説明

汚染土壌の処理方法

【課題】 汚染土壌を浄化して汚染物質の拡散を防止するに際し、洗浄した処理土が産業廃棄物として処分されることなく、また、作業性よく汚染物質の拡散を防止できる汚染土壌の処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、汚染物質によって汚染された汚染土壌を水で洗浄して処理土20とし、又は水に添加された汚染物質不溶化剤と前記汚染土壌とを混合して処理土20とし、次いで、前記処理土20を複数の透水性の袋体10に分割して収容し、前記処理土20中の水分を前記袋体10の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土20を収容した複数の袋体10を埋め戻しに用いるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質によって汚染された汚染土壌を掘削し、該汚染土壌を処理した処理土を埋め戻して、汚染物質の拡散を防止する汚染土壌の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等からの廃棄物により重金属やダイオキシン、有機塩素系溶剤等の化学物質による土壌や地下水の汚染が深刻化している。このような汚染物質によって汚染された汚染土壌を浄化する方法として、一般に掘削した汚染土壌から汚染物質を除去する方法が採用されている。この方法によれば、汚染土壌を掘削し、掘削した汚染土壌を浄化プラントへ搬送し、浄化プラントで洗浄することにより汚染土壌から汚染物質を除去することができる。
【0003】
しかし、浄化プラントで洗浄された処理土は洗浄により多くの水分を含むため、そのままでは埋め戻すことができないという問題がある。このように大量の水分を含んだ処理土は、埋め戻しができないのであれば産業廃棄物として処分しなければならず、多大な処理コストがかかるという問題も生じる。
【0004】
これに対し、従来、汚染土に不溶化剤を添加して不溶化させる方法、あるいは固化材と混合させて固化させる方法が提案されている。不溶化剤を添加する方法の場合、汚染土に不溶化剤を均一に混合するためには、不溶化剤を多量の水に分散させてから混合する必要がある。従って、処理土は多量の水分を含むものとなり、埋め戻しができない場合は、産業廃棄物として処分されることとなるので、多大な処理コストがかかることとなる。また、固化材と混合させて固化する場合、上記方法と比較して、汚染物質の拡散防止の効果が不十分な場合がある。そこで、十分な汚染物質の拡散の効果を得るためには、固化材の添加量を多くしなければならず、処理土の強度が過剰に大きくなるので、再利用しにくいものとなることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたもので、汚染土壌を浄化して汚染物質の拡散を防止するに際し、洗浄した処理土が産業廃棄物として処分されることなく、また、作業性よく汚染物質の拡散を防止できる汚染土壌の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る汚染土壌の処理方法は、汚染物質によって汚染された汚染土壌を水で洗浄して処理土とし、又は水に添加された汚染物質不溶化剤と前記汚染土壌とを混合して処理土とし、次いで、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を埋め戻しに用いることを特徴とする。
【0007】
上記汚染土壌の処理方法によれば、処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、脱水して袋のまま埋め戻しに用いることができるので、汚染土壌を浄化して汚染物質の拡散を防止するに際し、処理土が産業廃棄物として処分されることなく、また、作業性よく汚染物質の拡散を防止することができる。また、複数の袋体を埋め戻すことにより、下方の袋体から順次押し固められ、安定した地盤を形成することができる。
【0008】
また、本発明に係る汚染土壌の処理方法は、汚染物質によって汚染された汚染土壌を掘削して掘削部を形成し、前記汚染土壌の一部を水で洗浄して処理土とし、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を前記掘削部の側面及び底面に沿って敷設した後、前記敷設した袋体の内側に前記汚染土壌を埋め戻すことを特徴とする。
【0009】
上記汚染土壌の処理方法によれば、汚染土壌を掘削して掘削部を形成し、前記汚染土壌の一部を洗浄して処理土とし、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容して脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を前記掘削部の側面及び底面に沿って敷設して止水壁を設けたので、掘削した汚染土壌のすべてを洗浄しなくても、その一部だけを洗浄すればよく、また、袋体に収容された処理土を固化させて止水壁として利用することができ、汚染物質の拡散を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る汚染土壌の処理方法は、掘削した汚染土壌を洗浄し、又は、水に添加した汚染物質不溶化剤と混合して処理土とした後、該処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を埋め戻しに用いるようにしたので、処理土が産業廃棄物として処分されることなく、作業性よく汚染物質の拡散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
【0012】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の処理方法は、汚染物質を含む汚染土壌をプラントで処理する工程と、該処理した処理土を再生可能なように脱水して埋め戻す工程とを有する。
【0013】
まず、汚染土壌を処理する工程について図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る汚染土壌の処理方法を構成する汚染土壌の処理工程においては、まず、土壌洗浄工程、又は不溶化剤添加工程を行う。土壌洗浄工程では、汚染物質を含む汚染土壌を掘削し、掘削した汚染土壌を洗浄プラントの混合攪拌機に搬送する。そして、混合攪拌機に汚染土壌と洗浄水とを添加して十分に混合撹拌し、洗浄を行う(工程1a)。洗浄水としては、洗浄させる汚染物質に応じて、純水、酸性の液体又はアルカリ性の液体を使用することができる。酸性の液体としては、例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸、シュウ酸及び炭酸水などを1種又は2種以上含んだ液体を使用することができ、アルカリ性の液体としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、又は炭酸水素ナトリウム溶液などを1種又は2種以上含んだ液体を使用することができる。
【0015】
不溶化剤添加工程では、処理土中の汚染物質の溶解性、移動性、毒性等の性質を低減させるために、汚染物質不溶化剤と水とを加えて混合撹拌する(工程1b)。汚染物質不溶化剤としては、不溶化させる汚染物質に応じて、硫化ナトリウム、硫酸第一鉄、次亜塩素酸ソーダ、キレート剤又は石灰などを使用することができる。なお、工程1aと工程1bの両方を行うこともできる。この場合は、工程1a、工程1bの順で行えばよい。
【0016】
次に、凝集剤を添加して撹拌混合し、洗浄水中の処理土を凝集させて、沈降分離させる(工程2)。凝集剤としては、硫酸アルミニウム、PAC(ポリ塩化アルミニウム)又は塩化第二鉄などを使用することができる。
【0017】
そして、処理土を沈降分離させた後の上澄み液を除去する(工程3)。なお、工程3において、残留している水分が多い場合は、高分子吸収剤や半水石膏等を添加混合して、水分を除去するようにしても構わない。
【0018】
次に、上述した処理工程により処理された処理土を再生可能なように脱水して埋め戻す工程について、図2を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る汚染土壌の処理方法を構成する埋め戻し工程においては、まず、図2(a)に示すように、処理土20を複数の透水性の袋体10に分割して収容する。透水性を有する袋体10としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維からなる土嚢袋、麻袋などを使用することができる。
【0020】
続いて、図2(b)に示すように、処理土を収容した袋体10を加圧し、袋体10を圧縮させて袋体10の透過孔から水分を排出させる。詳しくは、例えば、機械的に加圧して脱水してもよく、あるいは、袋体10を順次積み重ねて、袋体10の自重により加圧させて脱水するようにしてもよい。
【0021】
袋体10を圧縮させたときの処理土の含水比は150%以下であることが好ましい。処理土の含水比が150%を超えると、水分を多く含むために処理土が廃棄物扱いとして処分されることとなり、埋め戻しに用いることができない。
【0022】
そして、上記方法により、再生可能なように処理された処理土20を収容する複数の袋体10は、図2(c)に示すように、汚染土壌を掘削した掘削部30に積み上げて埋め戻す。なお、必要に応じて、袋体10の隙間に処理土20を直接充填し、袋体10を積み上げた空隙を埋めるようにしてもよい。また、掘削部30に袋体10を積み上げた後、上面に盛土または舗装を行って、表面を処理するようにしてもよい。
【0023】
このように、本実施形態に係る汚染土壌の処理方法は、掘削した汚染土壌を水で洗浄し、又は水に添加した汚染物質不溶化剤を混合して処理土とし、該処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、脱水された処理土を収容した複数の袋体を埋め戻しに用いるようにした。従って、処理土の余分な水分を除去することができ、処理土が産業廃棄物として処分されることなく、作業性よく汚染物質の拡散を防止することができる。また、複数の袋体を積み上げることにより、下方の袋体から順次押し固められ、安定した地盤を形成することができ、汚染土壌の再生を効率よく図ることができる。
尚、上述した処理土は、汚染土壌を掘削した場所に再び埋め戻すようにしたが、それに限るものではなく、掘削した場所以外で埋め戻しに用いるようにしてもよい。
【0024】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の処理方法について図3を参照して説明する。
【0025】
図3は、本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の処理方法を説明するための図である。
【0026】
本実施形態に係る汚染土壌の処理方法においては、まず、汚染物質によって汚染された汚染土壌40を掘削して掘削部30を形成する。次に、掘削した汚染土壌40のうち、掘削部30の側面及び底面に沿って敷設する分の汚染土壌40の洗浄を行う。そして、洗浄された処理土を複数の透水性の袋体50に分割して収容し、処理土中の水分を袋体50の外に透過させて脱水する。そして、処理土を収容した袋体50を掘削部30の側面及び底面に沿って隙間なく敷設する。続いて、敷設された袋体50の内側に汚染土壌40を埋め戻す。なお、処理土を脱水した後、袋体50に固化材を添加してもよい。
【0027】
上記汚染土壌の処理方法において、汚染土壌を掘削して洗浄する工程については、上述した第一実施形態で説明した同様の方法を採用することができるので、ここでは説明を省略する。
また、処理土を脱水する工程についても、上述した第一実施形態で説明した方法を採用することができるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
また、固化材を添加する場合は、固化材として、ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント等のセメント類、水砕スラグ等のスラグ類、二水石膏、半水石膏及び無水石膏等の石膏類、生石灰や消石灰等の石灰類等を使用することができる。
固化材の添加量は、処理土を100重量部に対して、5〜50重量部とすることが好ましい。
【0029】
次に、袋体を掘削部に敷設する工程においては、処理土を収容した袋体50を、掘削部30の側面及び底面に沿って隙間なく設置することにより、袋体50内の処理土が固化し、止水壁が形成される。
【0030】
このように、本実施形態に係る汚染土壌の処理方法は、汚染土壌を掘削して掘削部を形成し、前記汚染土壌の一部を洗浄して処理土とし、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容して脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を前記掘削部の側面及び底面に沿って敷設して止水壁を設けたので、汚染土壌の全てを洗浄する必要がなく、洗浄する手間や費用を削減することができる。また、汚染土壌を埋め戻しても前記止水壁によって汚染物質の拡散を防止することができる。
【0031】
なお、前記止水壁は、前記袋体により形成する以外にも、袋体と鋼矢板とを重ね合わせて形成するようにしても構わない。具体的には、掘削部の側面に沿って鋼矢板を設け、該鋼矢板の側面及び掘削部の底面に沿って前記袋体を敷設し、該敷設した袋体の内側に汚染土壌を埋め戻すようにしてもよい。これにより、袋体に鋼矢板を隣接させて設けているので、処理土が鋼矢板に拘束されて、処理土の位置ずれによる隙間の発生を防止することができる。また、仮に袋体間に隙間が生じ、そこから汚染物質が外部に拡散しても、前記袋体の外面を覆っている鋼矢板により汚染物質の拡散を防止することができる。
【0032】
また、上記止水壁の設置方法は、上記以外にも、掘削部の側面に沿って袋体を敷設し、該敷設した袋体の内側に沿って鋼矢板を設けた後、掘削部の底面に沿って袋体を敷設するようにしてもよい。これにより、上述した止水壁の設置方法と同様の効果を得ることができる。
【0033】
さらに、止水壁の設置方法は、上記以外にも、掘削部の側面に沿って鋼矢板を設け、該鋼矢板の側面に沿って袋体を敷設し、該敷設した袋体の内側に沿って鋼矢板を設けた後、掘削部の底面に沿って袋体を敷設するようにしてもよい。これにより、止水壁は、対向する鋼矢板の間に袋体が挟み込まれた三層構造を形成するので、より確実に汚染物質の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態に係る処理土の埋め戻し方法を構成する汚染土壌の洗浄工程を説明するためにブロック図を示す。
【図2】同実施形態に係る処理土の埋め戻し方法を構成する処理土の再生方法を説明するための図を示す。
【図3】本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の処理方法について説明するための図を示す。
【符号の説明】
【0035】
10,50…袋体
20…処理土
30…掘削部
40…汚染土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質によって汚染された汚染土壌を水で洗浄して処理土とし、又は水に添加された汚染物質不溶化剤と前記汚染土壌とを混合して処理土とし、次いで、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を埋め戻しに用いることを特徴とする汚染土壌の処理方法。
【請求項2】
汚染物質によって汚染された汚染土壌を掘削して掘削部を形成し、前記汚染土壌の一部を水で洗浄して処理土とし、前記処理土を複数の透水性の袋体に分割して収容し、前記処理土中の水分を前記袋体の外に透過させて脱水し、前記脱水された処理土を収容した複数の袋体を前記掘削部の側面及び底面に沿って敷設した後、前記敷設した袋体の内側に前記汚染土壌を埋め戻すことを特徴とする汚染土壌の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−281080(P2006−281080A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103873(P2005−103873)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】