説明

歪検出装置

【課題】取り付け部品が少なく、作業効率や使い勝手の良い歪検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】荷重により歪を生じる柱状の起歪体2と、この起歪体2の外周面に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子4と、この抵抗素子4に結線され起歪体2の歪量を検出する信号処理回路とを備え、起歪体2を挟むように起歪体2の軸方向にネジ部10を配置するとともに起歪体2とネジ部10とを互いに一体化し、車両用シート12の取付部13の貫通孔および床面部14の支持部22の貫通孔にネジ部10を挿入して、このネジ部10にナット20を螺合させるとともに取付部13とナット20との間に弾性部材15を介在させた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート等の荷重を測定するための歪検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の歪検出装置について説明する。
【0003】
従来の歪検出装置は、図6において、複数の貫通孔31を有する板状の金属製の起歪体32と、この起歪体32の貫通孔31の間に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子33と、この抵抗素子33に結線された信号処理回路(図示せず)とを備えている。
【0004】
この歪検出装置を、例えば、車両用シートと床面部との間に取り付ければ、車両用シートに座る人員の荷重を測定することができる。起歪体32に設けた複数の貫通孔31の内、内側の貫通孔31に車両用シートの一部を挿入して起歪体32と車両用シートとを連結し、外側の貫通孔31に床面部の一部を挿入して起歪体32と床面部とを連結して取り付ける(例えば、車両用シートの一部や床面部の一部をネジ部とし、起歪体32を介してナットで締めて取り付ける)。そうすると、車両用シートに荷重が加わった際、起歪体32が歪んで抵抗素子33の抵抗値が変化するので、これを信号処理回路で処理することによって荷重を測定することができる。この場合、起歪体32は車両用シートと床面部との両方に連結されているので、圧縮方向に対する荷重と引張方向に対する荷重を測定することができる。信号処理回路には、4つの抵抗素子33を環状に接続してホーイストンブリッジ回路を形成し、信号処理回路に入力している。
【0005】
このような起歪体32の形状としては板形状の他に円筒形状のものもあるが、共に、複数の取り付け部品を組み合わせて歪検出装置を取り付けているものである。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1や特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開2003−240633号公報
【特許文献2】特開平6−207865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の歪検出装置では、歪検出装置の取り付けにおいて、複数の取り付け部品が必要となり、組み立ての作業効率や使い勝手が悪いという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するもので、取り付け部品が少なく、作業効率や使い勝手の良い歪検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、特に、起歪体を挟むように前記起歪体の軸方向にネジ部を配置するとともに前記起歪体と前記ネジ部とを互いに一体化しており、前記ネジ部を取付部材の貫通孔に挿入して前記ネジ部に螺合する締付部材と前記起歪体との間で前記取付部材を締付固定するとともに、一方の前記取付部材と前記起歪体または前記締付部材との間に弾性部材を配置して締付固定し、他方の前記取付部材と前記起歪体または前記締付部材との間には弾性部材を配置せずに締付固定し、荷重方向が前記起歪体の軸方向に対して垂直な方向になるように前記ネジ部に荷重を付加し、前記起歪体の曲げモーメントに起因した歪量を検出する構成である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、起歪体を挟むように起歪体の軸方向にネジ部を配置するとともに起歪体とネジ部とを互いに一体化しているので、このネジ部を介して、例えば、シートおよび床面部とを連結すれば簡単に取り付けが可能となり、作業効率や使い勝手を向上することができる。
【0011】
特に、ネジ部を取付部材の貫通孔に挿入してネジ部に螺合する締付部材と起歪体との間で取付部材を締付固定するとともに、一方の取付部材と起歪体または締付部材との間には弾性部材を配置して締付固定し、他方の取付部材と起歪体または締付部材との間には弾性部材を配置せずに締付固定するので、荷重方向が起歪体の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部に荷重を付加し、起歪体の曲げモーメントに起因した歪量を検出する際、歪を生じやすくしてセンサ感度を向上できる。
【0012】
荷重方向が起歪体の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部に荷重を付加した場合は、起歪体にせん断力または曲げモーメントが生じるが、せん断力に伴う歪量よりも曲げモーメントに伴う歪量の方が大きいので、一方の取付部材と起歪体または締付部材との間にのみ弾性部材を配置して締付固定することによって、曲げモーメントを起歪体に生じさせて的確に歪を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の全請求項に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態における歪検出装置の斜視図、図2は同歪検出装置の断面図、図3は同歪検出装置を介して車両用シートと床面部とを連結したシートユニットの側面図、図4は図3のA部の拡大図、図5は図3のA部の正面断面図である。
【0015】
図1、図2において、本発明の一実施の形態における歪検出装置は、荷重により歪を生じる柱状の起歪体2と、この起歪体2の外周面に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子4と、この抵抗素子4に結線され起歪体2の歪量を検出する信号処理回路(図示せず)とを備えている。この起歪体2は軸方向に空洞8を有する角柱状とし、起歪体2の外形を四角柱状とするとともに空洞8を円筒状としている。この起歪体2を挟むように起歪体2の軸方向に対して直交方向にネジ部10を配置し、起歪体2とネジ部10とを互いに溶接して接合し一体化している。
【0016】
この歪検出装置を、例えば、図3〜図5に示すように、車両用シート12と床面部14との間に取り付ければ、車両用シート12に座る人員の荷重を測定することができる。
【0017】
車両用シート12にはその下部に取付部材として取付部13を設け、この取付部13にはネジ部10を挿入する貫通孔を設けている。床面部14には床面18に取付部材として支持部22を設け、この支持部22に上記ネジ部10を挿入する貫通孔を設けている。これら取付部13と支持部22の各々の貫通孔の軸方向は床面18に対して水平方向になるようにしている。
【0018】
そして、一方のネジ部10を車両用シート12の取付部13の貫通孔へ挿入し、他方のネジ部10を支持部22の貫通孔へ挿入し、互いに締付部材であるナット20で締め付けて、起歪体2およびネジ部10を介して車両用シート12と床面部14とを連結している。このとき、一方の取付部13とナット20との間には弾性部材15を配置してナット20で取付部を締付固定し、他方の取付部13と起歪体2またはナット20との間には弾性部材15を配置せずに締付固定している。この弾性部材15はゴムワッシャーとしており、ネジ部10に簡単に嵌められる。
【0019】
上記の歪検出装置には、車両用シート12に荷重が加わった際、荷重方向が起歪体2の軸方向に対して直交方向(床面18に対する上下方向)になるようにネジ部10に荷重が付加される。この際、一方の取付部13と起歪体2との間に弾性部材15を配置して締付固定しているので、曲げモーメントが起歪体2に生じて的確に歪を検知させることができる。単に、荷重方向が起歪体2の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部10に荷重が付加された場合は、起歪体2のせん断力または曲げモーメントに起因して起歪体2が歪むが、上記構成により、歪量の大きい曲げモーメントに伴う歪量を検知できる。
【0020】
特に、仕様に応じて単に起歪体2の直径の大小を選択するだけで、車両用シート12と床面部14との間の高さを低く抑制することもでき、車種によって異なる車両用シート12の座面の高さをあらかじめ低く設定しておける。すなわち、座面に座る人員の目線の高さを調節し易くなるものである。
【0021】
上記構成により、起歪体2を挟むようにネジ部10を形成しているので、このネジ部10を介して、例えば、車両用シート12と床面部14とを連結する際に、取り付け部品が少なく簡単に取り付けが可能となり、作業効率や使い勝手を向上することができる。
【0022】
特に、取付部材である取付部13や支持部22の貫通孔にネジ部10を挿入して、ネジ部10に螺合する締付部材であるナット20と起歪体2との間で取付部材を締付固定するとともに、一方の取付部材と締付部材との間には弾性部材15を配置して締付固定し、他方の取付部材と起歪体2または締付部材との間には弾性部材15を配置せずに締付固定するので、荷重方向が起歪体2の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部10に荷重を付加した際、起歪体2の曲げモーメントに起因した歪量を検出してセンサ感度を向上できる。荷重方向が起歪体2の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部10に荷重を付加した場合、起歪体2にせん断力または曲げモーメントが生じるが、せん断力に伴う歪量よりも曲げモーメントに伴う歪量の方が大きく、一方の取付部材と起歪体2または締付部材との間に弾性部材15を配置して締付固定することによって、曲げモーメントを起歪体2に生じさせて的確に歪を検知することができる。
【0023】
さらに、起歪体2とネジ部10とは互いに一体化しているので、車両用シート12に荷重が加わった際も起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制できる。体重検知時の数十Kgから車両衝突検知時の1トン程度までは検出能力を損なわずに起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制でき、また、車両破壊に至るような数トン程度の荷重に対しても起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制できるものである。
【0024】
起歪体2とネジ部10とは溶接して接合し一体化したり、同一材料からなる部材を加工したりしてもよい。起歪体2およびネジ部10の材料としては析出硬化系ステンレス鋼が挙げられ、起歪体2とネジ部10とを同種材料とする場合は、SUS630等が挙げられる。その他、延性および靭性に富むとともに溶接性も優れたオーステナイト系の加工硬化特性を有するSUS301、耐食性および溶接性の良好なフェライト系のSUS430等も挙げられる。これらSUS630、SUS301、SUS430は日本工業規格(JIS)で定められたステンレス規格である。
【0025】
なお、本発明の一実施の形態では、一方の取付部材と締付部材との間に弾性部材15を配置して締付固定したが、一方の取付部材と起歪体2との間に弾性部材15を配置して締付固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明にかかる歪検出装置は、取り付け部品が少なく取り付けが簡単で、作業効率や使い勝手が良く、荷重を測定するセンサとして各種の機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態における歪検出装置の断面図
【図2】同歪検出装置の断面図
【図3】同歪検出装置を介して車両用シートと床面部とを連結したシートユニットの側面図
【図4】図3のA部の拡大図
【図5】図3のA部の正面断面図
【図6】従来の歪検出装置の上面図
【符号の説明】
【0028】
2 起歪体
4 抵抗素子
8 空洞
10 ネジ部
12 車両用シート
14 床面部
16 レール部
18 床面
20 ナット
22 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重により歪を生じる柱状の起歪体と、前記起歪体の周面に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子とを備え、前記起歪体を挟むように前記起歪体の軸方向にネジ部を配置するとともに前記起歪体と前記ネジ部とを互いに一体化しており、前記ネジ部を取付部材の貫通孔に挿入して前記ネジ部に螺合する締付部材と前記起歪体との間で前記取付部材を締付固定するとともに、一方の前記取付部材と前記起歪体または前記締付部材との間に弾性部材を配置して締付固定し、他方の前記取付部材と前記起歪体または前記締付部材との間には弾性部材を配置せずに締付固定し、荷重方向が前記起歪体の軸方向に対して垂直な方向になるように前記ネジ部に荷重を付加し、前記起歪体の曲げモーメントに起因した歪量を検出する歪検出装置。
【請求項2】
前記起歪体と前記ネジ部とは互いに溶接して接合し一体化した請求項1記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記起歪体は軸方向に空洞を有する筒状とした請求項1記載の歪検出装置。
【請求項4】
荷重方向が前記起歪体の軸方向になるように前記ネジ部に荷重を付加し、前記起歪体の軸力に起因した歪量を検出する請求項1記載の歪検出装置。
【請求項5】
前記弾性部材はワッシャーとした請求項1記載の歪検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−271302(P2007−271302A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94001(P2006−94001)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】