説明

水田作業機の排水溝形成装置

【課題】 排水溝を元の地面に対する深さを深く且つ幅広に形成できるようにするとともに、排水溝の土壌の押えを確実にして崩れにくくし、排水溝からの排水を十分に行なうことができるようにして排水効率の向上を図る。
【解決手段】 水田の土壌に対して作物に係る埋設物を埋設する水田作業機に設けられ水田作業機の走行により土壌表面に排水溝を形成する水田作業機の排水溝形成装置Sにおいて、水田作業機に設けられるベース体1と、ベース体1に設けられ水田作業機の走行により移動させられて土壌を押しのけて土壌表面に下地溝を形成する第一作溝体10と、ベース体1の第一作溝体10より走行方向後側に設けられ第一作溝体10により形成された下地溝の土壌を更に押しのけて排水溝に整形する第二作溝体20とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田の土壌に対して作物に係る埋設物を埋設する播種機や施肥機等の水田作業機に設けられ、水田作業機の走行により土壌表面に排水溝を形成する水田作業機の排水溝形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水田作業機の排水溝形成装置としては、例えば、特許文献1(特開2001−148911号公報)に掲載されたものが知られている。図12に示すように、この排水溝形成装置Saは、例えば、埋設物としての稲の種を播種する水田作業機Waに設けられている。この水田作業機Waは、水田の土壌表面に押し付けられて土壌表面を均す平面状の下面を有したフロート120を4つ備えており、このフロート120の下面には、土壌に没入され水田作業機Waの走行により移動させられて土壌表面に稲の種を埋設する埋設物溝を形成する埋設物作溝体(図示せず)が設けられている。
排水溝形成装置Saは、背面視M字型に形成されたプレートにより構成され、左右中央の下向きに折り曲げられた作溝体100と、左右両端の下向きに延びた規制部110とを備えて構成されており、水田作業機Waの後部に棒状のアーム121を介して取り付けられている。アーム121は、水田作業機Waの進行方向に対して左右方向に延びる機枠122に、その一端121aが着脱可能に取り付けられており、その他端121b側に排水溝形成装置Saが設けられている。また、排水溝形成装置Saは、水田作業機Waの複数のフロート120の間に位置するように、水田作業機Waの機枠122にアーム121を介して取り付けられている。この状態では、排水溝形成装置Saは、その前端101が後端102よりも土壌表面に対して上方に位置するようになる。
【0003】
そして、この水田作業機Waにより、稲の種の播種を行なうときは、水田作業機Waを駆動させて土壌表面を走行させる。水田作業機Waを走行させると、フロート120が移動し、これによって、フロート120の下面に設けられた埋設物作溝体(図示せず)が土壌を押しのけていくようになり、埋設物作溝体(図示せず)の移動経路に埋設物溝が形成されるとともに、この埋設物溝に稲の種が入れられて播種が行なわれる。
また、この水田作業機Waの走行においては、排水溝形成装置Saが移動させられ、この移動によって、排水溝形成装置Saの作溝体100がその進行方向左右に土壌を押しのけるようになり、作溝体100の移動経路に排水溝Daが形成されていく。このとき、作溝体100によってその進行方向左右に押しのけられた土壌を規制部110が受け止めるようになり、押しのけられた土壌が作溝体100と規制部110との間に溜まっていくので、押しのけられた土壌が排水溝形成装置Saの進行方向左右外方へ移動することが防止される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−148911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の水田作業機の排水溝形成装置Saにおいては、形成される排水溝Daが所要のものにならず、排水溝Daからの排水効率に劣るという問題があった。これは、図13に示すように、排水溝形成装置Saは、アーム121の他端121b側に取り付けられているので、土壌を押しのけていく際、浮き上がりやすく、そのため、規制部110で押えてはいるものの、排水溝Daが元の地面GLに対しては、どうしても深さが浅く且つ幅が狭く形成されるとともに、土壌の押えも不十分になって崩れやすくなってしまうからである。排水溝100からの排水が十分に行なわれないと、埋設物溝の排水が十分に行なわれなくなり、そのため、埋設物の水分調整が不十分になって、埋設物の育成に支障がでる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、排水溝を元の地面に対する深さを深く且つ幅広に形成できるようにするとともに、排水溝の土壌の押えを確実にして崩れにくくし、排水溝からの排水を十分に行なうことができるようにして排水効率の向上を図った水田作業機の排水溝形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の水田作業機の排水溝形成装置は、水田の土壌に対して作物に係る埋設物を埋設する水田作業機に設けられ該水田作業機の走行により土壌表面に排水溝を形成する水田作業機の排水溝形成装置において、上記水田作業機に設けられるベース体と、該ベース体に設けられ上記水田作業機の走行により移動させられて土壌を押しのけて土壌表面に下地溝を形成する第一作溝体と、上記ベース体の上記第一作溝体より走行方向後側に設けられ該第一作溝体により形成された下地溝の土壌を更に押しのけて排水溝に整形する第二作溝体とを備えて構成している。
【0008】
これにより、水田の土壌表面を水田作業機が走行すると、ベース体が移動させられ、この移動によって、先ず、第一作溝体が土壌を押しのけていき、これによって土壌表面に下地溝が形成される。次に、第一作溝体の走行方向後側に設けられた第二作溝体が、下地溝の土壌を更に押しのけていき、これによって下地溝が排水溝に整形される。そのため、排水溝は、下地溝を作ってから、これを整形して形成されるので、即ち、排水溝は、第一作溝体及び第二作溝体により土壌が二度押しのけられて形成されるので、排水溝を元の地面に対する深さを深く且つ幅広に形成できるとともに、排水溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。このため、排水溝が所要のものになって、この排水溝からの排水を十分に行なうことができるようになり、排水効率が向上させられる。この結果、埋設物の水分調整を確実に行なうことができ、埋設物の育成を促進させることができる。
【0009】
また、第一作溝体及び第二作溝体は、土壌を二度押しのけて排水溝を形成することになるので、大きな作溝体で一度に土壌を押しのけて排水溝を形成する場合に比較して、第一作溝体及び第二作溝体夫々における土壌に対する抵抗を小さくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記第一作溝体及び第二作溝体を、傾斜した前端を有した船型形状に形成した構成としている。これにより、第一作溝体及び第二作溝体の前端が土壌に接して、土壌を押しのけていくようになるが、この前端を傾斜形成することにより、第一作溝体及び第二作溝体夫々における土壌に対する抵抗を小さくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。
【0011】
また、必要に応じ、上記第一作溝体及び第二作溝体の少なくとも何れか一方の前端を、進行方向に対面する平面状に形成した構成としている。これにより、押しのけられた土壌が、第一作溝体及び第二作溝体の前端の進行方向前側に移動させられて土壌の下側に押し付けられるようになるので、より一層排水溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記ベース体に、上記第一作溝体の上端の前側及び左右側に延在し該第一作溝体によって押しのけられた土壌を押える押え面を形成した構成としている。これにより、第一作溝体によって押しのけられ、第一作溝体の前端の進行方向前側及び左右側に移動させられた土壌が押え面により押えつけられるようになるので、押しのけられた土壌が下地溝に入り込んで戻る事態を抑制することができ、そのため、より一層深さを深く且つ幅広に形成できるとともに、下地溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形される。
【0013】
更にまた、必要に応じ、上記第二作溝体を、上記ベース体の後端部に設け、該第二作溝体の上端の左右側に該第二作溝体によって押しのけられる土壌を押えるウイングを設けた構成としている。これにより、第二作溝体で押しのけられ、第二作溝体の前端の進行方向左右側に移動させられた土壌を、ウイングが押えるようになるので、押しのけられた土壌が排水溝に入り込んで戻る事態を抑制することができ、より一層排水溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。
【0014】
そして、また、必要に応じ、上記第二作溝体を、進行方向に向けて投影した投影面が、下端が尖った三角形状になるように側面を傾斜形成し、上記ウイングの外面を上記側面の延長面に沿わせて形成した構成としている。これにより、排水溝は、下端が尖ったV字形状に整形されるので、水が流れやすく、排水効率を向上させることができ、そのため、埋設物の水分調整を確実に行なうことができ、埋設物の育成を促進させることができる。また、ウイングの外面を側面の延長面に沿わせて形成することにより、より一層排水溝を綺麗に整形することができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記水田作業機は、土壌表面に押し付けられて該土壌表面を均す平面状の下面を有し走行方向に沿う中心線に対して左右対称のフロートを備え、上記ベース体を上記フロートで構成するとともに、上記第一作溝体及び第二作溝体を上記フロートの中心線上に配置した構成としている。これにより、フロートとしてのベース体が土壌表面に押し付けられるようになるので、より確実に排水溝を所要のものに形成することができ、そのため、排水溝を元の地面に対する深さを深く且つ幅広に形成できるとともに、排水溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。また、ベース体をフロートで構成しているので、従来のように、排水溝形成装置を、アームを介して水田作業機の後部に取り付けた場合と比較して、排水溝形成装置が水田作業機の後部に然程突出して位置されず、そのため、水田作業機が畦際で旋回するときでも、小回りが利き、そのため、作業効率を向上させることができる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記水田作業機は、土壌に没入され走行により移動させられて土壌表面に埋設物を埋設することが可能な埋設物溝を形成し所定間隔で離間した一対の埋設物作溝体を備え、該一対の埋設物作溝体を上記フロートからなるベース体にその中心線を挟んで左右対称位置に設けた構成としている。これにより、埋設物溝が排水溝の左右に必ず形成されるようになるので、排水溝によって、より確実に埋設物溝の排水が行なわれるようになり、そのため、埋設物の水分調整を確実に行なうことができ、埋設物の育成を促進させることができる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記フロートとしてのベース体を、一端が水田作業機に取り付けられる棒状の取付部材の他端に支持した構成としている。これにより、取付部材が上下に撓むので、土壌表面が平坦でなくてもこれに追従でき、ベース体の下面を確実に土壌表面に押し付けることができ、そのため、確実に土壌表面を均すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水田作業機の排水溝形成装置によれば、排水溝は、下地溝を作ってから、これを整形して形成されるので、即ち、排水溝は、第一作溝体及び第二作溝体により土壌が二度押しのけられて形成されるので、排水溝を元の地面に対する深さを深く且つ幅広に形成できるとともに、排水溝の土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。このため、排水溝が所要のものになって、この排水溝からの排水を十分に行なうことができるようになり、排水効率が向上させられる。この結果、埋設物の水分調整を確実に行なうことができ、埋設物の育成を促進させることができる。
【0019】
また、第一作溝体及び第二作溝体は、土壌を二度押しのけて排水溝を形成することになるので、大きな作溝体で一度に土壌を押しのけて排水溝を形成する場合に比較して、第一作溝体及び第二作溝体夫々における土壌に対する抵抗を小さくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を説明する。
図1乃至図10には、本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置Sを示している。本装置Sは、水田の土壌に対して作物に係る埋設物Tを埋設する播種機や施肥機等の水田作業機Wに設けられている。本実施の形態では、水田作業機Wは、埋設物Tとしての稲の種を播種する周知の播種機で構成されている。この水田作業機Wは、土壌表面に押し付けられて土壌表面を均す平面状の下面2aを有し走行方向に沿う中心線に対して左右対称のフロート1aを備えている。このフロート1aは、水田作業機Wの後部の機枠Fに設けられている。
【0021】
この水田作業機Wに設けられる本装置Sは、水田作業機Wに設けられるベース体1と、ベース体1に設けられ水田作業機Wの走行により移動させられて土壌を押しのけて土壌表面に下地溝を形成する第一作溝体10と、ベース体1の第一作溝体10より走行方向後側に設けられ第一作溝体10により形成された下地溝Gの土壌を更に押しのけて排水溝Dに整形する第二作溝体20とを備えて構成されている。
【0022】
ベース体1は、実施の形態では、上記のフロート1aで構成されている。このフロート1aとしてのベース体1は、図1乃至図5及び図7乃至図10に示すように、一端が水田作業機Wの機枠Fに取り付けられる棒状の取付部材Faの他端に支持され、この取付部材Faの撓みによってある程度上下動可能になっている。また、ベース体1は、土壌表面に押し付けられて土壌表面を均す平面状の下面2を有した流線型の板状に形成されている。このベース体1は、走行方向に沿う中心線3に対して左右対称に形成されており、ベース体1の下面2の中心線3上に第一作溝体10及び第二作溝体20が配置されている。また、ベース体1の下面2であって、第一作溝体10の上端11の前側及び左右側に延在する位置は、第一作溝体10によって押しのけられた土壌を押える押え面12として形成されている。
【0023】
第一作溝体10は、図1乃至図4,図7,図9及び図10(A)に示すように、傾斜するとともに進行方向に対面する平面状に形成された前端13を有した船型形状に形成され、ベース体1の下面2の中心線3上にビス4で接続されて設けられている。この第一作溝体10は、進行方向に向けて投影した投影面14が、矩形状になるように形成されている。
【0024】
第二作溝体20は、図1乃至図3,図5乃至図9及び図10(C)に示すように、傾斜するとともに進行方向に対面する平面状に形成された前端21を有した船型形状に形成され、第一作溝体10から所望距離離間させられて、ベース体1の後側に突出した断面ハット形の後端部5にビス22で接続されて設けられている。この第二作溝体20は、進行方向に向けて投影した投影面23が、下端が尖った三角形状になるように側面24が傾斜形成されている。また、この第二作溝体20の上端25の左右側に、第二作溝体20によって押しのけられる土壌を押えるウイング26が設けられている。このウイング26は、その外面26aが第二作溝体20の側面24の延長面に沿わせて形成されている。実施の形態では、ウイング26は、第二作溝体20の上端25に接する底板26bと、この底板26bの進行方向左右両端縁から立ち上がり外面26aが第二作溝体20の側面24の延長面に沿うように形成された側板26cとを備えて構成され、底板26bが後端部5と第二作溝体20との間に介装されて第二作溝体20側からビス22で後端部5に固定されている。
【0025】
また、水田作業機Wには、図1乃至図3,図9及び図10(B)に示すように、土壌に没入され走行により移動させられて土壌表面に埋設物Tを埋設することが可能な埋設物溝Uを形成し所定間隔で離間した一対の埋設物作溝体30が設けられている。この埋設物作溝体30は、第二作溝体20と相似形且つ第二作溝体20よりも小さく形成されている。また、この一対の埋設物作溝体30は、フロート1aからなるベース体1の下面2に、その中心線3を挟んで左右対称位置に設けられている。更に、この一対の埋設物作溝体30は、進行方向に沿う方向であって、第一作溝体10と第二作溝体20との間に設けられている。尚、水田作業機Wには、埋設物作溝体30が作溝した埋設物溝Uに稲の種を播種する周知の播種装置が搭載されており、貯留タンク(図示せず)に貯留した埋設物Tとしての稲の種を、埋設物作溝体30の後側に設けた種子誘導部31から埋設物溝U内に投入する。
【0026】
更に、埋設物作溝体30の進行方向後側には、図1,図2及び図10(C)に示すように、埋設物溝Uの上方を通過し、埋設物溝Uに土壌を被せる周知の覆土体40が設けられている。
【0027】
従って、この水田作業機Wにより埋設物Tとしての稲の種の播種を行なうときは、水田作業機Wを駆動させて土壌表面を走行させる。水田作業機Wを走行させると、本実施の形態に係る排水溝形成装置Sにおいて、フロート1aからなるベース体1が水田の土壌表面に当接して移動させられ、この移動によって、先ず、第一作溝体10の前端13が土壌を押しのけていき、これによって土壌表面に、下地溝Gが形成される。このとき、第一作溝体10の前端13が傾斜形成されているので、土壌に対する抵抗を少なくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。また、第一作溝体10で押しのけられた土壌が、第一作溝体10の前端13の進行方向前側に移動させられて土壌の下側に押し付けられるようになるので、下地溝Gの土壌の押えが確実になって綺麗に整形される。
【0028】
この第一作溝体10によって押しのけられた土壌は、第一作溝体10の前端13の進行方向前側及び左右側に移動させられる。この移動させられた土壌は、押え面12によって土壌表面に押し付けられる。これによって、押しのけられた土壌が下地溝Gに入り込んで戻る事態を抑制することができる。
【0029】
このように形成された下地溝Gは、図10(A)に示すように、その横断面が、第一作溝体10の投影面14に対応した矩形状に形成されるようになる。フロート1aとしてのベース体1が土壌表面に押し付けられているので、下地溝Gを所要のものに形成することができる。
【0030】
そして、水田作業機Wを走行させていくと、第一作溝体10によって押しのけられ、第一作溝体10の進行方向左右側に移動させられて、押え面12によって土壌表面に押し付けられた土壌に一対の埋設物作溝体30が没入するようになる。この埋設物作溝体30の移動によって、図10(B)に示すように、下地溝Gの左右に一対の埋設物溝Uが形成され、貯留タンク(図示せず)に貯留した埋設物Tとしての稲の種が、埋設物作溝体30の後側に設けた種子誘導部31から埋設物溝U内に投入される。
【0031】
更に水田作業機Wを走行させていくと、第一作溝体10の走行方向後側に、第一作溝体10から所望距離離間させられて設けられた第二作溝体20が、下地溝Gの土壌を更に押しのけていき、下地溝Gの深さを深く且つ幅を広くしていく。これによって下地溝Gが排水溝Dに整形される。このとき、第二作溝体20の前端21が傾斜形成されているので、土壌に対する抵抗を少なくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。また、第二作溝体20は、予めある程度の深さ及び幅に形成された下地溝Gの土壌を更に押しのけるだけなので、それだけ、第二作溝体20が土壌に接する面積は小さくなり、この点でも、土壌に対する抵抗が小さくなる。即ち、土壌を二度押しのけて排水溝Dを形成することになるので、大きな作溝体で一度に土壌を押しのけて排水溝Dを形成する場合に比較して、第一作溝体10及び第二作溝体20夫々における土壌に対する抵抗を小さくすることができ、そのため、作溝効率を向上させることができる。更に、第二作溝体20で押しのけられた土壌が第二作溝体20の前端21の進行方向前側に移動させられて土壌の下側に押し付けられるようになるので、排水溝Dの土壌の押えが確実になって綺麗に整形される。
【0032】
この第二作溝体20によって押しのけられ、第二作溝体20の進行方向左右側に移動させられた土壌を、ウイング26が押えるので、押しのけられた土壌が排水溝Dに入り込んで戻る事態を抑制することができ、排水溝Dの土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。また、ウイング26の外面26aを側面24の延長面に沿わせて形成しているので、より一層排水溝Dを綺麗に整形することができる。
【0033】
このように整形された排水溝Dは、図10(C)に示すように、その横断面が、第二作溝体20の投影面23に対応した下端が尖ったV字形状に整形されるので、水が流れやすく、排水効率を向上させることができる。フロート1aとしてのベース体1が土壌表面に押し付けられているので、排水溝Dを所要のものに形成することができる。この排水溝Dは、下地溝Gを作ってから、これを整形して形成されるので、即ち、排水溝Dは、第一作溝体10及び第二作溝体20により土壌が二度押しのけられて形成されるので、排水溝Dを元の地面GLに対する深さを深く且つ幅広に形成できるとともに、排水溝Dの土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなる。このため、排水溝Dが所要のものになって、この排水溝Dからの排水を十分に行なうことができるようになり、排水効率を向上させることができる。
【0034】
また、このとき、ベース体1に設けられた覆土体40が、第二作溝体20によって押しのけられ第二作溝体20の進行方向左右側に移動させられた土壌の一部を、ベース体1の中心線3側に押し戻すように移動させる。これによって、図10(C)に示すように、第二作溝体20によって押しのけられた土壌は、その一部が埋設物溝Uに覆い被さるようになり、埋設物Tが埋設物溝Uに埋設される。
【0035】
このようにして、水田の土壌に、埋設物Tを埋設するとともに排水溝Dを形成する。埋設物Tは、適度な量の水分が必要であり、水分が多すぎても少なすぎても埋設物Tの育成に支障が出る。本発明の装置Sで形成された排水溝Dは、元の地面GLに対する深さが深く且つ幅広に形成されるとともに、土壌の押えが確実になって綺麗に整形されて崩れにくくなっているので、排水効率が向上される。また、埋設物Tが埋設される埋設物溝Uは、排水溝Dの左右に必ず形成されるようになるので、埋設物溝Uの排水をより確実に行なうことができる。即ち、排水溝Dによって、埋設物溝Uの排水を十分に行なうことができるようになり、そのため、埋設物Tの水分調整を確実に行なうことができ、埋設物Tの育成を促進させることができる。
【0036】
このように、排水溝Dを形成しながら水田作業機Wを走行させていくと、水田作業機Wは、水田の畦際に至る。この場合、水田作業機Wを旋回させて、走行方向を真逆にし、形成した排水溝Dに沿うように水田作業機Wを走行させ、形成した排水溝Dから一定距離離間させた位置に、新たな排水溝Dを形成していく。このとき、ベース体1をフロート1aで構成しているので、従来のように、排水溝形成装置Sを、アームを介して水田作業機Wの後部に取り付けた場合と比較して、排水溝形成装置Sが水田作業機Wの後部に然程突出して位置されず、そのため、水田作業機Wが畦際で旋回するときでも、小回りが利き、そのため、作業効率を向上させることができる。
【0037】
尚、上記実施の形態において、ベース体1をフロート1aで構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、ベース体1をフロート1aに取り付けても良く、また、ベース体1を水田作業機Wのフロート1a以外の部位に取り付けても良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、第一作溝体10と第二作溝体20とを所望距離離間させて設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第一作溝体10の後端と第二作溝体20の前端21とを連設して設けても良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、第一作溝体10の投影面14の形状を矩形状になるように形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、第二作溝体20の投影面23の形状と同様に、下端が尖った三角形状になるように形成しても良く、適宜変更して差支えない。
【0038】
尚また、上記実施の形態において、押え面12をベース体1の下面2で形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、ベース体1の下面2に、ベース体1の下面2から膨出形成され第一作溝体10によって押しのけられた土壌を押える押え面12を有した押え部15を設けて構成しても良く、適宜変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を示す底面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を示す側面図である。
【図4】図2中、A−A線断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を示す背面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る第二作溝体を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を水田作業機に設けた状態で示す一部拡大平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を水田作業機に設けた状態で示す一部拡大背面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置を水田作業機に設けた状態で示す一部拡大側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る水田作業機の排水溝形成装置で形成される溝を示し、(A)は第一作溝体で形成された下地溝、(B)は埋設物作溝体で形成された埋設物溝、(C)は第二作溝体で形成された排水溝を示す図である。
【図11】ベース体の下面に押え部を設けた水田作業機の排水溝形成装置を示す斜視図である。
【図12】従来の水田作業機の排水溝形成装置の一例を示し、(A)は水田作業機に取り付けた状態を示す平面図、(B)は水田作業機に取り付けた状態を示す一部拡大背面図である。
【図13】従来の水田作業機の排水溝形成装置で形成された排水溝を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
S 水田作業機の排水溝形成装置
W 水田作業機
F 機枠
Fa 取付部材
T 埋設物
G 下地溝
U 埋設物溝
D 排水溝
1 ベース体
1a フロート
2 下面
3 中心線
4 ビス
5 後端部
10 第一作溝体
11 上端
12 押え面
13 前端
14 投影面
20 第二作溝体
21 前端
22 ビス
23 投影面
24 側面
25 上端
26 ウイング
30 埋設物作溝体
40 覆土体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田の土壌に対して作物に係る埋設物を埋設する水田作業機に設けられ該水田作業機の走行により土壌表面に排水溝を形成する水田作業機の排水溝形成装置において、
上記水田作業機に設けられるベース体と、該ベース体に設けられ上記水田作業機の走行により移動させられて土壌を押しのけて土壌表面に下地溝を形成する第一作溝体と、上記ベース体の上記第一作溝体より走行方向後側に設けられ該第一作溝体により形成された下地溝の土壌を更に押しのけて排水溝に整形する第二作溝体とを備えて構成したことを特徴とする水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項2】
上記第一作溝体及び第二作溝体を、傾斜した前端を有した船型形状に形成したことを特徴とする請求項1記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項3】
上記第一作溝体及び第二作溝体の少なくとも何れか一方の前端を、進行方向に対面する平面状に形成したことを特徴とする請求項2記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項4】
上記ベース体に、上記第一作溝体の上端の前側及び左右側に延在し該第一作溝体によって押しのけられた土壌を押える押え面を形成したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項5】
上記第二作溝体を、上記ベース体の後端部に設け、該第二作溝体の上端の左右側に該第二作溝体によって押しのけられる土壌を押えるウイングを設けたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項6】
上記第二作溝体を、進行方向に向けて投影した投影面が、下端が尖った三角形状になるように側面を傾斜形成し、上記ウイングの外面を上記側面の延長面に沿わせて形成したことを特徴とする請求項5記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項7】
上記水田作業機は、土壌表面に押し付けられて該土壌表面を均す平面状の下面を有し走行方向に沿う中心線に対して左右対称のフロートを備え、上記ベース体を上記フロートで構成するとともに、上記第一作溝体及び第二作溝体を上記フロートの中心線上に配置したことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項8】
上記水田作業機は、土壌に没入され走行により移動させられて土壌表面に埋設物を埋設することが可能な埋設物溝を形成し所定間隔で離間した一対の埋設物作溝体を備え、該一対の埋設物作溝体を上記フロートからなるベース体にその中心線を挟んで左右対称位置に設けたことを特徴とする請求項7記載の水田作業機の排水溝形成装置。
【請求項9】
上記フロートとしてのベース体を、一端が水田作業機に取り付けられる棒状の取付部材の他端に支持したことを特徴とする請求項7または8記載の水田作業機の排水溝形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−124775(P2010−124775A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304112(P2008−304112)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(390025793)岩手県 (38)
【Fターム(参考)】