻り、その後、糞は細菌活性を通して無機化されるため、藻類バイオマスの再無機化を通してタンク内で再発生する窒素から一部生じ、及び所望により、注入海水中に天然の窒素含有物の形態(アンモニア及び硝酸塩)で注入水を加えることによって加えられるか、又はいずれかの他の窒素が豊富な形態の液体又は粉末としてタンクに直接加えられることによって加えられる。
【0023】
その後、収穫された橈脚類は、50−1000マイクロメートルの様々なサイズ群に分類分けされる。橈脚類の収穫は、特定のサイズ範囲の橈脚類を選択できるフィルターを使用することによって行われ得る。
【0024】
本発明に従った橈脚類の生産技術を使用する1つの孵化場の生産能力を増加させるため、前記魚給餌源は、配列された魚給餌源からなり、かつ開始時に関して前記魚給餌源の各々は他の魚給餌源に対し分かれている。
前記魚給餌源の配列及び成長条件の調節は、年中、連続的に、橈脚類を養殖することを可能にし、幼魚の生産を、1年当り最大約100万から1年当り約3000万へと増加させ得ることを確実にする。明かに、これは、幼魚生産コストのかなりの減少を意味する。
【0025】
稚魚は、稚魚給餌タンク中に入れられ、そして、前記稚魚は、稚魚の段階において、脂肪酸22:6n−3を合成することができず、かつ前記稚魚の段階において、700マイクロメートル未満の小さな生き餌動物に依存するところの種から選択される。
【0026】
稚魚は、最小齢が孵化後1日で、最大質量が乾燥質量で約10mgであり、以下の種:
クロマグロ(Thunnus thynnus)、ミナミマグロ(Thunnus maccoyii)、キハダマグロ(Thunnus albacares)、メバチマグロ(Thunnus obesus)、コーラル トラウト(スジアラ(Plectrop
omous leopardus))、バラマンディ コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、エスチュアリー コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、アカマダラハタ(Epinephelus
fuscoguttatus)、オオニベ(Argyrosomus japonicus)、シイラ(Coryphaena hippurus)、ヒラメ(Paralichthys olivaceus)、ヤスリハタ類(ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.))、フエダイ類(フエダイ属(Lutjanidos spp.)及びマダイ属(Pagrus spp.))、ハタ類(マハタ属(Epinephelus
spp.)、スジアラ属(Plectropomus spp.)、ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.)及びハタ科(serranidae spp.))、サラサハタ(Cromileptes altevelis)、メガネモチノウオ(Cheilinus undulatus)、タラ(大西洋マダラ(Gadus Morhua))、キングフィッシュ(ブリ属(Seriola sp.);ヒラマサ(Seriola lalandi)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili))、ウナギ(ウナギ属(Anguilla sp);ウナギ(Anguilla japonica)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla))、ハリバット(オヒョウ属(Hippoglossus sp.);オヒョウ(Hippoglossus stenolepis)、ハリバット(Hippoglossus hippoglossus))、アジ(アジ科(Carangidae sp.))から選択される。
【0027】
その後、稚魚に最適な餌密度を得るように、最適なサイズ範囲の橈脚類が稚魚給餌タンクに加えられ、同時に、藻類もまた稚魚給餌タンク内のバランスを維持するように加えられ、そして、該バランスは、橈脚類、藻類及び稚魚間の相互作用に依存せず、投入量にのみ依存するが、同一の割合が維持される場合、藻類の密度が橈脚類のための満足な又は十分な給餌条件及び稚魚に最適な餌密度(様々な橈脚類段階)の維持に適当であることを確保し得る。
これは、橈脚類密度が藻類生産と定常バランスになければならない場合とは異なり、稚魚給餌密度に関する最適な橈脚類密度が得られ得ることを意味する。
【0028】
海水魚給餌源は、稚魚給餌タンク中の稚魚のために実質的に最適な橈脚類密度を得るように、稚魚給餌タンクに加えられる。
【0029】
稚魚サイズ/橈脚類サイズと稚魚サイズ/橈脚類密度の間の関係に関しては、以下の表に示す。
【表1】

【表2】

【0030】
藻類密度が橈脚類のための給餌条件を維持し、かつ藻類の幼生に関する必要条件を満たすために適当であることを確保するために、最初の給餌時前後に、イソクリシス種を含む養殖された藻類種であるか、又は、最初は天然の地域微小藻類種の混合物を含み、濾過された海水上の容器中で得られた3−7日齢の藻類ブルームからの藻類の混合物、である藻類が稚魚給餌タンクに加えられる。
【0031】
藻類を加える間、第一給餌の前日から第一給餌後7日までの間、第一給餌タンク中の藻類密度は、藻類細胞3×104−3×105の量又は1L当りに藻類が乾燥質量で最大550myグラムまでの量で維持され得る。
【0032】
少なくとも稚魚が、化学物質及び抗生物質の使用なしに養殖されるべき場合、細菌安定性は、稚魚の生存のために非常に重要である。本発明の新規技術において、細菌安定性は、バイオフィルターシステムを使用することによって得られる。
細菌安定性は、バイオフィルターシステムを使用することによって調節され、それにより、連続的に、新しい非病原性細菌をタンクに供給し、そして該細菌は、従属栄養細菌及び硝化細菌からなる群から選択され、稚魚タンク内の潜在的な病原性細菌を打ち負かし、かつ同時に、毒性アンモニア生成物を稚魚養殖タンクから除去する。水は、魚タンクとバイオフィルター間を再循環させられる。
【0033】
コストを減少させるために、稚魚に乾燥給餌は不都合であるため、前記方法は、前記稚魚が、例えば、乾燥給餌等の更なる給餌が可能なサイズ及び/又は年齢である場合、乾燥給餌等の更なる給餌のために、前記稚魚を前記稚魚給餌タンクから取り除く更なる工程を更に含む。
【0034】
卵孵化から卵黄嚢が十分に吸収される期間において、稚魚は、それぞれ5−30m3
稚魚タンク(第一給餌タンク)に移される。ここで、それらは、バイオフィルターにおけ
る水処理、及び、藻類養殖物及び様々な段階の橈脚類(橈脚類、コペポディト及びナウプリウス)を加えること、更にはクルマムシ及びアルテミアの供給によって維持される安定した環境中で生きる。
稚魚が成長するにつれ、前記サイズ群の橈脚類は徐々に増加され、そして、稚魚が乾燥給餌に慣らすのにほぼ十分な準備ができた場合、乾燥給餌が第一給餌タンクに直接加えられ得る。
【0035】
橈脚類を含む海水魚給餌源を使用することによる養殖魚を生産するための水産養殖システムは、稚魚を含む多数の容器からなる。
【0036】
細菌安定性は、バイオフィルターシステムを通して容器から水を抜き、そして濾過水を1つ以上の容器へ戻すことにより、各容器中の水を濾過することによって得られる。
バイオフィルターは、容器に新しい非病原性細菌を供給して稚魚タンク内の潜在的な病原性細菌を打ち負かし、同時に、毒性アンモニアを容器から除去する。
【0037】
特定の稚魚に給餌するために適当な成長段階及び/又はサイズに達した橈脚類が特定の稚魚容器中の稚魚に給餌されることを確保するために、橈脚類を含む海水魚給餌は収穫され、前記特定の稚魚容器中の稚魚に給餌される。
【0038】
本発明は、孵化後1日から約70mgのサイズに達し、もはや生き餌に頼らない稚魚までの稚魚のために使用され得る。
【0039】
クルマムシ及びアルテミアは、主にエネルギー要件をカバーするために安価な給餌サプリメントとして使用され得り、そして橈脚類は、基本的に栄養要件に関する決定的な量をカバーするために使用され得るため、前記水産養殖システム及びクルマムシ及びアルテミアを加えるためのシステムを構成する。
【0040】
水産養殖システム中に細菌安定性を得るために、前記バイオフィルターは、1m3当り
50m2以上の表面積を有し、従属栄養細菌及び硝化細菌からなる細菌フィルムが付着し
ている媒体を前記水が通過できるように構成され、かつ前記バイオフィルターは、前記水が前記稚魚給餌タンクに再注入される前に、50マイクロメートルより大きいサイズの粒子を除去するためのスクリーンを備える。
バイオフィルターは、稚魚給餌タンクへの返流中のイオン化アンモニアの量を
1L当り0.02mg(窒素)より低く維持し得る。
【実施例】
【0041】
以下の実施例で本発明を更に説明する。しかしながら、それらは、いかなる方法においても本発明を制限するようには解決されるべきではない。
実施例1:カラヌス目橈脚類アカルチア クラウシ(calanoid copepod Acartia clausi)の生産
いかなる動物プランクトンも入ることを避けるために、橈脚類養殖容器/タンクを濾過した海水で満たし、タンク中に藻類があれば、又はなければ幾つかを加え、定常状態レベルが達成されるまで成長させた。その後、野生の橈脚類の混合物をタンクに入れた。窒素濃度を観察、調節し、藻類のための最適な成長条件にした。
橈脚類の固体数はタンクに従い、アカルチア属の橈脚類の主な部分が成熟直前のサイズに達した場合、養殖物の塊を未熟な橈脚類を分けるように寸法付けられた最小2枚のスクリーンによってスクリーニング分類した。より大きな橈脚類はより大きなスクリーンによって捕らえられ得り、前記の捕らえられたものより小さな橈脚類は、望ましい橈脚類を引き止めるフィルタースクリーンを通過した。
その後、未熟な橈脚類の試料を分け、他のタンクに入れた。この時、タンクに入れられ
たアカルチア属の橈脚類は、同じ発育段階で入れられたものとほぼ同時に産卵を開始する。
この第二タンクからの第一バッチのナウプリウスがコペポディト段階まで成長し、未熟段階に達した場合、未熟な橈脚類群を、再度、分け、第三タンク中に蓄え得、橈脚類養殖をほぼ一掃し得た。
この第三世代タンクからの未熟な‘‘養殖動物化した’’橈脚類の第一塊から、第一橈脚類養殖タンクが蓄えられ得た。
この時点から、橈脚類の養殖は、次ぎの養殖タンクのために、最初の大きな産卵から未熟な橈脚類を常に選び抜くことによって調節され得る。更に、発生時間は、新しい橈脚類生産タンク中の第一バッチの最も早い成長固体を常に選択することによってかかる時間が短縮され得た。
成功を収めるために、藻類の量は、1L当りに乾燥質量で最小350myグラムに維持されるべきであり、水中の窒素含有量は、窒素15−40マイクログラムに対応し、かつ橈脚類は、定常状態バランスを維持するために過剰量を収穫することによって濃度を調節される。
【0042】
実施例2−コッドの稚魚の給餌
稚魚給餌タンクを海水で満たし、藻類の量を調整した。1日早く孵化したコットの稚魚をタンクに移し、給餌量及び藻類の量を上記に従った量に維持した。7日以前に、アンモニア量が0.02mgNH3(N)に近い量に達した場合、稚魚給餌タンク中のNH3の量を0.02mgNH3(N)より低く維持するために、
タンクをバイオフィルターシステムに接続し、個々のタンクからバイオフィルターシステムへの流れを徐々に増加させた。全生産段階を通して、酸素は80%ないし110%の飽和度に調整した。
稚魚が4、5ないし12mgのサイズに達した場合、乾燥給餌での乾燥質量給餌を開始し、そしてその直前又は直後に、それらを他のタンクへ移し、稚魚給餌タンクシステムから分けた。
【0043】
以下、本発明を、添付図面、図1を参照にして説明する。
図1は、本発明に従った水産養殖システムの概略図を示し、該水産養殖システム1は、−橈脚類養殖物を生産するための4つのタンク2、
−藻類養殖物を生産するための3つのタンク3、
−アルテミア及びクルマムシを加えるための分離システム5、6、
−稚魚が橈脚類及び藻類及び/又はアルテミア及びクルマムシを加えた海水中に保たれるところの4つの稚魚給餌タンク4
からなる。
稚魚給餌タンク4中の細菌安定性は、水をパイプシステム9によりバイオフィルター7を通して循環させることによって維持される。
様々なタンクシステムと稚魚給餌タンク4の間のパイプシステム8は、例えば、上部のタンク2aから全ての稚魚給餌タンク4に橈脚類を供給することを可能にし、これにより、橈脚類又は稚魚の成長サイクルにかかわらず、適当なサイズ/年齢の橈脚類を連続的に生産し、それらを特定のサイズ/年齢の稚魚に給餌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明に従った水産養殖システムの概略図を示す。
【符号の説明】
【0045】
1.水産養殖システム 2.橈脚類養殖物を生産するためのタンク 3.藻類養殖物を生産するためのタンク 4.稚魚給餌タンク 5,6.アルテミア及びクルマムシを加えるための分離システム 7.バイオフィルター 8.様々なタンクシステムと稚魚給餌タン
クの間のパイプシステム 9.パイプシステム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
橈脚類を含む海水魚給餌源の製造方法であって、該方法は、
−藻類の養殖物がタンク中の海水中で成長させられ、前記海水は、動物プランクトンの存在を実質的になくすために、50マイクロメートル以下まで濾過されること、
−前記橈脚類は、繁殖の準備ができており、そして前記タンク中に加えられること、
−前記藻類の養殖物の衰弱を防止するよう、前記藻類の養殖物の成長を維持するために、多数の栄養分が前記タンク中に加えられること、及び
−所望の定常状態レベルが達成された場合、過剰の前記橈脚類を収穫することにより前記橈脚類の密度を調節することによって及び/又は前記タンク中の窒素含有量を調節することによって、前記藻類の養殖物がバランスよく保たれること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記栄養分が、注入海水中に天然の窒素含有物の形態(アンモニア及び硝酸塩)で注入水を加えることによって加えられるか、又はいずれかの他の窒素が豊富な形態の液体又は粉末としてタンクに直接加えられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法によって得られる海水魚給餌源であって、
前記海水魚給餌源が配列された海水魚給餌源からなること、及び開始時に関して前記海水魚給餌源の各々が他の海水魚給餌源に対し分かれていることを特徴とする海水魚給餌源。
【請求項4】
稚魚を請求項3記載の海水魚給餌源で給餌するための方法であって、
−前記稚魚を、稚魚給餌タンク中に入れること、
−前記稚魚給餌タンク中に適当な密度の前記橈脚類を得るために、前記稚魚に対応するサイズ範囲の前記海水魚給餌源の前記橈脚類を前記稚魚給餌タンク中に加えること、
−前記藻類の養殖物の密度が、前記橈脚類のための最適な給餌条件を維持し、かつ藻類の幼生に関する必要条件を満たすために適当であることを確保するために、最初の給餌時前後に、前記藻類の養殖物が前記稚魚給餌タンク中に加えられること、
−前記稚魚給餌タンク中の前記水は、バイオフィルターシステムを通して前記稚魚給餌タンクから前記水を抜き、濾過水を前記稚魚給餌タンクへ戻すことによって濾過され、それによって、前記稚魚給餌タンクに新しい非病原性細菌が供給され、かつ毒性アンモニア生成物が前記稚魚給餌タンクから除去されること、及び
−前記稚魚給餌タンク中の酸素量が、80ないし110%の飽和度に維持されること、
を特徴とする方法。
【請求項5】
前記稚魚が、稚魚の段階において、脂肪酸22:6n−3を合成することができず、かつ700マイクロメートル未満の小さな生き餌動物に依存するところの魚種から選択されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記稚魚は、最小齢が孵化後1日で、最大質量が乾燥質量で約10mgであることを特徴
とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、更に、前記稚魚が、例えば、乾燥給餌等の更なる給餌が可能なサイズ及び/又は年齢である場合、乾燥給餌等の更なる給餌のために、前記稚魚を前記稚魚給餌タンクから取り除く更なる工程を更に含むことを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項8】
前記稚魚が、
:クロマグロ(Thunnus thynnus)、ミナミマグロ(Thunnus maccoyii)、キハダマグロ(Thunnus albacares)、メバチマグロ(Thunnus obesus)、コーラル トラウト(スジアラ(Plectro
pomous leopardus))、バラマンディ コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、エスチュアリー コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、アカマダラハタ(Epinephelus fuscoguttatus)、オオニベ(Argyrosomus japonicus)、シイラ(Coryphaena hippurus)、ヒラメ(Paralichthys olivaceus)、ヤスリハタ類(ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.))、フエダイ類(フエダイ属(Lutjanidos spp.)及びマダイ属(Pagrus spp.))、ハタ類(マハタ属(Epinephelus spp.)、スジアラ属(Plectropomus spp.)、ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.)及びハタ科(serranidae spp.))、サラサハタ(Cromileptes altevelis)、メガネモチノウオ(Cheilinus undulatus)、タラ(大西洋マダラ(Gadus Morhua))、キングフィッシュ(ブリ属(Seriola sp.);ヒラマサ(Seriola lalandi)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili))、ウナギ(ウナギ属(Anguilla sp);ウナギ(Anguilla japonica)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla))、ハリバット(オヒョウ属(Hippoglossus sp.);オヒョウ(Hippoglossus stenolepis)、ハリバット(Hippoglossus hippoglossus))、アジ(アジ科(Carangidae sp.))を含む魚種の群から選択されることを特徴とする、請求項4ないし7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項3記載の海水魚給餌源を使用することによって、養殖魚を生産するための水産養殖システムであって、前記海水魚給餌源は請求項1又は2の記載に従って得られ、前記稚魚は請求項4ないし8の記載に従って得られた前記海水魚給餌源で給餌され、前記システムは前記稚魚を含む多数の容器からなり、前記の容器の各々は稚魚を含み、前記の各容器中の水は、バイオフィルターシステムを通して前記容器から水を抜き、そして濾過水を1つ以上の前記容器へ戻すことによって濾過され、それによって、前記容器に新しい非病原性細菌が供給され、かつ毒性アンモニア生成物が前記容器から除去され、そして、特定の稚魚に給餌するために適当な成長段階及び/又はサイズに達した橈脚類が特定の稚魚容器中の前記稚魚に給餌されることを確保するために、橈脚類が前記特定の稚魚容器中の海水魚給餌として使用されるシステム。
【請求項10】
前記システムが、更に、クルマムシ及びアルテミアを加えるためのシステムを含むことを特徴とする請求項9記載の水産養殖システム。
【請求項11】
前記バイオフィルターは、1m3当り50m2以上の表面積を有し、従属栄養細菌及び硝化細菌からなる細菌フィルムが付着している媒体を前記水が通過できるように構成され、かつ前記バイオフィルターは、前記水が前記稚魚給餌タンクに再注入される前に、50マイクロメートルより大きいサイズの粒子を除去するためのスクリーンを備えることを特徴とする請求項9又は10記載の水産養殖システム。
【請求項12】
前記稚魚が、
:クロマグロ(Thunnus thynnus)、ミナミマグロ(Thunnus maccoyii)、キハダマグロ(Thunnus albacares)、メバチマグロ(Thunnus obesus)、コーラル トラウト(スジアラ(Plectropomous leopardus))、バラマンディ コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、エスチュアリー コッド(サラサハタ(Cromileptes altevelis))、アカマダラハタ(Epinephelus fuscoguttatus)、オオニベ(Argyrosomus japoni
cus)、シイラ(Coryphaena hippurus)、ヒラメ(Paralichthys olivaceus)、ヤスリハタ類(ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.))、フエダイ類(フエダイ属(Lutjanidos spp.)及びマダイ属(Pagrus spp.))、ハタ類(マハタ属(Epinephelus spp.)、スジアラ属(Plectropomus spp.)、ヤスリハタ属(Mycteroperca spp.)及びハタ科(serranidae spp.))、サラサハタ(Cromileptes altevelis)、メガネモチノウオ(Cheilinus undulatus)、タラ(大西洋マダラ(Gadus Morhua))、キングフィッシュ(ブリ属(Seriola sp.);ヒラマサ(Seriola lalandi)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili))、ウナギ(ウナギ属(Anguilla sp);ウナギ(Anguilla japonica)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla))、ハリバット(オヒョウ属(Hippoglossus sp.);オヒョウ(Hippoglossus stenolepis)、ハリバット(Hippoglossus hippoglossus))、アジ(アジ科(Carangidae sp.))を含む魚種の群から選択されることを特徴とする、請求項9ないし11の何れか1項に記載の水産養殖システム。



【図1】
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【公開番号】特開2007−44042(P2007−44042A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194668(P2006−194668)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(506272851)シェール アンド ウルップ ホールディング エーピーエス (1)
【Fターム(参考)】