説明

次世代のでんぷん製品

本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷん、およびそれらを製造する方法に関する。これらの製品は、食品、飼料製品、化粧品、医薬品、農薬および産業における応用において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飼料、医薬品などに応用される非塊状のインスタント増粘性でんぷんに関する。これらのでんぷんの製造方法も同様に開示される。
【背景技術】
【0002】
従来より、以下の方法のいずれかにより、インスタントでんぷん(instant starches)の分散性を改善できることが知られている:物理的処理、界面活性剤の添加または食品グレードの充填剤、例えばマルトデキストリン、糖類、繊維質等の添加。
【0003】
特許文献1には、でんぷんの湿熱処理(heat-moisture treatment)が記載されている。
【0004】
特許文献2には、高交差結合ジャガイモでんぷんの部分糊化による遅延型の粘度発現または流動−粘稠(thin-thick)挙動(ずり後の粘度発現)が記載されている。
【0005】
特許文献3は、ロール圧縮後に遅延型の粘度発現を示し塊形成が減少する、冷水で膨潤が可能なでんぷんに関する。
【0006】
特許文献4および特許文献5はそれぞれ、界面活性剤および/または乳化剤の添加が記載されている。
【0007】
特許文献6および特許文献7には、インスタントでんぷんの分散性を改善するための、充填剤の一種の添加が記載されている。
【0008】
しかしながら、液体を含む熱水または沸騰水を用いた場合に、大きな膨潤力 を有し、同時に塊を含まない粘性のペーストを提供するでんぷんベースの増粘剤(thickener)がなお必要とされている。
【特許文献1】欧州特許第0436208号明細書
【特許文献2】国際公開第01/19404号パンフレット
【特許文献3】国際公開00/75192号パンフレット
【特許文献4】米国特許第3,443,990号明細書
【特許文献5】米国特許3,582,350号明細書
【特許文献6】米国特許第4,361,592号明細書
【特許文献7】欧州特許第1166645号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はそのような製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷん(non-lumping granular cold water swellable starch)に関する。これは、冷水においても、または少なくとも95℃の温度の水においても分散が可能である。少なくとも95℃の温度で水中に分散させた場合に、その全体の粘度は、30秒未満、好ましくは20秒未満、さらに好ましくは15秒未満で発現する。でんぷん顆粒は、冷水または少なくとも95℃の温度の水において分散させても損なわれていない状態を維持する。少なくとも95℃の温度で水中に分散させた場合に、その粘度は(少なくとも3%の濃度において)、4500 mPa.sより十分に高く、好ましくは5000 mPa.sより高く、さらに好ましくは5500 mPa.sより高い。
【0011】
前記のでんぷんは、天然マメでんぷん(leguminous starch)、天然穀類でんぷん(cereal starch)、天然根菜でんぷん(root starch)、天然塊茎でんぷん(tuber starch)、天然果実でんぷん(fruit starch)、化工マメでんぷん、化工穀類でんぷん、化工根菜でんぷん、化工果実でんぷん、ワクシー種のでんぷん(waxy type starches)、高アミロースでんぷん、およびそれらの混合物からなる群から選択される起源から得られる。前記の化工でんぷんは、漂白、エステル化、エーテル化、リン酸化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される加工により得られる。
【0012】
本発明はさらに、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを製造する方法に関し、この方法は、以下の段階を含む:
a1)でんぷんの漂白(bleaching)、
b)段階a1)の前記でんぷんを、噴霧湯煮/乾燥(spray-cooking/drying)、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化(pregelatinisation)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理、好ましくは噴霧湯煮/乾燥で処理すること。
【0013】
本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現し、20℃での脱塩水中3%の濃度において4500 mPa.sより高いブルックフィールド粘度を有する、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを製造する方法であって、この方法が、以下の段階:
a1)でんぷんの漂白、
b)段階a1)の前記でんぷんを、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理、好ましくは噴霧湯煮/乾燥で処理すること、
を含んでいる前記方法に関する。
【0014】
本発明は、以下の段階を含む方法に関する:
a1)でんぷんの漂白、
a2)でんぷんの化学的な加工
b)前記でんぷんの処理であって、この処理が、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは噴霧湯煮/乾燥である、前記の処理。
【0015】
さらなる好ましい実施態様において、前記の方法は、以下:
a1)でんぷんの漂白、
a2)n-アルケニル-コハク酸無水物を用いるn-アルケニル-スクシニル化、好ましくはn-オクテニルコハク酸無水物を用いるn-オクテニルスクシニル化、
を含み、そして段階a1)およびa2)の順序は交換可能であるか、または段階a1)およびa2)は同時に行われる。
【0016】
さらに本発明は、段階a1)において、アルカリ条件下で活性塩素を形成できる反応剤を用いて漂白が行われる方法に関する。該活性塩素は、100〜4000 ppmの量で存在し、アルカリ条件は7.5〜11.5のpHによって定義される。
【0017】
本発明はさらに、以下の段階:
a1)7.5〜11.5のpHで100〜4000 ppmの量で存在する活性塩素を用いる、でんぷんの漂白、
a2)n-オクテニルコハク酸無水物を用いるn-オクテニルスクシニル化、
b)漂白されたn-オクテニルスクシニル化でんぷんの噴霧湯煮/乾燥、
を含む方法に関し、段階a1)およびa2)は同時に行われるか、または段階a2)がa1)の前に行われる。
【0018】
さらに本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんの、食品、飼料製品、化粧品、医薬品、農薬および産業における応用への使用に関する。
【0019】
前記の食品は、スープ、ソース、デザート、ドレッシング、ベーカリー製品およびソースのバインダーからなる群から選択される。前記の飼料製品は、ペットフード、魚の餌料および子豚の飼料からなる群から選択される。前記の医薬品は、錠剤における賦形剤、シロップ剤のための増粘剤、および液剤からなる群から選択される。
【0020】
さらに、本発明は、膜の形成(skin formation)の減少のための、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんの使用に関する。
【0021】
<図面の説明>
図1は、少なくとも95℃の温度での、本発明のでんぷん(噴霧乾燥したC♭EmTex 06328)15 gの、500 mlの波立てない鉱水(still mineral water)(pH 6.0;SpaTM、ベルギー)における分散を撮影した写真である。塊は観察されない。
【0022】
図2は、光学顕微鏡(x100)を用いて撮影した写真である:少なくとも95℃の温度での鉱水における分散後。懸濁液中において、損なわれていない状態で膨潤した顆粒が見られる。
【0023】
<詳細な説明>
本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんに関する。
【0024】
前記のでんぷんが非塊状であるという事実は、少なくとも95℃の温度の500 mlの波立てない鉱水において、15 gのでんぷんが一気に分散することによって観察される。分散させたものを1分間撹拌し、その後、それを355μmの篩に入れる。図1は、デジタルカメラで撮影した写真であり、効果が見られること、すなわち、塊が形成しないということを実証するものである。本発明のでんぷんは、冷水においても、または少なくとも95℃の温度の水においても分散が可能である。少なくとも95℃の温度で水中に分散させた場合に、その粘度は(少なくとも3%の濃度において)、4500 mPa.sより十分に高く、好ましくは5000 mPa.sより高く、さらに好ましくは5500 mPa.sより高い。実際に、分散の間にその粘度(ブルックフィールド(Brookfield)を用いて測定)はすぐに、すなわち、30秒未満、好ましくは20秒未満、さらに好ましくは15秒未満で発現する。その全体の粘度の発現は、その後の増粘性効果が観察されない、または遅延型の粘度発現がない点からさらに説明することができる。前記のでんぷんの顆粒は、冷水または少なくとも95℃の温度の水において分散させても損なわれていない状態を維持する。
【0025】
冷水での膨潤が可能なでんぷんは、冷水に添加された場合に、急速に水中に分散し、粘性のペーストを形成するために膨潤するでんぷんとして定義される。前記の冷水の温度は室温(20〜25℃)より高くない。
【0026】
本発明の目的は、分散剤(例えば界面活性剤、充填剤(bulking agents)等)を添加する必要がないか、またはでんぷんを後続過程において物理的処理(例えば圧縮またはアグロメレーション等)に付す必要がなく、冷水、熱水および沸騰水含有流動体において良好な分散性を有する(すなわち塊が生じない)、でんぷんベースの増粘剤、乳化剤、水結合剤(water-binders)、懸濁化剤、混濁剤(clouding agents)等を提供することにある。
【0027】
本発明のでんぷんは、粒状で冷水での膨潤が可能であるが、顆粒構造が損なわれていない状態にあるために冷水に可溶性ではない。
【0028】
本発明のでんぷんのブルックフィールド粘度は、非常に高く、すなわち、20℃の脱塩水で、3%の濃度(パーセントは、いずれも乾燥物質に関する)において4500 mPa.sより高く、好ましくは5000 mPa.sより高く、さらに好ましくは5500 mPa.sより高い(10 rpm、スピンドル2)。この粘度は、米国特許第4,035,235号明細書に記載の方法における、25℃で30%濃度において125〜500 mPa.sの粘度を有する酵素的な化工でんぷん(enzyme modified starches)の粘度とは完全に異なる。
【0029】
本発明の原料物質として使用されるでんぷんは、天然マメでんぷん、天然穀類でんぷん、天然根菜でんぷん、天然塊茎でんぷん、天然果実でんぷん、化工マメでんぷん、化工穀類でんぷん、化工根菜でんぷん、化工塊茎でんぷん、化工果実でんぷん、ワクシー種のでんぷん、高アミロースでんぷん、およびそれらの混合物からなる群から選択される起源から得られる。実際に、本発明において原料物質として使用されるでんぷん類およびフラワー類(以下「でんぷん」という)、好ましくはでんぷんは、いずれの天然起源にも由来することができ、天然とは前記のでんぷんが天然において見出されるという事実に関するものである。でんぷんの典型的な起源は、穀類、塊茎、根菜、マメ、果実でんぷんおよびハイブリッドでんぷんである。適当な起源には、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、モロコシ、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランサス、タピオカ、クズウコン、カンナおよびそれらのワクシー種(少なくとも95重量%のアミロペクチンを含む)または高アミロース種(少なくとも40重量%のアミロースを含む)が含まれる。異種交配、転座、逆位、形質転換、または遺伝子または染色体工学のその他の方法を含む品種改良技術により得られる植物由来のでんぷんもまた適している。さらに、人為突然変異から成長した植物、および突然変異育種の公知の標準的方法により生産することができる前記の一般的な組織の変種に由来するでんぷんもまた適している。
【0030】
化学的な加工には、これらに限定はされないが、架橋でんぷん、アセチル化および有機的にエステル化されたでんぷん、ヒドロキシルエチルでんぷんおよびヒドロキシプロピルでんぷん、リン酸化および無機的にエステル化されたでんぷん、カチオンでんぷん、アニオンでんぷん、酸化でんぷん、両性イオンでんぷん、および、でんぷんのスクシネートおよび置換されたスクシネート誘導体、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0031】
さらなる実施態様において、本発明はさらに、噴霧湯煮/乾燥、および漂白、エステル化、エーテル化、リン酸化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される加工によって得ることができる、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんに関し、好ましくは、前記のでんぷんは、漂白n-アルケニル-スクシニル化および噴霧湯煮/乾燥により、さらに好ましくは、漂白n-オクテニル-スクシニル化および噴霧湯煮/乾燥により得られる。前記の噴霧湯煮/乾燥は同様に、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理、好ましくは噴霧湯煮/乾燥でよい。
【0032】
熱により抑制されたでんぷん(thermally inhibited starches)のような物理的な加工でんぷんもまた原料物質として使用するのに適している。
【0033】
欧州特許第0811633号明細書に開示される方法に従って得ることができるでんぷんが、さらなる処理、すなわち噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせ、好ましくは噴霧湯煮/乾燥に使用されるでんぷんの好ましい起源である。
【0034】
本発明はさらに、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを製造する方法に関し、前記方法は以下の段階:
a1)でんぷんの漂白、
b)前記でんぷんの処理であって、この処理が、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは噴霧湯煮/乾燥である、前記の処理、
c)少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを得ること、
を含み、そして段階a1)およびa2)の順序は交換可能であり、または段階a1)およびa2)は同時に行われる。
【0035】
最終的には、工程段階と同様にアルカリ焙焼を用いることができる。
【0036】
本発明の方法は、流動化(thinning)、酵素的分解等のような粘度の減少段階を伴わない。
【0037】
本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現し、20℃の脱塩水での3%濃度において4500 mPa.sより高いブルックフィールド粘度を有する、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんの製造方法に関し、この方法は、以下の段階を含む:
a1)でんぷんの漂白、
b)段階a1)の前記でんぷんの、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理、好ましくは噴霧湯煮/乾燥により処理、
c)少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現し、20℃の脱塩水での3%濃度において4500 mPa.sより高いブルックフィールド粘度を有する、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを得ること。
【0038】
本発明の方法は、流動化、酵素的分解等のような粘度の減少段階を伴わない。
【0039】
でんぷんが非化工(天然)でんぷんまたは化工でんぷんの噴霧湯煮/乾燥により製造される場合には、米国特許第4,280,851号明細書に記載されるような装置が用いられる。
【0040】
水性のでんぷんスラリーを、ノズル中の噴霧口(atomisation aperture)を通して噴霧する。蒸気のような加熱媒体を、ノズル中の別の口を通して前記の噴霧中に投入する。ノズルの噴出口(vent aperture)から出る際には、得られるでんぷんは微細な大きさに霧化された状態であり、噴霧乾燥塔において容易に乾燥される。乾燥したでんぷんは、各利用に際して容易に使用できるように袋に回収するか、または、アグロメレート化粒子(agglomerated particles)を製造するために、乾燥粉末を再循環させる塔の軌道が、噴霧湯煮ノズルの噴霧パターンを横切るような塔の最上部に再投入することができる。アグロメレート化粒子は、外部にある流動床において回収した(recuperated)。流動床からの製品を篩機において篩にかけ、大きすぎる留分をミル中で崩壊させた。アグロメレーションおよびアグロメレート化したでんぷんの粒度分布は、ノズル配置により、並びに、篩にかけて除去するための、および大きすぎる留分を挽くための、篩および適当なミルの使用により調節することができる。平均粒度は、篩に使用される上部スクリーン(top screen)の穴径(aperture)に密接に関連する。
【0041】
さらに、前記の工程パラメーター(process parameters)はでんぷんのタイプと相関し、でんぷんの各タイプはよく定義されている工程パラメーターを有する。
【0042】
原料物質としての安定化でんぷんn-オクテニルスクシネート(例えば、C♭EmTex 06328)のための工程パラメーターは、実施例1において特定されている。得られる製品は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんである(図1を参照)。その全体の粘度は、有意に低い濃度、すなわち、同一の粘度を発現させるために通常必要な製品濃度よりも約25重量%低い濃度で発現する。
【0043】
例えば、20℃では、5880 mPa-s以上のブルックフィールド粘度を発現させるためには3.1%(w/w)の本発明でんぷんが必要であるのに対して、冷水での膨潤が可能な噴霧湯煮/乾燥した低交差結合(low crossbonded)ヒドロキシプロピルでんぷん(例えばC♭HiForm A 12742)は、20℃で4780 mPa-sのブルックフィールド粘度を得るために4.2%(w/w %)の量で添加される。
【0044】
噴霧湯煮/乾燥工程により、冷水での膨潤が可能なでんぷんとして知られる糊化でんぷんが製造され、全面的なでんぷん顆粒完全性(starch granule integrity)が得られる。
【0045】
さらなる実施態様において、本発明は、以下の段階を含む方法に関する:
a1)でんぷんの漂白、
a2)でんぷんの化学的な加工
b)でんぷんの処理であって、この処理が、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは噴霧湯煮/乾燥である、前記の処理。
【0046】
でんぷんの化学的な加工には、限定はされないが、架橋でんぷん、アセチル化および有機的にエステル化されたでんぷん、ヒドロキシルエチルでんぷんおよびヒドロキシプロピルでんぷん、リン酸化および無機的にエステル化されたでんぷん、カチオンでんぷん、アニオンでんぷん、酸化でんぷん、両性イオンでんぷん、および、でんぷんのスクシネートおよび置換されたスクシネート誘導体、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
さらなる好ましい実施態様において、本発明はさらに、以下の段階:
a1)でんぷんの漂白、
a2)n-アルケニルコハク酸無水物を用いるn-アルケニル-スクシニル化、好ましくはn-オクテニルコハク酸無水物を用いるn-オクテニルスクシニル化、
b)でんぷんの処理であって、この処理が、噴霧湯煮/乾燥、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化およびそれらの組み合わせなる群から選択され、好ましくは噴霧湯煮/乾燥である、前記の処理、
c)少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを得ること、
を含み、そして、段階a1)およびa2)の順序が交換可能であるか、または段階a1)およびa2)が同時に行われる方法に関する。
【0048】
本発明の方法は、流動化、酵素的分解等のような粘度の減少段階を伴わない。
【0049】
さらに、本発明の方法は、段階a1)において、漂白が、アルカリ条件下で活性塩素を形成することができる反応剤を用いて行われる方法に関する。
【0050】
活性塩素の添加は、化学的な加工反応(n-オクテニル-スクシニル化)の前、間または後に行うことができる。同一処理レベルの塩素を用いた場合に、より顕著な安定化効果が得られるので、化学的な加工の間または後における活性塩素の添加が好ましい。
【0051】
活性塩素は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムまたはマグネシウムとして使用される次亜塩素酸塩から得ることができる。前記の次亜塩素酸塩は、本来の場所(in situ)で活性塩素を形成できる反応剤、例えば過剰な塩化物イオンの存在下における過酢酸および/または過酸化水素の組み合わせに代えることもできる。
【0052】
典型的な好ましい実施態様において、本発明において開示される方法の段階a1)およびa2)(漂白およびn-オクテニルスクシニル化)は、欧州特許第0811633号明細書に開示される方法に従って行うことができる。
【0053】
活性塩素は、100〜4000 ppm、好ましくは500〜2000 ppmの量で存在し、アルカリ条件は、7.5〜11.5、好ましくは8.5〜10.5のpHにより定義される。
【0054】
一般的に、反応条件(塩素レベル、時間、温度、pH)は、でんぷんの分解およびカルボキシル基の顕著な形成が起こらないよう(<0.1%)に制御しなければならない。
【0055】
典型的な反応時間および温度は、それぞれ、0.25〜5時間および10〜55℃である。
【0056】
本発明の方法のさらなる有利な点は、次亜塩素酸塩の反応がアルカリ条件下で行われること、および多数のその他の可能な交差結合反応(cross-bonding reaction)もまた通常アルカリ条件下で行われることであり、これにより、段階間でpHを変える必要がなく、反応を同時にまたは連続的に行うことができる。従って、ワンポット工程が可能となる。
【0057】
本発明はさらに、以下の段階:
a1)7.5〜11.5のpHで、100〜4000 ppmの量で存在する活性塩素を用いるでんぷんの漂白、
a2)n-オクテニルコハク酸無水物を用いるn-オクテニル-スクシニル化、
b)漂白したn-オクテニルスクシニル化でんぷんの噴霧湯煮/乾燥、
を含み、段階a1)およびa2)の順序が交換可能であるか、または段階a1)およびa2)が同時に行われ、好ましくは段階a1)およびa2)が同時に行われ、さらに好ましくは、段階a2)が段階a1)の前に行われる方法に関する。
【0058】
さらに、本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんの、食品、飼料製品、化粧品、医薬品、農薬および産業における応用への使用に関する。
【0059】
前記の食品は、スープ、ソース、デザート、ドレッシング、ベーカリー製品およびソースのバインダーからなる群から選択される。前記の飼料製品は、ペットフード、魚の餌料および子豚の飼料からなる群から選択される。前記の医薬品は、錠剤における賦形剤、シロップ剤のための増粘剤、および液剤からなる群から選択される。
【0060】
さらに、本発明は、少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを、膜の形成を減少させるために使用する方法に関する。
【0061】
本発明は、以下の有利な点を有する:
・次世代のでんぷん製品が得られる
・冷水での膨潤が可能な新世代のでんぷん
・該製品は非塊状で、直ちに全体の粘度が発現する
・該製品は非常に低濃度(水中において約3重量%)で高粘度を発現する
・該製品は、食品および非食品製品において多種多様な限定されない応用分野を有する。
【0062】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
<実施例1>
方法:
ベースのでんぷん材料として使用される製品は、cook-up C♭EmTex 06328(Cerestar社製)であった。該製品を表1に示されるパラメーターに従って加工した。
【0064】
表1
【0065】
【表1】

【0066】
この製品は図1に示すように非塊状である。
さらなる特性を表2に示す。
【0067】
表2
【0068】
【表2】

【0069】
* n=3の反復における平均値
C♭EmTex 06328噴霧湯煮/乾燥物は、本発明の好ましい製品である(図1)。
【0070】
ブルックフィールド解析: 無水でんぷんw/w %/%濃度(含水率は130℃に設定された赤外線水分計を用いて20分間測定した)。
【0071】
250g の波立てない鉱水(20℃または>95℃)を含む400mLのビーカーにおいて、磁気撹拌(1分間に800回転)により渦を形成させた。必要量のでんぷんを、コニカルシリンダー(底直径20 mm)を通して、ビーカーの60 mm上から前記の渦に直接入れた。1分後に磁気撹拌を停止し、20.0±0.1℃に設定した水浴中にビーカーを1時間置いた。粘度をブルックフィールド社製DV-II(スピンドル2)を用いて10 s-1のずり速度で測定した。
【0072】
本発明の噴霧湯煮/乾燥でんぷんにより、高濃度(4.0〜4.2%)が必要で塊を形成するその他のCWSSと比較して非常に低濃度(3.1%)で、粘性のペースト(非塊状)を得ることができた。
【0073】
図2は、光学顕微鏡を用いて撮影した写真であり、懸濁液中において損なわれていない状態で膨潤する顆粒を示している。
【0074】
<比較実施例>
でんぷん原料物質(C♭EmTex 06328)および噴霧湯煮/乾燥C♭EmTex 06328(本発明)およびアルファ-アミラーゼ処理n-オクテニルスクシネートでんぷんの製品特性を、表3において比較する。
【0075】
表3
【0076】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、少なくとも95℃の温度での、本発明のでんぷん(噴霧乾燥したC♭EmTex 06328)15 gの、500 mlの波立てない鉱水(pH 6.0;SpaTM、ベルギー)における分散を撮影した写真を示す。
【図2】図2は、光学顕微鏡(x100)を用いて撮影した写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満、好ましくは20秒未満、さらに好ましくは15秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷん(non-lumping granular cold water swellable starch)。
【請求項2】
前記でんぷんが冷水中で、または少なくとも95℃の温度の水中において分散できることを特徴とする、請求項1記載のでんぷん。
【請求項3】
少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が20秒未満、好ましくは15秒未満で発現することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1つに記載のでんぷん。
【請求項4】
ブルックフィールド粘度が、20℃における脱塩水中3%の濃度で4500 mPa.sより高い、好ましくは5000 mPa.sより高い、さらに好ましくは5500 mPa.sより高いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のでんぷん。
【請求項5】
冷水または少なくとも95℃の温度の水中に分散させた際に、でんぷんの顆粒が、損なわれていない状態を維持することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のでんぷん。
【請求項6】
前記でんぷんが、天然マメでんぷん(leguminous starch)、天然穀類でんぷん(cereal starch)、天然根菜でんぷん(root starch)、天然塊茎でんぷん(tuber starch)、天然果実でんぷん(fruit starch)、化工マメでんぷん、化工穀類でんぷん、化工根菜でんぷん、化工塊茎でんぷん、化工果実でんぷん、ワクシー種のでんぷん(waxy type starches)、高アミロースでんぷん、およびそれらの混合物からなる群から選択される起源から得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のでんぷん。
【請求項7】
化工でんぷんが、漂白、エステル化、エーテル化、リン酸化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される加工により得られることを特徴とする、請求項6記載のでんぷん。
【請求項8】
でんぷんが、漂白およびn-アルケニル-スクシニル化、好ましくはn-オクテニル-スクシニル化により得られることを特徴とする、請求項7記載のでんぷん。
【請求項9】
少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんを製造する方法であって、この方法が、以下の段階:
a1)でんぷんの漂白、
b)段階a1)の前記でんぷんを、噴霧湯煮/乾燥(spray-cooking/drying)、ロール乾燥、水性アルコールを用いる糊化(pregelatinisation)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理、好ましくは噴霧湯煮/乾燥により処理すること、
を含む、前記の製造方法。
【請求項10】
段階a2)でんぷんの化学的な加工、
をさらに含み、そして段階a1)およびa2)の順序が交換可能であるか、または段階a1)およびa2)が同時に行われ、好ましくは段階a1)および段階a2)が同時に行われ、さらに好ましくは、段階a2)が段階a1)の前に行われる、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
段階a2)n-アルケニルコハク酸無水物、好ましくはn-オクテニルコハク酸無水物によるn-アルケニル-スクシニル化、
をさらに含み、そして段階a1)およびa2)の順序が交換可能であるか、または段階a1)およびa2)が同時に行われ、好ましくは段階a1)および段階a2)が同時に行われ、さらに好ましくは、段階a2)が段階a1)の前に行われる、請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
段階a1)において、アルカリ条件下で活性塩素を形成できる反応剤を用いて漂白が行われることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
活性塩素が、100〜4000 ppmの量で存在することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アルカリ条件が7.5〜11.5のpHであることを特徴とする、請求項12または13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記の方法が、以下の段階:
a1)7.5〜11.5のpHで100〜4000 ppmの量で存在する活性塩素を用いる、でんぷんの漂白、
a2)n-オクテニルコハク酸無水物を用いるn-オクテニルスクシニル化、
b)漂白されたn-オクテニルスクシニル化でんぷんの噴霧湯煮/乾燥、
を含み、段階a1)および段階a2)が同時に行われるか、または段階a2)が段階a1)の前に行われることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも95℃の温度において水中に分散させた場合に、その全体の粘度が30秒未満で発現する(少なくとも3%の濃度において)、冷水での膨潤が可能な非塊状の粒状でんぷんの、食品、飼料製品、化粧品、医薬品、農薬および産業における応用への使用。
【請求項17】
食品が、スープ、ソース、デザート、ドレッシング、ベーカリー製品およびソースのバインダーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項16記載の使用。
【請求項18】
飼料製品が、ペットフード、魚の餌料および子豚の飼料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16記載の使用。
【請求項19】
医薬品が、錠剤における賦形剤、シロップ剤のための増粘剤、および液剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532733(P2007−532733A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507733(P2007−507733)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003829
【国際公開番号】WO2005/100407
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506207668)セレスタール・ホールデイング・ベスローテン・フェンノートシャップ (3)
【Fターム(参考)】