説明

機械加工システム

【課題】 加工屑に起因して生じる被加工物の不具合を抑制しつつ、小型化が可能な構成を備えた機械加工システムを提供すること。
【解決手段】 機械加工システム1は、前面側で被加工物2に対して所定の加工を行う複数の工作機械3と、複数の工作機械3の相互間で被加工物2を搬送する搬送手段4とを備えている。搬送手段4は、複数の工作機械3の後面に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に対して所定の加工を行う工作機械が複数配置された機械加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被加工物に対して所定の加工を行う工作機械が隣接するように複数配置された機械加工システムが、自動車産業や精密機械産業等の様々な産業分野で用いられている。この機械加工システムでは、各工作機械での所定の加工工程を経て所定の部品が製造されるようになっている。また、この機械加工システムを構成する工作機械は、一般に、機械の前面側で被加工物の加工が行われるように構成されている。
【0003】
一般に、工作機械が複数配置される機械加工システムでは、被加工物の加工が行われる工作機械の前面側に、被加工物を搬送するための搬送ロボットが設けられている。そして、この搬送ロボットによって、前工程の加工を終えた被加工物が所定の工作機械の前面側に搬送されたり、加工後の被加工物がその工作機械から後工程の加工を行う工作機械へ搬送されるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された機械加工システムでは、工作機械の前面側での作業性や搬送ロボットの操作性等を考慮して、複数の工作機械の前面から所定距離だけ離れた位置に搬送ロボットを搬送方向へ案内するガイド路が設けられている。そして、被加工物を保持した搬送ロボットがガイド路に沿って移動して、各工作機械相互間で、被加工物を搬送するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−46917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作機械では、被加工物の加工時に切り粉等の加工屑が生じる。すなわち、被加工物の加工が行われる工作機械の前面側では、被加工物の加工時に加工屑が発生する。そのため、特許文献1に記載された機械加工システムのように工作機械の前面側に搬送ロボットが配設されると、搬送ロボットの移動や動作に伴って、細かい切り粉等の加工屑が飛散するおそれがある。前工程の加工を終えた被加工物が工作機械の前面側に搬送される際や後工程の加工を行う工作機械へ被加工物が搬送される際に加工屑が飛散すると、被加工物に加工屑が付着する。その結果、被加工物の加工時に加工屑に起因する傷が発生したり、加工屑の影響で所定の寸法精度が確保できないという不具合が生じる。
【0007】
また、特許文献1に記載された機械加工システムでは、複数の工作機械の前面から所定距離だけ離れた位置に搬送ロボットを搬送方向へ案内するガイド路が設けられている。この構成は、工作機械の前面側での作業性や搬送ロボットの操作性等を確保するために必要である。しかしながら、このような構成を備える特許文献1に記載された機械加工システムでは、システムの小型化に限界がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、加工屑に起因して生じる被加工物の不具合を抑制しつつ、小型化が可能な構成を備えた機械加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の機械加工システムは、前面側で被加工物に対して所定の加工を行う複数の工作機械と、複数の工作機械の後面に取り付けられ、各工作機械相互間で被加工物を搬送する搬送手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の機械加工システムでは、搬送手段が、複数の工作機械の後面に取り付けられている。そのため、工作機械の後面側において、各工作機械間で被加工物を搬送することができる。すなわち、被加工物の加工が行われない工作機械の後面側において、被加工物を搬送することができるため、加工屑に起因して生じる被加工物の不具合を抑制することができる。また、搬送手段が工作機械の後面に取り付けられているため、搬送手段が工作機械の後面から所定距離だけ離れた状態で配置されている場合と比較して、機械加工システムの後面側の省スペース化を図ることができるとともに、機械加工システムの前面側でも省スペース化を図ることができる。その結果、機械加工システムの小型化を図ることが可能となる。
【0011】
本発明において、搬送手段は、被加工物を保持して移動する搬送体と、搬送体を駆動する駆動手段と、搬送体を搬送方向へ案内する案内手段とを備え、搬送体は、複数の工作機械の相互間で乗り入れ可能に構成されていることが好ましい。このように構成すると、より少ない数の搬送体によって、被加工物の各工作機械間での搬送が可能となり、機械加工システムの構成を簡素化することができる。そのため、機械加工システムをより小型化することができる。
【0012】
本発明において、駆動手段は、複数の工作機械のそれぞれの後面に取り付けられる固定側駆動部と、搬送体に取り付けられる移動側駆動部とを備え、案内手段は、複数の工作機械のそれぞれの後面に取り付けられる固定側案内部と、搬送体に取り付けられる移動側案内部とを備え、複数の工作機械は互いに連結および切り離しが可能に構成され、固定側駆動部および固定側案内部は、工作機械とともに連結および切り離しが可能に構成されていることが好ましい。このように構成すると、各工作機械の自由な配置が可能となる。そのため、機械加工システムで製造される部品の種類や各加工工程での加工時間等を考慮して、各工作機械を自由に配置することが可能となる。また、複数の工作機械は互いに連結可能であり、かつ、固定側駆動部および固定側案内部も連結できるため、各工作機械同士の密着配置が可能となる。したがって、機械加工システムの省スペース化を図ることができる。
【0013】
本発明において、固定側案内部は直線状に形成されたガイドレールであり、移動側案内部はガイドレールと係合するガイドブロックであり、被加工物の搬送方向におけるガイドレールの両端には、被加工物の搬送方向へ傾斜する面取部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、複数の工作機械のそれぞれに取り付けられたガイドレールを連結する連結部分に、加工誤差や組立誤差に起因するガイドレール間のずれが生じても、面取部でこのずれを吸収することができ、ガイドレールの連結部であっても、ガイドブロックの滑らかな移動が可能となる。そのため、案内手段は、被加工物の搬送方向へ搬送体を滑らかに案内することができる。また、ガイドレールの面取部が形成されていない部分と、ガイドブロックとの係合隙間を適切に設定することで、工作機械と搬送体との間で被加工物のやりとりをする際の搬送体のがたつきを防止することができる。そのため、工作機械と搬送体との間では、被加工物の適切なやりとりができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明にかかる機械加工システムは、加工屑に起因して生じる被加工物の不具合を抑制しつつ、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(機械加工システムの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる機械加工システム1の概略構成を後面側から示す背面図である。
【0017】
本形態の機械加工システム1は、被加工物2に対して所定の加工を行って所定の部品を製造するためのシステムであり、図1に示すように、複数の工作機械3が隣接するように配置されて構成されている。より具体的には、図1に示すように、機械加工システム1では、複数の工作機械3がそれぞれの側面同士を密着させた状態で隣接するように配置されている。特に、本形態の機械加工システム1は、卓上に配置可能な小型の機械加工システムであり、たとえば、幅(図1の左右方向の寸法)300mm、奥行(図1の紙面垂直方向の寸法)660mm、高さ820mmの大きさからなる小型の工作機械3が複数隣接するように配置されて、機械加工システム1が構成されている。なお、機械加工システム1は、複数の工作機械3相互間の連結および切り離しが容易できるように構成されている。
【0018】
また、この機械加工システム1は、複数の工作機械3の相互間で被加工物2を搬送する搬送手段4を備えている。この搬送手段4は、図1に示すように、複数の工作機械3の後面に取り付けられている。
【0019】
なお、以下の説明では、工作機械3の左右方向(図1の左右方向)をX軸方向、前後方向を(図1の紙面垂直方向)をY軸方向、上下方向(図1の上下方向)をZ軸方向とし、特に、図1の紙面手前側に向かう方向をY1方向、図1の紙面奥側に向かう方向をY2方向とする。また、工作機械3のY1方向側を後面側、Y2方向側を前面側とする。
【0020】
(工作機械の構成)
図2は、図1に示す工作機械3の構成を一部透視した状態で側面から示す側面説明図である。図3は、図2のE−E方向から工作機械3の構成を一部透視した状態で示す正面説明図である。なお、図2および図3は、工作機械3の構成部材の位置関係を説明するための説明図であり、一定の断面を表した図面ではない。
【0021】
本形態の工作機械3は、図2に示すように、被加工物2に対して所定の加工を行う加工手段5を備え、前面側(Y2方向側)で被加工物2の加工を行うように構成されている。より具体的には、本形態の工作機械3は、複数の刃物6を有する加工手段5を用いて、被加工物2に対して旋削等を行う旋盤である。この工作機械3は、被加工物2を保持してX軸方向およびZ軸方向へ移動可能な移動ヘッド7と、加工手段5が載置されY軸方向へ移動可能なY軸移動テーブル8と、移動ヘッド7をZ軸方向へ移動可能に支持する支持手段としてのコラム9と、Y軸移動テーブル8やコラム9が取り付けられる本体ベース10とを備えている。そして、被加工物2を回転させた状態で、移動ヘッド7がX軸方向やZ軸方向へ移動することで、刃物6によって、被加工物2に所定の旋盤加工が施されるようになっている。また、後述のように、複数の刃物6はY軸方向に配列されており、Y軸移動テーブル8がY軸方向へ移動することで、被加工物2の加工に使用する刃物6を選択、設定できるようになっている。
【0022】
コラム9は、図2および図3に示すように、本体ベース10から垂直に立ち上がるように、本体ベース10の上面に固定されている。このコラム9の下端側には、図3等に示すように、Y軸方向へ貫通する通過口9aが形成されており、Y軸移動テーブル8は、この通過口9aを通過して、工作機械3の前面側と後面側との間を移動するようになっている。すなわち、通過口9aのX軸方向の幅は、Y軸移動テーブル8のX軸方向の幅よりも大きく形成されている。また、通過口9aのZ軸方向の高さは、Y軸移動テーブル8の上面に取り付けられた後述の受台35に被加工物2が搭載された状態で、Y軸移動テーブル8が通過できるような高さとなっている。
【0023】
図3に示すように、コラム9の前面のX軸方向の両端側にはそれぞれ、移動ヘッド7をZ軸方向へ案内するためのZ軸送り用ガイドレール12、12が固定されている。また、コラム9の前面側で、かつ、2本のZ軸送り用ガイドレール12、12のX軸方向の内側にはそれぞれ、移動ヘッド7をZ軸方向へ送るZ軸送り用ボールネジ13、13が配設されている。より具体的には、コラム9の前面側には、2本のZ軸送り用ボールネジ13、13のそれぞれの両端側を回転可能に支持する軸受(図示省略)が固定され、この軸受に2本のZ軸送り用ボールネジ13、13は、回転可能に支持されている。
【0024】
コラム9の上端には、2本のZ軸送り用ボールネジ13、13をそれぞれ回転駆動するZ軸送り用モータ14、14が固定されている。より具体的には、コラム9の上端には、2つの取付ブラケット15、15が固定され、この取付ブラケット15、15のそれぞれにZ軸送り用モータ14、14が固定されている。図2および図3に示すように、Z軸送り用モータ14、14の出力軸はそれぞれ、Z軸送り用ボールネジ13、13の上端にカップリング16、16を介して接続されている。
【0025】
移動ヘッド7は、被加工物2を回転可能に保持する回転保持部18と、回転保持部18が固定されX軸方向へ移動可能なX軸移動ベース19と、X軸移動ベース19がX軸方向へ移動可能に支持されるとともにZ軸方向へ移動可能なZ軸移動ベース20とを備えている。
【0026】
Z軸移動ベース20は、図2および図3に示すように、略矩形の板状部材である。このZ軸移動ベース20の後面(Y1方向側の面)には、2本のZ軸送り用ボールネジ13、13にそれぞれ螺合するZ軸送り用ナット21、21を保持するナット保持部20a、20aが形成されている。なお、図2では、1つのZ軸送り用ナット21および1つのナット保持部20aが図示されている。
【0027】
また、Z軸移動ベース20の後面の四隅にはそれぞれ、Z軸送り用ガイドレール12、12と係合するZ軸送り用ガイドブロック22が固定されている。より具体的には、1本のZ軸送り用ガイドレール12に対して2個のZ軸送り用ガイドブロック22が係合するようになっており、Z軸移動ベース20の後面には、合計で4個のZ軸送り用ガイドブロック22が固定されている。
【0028】
一方、Z軸移動ベース20の前面(Y2方向側の面)には、回転保持部18およびX軸移動ベース19をX軸方向へ案内するための2本のX軸送り用ガイドレール23、23が固定されている。また、Z軸移動ベース20の前面には、回転保持部18およびX軸移動ベース19をX軸方向へ送るX軸送り用ボールネジ24が、2本のX軸送り用ガイドレール23、23に挟まれるように配設されている。より具体的には、Z軸移動ベース20の前面側には、X軸送り用ボールネジ24の両端側を回転可能に支持する軸受(図示省略)が固定され、この軸受にX軸送り用ボールネジ24は、回転可能に支持されている。
【0029】
さらに、Z軸移動ベース20の前面には、図2に示すように、X軸送り用ボールネジ24を回転駆動するX軸送り用モータ25が固定されるモータ固定部20bが形成され、このモータ固定部20bに、X軸送り用モータ25が固定されている。X軸送り用モータ25の出力軸は、X軸送り用ボールネジ24のY1方向端に図示を省略するカップリングを介して接続されている。
【0030】
X軸移動ベース19は、図2および図3に示すように、略矩形の板状部材であり、その後面(Y1方向側の面)には、X軸送り用ボールネジ24に螺合するX軸送り用ナット(図示省略)を保持するナット保持部(図示省略)が形成されている。また、X軸移動ベース19の後面の四隅には、X軸送り用ガイドレール23、23と係合するX軸送り用ガイドブロック26が固定されている。より具体的には、1本のX軸送り用ガイドレール23に対して2個のX軸送り用ガイドブロック26が係合するようになっており、X軸移動ベース19の後面には、合計で4個のX軸送り用ガイドブロック26が固定されている。
【0031】
回転保持部18は、被加工物2を保持した状態で回転するスピンドル28と、スピンドル28を回転駆動するスピンドル駆動モータ29とを備えている。
【0032】
スピンドル28は、その先端側(下端側)で被加工物2を保持するように構成されている。このスピンドル28には、被加工物2を保持、解放するためのチャッキング機構30が内蔵されている。このチャッキング機構30は、回転保持部18の上端に固定されたチャック開閉用シリンダ31によって、被加工物2を保持する保持状態、および、被加工物2を解放する解放状態の両状態に駆動されるようになっている。
【0033】
スピンドル駆動モータ29は、ロータ32とステータ33とを備え、図2等に示すように、回転保持部18の上端側に配設されている。より具体的には、ステータ33がX軸送り用ボールネジ24やX軸送り用モータ25よりも上側に配置されるように、スピンドル駆動モータ29が配設されている。このように、比較的大きな径で形成されるステータ33をX軸送り用ボールネジ24やX軸送り用モータ25よりも上側に配置することで、Y軸方向で回転保持部18の薄型化が図れるようになっている。
【0034】
本形態のスピンドル駆動モータ29は、ロータ32の内周側にスピンドル28が固定されたいわゆるビルドインモータである。このスピンドル駆動モータ29には、所定の冷却媒体が循環する冷却用のジャケット34がステータ33の回りを囲むように形成されている。ジャケット34を循環する冷却媒体は、図示を省略する冷却媒体用のタンクとジャケット34とを往復してスピンドル駆動モータ29の内部で発生した熱を放散するようになっている。
【0035】
(Y軸移動テーブルの構成)
図4は、図2に示すY軸移動テーブル8を上面から示す平面図である。
【0036】
Y軸移動テーブル8は、図2および図3に示すように、略直方体のブロック状に形成されている。また、Y軸移動テーブル8には、図4に示すように、被加工物2の加工時に生じる切り粉等の加工屑を落下させるため、Z軸方向に貫通する矩形状の開口部8bが形成されている。このY軸移動テーブル8の上面には、上述の加工手段5に加え、図2等に示すように、被加工物2が搭載される直方体でブロック状の受台35が取り付けられている。そして、Y軸移動テーブル8は、図2に示すように、コラム9の下端側に形成された通過口9aを通過して、被加工物2の加工が行われる工作機械3の前面側と、工作機械3の後面側との間で、受台35に搭載された被加工物2を移動させるようになっている。すなわち、Y軸移動テーブル8は、被加工物2の加工を行う前面側位置と、被加工物2が工作機械3の後面側に配置されることとなる後面側位置との間で、被加工物2を移動させる移動手段となっている。このY軸移動テーブル8は、Y軸方向へ移動可能となるように、本体ベース10の上面に取り付けられている。
【0037】
本体ベース10の上面には、図3に示すように、Y軸移動テーブル8をY軸方向へ案内するための2本のY軸送り用ガイドレール36、36が固定されている。2本のY軸送り用ガイドレール36、36は、この2本のY軸送り用ガイドレール36、36にそれぞれ係合する後述のY軸送り用ガイドブロック42、42が開口部8bのX軸方向両側に配置されるように、X軸方向に離間した状態で、本体ベース10の上面に固定されている。
【0038】
また、本体ベース10の上面には、図2に示すように、Y軸移動テーブル8をY軸方向へ送る2本のY軸送り用ボールネジ37、37(図2では、1本のY軸送り用ボールネジ37のみを図示)が配設されている。このY軸送り用ボールネジ37、37は、X軸方向では、2本のY軸送り用ガイドレール36、36のそれぞれの外側に1本ずつ配設されている。より具体的には、本体ベース10の上面には、2本のY軸送り用ボールネジ37、37のそれぞれの両端側を回転可能に支持する合計4つの軸受38(図2では、2つの軸受38のみを図示)が、所定の取付ブラケット等を介して固定されている。そして、2本のY軸送り用ボールネジ37、37はそれぞれ、2つの軸受38に回転可能に支持されている。なお、本形態では、Y軸移動テーブル8に、加工屑を落下させる開口部8bを形成したため、2本のY軸送り用ボールネジ37、37を用いているが、開口部8bを形成しない場合には、1本のY軸送り用ボールネジ37を、Y軸移動テーブル8のX軸方向の中心位置に配設しても良い。
【0039】
さらに、本体ベース10の上端には、図2および図3に示すように、2本のY軸送り用ボールネジ37、37をそれぞれ回転駆動するY軸送り用モータ39、39が固定されている。より具体的には、本体ベース10の上端で、かつ、Y2方向端に、所定の取付ブラケットを介して、Y軸送り用モータ39、39が固定されている。Y軸送り用モータ39、39の出力軸はそれぞれ、図2に示すように、Y軸送り用ボールネジ37、37のY2方向端にカップリング40、40(図2では、1つのカップリング40のみを図示)を介して接続されている。
【0040】
Y軸移動テーブル8の底面には、図2に示すように、2本のY軸送り用ボールネジ37、37にそれぞれ螺合するY軸送り用ナット41、41(図2では、1つのY軸送り用ナット41のみを図示)を保持するナット保持部8a、8a(図2では、1つのナット保持部8aのみを図示)が形成されている。
【0041】
また、Y軸移動テーブル8の底面の四隅にはそれぞれ、Y軸送り用ガイドレール36、36と係合するY軸送り用ガイドブロック42が固定されている。より具体的には、1本のY軸送り用ガイドレー36に対して2個のZ軸送り用ガイドブロック42が係合するようになっており、Y軸移動テーブル8の底面には、合計で4個のY軸送り用ガイドブロック42が固定されている。なお、図3では、Y2方向側の2個のY軸送り用ガイドブロック42のみが図示されている。
【0042】
一方、Y軸移動テーブル8の上面には、上述のように、加工手段5および受台35が取り付けられている。より具体的には、図4に示す開口部8bの下側に加工手段5が取り付けられ、開口部8bの上側に受台35が取り付けられている。
【0043】
加工手段5は、複数の刃物6の他に、刃物6を固定する刃物固定台44と、刃物6を刃物固定台44に固定する固定ネジ45とを備えている。本形態では、図2等に示すように、3本の刃物6がY軸方向に配列されている。すなわち、本形態の刃物固定台44では、刃物取付部がY軸方向に並んだ状態で3箇所に形成されている。また、各刃物6は、3本の固定ネジ45によって刃物固定台44に固定されている。なお、刃物6の数は3本には限定されず、刃物6は2本以下であっても良いし、4本以上であっても良い。刃物6の数が多く、図4の開口部8bの下側に全ての刃物6を配置できない場合には、図4の開口部8bの上側に、受台35に隣接する刃物固定台を別途設け、この刃物固定台に刃物6を固定するようにしても良い。
【0044】
刃物固定台44に固定された刃物6の先端は、図4に示すように、開口部8bの上方に配置されるようになっている。そして、被加工物2の加工時に生じる切り粉等の加工屑は、開口部8bを通過して本体ベース10の下方まで落下するようになっている。より具体的には、図2および図3に示すように、本体ベース10には、被加工物2の加工時に開口部8bが配置される位置に対応するように開口部10aが形成されており、加工屑は、被加工物2の旋盤加工時に使用する切削油とともに、この開口部10aを通過して本体ベース10の下方まで落下するようになっている。また、本形態では、被加工物2の加工時に生じる加工屑は、図3の矢印Vに示すように、切削油とともにY軸移動テーブル8のX軸方向の両側方を通過し、さらに、開口部10aを通過して本体ベース10の下方まで落下するようになっている。
【0045】
なお、たとえば、本体ベース10の下側に、被加工物2の旋盤加工時に使用する切削油用のタンクを配置して、このタンクに加工屑を回収するように構成することができる。また、このタンクの底面に堆積した加工屑は、コンベア等を使用して所定のバケットまで搬送することでタンクの底面から除去することも可能である。さらに、切削油タンクの下には、工作機械3を駆動、制御するための電装ボックスを配置しても良い。
【0046】
Y軸移動テーブル8のY軸方向両側には、図2等に示すように、Y軸送り用ガイドレール36やY軸送り用ボールネジ37等のY軸移動テーブル8をY軸方向へ送るための各種の機構を保護するためのテレスコカバー46、47が取り付けられている。より具体的には、Y軸移動テーブル8のY2方向に取り付けられるテレスコカバー46のY1方向端は、Y軸移動テーブル8に固定され、テレスコカバー46のY2方向端は、本体ベース10に固定されている。また、Y軸移動テーブル8のY1方向に取り付けられるテレスコカバー47のY2方向端は、Y軸移動テーブル8に固定され、テレスコカバー47のY1方向端は、本体ベース10に固定されている。そして、Y軸移動テーブル8が工作機械3の前面側にあるときには、図2に示すように、テレスコカバー46が縮み、テレスコカバー47が伸びた状態になる。一方、Y軸移動テーブル8が工作機械3の後面側にあるときには、テレスコカバー47が縮み、テレスコカバー46が伸びた状態になる。
【0047】
(搬送手段の構成)
図5は、図2のF−F方向から搬送手段4の構成を一部透視した状態で示す背面説明図である。図6は、図5のG−G方向から搬送手段4の構成を一部透視した状態で示す上面説明図である。図7は、図5に示す搬送体50が被加工物2を搬送する時の状態を示し、(A)は、工作機械3の側面から搬送手段4の構成を一部透視した状態で示す側面説明図、(B)は、図2のF−F方向から搬送手段4の構成を一部透視した状態で示す背面説明図である。図8は、図1のH部を拡大して示す拡大図である。なお、図5から図7は、搬送手段4の構成部材の位置関係を説明するための説明図であり、一定の断面を表した図面ではない。
【0048】
搬送手段4は、Y軸移動テーブル8上の受台35に搭載され工作機械3の後面(背面)側まで移動した被加工物2を受台35から取り上げて、機械加工システム1を構成する他の工作機械3まで搬送するための手段である。この搬送手段4は、図5や図6等に示すように、被加工物2を保持して移動する搬送体50を備えている。搬送体50は、被加工物2を保持するハンド部51と、ハンド部51が固定されZ軸方向へ昇降可能に構成された昇降ベース52と、昇降ベース52が昇降可能に支持されるとともにX軸方向へ移動可能に構成された搬送ベース53とを備えている。本形態では、たとえば、1台の搬送体50が、機械加工システム1を構成する全ての工作機械3へ被加工物2を搬送できるようになっている。
【0049】
図1に示すように、複数の工作機械3のそれぞれの後面には、被加工物2の搬送方向となるX軸方向へ搬送体50を案内するための2本の搬送用ガイドレール54、54が固定されている。より具体的には、図2に示すように、コラム9の後面に2本の搬送用ガイドレール54、54が固定されている。直線状に形成された搬送用ガイドレール54の両端の上面および下面には、図8に示すように、X軸方向の外側に向かって直線状に傾斜する面取部54aが形成されている。この搬送用ガイドレール54、54は、搬送手段4の一部を構成するとともに、被加工物2の搬送方向へ搬送体50を案内するための固定側案内部となっている。なお、面取部54aは、搬送用ガイドレール54の両端の上面にのみ形成されていても良いし、下面にのみ形成されていても良い。
【0050】
また、複数の工作機械3のそれぞれの後面(背面)には、被加工物2の搬送方向となるX軸方向へ搬送体50を駆動するための搬送用ラック55が固定されている。より具体的には、図2に示すように、コラム9の後面に搬送用ラック55が固定されている。搬送用ラック55の上面には、後述の搬送用ピニオン56が噛み合う歯が形成されている。また、搬送用ラック55の両端の上面は、図8に示すように、X軸方向外側に向かって直線状に傾斜した傾斜部55aとなっている。そのため、複数の工作機械3のそれぞれに取り付けられた搬送用ラック55を連結する連結部分に、加工誤差や組立誤差に起因するZ軸方向のずれが生じても、搬送用ピニオン56は、搬送用ラック55の連結部分を適切に通過できるようになっている。この搬送用ラック55は、搬送手段4の一部を構成するとともに、搬送体50を駆動するための固定側駆動部となっている。なお、図6では、便宜上、搬送用ラック55の図示を省略している。
【0051】
複数の工作機械3のそれぞれに固定された搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55は、工作機械3とともにX軸方向で容易に連結できるように構成されている。より具体的には、搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55が工作機械3に固定されると、搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55のX軸方向の両端は、図8に示すように、工作機械3のX軸方向の両端よりもわずかに内側に入った位置に配置される。また、複数の工作機械3を連結すると、図8に示すように、隣接する工作機械3に固定された搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55のX軸方向の端部(すなわち、連結部分)は互いに、Z軸方向でほぼ一致するようになっている。そのため、搬送体50は、連結された複数の工作機械3の相互間で自由に乗り入れできるようになっている。また、工作機械3を切り離すことで、搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55も容易に切り離すことができるようになっている。
【0052】
搬送ベース53は、図5や図6等に示すように横辺部53aと縦辺部53bとを備えるL形状の板状部材である。図5等に示すように、上端側に配置される横辺部53aのY1方向側に面には、搬送用ラック55と噛み合う搬送用ピニオン56が出力軸に取り付けられた搬送用モータ57が固定されている。すなわち、搬送用モータ57の本体部分が搬送ベース53のY1方向側に配置され、搬送用ピニオン56が搬送ベース53のY2方向側に配置されるように、搬送用モータ57が固定されている。本形態では、搬送用ピニオン56および搬送用モータ57は、搬送体50を駆動するための移動側駆動部となっている。また、搬送用ラック55と搬送用ピニオン56と搬送用モータ57とによって、搬送体50を駆動する駆動手段が構成されている。
【0053】
縦辺部53bのY2方向側の面には、2本の搬送用ガイドレール54、54にそれぞれ係合する搬送用ガイドブロック58、58が固定されている。搬送用ガイドブロック58は、搬送用ガイドレール54の面取部54aが形成されていない部分と適切な係合隙間を保った状態で、搬送用ガイドレール54に係合するように構成されている。すなわち、本形態の搬送手段4は、搬送体50が、受台35に被加工物2を載置する位置、あるいは、受台35から被加工物2を取り上げる位置に配置されたときには、搬送用ガイドレール54と搬送用ガイドブロック58との係合部の係合隙間は適切なものとなり、搬送体50が、隣接する搬送用ガイドレール54の端部(連結部分)に配置されたときには、搬送用ガイドレール54と搬送用ガイドブロック58との係合部の係合隙間が大きくなるように構成されている。この搬送用ガイドブロック58、58は、被加工物2の搬送方向へ搬送体50を案内するための移動側案内部となっている。本形態では、搬送用ガイドレール54、54と搬送用ガイドブロック58、58とによって、搬送体50を搬送方向へ案内するための案内手段が構成されている。
【0054】
また、縦辺部53bのY1方向側の面には、昇降ベース52をZ軸方向へ案内するための昇降用ガイドレール59が取り付けられている。
【0055】
図5における搬送ベース53の左側面には、昇降ベース52をZ軸方向へ駆動するための昇降用ラック60が固定されている。昇降用ラック60の図5における左側面には、後述の昇降用ピニオン62が噛み合う歯が形成されている。
【0056】
昇降ベース52は、図5や図6等に示すように横辺部52aと縦辺部52bとを備えるL形状の板状部材である。図5等に示すように、上端側に配置される横辺部52aのY1方向側に面には、昇降用ラック60と噛み合う昇降用ピニオン62が出力軸に取り付けられた昇降用モータ63が固定されている。すなわち、搬送用モータ57と同様に、昇降用モータ63の本体部分が昇降ベース52のY1方向側に配置され、昇降用ピニオン62が昇降ベース52のY2方向側に配置されるように、昇降用モータ63が固定されている。また、縦辺部52bのY2方向側の面には、昇降用ガイドレール59に係合する2つの昇降用ガイドブロック64、64が固定されている。
【0057】
ハンド部51は、図2や図5等に示すように、昇降ベース52に固定されるブロック状の固定部65と、被加工物2を保持、解放するチャック部66とを備えている。固定部65は、昇降ベース52の下端側に固定されている。チャック部66は、固定部65の下面に取り付けられており、図示を省略する駆動手段によって、被加工物2の上端側を保持し、また、保持した被加工物2の上端側を解放するように構成されている。
【0058】
図2および図5に示す状態は、昇降ベース52が下降して、Y軸移動テーブル8上の受台35から被加工物2を取り上げるときの状態である。また、図7に示す状態は、チャック部66に被加工物2を保持しながら昇降ベース52が上昇して、機械加工システム1を構成する他の工作機械3へ被加工物2を搬送するときの状態である。
【0059】
(機械加工システムの概略動作)
以上のように構成された機械加工システム1の概略動作を以下に説明する。なお、以下では、図1の左側に配置された工作機械3、中央に配置された工作機械3、右側に配置された工作機械3の順番で、順次、被加工物2の加工が行われるものとして、機械加工システム1の概略動作を説明する。
【0060】
図1の左側に配置された工作機械3で被加工物2の加工が終了すると、被加工物2は、Y軸移動テーブル8の受台35に搭載される。より具体的には、被加工物2の下面が受台35の上面に当接するように、Y軸移動テーブル8がY軸方向へ移動するとともに、移動ヘッド7がX軸方向およびZ軸方向に移動する。その状態で、スピンドル28のチャッキング機構30が解放状態となって、被加工物2が受台35に搭載される。
【0061】
被加工物2が受台35に搭載されると、Y軸移動テーブル8は、図2の実線で示す前面側から図2の二点鎖線で示す後面側位置まで移動する。すなわち、受台35に搭載された被加工物2は、コラム9の通過口9aを通過して工作機械3の後面側まで移動する。より具体的には、Y軸移動テーブル8は、被加工物2を搭載した受台35が通過口9aを完全に通過するまで、工作機械3の後面側に向かって移動する。
【0062】
その後、工作機械3の後面側まで移動した被加工物2を受台35から搬送体50が取り上げる。より具体的には、図2および図5に示すように、昇降ベース52が下降して、チャック部66が被加工物2を保持した後、昇降ベース52が上昇することで、搬送体50が受台35から被加工物2を取り上げる。昇降ベース52が上昇した搬送体50は、図7に示すような状態となる。なお、搬送体50が被加工物2を取り上げる際には、搬送体50は、予め、図1の左側に配置された工作機械3の後面まで移動している。
【0063】
搬送体50が被加工物2を取り上げると、搬送用モータ57が駆動され搬送用ラック55と搬送用ピニオン56とによって、搬送体50はX軸方向(図1では右側)へ移動する。搬送体50は、搬送用ガイドレール54、54に案内されてX軸方向へ移動して、図1に示すように、中央の工作機械3に乗り入れる。そして、搬送体50は、中央の工作機械3の受台35に被加工物2を搭載できる位置で停止する。一方、中央の工作機械3では、Y軸移動テーブル8が予め、図2の二点鎖線で示す後面側まで移動して停止している。その状態で、昇降ベース52が下降するとともに、チャック部66が被加工物2を解放して、被加工物2が受台35上に載置される。
【0064】
被加工物2が受台35上に載置されると、Y軸移動テーブル8が工作機械3の前面側に移動して、スピンドル28が被加工物2を保持できる位置でY軸移動テーブル8が停止する。その後、移動ヘッド7がX軸方向およびZ軸方向に移動するとともに、スピンドル28のチャッキング機構30が被加工物2を保持して、受台35から被加工物2を取り上げる。その後、Y軸移動テーブル8が所定距離だけ移動、停止することで、複数の刃物6の中から被加工物2の加工に使われる刃物6が選択、設定される。
【0065】
刃物6が設定されると、スピンドル28が回転しながら、移動ヘッド7がX軸方向およびZ軸方向に移動して被加工物2の加工が行われる(図3参照)。ここで、最初に設定された刃物6と違う刃物6を使用してさらに、被加工物2の加工を行う場合には、Y軸移動テーブル8がY軸方向へ所定距離だけ移動、停止して別の刃物6が選択、設定され、被加工物2の加工が継続される。そして、被加工物2の加工が終了すると、図1の左側に配置された工作機械3と同様の動作で、被加工物2がY軸移動テーブル8の受台35に搭載される。
【0066】
被加工物2が受台35に搭載されると、Y軸移動テーブル8は、図2の実線で示す前面側から図2の二点鎖線で示す後面側位置まで移動する。その後、搬送体50は、受台35から被加工物2を取り上げて、図1の右側に配置された工作機械3まで被加工物2を搬送する。図1の右側に配置された工作機械3でも同様の動作で、被加工物2の加工が行われる。
【0067】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の機械加工システム1では、搬送手段4が、複数の工作機械3の後面に取り付けられている。そのため、工作機械3の後面側において、各工作機械3間で被加工物2を搬送することができる。すなわち、被加工物2の加工が行われない工作機械3の後面側において、被加工物2を搬送することができるため、加工屑に起因して生じる被加工物2の不具合を抑制することができる。また、搬送手段4が工作機械3の後面に直接、取り付けられているため、機械加工システム1の後面側の省スペース化を図ることができるとともに、機械加工システム1の前面側でも省スペース化を図ることができる。その結果、機械加工システム1の小型化を図ることが可能となる。
【0068】
本形態では、搬送体50は、複数の工作機械3の相互間で乗り入れ可能に構成されている。そのため、少ない数の搬送体50(たとえば、1台の搬送体50)によって、被加工物2を各工作機械3へ搬送することができ、機械加工システム1の構成を簡素化することができる。したがって、機械加工システム1をより小型化することができる。
【0069】
本形態では、複数の工作機械3は互いに連結および切り離しが可能に構成され、搬送用ガイドレール54、54および搬送用ラック55は、工作機械3とともに連結および切り離しが可能に構成されている。そのため、各工作機械3の自由な配置が可能となる。したがって、機械加工システム1で製造される部品の種類や各加工工程での加工時間等を考慮して、各工作機械3を自由に配置することができる。また、各工作機械3の側面を密着させた状態で、各工作機械3を配置することができる。その結果、機械加工システム1の省スペース化を図ることができる。
【0070】
本形態では、搬送用ガイドレール54の両端には、X軸方向へ傾斜する面取部54aが形成されている。すなわち、搬送体50が、隣接する搬送用ガイドレール54の連結部分に配置されたときには、搬送用ガイドレール54と搬送用ガイドブロック58との係合部の係合隙間が大きくなるように構成されている。そのため、複数の工作機械3のそれぞれに取り付けられた搬送用ガイドレール54を連結する連結部分に、加工誤差や組立誤差に起因するZ軸方向のずれが生じても、面取部54aでこのずれを吸収することができる。たとえば、搬送用ガイドレール54の連結部分に図8の二点鎖線で示すようなずれが生じても、面取部54aにおける搬送用ガイドレール54と搬送用ガイドブロック58との係合部の係合隙間が大きいため、搬送用ガイドブロック58は、一方の搬送用ガイドレール54から他方の搬送用ガイドレール54へと乗り継ぐことができる。したがって、搬送用ガイドレール54の連結部分であっても、搬送用ガイドブロック58の滑らかな移動が可能となる。その結果、搬送用ガイドレール54と搬送用ガイドブロック58とによって構成される案内手段によって、被加工物2の搬送方向へ搬送体50を滑らかに案内することができる。
【0071】
また、搬送用ガイドレール54の面取部54aが形成されていない部分と、搬送用ガイドブロック58との係合隙間が適切に設定されているため、搬送体50が、受台35に被加工物2を載置する際、あるいは、受台35から被加工物2を取り上げる際の搬送体50のがたつきを防止することができる。そのため、受台35と搬送体50との間では、被加工物2を適切にやりとりすることができる。
【0072】
[他の実施の形態]
上述した形態は、本発明の好適な形態の例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形可能である。たとえば、上述した形態では、工作機械3は、被加工物2に対して旋削等を行う旋盤であったが、工作機械3は旋盤には限定されず、マシニングセンタであっても良い。この場合には、図9に示すような複数の工具71を保持する工具ホルダ72を備えた自動工具交換装置を工作機械3に配設すれば良い。工作機械3がマシニングセンタである場合には、チャッキング機構30によってスピンドル28の先端(下端)に工具71が保持されるともに、Y軸移動テーブル8上に被加工物2が載置される。また、この場合には、工具71が被加工部2に対して加工を行う加工手段となる。なお、図9では、2つの工具71を図示しているが、実際には2つ以上の工具71が工具ホルダ72に保持されている。また、マシニングセンタにおいては、通常、工具ホルダ72は図示を省略する駆動機構によって回転かつ移動可能となっている。
【0073】
また、上述した形態では、搬送用ラック55と搬送用ピニオン56と搬送用モータ57とから構成される駆動手段によって搬送体50を駆動していたが、搬送体50を駆動する駆動手段は、リニアモータであっても良い。また、ボールネジとこのボールネジに螺合するナットとによって搬送体50を駆動する駆動手段を構成しても良い。
【0074】
さらに、上述した形態では、1台の搬送体50が、機械加工システム1を構成する全ての工作機械3へ被加工物2を搬送できるように構成されていたが、搬送体50の台数は1台には限定されず、機械加工システム1が2台以上の搬送体50を備えるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態にかかる機械加工システムの概略構成を後面側から示す背面図である。
【図2】図1に示す工作機械の構成を一部透視した状態で側面から示す側面説明図である。
【図3】図2のE−E方向から工作機械の構成を一部透視した状態で示す正面説明図である。
【図4】図2に示すY軸移動テーブルを上面から示す平面図である。
【図5】図2のF−F方向から搬送手段の構成を一部透視した状態で示す背面説明図である。
【図6】図5のG−G方向から搬送手段の構成を一部透視した状態で示す上面説明図である。
【図7】図5に示す搬送体が被加工物を搬送する時の状態を示し、(A)は、工作機械の側面から搬送手段の構成を一部透視した状態で示す側面説明図、(B)は、図2のF−F方向から搬送手段の構成を一部透視した状態で示す背面説明図である。
【図8】図1のH部を拡大して示す拡大図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる工作機械に用いられる工具ホルダを示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 機械加工システム
2 被加工物
3 工作機械
4 搬送手段
50 搬送体
54 搬送用ガイドレール(ガイドレール、固定側案内部、案内手段の一部)
54a 面取部
55 搬送用ラック(固定側駆動部、駆動手段の一部)
56 搬送用ピニオン(移動側駆動部の一部、駆動手段の一部)
57 搬送用モータ(移動側駆動部の一部、駆動手段の一部)
58 搬送用ガイドブロック(ガイドブロック、移動側案内部、案内手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側で被加工物に対して所定の加工を行う複数の工作機械と、該複数の工作機械の後面に取り付けられ、各工作機械相互間で上記被加工物を搬送する搬送手段とを備えることを特徴とする機械加工システム。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記被加工物を保持して移動する搬送体と、該搬送体を駆動する駆動手段と、上記搬送体を搬送方向へ案内する案内手段とを備え、
上記搬送体は、前記複数の工作機械の相互間で乗り入れ可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の機械加工システム。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記複数の工作機械のそれぞれの後面に取り付けられる固定側駆動部と、前記搬送体に取り付けられる移動側駆動部とを備え、
前記案内手段は、前記複数の工作機械のそれぞれの後面に取り付けられる固定側案内部と、前記搬送体に取り付けられる移動側案内部とを備え、
前記複数の工作機械は互いに連結および切り離しが可能に構成され、
上記固定側駆動部および上記固定側案内部は、前記工作機械とともに連結および切り離しが可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の機械加工システム。
【請求項4】
前記固定側案内部は直線状に形成されたガイドレールであり、前記移動側案内部は上記ガイドレールと係合するガイドブロックであり、
前記被加工物の搬送方向における上記ガイドレールの両端には、前記被加工物の搬送方向へ傾斜する面取部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の機械加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−943(P2007−943A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181058(P2005−181058)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(591181861)東洋精機工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】