説明

機械式駐車装置における作業装置とその作業方法

【課題】 駐車棚や内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等の塔内作業を安定して行える作業装置を提供すること。
【解決手段】 駐車装置の鉄骨塔構造体2を組立て、この鉄骨塔構造体2の昇降路10を挟んで鉛直方向に備えた複数階の駐車棚7にパレット9を載置した後、各駐車棚7位置に作業スペースを形成する機械式駐車装置の作業装置48に、前記昇降路10の上部に固定してこの昇降路10に沿って昇降するゴンドラ20と、このゴンドラ20を昇降させる昇降駆動機36と、このゴンドラ20を各駐車棚7位置に着床させる着床装置27とを備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械式駐車装置、特にエレベータ式駐車装置において、ゴンドラを使用して建設途中の塔内作業を行う作業装置とその作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ式駐車装置等の機械式駐車装置を新設する場合、まず、トラス構造の鉄骨塔構造体(鉄骨主柱、梁、ブレース、主棚柱、副棚柱、銅縁及び外装等)が重機を用いて組立てられて据付けられる。この時、鉄骨塔構造体の中央部に形成された昇降路を挟んで左右両側の鉛直方向に複数階の駐車棚が形成される。その後、各階層の駐車棚に棚レールが設けられるとともに、その棚レールに重機を用いて全パレットが移動規制状態で載置される。さらに、この段階で、鉄骨塔構造体の最上部に形成された機械室に昇降駆動部の各機器(モータ・ブレーキ、駆動シーブ、転向シーブ、プーリ等)が配設される。
【0003】
この段階における作業や、その後の駐車棚への内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等の各種塔内作業は、作業用ゴンドラを塔内で昇降させて使用する方法が多く採用されている。
【0004】
この種の作業用ゴンドラに関する従来技術として、例えば、格納塔の下から上へと順番に外枠部を組み上げて外枠を完成させた後、その外枠の上から下へと昇降路に沿って作業台を下降させつつ、その作業台を足場にして下方に向けて順番に昇降路の両側に複数段の棚桟部を形成して行くようにした昇降式格納塔の建設方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来技術として、エレベータ式駐車装置塔内に組立式ゴンドラを折り畳んで横行可能に設置しておき、メンテナンス等の作業時にこの組立式ゴンドラをエレベータに移載し、折り畳み式手摺を組立てた後、工具等を積み込んで作業車が安全にエレベータ式駐車装置内の昇降ができ、かつ、作業が容易にできるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2978014号公報(第3−4頁、図7−13)
【特許文献2】特許第3617740号公報(第3−4頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1は、エレベータ式駐車装置の駐車棚等を組立てるための方法であり、その後の塔内作業を安定して行えるようにするための記載はない。また、前記特許文献2は、エレベータ式駐車装置におけるメンテナンスを目的としたものであり、エレベータ式駐車装置が完成した後での塔内作業に用いるもので、駐車装置を新設する建設途中段階における駐車棚への内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等に適したものではない。
【0007】
ところで、前記作業用ゴンドラで塔内作業を行う場合、エレベータ搬器、昇降用ワイヤロープ、カウンタウエイト等を設置した後では塔内スペースが限られてしまうため、これらが設置されていない段階の塔内スペースを確保できる状態での作業が好ましい。つまり、前記鉄骨塔構造体を組立て、昇降路を挟んで左右両側に形成される各階層の棚レールに全パレットを載置し、機械室に昇降駆動部の各機器を配設した建設途中段階で、未だエレベータ、昇降用ワイヤロープ、カウンタウエイト等が設置されていない状態の塔内に広いスペースを確保できる状態での作業が好ましい。
【0008】
そこで、本発明は、駐車棚や内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等の塔内作業を広いスペースで安定して行える作業装置と、その作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の機械式駐車装置における作業装置は、駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで鉛直方向に備えた複数階の駐車棚にパレットを載置した後、各駐車棚位置に作業スペースを形成する機械式駐車装置の作業装置であって、前記昇降路の上部に固定して該昇降路に沿って昇降するゴンドラと、該ゴンドラを昇降させる昇降駆動機と、前記ゴンドラを各駐車棚位置に着床させる着床装置とを備えている。この作業装置によれば、各駐車棚においてゴンドラを駐車棚に着床させることにより、ほぼ昇降路全面および着床階の左・右駐車棚のパレット上面に広い作業スペースを形成することができ、駐車棚への内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等の各種塔内作業をこの広いスペースで安定して行うことができる。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「着床」は、「固定」も含む。
【0010】
また、前記着床装置に、前記ゴンドラから駐車棚に向って進退可能な着床部材と、該着床部材を進退させるアクチュエータとを備えさせれば、簡単な構成でゴンドラを駐車棚に着床させて作業スペースを形成することができる。
【0011】
さらに、前記昇降駆動機を巻上機で構成し、該巻上機をゴンドラの前後位置に設け、該巻上機によるゴンドラの昇降制御を行う制御装置を該ゴンドラに設ければ、ゴンドラ内で前後位置の巻上機を操作してゴンドラを水平状態で安定して昇降させることができ、迅速な移動作業をスムーズに行うことができる。
【0012】
また、前記ゴンドラの周囲に柵体を設け、該柵体の少なくとも左右位置に開閉扉を設ければ、各駐車棚で全周に行う耐火被覆吹き付け作業等を迅速に行うことができる。
【0013】
さらに、駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで鉛直方向に備えた複数階の駐車棚にパレットを載置した後、各駐車棚位置に作業スペースを形成する機械式駐車装置の作業装置であって、前記昇降路の上部に固定して前記昇降路に沿って昇降するゴンドラと、該ゴンドラを昇降させる昇降駆動機と、前記ゴンドラの下部に固定したロッキング機構を有するエレベータとを備えさせてもよい。これにより、エレベータに設けられたロッキング機構を利用してゴンドラを駐車棚へ固定でき、固定したエレベータのゴンドラ上を広い作業スペースとして利用して、駐車棚への内部構造物の組立て作業や耐火被覆吹き付け作業等の各種塔内作業を安定して行うことができる。
【0014】
一方、本発明の機械式駐車装置における作業方法は、前記作業装置による機械式駐車装置の建設途中段階における作業方法であって、前記機械式駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで左右両側に形成される各階層の棚レールに全パレットを載置した後、前記昇降路の上部からゴンドラを吊下げ、該ゴンドラに設けた巻上機でゴンドラを昇降させ、該ゴンドラを作業する駐車棚位置よりも上部に待機させた後、該ゴンドラを着床装置で駐車棚に着床させ、該ゴンドラから駐車棚上に乗り移って駐車装置内での作業を行うようにしている。この方法によれば、駐車棚に着床させて固定床となったゴンドラにより、昇降路のほぼ全面および着床階のパレット上面を広い作業スペースとして、駐車棚への移動や塔内作業を安定して行うことができる。
【0015】
また、前記作業装置による機械式駐車装置の建設途中段階における作業方法であって、前記機械式駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで左右両側に形成される各階層の棚レールに全パレットを載置した後、前記昇降路の上部からゴンドラを吊下げ、該ゴンドラに設けた巻上機で該ゴンドラを昇降させ、作業する駐車棚位置でエレベータのロッキング機構によって該ゴンドラを駐車棚に固定し、該ゴンドラから駐車棚上に乗り移って駐車装置内での作業を行うようにしてもよい。この方法によれば、駐車棚にロッキング機構で固定して固定床となったゴンドラにより、昇降路のほぼ全面および着床階のパレット上面を広い作業スペースとして、駐車棚への移動や塔内作業を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したような手段により、各駐車棚において棚上のパレット上面および昇降路のほぼ全面に平坦な広い作業スペースを形成して、安定した各種塔内作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の縦断面図であり、図2は、図1に示すII−II矢視の拡大平面図、図3は、図2に示すIII−III矢視の正面図である。なお、図1,3における実線はゴンドラを着床させた状態を示し、二点鎖線はゴンドラの昇降状態を示している。
【0018】
図1に示す機械式駐車装置1は、エレベータ式の機械式駐車装置1を新設する時の建設途中の段階を示しており、トラス構造の鉄骨塔構造体2が重機を用いて組立てられて据付けられている。この鉄骨塔構造体2は、外壁3(鉄骨主柱、梁、銅縁、ブレース、外装板等が組立てられたものをいう。図では一体的に示す。)によって縦長矩形状の外形が形成されている。この鉄骨塔構造体2の内部の上部には、水平方向に横梁と縦梁とを有する上部梁4が設けられ、外壁3に近接して鉛直方向に主棚柱5が設けられ、主棚柱5の内側には副棚柱6が設けられている。これら主棚柱5と副棚柱6との間に駐車棚7が形成されており、図示する左右両側の鉛直方向に複数段の駐車棚7が形成されている。これらの構成は、重機等を用いて組立てられて据付けられる。
【0019】
前記鉛直方向に形成された駐車棚7が、駐車階(この明細書および特許請求の範囲では「駐車棚」という)であり、この駐車棚7には、図示する横方向に棚レール8が設けられ、この棚レール8の上部には車両を搭載するパレット9が重機によって移動規制状態で載置されている。この左右に形成された駐車棚7の間の鉛直方向が、駐車車両を昇降させる昇降路10となっている。昇降路10の下端には乗入部ピット11が形成されており、乗入部ピット11の両側部には乗入床12が形成されている。この乗入床12の部分に、入出庫口18が設けられている。また、前記上部梁4の上部に形成された機械室13には、昇降駆動機構17である各機器(モータ14(ブレーキ、駆動シーブ含む)、転向シーブ15、支持案内プーリ16等)が配設されている。
【0020】
この状態の駐車装置1内は、車両を搭載したパレット9を昇降させるエレベータ、昇降用ワイヤロープ、カウンタウエイト等(これらの構成は図示略)はまだ設置されていない半建設状態であり、昇降路10はエレベータの無い吹抜け空洞状態であり、装置内に広いスペースを確保することができる。
【0021】
そして、この状態の昇降路10に作業用のゴンドラ20が配置されている。このゴンドラ20は、各種塔内施工作業を行うものであり、前記昇降路10の上部に位置する前記上部梁4に取付けられた吊下具21にワイヤロープ22で吊下げられている。
【0022】
図2,3に示すように、前記ゴンドラ20は、昇降路10のほぼ全面を覆うように床板23が張られた基枠体24を有し、平面視は矩形状に形成されている。基枠体24は、前後左右の4隅に設けられたガイドローラ25を副棚柱6に係合されて昇降案内されている。ガイドローラ25は、基枠体24の下部から側方に突設されたローラ受26に回転可能に支持されている。また、基枠体24の4隅には、駐車棚7に向って突出する着床部材28が設けられた着床装置27が備えられている。この着床装置27は、着床部材28が基枠体24の側面に設けられた案内筒体29によって水平方向に進退するように構成されている。ゴンドラ20の昇降時(二点鎖線時)には、この着床部材28は案内筒体29内に引き込んだ状態である。また、着床部材28の反駐車棚側には作動シリンダ30が設けられており、この作動シリンダ30のロッド31を伸縮させることによって着床部材28が駐車棚7に向けて進退するように構成されている。この着床部材28としては、例えば、角材の外周面に軟性耐摩材を被覆したものが用いられる。これにより、着床時の衝撃音を緩和することができる。
【0023】
一方、基枠体24の上面には、周端部を囲繞するように柵体32が設けられている。この柵体32の左右位置には、駐車棚7への出入りを行う開閉扉33がそれぞれ設けられている。また、前後位置には、鉄骨塔構造体2への耐火被覆吹き付け作業や内部点検をするための開閉扉34がそれぞれ設けられている。
【0024】
さらに、基枠体24の前後・左右位置には、基枠体24を昇降させる巻上機35が設けられている。この実施の形態では、巻上機35を前後・左右位置に設けることにより、昇降路10のほぼ全面を覆う広いスペースのゴンドラ20の安定した昇降を図っている。ゴンドラ20の安定した昇降が可能であれば、巻上機35は前後位置のみでもよい。この巻上機35は、巻上機本体36とワイヤロープ22とワイヤ案内部材37とを有している。巻上機本体36は柵体32に設けられ、ワイヤ案内部材37は柵体32の上端角部に設けられた補強部材38に設けられている。このワイヤ案内部材37を補強部材38に設けることにより、ゴンドラ20の前後・左右位置のワイヤ案内部材37から繰り出されるワイヤロープ22の安定した繰り出しと巻き取りが行えるようにしている。
【0025】
また、柵体32の前後には、制御盤40がそれぞれ設けられており、ゴンドラ20の前後位置のいずれからでもゴンドラ20の制御ができるようになっている。この制御盤40によって、前後左右に設けられた4組の巻上機35を同期させて制御することができ、これによってゴンドラ20を水平状態で昇降させて各階層のパレット9に着床させることができる。これらの制御盤40には携帯できる操作盤41が接続できるようになっており、この操作盤41を作業員Wが操作することによってゴンドラ20の昇降と、着床部材28の進退が制御できるようになっている。この進出させた着床部材28は、前記パレット9に着床させられる。このパレット9に着床させたゴンドラ20は、固定床と見なされる。
【0026】
パレット9は、幅方向の両側部長手方向に、大きく上方へ折れ曲がった側端隆起部42が形成され、その内側に車両のタイヤを載せる車路面43が形成されている(図1参照)。この側端隆起部42が、前記着床部材28を着床させる部分である。パレット9は、下部に設けられた車輪44によって前記棚レール8上を横行するように構成されている。
【0027】
このパレット9は、棚レール8上で前後左右方向への移動が阻止された状態で載置されているので固定床と見なされ、この固定床と見なされたパレット9に着床部材28を着床させたゴンドラ20は固定床と見なされる。したがって、ゴンドラ20をパレット9に着床させた状態では、ゴンドラ20上もパレット9上も人の乗り降りが可能な固定床と見なされる。
【0028】
なお、基枠体24の下面にはキャスタ45が設けられており、このキャスタ45は駐車塔内・外の搬出入時等の運搬移動時に利用される。
【0029】
図4は、図3に示す着床装置の変形例を示す正面図である。この変形例は、前記着床部材28を棚レール8の先端部に着床させる例である。この場合、前記ガイドローラ25が、基枠体24の側面に設けられ、着床装置27が下部に設けられる。この例の場合、棚レール8に着床させるので、例えば、左棚にパレット9が配置されておらず、右棚にパレット9が配置されている場合でも、全パレット9が配置されている場合でも、着床できる。
【0030】
この例によれば、着床部材28のレベルがパレット9の側端隆起部42の下縁と棚レール8の上端との間でゴンドラ20を一旦停止させ、着床部材28を突出させた状態でゴンドラ20を下降させれば、棚レール8に着床部材28を着床させることができる。この棚レール8に着床させたゴンドラ20は、固定床とみなされる。
【0031】
図5は、図3に示す着床装置の他の変形例を示す正面図である。この変形例は、ゴンドラ20を宙吊りで昇降させる例である。前記図3に示すようにゴンドラ20にガイドローラ25を設けて副棚柱6に案内させた場合、ゴンドラ20と各パレット9との隙間を小さくできる。しかし、ゴンドラ20は、必ずしも副棚柱6に昇降案内させる必要はなく、宙吊りで昇降させてもよい。そこで、この例ではゴンドラ20を昇降案内するガイドローラ25を廃して宙吊り状態とし、ゴンドラ20は横揺れを配慮して横幅を小さくして各棚レール8上のパレット9の側端部との隙間sを十分に広くしている。
【0032】
この例の場合、必然的にゴンドラ20とパレット9との間に大きな隙間sが生じるため、着床装置27の着床部材28を長くしている。また、隙間sが広いため、着床部材28をパレット9の側端隆起部42に着床させた状態で、ゴンドラ20の開閉扉33の部分とパレット9の上面との間に架け渡す渡り板46が設けられている。この渡り板46は、予めゴンドラ20内に用意しておき、ゴンドラ20が着床して左右のパレット9への人の乗り降りや作業機材の搬出入に際して架け渡される。
【0033】
前記図2,3に示す構成を採用するか、前記図4に示す構成、または前記図5に示す構成を採用するかは、駐車装置1の形式や内部構造等に応じて決定すればよい。
【0034】
以上のように構成された第1実施の形態の作業装置48によれば、鉄骨塔構造体2が重機等で組立てられ、昇降路10を挟んで左右両側の鉛直方向に形成された各階層の棚レール8に重機等で全パレット9が移動規制状態で載置された状態で、昇降路10にゴンドラ20が設けられる。
【0035】
そして、塔内作業時には、ゴンドラ20内に塔内作業に必要な種々の器具、機器、工具類が積込まれ、ゴンドラ20に乗込んだ作業員Wが、携帯する操作盤41を操作することによってゴンドラ20を所望階よりも若干上方位置に一旦停止させる。その後、作動シリンダ30のロッド31を伸長させることによって4個の着床部材28がゴンドラ20から外方に突出させられる。この状態でゴンドラ20が下降させられ、前記着床部材28が左右のパレット9の側端隆起部42の上面に着床させられる。
【0036】
これにより、ゴンドラ20は固定床に相当する駐車棚7のパレット9に着床して固定床と見なされるので、エレベータが設置される前に昇降路10のほぼ全域をゴンドラ20の昇降スペースとして利用できるとともに、着床させて固定床と見なされるようになったゴンドラ20は昇降路10のほぼ全域に固定床を形成することができ、作業員Wはゴンドラ20の開閉扉33を開いて各階層の左右のパレット9上に乗り降りし、これらゴンドラ20の上面とパレット9の上面との全域を広い作業スペースとして利用して、各種広範囲な塔内作業(例えば、耐火材吹き付け作業、消火設備設置、ダクト・配管の設置、各階検知器類の設置等)を広い作業スペースで迅速且つ安全に行うことができる。
【0037】
このように、前記作業装置48によれば、エレベータを設置する前段階において、エレベータの昇降路10に昇降可能に吊下げられたゴンドラ20を各階の棚レール8に固定配置されたパレット9の側端隆起部42(図4の例では棚レール8)に着床させ、このゴンドラ20と各駐車階のパレット9との間で作業員Wは乗り降りしながら大掛かりな塔内作業を迅速、且つ安全に実施することができる。しかも、このゴンドラ20の昇降や塔内作業は、エレベータ、昇降用ワイヤロープ、カウンタウエイト等がまだ設置されていない昇降路10のほぼ全域を昇降および作業スペースとして利用するので、塔内にがらんとした広いスペースが確保された状態であり、塔内作業は非常に行い易い。その上、昇降路10のほぼ全域を作業スペースとして確保できるので、作業員Wが作業中に工具等を落としたとしてもパレット9上で受け止められて昇降路10から落下するという恐れが極めて少なくなる。
【0038】
以上のようにして目的階での作業を終えて他の作業階の駐車棚7に移動する場合には、作業員Wがゴンドラ20に乗り込んでゴンドラ20内の操作盤41を操作し、ゴンドラ20を浮かせてから着床部材28を後退させて格納した後、ゴンドラ20を他の作業階の駐車棚7へ昇降させ、その駐車棚7で着床部材28を突出させてパレット9の側端隆起部42に着床させることによりゴンドラ20を固定床とし、その駐車棚7で安定した塔内作業を行うことができる。
【0039】
図6は、本発明の第2実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の縦断面図である。図7(a) は、図6に示すVII−VII矢視の拡大部分平面図であり、(b) は(a) に示すVII−b部における他の例を示す部分拡大平面図である。図8(a) は、図7に示すVIII−VIII矢視の拡大正面図であり、(b) は(a) に示す VIII−b部拡大側面図である。図9は、図8に示すロッキング機構の図面であり、(a) は離脱した状態の正面図、(b) は係合した状態の正面図である。この第2実施の形態は、機械室13に設けられた昇降駆動機構17に連係されていないエレベータ51の一部を利用している。なお、ゴンドラ20は、前記第1実施の形態のゴンドラ20と同様の構成であるため、同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図6に示すように、この第2実施の形態では、前記パレット9に車両を搭載して昇降路10を昇降するエレベータ51を組立途中の状態で用いており、このエレベータ51をゴンドラ20と一体的に昇降させている。この状態では、前記機械室13に設けられた昇降駆動機構17のエレベータ昇降用のワイヤロープ56は支持案内プーリ16に掛けられているが、エレベータ51には掛け渡されていない。
【0041】
図7(a) と図8(a),(b) に示すように、前記エレベータ51は、昇降フレーム52とその上部に設けられた横行レール53とロッキング機構55とが設けられた組立途中の状態で使用されている。前記ゴンドラ20とエレベータ51との仮固定は、エレベータ51に設けられた横行レール53を、L字状の上部材57と下部材58とで挟み、これら上部材57と下部材58との間の外側に挿通したネジ棒59で前後方向の移動を規制し、この上部材57と下部材58とをゴンドラ20の基枠体24に固定するクランプ機構60によってなされている。これにより、エレベータ51の所定位置にゴンドラ20が固定されている。このゴンドラ20とエレベータ51との仮固定方法は一例であり、例えば、市販されているレバー式クランプ等、他の固定機構でもよい。
【0042】
また、図7(b) に示すように、ゴンドラ20の底面を横行レール53上に載せ、この載せた部分でゴンドラ20と横行レール53とを固定するようにしてもよい。この場合、ゴンドラ20の横行レール53上に位置する角部を斜めに形成すれば、ゴンドラ20と棚レール8との隙間を大きくできるので、横行レール53と棚レール8との隙間は小さくできる。
【0043】
一方、図6に示すように、前記ゴンドラ20は、鉄骨塔構造体2上部の上部梁4に設けられた吊下具21にワイヤロープ22で吊下げられている。このゴンドラ20に設けられた巻上機35を駆動してワイヤロープ22の巻取り又は繰出しを行うことにより、ゴンドラ20と一体的にエレベータ51も昇降させられる。
【0044】
図8に示すように、前記エレベータ51のロッキング機構55は、昇降フレーム52の前後に設けられた横行レール53の各左右端部近傍に設けられている。この実施の形態では、エレベータ51と駐車棚7とを連結して固定するために、横行レール53と各駐車棚7の棚レール8とを左右で連結する4個のロッキング機構55が設置されている。これらのロッキング機構55は、昇降フレーム52から駐車棚7に向けて係合部材61を進出させ、この係合部材61を駐車棚7の係合ピン62に係合させるように構成されている。
【0045】
図9(a),(b) に示すように、ロッキング機構55の係合部材61は、昇降フレーム52に設けられたガイド部材66によって案内されており、作動シリンダ64のロッド65を伸縮させることによって進退するようになっている。この作動シリンダ64は、電気又は油圧で伸縮させられる。
【0046】
作動シリンダ64のロッド65を伸長させることによって係合部材61を棚レール8に向って突出させ、この係合部材61に形成された係合溝63を棚レール8の係合ピン62に係合させることにより昇降フレーム52が駐車棚7側と連結される。この作動シリンダ30のロッド31を縮めることにより、係合部材61が棚レール8の係合ピン62から外れて昇降フレーム52と駐車棚7側との係合状態が解除される。図9(a) に示す状態が係合部材61を連結解除した状態であり、図9(b) に示す状態がエレベータ51を駐車棚7に連結固定(着床)した状態である。この実施の形態の作業装置68によれば、これらのロッキング機構55によって、エレベータ51の4隅が駐車棚7側に固定される。
【0047】
このように構成された第2実施の形態の作業装置68によれば、ゴンドラ20に設けられた巻上機35を制御して作業階の駐車棚7に移動し、ロッキング機構55の係合部材61を突出させて駐車棚7の係合ピン62に係合させる。これにより、エレベータ51とともにゴンドラ20が所定の駐車棚7の位置に固定される。このようにエレベータ51が固定されるとゴンドラ20は固定床となるため、このゴンドラ20上と駐車棚7のパレット9上との全域を利用した広い作業スペースで塔内作業を行うことができる。
【0048】
なお、前記エレベータ51としては、パレット9を駐車棚7に向けて横行させる移載装置(クランクアーム方式やフォーク掬い上方式等)を搭載させておいてもよい。この場合、これらの重量増加分を含めてゴンドラ20昇降させることが可能な巻上機35が設けられる。
【0049】
また、この第2実施の形態の作業装置68の場合、塔内作業完了後、エレベータ51からゴンドラ20が撤去され、エレベータ51の残りの組立作業が行われる。また、このエレベータ51が機械室13の昇降駆動機構(ワイヤロープ、カウンタウエイト等)と連係接続され、の昇降路10で車両を載せたパレット9を昇降させるエレベータ51として完成させられる。
【0050】
図10は、本発明の第3実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の一部を示す拡大正面図である。この第3実施の形態は、前記第2実施の形態の変形例である。前記第2実施の形態の作業装置68と同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
図示するように、この実施の形態の作業装置71は、エレベータ51に1台のパレット9(例えば、予備の駐車用パレット9、作業専用の平坦面のパレット等)が搭載され、そのパレット9上にゴンドラ20が固定設置されている。この場合、エレベータ51の昇降フレーム52に対するパレット9の固定、及びパレット9に対するゴンドラ20の固定のための二重の固定機構が必要となる。これらの固定機構は前記第2実施の形態と同様の機構が用いられ、昇降フレーム52から上向きに固定された固定部材72でパレット9を挟み込み、ゴンドラ20から下向きに固定された固定部材73でパレット9を挟み込むことによって、昇降フレーム52とパレット9とゴンドラ20とが固定されている。この固定機構は、他の構成であってもよい。
【0052】
このような第3実施の形態の作業装置71によれば、ゴンドラ20自体はパレット9の中央部に設けられるため小型でよく、昇降フレーム52上のパレット9自体も作業スペースとして利用できる。したがって、この実施の形態によれば、安価な作業装置71を構成することができる。
【0053】
なお、前記各実施の形態における構成を組合わせることは可能であり、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
また、前記実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る作業装置は、鉛直方向に複数段の駐車棚を備えた機械式駐車装置の建設作業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の縦断面図である。
【図2】図1に示すII−II矢視の拡大平面図である。
【図3】図2に示すIII−III矢視の正面図である。
【図4】図3に示す着床装置の変形例を示す正面図である。
【図5】図3に示す着床装置の他の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の縦断面図である。
【図7】(a) は図6に示すVII−VII矢視の拡大部分平面図であり、(b) は(a) に示すVII−b部における他の例を示す部分拡大平面図である。
【図8】(a) は図7に示すVIII−VIII矢視の拡大正面図であり、(b) は(a) に示す VIII−b部拡大側面図である。
【図9】図8に示すロッキング機構の図面であり、(a) は離脱した状態の正面図、(b) は係合した状態の正面図である。
【図10】本発明の第3実施の形態に係る作業装置を設けた機械式駐車装置の一部を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…機械式駐車装置
2…鉄骨塔構造体
3…外壁
4…上部梁
5…主棚柱
6…副棚柱
7…駐車棚
8…棚レール
9…パレット
10…昇降路
13…機械室
17…昇降駆動機構
20…ゴンドラ
21…吊下具
22…ワイヤロープ
23…床板
24…基枠体
25…ガイドローラ
26…ローラ受
27…着床装置
28…着床部材
29…案内筒体
30…作動シリンダ
32…柵体
33…開閉扉
34…開閉扉
35…巻上機
37…ワイヤ案内部材
40…制御盤
41…操作盤
42…側端隆起部
46…渡り板
48…作業装置
51…エレベータ
52…昇降フレーム
55…ロッキング機構
56…ワイヤロープ
60…クランプ機構
61…係合部材
62…係合ピン
64…作動シリンダ
68…作業装置
71…作業装置
W…作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで鉛直方向に備えた複数階の駐車棚にパレットを載置した後、各駐車棚位置に作業スペースを形成する機械式駐車装置の作業装置であって、
前記昇降路の上部に固定して該昇降路に沿って昇降するゴンドラと、該ゴンドラを昇降させる昇降駆動機と、前記ゴンドラを各駐車棚位置に着床させる着床装置とを備えたことを特徴とする機械式駐車装置における作業装置。
【請求項2】
前記着床装置に、前記ゴンドラから駐車棚に向って進退可能な着床部材と、該着床部材を進退させるアクチュエータとを備えさせた請求項1に記載の機械式駐車装置における作業装置。
【請求項3】
前記昇降駆動機を巻上機で構成し、該巻上機をゴンドラの前後位置に設け、該巻上機によるゴンドラの昇降制御を行う制御装置を該ゴンドラに設けた請求項1または請求項2に記載の機械式駐車装置における作業装置。
【請求項4】
前記ゴンドラの周囲に柵体を設け、該柵体の少なくとも左右位置に開閉扉を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械式駐車装置における作業装置。
【請求項5】
駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで鉛直方向に備えた複数階の駐車棚にパレットを載置した後、各駐車棚位置に作業スペースを形成する機械式駐車装置の作業装置であって、
前記昇降路の上部に固定して前記昇降路に沿って昇降するゴンドラと、該ゴンドラを昇降させる昇降駆動機と、前記ゴンドラの下部に固定したロッキング機構を有するエレベータとを備えたことを特徴とする機械式駐車装置における作業装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業装置による機械式駐車装置の建設途中段階における作業方法であって、
前記機械式駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで左右両側に形成される各階層の棚レールに全パレットを載置した後、
前記昇降路の上部からゴンドラを吊下げ、該ゴンドラに設けた巻上機でゴンドラを昇降させ、該ゴンドラを作業する駐車棚位置よりも上部に待機させた後、該ゴンドラを着床装置で駐車棚に着床させ、該ゴンドラから駐車棚上に乗り移って駐車装置内での作業を行う機械式駐車装置における作業方法。
【請求項7】
請求項5に記載の作業装置による機械式駐車装置の建設途中段階における作業方法であって、
前記機械式駐車装置の鉄骨塔構造体を組立て、該鉄骨塔構造体の昇降路を挟んで左右両側に形成される各階層の棚レールに全パレットを載置した後、
前記昇降路の上部からゴンドラを吊下げ、該ゴンドラに設けた巻上機で該ゴンドラを昇降させ、作業する駐車棚位置でエレベータのロッキング機構によって該ゴンドラを駐車棚に固定し、該ゴンドラから駐車棚上に乗り移って駐車装置内での作業を行う機械式駐車装置における作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−144544(P2008−144544A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335707(P2006−335707)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(593139271)新明和エンジニアリング株式会社 (109)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】