水田作業機
【課題】 機体の後部における水田作業装置と機体との間に代掻き用の整地装置を水田作業機において、整地装置を構成する回転体の整地部を支持する支持部に切欠空間を形成して泥の流れが支持部によって邪魔されずに左右方向へ泥がスムーズに流れるようにする。
【解決手段】 機体の後部における水田作業装置と機体との間に整地装置を備える。整地装置には、左右横軸芯周りで回転する支持部62cと、その外周部に支持部62cに支持された整地部62dで構成された回転体62を備える。支持部62cに左右方向の泥の流れを促進する空間62eを形成する。
【解決手段】 機体の後部における水田作業装置と機体との間に整地装置を備える。整地装置には、左右横軸芯周りで回転する支持部62cと、その外周部に支持部62cに支持された整地部62dで構成された回転体62を備える。支持部62cに左右方向の泥の流れを促進する空間62eを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に苗植付装置や直播装置等の水田作業装置を昇降自在に支持した乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では例えば特許文献1に開示されているように、機体の後部に苗植付装置(水田作業装置に相当)(特許文献1の図1の4)を昇降自在に支持し、整地装置(特許文献1の図1〜図7の40)を、苗植付装置と機体との間に備えて、整地装置を昇降する昇降機構を、苗植付装置の前側に備えたものがある。これにより、整地装置により田面を整地しながら、苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるのであり、昇降機構により整地装置の高さ(整地深さ)を変更することができる。
【0003】
特許文献1では、整地装置により田面を整地しながら苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるものであるが、特許文献1の図8に示されているように、整地装置の回転体55は、板状のホイール部55cの外周に等間隔に複数個の代掻き作用部55aを備えて、回転体55を回転支軸46に並設して整地装置を構成していた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−304648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
進行する機体に対する後輪跡の泥水の流れは、車輪の回転によって乱れ動いた表面近くの泥水によって車輪跡の位置から左右に拡散しようとする。しかし、特許文献1の整地装置で代掻き整地を行うと、回転体の全周に備えられたホイール部によって泥水が左右に拡散することが阻害されるおそれがある。即ち、特許文献1の整地装置の代掻き用回転体では、回転支軸と代掻き作用部を接続するホイール部が泥水の流れを妨げやすいものであった。
【0006】
本発明は、水田作業装置と機体との間に整地装置を備えた水田作業機について、整地装置の回転体の構造を改良して、整地能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、前記水田作業装置と機体との間に整地装置を備え、この整地装置には左右横軸芯周りで回転する支持部とその外周部に支持部に支持された整地部を備えた回転体を有するとともに、前記整地部よりも回転中心側に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してある。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、回転体に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してあるので、泥水は自由に支持部の空間を通り支持部を横切って左右方向に移動でき、支持部によって左右方向への泥水の流れを阻害することが軽減できる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、整地装置において、泥水の流れが左右方向に流れやすくなっているから、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われやすくなって、整地装置の整地性能を向上させることができた。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記回転体を前記左右横軸芯方向に複数並設してある。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
水田作業装置の大きさ(横幅)に合せて回転体の個数を変更することにより、整地装置の横幅を自由に設定することができるだけでなく、整地装置を複数組に分ける場合もその形態によって同じ回転体を必要数用意することで対応することができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、同形の回転体を必要数用意することで多様な整地装置に対して利用することができるので、生産性が向上させることができる。
【0013】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1または第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記支持部を板状体で構成し、板状体の外周部を切り欠くことによって前記空間を形成してある。
【0014】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1、第2特徴と同様に前項[I]乃至[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、支持部の支持強度をあまり落とさないで材料を軽減できる。又、支持部の回転中心部側にのみ孔を設けるのに比べて、支持強度をあまり落とさないで支持部に大きな空間を確保することができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、支持部の支持強度をあまり落とさないで、大きな空間を確保しながら材料を軽減できることができるので、生産性が向上する。
【0016】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記支持部を板状体で構成し、板状体の内部に形成した孔によって空間を形成してある。
【0017】
(作用効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1、2、3特徴と同様に前項[I]乃至[III]に記載の「作用」「効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、支持部の回転中心側に近い箇所に泥水を通過できる孔を形成することができるので、回転体が深く沈み込んだ場合にも支持部での泥水の通過が容易になるとともに、回転体の回転による回動速度が小さい箇所で泥水の左右移動が行なえることから、比較的小さな孔でも泥水の左右移動がスムーズに行なわれやすい。
【0018】
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第3または4特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記空間の位相は、前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部に形成した空間について同一位相としてある。
【0019】
(作用効果)
本発明の第5特徴によると、本発明の第3、4特徴と同様に前項[III]乃至[IV]に記載の「作用効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第5特徴によると、整地装置において回転体が複数並設されている場合、支持部に形成した空間が同一位相に配置されているので、例えば泥水が一つの回転体の支持部の空間を左右方向に移動して隣の回転体に達した場合、その位置に隣の回転体の支持部の空間が位置していることになり、泥水が複数の回転体の支持部の空間に亘って左右方向に移動しやすくなる。これにより、整地装置において、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われる。
【0020】
[VI]
(構成)
本発明の第6特徴は、本発明の第3または4特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部を、隣接する支持部どうしによって構成される複数のグループに分け、各グループにおける各支持部どうしの空間の位相を同一位相に揃えるとともに、隣接するグループどうしの空間の位相を異ならせてある。
【0021】
(作用)
本発明の第6特徴によると、本発明の第3、4特徴と同様に前項[III]乃至[IV]に記載の「作用効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第6特徴によると、整地装置の各グループにおいて回転数が複数並設されている場合、支持部に形成した空間が同一位相に配置されているので、例えば泥水が一つの回転体の支持部の空間を左右方向に移動して隣の回転体に達した場合、その位置に隣の回転体の支持部の空間が位置していることにより、泥水が複数の回転体の支持部の空間に亘って左右方向に移動しやすくなる。これにより、整地装置の各グループにおいて、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われる。
本発明の第6特徴によると、整地装置に掛かる駆動負荷が整地装置の各グループに分散されて、駆動負荷が整地装置に一時に掛らない。これにより、整地体の回転が滑らかになり、整地装置自体の振動、更には水田作業装置、これらを牽引する走行機体の振動が軽減される。
【0022】
(発明の効果)
本発明の第6特徴によると、駆動負荷が一時に掛らないから、作業装置に対する振動の悪影響も少なく乗り心地も改善される利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、リンク機構3により4条植型式の苗植付装置5(水田作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0024】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,4,5に示すように、苗植付装置5は1個のフィードケース17、2個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、中央のセンターフロート9及びサイドフロート10、4個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台11等を備えて構成されている。左右方向に配置された支持フレーム18にフィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、リンク機構3の後部に接続された支持部材19の下部の前後軸芯P1(図2及び図3参照)周りに、フィードケース17がローリング自在に支持されている(苗植付装置5が前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。
【0025】
図2,3,4に示すように、伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持され、苗のせ台11の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。支持フレーム18の右及び左側部に支持フレーム26が固定され上方に延出されて、右及び左の支持フレーム26の上部及び下部に亘って支持フレーム20,28が固定されている。苗のせ台11の上部の前面にガイドレール27が固定されており、右及び左の支持フレーム26に支持されたローラー21に、ガイドレール27及び苗のせ台11が横移動自在に支持されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、支持アーム29が支持部材19に固定されて上方に延出されており、ガイドレール27の右及び左側部に固定されたブラケット27aと、支持アーム29とに亘って右及び左のバネ47が接続されている。右及び左のバネ47により苗植付装置5が機体と平行な姿勢に付勢されているのであり、苗のせ台11が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバネ47が引き延ばされると、右又は左のバネ47の付勢力により苗植付装置5の右又は左への傾斜が抑えられる。
【0027】
図1,2,5に示すように、運転座席12の後側に、肥料を貯留するホッパー13、及び2つの植付条に対応した2個の繰り出し部14が備えられており、繰り出し部14の横側にブロア15が備えられている。センターフロート9に2個の作溝器16が固定され、サイドフロート11に1個の作溝器16が固定されて、4個の作溝器16が備えられており、繰り出し部14と作溝器16とに亘って4本の搬送ホース22が接続されている。
【0028】
[2]
図1,2,3,4に示すように、エンジン(図示せず)の動力が植付クラッチ23(図11参照)及びPTO軸24を介して、支持フレーム18を貫通する入力軸25に伝達されて、入力軸25からフィードケース17に伝達される。入力軸25の動力がフィードケース17の横送り変速機構(図示せず)を介して、苗のせ台11を往復横送り駆動する横送り軸(図示せず)に伝達され、入力軸25の動力がフィードケース17の伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸31、伝動ケース6の入力軸32、伝動チェーン33、少数条クラッチ34及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達される。フィードケース17及び伝動ケース6に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸31が覆われている。
【0029】
植付クラッチ23が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止する。
【0030】
図1に示すように、エンジン(図示せず)の動力が施肥クラッチ37(図11参照)を介して繰り出し部14に伝達されており、施肥クラッチ37により繰り出し部14の作動及び停止を行う。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー13から肥料が所定量ずつ繰り出し部14によって繰り出され、ブロア15の送風により肥料が搬送ホース22を通って作溝器16に供給されるのであり、作溝器16を介して肥料が田面Gに供給される。
【0031】
[3]
次に、苗植付装置5の昇降制御機構について説明する。
図2,5,6に示すように、支持フレーム18の右及び左側部に固定されたブラケット39の横軸芯P2周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持軸41の支持アーム41aの後端の横軸芯P3周りに、センターフロート9及びサイドフロート10の後部が上下に揺動自在に支持されている。人為的に操作可能な植付深さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、支持フレーム18,28及びフィードケース17に亘って固定されたレバーガイド43に、植付深さレバー42が挿入されている。
【0032】
図5,6,11に示すように、植付深さレバー42により支持軸41の支持アーム41aを回動操作して、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を上下に変更することにより、植付設定高さA1(設定深さ)(田面Gから支持軸41(横軸芯P2)までの高さ)を変更することができるのであり、植付深さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を固定して、植付設定高さA1(設定深さ)を設定することができる。
【0033】
図5,6,7に示すように、センターフロート9の前端部の左側部にブラケット9aが固定されて、センターフロート9のブラケット9aに操作ロッド45が接続され、操作ロッド45が支持フレーム18を貫通して上方に延出されており、操作ロッド45の上端部にブラケット45aが固定されている。支持フレーム18にブラケット46が固定されて、ブラケット46の前後軸芯P4周りに天秤状の連係アーム48が揺動自在に支持されており、連係アーム48の端部に接続された連係ロッド49が支持フレーム18を貫通して下方に延出され、支持軸41に固定された連係アーム41bに、連係ロッド49の下端部が接続されている。
【0034】
図6,7,11に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する機械操作式の制御弁50が機体に備えられており、制御弁50にワイヤ51のインナー51aが接続されている。ワイヤ51のアウター51bが操作ロッド45のブラケット45aに固定され、ワイヤ51のインナー51aが連係アーム48の端部に接続されている。
【0035】
図6,7,11に示す状態においてセンターフロート9が田面Gに接地追従するので、操作ロッド45及び操作ロッド45のブラケット45aは田面Gから一定の高さに位置している。植付深さレバー42がレバーガイド43に係合して固定されているので、支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48が苗植付装置5に固定された状態(前後軸芯P4周りに揺動しない状態)となっている。
【0036】
以上の構造により、機体の姿勢変化等により苗植付装置5が上下動すると、連係アーム48が苗植付装置5と一緒に上下動して、連係アーム48によりワイヤ51のインナー51aが押し引き操作され、ワイヤ51のインナー51aにより制御弁50が操作される。制御弁50により作動油の給排操作が行われ、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持される(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される)(昇降制御機構)。
【0037】
図6,7,11に示すように、植付深さレバー42により横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を変更すると、新たな植付設定高さA1(設定深さ)が設定される。これに伴い支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48の姿勢が前後軸芯P4周りに変更されて、操作ロッド45のブラケット45aと連係アーム48の端部との上下間隔(ワイヤ51のインナー51aの出ている長さ)が、植付設定高さA1(設定深さ)の変更に関係なく、制御弁50の中立位置に対応するものに維持される。
【0038】
[4]
次に、苗植付装置5の昇降操作について説明する。
図1及び図11に示すように、前輪1を操向操作する操縦ハンドル52の右横側に昇降操作レバー53が備えられて、昇降操作レバー53は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されており、昇降操作レバー53と制御弁50、植付及び施肥クラッチ23,37とが機械的に連係されている。
【0039】
図11に示すように、昇降操作レバー53を上昇位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が上昇位置に操作されて苗植付装置5が上昇する。昇降操作レバー53を中立位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が中立位置に操作されて苗植付装置5の昇降が停止する。
【0040】
図11に示すように、昇降操作レバー53を下降位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が下降位置に操作されて苗植付装置5が下降し、センターフロート9が田面Gに接地すると、前項[3]に記載の昇降制御機構が作動する。昇降操作レバー53を植付位置に操作すると、前述の昇降操作レバー53を下降位置に操作した状態に加えて、植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作される。
【0041】
[5]
次に、苗植付装置5と機体との間に備えられる整地装置54について説明する。
図2,3,4に示すように、支持フレーム18の左側部に支持フレーム55が固定されて、支持フレーム55にボス部材64が固定され、伝動軸31及び入力軸32の横軸芯P5周りに、伝動ケース56がボス部材64に上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム18の右側部に支持フレーム57が固定されて、支持フレーム57の横軸芯P5(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P5)周りに、支持アーム58が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース56及び支持アーム58に亘って、断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
【0042】
整地装置54は、左右横軸芯P7周りで回転する支持部としての板状体のアーム部62cとその外周部にアーム部62cに支持された整地部62dを備えた回転体62を左右横軸芯P7方向に多数並設して構成してある。図9に示すように、周方向6個のアーム部62cにより支持部を構成してあり、隣接するアーム部62c間に、整地部62dよりも回転中心側に位置する状態で左右方向の泥の流れを促進する空間62eを形成してある。
より具体的には、回転体62は小幅で合成樹脂により一体的に形成され、ボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aから放射状に延出された板状のアーム部62c(支持部に相当)、アーム部62cの端部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されており、隣接するアーム部62cの間に大きな空間62eが形成されている。
【0043】
図3及び図4に示すように、多数の回転体62のボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、回転体62が駆動軸61に固定されており、駆動軸61の中央部にスペーサ63が外嵌されて、回転体62の位置が決められている。回転体62とスペーサ63との間、回転体62と伝動ケース56及び支持アーム58との間に、円盤部材59が駆動軸61に固定されている。図9に示すように、円盤部材59は回転体62と略同等の外径、又は同等径以上の外径を備えて、多数の長孔59aが放射状に形成されている。円盤部材59を整地装置54の左右端部に位置する回転体62の外端部に設けることによって後輪2の通過により左右に拡散される泥水及び回転体62で左右に移動する泥水が一部堰き止めるように作用し、作業を終えた泥面へ泥水が拡散する悪影響を抑制することができ、多数の長孔59aによって、円盤部材59による急な堰き止めを緩和しながら、泥水の左右への伝播を抑制する消波効果がある。又、回転体62や整地部62dへのワラの巻き付き防止が図れる。
【0044】
図3,4,9に示すように、多数の回転体62において、全ての回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように、回転体62が駆動軸61に固定されている。スペーサ63によって分けられた右側の多数の回転体62と左側の多数の回転体62とにおいても、回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように構成されている。全ての円盤部材59において、円盤部材59の長孔59aの位相(位置)と、回転体62の空間62eの位相(位置)とが一致するように構成されている。平面視(図4参照)でスペーサ63の位置にPTO軸24が配置されており、苗植付装置5が大きく上昇した際に、PTO軸24が円盤部材59の間に入り込んで回転体62に干渉しないようにしている。
【0045】
図2,3,4に示すように、駆動軸61、回転体62及び円盤部材59、伝動ケース56及び支持アーム58等により整地装置54が構成されている。苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)と機体(後輪2)との間に、整地装置54が備えられており、伝動ケース56及び支持アーム58が横軸芯P5周りに上下に揺動することによって、整地装置54が昇降自在に支持されている。
【0046】
図2及び図4に示すように、整地装置54の横幅と略同じ横幅を備えたカバー60が支持フレーム18の前部に固定されて、カバー60が整地装置54の後方に位置し、センターフロート9及びサイドフロート10の前方に位置するように構成されており、整地装置54から後方に飛散する泥が、センターフロート9及びサイドフロート10に堆積しないようにしている。この場合、植付設定高さA1(設定深さ)が最低位置(設定深さが最深位置)に設定されても、カバー60の下端部が田面Gに接地しないように、カバー60の下端部の位置が設定されている。
【0047】
図1,3,4に示すように、丸棒状のガード部材65が支持フレーム55,57に備えられて後方に延出されており、ガード部材65が伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38の横外側に位置して、ガード部材65により伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38が保護されている。ガード部材65が支持フレーム55,57に回転自在に支持されており、ガード部材65を図1に示す後方に向く姿勢から真下に向く姿勢に変更することによって、ガード部材65を苗植付装置5のスタンドとしても使用することができる。
【0048】
[6]
次に、整地装置54の駆動構造について説明する。
図4に示すように、入力軸32に接続された伝動軸66が、ボス部材64及び伝動ケース56の内部に配置されており、伝動ケース56の内部において、伝動軸66と駆動軸61とに亘って伝動チェーン67が巻回されている。伝動ケース6及びボス部64に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸66が覆われている。
【0049】
前項[2][4]に記載のように、植付クラッチ23(図11参照)が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付けるのであり、伝動軸31及び入力軸32の動力が整地装置54に伝達されて、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が図2の紙面反時計方向に回転駆動される。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止するのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が停止する。
【0050】
この場合、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)の外周部の周速度が高速になるように回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが回転体62及び円盤部材59(整地装置54)によって整地(代掻き)されるのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)から後方に飛散する泥が、カバー60によって止められる。
【0051】
[7]
次に整地装置54の昇降駆動構造について説明する。
図2,3,8に示すように、左の支持フレーム26にブラケット26aが固定されて、板材を折り曲げて構成された支持部材68が、左の支持フレーム26のブラケット26aにボルト連結されており、支持部材68に固定されたボス部68aに操作軸69が回転自在に支持されている。支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、操作軸69に扇型ギヤ70及び操作アーム71が固定されており、左の支持フレーム26のブラケット26aと支持部材68との間から操作アーム71が突出して、操作アーム71と伝動ケース56とに亘って左の操作ロッド72が接続されている。
【0052】
図2,3,8に示すように、支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、電動モータ73及び減速機構74が固定されて、減速機構74のピニオンギヤ74aが扇型ギヤ70に咬合しており、電動モータ73及び減速機構74が袋状のカバー75によって覆われている。支持部材68の前側部において、カバーで覆われた制御装置40が固定されて、操作軸69の角度を検出するポテンショメータ76が固定されており、ポテンショメータ76の検出値が制御装置40に入力されている。
【0053】
図2,3,8に示すように、右の支持フレーム26にブラケット26bが固定されて、右の支持フレーム26のブラケット26bの前後軸芯P6周りに、正面視(図3参照)で「く」字状の操作アーム77が揺動自在に支持されている。扇型ギヤ70に固定されたブラケット70aと操作アーム77の端部とに亘って、操作ロッド78が接続されており、操作アーム77の端部と支持アーム58とに亘って右の操作ロッド72が接続されている。
【0054】
図2,3,8に示すように、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面反時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が上方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が上昇されるとともに、扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が上昇される。これにより、整地装置54が上昇する。
逆に、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が下方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が下降する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面反時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が下降する。これにより、整地装置54が下降する。
【0055】
この場合、図11に示すように、苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地しても、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が田面Gに接地しない上方位置A3、及び苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地すると、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)も田面Gに接地する作業位置A4が設定されており、上方及び作業位置A3,A4の範囲で整地装置54が昇降する。
【0056】
[8]
次に、整地装置54の整地制御について説明する。
図3,5,11に示すように、支持フレーム18にポテンショメータ44が固定され、支持軸41に固定された連係アーム41cがポテンショメータ44の検出部に接続されており、ポテンショメータ44により支持軸41の角度が検出される。ポテンショメータ44の検出値が制御装置40に入力されており、制御装置40において,ポテンショメータ44の検出値に基づいて、植付設定高さA1(設定深さ)を認識することができるのであり、ポテンショメータ76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さを認識することができる。
【0057】
図11に示すように、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)による整地(代掻き)にとって、作業位置A4において適正な高さである整地設定高さA2(整地深さ)が制御装置40に設定されている。これにより前項[3]に記載のように、植付深さレバー42によって植付設定高さA1(設定深さ)が設定(変更)されると、ポテンショメータ44,76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が昇降される。
【0058】
前項[3]及び図11に示すように、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持されると)、苗植付装置5と一緒に整地装置54が昇降されて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。
【0059】
図3及び図11に示すように、ポテンショメータ式のダイヤル設定器79が支持部材68に備えられて、ダイヤル設定器79の設定信号が制御装置40に入力されており、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することができる。
ダイヤル設定器79を標準位置に操作していると、整地設定高さA2(整地深さ)に変更はない。植付深さレバー42をレバーガイド43の一目盛りだけ操作した際の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量に対して、ダイヤル設定器79を低側(深側)及び高側(浅側)に操作することにより、最大で前述の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量を越える範囲(約150%)に、整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0060】
図3及び図11に示すように、プッシュオン・プッシュオフ式の操作スイッチ80が支持部材68に備えられており、操作スイッチ80の操作信号が制御装置40に入力されている。昇降操作レバー53が植付位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ81が備えられて、リミットスイッチ81の検出信号が制御装置40に入力されており、リミットスイッチ81により植付及び施肥クラッチ23,37が伝動及び遮断状態が認識される。
【0061】
図11に示すように、操作スイッチ80がON位置に操作されている場合において、昇降操作レバー53が植付位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が作業位置A4に下降する。昇降操作レバー53が下降位置、中立位置及び上昇位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。
【0062】
操作スイッチ80がOFF位置に操作されていると、昇降操作レバー53に関係なく(植付及び施肥クラッチ23,37の伝動及び遮断状態に関係なく)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。例えば、センターフロート9及びサイドフロート10を田面Gに接地させた状態で、センターフロート9及びサイドフロート10により田面Gを整地しながら旋回する場合(スライディングターン)に対して、操作スイッチ80をOFF位置に操作することは有効である。
【0063】
[9]
次に、搬送ホース22について説明する。
図1,2,3,10に示すように、搬送ホース22は第1ホース部分22aと第2ホース部分22bとにより構成されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bは半透明の硬質樹脂製(屈曲不可)で丸パイプ状に構成されており、搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続され、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部が支持フレーム28に固定されている。
【0064】
図1,2,3に示すように、搬送ホース22の第1ホース部分22aは半透明の樹脂製のジャバラ状で屈曲自在(可撓性)なホース状に構成されており、搬送ホース22の第1ホース部分22aの上部(前部)が繰り出し部14に接続され、搬送ホース22の第1ホース部分22aの下部(後部)が、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部に接続されている。
【0065】
図3及び図10に示すように、線材を折り曲げて2つのループ部を備えるように支持部材82が構成されて、支持部材82が支持アーム29に固定されており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材82の右及び左のループ部に通されている。この場合、図2,3,4,10に示すように、中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの接続部分が、操作ロッド78よりも下側に位置しており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、操作ロッド78の前側(操作ロッド78と機体の後部との間)に位置している。
【0066】
図2,3,4に示すように、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bが、側面視(図2参照)で中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bと略同じ位置に配置されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの前側(機体の後部側)に、右及び左の操作ロッド72が配置されている。
【0067】
図3及び図4に示すように、線材を折り曲げて1つのループ部を備えるように支持部材83が構成されて、支持部材83が支持フレーム28の右及び左側部に固定されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材83の上部のループ部に通されている。これにより、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aと右及び左の操作ロッド72との干渉が、支持部材83によって防止される。
【0068】
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、整地装置54を以下のように構成してもよい。
【0069】
(1) 上記[発明を実施するための最良の形態](以下、実施例という)では、回転体62を小幅のものとしたが、広幅のものとしてもよい。この場合、一つの整地部62dに対して支持部を構成するアーム部62cを左右横軸芯P7方向に2以上の複数個備えてもよい。
【0070】
(2) 整地部62dを支持する支持部として、実施例のアーム部62cに代えて、図12に示すように、外周に整地部62dを取付けた円板の隣接する整地部62d間を切り欠いた切欠部85を空間62eとして形成した板状体86で構成してもよい。
【0071】
(3) 上記切欠部85に代えて、又は切欠部85に加えて、図13に示すように、板状体86の内部に形成した孔87によって空間を形成してもよい。
図13は、ボス部62aの外周に円形の内側アーム部88とそれに連ねて径方向外方に外側アーム部89(62c)を設けており、円形の内側アーム部88と外側アーム部89(62c)との間には左右横軸芯P7方向に形成し、田面Gを滑走して支持されるための均し円筒90を設けてある。この均し円筒90は、図9に斜視図で示されているものと同じ構造である。そして図13においては、板状体86を形成する内側アーム部88に孔87を形成したものである。
【0072】
(4) 実施例では、左右横軸芯P7周りでの前記空間62eの位相を同じにしてあるが、図4において、左右の後輪2の後方に配置される2組の左右それぞれ8個の回転体62のうちのそれぞれ左右端部側に位置する各2個をそれぞれグループとして、計8個の回転体62の取付け位相を、左右中4個の回転体62をグループとしたものと比べて90度異ならせて装着する。こうすることによって、図14に示すように、左右それぞれ2個で一組のグループとなる計8個の回転体62の整地部62d及び空間62eは、左右に隣接する中4個で一つのグループを形成する各回転体62の整地部62d及び空間62eの位相に対して30度の位相がずれた配置構成とすることができる。これによって、整地部62d及空間62e(アーム部62c)が田面G(泥水)と接触または田面G(泥水)入り込むタイミングが中央部と左右とが30度ずつずれるので、整地部62及び空間62e(アーム部62c)が田面G(泥水)と接触または田面G(泥水)に入り込むことによる負荷が、位相が同一の場合に比べて半減し、負荷を均一化することができる。
【0073】
図15に示す整地装置54は、3つに分けられた整地装置54a,54b,54cからなり、各整地装置54a,54b,54cはそれぞれ独立して昇降できるように構成してある。
各整地装置54a,54b,54cは、それぞれ回転体62を駆動するとともに左右の一端を支持する伝動ケース91と他端を支持する支持アーム92とで上下に揺動自在に支持されている。
このようにすれば、通常の植付作業時には、中央の整地装置54bだけを浮上させておいて、左右の整地装置54a,54cで整地しながら植付作業を行うことによって、整地による影響を受けないで中央のセンターフロート9に基づいて良好に植付深さを制御しながら苗植付け作業を行うことができるとともに、畦際作業を行う場合には、畦際と中央の整地装置54b,54cを接地させながら作業を行う等多様な作業形態の作業を行うことができる。
【0074】
図16、図17は、隣り合う回転体62間に、回転体62とは別体の平板状の板状体からなるディスク部93を介在されたものである。ディスク部93は、整地部62dの回転径方向最外部よりも大径で、周方向外周に多数の切欠部94を形成され、且つ切欠部94の谷部の位置も回転中心から整地部62dの回転径方向最外部までの距離よりも長い寸法である。各回転体62間にディスク部93を設けることによって、整地中にディスク部93に引っ掛かった藁屑等の夾雑物を土中深くに埋め込むことができ、夾雑物の整地部62dへの巻き付きを少なくすることができる。
【0075】
ディスク部93は、各回転体62と一体構造としてもよい。この場合、ディスク部93を、整地部62dを支持する支持部と一体に形成して、支持部の径方向外方に位置するように形成する。
又、ディスク部93を整地部62dの回転軸芯方向一端部の位置において一体に形成することもできる。
【0076】
図18は、センターフロート9の前方の回転体62よりも前方に感知フロート95を設けて、センターフロート9と感知フロート95とを剛体連結部96で連結し、感知フロート95と後方のセンターフロート9とが一体的に動くように構成して、整地装置54で整地されるよりも前方の感知フロート95の動きをセンターフロートに伝達して植付深さの制御を行うようにしたものである。感知フロート95を整地装置54の回転体62よりも前方側に位置させることによって、整地装置54により泥水が押し退けられる前の田面Gを感知フロート95がとらえ、且つ接地面積が大きく確保できるので、センターフロート9による検知力並びに検知精度が向上する。
【0077】
上記別実施例では、感知フロート95をセンターフロート9と一体的に構成したが、第19図のように、検知フロート97をセンターフロート9とは連結せずに、苗植付装置5の昇降制御のための検知をセンターフロート9では行わずに、検知フロート97を整地装置54の回転体62よりも前方に配置し、この検知フロート97の動きをポテンショメータ98で検出し、この検出に基づいて植付深さの制御を行うようにしてもよい。
【0078】
前述の実施例乃至別実施例において、水田作業装置として、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置を備えてもよい。整地装置54を水田作業装置に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に整地装置54を支持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図
【図5】センターフロート及びサイドフロートの付近の平面図
【図6】センターフロート及び植付深さレバーの付近の側面図
【図7】センターフロートの前端部の左側部の付近の正面図
【図8】左の支持フレーム、電動モータ及び減速機構、扇型ギヤの付近の正面図
【図9】回転体及び円盤部材の斜視図
【図10】中央側の2つの搬送ホースの付近の側面図
【図11】苗植付装置と整地装置との連係状態を示す図
【図12】回転体の側面図
【図13】回転体の側面図
【図14】整地装置の端部と中央部の回転体の位相を異ならせた正面図
【図15】3つの独立した対地作業装置を示す平面図
【図16】ディスク部を備えた回転体の斜視図
【図17】ディスク部を備えた回転体の側面図
【図18】感知フロートを備えたセンターフロートを示す側面図
【図19】検知フロートの側面図
【符号の説明】
【0080】
5 水田作業装置
54,54a,54b,54c 整地装置
62 回転体
62c 支持部(アーム部)
62d 整地部
62e 空間
88 孔
P7 左右横軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に苗植付装置や直播装置等の水田作業装置を昇降自在に支持した乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では例えば特許文献1に開示されているように、機体の後部に苗植付装置(水田作業装置に相当)(特許文献1の図1の4)を昇降自在に支持し、整地装置(特許文献1の図1〜図7の40)を、苗植付装置と機体との間に備えて、整地装置を昇降する昇降機構を、苗植付装置の前側に備えたものがある。これにより、整地装置により田面を整地しながら、苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるのであり、昇降機構により整地装置の高さ(整地深さ)を変更することができる。
【0003】
特許文献1では、整地装置により田面を整地しながら苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるものであるが、特許文献1の図8に示されているように、整地装置の回転体55は、板状のホイール部55cの外周に等間隔に複数個の代掻き作用部55aを備えて、回転体55を回転支軸46に並設して整地装置を構成していた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−304648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
進行する機体に対する後輪跡の泥水の流れは、車輪の回転によって乱れ動いた表面近くの泥水によって車輪跡の位置から左右に拡散しようとする。しかし、特許文献1の整地装置で代掻き整地を行うと、回転体の全周に備えられたホイール部によって泥水が左右に拡散することが阻害されるおそれがある。即ち、特許文献1の整地装置の代掻き用回転体では、回転支軸と代掻き作用部を接続するホイール部が泥水の流れを妨げやすいものであった。
【0006】
本発明は、水田作業装置と機体との間に整地装置を備えた水田作業機について、整地装置の回転体の構造を改良して、整地能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、前記水田作業装置と機体との間に整地装置を備え、この整地装置には左右横軸芯周りで回転する支持部とその外周部に支持部に支持された整地部を備えた回転体を有するとともに、前記整地部よりも回転中心側に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してある。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、回転体に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してあるので、泥水は自由に支持部の空間を通り支持部を横切って左右方向に移動でき、支持部によって左右方向への泥水の流れを阻害することが軽減できる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、整地装置において、泥水の流れが左右方向に流れやすくなっているから、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われやすくなって、整地装置の整地性能を向上させることができた。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記回転体を前記左右横軸芯方向に複数並設してある。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
水田作業装置の大きさ(横幅)に合せて回転体の個数を変更することにより、整地装置の横幅を自由に設定することができるだけでなく、整地装置を複数組に分ける場合もその形態によって同じ回転体を必要数用意することで対応することができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、同形の回転体を必要数用意することで多様な整地装置に対して利用することができるので、生産性が向上させることができる。
【0013】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1または第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記支持部を板状体で構成し、板状体の外周部を切り欠くことによって前記空間を形成してある。
【0014】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1、第2特徴と同様に前項[I]乃至[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、支持部の支持強度をあまり落とさないで材料を軽減できる。又、支持部の回転中心部側にのみ孔を設けるのに比べて、支持強度をあまり落とさないで支持部に大きな空間を確保することができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、支持部の支持強度をあまり落とさないで、大きな空間を確保しながら材料を軽減できることができるので、生産性が向上する。
【0016】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記支持部を板状体で構成し、板状体の内部に形成した孔によって空間を形成してある。
【0017】
(作用効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1、2、3特徴と同様に前項[I]乃至[III]に記載の「作用」「効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、支持部の回転中心側に近い箇所に泥水を通過できる孔を形成することができるので、回転体が深く沈み込んだ場合にも支持部での泥水の通過が容易になるとともに、回転体の回転による回動速度が小さい箇所で泥水の左右移動が行なえることから、比較的小さな孔でも泥水の左右移動がスムーズに行なわれやすい。
【0018】
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第3または4特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記空間の位相は、前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部に形成した空間について同一位相としてある。
【0019】
(作用効果)
本発明の第5特徴によると、本発明の第3、4特徴と同様に前項[III]乃至[IV]に記載の「作用効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第5特徴によると、整地装置において回転体が複数並設されている場合、支持部に形成した空間が同一位相に配置されているので、例えば泥水が一つの回転体の支持部の空間を左右方向に移動して隣の回転体に達した場合、その位置に隣の回転体の支持部の空間が位置していることになり、泥水が複数の回転体の支持部の空間に亘って左右方向に移動しやすくなる。これにより、整地装置において、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われる。
【0020】
[VI]
(構成)
本発明の第6特徴は、本発明の第3または4特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部を、隣接する支持部どうしによって構成される複数のグループに分け、各グループにおける各支持部どうしの空間の位相を同一位相に揃えるとともに、隣接するグループどうしの空間の位相を異ならせてある。
【0021】
(作用)
本発明の第6特徴によると、本発明の第3、4特徴と同様に前項[III]乃至[IV]に記載の「作用効果」を備えており、これに加えて以下のような「作用効果」を備えている。
本発明の第6特徴によると、整地装置の各グループにおいて回転数が複数並設されている場合、支持部に形成した空間が同一位相に配置されているので、例えば泥水が一つの回転体の支持部の空間を左右方向に移動して隣の回転体に達した場合、その位置に隣の回転体の支持部の空間が位置していることにより、泥水が複数の回転体の支持部の空間に亘って左右方向に移動しやすくなる。これにより、整地装置の各グループにおいて、前方の車輪で排除された轍跡の均平化が良好に行われる。
本発明の第6特徴によると、整地装置に掛かる駆動負荷が整地装置の各グループに分散されて、駆動負荷が整地装置に一時に掛らない。これにより、整地体の回転が滑らかになり、整地装置自体の振動、更には水田作業装置、これらを牽引する走行機体の振動が軽減される。
【0022】
(発明の効果)
本発明の第6特徴によると、駆動負荷が一時に掛らないから、作業装置に対する振動の悪影響も少なく乗り心地も改善される利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、リンク機構3により4条植型式の苗植付装置5(水田作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0024】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,4,5に示すように、苗植付装置5は1個のフィードケース17、2個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、中央のセンターフロート9及びサイドフロート10、4個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台11等を備えて構成されている。左右方向に配置された支持フレーム18にフィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、リンク機構3の後部に接続された支持部材19の下部の前後軸芯P1(図2及び図3参照)周りに、フィードケース17がローリング自在に支持されている(苗植付装置5が前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。
【0025】
図2,3,4に示すように、伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持され、苗のせ台11の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。支持フレーム18の右及び左側部に支持フレーム26が固定され上方に延出されて、右及び左の支持フレーム26の上部及び下部に亘って支持フレーム20,28が固定されている。苗のせ台11の上部の前面にガイドレール27が固定されており、右及び左の支持フレーム26に支持されたローラー21に、ガイドレール27及び苗のせ台11が横移動自在に支持されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、支持アーム29が支持部材19に固定されて上方に延出されており、ガイドレール27の右及び左側部に固定されたブラケット27aと、支持アーム29とに亘って右及び左のバネ47が接続されている。右及び左のバネ47により苗植付装置5が機体と平行な姿勢に付勢されているのであり、苗のせ台11が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバネ47が引き延ばされると、右又は左のバネ47の付勢力により苗植付装置5の右又は左への傾斜が抑えられる。
【0027】
図1,2,5に示すように、運転座席12の後側に、肥料を貯留するホッパー13、及び2つの植付条に対応した2個の繰り出し部14が備えられており、繰り出し部14の横側にブロア15が備えられている。センターフロート9に2個の作溝器16が固定され、サイドフロート11に1個の作溝器16が固定されて、4個の作溝器16が備えられており、繰り出し部14と作溝器16とに亘って4本の搬送ホース22が接続されている。
【0028】
[2]
図1,2,3,4に示すように、エンジン(図示せず)の動力が植付クラッチ23(図11参照)及びPTO軸24を介して、支持フレーム18を貫通する入力軸25に伝達されて、入力軸25からフィードケース17に伝達される。入力軸25の動力がフィードケース17の横送り変速機構(図示せず)を介して、苗のせ台11を往復横送り駆動する横送り軸(図示せず)に伝達され、入力軸25の動力がフィードケース17の伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸31、伝動ケース6の入力軸32、伝動チェーン33、少数条クラッチ34及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達される。フィードケース17及び伝動ケース6に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸31が覆われている。
【0029】
植付クラッチ23が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止する。
【0030】
図1に示すように、エンジン(図示せず)の動力が施肥クラッチ37(図11参照)を介して繰り出し部14に伝達されており、施肥クラッチ37により繰り出し部14の作動及び停止を行う。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー13から肥料が所定量ずつ繰り出し部14によって繰り出され、ブロア15の送風により肥料が搬送ホース22を通って作溝器16に供給されるのであり、作溝器16を介して肥料が田面Gに供給される。
【0031】
[3]
次に、苗植付装置5の昇降制御機構について説明する。
図2,5,6に示すように、支持フレーム18の右及び左側部に固定されたブラケット39の横軸芯P2周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持軸41の支持アーム41aの後端の横軸芯P3周りに、センターフロート9及びサイドフロート10の後部が上下に揺動自在に支持されている。人為的に操作可能な植付深さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、支持フレーム18,28及びフィードケース17に亘って固定されたレバーガイド43に、植付深さレバー42が挿入されている。
【0032】
図5,6,11に示すように、植付深さレバー42により支持軸41の支持アーム41aを回動操作して、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を上下に変更することにより、植付設定高さA1(設定深さ)(田面Gから支持軸41(横軸芯P2)までの高さ)を変更することができるのであり、植付深さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を固定して、植付設定高さA1(設定深さ)を設定することができる。
【0033】
図5,6,7に示すように、センターフロート9の前端部の左側部にブラケット9aが固定されて、センターフロート9のブラケット9aに操作ロッド45が接続され、操作ロッド45が支持フレーム18を貫通して上方に延出されており、操作ロッド45の上端部にブラケット45aが固定されている。支持フレーム18にブラケット46が固定されて、ブラケット46の前後軸芯P4周りに天秤状の連係アーム48が揺動自在に支持されており、連係アーム48の端部に接続された連係ロッド49が支持フレーム18を貫通して下方に延出され、支持軸41に固定された連係アーム41bに、連係ロッド49の下端部が接続されている。
【0034】
図6,7,11に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する機械操作式の制御弁50が機体に備えられており、制御弁50にワイヤ51のインナー51aが接続されている。ワイヤ51のアウター51bが操作ロッド45のブラケット45aに固定され、ワイヤ51のインナー51aが連係アーム48の端部に接続されている。
【0035】
図6,7,11に示す状態においてセンターフロート9が田面Gに接地追従するので、操作ロッド45及び操作ロッド45のブラケット45aは田面Gから一定の高さに位置している。植付深さレバー42がレバーガイド43に係合して固定されているので、支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48が苗植付装置5に固定された状態(前後軸芯P4周りに揺動しない状態)となっている。
【0036】
以上の構造により、機体の姿勢変化等により苗植付装置5が上下動すると、連係アーム48が苗植付装置5と一緒に上下動して、連係アーム48によりワイヤ51のインナー51aが押し引き操作され、ワイヤ51のインナー51aにより制御弁50が操作される。制御弁50により作動油の給排操作が行われ、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持される(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される)(昇降制御機構)。
【0037】
図6,7,11に示すように、植付深さレバー42により横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を変更すると、新たな植付設定高さA1(設定深さ)が設定される。これに伴い支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48の姿勢が前後軸芯P4周りに変更されて、操作ロッド45のブラケット45aと連係アーム48の端部との上下間隔(ワイヤ51のインナー51aの出ている長さ)が、植付設定高さA1(設定深さ)の変更に関係なく、制御弁50の中立位置に対応するものに維持される。
【0038】
[4]
次に、苗植付装置5の昇降操作について説明する。
図1及び図11に示すように、前輪1を操向操作する操縦ハンドル52の右横側に昇降操作レバー53が備えられて、昇降操作レバー53は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されており、昇降操作レバー53と制御弁50、植付及び施肥クラッチ23,37とが機械的に連係されている。
【0039】
図11に示すように、昇降操作レバー53を上昇位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が上昇位置に操作されて苗植付装置5が上昇する。昇降操作レバー53を中立位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が中立位置に操作されて苗植付装置5の昇降が停止する。
【0040】
図11に示すように、昇降操作レバー53を下降位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が下降位置に操作されて苗植付装置5が下降し、センターフロート9が田面Gに接地すると、前項[3]に記載の昇降制御機構が作動する。昇降操作レバー53を植付位置に操作すると、前述の昇降操作レバー53を下降位置に操作した状態に加えて、植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作される。
【0041】
[5]
次に、苗植付装置5と機体との間に備えられる整地装置54について説明する。
図2,3,4に示すように、支持フレーム18の左側部に支持フレーム55が固定されて、支持フレーム55にボス部材64が固定され、伝動軸31及び入力軸32の横軸芯P5周りに、伝動ケース56がボス部材64に上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム18の右側部に支持フレーム57が固定されて、支持フレーム57の横軸芯P5(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P5)周りに、支持アーム58が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース56及び支持アーム58に亘って、断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
【0042】
整地装置54は、左右横軸芯P7周りで回転する支持部としての板状体のアーム部62cとその外周部にアーム部62cに支持された整地部62dを備えた回転体62を左右横軸芯P7方向に多数並設して構成してある。図9に示すように、周方向6個のアーム部62cにより支持部を構成してあり、隣接するアーム部62c間に、整地部62dよりも回転中心側に位置する状態で左右方向の泥の流れを促進する空間62eを形成してある。
より具体的には、回転体62は小幅で合成樹脂により一体的に形成され、ボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aから放射状に延出された板状のアーム部62c(支持部に相当)、アーム部62cの端部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されており、隣接するアーム部62cの間に大きな空間62eが形成されている。
【0043】
図3及び図4に示すように、多数の回転体62のボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、回転体62が駆動軸61に固定されており、駆動軸61の中央部にスペーサ63が外嵌されて、回転体62の位置が決められている。回転体62とスペーサ63との間、回転体62と伝動ケース56及び支持アーム58との間に、円盤部材59が駆動軸61に固定されている。図9に示すように、円盤部材59は回転体62と略同等の外径、又は同等径以上の外径を備えて、多数の長孔59aが放射状に形成されている。円盤部材59を整地装置54の左右端部に位置する回転体62の外端部に設けることによって後輪2の通過により左右に拡散される泥水及び回転体62で左右に移動する泥水が一部堰き止めるように作用し、作業を終えた泥面へ泥水が拡散する悪影響を抑制することができ、多数の長孔59aによって、円盤部材59による急な堰き止めを緩和しながら、泥水の左右への伝播を抑制する消波効果がある。又、回転体62や整地部62dへのワラの巻き付き防止が図れる。
【0044】
図3,4,9に示すように、多数の回転体62において、全ての回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように、回転体62が駆動軸61に固定されている。スペーサ63によって分けられた右側の多数の回転体62と左側の多数の回転体62とにおいても、回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように構成されている。全ての円盤部材59において、円盤部材59の長孔59aの位相(位置)と、回転体62の空間62eの位相(位置)とが一致するように構成されている。平面視(図4参照)でスペーサ63の位置にPTO軸24が配置されており、苗植付装置5が大きく上昇した際に、PTO軸24が円盤部材59の間に入り込んで回転体62に干渉しないようにしている。
【0045】
図2,3,4に示すように、駆動軸61、回転体62及び円盤部材59、伝動ケース56及び支持アーム58等により整地装置54が構成されている。苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)と機体(後輪2)との間に、整地装置54が備えられており、伝動ケース56及び支持アーム58が横軸芯P5周りに上下に揺動することによって、整地装置54が昇降自在に支持されている。
【0046】
図2及び図4に示すように、整地装置54の横幅と略同じ横幅を備えたカバー60が支持フレーム18の前部に固定されて、カバー60が整地装置54の後方に位置し、センターフロート9及びサイドフロート10の前方に位置するように構成されており、整地装置54から後方に飛散する泥が、センターフロート9及びサイドフロート10に堆積しないようにしている。この場合、植付設定高さA1(設定深さ)が最低位置(設定深さが最深位置)に設定されても、カバー60の下端部が田面Gに接地しないように、カバー60の下端部の位置が設定されている。
【0047】
図1,3,4に示すように、丸棒状のガード部材65が支持フレーム55,57に備えられて後方に延出されており、ガード部材65が伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38の横外側に位置して、ガード部材65により伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38が保護されている。ガード部材65が支持フレーム55,57に回転自在に支持されており、ガード部材65を図1に示す後方に向く姿勢から真下に向く姿勢に変更することによって、ガード部材65を苗植付装置5のスタンドとしても使用することができる。
【0048】
[6]
次に、整地装置54の駆動構造について説明する。
図4に示すように、入力軸32に接続された伝動軸66が、ボス部材64及び伝動ケース56の内部に配置されており、伝動ケース56の内部において、伝動軸66と駆動軸61とに亘って伝動チェーン67が巻回されている。伝動ケース6及びボス部64に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸66が覆われている。
【0049】
前項[2][4]に記載のように、植付クラッチ23(図11参照)が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付けるのであり、伝動軸31及び入力軸32の動力が整地装置54に伝達されて、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が図2の紙面反時計方向に回転駆動される。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止するのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が停止する。
【0050】
この場合、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)の外周部の周速度が高速になるように回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが回転体62及び円盤部材59(整地装置54)によって整地(代掻き)されるのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)から後方に飛散する泥が、カバー60によって止められる。
【0051】
[7]
次に整地装置54の昇降駆動構造について説明する。
図2,3,8に示すように、左の支持フレーム26にブラケット26aが固定されて、板材を折り曲げて構成された支持部材68が、左の支持フレーム26のブラケット26aにボルト連結されており、支持部材68に固定されたボス部68aに操作軸69が回転自在に支持されている。支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、操作軸69に扇型ギヤ70及び操作アーム71が固定されており、左の支持フレーム26のブラケット26aと支持部材68との間から操作アーム71が突出して、操作アーム71と伝動ケース56とに亘って左の操作ロッド72が接続されている。
【0052】
図2,3,8に示すように、支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、電動モータ73及び減速機構74が固定されて、減速機構74のピニオンギヤ74aが扇型ギヤ70に咬合しており、電動モータ73及び減速機構74が袋状のカバー75によって覆われている。支持部材68の前側部において、カバーで覆われた制御装置40が固定されて、操作軸69の角度を検出するポテンショメータ76が固定されており、ポテンショメータ76の検出値が制御装置40に入力されている。
【0053】
図2,3,8に示すように、右の支持フレーム26にブラケット26bが固定されて、右の支持フレーム26のブラケット26bの前後軸芯P6周りに、正面視(図3参照)で「く」字状の操作アーム77が揺動自在に支持されている。扇型ギヤ70に固定されたブラケット70aと操作アーム77の端部とに亘って、操作ロッド78が接続されており、操作アーム77の端部と支持アーム58とに亘って右の操作ロッド72が接続されている。
【0054】
図2,3,8に示すように、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面反時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が上方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が上昇されるとともに、扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が上昇される。これにより、整地装置54が上昇する。
逆に、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が下方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が下降する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面反時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が下降する。これにより、整地装置54が下降する。
【0055】
この場合、図11に示すように、苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地しても、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が田面Gに接地しない上方位置A3、及び苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地すると、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)も田面Gに接地する作業位置A4が設定されており、上方及び作業位置A3,A4の範囲で整地装置54が昇降する。
【0056】
[8]
次に、整地装置54の整地制御について説明する。
図3,5,11に示すように、支持フレーム18にポテンショメータ44が固定され、支持軸41に固定された連係アーム41cがポテンショメータ44の検出部に接続されており、ポテンショメータ44により支持軸41の角度が検出される。ポテンショメータ44の検出値が制御装置40に入力されており、制御装置40において,ポテンショメータ44の検出値に基づいて、植付設定高さA1(設定深さ)を認識することができるのであり、ポテンショメータ76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さを認識することができる。
【0057】
図11に示すように、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)による整地(代掻き)にとって、作業位置A4において適正な高さである整地設定高さA2(整地深さ)が制御装置40に設定されている。これにより前項[3]に記載のように、植付深さレバー42によって植付設定高さA1(設定深さ)が設定(変更)されると、ポテンショメータ44,76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が昇降される。
【0058】
前項[3]及び図11に示すように、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持されると)、苗植付装置5と一緒に整地装置54が昇降されて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。
【0059】
図3及び図11に示すように、ポテンショメータ式のダイヤル設定器79が支持部材68に備えられて、ダイヤル設定器79の設定信号が制御装置40に入力されており、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することができる。
ダイヤル設定器79を標準位置に操作していると、整地設定高さA2(整地深さ)に変更はない。植付深さレバー42をレバーガイド43の一目盛りだけ操作した際の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量に対して、ダイヤル設定器79を低側(深側)及び高側(浅側)に操作することにより、最大で前述の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量を越える範囲(約150%)に、整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0060】
図3及び図11に示すように、プッシュオン・プッシュオフ式の操作スイッチ80が支持部材68に備えられており、操作スイッチ80の操作信号が制御装置40に入力されている。昇降操作レバー53が植付位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ81が備えられて、リミットスイッチ81の検出信号が制御装置40に入力されており、リミットスイッチ81により植付及び施肥クラッチ23,37が伝動及び遮断状態が認識される。
【0061】
図11に示すように、操作スイッチ80がON位置に操作されている場合において、昇降操作レバー53が植付位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が作業位置A4に下降する。昇降操作レバー53が下降位置、中立位置及び上昇位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。
【0062】
操作スイッチ80がOFF位置に操作されていると、昇降操作レバー53に関係なく(植付及び施肥クラッチ23,37の伝動及び遮断状態に関係なく)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。例えば、センターフロート9及びサイドフロート10を田面Gに接地させた状態で、センターフロート9及びサイドフロート10により田面Gを整地しながら旋回する場合(スライディングターン)に対して、操作スイッチ80をOFF位置に操作することは有効である。
【0063】
[9]
次に、搬送ホース22について説明する。
図1,2,3,10に示すように、搬送ホース22は第1ホース部分22aと第2ホース部分22bとにより構成されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bは半透明の硬質樹脂製(屈曲不可)で丸パイプ状に構成されており、搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続され、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部が支持フレーム28に固定されている。
【0064】
図1,2,3に示すように、搬送ホース22の第1ホース部分22aは半透明の樹脂製のジャバラ状で屈曲自在(可撓性)なホース状に構成されており、搬送ホース22の第1ホース部分22aの上部(前部)が繰り出し部14に接続され、搬送ホース22の第1ホース部分22aの下部(後部)が、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部に接続されている。
【0065】
図3及び図10に示すように、線材を折り曲げて2つのループ部を備えるように支持部材82が構成されて、支持部材82が支持アーム29に固定されており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材82の右及び左のループ部に通されている。この場合、図2,3,4,10に示すように、中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの接続部分が、操作ロッド78よりも下側に位置しており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、操作ロッド78の前側(操作ロッド78と機体の後部との間)に位置している。
【0066】
図2,3,4に示すように、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bが、側面視(図2参照)で中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bと略同じ位置に配置されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの前側(機体の後部側)に、右及び左の操作ロッド72が配置されている。
【0067】
図3及び図4に示すように、線材を折り曲げて1つのループ部を備えるように支持部材83が構成されて、支持部材83が支持フレーム28の右及び左側部に固定されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材83の上部のループ部に通されている。これにより、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aと右及び左の操作ロッド72との干渉が、支持部材83によって防止される。
【0068】
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、整地装置54を以下のように構成してもよい。
【0069】
(1) 上記[発明を実施するための最良の形態](以下、実施例という)では、回転体62を小幅のものとしたが、広幅のものとしてもよい。この場合、一つの整地部62dに対して支持部を構成するアーム部62cを左右横軸芯P7方向に2以上の複数個備えてもよい。
【0070】
(2) 整地部62dを支持する支持部として、実施例のアーム部62cに代えて、図12に示すように、外周に整地部62dを取付けた円板の隣接する整地部62d間を切り欠いた切欠部85を空間62eとして形成した板状体86で構成してもよい。
【0071】
(3) 上記切欠部85に代えて、又は切欠部85に加えて、図13に示すように、板状体86の内部に形成した孔87によって空間を形成してもよい。
図13は、ボス部62aの外周に円形の内側アーム部88とそれに連ねて径方向外方に外側アーム部89(62c)を設けており、円形の内側アーム部88と外側アーム部89(62c)との間には左右横軸芯P7方向に形成し、田面Gを滑走して支持されるための均し円筒90を設けてある。この均し円筒90は、図9に斜視図で示されているものと同じ構造である。そして図13においては、板状体86を形成する内側アーム部88に孔87を形成したものである。
【0072】
(4) 実施例では、左右横軸芯P7周りでの前記空間62eの位相を同じにしてあるが、図4において、左右の後輪2の後方に配置される2組の左右それぞれ8個の回転体62のうちのそれぞれ左右端部側に位置する各2個をそれぞれグループとして、計8個の回転体62の取付け位相を、左右中4個の回転体62をグループとしたものと比べて90度異ならせて装着する。こうすることによって、図14に示すように、左右それぞれ2個で一組のグループとなる計8個の回転体62の整地部62d及び空間62eは、左右に隣接する中4個で一つのグループを形成する各回転体62の整地部62d及び空間62eの位相に対して30度の位相がずれた配置構成とすることができる。これによって、整地部62d及空間62e(アーム部62c)が田面G(泥水)と接触または田面G(泥水)入り込むタイミングが中央部と左右とが30度ずつずれるので、整地部62及び空間62e(アーム部62c)が田面G(泥水)と接触または田面G(泥水)に入り込むことによる負荷が、位相が同一の場合に比べて半減し、負荷を均一化することができる。
【0073】
図15に示す整地装置54は、3つに分けられた整地装置54a,54b,54cからなり、各整地装置54a,54b,54cはそれぞれ独立して昇降できるように構成してある。
各整地装置54a,54b,54cは、それぞれ回転体62を駆動するとともに左右の一端を支持する伝動ケース91と他端を支持する支持アーム92とで上下に揺動自在に支持されている。
このようにすれば、通常の植付作業時には、中央の整地装置54bだけを浮上させておいて、左右の整地装置54a,54cで整地しながら植付作業を行うことによって、整地による影響を受けないで中央のセンターフロート9に基づいて良好に植付深さを制御しながら苗植付け作業を行うことができるとともに、畦際作業を行う場合には、畦際と中央の整地装置54b,54cを接地させながら作業を行う等多様な作業形態の作業を行うことができる。
【0074】
図16、図17は、隣り合う回転体62間に、回転体62とは別体の平板状の板状体からなるディスク部93を介在されたものである。ディスク部93は、整地部62dの回転径方向最外部よりも大径で、周方向外周に多数の切欠部94を形成され、且つ切欠部94の谷部の位置も回転中心から整地部62dの回転径方向最外部までの距離よりも長い寸法である。各回転体62間にディスク部93を設けることによって、整地中にディスク部93に引っ掛かった藁屑等の夾雑物を土中深くに埋め込むことができ、夾雑物の整地部62dへの巻き付きを少なくすることができる。
【0075】
ディスク部93は、各回転体62と一体構造としてもよい。この場合、ディスク部93を、整地部62dを支持する支持部と一体に形成して、支持部の径方向外方に位置するように形成する。
又、ディスク部93を整地部62dの回転軸芯方向一端部の位置において一体に形成することもできる。
【0076】
図18は、センターフロート9の前方の回転体62よりも前方に感知フロート95を設けて、センターフロート9と感知フロート95とを剛体連結部96で連結し、感知フロート95と後方のセンターフロート9とが一体的に動くように構成して、整地装置54で整地されるよりも前方の感知フロート95の動きをセンターフロートに伝達して植付深さの制御を行うようにしたものである。感知フロート95を整地装置54の回転体62よりも前方側に位置させることによって、整地装置54により泥水が押し退けられる前の田面Gを感知フロート95がとらえ、且つ接地面積が大きく確保できるので、センターフロート9による検知力並びに検知精度が向上する。
【0077】
上記別実施例では、感知フロート95をセンターフロート9と一体的に構成したが、第19図のように、検知フロート97をセンターフロート9とは連結せずに、苗植付装置5の昇降制御のための検知をセンターフロート9では行わずに、検知フロート97を整地装置54の回転体62よりも前方に配置し、この検知フロート97の動きをポテンショメータ98で検出し、この検出に基づいて植付深さの制御を行うようにしてもよい。
【0078】
前述の実施例乃至別実施例において、水田作業装置として、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置を備えてもよい。整地装置54を水田作業装置に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に整地装置54を支持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図
【図5】センターフロート及びサイドフロートの付近の平面図
【図6】センターフロート及び植付深さレバーの付近の側面図
【図7】センターフロートの前端部の左側部の付近の正面図
【図8】左の支持フレーム、電動モータ及び減速機構、扇型ギヤの付近の正面図
【図9】回転体及び円盤部材の斜視図
【図10】中央側の2つの搬送ホースの付近の側面図
【図11】苗植付装置と整地装置との連係状態を示す図
【図12】回転体の側面図
【図13】回転体の側面図
【図14】整地装置の端部と中央部の回転体の位相を異ならせた正面図
【図15】3つの独立した対地作業装置を示す平面図
【図16】ディスク部を備えた回転体の斜視図
【図17】ディスク部を備えた回転体の側面図
【図18】感知フロートを備えたセンターフロートを示す側面図
【図19】検知フロートの側面図
【符号の説明】
【0080】
5 水田作業装置
54,54a,54b,54c 整地装置
62 回転体
62c 支持部(アーム部)
62d 整地部
62e 空間
88 孔
P7 左右横軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、前記水田作業装置と機体との間に整地装置を備え、この整地装置には左右横軸芯周りで回転する支持部とその外周部に支持部に支持された整地部を備えた回転体を有するとともに、前記整地部よりも回転中心側に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してある水田作業機。
【請求項2】
前記回転体を前記左右横軸芯方向に複数並設してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記支持部を板状体で構成し、板状体の外周部を切り欠くことによって前記空間を形成してある請求項1または2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記支持部を板状体で構成し、板状体の内部に形成した孔によって空間を形成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記空間の位相は、前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部に形成した空間について同一位相としてある請求項3または4に記載の水田作業機。
【請求項6】
前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部を、隣接する支持部どうしによって構成される複数のグループに分け、各グループにおける各支持部どうしの空間の位相を同一位相に揃えるとともに、隣接するグループどうしの空間の位相を異ならせてある請求項3または4に記載の水田作業機。
【請求項1】
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、前記水田作業装置と機体との間に整地装置を備え、この整地装置には左右横軸芯周りで回転する支持部とその外周部に支持部に支持された整地部を備えた回転体を有するとともに、前記整地部よりも回転中心側に左右方向の泥の流れを促進する空間を形成してある水田作業機。
【請求項2】
前記回転体を前記左右横軸芯方向に複数並設してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記支持部を板状体で構成し、板状体の外周部を切り欠くことによって前記空間を形成してある請求項1または2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記支持部を板状体で構成し、板状体の内部に形成した孔によって空間を形成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記空間の位相は、前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部に形成した空間について同一位相としてある請求項3または4に記載の水田作業機。
【請求項6】
前記左右横軸芯方向に並設した全ての支持部を、隣接する支持部どうしによって構成される複数のグループに分け、各グループにおける各支持部どうしの空間の位相を同一位相に揃えるとともに、隣接するグループどうしの空間の位相を異ならせてある請求項3または4に記載の水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−283936(P2008−283936A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134368(P2007−134368)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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