説明

歩行型移動農機

【課題】耕耘作業を行う耕耘ロータリの後方をカバー可能な後方カバーを備え、該後方カバーの姿勢を切換えるための回動作業を、容易且つ簡易的に行うことが可能な歩行型移動農機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、操向操作を行うハンドル7と、耕耘作業を行う耕耘ロータリ4とを備え、耕耘ロータリ4の後方に後方カバー18を上下回動可能に支持し、後方カバー18を、下方位置に回動させて耕耘ロータリ4の後方をカバーするカバー姿勢と、上方位置に回動させて耕耘ロータリ4の後方を開放させる開放姿勢とに姿勢切換可能に構成した歩行型移動農機において、後方カバー18のカバー姿勢と開放姿勢との姿勢切換操作を行う切換操作具を後方カバー18から離間した位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耕耘作業を行う耕耘ロータリの後方をカバー可能な後方カバーを備えた歩行型移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
操向操作を行うハンドルと、耕耘作業を行う耕耘ロータリとを備え、耕耘ロータリの後方をカバーする後方カバーを設けた歩行型移動農機が従来公知である。該構成の歩行型移動農機は、後方カバーによって耕耘ロータリの後方への耕耘土等の跳ね上げ等を防止できる一方で、耕耘ロータリ後方に、培土器や尾輪等の各種機器を着脱自在に配設する際、後方カバーが妨げになる場合がある他、後進時には後方カバーが土中に不測に突き刺さり、後方カバーが破損したりする等の問題があった。
【0003】
この問題を改善したものとして、後方カバーを上下回動可能に支持し、該後方カバーを、下方位置に回動させて耕耘ロータリの後方をカバーするカバー姿勢から、上方位置に回動させて耕耘ロータリの後方を開放させる開放姿勢への姿勢切換を行った後、上記各種機器を着脱させる特許文献1に示す歩行型移動農機が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−307011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の歩行型移動農機は、作業者が後方カバーを直に把持して、後方カバーの姿勢切換操作を行う必要があり、後方カバーの姿勢切換作業を行う際には、耕耘ロータリによる耕耘作業等、別作業を行うことができない場合があり、課題が残る。
本発明は、上記課題を解決し、耕耘作業を行う耕耘ロータリの後方をカバー可能な後方カバーを備え、該後方カバーの姿勢を切換えるための回動作業を、容易且つ簡易的に行うことが可能な歩行型移動農機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明機は、第1に、操向操作を行うハンドル7と、耕耘作業を行う耕耘ロータリ4とを備え、耕耘ロータリ4の後方に後方カバー18を上下回動可能に支持し、後方カバー18を、下方位置に回動させて耕耘ロータリ4の後方をカバーするカバー姿勢と、上方位置に回動させて耕耘ロータリ4の後方を開放させる開放姿勢とに姿勢切換可能に構成した歩行型移動農機において、後方カバー18のカバー姿勢と開放姿勢との姿勢切換操作を行う切換操作具を後方カバー18から離間した位置に設けたことを特徴とする。
【0007】
第2に、前記切換操作具を、前後進切換又は変速操作を行う変速レバー8によって構成したことを特徴とする。
【0008】
第3に、前記切換操作具を、ハンドル7の把持部7aに沿って設けられた切換レバー32によって構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される本発明によれば、後方カバーの姿勢切換を切換操作具によって行うため、作業者が直に後方カバーを上下回動させて後方カバーの姿勢切換を行う場合と比較して、後方カバーの姿勢切換作業をより容易且つ簡易に行うことが可能になり、利便性が向上するという効果がある。
【0010】
また、前記切換操作具を、前後進切換又は変速操作を行う変速レバーによって構成することにより、前後進切換操作や変速操作に後方カバーの姿勢切換が連動するため、利便性がさらに向上するという効果がある。
【0011】
さらに、前記切換操作具を、ハンドルの把持部に沿って設けられた切換レバーによって構成することにより、操向操作を行いながら、後方カバーの姿勢切換操作を行うことが容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A),(B)は本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型の管理機の平面図及び側面図である。
【図2】(A),(B)は、後方カバー及び支持機構の構成を示す背面図及び側面図である。
【図3】(A),(B)は位置決めプレートの構成を示す平面図及び要部側面図である。
【図4】(A),(B)は、本発明の別実施形態を示す歩行型の管理機の平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(A),(B)は本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型の管理機の平面図及び側面図である。図示する管理機は、機体フレーム1と、機体フレーム1上に固定設置(固設)されたエンジン2と、エンジン2上方に固設された燃料タンク3と、エンジン動力によって駆動させる左右方向の耕耘ロータリ(耕耘作業機)4と、機体フレーム1の後端部から上方突出するハンドルフレーム6を介して後方斜め上方に延説される操向操作具であるハンドル7と、変速操作を行う変速レバー(前後進切換レバー)8と、を備えている。
【0014】
上記機体フレーム1は、前後方向の主フレーム9と、主フレーム9の後部から前方に向かって下方傾斜するミッションケース11等とによって、構成されている。主フレーム9の前端部には、本管理機を持上げる際のグリップにもなる平面視逆U字状のダンパー12が取付固定され、主フレーム9の後端部からは、各種機器を取付ける取付部となるヒッチ13が後方に向かって一体的に延説されている。
【0015】
機体フレーム1上における上記エンジン2の側方には伝動ケース14が取付固定され、エンジン動力が、伝動ケース14内の伝動ベルト(図示しない)を介して、ミッションケース11内の変速機構(図示しない)に伝動される。くわえて、伝動ケース14内には、この伝動ベルト14のテンションを調整するテンションプーリからなり、上記変速機構へのエンジン動力の伝動を断続するテンションクラッチ(図示しない)が設けられている。
【0016】
上記耕耘ロータリ4は、ミッションケース11の下部に前後回転自在に挿通支持された左右方向のロータリ軸16と、ロータリ軸16に軸装さされてロータリ軸と一体で回転する複数の耕耘爪(図示しない)とによって構成されている。そして、エンジン動力が、上記変速機構を介してロータリ軸16に変速伝動され、耕耘ロータリ4が駆動されることにより、圃場での耕耘作業を行う。
【0017】
耕耘ロータリ4の上方はフェンダーカバー17によって覆われ、耕耘ロータリ4の後方は左右一対の後方カバー18,18によって覆われる。フェンダーカバー17は、主フレーム9の上端部から水平方向に一体的に延説される板状部材であり、機体フレーム1上方への耕耘土の飛散が防止される。左右の後方カバー18,18は、支持機構19によって、上記ヒッチ13に上下回動自在に支持され、後方への耕耘土の飛散を防止する。
【0018】
また、上記ヒッチ13の後端部には、上下方向に延びる取付筒13aが形成され、この取付筒13aを介して、圃場走行中に土中に挿入されて本管理機の姿勢を安定させる抵抗棒21や、圃場に畝を成形する培土器(図示しない)や、走行輪となる尾輪20(図2参照)等が着脱自在に取付けられる。ちなみに、抵抗棒21は、左右の後方カバー18,18の間に位置し、後方カバー18の上下回動の妨げにならないように構成されている。
【0019】
上記左右のハンドル7は、平面視後方に向かってハの字状に広がるとともに、後方に向かって斜め上方を向いた前部及び中途部に対して、後部が下方に屈曲形成されている。各ハンドル7の後端部にはグリップ(把持部)7aが形成され、該左右の一方側(図示する例では左側)のグリップ7a近傍には、クラッチレバー22が上下揺動操作可能に支持されている。
【0020】
このクラッチレバー22は、ワイヤ等の連係機構を介して上記テンションクラッチと機械的に連結されており、平行状態でグリップ7a上端側に近接させるクラッチレバー22の下方揺動によって、テンションクラッチを接続作動させる一方で、グリップ7aから離間して後方に向かって上方傾斜するクラッチレバー22の上方揺動によって、テンションクラッチを切断作動させる。クラッチレバー22は上方揺動側に常時弾性的に付勢され、クラッチレバー22の下方揺動時には該クラッチレバー22をグリップ7aとまとめて把持可能である。すなわち、クラッチレバー22は、下方揺動させる入操作時のみ、テンションクラッチを接続作動させるデットマンクラッチになる。
【0021】
作業者は、左右のグリップ7aを把持して操向操作を行うとともに、クラッチレバー22の操作によって、耕耘ロータリの駆動の入切を行う。
【0022】
上記変速レバー8は、ミッションケース11から後方斜め上方に上下揺動操作可能に突出形成され、ハンドルフレーム6の側方に固設されたガイドプレート23のガイド孔23aに基端部が揺動案内可能に挿通されている。そして、変速レバー8を上下揺動によって、変速機構を介した、前後進切換操作及び変速操作を行う。具体的には、耕耘ロータリ4への動力伝動が切断されるニュートラル位置からの下方揺動により後進位置に切換え、ロータリ軸16に変速機構を介して逆転動力を伝動し、管理機を後進駆動させる一方で、ニュートラル位置からの上方揺動により前進位置に切換え、ロータリ軸16に変速機構を介して正転動力を伝動し、管理機を前進駆動させる。くわえて、前進位置からのさらなる上方揺動によって増速位置に切換え、ロータリ軸16に伝動される前進駆動側への動力を増速させる。
【0023】
次に、図2及び3に基づき、上記後方カバー18及び支持機構19の構成について説明する。
図2(A),(B)は、後方カバー及び支持機構の構成を示す背面図及び側面図である。支持機能19は、ヒッチ13の後部に穿設された左右方向の挿通孔13bと、挿通孔13bに挿通固定された軸受け24と、該軸受け24を介して左右突出状態でヒッチ13に前後回動自在且つ左右スライド可能に挿通支持される左右方向の回動軸26と、ヒッチ13の左右の一方側(図示する例では右側)側部に配置された位置決め部材である位置決めプレート27と、ヒッチ13の左右の他方側側方に配置された圧縮スプリング(弾性部材)28と、を備えている。
【0024】
上記回動軸26のヒッチ13からの左右突出部分には、方形板状の後方カバー18の水平方向の辺縁部(図示する例では、左右方向の上端部)がそれぞれ取付固定され、この左右の両後方カバー18,18は同一姿勢で回動軸26と一体で上下回動するように構成されている。また、前述したように、回動軸26が左右スライド可能であるため、後方カバー18,18をヒッチ13に対して左右動させることができる。
【0025】
上記圧縮スプリング28は、回動軸26におけるヒッチ13から左右に突出した箇所の一方側(図示する例では左側)に、フリーな状態で外装されている。そして、圧縮スプリング28の両端部は後方カバー及びヒッチ13に当接し、両後方カバー18,18を、左右方向における圧縮スプリン28配置側(図2のX1方向)に常時付勢している。
【0026】
図3(A),(B)は位置決めプレートの構成を示す平面図及び要部側面図である。上記位置決めプレート27は、回動軸26が前後回動自在に挿通された状態で、ヒッチ13の側面に取付固定され、その周縁部に3つの凹部27a,27b,27cを有している。一方、左右の後方カバー18,18の内、位置決めプレート27配置側の後方カバー18には、ヒッチ13側に突出する左右方向の位置決めピン(位置決め部)29が固設されている。
【0027】
後方カバー18のヒッチ13側端部を、位置決めプレート27に当接させ、位置決めピン29を、上記3つの凹部27a,27b,27の何れかに挿入することにより、後方カバー18の状態が切換えられる。具体的には、位置決めプレート27の周縁部の前部側に位置する凹部である上限固定凹部27aに、位置決めピン29を嵌合挿入することにより、両後方カバー18,18が上限固定位置A(図2(B)参照)で位置決めされる上限固定状態になり、位置決めプレート27の周縁部の後部側に位置する凹部である下限固定凹部27bに、位置決めピン29を嵌合挿入することにより、両後方カバー18,18が下限固定位置B(図2(B)参照)で位置決めされる下限固定状態になり、位置決めプレート27周縁部の上限固定凹部27aと下限固定凹部27bとの間の下部側に位置する凹部である回動許容凹部27cに、位置決めピン29を移動許容状態で挿入することにより、上限固定位置Aと下限固定位置Bの間における両後方カバー18,18の上下回動が許容される回動許容状態になる。
【0028】
また、後方カバー18は、上記圧縮スプリング28によって位置決めプレート27と当接させる側に常時付勢されているため、通常、後方カバー18と位置決めプレート27とは当接し、位置決めピン29は上記3つの凹部27a,27b,27cの何れかに挿入され、上限固定状態と下限固定状態と回動許容状態との何れかの状態になる。そして、圧縮スプリング28の弾性力に抗して、左右の後方カバー18,18を、左右方向における圧縮スプリング28を配置していない側(図2のX2方向)に変位させ、後方カバー18をフリー状態で上下回動できる状態にすることにより、上限固定状態、下限固定状態又は回動許容状態の何れかへの状態切換を行う。
【0029】
なお、回動許容状態時には、後方カバー18が、後方カバー18から離間した位置に設けられた切換操作具によって上下回動操作される。そして、後方カバー18は、該上下回動操作によって、下方位置に回動されて耕耘ロータリ4の後方をカバーするカバー姿勢と、上方位置に回動されて耕耘ロータリ4の後方を開放する開放姿勢との姿勢切換を行うことができるように本管理機は構成されている。
【0030】
次に、図1に基づき、切換操作具の構成について説明する。
図1に示す例では、切換操作具が変速レバー8になり、変速レバー8と後方カバー18とがワイヤ等から構成される連係機構31によって、機械的に連結されている。具体的には、変速レバー8を後進位置に切換操作した際に、後方カバー18が開放姿勢に切換えられる一方で、変速レバー8をニュートラル位置、前進位置又は増速位置の何れかに切換操作した際に、後方カバー18がカバー姿勢に切換えられるように、連係機構31が構成されている。
【0031】
次に、図4に基づき、本発明の別実施形態について前述の実施例と異なる部分を説明する。
図4(A),(B)は、本発明の別実施形態を示す歩行型の管理機の平面図及び側面図である。同図では、グリップ7aに沿った状態でクラッチレバー22側のハンドル7に設置された切換レバー32によって上記切換操作具を構成した例につき示している。
【0032】
切換レバー32は、連係機構31を介して上記後方カバー18と機械的に連結されており、平行状態でグリップ7a下端側に近接させる切換レバー32の上方揺動によって、後方カバー18の開放姿勢への切換を行う一方で、グリップ7aから離間して後方に向かって下方傾斜する切換レバー32の下方揺動によって、後方カバー18のカバー姿勢への切換を行う。切換レバー32は下方揺動側に常時弾性的に付勢され、切換レバー32の上方揺動時には該切換レバー32をグリップ7aとまとめて把持可能である。すなわち、切換レバー32を上方揺動させる切換操作時のみ、後方カバー18が開放姿勢に切換わり、それ以外の場合には、後方カバー18がカバー姿勢に切換えられた状態になる。
【0033】
なお、切換操作具を機械的に連結せずに、モータ等のアクチュエータで後方カバーを上下回動させて後方カバーの上記姿勢切換操作を行ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
4 耕耘ロータリ(耕耘作業機)
7 ハンドル(操向操作具)
7a グリップ(把持部)
8 変速レバー(前後進切換レバー)
18 後方カバー
32 切換レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作を行うハンドル(7)と、耕耘作業を行う耕耘ロータリ(4)とを備え、耕耘ロータリ(4)の後方に後方カバー(18)を上下回動可能に支持し、後方カバー(18)を、下方位置に回動させて耕耘ロータリ(4)の後方をカバーするカバー姿勢と、上方位置に回動させて耕耘ロータリ(4)の後方を開放させる開放姿勢とに姿勢切換可能に構成した歩行型移動農機において、後方カバー(18)のカバー姿勢と開放姿勢との姿勢切換操作を行う切換操作具を後方カバー(18)から離間した位置に設けた歩行型移動農機。
【請求項2】
前記切換操作具を、前後進切換又は変速操作を行う変速レバー(8)によって構成した請求項1の歩行型移動農機。
【請求項3】
前記切換操作具を、ハンドル(7)の把持部(7a)に沿って設けられた切換レバー(32)によって構成した請求項1の歩行型移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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