説明

歪み低減装置

力率改善方法及び装置は、ダイナミックな無効特性を有する負荷に、ビット無効負荷を選択的に接続し、力率をダイナミックに改善する。電源配線系の歪みを低減する方法及び装置は、電力線の歪みを判定し、歪みに応じて補正信号を生成し、補正信号に応じて、電力線に対して選択的に電流を流し出し及び流し込む手段を備える。さらに、太陽光発電システムの電力はその装置を介して負荷に流し込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2010年1月25日に出願された米国仮特許出願番号61/298,112、発明の名称「METHODS AND APPARATUS FOR POWER FACTOR CORRECTION AND REDUCTION OF DISTORTION IN AND NOISE IN A POWER SUPPLY DELIVERY NETWORK」と、2011年1月19日に出願された米国仮特許出願番号61/434,250、発明の名称「POWER FACTOR AND HARMONIC CORRECTION METHODS」と、2011年1月25日に出願された米国仮特許出願番号61/435,921、発明の名称「POWER FACTOR AND HARMONIC CORRECTION METHODS」と、2011年1月24日に出願された米国仮特許出願番号61/435,658、発明の名称「AUTOMATIC DETECTION OF APPLIANCES」と、2010年1月25日に出願された米国仮特許出願番号61/298,127、発明の名称「AUTOMATIC DETECTION OF APPLIANCES」の優先権を米国特許法第119条に基づき主張する。また、本出願は、2010年1月26日に出願された同時係属中の米国特許出願番号12/694,153、発明の名称「POWER FACTOR AND HARMONIC CORRECTION METHODS」の一部継続出願であり、この原出願は、2009年1月26日に出願された米国仮特許出願番号61/206,051、発明の名称「POWER FACTOR AND HARMONIC CORRECTION METHODS」の優先権を主張している。また、本出願は、2010年1月26日に出願された同時係属中の米国特許出願番号12/694,171、発明の名称「ENERGY USAGE MONITORING WITH REMOTE DISPLAY AND AUTOMATIC DETECTION OF APPLIANCE INCLUDING GRAPHICAL USER INTERFACE」の一部継続出願であり、この原出願は、2009年1月25日に出願された米国仮特許出願番号61/206,072、発明の名称「ENERGY USAGE MONITORING WITH REMOTE DISPLAY AND AUTOMATIC DETECTION OF APPLIANCE INCLUDING GRAPHICAL USER INTERFACE」の優先権を主張しており、本出願はまた、2011年1月25日に出願された米国特許出願番号12/XXX,XXX、代理人番号 RADA-0040の優先権の利益を主張する。これらは全て、あらゆる目的のためにその全体が引用によって本願に援用される。
【0002】
本願発明は、パワーエレクトロニクスに関するものである。より詳しくは、本願発明は、負荷へ供給する電力または負荷によって生成される電力のる歪み及びノイズを低減することならびに力率を改善することに関するものである。
【背景技術】
【0003】
力率の改善は、現在の電源供給システムの効率を向上させる重要な要素である。電力を消費する負荷、例えばモータを有する家電機器の無効成分の影響によって、位相のズレが、電力信号を構成する電流成分と電圧成分との間で発生する。交流電源システムの力率は、皮相電力に対する負荷に流れる有効電力の比として定義され、その値は0と1との間である(0.5pf=50%pfのように、よくパーセンテージで表される)。有効電力(P)は、特定の時間内に仕事を行う回路の容量である。皮相電力(S)は、回路の電流と電圧との積である。無効電力(Q)は、Sの二乗とPの二乗との差分の平方根として定義される。無効負荷が存在する、例えば、コンデンサ又はコイルを有する場合、負荷にエネルギーが蓄積されることによって、電流波形と電圧波形との間に時間差が生じる。交流電圧の各周期において、負荷で消費されるエネルギーに加えて、余分なエネルギーが、電界又は磁界において負荷に一時的に蓄積され、そして、交流電圧の周期の何分の1秒間か遅れて電力送電網に戻される。この非生産的電力の「満ち引き」によって、電力線の電流が増大する。したがって、低力率の回路は、所与の量の有効電力を伝えるために、高力率の回路よりも大きい電流を使用することになる。線形の負荷は、電流波形の形状を変化させないが、電圧と電流との間の相対的なタイミング(位相)を変化させる場合がある。通常、力率を改善する方法及び装置は、電力線に対して、既知の無効値を有する固定の補正用負荷を接続してきた。固定の容量の無効負荷は、インダクタンス特性を有する負荷の無効効果を打ち消し、また逆も成り立ち、これによって電力線の力率を向上させる。しかしながら、力率は、電力線に接続及び分離される負荷の性質の変化に起因して動的であり得るので、固定の無効負荷は、ある程度までのある固定量しか電力線の力率を改善することができない。このため、より最近の技術成果としては、力率を改善するため、電力線に対して選択的に接続する、いくつかの固定無効負荷を有している。しかしながら、このようなシステムは、絶えず変化する電力線の力率に対応するために、力率を絶えず監視して固定無効負荷を接続及び分離しなければならない操作者による監視が必要である。
【0004】
電子機器の状況の変化に伴い、電力の配電に関して他の非効率性が発生している。個人の家電機器の更なる使用によって、機器に電力を供給し、ありふれたアイテム、例えばラップトップ、携帯電話機、カメラなどのバッテリを再充電する壁に取り付けられたAC/DC変換器の使用が増大した。このようなアイテムが遍在することにより、ユーザは、「壁イボ(wall warts)」として知られているいくつものこのような変換器を電力系統に接続するようになった。2つの最も一般的なAC/DC変換器は、線形変換器とスイッチング式変換器として知られている。線形変換器は、降圧器を用いて、アメリカ合衆国の住宅において利用可能な規格である120Vの電力を所望の電圧に降圧する。ブリッジ整流器はこの電圧を整流する。ブリッジ整流器は、通常、コンデンサに接続される。通常、このコンデンサは容量が大きい。
【0005】
コンデンサは、逆起電力を形成する。コンデンサは、充電及び放電される際直流電圧に近い電圧を形成する。しかしながら、コンデンサは、充電しながら、交流電源の周期のうちの少しの間だけ、非線形ブリッジ整流器により電流を引き込む。結果として、電流波形は、電圧波形と一致せず、大きな高調波歪み成分を含む。全高調波歪み(THD)は、基本周波数の電力に対する全ての高調波成分の電力の合計である。このような高調波歪みは、電力網に影響を及ぼす。
【0006】
スイッチング電源は、異なる原理で動作するが、これもまた電力配電網に高調波を送り込む。通常、スイッチモード電源は、アメリカ合衆国の住宅で利用可能な120Vの電圧を整流することによって動作する。大きな平滑コンデンサなどの逆起電力に対する整流もまた、高調波及び歪みを加える。また、多様な種類の線形又はスイッチモード集積回路が広範囲に亘って適応されると、システムは電気ノイズを生成することになる。更に、交流網の無効成分は力率を劣化させ、そして集積回路によって、高調波及びノイズが、電力線に影響を及ぼすことになる。これらの高調波は、電力信号の電流成分の高調波歪みとして現れる。電力網は0ではないインピーダンスを有するので、電流成分に沿った歪みは、また振幅歪みに変換し得る。振幅歪みとは、出力振幅が、特定の状態の下で入力振幅の線形関数ではないときに、システム、サブシステム又は機器で生じる歪みである。また、他の望ましくない影響、例えば力率歪み及びエネルギー伝送の全体的な低減が形成される。このような影響は、効率を減少させ、配電の品質を低下させる。このため、必要なことは、力率を改善するだけではなく、電力線の歪みを低減又は除去することが可能であり、それによって配電における最大効率及び品質を可能とする方法及び装置である。結果として、全体としての消費エネルギーを低減させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで提供される本発明は、電力網から負荷に亘る電力供給の効率及び品質を向上することを可能にする。当業者にとって明らかなように、本願に記載する方法及び装置は、最適ではない力率の原因となり、歪み及びノイズが電力網に送り戻される原因となる無効非線形成分を有する多種多様な負荷に適用することができる。使用目的によっては、負荷は家庭の住宅である。負荷は、住宅内に電力を引き込む全家電機器からなる並列の組合せである。住宅内のユーザが家電機器を動作及び停止するので、電力計を介する送電網に対して、住宅は、無効非線形特性とが変化する1つの動的な負荷のようにみえる。都合が良いことに、本願が提供する発明は、従来技術の解決策の固有の欠点、例えば、高額なコスト、複数箇所における複雑な取り付け、上方又は下方に補償して力率を低下する固定力率改善補償、及び低性能を解決する。本願が提供する発明は、負荷の無効電力成分を動的に測定し、少なくとも1つの補正無効負荷を接続することによって、負荷に対して力率を改善することができる。無効電力が変化すると、例えば洗濯機が動作すると、本願が提供する発明は、負荷の特性が変化したことを認識することができ、低力率の原因となっている負荷に対して他の補正無効負荷を接続及び分離することができる。更に、本願が提供する発明は、網によって負荷に供給される電力の歪み及びノイズを補正し、これによって電力の品質を向上することができる。本願が提供する発明は、歪み又はノイズなどを有する電気信号を基準信号と比較する。電気信号は、網によって負荷に供給される電力の電流成分であってもよい。基準信号は、負荷に供給される電力の電圧成分から導出してもよいし、又は別途合成されるが電圧波形と同期するものであってもよい。補正信号は、歪みを有する電気信号から基準信号を比較又は減算することによって導出される。補正信号は歪みを有する。補正信号に応じて、歪みを有する電気信号から電流を流し出し又は流し込むことにより歪みを低減する。都合が良いことに、本発明は、ある一点において住宅の全ての非線形負荷によって生じる歪みを補正することができる。本発明は、事業者メーターと住宅との間に接続することができる。結果として、本発明は、住宅における家電機器の数、これら機器の配置、又はあらゆる他のパラメーターを選ばない。また、本発明は、力率又は歪みを悪化させることなく、所有地内網の範囲内であらゆる他の負荷を追加することなく、必要に応じて歪み及び力率を改善するのでエネルギー効率が良い。
【0008】
本発明の一態様において、歪みを有する電気信号の歪みを低減させる歪み低減方法は、歪みを有する電気信号の歪みを検知するステップと、歪みの係数に歪みを有する電気信号を混合するステップとを有する。いくつかの実施の形態において、検知するステップは、歪みを有する電気信号を基準信号と比較して差分信号を得るステップと、差分信号をスケーリングして歪みの係数を生成するステップとを有する。混合するステップは、歪みの係数が正の場合、歪みを有する電気信号から歪みの係数を減算するステップと、歪みの係数が負の場合、歪みを有する電気信号を歪みの係数に加算するステップとを有する。いくつかの実施の形態において、減算するステップは、歪みを有する電気信号が供給される第1の制御電流源に歪みの係数を適用するステップであり、加算するステップは、歪みを有する電気信号が供給される第2の制御電流源に歪みの係数を適用するステップである。歪みの係数を第1の制御電流源に適用するステップは、力率が補正された正の電力信号を第1の制御電流源に適用するステップを更に有し、歪みの係数を第2の制御電流源に適用するステップは、力率が補正された負の電力信号を第2の制御電流源に適用するステップを更に有する。
【0009】
いくつかの実施の形態において、混合するステップは、歪みの係数を変調するステップを有する。歪みの係数は、歪みの係数が負の場合に歪みを有する電気信号が加算され、歪みの係数が正の場合に歪みを有する電気信号から減算される。加算及び減算するステップは、歪みを有する電気信号が供給される第1のスイッチに歪みの係数を適用し、歪みを有する電気信号が供給される第2のスイッチに歪みの係数を適用することによって実現することができる。歪みの係数を変調するステップは、パルス幅変調、デルタ−シグマ変調、パルスコード変調、パルス密度変調又はパルス位置変調を含み得る。歪みの係数を第1のスイッチに適用するステップは、力率が補正された正の電力信号を第1の制御電流源に適用するステップを更に有し、歪みの係数を第2の制御電流源に適用するステップは、力率が補正された負の電力信号を第2の制御電流源に適用するステップを更に有する。都合が良いことに、変調技術を用いることによって、スイッチを非常に効率的に制御することができる。いくつかの実施の形態において、アナログフィルタ又はデジタルフィルタを設けることによって、変調信号をフィルタリングすることができる。
【0010】
いくつかの用途においては、電力網のインピーダンスは、電力網が電力を供給している負荷のインピーダンスよりもずっと低い場合がある。このような状況では、流し込む電流又は流し出す電流の方向を反転させる必要がある場合があることが当業者によって明らかである。一例として、負の歪みは、電力線に電流を送り込む、すなわち流し込むことによって規則的に補正される。しかしながら、負荷のインピーダンスが電力網のインピーダンスより大きい場合、電流は負荷ではなくて電力網に送り込まれることになる。結果として、反対の機能が行われ得る。このような結果として、送電網から引き込まれる全電流波形の十分な歪み補正が実現される。
【0011】
本発明の他の態様において、電力線の歪みを低減する歪み低減方法は、力率が実質的に1になるように電力線の力率を改善するステップと、電力線の電流部分を所望の基準信号と比較して補正信号を生成するステップと、補正信号に応じて、電力線に対して電流を選択的に流し出し流し込むステップとを有する。力率を改善するステップは、あらゆる公知の力率改善方法又は本明細書に記載のいかなる方法であってもよい。いくつかの実施の形態において、電流を選択的に流し出し流し込むステップは、補正信号を少なくとも1つの制御電流源に供給するステップを有し、制御電流源は、補正信号に応じて電流源を電力線に接続する。あるいは、電流を選択的に流し出し流し込むステップは、補正信号を変調するステップと、変調補正信号を少なくとも1つのスイッチに供給するステップとを有し、スイッチは電流源を電力線に接続し、変調ノイズをフィルタリングする。補正信号を変調するステップは、パルス幅変調、デルタ−シグマ変調、パルスコード変調、パルス密度変調又はパルス位置変調などいずれであってもよい。
【0012】
いくつかの用途においては、電力網のインピーダンスは、電力網が電力を供給している負荷のインピーダンスよりもずっと低い場合がある。このような状況では、流し込む電流又は流し出す電流の方向を反転させる必要がある場合があることが当業者によって明らかである。一例として、負の歪みは、電力線に電流を送り込む、すなわち流し込むことによって規則的補正される。しかしながら、負荷のインピーダンスが電力網のインピーダンスより大きい場合、電流は負荷ではなく電力網に送り込まれる。結果として、反対の機能が行われることになる。このような結果として、送電網から引き込まれる全電流波形の十分な歪み補正が実現される。
【0013】
動作中に、電気信号、例えば住宅に供給される電力の歪みを低減する。歪みは、高調波歪み、振幅歪み、ノイズ、高スペクトルノイズなどである。住宅に供給される電力は、電圧及び電流から構成される。通常、負荷に供給される電力の電流成分には、負荷の非線形性に起因した歪みが表れる。電力の電圧成分などの完全な正弦波と電流を比較することによって、歪みを確かめることができる。完全な正弦波は、基準信号としての役割を果たすことができる。電圧の正弦波が完全ではない場合、例えば振幅歪みが電圧の正弦波を歪めているとき、完全に近い正弦波を、電圧の正弦波に同期することによって局所的に生成することができる。例えば、ゼロ交差変換をマーカーとして用いることで、完全に近い正弦波を生成することができる。基準信号を歪みを有する電気信号から減算することによって、補正信号を生成する。補正信号は歪みの係数を有する。歪みの正の部分を、住宅に電力を供給する電力線に供給される電流シンクに加える。電流シンクは、歪みに応じて電力線の外に電流を流し出す。同様に、歪みの負の部分を、住宅に電力を供給する電力線に供給される電流源に加える。歪みが負のとき、電流源は、歪みに応じて、電力線の中に電流を流し込む。結果として、送電網から引き込まれる電流から歪みが除去される。
【0014】
いくつかの実施の形態において、効率を高めるため、補正信号を変調してもよい。変調する方法は、例えばパルス幅変調、デルタ−シグマ変調、パルスコード変調、パルス密度変調又はパルス位置変調である。変調補正信号は、歪みに応じて住宅に電力を供給する電力線の中に又は外に電流を導く能動スイッチ、例えばMOSFFTに供給される。
【0015】
いくつかの実施の形態において、歪み低減方法は、力率を補正するステップを更に有する。ダイナミック力率改善方法は、第1の負荷の無効電力を測定するステップと、無効電力から得られる力率を測定するステップと、第1の負荷に接続して力率の比を実施的に1にする最適な補正無効負荷を決定するステップと、該最適な補正無効負荷を第1の負荷に接続するステップとを有する。
【0016】
いくつかの実施の形態において、最適な補正無効負荷を第1の負荷に接続するステップは、MSB及びLSBを有する所望の精度の量子化レベルを選択するステップと、MSB無効負荷を決定するステップと、LSB無効負荷を決定するステップと、MSB無効負荷とLSB無効負荷のうちのいずれかを第1の負荷と電気的に接続するスイッチであって、所望の精度を達成するのに要求されるビットに対応するスイッチをオンにするステップとを有する。通常、所望の精度は、力率の比の許容値を決定することを含む。量子化レベルは、MSBとLSBとの間に少なくとも1ビットをさらに含むことができる。LSB無効負荷、MSB無効負荷と、および該少なくとも1ビットから構成されるビット無効負荷の値を決定するステップは、第1の負荷の最大の無効成分を決定するステップを有する。MSB無効負荷とLSB無効負荷と少なくとも1ビットから構成されるビット無効負荷とは、通常、コンデンサであり、スイッチ、能動スイッチ、MOSFFT、IGBTトランジスタ、一対のMOSFFT、一対のIGBTトランジスタ、TRIAC、リレー、サイリスタ、及び一対のサイリスタなどのいずれかを介して無効負荷と接続され得る。いくつかの実施の形態において、無効電力は絶えず監視され、第1の負荷に接続されて無効電力を実質的に0にするとともに、力率を実質的に1にする新たな最適な補正無効負荷がダイナミックに決定される。
【0017】
本発明の他の態様において、歪みを有する電気信号の歪みを低減させるシステムは、歪みを有する電気信号の力率を実質的1にする力率改善モジュールと、電力線の電流の部分を所望の基準信号と比較して補正信号を生成する減算器と、補正信号に応じて、電力線に対して電流を選択的に流し出し流し込む電気回路とを備える。力率改善モジュールは、電力線に接続された第1の負荷の無効電力を測定するセンサと、第1の負荷に接続され第1の負荷の無効成分を打ち消す複数ビット無効負荷とを有する。いくつかの実施の形態において、電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、補正信号を、少なくとも1つの制御電流源に供給し、制御電流源は、補正信号に応じて、電流供給源を電力線に接続する。あるいは、電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、補正信号を変調し、変調補正信号を、電流供給源を電力線に接続する少なくとも1つのスイッチに供給する変調器と、変調ノイズをフィルタリングするフィルタとを有する。変調器は、パルス幅変調器、デルタ−シグマ変調器、パルスコード変調器、パルス密度変調器又はパルス位置変調器などいずれであってもよい。
【0018】
動作中において、歪みを有する電気信号の歪みを低減させる電気回路は、歪みを有する電流信号が入力される第1の入力と、基準信号が入力される第2の入力と、第1の入力及び第2の入力に接続され、歪みを有する電流信号を基準信号から減算して、第1の補正信号を生成する減算器と、第1の補正信号の正の部分と第1の補正信号の負の部分とを、歪みを有する電気信号に選択的に混合する回路とを備える。減算器は、アナログ回路、例えば一方の入力を他方の入力から減算するオペアンプとすることができる。あるいは、減算器は、デジタルシステム、例えば一方の変換ビットストリーム入力を他方の変換ビットストリーム入力からデジタルで減算することが可能なA/D変換器と、その結果を補正信号を含むアナログ信号に変換するD/A変換器とすることができる。
【0019】
いくつかの実施の形態において、選択的に混合する回路は、補正信号の正の部分を判定する減算器の出力と第1の制御電流源とに接続された正の整流器と、補正信号の負の部分を判定する減算器の出力と第2の制御電流源とに接続された負の整流器とを有する。歪みを補正するため電流を選択的に主要の電力線へ流し出し又は主要の電力線から流し込むために、両方の制御電流源は、正の電源と負の電源とそれぞれ接続されている。動作中に、歪みが負のとき、補償する歪みに応じて電流を電力線に流し込む。同様に、歪みが正のとき、電流を流し出すことで歪みを補償する。
【0020】
あるいは、選択的に混合する回路は、補正信号の正の部分を判定する減算器の出力に接続された正のトリガ比較器と、補正信号の負の部分を判定する減算器の出力に接続された負のトリガ比較器と、変調器とすることができる。変調器は、パルス幅変調器、デルタ−シグマ変調器、パルスコード変調器、パルス密度変調器又はパルス位置変調器を含む、あらゆる有効な種類の変調器である。変調器は、補正信号の正の部分と補正信号の負の部分のうちのいずれかを変調する正のトリガ比較器の出力と負のトリガ比較器の出力とに接続することができる。いくつかの実施の形態において、第1のスイッチは、正のトリガ比較器に接続される。第1のスイッチは、補正信号の正の部分に応じて負の直流電源から選択的に電流を供給させ、それによって歪みを低減する。同様に、第2のスイッチは、補正信号の正の部分に応じて正の直流電源から選択的に電流を供給させ、それによって歪みを低減する。
【0021】
いくつかの用途において、電力網のインピーダンスは、電力網によって電力が供給される負荷のインピーダンスよりもはるかに低い。このような状況では、流し込む電流又は流し出す電流の方向を反転させることが必要な場合があることが当業者によって明らかである。一例として、負の歪みは、電力線に電流を送り込む、すなわち流し込むことによって規則的に補正される。しかしながら、負荷のインピーダンスが電力網のインピーダンスより大きい場合、電流は負荷ではなく電力網に送り込まれる。結果として、反対の機能が行われることになる。電力線から電流を流し出すことによって、電流が反対方向に送り出される。
【0022】
いくつかの実施の形態において、歪みを低減する電気回路は、供給される電流と電圧との間の力率を実質的に1にする力率改善回路を更に備える。力率改善システムは、負荷の無効電力を決定する手段と、第1の負荷に接続して力率を実質的に1にするとともに無効電力を実質的に0にする最適な補正無効負荷を決定する手段と、最適な無効負荷を第1の負荷に接続する手段とを備える。いくつかの実施の形態において、最適な無効負荷を第1の負荷に接続する手段は、MSB及びLSBを有する所望の精度の量子化レベルを選択する手段と、MSB無効負荷を決定する手段と、LSB無効負荷を決定する手段と、MSB無効負荷とLSB無効負荷のうちのいずれかを第1の負荷と電気的に接続するスイッチであって、該所望の精度を達成するのに要求されるビットに対応するスイッチをオンにする手段とを備える。量子化レベルは、さらにMSBとLSBとの間に少なくとも1ビットを含む。MSBとLSBとの間のビットを多くすると、力率改善の精度が高くなる、すなわち、実質的に1に近づくことになる。ビット無効負荷は、通常、コンデンサであり、スイッチ、能動スイッチ、MOSFFT、IGBTトランジスタ、一対のMOSFFT、一対のIGBTトランジスタ、TRIAC、リレー、サイリスタ、及び一対のサイリスタを介して無効負荷と接続され得る。
【0023】
本発明の別の実施の形態において、歪みを有する電気信号の歪みを低減させるシステムは、電力線の歪みを有する電気信号のうちの少なくとも一部を所望の基準信号と比較して、補正信号を生成する電気回路と、歪みを改善する補正信号に従って、歪みを有する電気信号に対して直流整流器及び太陽光パネルのうちの1つから電流を選択的に流し出し流し込む電気回路と、太陽光パネルから負荷または電力網の少なくとも1つに追加の電流を選択的に流し込む電気回路とを備える。システムは、太陽光発電がいつ電流を生成しているかを決定するプロセッサと、電流を流し出し流し込むために、直流整流器と太陽光パネルとを切り替えるプロセッサとを更に備えることが好ましく、このプロセッサは同一のプロセッサユニットであってもよい。また、システムは、第1の巻き線及び第2の巻き線を有する変圧器であって、選択的に流し出し流し込む電気回路を前記電力線からガルバニック絶縁し、第2の巻き線が直列接続または並列接続であってもよい変圧器を備える。電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、直流整流器及び太陽光パネルのうちの1つに選択的に接続される正の直流電流を供給するための正の直流電源と、直流整流器及び太陽光パネルのうちの1つに選択的に接続される負の直流電流を供給するための負の直流電源と、負の歪みに応じて正の直流電源の1つから電力線に電流を選択的に流し込むプロセッサと、または正の歪みに応じて電力線から負の直流電源に電流を選択的に流し出すプロセッサとを備えることが好ましく、これらプロセッサはまた、上記したものと同一のプロセッサであってもよい。
【0024】
同様に、電力線の高調波歪みを改善する方法は、上述したとおり補正信号を生成するステップと、整流器及び太陽光発電システムのうちの1つから正の直流電流を生成するステップと、正の直流電流を反転させることによって負の直流電流を生成するステップと、負の歪みを改善するために補正信号に従って負荷に正の直流電流を選択的に流し込むステップと、正の歪みを改善するために補正信号に従って負荷に負の直流電流を選択的に流し込むステップと、太陽発電システムから負荷および電力線の少なくとも1つに追加の有効電力を流し込みそれによって全電流を増加させるステップとを含む。その方法はまた、負荷を正の直流電源及び負の直流電源からガルバニック絶縁するステップを含むことが好ましい。いくつかの実施の形態において、整流器及び太陽光発電システムのうちの1つから正の直流電流を生成するステップは、太陽光発電システムが電流を生成しているかどうかを決定するステップと、太陽光発電システムが電流を生成している場合に太陽光発電システムから電流を流し込むステップまたは太陽光発電システムが電流を生成していない場合に整流器から電流を流し込むステップとを含む。都合が良いことに、上記方法及び装置は、以下で説明するように、高価で非効率なインバータを用いることなく太陽光発電システムから電流を流し込むことを可能にする。
【0025】
本発明の別の態様において、高調波歪みを改善するシステムは、電力線の高調波エネルギーを決定する手段と、高調波エネルギーを蓄える手段と、反対の大きさである高調波エネルギーを打ち消すために高調波エネルギーを選択的に放出する手段とを備える。電力線の高調波エネルギーを決定する手段は上述したとおりであり、電力線の電流成分を測定するセンサと、基準信号を生成する発振器と、補正信号を生成することによって電流成分と基準信号とを比較する比較器とを備えることが好ましく、ここで補正信号は電力線の高調波エネルギーを表している。エネルギーを蓄える手段はコンデンサまたはインダクタであってもよい。エネルギーは、高調波エネルギーを蓄える手段を、正の電源、負の電源及び負荷のどの間にも選択的に接続するスイッチによって放出される。システムは、エネルギーを蓄える手段を選択的に充電するトランジスタを駆動させるための補正信号を変調させる変調器を更に備えることが好ましい。
【0026】
同様に、高調波歪みを有する信号における高調波歪みを改善する方法は、電力線の高調波エネルギーを決定するステップと、高調波エネルギーを蓄えるステップと、反対の大きさである高調波エネルギーを打ち消すために高調波エネルギーを選択的に放出するステップを含む。補正信号は上述のように生成され、エネルギーは上述のように蓄えられ、放出される。将来の高調波エラーを改善するために高調波エネルギーを用いると、エネルギーを改善するために外部電源を用いること、つまり電力線からより多くの電流を引き込む必要がなくなる。
【0027】
別の実施の形態において、電源の変調が考えられる。そのような実施の形態は、電力線の歪みを有する電気信号のうちの少なくとも一部を所望の基準信号と比較して、補正信号を生成する手段と、歪みを有する電気信号に対して、負の電源及び正の電源から電流を選択的にそれぞれ流し出し流し込む手段と、補正信号に従って正の電源を変調する手段と、補正信号に従って負の電源を変調する手段とを備える。アナログ回路においては、そのような電源はH級アンプと呼ばれる。電源がアンプの電流段を密接に追従するので、H級アンプは非常に効率が良い。この実施例では、電源は補正信号を追従する。比較のための手段は、歪みを有する信号を検知するセンサと、基準信号を生成する発振器と、歪みを有する信号と基準信号とを比較して補正信号を生成する比較器とを備えることが好ましい。電流を選択的に流し出し流し込む手段は、補正信号に従って、負の高調波を改善するために、電流を流し込むための正の電源に接続された第1のトランジスタと、補正信号に従って、正の高調波を改善するために、電流を流し出すための負の電源に第2のトランジスタとを備える。電源を変調する手段は、補正信号を受信する第1のトランジスタと、補正信号の正及び負の平均を導出するためのLCフライホイール網とを備える。
【0028】
上記実施の形態に対応する方法は、先に述べたように補正信号を形成するステップと、歪みを有する電気信号に対して負の電源及び正の電源から電流を選択的にそれぞれ流し出し流し込むステップと、補正信号に従って電源を変調するステップとを含む。
【0029】
都合が良いことに、上述した実施の形態は、家庭の住宅の規模で実行することができる。上述したシステム及び回路は、安価に製造することができ、平均的な住宅所有者がこれらの装置を入手することができる。先行技術の解決策は、通常、何れも産業上の用途を対象とした機器を含んでおり、したがって、より大きな電流容量の網の力率を改善するよう構成されている。結果として、これらは非常に大きく、何千ドルものコストがかかり、住宅用途には適さない。他の解決手段は、単に力率を改善するだけで、住宅内の個々の機器に適用しなければならない。更にまた、これらは、通常、十分に力率を補正しない固定コンデンサ力率改善ユニットであり、いくつかの例において力率を低下させてしまう。なお、他の解決手段は、中央制御ユニットによって個々の家電機器に接続しなければならない力率及び高調波改善ユニットが駆動され、各接続が1つの取り付けステップとなるようなシステムである。また、このようなシステムは、純粋な抵抗性を有する負荷、例えば個々の家電機器の電流を引き込み及び浪費することで電流波形を補正しようとする。反対に、本願で実行されるシステムおよび回路ならびに方法は、通常、主要事業者メーターと住宅との間に接続され、簡単に1つのステップでの取り付けを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施の形態による力率改善回路のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態による力率改善回路のブロック図である。
【図3A】図3Aは、力率が改善された歪みを有する信号の時間対振幅のグラフである。
【図3B】図3Bは、力率が改善された歪みを有する信号の時間対振幅のグラフである。
【図3C】図3Cは、力率が改善された歪みを有する信号の時間対振幅のグラフである。
【図3D】図3Dは、低力率と歪みとを有する電力信号の時間対振幅のグラフ、及び歪み補正方法である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態による歪み低減回路のブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態による変調回路を有する歪み低減回路のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態による変調回路を有する歪み低減回路のブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態による変調回路と強調フィルタとを有する歪み低減回路のブロック図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態による変調回路と強調フィルタとを有する歪み低減回路のブロック図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態による変調回路と強調フィルタとを有する歪み低減回路の別のブロック図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態による変調回路、強調フィルタ、およびガルバニック絶縁を有する歪み低減回路のブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態による、負荷に直列接続された変調回路、強調フィルタ、およびガルバニック絶縁を有する歪み低減回路の別のブロック図である。
【図12A】図12Aは、G級電源の波形の例である。
【図12B】図12Bは、H級電源の波形の例である。
【図12C】図12Cは、H級電源を有する歪み低減回路のブロック図である。
【図12D】図12Dは、H級電源を有する歪み低減回路のさらなるブロック図である。
【図13A】図13Aは、太陽光発電システムを有する歪み低減回路のブロック図である。
【図13B】図13Bは、従来技術の太陽光発電システムのブロック図である。
【図13C】図13Cは、太陽光発電によって生成され、住居内負荷または交流電力網に流し込まれる電流のグラフ表示である。
【図14A】図14Aは、高調波エネルギーを再利用でき、後の高調波歪みを改善するために用いることができる歪み低減回路のブロック図である。
【図14B】図14Bは、高調波歪みを改善するために後に用いるため、再利用できる歪んだ電流信号のエネルギーのグラフ表示である。
【図14C】図14Cは、高調波エネルギーを再利用でき、後の高調波歪みを改善するために用いることができる歪み低減回路のブロック図である。
【図14D】図14Dは、高調波エネルギーを再利用でき、後の高調波歪みを改善するために用いることができる歪み低減回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図の詳細な説明
以下の説明では、多数の詳細と変形を、説明の目的として記載する。しかしながら、当業者にとって明らかなように、本願発明は、これらの特定の詳細を用いることなく実施可能である。他の具体例において、不必要な詳細により発明の説明を不明確にしないため、周知の構造及び装置をブロック図に示す。
力率改善方法及び装置
図1は、本願発明のある実施の形態当たりの力率改善回路100(以下、PFCともいう。)のブロック図である。力率(以下、PFともいう。)は、皮相電力に対する負荷に流れる有効電力の比として定義され、0から1の間の値である。また、力率は、例えば0.5の力率が50%であるといったように、パーセントで表現してもよい。有効電力は、特定の時間に仕事を行う回路の仕事量である。皮相電力は、回路における電流と電圧との積である。実質的に0に近い力率を有する負荷は、有効な電力伝送量が同量である場合、1に近い力率を有する負荷よりも多くの電流を引き込む。値が0に近い力率が低力率とみなされ、値が1に近い力率が高力率とみなされると、通常理解されている。特に、事業者積算電力計が、有効電力ではなく、時間とともに消費される皮相電力だけを記録する場合は、力率を最適化し、力率を1の近くに導くことは非常に好ましい。基幹設備を最適化し、電力事業会社が消費者に伝送可能な有効エネルギーを最大化するために、送電網ネットワークにおいて力率が良好であることが電力事業会社にとって好ましい。力率が良くない、例えば力率が0.9以下であると、電力線において過度の皮相電流損失が生じ、電流量がより高くなるのに起因して送電線網にストレスを与えてしまう。
【0032】
図1の実施例において、力率改善回路100は、負荷120によって表される住居又は住宅へ伝送される電力の力率を改善する。力率改善回路100は、通常、110V交流電力線101Aと中性電力線(以下、中性線ともいう。)101Bとに接続される。力率改善回路100は、標準的な電力メーター101と負荷120との間に接続されている。多くの住宅には、全てが電力を消費する負荷に相当するいくつかの電子機器がある。通常、各負荷には、無効成分(reactive component)がある。無効成分は、通常、家庭で見られる非常に一般的な負荷、例えば洗濯機のモータ、乾燥機HVACユニット又は食器洗い器などのインダクタンス特性から生じる。これら全ての負荷の組合せは、事業者の電力メーター101にとっての単一の負荷120のように見える。しかしながら、異なる電子機器が動作したり停止したりするので、電力メーター101で確認される負荷120の実際の無効成分は、ダイナミックに変化する。このため、ダイナミックな力率改善回路100は、負荷120の力率をダイナミックに改善することができる。いくつかの実施の形態において、無効電力測定モジュール105は、絶縁されたダクト102の第1のセットと絶縁されたダクト103の第2のセットとにより、110V交流電力線(位相線ともいう。)101Aと中性線101Bと電気的に接続されている。実施例に示すように、ダクト102からなる第1のセットは、110V交流電力線101Aと接続された電線とすることができる。ダクト102の第1のセットは、負荷に伝送される電力の相電流成分を測定する。ダクト103の第2のセットは、110V交流電力線101Aと中性線101Bとに亘って接続されており、相電圧を測定する。より低電圧の電子機器がコスト効率が良く、容易に設計することができるので、降圧変圧器103Aを力率改善回路100内に設けて、電圧の振幅を低下させて、その回路構成を簡単にしてもよい。無効電力測定モジュール105は、ダクト102及びダクト103によって負荷の無効電力を判定することができる。一例として、無効電力測定モジュール105は、プロセッサユニット、例えばアナログデバイスADE7878とすることができる。更に、無効電力測定モジュール105は、外部プロセッサ107(以下、コントローラ107という。)と通信することができる。
【0033】
いくつかの実施の形態において、負荷120の無効成分を補償するため、コントローラ107は、多数の異なる値を有する無効負荷(reactive loads)、例えば負荷120と並列接続されたコンデンサ110A〜110C(以下、無効負荷110A〜110Cともいう。)を選択的に接続する。二値処理回路(binary implementation)を用いて、無効負荷110A〜110Cを負荷120に接続する。無効負荷110A〜110Cの値を決定するためには、最初に、最小及び最大の無効電力補償範囲を確認することが有利である。二値処理回路において、力率改善回路100の精度は、ビット又は量子化レベルにそれぞれ対応する無効負荷110A〜110Cのうちの最低値の無効電力の半値と同程度とすることができる。無効負荷110A〜110Cのうちの最低値は、最低ビットの無効負荷及び所望の量子化レベルの最小構成要素である。力率改善回路100の例示的な実施例は、量子化レベルが3であるものを示す。換言すると、最も小さい無効負荷がLSB、すなわち最下位ビットの無効負荷であり、最も大きい無効負荷がMSB、すなわち最上位ビットの無効負荷である3ビットの無効負荷がある。力率改善回路100の精度は、以下のように表すことができる。
ErrMAX=LSB/2
ここで、LSBが下記式によって最適な値が選択される。
LSB=VARMAX/(2N−0.5)
ここで、VARMAXは補償すべき負荷120の最大無効電力値であり、Nは量子化のレベルである。量子化のレベルは、負荷120の無効部分の補償の精度に正比例していると評価することができる。コスト及び複雑度と所望の精度とのバランスがとれるように、所望の量子化レベルを決定してもよい。補償すべき負荷120の最小及び最大の無効電力の約50サンプルのシミュレーションを表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
補正無効電力値QCORRは、以下のアルゴリズムにより決定される。
【0036】
IF (round(Q/LSB))>(2N−1)
Then QCORR=LSB×(2N−l)
Else QCORR=LSB×Round(Q/LSB)、VARの全ての値
ここで、Qは、補償すべき負荷120の無効電力値である。家庭電子機器が動作したり停止したりし、これら個々の無効負荷が負荷120内部に接続されているので、上記のように、負荷120の無効電力値はダイナミックに変化している。このため、無効電力測定モジュール105は、負荷120の無効電力を測定して無効電力をコントローラ107に送信することが有利である。あるいは、無効電力を即座に決定するためコントローラ107は負荷120と直接接続してもよい。Qがゼロ又は正である場合、負荷120の無効部分はインダクタンスである。あまり一般的ではないが、Qが負であれば、負荷120の無効部分がキャパシタンスであるということを示す。表2は、力率改善回路100の精度に関する量子化の効果の具体例を示している。
【0037】
【表2】

【0038】
一例として、単相2線配線構成において、消費される有効電力を、10〜3000Wとし、負荷120の無効電力は、8〜2000バールとする。この実施例では、説明のために、力率を0.67に固定する。表2から分かるように、コスト及び複雑度を最小にするのに対して、2又は3ビット(すなわち、N=2又はN=3)における実施では、通常、力率を最適化して、実質的に1に近づける。例えば、110V系統、例えば米国において、例えば表2で示された具体例には、2つの無効ビットQLSB、QMSBと、その中間ビットQとからなるリアクタンスは、以下のように計算される。
【0039】
ZQLSB=U2/QLSB=110V2/266.7VAR=45.37Ω(全てキャパシタンス)
ZQ=U2/Q=110V2/533.3VAR=22.68Ω(全てキャパシタンス)
ZQMSB=U2/Q=110V2/1066.7VAR=11.34Ω(全てキャパシタンス)
図1に戻ると、コンデンサ110AがLSBビット無効負荷であり、コンデンサ110CがMSBビット無効負荷であるコンデンサ110A〜110Cの各値は、以下のように計算される。
【0040】
CLSB=l/(2πFZQLSB)=l/(2π×60Hz×45.37Ω)=58μF
C=l/(2πFZQ)=l/(2π×60Hz×22.68Ω)=117μF
CMSB=l/(2πFZQMSB)=l/(2π×60Hz×11.34Ω)=234μF

その結果、この実施例において、LSBビット無効負荷110Aは58μFであり、ビット無効負荷110Bは117μFであり、MSBビット無効負荷110Cは234μFである。各ビット無効負荷110A〜110Cは、スイッチ109A〜109Cを介して、負荷120と並列接続される。各スイッチ109A〜109Cは、スイッチドライバ108A〜108Cによって操作可能である。各スイッチドライバ108A〜108Cは、コントローラ107によって順々に制御される。上記のように、コントローラ107は、補償すべき負荷120の無効電力を測定することができるか、無効電力測定モジュール105により測定情報を送信してもらうことができる。コントローラ107は、メモリ106と接続することができる。あるいは、メモリ106は、コントローラ107と一体化してもよい。メモリ106は、補償すべき負荷120の最大無効電力の値と、ビット無効負荷110A〜110Cの無効ビット値とを記憶することができる。これに加えて、ユーザ、例えば住宅所有者に住居の電力消費特性に関する有効なデータを与えるため、メモリ106は、力率改善履歴を記憶することができる。したがって、コントローラ107は、スイッチドライバ108A〜108Cを選択的に動作させて、スイッチ109A〜109Cをオン又はオフにすることができ、それによって、ビット無効負荷110A〜110Cを選択的に負荷120に並列接続でき、それによって負荷120の無効電力がダイナミックに補償される。
【0041】
いくつかの実施の形態において、コントローラ107は、通信モジュール114に接続される。通信モジュール114は、他の力率改善回路100のユニットと通信することができる。また、ユーザ、例えば住居所有者に、力率改善回路100の状態及び力率改善回路100が行っている補正量を通知するため、通信モジュール114は、ユーザ装置、例えばラップトップコンピュータ又は携帯電話機と通信することができる。通信モジュール114は、無線モジュール114Aによって無線で通信することができる。無線モジュール114Aは、ローカルWiFiネットワーク、例えばIEEE802.11を使用するためのアンテナ114Bを備える。いくつかの実施の形態において、無線モジュール114Aは、標準的な技術、例えばCDMA又はGSM(登録商標)によって携帯電話回線網で通信することができる。エネルギー使用に関する情報に基づいた決定をするために、ユーザ、例えば住居の所有者は、彼らの住宅のダイナミックな電力消費を追跡することができる。あるいは、通信モジュール114は、LAN、シリアル、パラレル、IEEE1394Firewire、又はあらゆる他の公知の規格又は特定用途有線通信規格に接続することができるポート115により、有線ネットワークを介して通信することができる。更に、力率改善回路100は、降圧変圧器104Aを介して、110V交流電力線101Aと中性線101Bとに接続された直流電源104を備える。直流電源104は、110V交流電力線101Aから所望の直流電圧に電力を変換して、変換した電力を電気部品、例えば無効電力測定モジュール105、コントローラ107及び力率改善回路100の中の残りのモジュールに供給することができる。
【0042】
いくつかの実施の形態において、スイッチ109A〜109Cは、1つ以上のトランジスタとすることができる。トランジスタは、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ、IGBTトランジスタ、FETトランジスタ、BJTトランジスタ、JFETトランジスタ、IGFETトランジスタ、MOSFETトランジスタ及び、他のあらゆる種類又はサブセットのトランジスタのうちのどのような組合せを含んでもよい。バイポーラトランジスタ及びIGBTトランジスタに関して、バイポーラトランジスタ又はIGBTトランジスタを選択する上で考慮すべき点は、オン状態及び駆動条件において、コレクタ−エミッタ間電圧がほぼ0であることである。更にまた、トランジスタは、通常、電流がドレインからソースに又はコレクタからエミッタに流れるという意味で一方向である。このため、負荷120に接続されるそれ自体のビット無効負荷を有する2つのトランジスタを、電流の流れる方向毎に1つずつ配置することは有利である。スイッチ109A〜109Cとしてトランジスタを用いるときに他の実施上考慮すべき点は、トランジスタが更なる逆方向電圧に対する保護ダイオードを必要とすることである。例えば、トランジスタの定格が、110以上、すなわち220V交流である場合、最大エミッタ−ベース間電圧は約5〜10Vである。結果として、エミッタと直列接続され、正弦波電圧が逆方向に印加される半分の期間中にトランジスタを保護するために、保護ダイオードを実装することが有利であるといえる。熱損失として失われるエネルギーに起因して、トランジスタは1つ以上のヒートシンクが必要であるといえる。正弦波の半分の期間で導通状態のトランジスタによって浪費される電力が、以下のように近似される。
【0043】
Power=UCE×ICE/2=UCE×(UAC−UCE)/(2×Z)
例えば、半導体2N3773を用いる場合、オン状態において10Aのとき、UCESAT=2Vり、米国の一般的な住宅用電力線は、UAC=110V、Z=10.59Ωとすれば、トランジスタ毎の熱として浪費される電力は、以下のように近似することができる。
【0044】
Power=2V×(110VAC−2V)/(2×10.59)=10.2W トランジスタ当たり
2ビットの無効電力改善システムでは、4つのトランジスタと、4つのコンデンサと、4つのパワーダイオードとを必要とする。スイッチ109A〜109Cの熱として浪費する全電力は、以下のように近似することができる。
【0045】
Power=2×10.2W(bit2)+2×5.1W(bit2=LSB)=30.6W
結果として、力率改善回路100にコスト及び複雑さを加えることになるが、スイッチ109A〜109Cをヒートシンクに接続させることが有利である。
【0046】
MOSトランジスタ及びMOSFFTトランジスタは、一般的に、低消費電力素子である。しかしながら、MOSトランジスタ及びMOSFFTトランジスタもまた、電流の向きが一方向であり、過大な逆電圧VGSからの保護を必要とする。正弦波の半分の期間で導通状態のMOS又はMOSFFTスイッチによって浪費される電力を、以下のように近似することができる。
【0047】
Power=RDS_ON×IDS/2=(RDS_ON/2)×(UAC/Z)2
例えば、STマイクロエレクトロニクスSTF20N20を用いる場合、10AのときRDS_ON=0.13Ω、米国の一般的な住宅用電力線はUAC=110、Z=10.59Ωとすれば、MOS又はMOSFFTスイッチの熱として浪費される電力は、以下のように近似することができる。
【0048】
Power=0.13Ω/2×(110VAC/10.59Ω)2=7.01W
2ビットの無効電力改善システムでは、4つのトランジスタと、4つのコンデンサと、4つのパワーダイオードとを必要とする。MOS又はMOSFFTスイッチの熱として浪費される全電力は、以下のように近似することができる。
【0049】
Power=2×7.01W(bit2)+2×3.5W(bit2=LSB)=21.0W
スイッチ109A〜109CにMOS又はMOSFFT素子を用いると、熱として浪費される電力が約1/3低減されるが、更に廃熱を分散させるためにヒートシンクを必要としてもよい。RDS_ONが非常に低いMOS又はMOSFFT素子は市販されているが、通常、これらの素子はコストが高い。
【0050】
図2は、本発明のある実施の形態当たりの力率改善回路200を示す。図1の力率改善回路100と同様に、力率改善回路200は、負荷220によって表される住居又は住宅へ伝送される電力の力率を改善するよう構成される。力率改善回路200は、通常、110V交流電力線201Aと中性線201Bとに接続される。力率改善回路200は、標準的な電力メーター201と負荷220との間に接続されている。いくつかの実施の形態において、無効電力測定モジュール205は、絶縁された接点202の第1の絶縁セットと絶縁された接点203の第2の絶縁セットとにより、110V交流電力線201Aと中性線201Bと電気的に接続されている。実施例に示すように、接点202の第1のセットは、110V交流電力線201Aと接続された電線とすることができる。接点202の第1のセットは、負荷に伝送される電力の相電流成分を測定する。接点203の第2のセットは、110V交流電力線201Aと中性線201Bとに亘って接続されており、相電圧を測定する。より低電圧の電子機器がコスト効率が良く、容易に設計することができるので、降圧変圧器203Aを、力率改善回路200内に設けて、電圧の振幅を低下させて、その回路構成を簡単にしてもよい。一例として、無効電力測定モジュール205は、プロセッサユニット、例えばアナログデバイスADE7753とすることができる。更に、無効電力測定モジュール205は、弛み又は過電圧状態をマイクロコントローラ207に送信することができる。
【0051】
マイクロコントローラ207は、無効電力測定モジュール205に接続されている。マイクロコントローラ207は、複数のトライアックドライバ208A、208Bに接続されている。トライアックドライバ208A、208Bは、順々にそれぞれ複数のトライアック209A、209Bを選択的に動作又は停止させる。本具体例では、10mAを用いて、トライアック209A、209Bを動かす。しかしながら、他の駆動信号を用いて、その仕様に応じてトライアック209A、209Bを動かしてもよい。トライアック、すなわち交流用の三極管は、ゲートを互いに接続することにより逆平行に接続された2つのシリコン制御整流器にほぼ相当する電子部品である。この結果、2方向に電流を導通することができ、これによって、極性がない電子スイッチとなる。電子スイッチは、ゲート電極に印加される正又は負の電圧のどちらかによって動作することができる。動作すると、電子スイッチ素子は、電流が、保持電流として知られている特定の閾値以下に下がるまで、導通状態を維持する。結果として、トライアック209A及び209Bは、非常に便利な交流回路用のスイッチであり、ミリアンペアスケールの制御電流によって、非常に大きな電力の流れを制御することができる。トライアックは、サイリスタとして知られている、より大きく分類された部品に属していると通常理解されている。サイリスタは、シリコン制御整流器(SCR)、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、静電誘導サイリスタ(SIT)、MOS制御サイリスタ(MCT)、分散バッファ−ゲートターンオフサイリスタ(DB−GTO)、集積ゲート整流サイリスタ(IGCT)、MOS合成静電誘導サイリスタ(CSMT)、逆導通サイリスタ(RCT)、非対称SCR(ASCR)、光動作SCR(LASCR)、光トリガサイリスタ(LTT)、ブレークオーバーダイオード(BOD)、モディファイド陽極ゲートターンオフサイリスタ(MA−GTO)、分散バッファゲートターンオフサイリスタ(DB−GTO)、ベース抵抗制御サイリスタ(BRT)、磁界制御サイリスタ(FCTh)及び光動作半電導性スイッチ(LASS)を含むがこれに限定されない。当業者にとって明らかなように、図2の力率改善回路200の実施の形態は、あらゆる公知又は特定用途のサイリスタを用いて、力率改善回路200を実装するのに要求される特定の設計又は用途を実現するため、容易に改変することができる。
【0052】
マイクロコントローラ207は、トライアックドライバ208A、208Bによって、トライアック209A、209Bをオン又はオフにする上記図1に記載されたアルゴリズムを実行することができる。都合が良いこととして、トライアックは低論理閾値を得ると、当該トライアックを有効とする。結果として、より小さく、よりコスト効率の良い部品を用いて、トライアックドライバ208A、208Bとすることができる。オンのとき、低力率を補償するため、トライアック209A、209Bは、ビット無効負荷210A、210Bを、負荷220と並列接続する。状況に応じて、フィルタ212、213を実装して、トライアック209A、209Bにより取り入れられるスイッチングノイズ又はハムを減らすようにしてもよい。
【0053】
いくつかの実施の形態において、マイクロコントローラ207は、通信モジュール214と接続される。通信モジュール214は、いずれの力率改善回路200とも通信することができる。また、ユーザ、例えば住居所有者に、力率改善回路200の状態と力率改善回路200が行っている補正量を通知するため、通信モジュール214は、ユーザ装置、例えばラップトップコンピュータ又は携帯電話機と通信することができる。通信モジュール214は、ローカルWiFiネットワーク、例えばIEEE802.11を使用するためのアンテナ214Bを有する無線モジュール214Aによって無線で通信することができる。また、ユーザが、彼らの住宅の消費エネルギーを追跡し、知識に基づいた決定を行うために、携帯電話機を用いることができるように、無線モジュール214Aは、携帯電話網、例えばCDMA又はGSM(登録商標)によって通信することができる。あるいは、通信モジュール214は、LAN、シリアル、パラレル、IEEE1394Firewire、又はあらゆる他の公知の規格又は特定用途有線通信規格に接続することができるポート215により、有線ネットワークを介して通信することができる。マイクロコントローラ207には、メモリモジュール206が接続されている。メモリモジュール206は、情報、例えば負荷120から予想可能な最大予想無効成分、力率改善回路200の改善動作履歴又は力率改善回路200によって収集又は使用されるあらゆる他の有効なデータを記憶することができる。更に、力率改善回路200は、降圧変圧器204Aを介して、110V交流電力線201Aと中性線201Bとに接続された直流電源204を備える。直流電源204は、110V交流電力線201Aから所望の直流電圧に電力を変換して、変換した電力を電気部品、例えば無効電力測定モジュール205、マイクロコントローラ207及び力率改善回路200の中の残りのモジュールに供給することができる。
【0054】
当業者にとって明らかなように、図1及び図2それぞれの力率改善回路100及び力率改善回路200は、二相二線方式を示している。三相三線または三相四線網構成による力率改善回路100及び力率改善回路200は、ビット無効負荷110A〜110C、210A〜210B、スイッチ109A〜109C、トライアック209A、209B、フィルタ112、113、212、213及び対応するドライバ回路の数を3倍にし、第1の位相線を第2の位相線に、第2の位相線を第3の位相線に、第3の位相線を第1の位相線に接続することを除いて、図1及び図2の実施例に従って実現される。中性線が利用可能な場合、スター結線を実装してもよい。すなわち、第1の位相線を中性線に、第2の位相線を中性線に、第3の位相線を中性線に接続してもよい。力率改善回路100及び力率改善回路200は、あらゆる無効負荷により、全最大改善可能値まで独立して補償することができる。一例として、3つの位相線の間に接続された300〜600VARの空気圧調整ユニットと、第2の位相線と中性線の間に接続された100〜400VARの洗濯機と、第3の位相と中性線の間に接続された100〜250VARの乾燥機を有する住居内を全て、最大の改善可能な無効電力値まで完全に改善する。
歪み改善方法及び装置
完全ではない力率が、電気回路網において改善すべき最も共通した弱点である。また別のより共通した欠点及び問題の原因は、非線形負荷と、入手可能であるが完全ではない電源アダプタを有する電子機器が広範囲に配置されることに起因した電力線の歪みである。通常、電源アダプタの設計において特別な労力が全く払われないとき、交流電力信号は、通常、まず正弦波の全周期に亘って全波整流され、そして、大容量のコンデンサによって粗くフィルタリングされ、絶縁されたDC/DC電源の電子回路によって、例えば集積回路に供給される。このような入手可能な非エナジースターの電子機器は、網に戻る高調波電流を発生する。この結果により、電流波形が、正弦波というよりはむしろ先端を切り取ったような形の放物形状に近づく。歪みは、電力、ノイズ又は他の形態のいかなる歪みを吸収及び反射する負荷における種々の特性の結果として生じる高調波歪みから構成することができる。
【0055】
図3Aは、歪みを有する電力信号を改善する力率の、時間に対する振幅のグラフ300を示している。第1の軸320はミリ秒単位での時間を示し、第2の軸310は、電流と電圧との両方の振幅を示す一般的な振幅スケールである。電圧U(t)330は、正確な60Hzの正弦波として現れる。しかしながら、電流iTOT(t)は、もはや対応する正弦波に類似していないという点において非常に歪んでいる。図3Bは、同様に、時間軸420と振幅軸410とを有するグラフ400を示している。電圧波形430は、正確な正弦波に近い波形を描いている。しかしながら、電流波形440は非常に歪んでいる。住宅では、標準的な抵抗型負荷に加えて広範囲に分布した低品質電源アダプタの頻繁な使用によって、電流波形440には、正弦波といくらか類似しているがそれでも大きな歪みが表れる。図3Cは、同様に、時間軸520と振幅軸510とを有するグラフ500を示している。図3Cでは、1つ以上の大きい無効負荷、例えば空調ユニット又は乾燥機ユニットの導入によって、電流波形530は、更により大きく電圧波形540に対して歪む。最後に、一般的な電流波形630に対する電圧波形640のグラフ600を図3Dに示す。大きい無効負荷、抵抗型負荷及びAC/DC電源アダプタが、電流波形630での重大な歪みの原因になるだけでなく、更に、電流波形630と電圧波形640との間に位相ズレ670が生じる。この例では、歪みは、歪んだ電流波形630のピーク660として示される。この例では、0.67の力率に対応した位相ズレ670が、約30度である。歪みを改善するため、まず力率を改善することが有利である。力率の改善は、図1及び図2において上述した方法又は装置あるいはあらゆる他の便利な方法によって達成することができる。補正信号650は、歪んだ電流波形630とほとんど正確な正弦波の近似電圧波形(図示せず)とを比較することによって導かれる。補正信号650は、電流波形630の範囲内で歪みの係数を有する。係数は1でよいが、係数は、電流波形630の所望の振幅比を達成するあらゆる必要な被乗数であってもよい。一例として、被乗数は、電圧を電流に又は電流を電圧に変換する係数であってもよい。補正信号650は、選択的に電流信号630に供給され、この結果として、非常に低減又は除去された歪みを有する補正電流信号の電圧波形640となる。
【0056】
図4は、図3Dに記載された抑制又は除去回路800を示すブロック図である。回路800は、事業者の電力メーター801と負荷840との間に接続される。負荷840は、あらゆる負荷であってよいが、この応用例及び例においては、居住用の住宅である。負荷840は、事業者の電力メーター801にとって1つの負荷840のように見える住宅の範囲内の全ての電子機器から構成される。電子機器が住宅の範囲内で起動したり停止したりし、それによってこれらの個々の負荷が負荷840と接続及び分離されるので、負荷840の特性がダイナミックに変化する。力率改善回路875は、電力線833の力率を実質的に1に改善する。プロセッサ810は、電力線833を検知することによって電流を検出することができる。この例示的な実施の形態において、プロセッサ810はアナログ素子である。しかしながら、当業者にとって明らかなように、デジタル処理に代えてもよい。また、プロセッサ810は、電力線833と中性線834との間を検知することによって電圧を検出することができる。また、電力線833は、位相線ともいう。この例示的な実施において、プロセッサ810は2つの差動入力を有する。各入力は、乗算器Gl 812及び乗算器G2 813と接続されている。乗算器Gl 812及び乗算器G2 813は、回路800における特定用途又は実施に対して望まれる又は要求されるあらゆる係数によって、電流又は電圧をスケーリングすることができる。Glは、電力線833から電流を入力する。この実施の形態において、乗算器G2は、検知電圧を電流信号に変換する。電圧と電流との両方は、それぞれのRMS値によってスケーリングされる。乗算器812及び813は、標準的なアナログオペアンプ又は他のあらゆる有効な回路とすることができる。乗算器812及び813の出力は、減算器814に接続される。いくつかの実施の形態において、減算器814は、Gl 812及びG2 813のスケーリングされた2つの出力を比較し、それによって補正信号、例えば図3Dの補正信号650を導出する。都合が良いことに、単一の減算器814を用いることによって、両方の入力を1つの電流に変換することができる。しかしながら、同様にして、両方の入力を1つの電圧に変換してもよい。いくつかの実施の形態において、処理を制御し、システム制御、例えば動的挙動、安定性、ゲイン余裕、位相余裕などを最適化するループゲイン及びループフィルタブロック821を有することが好ましい。減算器814は、歪みを有する全電流を基準信号から減算するか、基準信号を歪みを有する全電流から減算することによって、全電流を基準信号と比較することができる点に留意する必要がある。特定の実施又は用途の要求に適合するような構成としてもよい。結果として、補正信号は、全電流の歪みに対して正比例又は反比例してもよい。
【0057】
補正信号は、歪みを有する全電流に混合されて、歪みが大きく低減又は除去された補正電流信号、例えば図3Dの電圧波形640が形成される。図4に示す実施の形態において、ループフィルタ821の出力は、負の整流器815と正の整流器822に供給される。負の整流器815は、第1の制御電流源831に接続され、正の整流器822は、第2の制御電流源832に接続される。特定の用途、例えば図4の例において、電力メーター801から下流の配線網のインピーダンスは、負荷840と比較して非常に小さいインピーダンスとしてもよい。結果として、負の歪みを補正するため電流を引き込むと、この電流が、負荷840よりもむしろ送電網の方に供給される。結果として、歪みが増幅される。このため、図4の実施の形態では、負の歪みに応じて電力線833からの電流を流し出し、正の歪みに応じて電力線833からの電流を流し込む。送電網及び負荷840のインピーダンスの不平衡によって、選択的に電流を流し込み流し出すことで、歪みを補正する。歪み成分が全電流に対する減算であることを意味する補正信号が負のとき、正の整流器822は、第2の制御電流源832をオンにする。第2の制御電流源832は、負の直流電源852に接続されている。第2の制御電流源832がオンになると、電流が電力線833から流し出される。送電線網のインピーダンスが負荷840のインピーダンスより低い実施の形態において、電流が負荷840よりも送電線網から流し出されることで、負荷840に対して加算作用を起こす。歪み成分が全電流に対する加算であることを意味する補正信号が正のとき、負の整流器815は、第1の制御電流源831をオンにする。第1の制御電流源831は、正の直流電源851に接続されている。第1の制御電流源831がオンであるとき、電流が正の直流電源851から電力線833に流し込まれる。更にまた、送電線網のインピーダンスが負荷840より低い適用例では、電流が負荷840ではなく送電網に流し込まれることによって、負荷840に対して減算作用を起こす。動作中において、電力線833内への補正信号に基づいて選択的に電流を流し出すまたは流し込むことによって、補正信号、例えば補正信号650を、歪みを有する電流信号、例えば図3Cの電流波形630に混合する。補正信号の正の部分および補正信号の負の部分のうちのどちらかが、第1及び第2の制御電流源831及び832のうちの1つに選択的に供給される。プロセッサ810が電圧を電流と継続的に比較し、補正信号を継続的に導出するので、このような補正信号の供給が、負荷840の変化とともに変化する電力線833の歪み成分のようにダイナミックに行われる。あるいは、プロセッサ810は、プロセッサ810自身の基準信号を生成して、歪み電流信号を比較してもよい。例えば、アメリカ合衆国における電力は、60Hzで供給される。したがって、プロセッサ810内部の60Hzのファンクションジェネレータは、正確な正弦波を発生させて歪んだ電気信号と比較し、これによって、補正信号を導出することができる。あるいは、ほぼ正確な基準信号を導出するために、フェーズロックループを実装して、電圧のゼロ交差時間を追跡してもよい。上述したように、減算器814が、全電流の歪みに正比例又は反比例する補正信号を生成してもよい。減算器814が歪みに正比例する補正信号を生成する場合、歪みが正の部分であると、これに応じて電力線833から電流を流し出さなければならない。同様にして、歪みが負の部分である、電力線833の中に電流を流し込まなければならない。また、逆も当てはまる。補正信号が全電流における歪みに逆比例している実施の形態では、補正信号が負の部分であると、電力線833から電流を流し出さなければならない。同様に、補正信号が正の部分であると、電力線833の中に電流を流し込まなければならない。
【0058】
図4に示す実施の形態が、広く利用可能でコスト効率の良い構成部品を用いているとはいえ、制御電流源831、832は非常にエネルギー効率が良くないことが理解される。正の直流電源851が250V、電力線833の瞬時電圧が150V、補正信号の電流が10Aならば、浪費され、熱で無駄に失われる電力が数百Wになる可能性がある。
【0059】
このため、図5にモジュレータ920を備える歪み低減回路900を示す。図4に示す回路800と同様、回路900は、事業者の電力メーター901と負荷940との間に接続される。負荷940は、あらゆる負荷であってよいが、この応用例及び実施例においては、居住用の住宅である。負荷940は、事業者の電力メーター901にとって1つの負荷940のように見える住宅の範囲内の全ての電子機器から構成される。力率改善回路975は、電力線933の力率を実質的に1に改善する。力率改善回路975は、図1又は図2あるいは他の有効な力率改善回路と一致してもよい。上述したように、負荷940の特性は、ダイナミックに変化する。プロセッサ910は、電力線933を検知することによって電流を検出することができる。この例示的な実施の形態において、プロセッサ910はアナログ素子である。しかしながら、当業者にとって明らかなように、 以下に述べるような機能を実行することができる既製品のデジタルプロセッサが多く存在する。また、プロセッサ910は、電力線933と中性線934の両方を検知することによって電圧を検出することができる。この例示的な実施において、プロセッサ910は2つの差動入力を有する。各入力は、乗算器Gl 912及び乗算器G2 913と接続されている。G2 913は、図4のG2 813と同じように、電圧を電流信号に変換することができ、G2 913を簡略化した方法で示す。乗算器912及び乗算器913は、標準的なアナログオペアンプ又は他のあらゆる有効な回路とすることができる。乗算器912及び乗算器913の出力は、減算器914に接続される。いくつかの実施の形態において、減算器914は、G2 913の出力からGl 912の出力を減算し、それによって補正信号、例えば図3Dの補正信号650を導出する。いくつかの実施の形態において、この補正信号を換算係数と乗算することが望ましい場合がある。一例として、ループゲインフィルタには、図4に示すような同様の処理の制御が含まれ、いくつかの実施の形態において、ループゲインフィルタは、補正信号を電流811のRMS値に混合する。
【0060】
ループフィルタの出力は、モジュレータ920に接続される。この例示的な実施の形態において、モジュレータ920は、パルス幅変調器(PWM)である。しかしながら、PWM、デルタシグマ変調、パルスコード変調、パルス密度変調、パルス位置変調、あるいははあらゆる他の公知又は特定用途変調方式を含むが、これに限定されるものではなく、特定の実施及び設計制約要求の通りに、あらゆる方法又は方式の変調を実行してもよい。モジュレータ920は、乗算器915から生成された補正信号が正のとき論理レベルがHighの信号を送り、この補正信号が負のとき論理レベルがLowの信号を送る、正のトリガ比較器922と負のトリガ比較器923とを有する。いくつかの実施の形態において、Lowの論理レベルは、負の値とすることができる。パルスジェネレータ921は、三角波を発生し、三角波は、組合せ論理回路925によって、正のトリガ比較器922から出力された補正信号の正の部分に合成され、また、負のトリガ比較器923から出力された負の部分に合成される。結果として、正の部分と負の部分とが分離されたPWM補正信号が生成される。組合せ論理回路925は、PWM補正信号の正の部分を第1の制御スイッチ932に選択的に供給する。第1の制御スイッチ932は、負の直流電源952に接続されている。また、組合せ論理回路925は、PWM補正信号の負の部分を第2の制御スイッチ931に選択的に供給する。第2の制御スイッチ931は、正の直流電源951に接続されている。
【0061】
動作中に、スイッチ931及び932は、PWM補正信号が正または負のどちらであるかによって決定されるPWM補正信号によって選択的に制御される。いくつかの実施の形態において、正のPWM補正信号は、電力線933で補正すべき歪みが負であることを示し、反対も同様である。電力線933で負の歪みを補正するため、第2の制御スイッチ931は、PWM補正信号の負の部分に基づいてオンとなる。第2の制御スイッチ931がオンのとき、第2の制御スイッチ931は、PWM補正信号に基づいて、正の直流電源951を電力線933に接続する。
【0062】
図5の実施の形態では、事業者の電力メーター901(及び下流の送電網)のインピーダンスが負荷940より低いインピーダンスを有する実施の形態を示す。結果として、正の歪みを負のPWM補正信号によって補正しようとする場合、電力線933から流し出される電流は、負荷940よりもむしろ送電網から流れ出すことになる。結果として、歪みが増大することになる。このため、負荷940のインピーダンスが、電力メーター901の下流の送電網のインピーダンスよりも大きい用途では、正のPWM補正信号を用いて正の歪みを改善し、負のPWM補正信号を用いて負の歪みを補正する。
【0063】
いくつかの実施の形態において、変調信号をフィルタリングすることは有利である。このため、フィルタ933を含む。同様に、電力線933の正の歪みを補正するため、第1の制御スイッチ932は、PWM補正信号の負の部分に基づいてオンとなる。第1の制御スイッチがオンのとき、第1の制御スイッチ932は、PWM補正信号に基づいて、電力線933から負の直流電源952に電流を流し出す。結果として、歪みが、電力線933の電流から十分に減少する。また、第2のフィルタ938は、電力線933からPWMノイズをフィルタリングするため有利であろう。正の直流電源951と負の直流電源952とのそれぞれは、あらゆる過電流又は低電流状態をプロセッサ910に送信するため、電流制限及びセンサモジュール935及び936を有する。
【0064】
図6は、他の実施の形態の歪み補正回路1000を示す。また、回路1000は、事業者の電力メーター1001と負荷1040との間に、単相二線の配電方式での電力線1033及び中性線1034と接続されている。負荷1040は、無効特性を有する1つの負荷1040のように見える住宅の範囲内の、全ての家電機器と他の電子機器とから構成される。この実施の形態では、電流は、プロセッサユニット1200により測定される。力率改善回路1275は、上述したように、電力線1032の力率を改善することができる。プロセッサユニット1200は、電流及び電圧測定モジュール1202を有する。また、モジュール1202は、RMS及び歪みの計算を実行する。モジュール1202は、デジタル処理モジュールとすることができる。いくつかの実施の形態において、モジュール1202は、データ、例えば振幅、位相及び歪みを、数値演算をデジタルで実行可能なデジタルビット列に変換する1つ以上のアナログ/デジタル変換器を有する。また、プロセッサ1200は、メモリモジュール1201を有してもよい。メモリモジュール1201は、ダイナミックな高調波補正に関する情報、例えば補正が最も有効な時刻を記憶することができる。ユーザが使用エネルギーに関する情報に基づいた決定をできるようにするため、メモリモジュール1201は、取り外して、機器、例えばコンピュータに差し込むことができる。あるいは、プロセッサ1200は、通信モジュール(図示せず)を有する。通信モジュールは、有線により、例えばLANケーブルによりインターネットと接続されるか、又は便利な標準規格、例えばIEEE802.11又はブルートゥースによる無線で接続されている。更にまた、通信モジュールは、携帯電話の標準規格、例えばGSM(登録商標)又はCDMAによって通信することができる。プロセッサユニット1200と一体の保護モジュール1203は、あらゆる故障状態、例えば過電圧、過電流及び過温度において、回路1000の電源を切ることができる。このような故障状態をメモリ1201に記憶することができる。
【0065】
プロセッサ1200は、電力線1032内の歪みを有する全電流を計算し、基準信号を発生することができる。デジタル/アナログ変換器は、全電流を示すデジタルビット列及び基準信号をアナログ波形に変換することができる。図4及び図5の実施の形態と同様に、減算器により、全電流信号を基準信号から減算することができる。あるいは、プロセッサ1200は、全電流を基準信号からデジタルで減算し、これによってデジタル補正信号を生成することができる。また、プロセッサ1200は、あらゆる便利な公知又は特定用途手段の変調により、デジタル補正信号を変調することができる。そして、変調補正信号を、全電流内の歪みを補正するために、電力線1032に対して電流が流し込まれなければならない又は流し出されなければならないかどうかによって、第1のトランジスタ1031又は第2のトランジスタ1032に選択的に供給する。第1及び第2のトランジスタ1031及び1032は、変調補正信号によってオンになったときに、正の直流電源1051から電力線1032に電流を流し込むか、負の直流電源1052により電力線1032から電流を流し出すスイッチとして動作する。いくつかの実施の形態において、第1のトランジスタ1031及び第2のトランジスタ1032からそれぞれPWMノイズをフィルタリングするため、第1のフィルタ1033と第2のフィルタ1034とを有することは有利である。
【0066】
図7は、図4、図5及び図6の発明における更なる詳細な実施の形態を示す。力率改善及び歪み補正モジュール1300は、事業者の電力メーター1301と等価住居内負荷1340との間に接続されている。負荷1340は、起動及び停止する住宅の中の家電機器として変化するダイナミックな負荷を表現したものである。正の直流電源1351は、位相線1333及び中性線1334全体に亘って存在するあらゆるノイズ及び高調波をフィルタリングする任意の低域通過フィルタ1303を有する。送電網1302からの交流電流は、ブリッジ整流器1304によって整流され、平滑コンデンサ1305に供給される。力率改善回路モジュール1306は、より小さい理想的な力率に補正する。力率改善回路モジュール1306は、図1、図2及び付随的な説明で説明される方法又は装置のうちのいずれも用いることができる。第1のスイッチング回路1331は、プロセッサユニット1310に接続された第1のトランジスタ1308Aを有する。プロセッサユニット1310は、変調信号を用いることにより、トランジスタ1308Aを駆動する。トランジスタ1308Aは、図5及び図6の前の実施の形態に記載されているように、補正信号に応じて、正の直流電源1351から位相線1333に電流を供給する。任意の低域通過フィルタ1309Aは、変調信号をフィルタリングするために設けられる。電流制限及びセンサ1310Aは、過電流状態をプロセッサ1310に通知することができる。電流制限及びセンサ1310Aは、抵抗器に相当するが、過電流状態を検知するいかなる有益なセンサモジュールであってもよい。更に、正の直流電源は、反転電源コンデンサ1307を介して負の力率改善回路モジュール1352に接続される。反転平滑コンデンサ1307は、正の直流電源1351により供給される電力に比例した負の直流電力を供給する。負の力率改善回路モジュール1352は、図1及び図2に記載された方法及び装置に基づいて、位相線1333における力率を改善することができる。負の力率改善回路モジュール1352は、第2のスイッチング回路1332と接続されている。第2のスイッチング回路1332は、図5及び図6の実施の形態に記載されているように、プロセッサユニット1310から、変調補正信号を受信する第2のスイッチングトランジスタ1308Bを有する。プロセッサユニット1310は、スケーリング乗算器G1及びG2を有する。この実施の形態では、G2は、電圧電流変換器に接続されている。減算器は、前の実施の形態に記載されているように、一方の電圧信号をもう一方の電圧信号と比較して補正信号を導出する。変調器は、減算器の出力に接続されており、補正信号を変調する。この実施の形態において、PWMが示されている。しかしながら、あらゆる公知の又は特定用途の変調スキームを用いるようにしてもよい。いくつかの実施の形態において、ループフィルタは、処理及び最適化システム制御、例えば動的挙動、安定性、ゲイン余裕、位相余裕などを制御するため、減算器と変調器との間に接続されている。更にまた、外部のプロセッサユニットが、電流測定、電圧測定、RMS及び歪みの計算を分担し、メモリ、例えばRAM又はROMを有してもよい。
【0067】
図8は、電流を流し込み、流し出す経路に、それぞれ、電圧及び電流のスパイクによって発生した変化を滑らかにしフィルタリングするコイル1361及び1362を含む他の実施の形態を示す。第1及び第2のスイッチングトランジスタ1308A及び1308Bは、コイル1361及び1362を準線形ランプでそれぞれ充電し、どちらか一方のトランジスタ1308A及び1308Bがオフになったとき、充電電流が準線形で0に向かって減少する。フリーホイールダイオード1363は、急激に遮断する電流を回避して、コイルの影響によって破壊を伴う高電圧スパークを回避するのに必要である。第2のフリーホイールダイオード1364は、第2のコイル1362と並列接続される。形成された電流波形は、交互に上下動するような形に類似し、より簡単なフィルタ1309A及び1309Bを可能にする。いくつかの実施の形態において、コイル1361及び1362は、フィルタ1309A及び1309Bの中に一体化される。都合の良いことに、電流が流し込み、流し出す経路の損失が減少する。いくつかの実施の形態において、コンデンサは、フリーホイールダイオード1363及び1364によって、あらゆる損失エネルギーを再利用するために、並列接続となるように含まれるようにしてもよい。図8の実施の形態において、コイル1361及び1362は、スイッチングトランジスタ1308A及び1308Bと低域通過フィルタ1309A及び1309Bとの間にそれぞれ接続されている。
【0068】
使用目的によっては、コイル1361及び1362を負荷1340に直接接続させないようにし、送電網1302から測定されるインピーダンスが向上するようにするため、コイル1361及び1362を、力率改善回路モジュール1351及び1352とトランジスタ1308A及び1308Bとの間に接続させることは有利である。図9は、このような実施例を示す。図9は、正の力率改善回路モジュール1351と第1のトランジスタ1308Aとの間に接続されている第1の電流充電コイル1363Aを示す。また、そこには負の力率改善回路モジュール1362と第2のトランジスタ1308Bとの間に接続されている第2の電流充電コイル1363Bも備えられている。都合の良いことに、送電網等価インピーダンス1302から測定される時には、第1および第2の充電コイル1363Aおよび1363Bは等価住居内負荷1340に対して加算インダクタンスまたはリアクタンスを生成することはなく、それによって力率改善の要求が緩和される。図8と同様に、第1および第2の充電コイル1363Aおよび1363Bは、フリーホイールダイオード1364Aおよび1364Bに対してそれぞれ並列接続される。上述したように、フライホイールダイオードとは、直流電源で動くインダクタンス特性を有する負荷(リレーやモータなど)を切り替えるときトランジスタ、スイッチ、リレー接点などを保護するダイオードであって、フライホイールダイオード(またはフライバックダイオード)と呼ばれる。インダクタンス特性を有する負荷に流れる電流が突然遮断される例があるので、フライホイールダイオードがしばしば望ましい。そのような例では、磁界が破壊されるとともに逆起電力(EMF)が発生し、電流が流れる経路がない場合は、高電圧が発生する。高電圧はトランジスタに損傷を与えるか、またはトランジスタを横切るアーク放電の原因となりうる。フライホイールダイオードはインダクタンス特性を有する負荷に逆向きに接続され、磁界と電流が安全に減弱できるように電流の経路を供給する。
【0069】
図10は、また別の実施の形態の電力線における歪み補正回路を示す。ある必要な場所においては、電子機器と電力線にガルバニック絶縁を施すことが望ましい。ガルバニック絶縁は、ある部位から別の部位への電流の直接的な伝導を避ける、電気システムの機能部位を絶縁する原理である。エネルギーおよび/または情報は、他の手段、例えば静電容量、誘導、電磁波、光学的、音響的、または機械的な手段によって、それでもなお部位間で交換することができる。ガルバニック絶縁は2つ以上の電子回路あるいは1つのシステムの2ヶ所が通信またはエネルギーの伝送を行わなければならないが、それらの接地は異なる電位であり得る場合、または部位によって電流スパイクへの脆弱さが異なるような状況あるいは他の多くの保護的な理由により用いられる。ガルバニック絶縁は、不要な電流が接地線を共有する2つのユニット間に流れないようにすることにより接地ループを断絶する効果的な方法である。ガルバニック絶縁はまた、偶発的な電流が人体を通って地面(建物の床)に到達することを防ぐという安全性を考慮して用いられる。
【0070】
図10は、等価住居内負荷1340の出力側で電子機器がガルバニック絶縁を施されている高調波歪み補正システム1300を示す。図10において、第1のスイッチングトランジスタ1308A及び第2のトランジスタ1308Bの出力は、変圧器1370の第1の巻線1371に接続されている。変圧器1370は高周波、高出力変圧器であることが好ましい。変圧器1370の第2の巻線1372は等価住居内負荷に並列接続されている。状況に応じて、スイッチング後に存在するアーチファクトもフィルタリングするために、第2の巻線1372と等価住居内負荷1340との間に低域通過フィルタ1375が配置されてもよい。高調波歪み補正システム1300が負の高調波を補正しているとき、つまり等価住居内負荷1340に電流が流し込まれているときには、プロセッサユニット1310によってトランジスタ1308Aに供給されるスイッチング信号に応じてセンタータップ1374(これは接地されている)から電流が流し込まれている。したがって、第1の巻線1371に亘って生成する電圧は第2の巻線1372に反映し、相当する電流が等価住居内負荷1340に流し込まれる。同様に、正の高調波が補正されるとき、つまり等価住居内負荷1340から電流が流し出されるときには、プロセッサユニット1310からトランジスタ1308Bにスイッチング信号が供給される。負の電圧が、第1の巻線1371に亘って生成し、これが第2の巻線1372に反映する。都合が良いことに、電子機器、例えばプロセッサユニット1310、電流電圧測定モジュールとプロセッサおよびメモリ1305、力率改善モジュール1351と1352のうちのどれもが、等価住居内負荷1340に直接接続していない。状況に応じて、任意の低域通過フィルタ1303と整流器1304との間に絶縁変圧器を挿入し、計算ユニット1311に供給する相電圧測定のための変圧器を加えることによって、高調波歪み補正システム1300に対する完全なガルバニック絶縁を施すことができる。しかしながら、理解できる通り、流し込みまたは流し出されている電流は、抵抗が最も低い経路を流れる。その結果、正または負の高調波を補正するためにそれぞれ等価住居内負荷1340に流し込まれる電流または等価住居内負荷1340から流し出される電流は、必ずしも等価住居内負荷に与えられるとは限らない。ノード1380Aおよびノード1380Bは、等価住居内負荷と送電網等価インピーダンス1302との間に電流分割器を形成する。通常、送電網等価インピーダンスは、およそ等価住居内負荷1340程度またはそれよりもさらに低い程度に、かなり低いことがあり得る。その結果、等価住居内負荷1340に流し込まれる電流が、その代わりに送電網等価インピーダンス1302に流れ込み、通常、電力送電網へ戻る。同様に、等価住居内負荷1340から流し出すことを意図された電流は、その代わりに送電網等価インピーダンス1302から引き出される。結果として、電力線において高調波歪みの補正は不完全となる。
【0071】
このために、図11は、電流が等価住居内負荷1540に直列構成で選択的に流し出されるまたは流し込まれ、図10のノード1380Aおよびノード1380Bに形成されていた電流分割器が取りのぞかれた全高調波歪み補正システム1500を示す。図10にあるように、トランジスタ1508Aおよび1508Bは、接地されたセンタータップ1574を有する変圧器1570の一次コイルに接続される。しかしながら、図11の構成において、第2の巻線1573は等価住居内負荷1540に直列接続される。スイッチングによって生じるアーチファクトもフィルタリングする、または送電網1501から生じる他のアーチファクトもフィルタリングするために、任意の低域通過フィルタ1572及び1575は、それぞれ第2の巻線1573と送電網等価抵抗1502との間、および第2の巻線と等価住居内負荷1540との間に接続される。この例示的な実施例において、正の高調波を補正するために、プロセッサユニットは負の力率補正モジュール1535に接続されたトランジスタ1508Bに対してPWM信号を送る。対応する電圧信号が第1の巻線1571に亘って生成されると、第2の巻線1573に反映される。第2の巻線1573は等価住居内負荷1540と直列になっており、抵抗の低い経路を提供する電流分割器がないので、電流は等価住居内負荷1540以外から流し出されることはない。同様に、負の高調波が補正されるとき、つまり等価住居内負荷1540に電流を流し込むときは、電流はただ一方向にのみ流れる。結果としてより完全に高調波が補正される。
【0072】
使用目的によっては、スイッチング出力(例えばトランジスタ1508Aおよびトランジスタ1508B)によって起こる電磁干渉は望ましいものではないか、または許容できるものではない。このために、電流を流し出し流し込む正および負の電源は、変調されるか、または変調の必要性を除去するためによりもっと注意深く処理されるかしてもよい。このために、G級およびH級の電源を図6から図11に記述されたシステムと一体化してもよい。電力消費を減らし効率を上げるために、G級の電源は「レール切り替え」を用いる。利用できる母線は複数あり、瞬時電力消費要求にしたがって異なる母線が用いられる。結果として、駆動すべき信号と母線との間にある領域はより小さくなる。このように、増幅器は、出力トランジスタで浪費される電力を減少することによって効率を上げる。G級の電源はAB級の電源よりも効率的だが、切り替え方法に比べると効率的ではないが、切り替えの負の電磁干渉効果はない。図12Aは、電圧軸1201と時間軸1202とを有する出力グラフ1200を示し、これは変調信号1203と複数の電圧レール1204Aから1204Fを表す。時間t=0からt=1まで、変調信号1203の振幅はV1より小さい。結果として、G級の電源は電圧レールV1 1204Cに一致する。スイッチングトランジスタがオンになり、そのために上向きの傾きがt=1近くで開始しているように見えると、ドライバ(例えば図4の電流電源831および832)は電力を熱として浪費し、それによって効率性を失う。レールV1 1204Cは、時間t=1における変調信号1203の振幅に比較すると低いので、全体の非効率性は大きく減少する。変調信号1203の振幅は時間t=1とt=2との間で増加するので、変調信号を駆動させるにはより大きい電圧レールが必要となる。このため、レールV2 1204Bへ切り替える。同様に、時間t=3の後は、変調信号1203の振幅が再び増加するのでレールV3 1204Aが用いられる。同様に、負の周期では、時間t=4から時間t=6まで変調信号1203の振幅は負に増加するので、負のレール1204Dから1204Fへ順番に切り替えられる。
【0073】
図12BはH級の電源の出力1250を示す。H級の増幅器は、G級の電源の場合のように電源レール軸を変調するが、電源レールを連続的に変調することでもう一歩先へ進み、無限に可変である電源レールを形成する。これは、電源レールが所与の時間において出力信号よりも絶対量で比較的わずかにだけ大きくなるように電源レールを変調することによってなされる。結果として、出力段はいつでもその最大効率で動作する。グラフ1250は電圧軸1251および時間軸1252を有する。簡単化のため、図12Aに示したものと同じ変調信号1253を用いる。H級の増幅器では、電源軸電圧1254は変調信号1253に近い線を描く。したがって、変調信号1253と軸電圧1254との間のデルタは連続的に最小となる。結果として、駆動素子(例えば図4の電流電源831および832)は効率的に駆動される。
【0074】
図12Cは、高調波歪み補正システム1600におけるH級の電源の実施例を示す。H級の電源は、正のスイッチング電源1620および負のスイッチング電源1630に直流電圧を供給する整流器1610を有する。整流器1610は、位相線1603および中性線1604に電気的に接続され、それらから交流電源を受ける。任意の低域通過フィルタ1611は、交流電力における不要なノイズまたはアーチファクトをフィルタリングすることができる。整流器1612はフィルタリングされた交流電力を直流電力に整流する。いかなる公知の便利なまたは特定用途の整流回路、例えばブリッジ整流器で十分である。ある実施の形態において、供給される電力の力率をほぼ1にする力率改善モジュール1615が設けられる。一例として、図1および図2ならびに対応するテキストに記述されるような力率改善回路を用いることができる。正のスイッチング電源1610はスイッチングトランジスタ1611を有する。スイッチングトランジスタ1611は、基準信号から位相線1603のサンプルを減算することによって補正信号を形成するために図6から図11に記述されたように動作するプロセッサユニット1650から制御信号を受けとる。制御信号にしたがって、スイッチングトランジスタ1611は、PWM信号の正の平均をとるLCフライホイール網1622を通るPWM信号を形成する。アーチファクトまたはノイズは任意の低域通過フィルタ1623によってフィルタリングされる。過電流センサ1624が、電流サージの状況を制御あるいは制限するために設けられる。同様に、負のスイッチング電源1630はスイッチングトランジスタ1631を有する。また、スイッチングトランジスタ1631はプロセッサユニット1650から制御信号を受けとる。負のスイッチング電源1630の場合、上述のいくつかの図および対応するテキストで説明しているように、補正される正の高調波がある場合のみ、プロセッサユニット1650は制御信号を送る。制御信号にしたがって、スイッチングトランジスタ1631は、PWM信号の負の平均をとる別のLCフライホイール網1632を通るPWM信号を形成する。アーチファクトまたはノイズは任意の低域通過フィルタ1633によってフィルタリングされる。過電流センサ1634が電流サージの状況を制御あるいは制限するために設けられる。
【0075】
図12Dは、別の実施の形態のH級の電源を有する高調波歪み減少システム1700を示す。図16の実施の形態と同様に、整流器1710は、位相線1703および中性線1704に電気的に接続され、それらから交流電源を受ける。低域通過フィルタ1711が、交流電力における不要なアーチファクトをフィルタリングするために設けられる。ブリッジ整流器1712はフィルタリングされた交流電力を直流電力に整流する。ブリッジ整流器について述べているが、いかなる公知の便利なまたは特定用途の回路が、そのようなブリッジ整流器として十分である。ある実施の形態において、供給される電力の力率をほぼ1にするために力率改善モジュール1715が設けられる。一例として、図1および図2対応するテキストに記述されるように、力率改善回路を用いることができる。正のスイッチング電源1710はスイッチングトランジスタ1721を有する。スイッチングトランジスタ1721は、基準信号から位相線1703のサンプルを減算することによって補正信号を形成するために図6から図11に記述されたように動作するプロセッサユニット1750から制御信号を受けとる。制御信号にしたがって、スイッチングトランジスタ1721は、PWM信号の正の平均をとるLCフライホイール網1722を通るPWM信号を形成する。アーチファクトまたはノイズは任意の低域通過フィルタ1723によってフィルタリングされる。過電流センサ1724が電流サージの状況を制御あるいは制限するために設けられる。正のスイッチング電源1710によって供給される変調された正の電力は、第2の正のスイッチングトランジスタ1725に流れる。第2の正のスイッチングトランジスタ1725もプロセッサユニット1750によって制御される。都合が良いことに、正のスイッチング電源1710によって供給される変調された電力は、第2の正のスイッチングトランジスタ1725によって受けとられるPWM信号に近い線を描く。結果として、図12Bの出力グラフで説明されたように、電力供給と電力需要との間のあき高は非常に小さい。負のスイッチングトランジスタ1731も、プロセッサユニット1750から制御信号を受けとる。負のスイッチングトランジスタ1731は、正の高調波が検出されたとき、つまり電流が等価住居内負荷1740から流し出されねばならないときのみ、プロセッサユニット1750によって起動される。制御信号にしたがって、負のスイッチングトランジスタ1731は、LCフライホイール網1732を通るPWM信号を形成し、それによってPWM信号の負の平均をとる。任意の低域通過フィルタ1723はアーチファクトまたはノイズをフィルタリングする。過電流センサ1734が電流サージの状況を制御または制限するために設けられる。負のスイッチング電源1730によって供給される変調された正の電力は、第2のスイッチングトランジスタ1735に流れる。第2の負のスイッチングトランジスタ1735もプロセッサユニット1750によって制御される。都合が良いことに、負のスイッチング電源1720によって供給される変調された電力は、第2の正のスイッチングトランジスタ1725によって受けとられるPWM信号に近い線を描く。結果として、図12Bの出力グラフで説明されたように、電力供給と電力需要との間のあき高は非常に小さい。
【0076】
図13Aは、別の実施例の、セレクタ1870を通して太陽光発電システム(図示していない)と一体化している高調波歪み減少システム1800を示す。図13Aに示したシステムの利点と価値を議論する前に、従来技術の太陽光発電送信システムを理解することは有益である。図13Bは標準的な従来技術の太陽光発電送信システム1890を示す。太陽光パネル1891は、最大限の太陽光を受けるように設置される。太陽光パネル1891は、逆電流から太陽光パネル1891を保護するダイオード1892を通してレギュレータ1893に電気的に接続される。レギュレータ1892は太陽光パネル1891から有効電流を分離し、その一方でバッテリ1894およびインバータ1895に対しDC12V(または他の所望の電圧)を維持する。万一太陽光パネル1891が太陽光不足のために電流を生成するのを止メーター場合に、バッテリ1894はインバータ1895に電流を流し続けるための緩衝材として機能する。太陽光パネル1891は直流電流のみを生成するため、インバータは、電力が住宅等価性負荷に対応するように直流電流を交流電流に変換せねばならない。インバータは図12Cの1603および1604のような電力線(または位相線)および中性線に接続される。また、インバータ1895は、インバータ1895とレギュレータ1893との間に接続されるフューズ1897によっても保護される。レギュレータ1893、インバータ1895およびバッテリ1894はまた、太陽光発電送信システム1890が設置されている住宅の下の地面に挿入される、通常は長い金属棒であるアーススパイクを通して接地している。しかしながら、DC/ACインバータは非効率的であることがよく知られている。最も効率的に設計してもおよそ85%の効率にしか届かない、つまり太陽光パネル1891によって生成するエネルギーの15%が熱または機械振動として浪費されている。
【0077】
このため、図13Aは、非効率的で扱いにくいインバータを用いることなく太陽エネルギーを等価住居内負荷1850に注入するか、または電力送電網1801に戻すかのどちらかを行う能力を有する高調波歪み減少システム1800を示す。高調波歪み減少システム1800は直流電源1810を有する。直流電源1810は位相線1803および中性線1804に接続されており、そこから交流電力を受け取る。任意の低域通過フィルタ1811は位相線1803における高調波またはアーチファクトをフィルタリングする。絶縁変圧器1812が、太陽光発電システムに対して位相線1803および中性線1804にガルバニック絶縁を施すため備えられることは好ましい(後述する)。したがって、ブリッジ整流器1813コンバータは交流電力を直流電力に整流する。ブリッジ整流器1813が示されているが、いかなる整流回路または手段を用いることができる。状況に応じて、力率改善回路モジュール1814および1815は電源1814および1815における電流の歪みを改善することができ、電流の高調波歪みをほぼ0にできる。直流電源1810はスイッチ1870に接続される。スイッチ1870は、直流電源1810または外部直流電源としての太陽光発電システム(図示していない)のどちらかを選択的に接続する。スイッチ1870は、測定、プロセッサおよびメモリユニット1820によって制御できる。ユニット1820は、時刻およびあらかじめプログラムされた日の出および日没の予定に基づいて、直流電源1810と太陽光発電システムとを自動的に切り替えるようにプログラムすることができる。あるいは、ユニット1820は、太陽光発電システムの瞬間発電力に応じて直流電源1810または太陽光発電システムのどちらに切り替えるかを命令することができる。太陽光発電システムが、測定された高調波エラーを改善するために十分な電力を生成している場合、太陽光発電システムを高調波歪み減少システム1800に切り替えることができる。太陽光発電システムによって供給される過剰電力は、等価住居内負荷1850によって用いることができる。スイッチ1870は、正のスイッチング回路1830および、直流電源または太陽光発電システムのどちらかによって供給される正の直流電力を反転する負の電源1815に接続される。負のスイッチング回路1840は負の電源1815によって供給される負の直流電力を変調させる。正のスイッチング回路1830および負のスイッチング回路1840は、いくつかの実施の形態において上述したように、プロセッサユニット1825によって制御され、負の高調波エラーを改善するために正のPWM信号を生成し、正の高調波エラーを改善するために負のPWM信号を生成する。高周波変圧器1880によってガルバニック絶縁が施されるのは好ましい。高周波変圧器は、太陽光発電システムによって起こる電位スパイクから、等価住居内負荷1850および電力送電網1801を絶縁する。実際、そのような絶縁は太陽光発電システムに関する規制によって要求され得る。任意の低域通過フィルタ1881はアーチファクトまたはノイズをフィルタリングする。都合が良いことに、インバータ1895のことを考える必要のない図13Bに示す太陽光発電システムは、非常に高い効率で、高調波歪み減少システム1800とともに動作することができる。さらに、第2の低域通過フィルタ1882および高周波変圧器1880は等価住居内負荷1850と並列接続しているように示されている。当業者にとって容易に明らかである
図13Aに記述されているシステムの利点の1つが図13Cに図示されている。図13Cは、電流軸Iおよび時間軸tを有するグラフ1875を示す。第1の出力曲線1876は非常に歪んだ電流の波形を表す。いくつかの図および対応するテキストに記述される手段と方法を通して、正および負の高調波エラー改善するためにそれぞれ電流を選択的に流し出すことおよび流し込むことによって、1本斜線が描かれた領域で表される高調波歪み1872を改善することができることが示されている。形成されるのは改善された電流の波形1877である。しかしながら、図13Cのシステム1800を動作させることで、太陽光発電システムから追加エネルギーを注入することが可能になる。結果として、新しい電流の波形1878は、二本十字斜線が描かれた領域で表される追加注入された電流1873によって形成される。上述したように、PWM変調は、例えば図8のトランジスタ1308Aおよびトランジスタ1308Bのように、電源を制御する非常に効率の良い方法である。動作中に、太陽光発電システムによって生成する直流電流は、従来技術の太陽光発電システムに見られるインバータによって等価住居内負荷に損失なく用いられる交流電力に変換される。
【0078】
図13Aは、単相二線または単相三線の電力網の構成を有する、太陽光自家発電および高調波補正歪みの好ましい実施例である。別の実施の形態において、太陽光自家発電および高調波補正歪みは、分相三線または分相四線の電力網の構成(位相線、分相線、中性線および任意のアース)で実行することができる。このような場合、変圧器1890は、入力および出力側に同じ二重の巻線を有する変圧器で置換される。入力構成は図13Aと同じである。2つの出力巻線は中間点で中性線に接続され、巻線の互いのアクセスは単相線および分相線に接続される。単相線につながる電線および分相線につながる電線でのPWM変調をフィルタリングするため、1891と同様な2つの低域通過フィルタを用いることができる。
【0079】
さらにその代わりとして、三相四線または三相五線の電力網の構成(3つの単相線、中性線および任意のアース)を有する、太陽光自家発電および高調波補正歪みの構成とするのは好ましい。この場合、変圧器1890は、入力側に同じ二重の巻線を有するが出力側に3つの巻線を有する変圧器で置換される。入力構成は図13Aと同じである。出力巻線の構成はデルタまたはスター型であってもよい。スター型の構成においては、共通ノードが中間点で中性線に接続され、巻線の互いのアクセスは3つの位相線それぞれに接続される。共通出力ノードが中性線に接続され、各位相線につながる電線でのPWM変調をフィルタリングするため、1891と同様な3つの任意の低域通過フィルタを用いることができる。複相/複線システムおよび複相/複線回路に関するいくつかの追加の詳細および図は、2011年1月25日に出願された米国仮特許出願番号61/435、921に挙げられ、その全体が組み込まれる。
【0080】
図14Aは高調波歪み補正システム1900の別の実施例を示す。この実施の形態において、高調波歪み補正システム1900は、高調波歪みにおけるエネルギーを取り込み、それを用いて後の歪みを改善することができる。歪みは浪費の過程ではない、すなわち歪みにおけるエネルギーは熱として浪費されないので、電力網が平均的なまたはほぼ0である直流電力値を有するときは、それ自身の歪みエネルギーによって電流の波形を作り直すことが可能である。通常、高調波歪み補正システム1900は、無効成分に歪みエネルギーを蓄え、同じまたはより小さい値であるが正負が反対の大きさである歪みを改善するために後で解放する。無効成分はコンデンサまたはコイルであってもよい。ここではコンデンサについて述べているが、当業者にとって明らかなように、コンデンサの代わりにコイルを用いるなどの同様の実施が可能である。まず、後の周期で歪みを改善するために集められ再利用されるエネルギーのグラフ表示の、歪んだ電流の波形を見ておくことは有益である。このために、図14Bは電流に対する時間出力のグラフ1980を示す。グラフ1980は電流の大きさを示す軸1981および時間軸1982を有する。高調波歪みを有する電流の波形1981、基準電流の波形1987および差分信号の波形1988という3つの波形が示されている。信号の波形1988の曲線での3つの領域は、正負が反対の大きさである同じまたはより小さい歪みを改善するために集め、蓄え、後で用いることができる歪みエネルギーを表しているので、特に興味深い。第1のE1領域1983は負の合計歪みエネルギーであり、第2のE2領域1984は正の合計歪みエネルギーであり、第3のE3領域1985はまた負の合計エネルギーである。波形のこの部分は改善周期Tの半周期を表しているので、同一かつ、正負が反対の高調波エネルギーが改善周期Tの第2半周期に現れる。結果として、E4 1983’、E5 1984’およびE6 1985’は、それぞれE1 1983、E2 1984およびE3 1985と正負が反対で等しい大きさであり、E1 1983、E2 1984およびE3 1985の蓄えられたエネルギーを注入することによって改善することができる。
【0081】
図14Aに戻ると、蓄積素子C1 1910、蓄積素子C2 1915および蓄積素子C3 1920は、高調波エネルギーを蓄え、解放する。先の実施の形態にあるように、高調波歪み補正システム1900は等価住居内負荷1940と事業者の電力メーター1901との間に接続される。プロセッサユニット1920は、正または負の高調波エネルギーがいつ集められるのかということに従い、コンデンサC1 1910、コンデンサC2 1915およびコンデンサC3 1920を高調波歪み補正システム1900に接続するかどうかを制御する。プロセッサユニット1920は、詳細を上述したいくつかの実施の形態とほぼ同様である平均化および減算部1921を有する。例えば、平均化および減算部1921は位相線1902における電流を基準信号と比較し、それにしたがって補正信号を生成する。蓄積素子C2 1915または蓄積素子C3 1920がエネルギーを充電または放電し、次の半周期からは対応する逆エネルギーを同時に充電または放電すると、追加のプロセッサ回路素子1922はそれら蓄積素子のどちらかを起動する。各コンデンサはスイッチ1912、1917および1922によって充電または放電される。スイッチ1912、1917および1922は、図14Bのエラー信号1986にしたがってPWM信号を生成するプロセッサユニット1920によって制御される。コンデンサC1 1910およびコンデンサC2 1915は、それぞれスイッチ1913およびスイッチ1918によって、正の直流電源1905によって生成される直流電流を運ぶ正の電圧線V+1907と位相線1902との間に、または位相線1902と中性線1903との間に、選択的に接続することができる。コンデンサC2は等価住居内負荷1940と並列接続されたままである。表3は、図14Bのエラー1986に関して、コンデンサC1 1910、C2 1915およびC3 1920を充電および放電する例示的な接続様式を示す。表3は、どのコンデンサが充電または放電されているか、コンデンサがどこに接続しているか、その状態、充電または放電されているエネルギー、そして放電の結果といった事柄を順に表示している。さらに、もう1つの原理を心に留めておかなくてはならない。すなわち、コンデンサは電位差によってのみ充電することができ、したがって正の半周期の間にコンデンサを充電するためには、一方の電極をつなぐ正の直流高電圧、例えば正の電圧線V+1907と、もう一方の電極をつなぐ中性線N1903、位相線P、または負の直流高電圧V−との間にコンデンサを接続するとよい。コンデンサを負に充電するために同じ原理が適用される。すなわち、コンデンサは、一方の電極を負の電圧線V−に、もう一方の電極を中性線N、位相線P、または正の電圧線V+に接続するとよい。図14Aの実施例において、負の電源は明瞭化のために図示されていない。しかしながら、当業者にとって明らかなように、負の直流電圧は、例えば図4から図12Dおよび対応するテキストに記述されるように生成される。
【0082】
【表3】

【0083】
コンデンサC1 1910、コンデンサC2 1915およびコンデンサC3 1920を流れる電流は、いかなる方向にも流れることができる。それぞれのパルス幅変調器に制御されるスイッチ1912、スイッチ1917およびスイッチ1922は二方向性のスイッチで、例えば並列および逆方向(すなわち、ドレインからソースおよびソースからドレイン)に接続される2つのトランジスタとともに実施されることが好ましい。いかなるあらゆるトランジスタをも用いることができ、それにはバイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ、IGBTトランジスタ、またはJFETトランジスタを含むことができるがこれに限定されない。状況に応じて、コンデンサC1 1910、コンデンサC2 1915およびコンデンサC3 1920は、プロセッサユニット1920によって生成される変調信号をフィルタリングするために、それぞれPWMフィルタ1911、1916および1921に接続される。
【0084】
使用目的によっては、より単純なトポロジーを有し、将来起こる高調波の容量を改善するために高調波エネルギーを用いる能力を同時に有することは望ましい。このために、図14Cは単純化された高調波歪み補正システム1990を示す。高調波歪み補正システム1990は電力線における全ての歪みのうちの一部を改善する。図示した実施の形態において、歪みの改善はエラーE2 1984およびエラーE5 1984’が生成される期間中に効率的である。つまり、電力線の電流が、絶対値で基準電流よりも大きいときである。歪みが他の方法で、例えば図4から図13のシステムとは違う方法で説明されるようなある用途では、図14Cの実施の形態のようなより単純な実施の形態で十分である。高調波歪み補正システム1990はまた、事業者の電力メーター1901と等価住居内負荷1940との間で、位相線1902および中性線1903に接続される。1つのコンデンサ1991はスイッチ1992によって等価住居内負荷1940と選択的に並列接続される。スイッチ1992はプロセッサユニット1995によって制御される。位相線1902の電流が歪み、基準信号よりも大きくなる正の半周期(例えば、図14BのエラーE2 1984が形成される)の間に、コンデンサ1991は、歪みの容量である過剰なエネルギーを充電し蓄える。負の半周期の間には、同じことが起こるが逆電流の兆候を有し、コンデンサ1991は放電し、負の高調波エネルギーを打ち消す正の供給源としてふるまう。都合が良いことに、コンデンサ1991は位相線1902と中性線1903との間に接続され、他のいかなる電位あるいはノードに他の電流は流れ込まず、それによって効率性は減少する。通常、図14Aおよび図14Cにおいて、単コンデンサが参照されるが、コンデンサ列を用いることができることも理解される。
【0085】
図14Dは、別の実施の形態の、後で起こる高調波歪みを改善するために高調波エネルギーを再利用する能力を有する高調波歪み減少システム2000を示す。高調波歪み減少システム2000は、事業者の電力メーター2001と等価住居内負荷との間に接続される。高調波歪み減少システム2000は、それぞれが位相線2002および中性線2003に接続されている負の直流電源2015および正の直流電源2010を有する。第1のコンデンサ2030は、三位スイッチ2032によって、正の直流電源2010、負の直流電源2015,または中性線2003に選択的に接続される。第1のコンデンサ2030はまた、位相線2002に接続される。第1のコンデンサ2030の充電および放電は、プロセッサユニット2020によって生成されるPWM信号によって制御されるスイッチ2033によって制御される。状況に応じて、PWMフィルタ2031は、プロセッサユニット2020によって生成されるPWM変調信号をフィルタリングする。第2のコンデンサ2040は等価住居内負荷2040に選択的に並列接続される。同様に、第2のコンデンサ2040の充電および放電は、プロセッサユニット2020によって供給されるPWM信号によって順に制御されるスイッチ2043によって制御される。ここでは、周知であり高効率であると理解されているのでPWM制御信号について述べているが、スイッチ2033およびスイッチ2043を制御するいかなる方法または手段をも用いることができる。PWMフィルタ2041は、プロセッサユニット2020によって生成されるPWM変調信号をフィルタリングする。都合が良いことに、高調波歪み減少システム2000は、この例では第1のコンデンサ2030である少なくとも1つのエネルギー蓄積素子から中性線2003に経路を供給するので、素子は中間線2003に放電することができ、よりよい効率性を遂行する。なぜなら、エネルギー蓄積素子は、中間線2020に放電している間は、正の直流電源2010にも負の直流電源2020にも接続されていないからである。追加の実施の形態および高調波歪み補正システムならびに回路は、2011年1月19日に出願された米国仮特許出願番号61/435、658に挙げられ、その全体が組み込まれる。
処理の別の方法
上述したいくつかの実施の形態において、補正信号に到達するためのアナログ処理が広く議論されてきた。つまり、全ての実施の形態において、アナログ構成要素が比較し、減算し、変調して、選択的に電流を流し出すまたは流し込むか、あるいは高調波エネルギーを蓄え、用いるためのコンデンサの充電を制御するかのどちらかを行うためにスイッチを制御する補正信号に到達する。しかしながら、フーリエ変換を用いることで、デジタル領域でも処理を行うことができるようになった。アナログ信号、例えば電流、電圧、有効電力、無効電力、位相(電流を電圧に)、ゼロ交差イベント、有効電力THD、無効電力THD、電圧THD、電流THD、I_RMS、U_RMS、力率、あるいは他のいかなる有益な信号の構成要素が、1つ以上のアナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル化される。当業者にとって明らかであるように、デジタル処理はDSPプロセッサまたはASIC、あるいはFPGA、およびメモリによって実行される。いくつかの既製のプロセッサまたはアレイは、Xilinx、Analog Devices、および他の供給者から入手できる。都合の良いことに、そのようなプロセッサはフレキシブルで、最も効率的に、一部をデジタル処理し一部をアナログ処理することができる。したがって、出力アナログ信号は1つ以上のデジタル/アナログ変換器(DAC)によって生成するか、またはPWM信号または別の変調されたアナログ信号のようなデジタル信号または偽デジタル信号から内部的に得られる。そのような実施例はまた、過電圧、過電流、過電力、温度過上昇、および他の関連の入力/出力パラメーターの値に対して保護回路を有してもよい。周知の通り、アナログ信号はデジタル信号へデジタル化し、デジタルで処理することができる。
【0086】
例示的な実施例において、力率および全高調波歪みの減失を有する位相線における全電流は、周波数領域においてFFTまたは他の変圧器、例えばDFTによっていくつかの周期を測定され、定量化され、変圧される。FFTは、1つの信号期間(例えば1/60Hz)あたりに一度、またはその期間中の一部の期間に複数回、測定された全電流のいくつかのポイントで処理できる。実数および虚数のベクトルの両方を得ることができる。周期的でないFFTのサンプリングの影響によってFFTで生成されるアーチファクトを減少させるために、窓関数を用いることができる。いかなる公知の窓、例えばハン窓、ハミング窓、ブラックマン窓、コサイン窓、矩形型窓を用いることができる。FFTに入力される多くのサンプル値は電流信号期間の整数時間に合わせることは好ましい。そうすることでFFTに生じるアーチファクトを低下および抑制し、窓関数の必要性が減少するが、あったとしても、容易な処理およびより高いFFTの周波数または振幅選別のために望ましい。あるいは、サンプルの数値はいくつかの電流入力信号に等しく、例えば2から50である。理想的な電流周波数レスポンスIref(f)を用いることができ、それは入力電流のRMS値でスケールを変えることができる。サイズnのIref(f)およびItot(f)の複合ベクトルの両方が指数(j=1、…、n)毎に比較され、それによってCorr_I(f)=Real{Corr_I(f)}+Im{Corr_I(f)}で示される複合エラーベクトルを生成する。また、ループフィルタおよびその他の処理はその後実行される。エラーベクトル信号Corr_I(f)はそれから時間領域に再変換され、エイリアシングを避けるために低域通過フィルタでフィルタリングされる。フィルタリングされたエラー信号は補正信号を変調するための変調信号として用いることができる。同時に、正の値のエラー信号によって、変調されたエラー信号が、流し出す/流し込む電力トランジスタをオン状態に切り替える。同様に、負の値のエラー信号によって、変調されたエラー信号が、流し込む/流し出す電力トランジスタをオン状態に切り替える。流し込む、および流し出す電力トランジスタ(反対符号)は、電力線の歪みを打ち消し、理想的な力率よりも小さくするように、和回路網電力ノードに追加される。
【0087】
デジタル処理の別の方法は、Itot(t)で表される入力信号、全電流が、周期的で決定論的な信号として扱うように、本質的に周期的で十分に決定論的であるという事実を用いる。我々は3つの事例を区別することができる。第1に、電力網が静止状態であって、どの電気器具の状態も変化しないとき。この場合、電流(および電圧)が、無効負荷の力率または全高調波歪みによる位相の遅延を有してもよい。電流のエラー信号は周期的である。第2に、電力網がゆっくりと変化するとき(変化の速度は交流電力網の周波数よりもかなり遅い)。この場合、1つ以上の電気器具が、例えば5秒でフルレートに達するモータのように、その状態を変化させてもよい。この場合、ゼロ交差期間および期間から期間の間のほぼ一定の波形の振幅については信号は周期的である。第3に、電力網の状態が中間または速い速度で変化するとき(変化の速度は交流電力の周波数よりもかなり速い)。この場合、1つ以上の電気器具が、スイッチのオンまたはオフのように、その状態を変化させてもよく、信号はゼロ交差期間については周期的であるが、変化が継続しているときの波形の形および振幅については周期的ではない。
【0088】
最初の2つの範疇に属するいかなる効果をも改善することが望ましい。第3の範疇の効果はフィードバックループ反応時間の範囲で改善することができる。一例として、ループフィードバック反応時間RTが0.2秒であれば、RT秒よりも短いあらゆるイベントが範疇2となり改善される。しかしながら、RTよりも速い場合は、RTよりも短い期間でイベントを改善することはできない。電流エラー信号は、理想的な電流波形と移相し得る、かつ/または様々な高調波歪みを含む完全ではない測定された電流波形とを比較することで得られる。実際、入力信号または入力信号エラーが常に経時的に変化し、定常性および収束性のどちらもない場合は、標準的な比例、積分、微分PIDコントローラではループを制御できない。このために、入力電流の周波数/相、例えば60Hzおよび同相にプロセスを同調させるため、PLLまたは他のゼロ交差検出器が実行される。また、電流信号はnビットに量子化される。そして、入力電流信号と電流の基準信号との間の差であるエラー信号が生成される。電流の基準信号は、入力電流信号と同調し、そのRMS値で正規化されねばならない。電流の基準信号(単純なサイン波)は電圧入力波形から生成され、入力電圧波形で固定されたPLLによってスケールを変えるかまたは内部的に作られる。エラー入力値は、入力電流の1サイクルに正確に等しい1つの電力線を有するような電力線によって、メモリ線に記憶される。論理同期信号は、列ゼロに書き込むメモリをリセットするための各ゼロ交差イベントで生成することができる。同期論理信号はPLLまたはゼロ交差検出器によって生成することができる。完全な周期を保存するため、負から正への(または正から負への)移行のみが用いられてもよい。
【0089】
現実的な周波数は、電流入力周波数よりも10から50,000倍速い範囲であるので、60Hz周期では、0.6KSample/secと3MSample/secとの間の値である。次式を満足させるような値が好ましい。
【0090】
N×1/fs=T_i(t)
ここでNはある期間T_i(t)におけるサンプル数、fsはサンプリングの頻度、そしてT_i(t)は入力信号i(t)の期間である。例として、T_i(t)=1/60Hz、N=100とすると、サンプリング頻度はfs=6.0KSample/secとなる。この方法の鍵は、例えば制御ループフィードバック機構(コントローラ)がポイント単位で各列の信号を制御するために用いられるように、列単位でメモリを読み込むことである。デジタル処理が実行されるので、列あたり1つのコントローラを用いることができるが、そうでなければ、フィードバック制御の高度な方法(マルチコントローラ)を用いるか、またはある列に対するマスターコントローラが、別のデータ列に対するn−1スレーブコントローラと連動して用いられる。コントローラは、PIDまたはそのあらゆるバリエーション(P、I、D、PD、PI)、線形制御、カルマンフィルタ、ファジー論理、ニューロン、遺伝的アルゴリズム、適応制御、人工知能、機械学習、最適制御、MPC、LQG、粗制御、H無限ループ形成および確率制御であるか、またはこれらを含むことができる。その後、出力値は電力線単位で読み込まれ、コントローラで処理され、一時レジスタに保存され、そしてサンプル単位で出力され、アナログ値に再変換される。アンチエイリアシングフィルタがそれに続く。一旦補正信号が生成されれば、詳細に上述したように、その補正信号は電流を流し出すまたは流し込むのに用いることができる。いくつかの追加の詳細およびFFTまたはDFTなどを用いる信号のデジタル処理を表す図は、2011年1月19日に出願された米国仮特許出願番号61/435、658に挙げられ、その全体が組み込まれる。
【0091】
本願発明は、当該発明の構成及び作用の原理の理解を容易にするため、詳細を具体化した特定の実施の形態によって説明した。特定の実施の形態及びその詳細において、この中で引用することは、本文書に添付される特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。当業者にとって容易に明らかであるように、特許請求の範囲によって定義される発明の精神と範囲から逸脱することなく、他の多様な変形例を、説明するのに選択された実施の形態から構成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪みを有する電気信号の歪みを低減させる歪み低減システムにおいて、
a.電力線の前記歪みを有する電気信号のうちの少なくとも一部を所望の基準信号と比較して、補正信号を生成する電気回路と、
b.歪みを改善する補正信号に従って、前記歪みを有する電気信号に対して、直流整流器及び太陽光パネルのうちの1つから電流を選択的に流し出し流し込み、前記太陽光パネルから負荷または電力網の少なくとも1つに追加の電流を選択的に流し込む電気回路とを備える歪み低減システム。
【請求項2】
電流を流し出し流し込むために、前記直流整流器と前記太陽光パネルとを切り替えるプロセッサを更に備える請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項3】
第1の巻き線及び第2の巻き線を有する変圧器であって、選択的に流し出し流し込む前記電気回路を前記電力線からガルバニック絶縁するための変圧器を更に備える請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項4】
前記歪みは、高調波歪み、ノイズ、高スペクトルノイズ及び振幅変調のうちのいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項5】
ノイズを有する電気信号の力率を実質的に1にする力率改善モジュールを更に備える請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項6】
前記力率改善モジュールは、
a.前記電力線に接続された第1の負荷の無効電力を測定するセンサと、
b.前記第1の負荷に接続し、該第1の負荷の無効成分を打ち消す複数ビット無効負荷とを有することを特徴とする請求項5記載の歪み低減システム。
【請求項7】
前記電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、前記補正信号を、少なくとも1つの制御電流源に供給し、
前記制御電流源は、前記補正信号に基づいて、前記直流整流器及び前記太陽光パネルのうちの1つを前記電力線に接続することを特徴とする請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項8】
前記電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、
a.前記補正信号を変調し、変調補正信号を、前記直流整流器及び前記太陽光パネルのうちの1つが供給する電流を前記電力線に接続する少なくとも1つのスイッチに供給する変調器と、
b.変調信号をフィルタリングするフィルタとを有することを特徴とする請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項9】
前記電流を選択的に流し出し流し込む電気回路は、
a.前記直流整流器及び前記太陽光パネルのうちの1つに選択的に接続される正の直流電流を供給するための正の直流電源と、
b.前記直流整流器及び前記太陽光パネルのうちの1つに選択的に接続される負の直流電流を供給するための負の直流電源と、
c.選択的に、負の歪みに応じて前記正の直流電源の1つから前記電力線に電流を流し込むか、または、正の歪みに応じて前記電力線から前記負の直流電源に電流を流し出すプロセッサとを有することを特徴とする請求項1記載の歪み低減システム。
【請求項10】
歪みを有する電気信号の歪みを低減させる歪み低減方法において、
a.電力線の前記歪みを有する電気信号のうちの少なくとも一部を所望の基準信号と比較して、補正信号を生成するステップと、
b.前記歪みを有する電気信号に対して、負の電源及び正の電源から電流を選択的にそれぞれ流し出し流し込むステップと、
c.前記補正信号に従って正の電源を変調するステップと、
d.前記補正信号に従って負の電源を変調するステップとを含む歪み低減方法。
【請求項11】
前記比較ステップは、
a.歪みを有する信号を検知するステップと、
b.基準信号を生成するステップと、
c.前記歪みを有する信号を基準信号と比較して、補正信号を生成するステップとを含むことを特徴とする請求項10記載の歪み低減方法。
【請求項12】
前記電流を選択的に流し出し流し込むステップは、
a.補正信号に従って、負の高調波を改善するために、正の電源から電流を流し込むために接続された第1のトランジスタのゲートを制御するステップと、
b.補正信号に従って、正の高調波を改善するために、負の電源に電流を流し出すために接続された第1のトランジスタのゲートを制御するステップとを含むことを特徴とする請求項10記載の歪み低減方法。
【請求項13】
前記電流を選択的に流し出し流し込むステップが、補正信号を変調するステップを更に含むことを特徴とする請求項10記載の歪み低減方法。
【請求項14】
前記正の電源を変調するステップは、
a.補正信号を変調するステップと、
b.補正信号を受信するステップと、
c.補正信号の正の平均を得るステップとを含むことを特徴とする請求項10記載の歪み低減方法。
【請求項15】
前記負の電源を変調するステップは、
a.補正信号を変調するステップと、
b.補正信号を受信するステップと、
c.補正信号の負の平均を得るステップとを含むことを特徴とする請求項10記載の歪み低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公表番号】特表2013−518347(P2013−518347A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551241(P2012−551241)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/022471
【国際公開番号】WO2011/091441
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512194640)ジェネヴァ クリーンテック インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】