説明

汎用コンバイン

【課題】 フィードコンベアのコンベアチェン部に少ない油で効率良く注油することができるものとし、摩耗を少なくしてコンバインの耐久性を向上させる。
【解決手段】 第1に、フィードコンベア(13)の始端部の非搬送作用側上方位置から下方に向けて油を供給する注油ノズル(20)を設ける。第2に、注油ノズル(20)を、フィードコンベア(13)のコンベアチェン(18)の軌道上に配置する。第3に、集送オーガ(12)またはフィードコンベア(13)の下側に配置した底板(19)に、注油ノズル(20)から供給された油の余剰分を排出する目抜き孔(24)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈り取って脱穀する汎用コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、刈取後の穀稈を集送オ−ガで横送りして後方に掻き込んだ後、フィードコンベアにて後方の脱穀部に揚上搬送するよう構成した全稈投入型の汎用コンバインがある。
前記フィードコンベアは、始端部側の従動回転体と、終端部側の駆動回転体とにわたって左右2列のコンベアチェンを巻き掛けて構成している。
【0003】
そして、このような汎用コンバインにおいて、フィードコンベアによる刈取穀稈の搬送中に混入した泥土等を排除する目抜き孔を、フィードコンベアの搬送底板に開口して設けた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−266136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、収穫作業を行うと、フィードコンベアのコンベアチェンと従動回転体および駆動回転体が摩耗する。従って、この摩耗を少なくするために、これらコンベアチェンと従動回転体および駆動回転体との巻き掛け部に潤滑油を供給する必要がある。
【0005】
しかしながら、上述の従来技術においては、注油ノズルの配置について示唆されておらず、的確な注油を行うことができないために、コンバインの耐久性が低下する問題がある。
【0006】
また、仮にフィードコンベアの始端部に注油ノズルを設けても、この注油ノズルから供給される潤滑油の逃げ道がなく、余剰油が集送オーガの下側の底板上やフィードコンベアの底板上に溜まり、搬送中の刈取穀稈を汚損してしまう。この結果、収穫後の穀粒が潤滑油で汚損されて商品価値を損なう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の如き技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、刈取後の穀稈を横送りする集送オーガ(12)と、該集送オーガ(12)によって横送りされた穀稈を引継ぎ搬送して後方の脱穀部(4)に供給するフィードコンベア(13)と、該フィードコンベア(13)の始端部の非搬送作用側上方位置から下方に向けて油を供給する注油ノズル(20)とを設けたことを特徴とする汎用コンバインとする。
【0008】
これにより、注油作業時に、注油ノズル20から供給される油は、フィ−ドコンベア13始端のチェン券回部に注油される。注油ノズル20は、フィ−ドコンベア13の始端部の非搬送作用側上方位置から下方に向けて油を供給するので、作物の持ち回りの少ない箇所で注油されることになり、少ない油で効率良く注油される。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記注油ノズル(20)を、フィードコンベア(13)のコンベアチェン(18)の軌道上に配置したことを特徴とする請求項1記載の汎用コンバインとする。
【0010】
これにより、注油ノズル20から供給される油が、フィードコンベア13のコンベアチェン18に円滑に供給される。
請求項3記載の発明は、前記集送オーガ(12)の下側に配置した底板(19)またはフィードコンベア(13)の下側に配置した底板(19)に、前記注油ノズル(20)から供給された油の余剰分を排出する目抜き孔(24)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の汎用コンバインとする。
【0011】
これにより、注油ノズル20から供給される油は、底板19の目抜き孔24から機外に排除され、作物が油によって汚染されにくくなる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、フィ−ドコンベア13の始端部の非搬送作用側の上方位置から下方に向けて注油するようにしたので、作物の持ち回りの少ない箇所で注油されることになり、少ない油で効率良く注油することができ、しかも、油を上方から供給するため、コンベアチェン部に的確に注油することができ、摩耗を少なくしてコンバインの耐久性を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、注油ノズル20から供給される油をフィードコンベア13のコンベアチェン18に円滑に供給することができ、コンベアチェン部の摩耗を少なくしてコンバインの耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、余剰油を底板19の目抜き孔24から排出できるので、この余剰油が集送オーガ12下側の底板19上やフィードコンベア13下側の底板19上に溜まりにくく、この油による穀稈の汚損が少なく、商品価値の高い穀粒を収穫することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、全稈投入型の汎用コンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラ1を具備する車体2上には、前部に昇降可能な刈取部3を、後部に全稈投入型の脱穀部4を搭載している。刈取部3のフィ−ダハウスの横側部にはキャビン5とこのキャビン内に運転席6や操作部7などからなる乗用運転部が設置され、その後方にはグレンタンク8が装備されている。
【0016】
刈取部3は、立毛する穀稈を後方に掻き寄せる掻込リ−ル10と、穀稈を根本から切断する刈取装置11と、刈取後の穀稈を集送して後方に掻き込む集送オ−ガ12と、該集送オ−ガ12によって掻き込まれた穀稈を受け入れて後方の脱穀部4に揚上搬送するフィ−ドコンベア13及びこのフィ−ドコンベア13を内装軸架するフィ−ダハウス14とからなり、機体に対し刈取昇降シリンダ15を介して上下に昇降するよう構成されている。
【0017】
前記フィードコンベア13は、終端側の駆動スプロケット(駆動回転体)16と始端側の従動回転ドラム(従動回転体)17との間に券回するコンベアチェン18によって回転駆動されるようになっており、前記集送オーガ12とフィードコンベア13の下側を穀稈の搬送経路とすると共に、この両者間にわたって延設する搬送底板(底板)19に沿って掻込揚上搬送する構成としている。
【0018】
前記従動回転ドラム17の上方には、左右のコンベアチェン18,18に向けて油を噴射する注油ノズル20,20を配設し、注油タンク(サラダオイルなどの食品油のボトル)21からの油を注油ポンプ22の作動により注油パイプ23を通じて噴射すべく配管構成している。
【0019】
この実施例における注油用オイルは、人畜に害のない食品油を使用するようになっている。マシン油を利用すると、特に大豆粒は、人体に影響があるとされ、禁止されているが、一般に市販されているサラダオイルなどを利用するようにすると、安価に購入できるばかりでなく、人体を害することがなく、潤滑油としても適しており、サラダオイルをそのまま使用できるため、入手性がよく、オイルを入れる必要もないので作業性が良くなる。そして、このような食品用ボトルである注油タンク21は、フィダーハウス14の右側で、更にキャビン5よりも右側に位置し刈取部3のプラットホームの背部に配置するものであると、ボトル内の残量が運転席より目視可能であり、刈取部を上昇すると運転者に近づくため、残量状態を容易に確認することができる。また、この食品油ボトルは刈取支持枠26に取り付けた受け皿27上に載置してあると共に、固定バンド28によって締付保持する構成としている。ボトル内の食品油が空になると、新たな食品用ボトルに簡単に取り替えることができる。なお、集中注油の注油タンクをプラットホーム背部に設けておくと、注油箇所として、フィードコンベア上下支点部、コンベアチェン、リール上下・前後支点部、その他伝動部等があり、これら各注油箇所までの距離が略均等になるため、吐出オイル量のアンバランスを防ぎ易くなる。
【0020】
前記搬送底板19には、注油ノズル20,20の下方に対応する位置において、注油ノズルからの流出油を機外に排除する多数個の目抜き孔24を穿設した目抜き板25を設けている。搬送底板上に油が溜ると、これが作物に付着し、作物への影響が大となるが、油は目抜き孔から排除されるので問題がなくなる。
【0021】
汎用コンバインの集中注油において、図5に示すように、コントローラ30には、入力側に集中注油スイッチ31を接続して入力可能とし、出力側に自動注油ポンプ32及び制御モータ33を接続して出力可能に設け、集中注油スイッチ31を「ON」後、タイマーにより一定時間が経過すると、自動注油ポンプ32の駆動が自動的に止まり、注油自動停止が行なえるように制御可能に構成している。この構成によると、オペレータが意識して何回も操作する必要がなく、注油が自動停止するため、適量の注油が可能となり、詰まり防止や汚粒防止効果が得られる。
【0022】
図6及び図7に示すように、作物の根元を切断する左右に並設の回転刃35,35と作物を係合保持して掻き上げ搬送する掻上搬送装置36等からなるロークロップ装置38を備えた汎用コンバインにおいて、回転刃35の回転負荷の度合をセカンドモニタ39(図8参照)にて表示すると共に、回転刃のある一定レベル以上の回転負荷を回転負荷センサ40にて検出すると、負荷検出側のゲージホイル37が上下動して回転刃の刈高さを負荷軽減側に自動補正するように構成している。つまり、左右の回転刃35,35のうち、一方側の回転刃に一定以上の負荷を検出すると、その負荷のかかっている側のゲージホイルを下降させることにより、これと同一側に位置する回転刃を負荷軽減側に上昇させて対地刈高さを高くする。要するに、負荷がかかっている側のゲージホイルを昇降制御することにより、回転刃にかかる負荷を軽減し、負荷状態をモニタで確認しながら作業ができ、常に安定した刈取作業が能率よく行える。
【0023】
なお、図8に示す構成例において、上記左右回転刃35,35の上下高さを昇降制御する手動スイッチ41が操作部7の右側に設置された既存のパワステレバー(左右方向の操作で機体を左右に操向制御し、前後方向の操作で刈取部を昇降制御する。)42と、操作部の左側に設置された走行速度を無段変速する変速レバー43とにそれぞれ設けられている。パワステレバー42側の手動スイッチ41U,41Dは、右側のゲージホイル37を昇降制御する構成であり、変速レバー43側の手動スイッチ41U,41Dは、左側のゲージホイル37を昇降制御する構成になっている。パワステレバー及び変速レバーを離さずに握ったままで左右回転刃の昇降操作が可能であり、連続作業を能率よく行うことができる。また、前記パワステレバー42側には掻込リールを昇降制御するリール上下スイッチ44U,44Dが設けられている。
【0024】
また、ロークロップ装置を備えた汎用コンバインにおいて、左右回転刃35,35の負荷の度合をセカンドモニタ39にて表示すると共に、左右回転刃のある一定レベル以上の回転負荷を検出すると、負荷を軽減する側に刈取ローリング又は車体ローリング制御にて刈高さを補正するよう構成することもできる。負荷のかかった側の回転刃をローリング作動により上昇させるため、回転刃の回転ダウンや停止をなくし所定の回転数を維持しながら連続作業を可能とし、作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】汎用コンバインの平面図
【図2】同上要部の平面図
【図3】汎用コンバインの要部の側面図
【図4】同上一部の側面図
【図5】注油制御回路図
【図6】ロークロップ装置を備えた汎用コンバインの要部の平面図
【図7】同上要部の側面図
【図8】運転操作部の平面図
【符号の説明】
【0026】
4 脱穀部
12 集送オーガ
13 フィードコンベア
17 従動回転ドラム(従動回転体)
18 コンベアチェン
19 搬送底板(底板)
20 注油ノズル
24 目抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取後の穀稈を横送りする集送オーガ(12)と、該集送オーガ(12)によって横送りされた穀稈を引継ぎ搬送して後方の脱穀部(4)に供給するフィードコンベア(13)と、該フィードコンベア(13)の始端部の非搬送作用側上方位置から下方に向けて油を供給する注油ノズル(20)とを設けたことを特徴とする汎用コンバイン。
【請求項2】
前記注油ノズル(20)を、フィードコンベア(13)のコンベアチェン(18)の軌道上に配置したことを特徴とする請求項1記載の汎用コンバイン。
【請求項3】
前記集送オーガ(12)の下側に配置した底板(19)またはフィードコンベア(13)の下側に配置した底板(19)に、前記注油ノズル(20)から供給された油の余剰分を排出する目抜き孔(24)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の汎用コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−77675(P2009−77675A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250551(P2007−250551)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】