説明

油圧四輪駆動型作業車輌

【課題】車輌前後に配置された主及び副駆動輪がそれぞれ主及び副油圧モータ本体によって駆動される油圧四輪駆動型作業車輌において、路面状況に応じた駆動状態を選択可能とする。
【解決手段】主油圧モータ本体に流体接続された一対の主作動油ライン及び副油圧モータ本体に流体接続された一対の副作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士の間を前後デフロック切換弁を介して流体接続する。前後デフロック切換弁は、絞りが介挿された状態で対応するライン同士を流体接続する絞り接続状態と絞りが介挿されていない状態で対応するライン同士を流体接続するフル接続状態とをとり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌前後方向一方側及び他方側にそれぞれ配設された一対の主駆動輪及び一対の副駆動輪が、主油圧モータ本体及び副油圧モータ本体からの回転動力によって作動的に駆動される油圧四輪駆動型作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌前後方向一方側及び他方側にそれぞれ配設された一対の第1駆動輪及び一対の第2駆動輪と、前記第1駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する第1油圧モータ本体と、前記第2駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する第2油圧モータ本体と、駆動源によって作動的に駆動される第1及び第2油圧ポンプ本体と、前記第1ポンプ本体及び前記第1油圧モータ本体が第1HSTを形成するように両者を流体接続する一対の第1作動油ラインと、前記第2油圧ポンプ本体及び前記第2油圧モータ本体が第2HSTを形成するように両者を流体接続する一対の第2作動油ラインとを備えた油圧四輪駆動型作業車輌において、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインのそれぞれの車輌前進時高圧側ライン同士を絞りが介挿された高圧側連通ラインを介して流体接続させ、且つ、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインのそれぞれの車輌前進時低圧側ライン同士を絞りが介挿された低圧側連通ラインを介して流体接続させた油圧四輪駆動型作業車輌が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の作業車輌は、前記高圧側連通ライン及び前記低圧側連通ラインの存在によって、車輌旋回時における前記第1及び第2駆動輪の間の旋回半径差に応じて前記第1及び第2油圧ポンプ本体の一方から吐出される作動油の一部を他方の油圧モータ本体に自動的に分配供給するという前後輪間の油圧ディファレンシャル作用(油圧センターディファレンシャル作用)を得つつ、前記連通ラインに介挿された絞りの存在によって、前記第1及び第2駆動輪の一方が凹部又は泥地等に入り込んで該一方の駆動輪の回転負荷が極端に小さくなった場合であっても前記第1及び第2油圧ポンプ本体から吐出される作動油の全量が該一方の駆動輪を駆動する側の一方の油圧モータ本体へ集中して供給されることを防止するというデフロック作用を得ている。
【0004】
しかしながら、前記従来の作業車輌においては、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインのそれぞれの車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士が常時絞りを介して連通されている為、走行時は常に、前記絞りによる負荷を受けた状態でしか前記油圧センターディファレンシャル作用を得ることができず、したがって油圧モータ本体の性能を充分に引き出すことができず伝動効率の観点で問題があった。
【特許文献1】米国特許第3,641,765号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、車輌前後方向一方側及び他方側の主駆動輪及び副駆動輪が、それぞれ、駆動源によって作動的に駆動される一又は複数の油圧ポンプ本体に一対の主作動油ラインを介して流体接続された主油圧モータ本体及び前記油圧ポンプ本体に前記一対の主作動油ラインとは独立された一対の副作動油ラインを介して流体接続された副油圧モータ本体によって作動的に駆動される油圧四輪駆動型作業車輌であって、路面状況に応じた駆動状態を選択可能な油圧四輪駆動型作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成する為に、車輌前後方向一方側及び他方側にそれぞれ配設された主駆動輪及び副駆動輪と、前記主駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する主油圧モータ本体と、前記副駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する副油圧モータ本体と、駆動源によって作動的に駆動される一又は複数の油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体及び前記主油圧モータ本体が主駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続する一対の主作動油ラインと、前記油圧ポンプ本体及び前記副油圧モータ本体が副駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続し且つ前記一対の主用作動油ラインとは独立された一対の副作動油ラインとを備えた油圧四輪駆動型作業車輌であって、前記一対の主作動油ライン及び前記一対の副作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士の間が前後デフロック切換弁を介して流体接続され、前記前後デフロック切換弁が、絞りが介挿された状態で対応するライン同士を流体接続する絞り接続状態と絞りが介挿されていない状態で対応するライン同士を流体接続するフル接続状態とをとり得るように構成された油圧四輪駆動型作業車輌を提供する。
【0007】
好ましくは、前記作業車輌は、前記一対の副作動油ラインのうち前記前後デフロック切換弁を介して前記一対の主作動油ラインに流体接続される接続点より前記副油圧モータ本体に近接する側において前記一対の副作動油ラインの各々をポンプ側ライン及びモータ側ラインに分離するように前記一対の副作動油ラインに介挿され、開状態及び閉状態を選択的にとり得る2駆/4駆切換弁をさらに備え得る。
前記2駆/4駆切換弁は、開状態においては前記一対の副作動油ラインの各々の前記ポンプ側ライン及びモータ側ラインを流体接続させ、閉状態においては前記一対の副作動油ラインの前記ポンプ側ラインを遮断し且つ前記モータ側ラインを互いに対して流体接続させるように構成される。
【0008】
より好ましくは、前記2駆/4駆切換弁の閉状態時には前記前後デフロック切換弁がフル接続状態とされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る油圧四輪駆動型作業車輌によれば、前後輪の一方である主駆動輪を駆動する主油圧モータ本体に流体接続された一対の主作動油ライン及び前後輪の他方である副駆動輪を駆動する副油圧モータ本体に流体接続された一対の副作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士の間が、絞りが介挿された状態で対応するライン同士を流体接続する絞り接続状態と絞りが介挿されていない状態で対応するライン同士を流体接続するフル接続状態とをとり得る前後デフロック切換弁を介して流体接続されているので、通常の路面を走行する場合には、前記前後デフロック切換弁をフル接続状態とさせることで、伝動効率のロスを招くことなく前後輪間の油圧ディファレンシャル作用を得ることができ、且つ、滑りやすい路面を走行する場合や前後輪の一方が凹部又は泥地等に入り込んだ場合には、前記前後デフロック切換弁を絞り接続状態とさせることで、前後輪間の油圧ディファレンシャル作用を得つつ、前記作業車輌が走行不能状態になることを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1
以下に、本発明の好ましい一実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明の一実施の形態に係る油圧四輪駆動型作業車輌1の側面図を示す。
又、図2及び図3に、前記作業車輌1の油圧回路図を示す。
【0011】
前記作業車輌1は、車輌前後方向一方側及び他方側に配設された主駆動輪30(1)及び副駆動輪30(2)がそれぞれ主油圧モータ本体50(1)及び副油圧モータ本体(2)からの回転動力によって作動的に駆動されるように構成された油圧四輪駆動型とされている。
【0012】
詳しくは、前記作業車輌1は、図1及び図2に示すように、車輌フレーム10と、前記作業車輌10に支持された駆動源20と、前記主駆動輪30(1)(本実施の形態においては後輪)及び副駆動輪30(2)(本実施の形態においては前輪)と、前記主駆動輪30(1)を駆動する為の回転動力を出力する前記主油圧モータ本体50(1)と、前記副駆動輪30(2)を駆動する為の回転動力を出力する前記副油圧モータ本体50(2)と、前記駆動源20によって作動的に駆動される一又は複数の油圧ポンプ本体40と、前記油圧ポンプ本体40及び前記主油圧モータ本体50(1)が主駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続する一対の主作動油ライン600(1)と、前記油圧ポンプ本体40及び前記副油圧モータ本体50(2)が副駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続し且つ前記一対の主用作動油ライン600(1)とは独立された一対の副作動油ライン600(2)とを備えている。
【0013】
本実施の形態においては、前記作業車輌1は乗用芝刈り機とされている。
従って、前記作業車輌1は、前記構成部材に加えて、前記車輌フレーム10に支持された運転席60と、モア装置70と、前記モア装置70によって刈り取られた草を収容するグラスコレクタ80と、前記モア装置70によって刈り取られた草を前記グラスコレクタ80へ搬送する為の搬送経路を画するダクト75とを備えている。
なお、本実施の形態においては、前記モア装置70は前輪よりも前方側に配置されており、従って、前記作業車輌1には、前記モア装置70より前方に配設されたキャスタ輪85を備えている。
【0014】
本実施の形態に係る前記作業車輌1は、図2に示すように、前記油圧ポンプ本体40として主油圧ポンプ本体40(1)及び副油圧ポンプ本体40(2)を有している。
即ち、前記主油圧ポンプ本体40(1)が前記主駆動輪用HSTを形成するように前記一対の主作動油ライン600(1)を介して前記主油圧モータ本体50(1)に流体接続され、前記副油圧ポンプ本体40(2)が前記副駆動輪用HSTを形成するように前記一対の副作動油ライン600(2)を介して前記副油圧モータ本体50(2)に流体接続されている。
【0015】
これに代えて、前記作業車輌1が、前記油圧ポンプ本体40として、車輌前進時に吸引ポートとして作用する一対の第1ポート及び車輌前進時に吐出ポートとして作用する一対の第2ポートを有する単一の油圧ポンプ本体を備えることも可能である。
斯かる形態においては、前記一対の第1ポートの一方及び前記一対の第2ポートの一方が前記一対の主作動油ライン600(1)を介して前記主油圧モータ本体50(1)に流体接続され、且つ、前記一対の第1ポートの他方及び前記一対の第2ポートの他方が前記一対の副作動油ライン600(2)を介して前記副油圧モータ本体50(2)に流体接続される。
【0016】
前記主油圧ポンプ本体40(1)及び前記副油圧ポンプ本体40(2)は単一の前記駆動源20によって作動的に駆動される状態で単一のポンプケース120に収容されてなるポンプユニット100を形成している。
【0017】
詳しくは、前記ポンプユニット100は、図2に示すように、前記駆動源20に作動連結された状態で前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)をそれぞれ相対回転不能に支持する主ポンプ軸110(1)及び副ポンプ軸110(2)と、前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)を収容すると共に前記主及び副ポンプ軸110(1),110(2)を軸線回り回転自在に支持する前記ポンプケース120と、一端部が外方へ延在された状態で前記ポンプケース120に軸線回り回転自在に支持されたPTO軸130と、前記駆動源20から前記PTO軸130へ至る伝動経路に介挿されるように前記ポンプケース120内に収容されたPTOクラッチ機構140と、前記駆動源20に作動連結された補助ポンプ本体150とを備えている。
【0018】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記主及び副ポンプ軸110(1),110(2)、前記PTOクラッチ機構140の駆動側部材141、並びに、前記補助ポンプ本体150は、入力軸105を介して前記駆動源20に作動連結されている。
即ち、前記ポンプユニット100は、前記構成部材に加えて、前記駆動源20に作動連結された状態で前記ポンプケース120に支持された前記入力軸105と、前記入力軸105を前記主及び副ポンプ軸110(1),110(2)、前記補助ポンプ本体150並びに前記PTOクラッチ機構140の駆動側部材141に作動連結するように前記ポンプケース120内に収容されたギヤ伝動機構160とを備えている。
なお、本実施の形態においては、前記補助ポンプ本体150は前記主ポンプ軸110(1)の一端部によって直接又は間接的に駆動されている。
【0019】
前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)は同一構成を有している。従って、下記においては、主として前記主油圧ポンプ本体40(1)について説明し、前記副油圧ポンプ本体40(2)については同一符号又は末尾を(2)に変更した符号を付して詳細な説明を省略する。
【0020】
前記主油圧ポンプ本体40(1)は、対応する前記主ポンプ軸110(1)に相対回転不能に支持されたポンプ側シリンダブロック(図示せず)と、前記ポンプ側シリンダブロックに相対回転不能且つ軸線方向往復可能に収容された複数のポンプ側ピストン(図示せず)とを備えている。
【0021】
前記主油圧ポンプ本体40(1)及び前記主油圧モータ本体50(1)は互いの共働下に前記主駆動輪用HSTを形成するように少なくとも一方が可変容積型とされる。
同様に、前記副油圧ポンプ本体40(2)及び前記副油圧モータ本体50(2)は互いの共働下に前記副駆動輪用HSTを形成するように少なくとも一方が可変容積型とされる。
本実施の形態においては、図2に示すように、前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)が可変容積型とされている。
【0022】
従って、前記ポンプユニット100は、さらに、前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)の容積量をそれぞれ変化させる主及び副出力調整機構170(1),170(2)を備えている。
前記主出力調整機構170(1)は、対応するポンプ側ピストンの摺動範囲を変化させ得るように揺動軸線回り傾転可能とされた主可動斜板(図示せず)と、外部操作に応じて軸線回りに回転し得るように前記ポンプケース120に支持された主制御軸171(図1参照)であって、自己の軸線回りの回転に応じて対応する前記主可動斜板を揺動軸線回りに傾転させる主制御軸171とを備えている。
同様に、前記副出力調整機構170(2)は、副可動斜板及び副制御軸(図示せず)を有している。
【0023】
前記主及び副可動斜板は共に、中立位置を挟んで前進側及び後進側の双方へ傾転し得るように構成されている。
そして、前記主及び副制御軸は、前記運転席60近傍に配置された変速ペダル等の変速操作部材61(図1及び図2参照)を介して同期して操作されるように構成されている。
即ち、本実施の形態においては、前記変速操作部材61への人為操作に応じて前記主及び副制御軸が同期して操作され、これにより、前記主及び副可動斜板が同期して前進時側及び後進側へ傾転されるようになっている。
【0024】
前記主油圧ポンプ本体40(1),前記副油圧ポンプ本体40(2)及び前記PTOクラッチ機構140を収容する前記ポンプケース120には、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)の一部を形成する一対の主ポンプ側作動油路610(1)及び一対の副ポンプ側作動油路610(2)を含む種々の油路が形成されている。
【0025】
前記一対の主ポンプ側作動油路610(1)は、車輌前進時にそれぞれ高圧及び低圧となる主ポンプ側前進時高圧油路610H(1)及び主ポンプ側前進時低圧油路610L(1)を有している。
前記主ポンプ側前進時高圧油路610H(1)は、一端部が前記主油圧ポンプ本体40(1)の車輌前進時吐出側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されて主ポンプ側前進時高圧ポート611H(1)を形成している。
前記主ポンプ側前進時低圧作動油路610L(1)は、一端部が前記主油圧ポンプ本体40(1)の車輌前進時吸引側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されて主ポンプ側前進時低圧ポート611L(1)を形成している。
【0026】
前記一対の副ポンプ側作動油路610(2)は、車輌前進時にそれぞれ高圧及び低圧となる副ポンプ側前進時高圧油路610H(2)及び副ポンプ側前進時低圧油路610L(2)を有している。
前記副ポンプ側前進時高圧油路610H(2)は、一端部が前記副油圧ポンプ本体40(2)の車輌前進時吐出側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されて副ポンプ側前進時高圧ポート611H(2)を形成している。
前記副ポンプ側前進時低圧作動油路611L(2)は、一端部が前記副油圧ポンプ本体40(2)の車輌前進時吸引側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されて副ポンプ側前進時低圧ポート611L(2)を形成している。
【0027】
前記ポンプケース120には、図2に示すように、さらに、前記一対の主作動油ライン600(1)に作動油を補給する為の主ポンプ側チャージ油路620(1)と、前記一対の副作動油ライン600(2)に作動油を補給する為の副ポンプ側チャージ油路620(2)とが形成されている。
【0028】
前記主ポンプ側チャージ油路620(1)は、一端部が油圧源として作用する前記補助ポンプ本体150に流体接続され且つ他端部が一対のチャージチェック弁621を介して前記一対のポンプ側主作動油路610H(1),610L(1)にそれぞれ流体接続されている。
同様に、前記第2ポンプ側チャージ油路620(2)は、一端部が油圧源として作用する前記補助ポンプ本体150に流体接続され且つ他端部が一対のチャージチェック弁621を介して前記一対の副ポンプ側作動油路610H(2),610L(2)にそれぞれ流体接続されている。
【0029】
本実施の形態においては、前記主及び副ポンプ側チャージ油路620(1),620(2)は共通チャージ油路625を介して前記補助ポンプ本体150に流体接続されている。
即ち、図2に示すように、前記ポンプケース120には、一端部が外表面に開口して共通チャージポート626を形成する前記共通チャージ油路625が形成されており、前記主及び副ポンプ側チャージ油路620(1),620(2)の前記一端部は前記共通チャージ油路625に流体接続されている。
【0030】
さらに、前記ポンプケース120には、図2に示すように、自吸油路630が形成されている。
前記自吸油路630は、図2に示すように、一端部が前記ポンプケース120内に開口し且つ他端部が前記主及び副ポンプ側チャージ油路620(1),620(2)の前記一端部に流体接続されている。
前記自吸油路630には、前記ポンプケース120から前記主及び副ポンプ側チャージ油路620(1),620(2)への油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止する自吸用チェック弁635が介挿されている。
【0031】
前記自吸油路630及び前記自吸用チェック弁635を含む自吸構造を備えることにより、フリーホイール現象を有効に防止できる。
即ち、例えば、HST中立状態でエンジンを停止して坂道等に作業車輌を停車させると、主及び副駆動輪30(1),30(2)に作動連結された下記モータ軸310に回転力が加わり、該モータ軸310に支持された前記主及び副油圧モータ本体50(1),50(2)がポンプ作用を行おうとする。
この際、前記主油圧ポンプ本体40(1)及び前記主油圧モータ本体50(1)を流体接続する前記一対の主作動油ライン600(1)並びに前記副油圧ポンプ本体40(2)及び前記副油圧モータ本体50(2)を流体接続する前記一対の副作動油ライン600(2)に作動油が充満されていると、該作動油によって前記主及び副油圧モータ本体50(1),50(2)にブレーキ力が作用するが、その一方で、斯かる主及び副油圧モータ本体50(1),50(2)のポンプ作用によって、前記一対の主作動油ライン600(1)の一方及び前記副作動油ライン600(2)の一方が高圧となり、該高圧側の作動油ラインから作動油がリークする恐れがある。
【0032】
このような作動油リークが生じると、負圧側作動油ラインから高圧側作動油ラインへの油の循環が起こり、高圧側作動油ラインからの作動油リークが助長される。そして、最終的に、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)中の作動油が無くなり、前記主駆動輪30(1)及び前記副駆動輪30(2)が自由に回転し始め、車輌が坂道を下降し始める(フリーホイール現象)。
この点に関し、前記自吸油路630及び前記自吸用チェック弁635を備えておけば、前記一対の主作動油ライン600(1)のうち負圧となった側の作動油ライン及び前記一対の副作動油ライン600(2)のうち負圧側となった側の作動油ラインへ油が自動的に補給される。従って、前記フリーホイール現象を有効に防止できる。
【0033】
なお、本実施の形態においては、前記主及び副ポンプ側チャージ油路620(1),620(2)の双方に、前記一対のチャージチェック弁621の一方を絞りを介してバイパスする油路622が備えられている。斯かる油路622を設けることにより、前記主及び副出力調整機構170(1),170(2)の中立設定を厳格に行うことなく、前記主駆動輪用HST及び前記副駆動輪用HSTの中立状態を得ることができる。
【0034】
さらに、前記ポンプケース120には、図2に示すように、前記一対の主ポンプ側作動油路610(1)の間を流体接続する主ポンプ側バイパス油路640(1)であって、外部操作可能な主ポンプ側バイパス弁645(1)が介挿された主ポンプ側バイパス油路640(1)と、前記一対の副ポンプ側作動油路610(2)の間を流体接続する副ポンプ側バイパス油路640(2)であって、外部操作可能な副ポンプ側バイパス弁645(2)が介挿された副ポンプ側バイパス油路640(2)とが形成されている。
前記主ポンプ側及び副ポンプ側バイパス弁645(1),645(2)は、それぞれ、対応する前記バイパス油路640(1),640(2)を選択的に連通又は遮断するように構成されている。
【0035】
さらに、前記ポンプケース120には、一端部が前記一対の主ポンプ側作動油路610(1)にそれぞれ流体接続され且つ他端部が低圧部に開放された一対の主ポンプ側高圧リリーフ油路650(1)と、一端部が前記一対の副ポンプ側作動油路610(2)にそれぞれ流体接続され且つ他端部が低圧部に開放された一対の副ポンプ側高圧リリーフ油路650(2)とが形成されている。
【0036】
前記一対の主ポンプ側高圧リリーフ油路650(1)及び前記一対の副ポンプ側高圧リリーフ油路650(2)の各々には、一次側が対応する前記ポンプ側作動油路610(1),610(2)に流体接続され且つ二次側が前記低圧部に流体接続されるようにリリーフ弁655が介挿されている。
【0037】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記一対の主ポンプ側高圧リリーフ油路650(1)の他端部は、チャージ油路流れ方向に関し前記一対のチャージチェック弁621より上流側において前記主ポンプ側チャージ油路620(1)に流体接続されている。
同様に、前記一対の副ポンプ側高圧リリーフ油路650(2)の他端部は、チャージ油路流れ方向に関し前記一対のチャージチェック弁621より上流側において前記副ポンプ側チャージ油路620(2)に流体接続されている。
【0038】
前記ポンプケース120は、例えば、前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)が挿通可能な開口が設けられたポンプケース本体(図示せず)と、前記開口を液密に閉塞し得るように前記ポンプケースに着脱可能に連結されるポンプ側ポートブロック(図示せず)とを有する。
斯かる構成においては、好ましくは、前記種々の油路は前記ポンプ側ポートブロックに形成される。
【0039】
前記補助ポンプ本体150は、前記主駆動輪用HST及び前記副駆動輪用HSTのチャージ油源として作用すると共に、前記PTOクラッチ機構140の作動油源として作用している。
【0040】
前記補助ポンプ本体150の吸引側は、フィルタ715が介挿された吸引ライン710を介して油タンク等の油源700に流体接続されている。
前記補助ポンプ本体150の吐出側には吐出ライン720が流体接続されており、前記吐出ライン720にはチャージ油供給ライン730及びPTO作動油ライン740が流体接続されている。
【0041】
詳しくは、前記チャージ油供給ライン730は、抵抗弁731を介して前記吐出ライン720に流体接続されている。
即ち、前記チャージ油供給ライン730は、一端部が前記抵抗弁731の二次側に流体接続され且つ他端部が前記共通チャージポート626に流体接続されている。
なお、前記チャージ油供給ライン730の油圧はチャージリリーフ弁735によって所定圧に設定されている。
【0042】
前記PTO作動油ライン740は、前記抵抗弁731の一次側において絞り741を介して前記吐出ライン720に流体接続されている。
前記PTO作動油ライン740には前記PTOクラッチ機構140の係脱を切り換える為のPTO切換弁745が介挿されている。
又、前記PTO作動油ライン740のうち前記PTO切換弁745より下流側には、PTOリリーフ弁746及びアキュームレータ747が流体接続されている。
【0043】
前記PTOクラッチ機構140は、前記入力軸105を介して前記駆動源20に作動連結される前記駆動側部材141と、前記PTO軸130に相対回転不能に支持されたクラッチハウジング142と、前記駆動側部材141に相対回転不能に支持された駆動側摩擦板群及び前記クラッチハウジング142に相対回転不能に支持された従動側摩擦板群を含む摩擦板群143とを備え、前記PTO作動油ライン740を介して給排される作動油によって前記摩擦板群143が選択的に摩擦係合又は係合解除されるようになっている。
なお、図2中の符号145は、前記PTOクラッチ機構140に対して背反的に作動するPTOブレーキ機構である。
【0044】
前記PTO機構140を介して伝達される回転動力を出力する前記PTO軸130は、適宜の伝動部材135を介して前記モア装置70の入力部に作動連結されている(図1参照)。
【0045】
次に、前記主油圧モータ本体50(1)について説明する。
図3に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、前記主油圧モータ本体50(1)として前記一対の主駆動輪30(1)をそれぞれ駆動する左側及び右側の2つの油圧モータ本体50R(1),50L(1)を有し、且つ、前記副油圧モータ本体50(2)として前記一対の副駆動輪30(2)をそれぞれ駆動する左側及び右側の2つの油圧モータ本体50R(2),50L(2)を有している。
【0046】
詳しくは、前記主油圧モータ本体50(1)として作用する2つの油圧モータ本体50L(1),50R(1)は、前記一対の主作動油ライン600(1)を介して並列状態で前記主油圧ポンプ本体40(1)に流体接続されている。
一方、前記副油圧モータ本体50(2)として作用する2つの油圧モータ本体50L(2),50R(2)は、前記一対の副作動油ライン600(2)を介して並列状態で前記副油圧ポンプ本体40(2)に流体接続されている。
【0047】
前記4つの油圧モータ本体は同一構成を有しており、それぞれ、ホイールモータ装置200の一構成部材を形成している。
即ち、前記作業車輌1は、前記油圧モータ本体を含む4つの前記ホイールモータ装置200を備えており、前記4つのホイールモータ装置200がそれぞれ前記一対の主駆動輪30(1)及び前記一対の副駆動輪30(2)を駆動するように構成されている。
【0048】
図4に、前記副駆動輪30(2)として作用する前輪を駆動する前記ホイールモータ装置200(以下、適宜、副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)という)の縦断面図を示す。
図3及び図4に示すように、前記ホイールモータ装置200は、対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)を含む油圧モータユニット300と、前記油圧モータ本体50(1),50(2)の回転動力を減速する減速ギヤ機構410を有する減速ギヤユニット400と、前記減速ギヤ機構410によって減速された回転動力を対応する駆動輪30(2)へ向けて出力する出力部材490とを備えている。
【0049】
前記油圧モータユニット300は、図3及び図4に示すように、対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)と、前記油圧モータ本体50(1),50(2)を相対回転不能に支持するモータ軸310と、前記油圧モータ本体50(2)を収容すると共に前記モータ軸310を軸線回り回転自在に支持するモータケース320とを有している。
【0050】
前記モータケース320は、対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)が挿通可能な開口が設けられた中空のモータケース本体321と、前記開口を閉塞するように前記モータケース本体321に着脱可能に連結されるモータ側ポートブロック325とを備えている。
【0051】
図3に示すように、前記モータケース320(本実施の形態においては前記モータ側ポートブロック325)には、一対のモータ側作動油路660が形成されている。
前記モータ側作動油路660は、車輌前進時にそれぞれ高圧及び低圧となるモータ側前進時高圧油路660H及びモータ側前進時低圧油路660Lを有している。
前記モータ側前進時高圧油路660Hは、一端部が対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)の車輌前進時吸引側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されてモータ側前進時高圧ポート661Hを形成している。
前記モータ側前進時低圧作動油路660Lは、一端部が対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)の車輌前進時吐出側に流体接続され且つ他端部が外表面に開口されてモータ側前進時低圧ポート661Lを形成している。
【0052】
図3に示すように、前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)における前記一対のモータ側作動油路660は前記一対の副作動油ライン600(2)の一部を形成する。
詳しくは、前記一対の副作動油ライン600(2)は、前記一対の副ポンプ側作動油路610(2)と、前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)における前記一対のモータ側作動油路660と、前記一対の副ポンプ側作動油路610(2)及び前記一対のモータ側作動油路660の間を流体接続する一対の副駆動輪側作動油配管670(2)とを有している。
【0053】
前記一対の副駆動輪側作動油配管670(2)は、副駆動輪側前進時高圧配管670H(2)及び副駆動輪側前進時低圧配管670L(2)を含んでいる。
前記副駆動輪側前進時高圧配管670H(2)は、一端部が前記副ポンプ側前進時高圧ポート611H(2)に流体接続され且つ他端部が2方向に分岐されて前記一対の副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)におけるモータ側前進時高圧ポート661Hにそれぞれ流体接続されている。
同様に、前記副駆動輪側前進時低圧配管670L(2)は、一端部が前記副ポンプ側前進時低圧ポート611L(2)に流体接続され且つ他端部が2方向に分岐されて前記一対の副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)におけるモータ側前進時低圧ポート661Lにそれぞれ流体接続されている。
【0054】
一方、前記主駆動輪30(1)として作用する後輪を駆動する前記ホイールモータ装置200(以下、適宜、主駆動輪側ホイールモータ装置200(1)という)における前記一対のモータ側作動油路660は前記一対の主作動油ライン600(1)の一部を形成している。
詳しくは、前記一対の主作動油ライン600(1)は、前記一対の主ポンプ側作動油路610(1)と、前記主駆動輪側ホイールモータ装置200(1)における前記一対のモータ側作動油路660と、前記一対の主ポンプ側作動油路610(1)及び前記一対のモータ側作動油路660をそれぞれ流体接続する一対の主駆動輪側作動油配管670(1)とを有している。
【0055】
前記一対の主駆動輪側作動油配管670(1)は、主駆動輪側前進時高圧配管670H(1)及び主駆動輪側前進時低圧配管670L(1)を含んでいる。
前記主駆動輪側前進時高圧配管670H(1)は、一端部が前記主ポンプ側前進時高圧ポート611H(1)に流体接続され且つ他端部が2方向に分岐されて前記一対の主駆動輪側ホイールモータ装置200(1)におけるモータ側前進時高圧ポート661Hにそれぞれ流体接続されている。
同様に、前記主駆動輪側前進時低圧配管670L(1)は、一端部が前記主ポンプ側前進時低圧ポート611L(1)に流体接続され且つ他端部が2方向に分岐されて前記一対の主駆動輪側ホイールモータ装置200(1)におけるモータ側前進時低圧ポート661Lにそれぞれ流体接続されている。
【0056】
前記モータ軸310は、図4に示すように、対応する駆動輪30(1),30(2)に近接する側の第1端部311が外方へ延在された状態で前記モータケース320に軸線回り回転自在に支持されており、前記第1端部311が対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)の回転動力を出力する出力端部として作用している。
【0057】
本実施の形態においては、前記モータ軸310は、対応する駆動輪30(1),30(2)とは反対側の第2端部312も外方へ延在されており、前記第2端部312は前記ホイールモータ装置200に付設されるブレーキ機構500の被作動部として作用している。
【0058】
即ち、前記ホイールモータ装置200は、図4に示すように、前記構成要件に加えて、前記ブレーキ機構500を備えている。
前記ブレーキ機構500は、前記減速ギヤ機構410によって減速される前の前記モータ軸310に対して選択的に制動力を付加し得るように構成されている。
【0059】
斯かる構成によれば、前記ブレーキ機構500に必要とされるブレーキ容量を小さくすることができ、前記ブレーキ機構500の小型化を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、図4に示すように、前記ブレーキ機構500は内拡ドラムブレーキとされているが、これに代えて、ディスクブレーキタイプやバンドブレーキなどの他のタイプのブレーキを用いることも可能である。
【0060】
前記油圧モータ本体50(1),50(2)は、図4に示すように、前記モータ軸310に相対回転不能に支持されたモータ側シリンダブロック51と、前記モータ側シリンダブロック51に軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退可能に支持された複数のモータ側ピストン52とを備えている。
【0061】
前述の通り、本実施の形態においては、前記油圧モータ本体50(1),50(2)は固定容積型とされている。
従って、前記油圧モータユニット300は、前記構成部材に加えて、前記複数のモータ側ピストン52の進退動作範囲を固定する固定斜板330を有している。
【0062】
前記減速ギヤユニット400は、図3及び図4に示されるように、前記減速ギヤ機構410と、前記減速ギヤ機構410を収容するギヤ空間を形成するように前記モータケース320に着脱可能に連結されるギヤケース420とを備えている。
【0063】
本実施の形態においては、前記減速ギヤ機構410は、図4に示すように、直列配置された第1及び第2遊星ギヤ機構を有している。
【0064】
前記出力部材490は、前記減速ギヤ機構410によって減速された回転動力を対応する駆動輪30(1),30(2)へ向けて出力するように構成されている。
本実施の形態においては、前記出力部材490は、前記減速ギヤ機構410の出力部に連結されたフランジ部491と、前記フランジ部491から対応する駆動輪30(1),30(2)に近接する方向へ延び、自由端部が外方へ延在された出力軸部492とを有している。
図示の形態においては、前記出力軸部492及び前記フランジ部491は一体形成されている。
【0065】
なお、本実施の形態においては、前記ホイルモータ装置200における前記油圧モータ本体50はアキシャルピストン型とされているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。即ち、前記油圧モータ本体50として、ラジアルピストン型や外接ギア型、内接ギア型、ジロータ(Gerotor)型など各種の油圧モータ本体を用いることができる。
又、本実施の形態においては、前述の通り、前記ホイールモータ装置200に前記減速ギヤ機構410が備えられているが、前記減速ギヤ機構410は、例えば、前記モータ本体として低回転・高トルク型油圧モータ本体が利用されている場合には、省略され得る。
【0066】
ところで、下り坂を走行する場合には、慣性力によって前記主駆動輪30(1)及び前記副駆動輪30(2)が対応する油圧モータ本体50(1),50(2)によって駆動される回転速度よりも高速で回転し、対応する前記油圧モータ本体50(1),50(2)をポンプ作用させる事態が生じ得る。
【0067】
このような前記油圧モータ本体50(1),50(2)のポンプ作用が生じると、前記フリーホイール現象と同様に、前記油圧モータ本体50(1),50(2)の吐出側に流体接続された一方の作動油ラインが高圧となり、該高圧側の作動油ラインから作動油のリークを招く恐れがある。
その結果、他方の負圧側作動油ラインから一方の高圧側作動油ラインへの油の循環が起こり、高圧側作動油ラインからの作動油リークが助長される。そして、最終的に、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)中の作動油量の異常減少を招き、前記主駆動輪用HST及び前記副駆動輪用HSTが制御不能状態になる。
【0068】
このような事態の発生を防止する為に、本実施の形態に係る前記作業車輌1はモータ側自吸構造を備えている。
なお、本実施の形態においては、図3に示すように、前輪を駆動するホイールモータ装置200(本実施の形態においては前輪が副駆動輪30(2)とされており、従って、前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2))にのみ前記モータ側自吸構造が備えられている。
【0069】
この理由は以下の通りである。
即ち、下り坂走行時において前記主駆動輪30(1)及び前記副駆動輪30(2)のうち進行方向前方側に位置する駆動輪により大きな慣性力が掛かる為、進行方向前方側に位置する駆動輪に対応したHSTが制御不能状態になる危険性が高いこと、及び、下り坂を後進する場合よりも下り坂を前進する場合の方が多い。従って、前記モータ側自吸構造を備えることによるコスト高騰化を可及的に防止しつつ、HST制御不能状態を有効に防止する為に、前輪を駆動する前記ホイールモータ装置200(本実施の形態においては前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2))にのみ、前記モータ側自吸構造を備えている。
当然ながら、必要及び/又は仕様に応じて、前輪を駆動するホイールモータ装置に代えて又は加えて、後輪を駆動するホイールモータ装置に前記モータ側自吸構造を備えることも可能である。
【0070】
詳しくは、図3に示すように、前輪を駆動する一対の前記ホイールモータ装置200(本実施の形態においては一対の前記副駆動輪用ホイールモータ装置200(2))の少なくとも一方の前記モータケース320には、一端部が前記モータケース320内に開口し且つ他端部が前記一対のモータ側作動油路660の少なくとも一方に流体接続されたモータ側自吸油路680と、前記モータケース320から対応するモータ側作動油路660への油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止するモータ側自吸用チェック弁685とが設けられている。
なお、本実施の形態においては、図3に示すように、前記モータ側自吸油路680の他端部は分岐されて前記一対のモータ側作動油路660の双方に流体接続されており、分岐された2つの油路の双方に前記モータ側自吸用チェック弁685が介挿されている。
【0071】
本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前記一対の前輪が前記運転席60の近傍に配設されたステアリングホイール等の操舵部材62の操作に応じて操舵される操舵輪とされ、且つ、前記一対の後輪が非操舵輪とされている。
従って、前記操舵輪を駆動するホイールモータ装置(本実施の形態においては前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2))は、前記車輌フレーム10にキングピン軸回り回動可能に支持されている。
【0072】
図5に、操舵輪として作用する前輪近傍の縦断面図を示す。
図4及び図5に示すように、前記操舵輪を駆動するホイールモータ装置200(2)には、前記モータケース320及び前記ギヤケース420によって形成されるホイールモータハウジング210を前記キングピン軸回り回動可能に前記車輌フレーム10に連結する為の取付ブラケット220が設けられている。
【0073】
前記取付ブラケット220は、図4及び図5に示すように、前記ホイールモータハウジング210に連結される本体部221と、前記本体部221から上下方向に延びて前記キングピン軸を形成する一対の枢支軸部222とを備えている。
【0074】
一方、前記車輌フレーム10には、前記一対の枢支軸部222が軸線回り回動可能に内挿される上下一対の軸受部15が設けられている。
詳しくは、図1,図4及び図5に示すように、前記車輌フレーム10は、前記駆動源20及び前記運転席60等を支持するメインフレーム11と、前記メインフレーム11に車輌前後方向に沿った回動軸12回り回動可能に連結された操舵輪側アクスルフレーム13(本実施の形態においては前輪側アクスルフレーム)とを備えている。
そして、前記操舵輪側アクスルフレーム13の左右両側に前記一対の軸受部15が設けられている。
【0075】
前記一対の操舵輪をそれぞれ駆動する左右一対の前記ホイールモータ装置200(本実施の形態においては左右一対の前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2))は、図5に示すように、対応する前記一対の軸受部15に前記一対の枢支軸部222が内挿された状態でタイロッド19を介して互いに連動連係されており、前記操舵部材62の操作に応じて前記キングピン部回りに連動して回動するようになっている。
【0076】
なお、本実施の形態においては、前記一対の枢支軸部222は前記本体部221に対して着脱可能に連結されている。
詳しくは、前記本体部221には、図4に示すように、前記一対の枢支軸部222がそれぞれ挿入される一対の軸受孔221aが設けられている。そして、前記枢支軸部222は、対応する軸受孔221aに挿入された状態で、抜け止めピン223によって前記本体部221に固定されている。
【0077】
斯かる構成を備えた前記ホイールモータ装置200(2)は、前記取付ブラケット220の前記本体部221を前記一対の軸受部15の間に位置させた状態で前記一対の枢支軸部222を上下方向外方から前記一対の軸受部221a及び前記一対の軸受孔221aに挿入させ、その後に前記抜け止めピン223によって前記枢支軸部222及び前記本体部221を連結することにより、前記操舵側アクスルケース13に前記枢支軸222回り回動に支持される。
【0078】
本実施の形態においては、前記本体部221は、前記モータケース本体321に設けられたフランジ部323bを利用して、前記モータケース320及び前記ギヤケース420によって形成される前記ホイールモータハウジング210に連結されている。
【0079】
詳しくは、図4に示すように、前記モータケース本体321は、対応する前記油圧モータ本体50(2)を囲繞する中空の周壁部322と、前記周壁部322における対応する駆動輪30(2)に近接する側の端部を閉塞する端壁部323とを備え、前記周壁部322における対応する駆動輪30(2)とは反対側に対応する前記油圧モータ本体50(2)が挿通可能な前記開口が設けられている。
前記開口は、前述の通り、前記モータ側ポートブロック325によって液密に閉塞されている。
前記端壁部323は、前記周壁部322に対応した中央部323aと、前記中央部323aから径方向外方へ延在した前記フランジ部323bとを有している。
【0080】
前記取付ブラケット220の前記本体部221は、図4に示すように、前記モータケース本体321の前記周壁部322及び前記モータ側ポートブロック325を囲繞する中空形状とされており、対応する駆動輪30(2)に近接する側の端部が前記フランジ部323bに当接された状態でボルト等の締結部材を介して前記ホイールモータハウジング210に着脱可能に連結されている。
【0081】
なお、非操舵輪を駆動する前記ホイールモータ装置200(本実施の形態においては前記主駆動輪側ホイールモータ装置200(1))は、前記メインフレーム11に直接又は間接的に固定支持される。
【0082】
本実施の形態に係る作業車輌1においては前輪が操舵輪とされているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものではなく、前輪を非操舵輪とし且つ後輪を操舵輪とすることも可能であるし、若しくは、前後輪の双方を操舵輪とすることも可能である。
【0083】
前記作業車輌1は、さらに、図3に示すように、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)における車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士の間を流体接続する前後デフロック切換弁800を備えている。
【0084】
前記前後デフロック切換弁800は、絞りが介挿された状態で対応するライン同士を流体接続する絞り接続状態と絞りが介挿されていない状態で対応するライン同士を流体接続するフル接続状態とをとり得るように構成されている。
【0085】
本実施の形態においては、図3に示すように、前記前後デフロック切換弁800は、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)における車輌前進時高圧側ライン600H(1),600H(2)同士の間に介挿された高圧側前後デフロック切換弁800Hと、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)における車輌前進時低圧側ライン600L(1),600L(2)同士の間に介挿された低圧側前後デフロック切換弁800Lとを含んでいる。
【0086】
詳しくは、前記作業車輌1は、図3に示すように、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)の車輌前進時高圧側ライン600H(1),600H(2)を連通する高圧側連通ライン810Hと、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)の車輌前進時低圧側ライン600L(1),600L(2)を連通する低圧側連通ライン810Lと、前記高圧側連通ライン810Hに介挿された前記高圧側前後デフロック切換弁800Hであって、前記高圧側連通ライン810Hを絞り状態で連通させる絞り連通状態及び絞りなし状態で連通させるフル連通状態を選択的にとり得る前記高圧側前後デフロック切換弁800Hと、前記低圧側連通ライン810Lに介挿された前記低圧側前後デフロック切換弁800Lであって、前記低圧側連通ライン810Lを絞り状態で連通させる絞り連通状態及び絞りなし状態で連通させるフル連通状態を選択的にとり得る前記低圧側前後デフロック切換弁800Lとを備えている。
【0087】
前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800Lは同期して連通状態が切り換えられるように構成されている。
【0088】
本実施の形態においては、図3に示すように、前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800Lは共に、対応する連通ライン810H,810Lを絞りを介して連通させる絞り連通位置及び絞りなしで連通するフル連通位置をとり得る弁本体を備えた電磁弁とされている。
そして、前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800Lの弁本体は、前記運転席60の近傍に配置される第1切換操作部材65(図3参照)の操作に応じた制御装置90からの制御信号に基づき同期して位置制御される。
【0089】
このように、本実施の形態に係る作業車輌1においては、前記一対の主作動油ライン60(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)における車輌前進時高圧側ライン600H(1),600H(2)同士及び車輌前進時低圧側ライン600L(1),600L(2)同士の間が、絞り接続状態及びフル接続状態を選択的にとり得る前記前後デフロック切換弁800を介して流体接続されており、これにより、路面状況に応じて、伝動効率の悪化を防止しつつ前後輪間の油圧ディファレンシャル作用を得る状態と、前後輪間の回転負荷差が極端に大きい場合であっても前記油圧ポンプ本体40から吐出される作動油の一部を高負荷側の車輪を駆動する一方の油圧モータ本体50(1),50(2)へ供給し得る状態とを選択することができる。
【0090】
即ち、従来技術として、車輌前後方向一方側及び他方側にそれぞれ配設された一対の第1駆動輪及び一対の第2駆動輪と、前記第1駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する第1油圧モータ本体と、前記第2駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する第2油圧モータ本体と、駆動源によって作動的に駆動される第1及び第2油圧ポンプ本体と、前記第1ポンプ本体及び前記第1油圧モータ本体が第1HSTを形成するように両者を流体接続する一対の第1作動油ラインと、前記第2油圧ポンプ本体及び前記第2油圧モータ本体が第2HSTを形成するように両者を流体接続する一対の第2作動油ラインとを備えた油圧四輪駆動型作業車輌において、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインのそれぞれの車輌前進時高圧側ライン同士を絞りが介挿された高圧側連通ラインを介して流体接続させ、且つ、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインのそれぞれの車輌前進時低圧側ライン同士を絞りが介挿された低圧側連通ラインを介して流体接続させた油圧四輪駆動型作業車輌が存在する。
【0091】
この従来の作業車輌は、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時定圧側ライン同士を高圧側連通ライン及び低圧側連通ラインを介して流体接続させることで、車輌旋回時における前後輪の間の旋回半径差に応じて前記第1及び第2油圧ポンプ本体の一方から吐出される作動油の一部を他方の油圧モータ本体に自動的に分配供給するという前後輪間の油圧ディファレンシャル作用(油圧センターディファレンシャル作用)を得つつ、前記連通ラインに絞りを介挿することによって、前記第1及び第2駆動輪の一方が凹部又は泥地等に入り込んで該一方の駆動輪の回転負荷が極端に小さくなった場合であっても前記第1及び第2油圧ポンプ本体から吐出される作動油の全量が該一方の駆動輪を駆動する側の一方の油圧モータ本体へ集中して供給されることを防止するというデフロック作用を得ている。
【0092】
しかしながら、前記従来の作業車輌においては、前記一対の第1作動油ライン及び前記一対の第2作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時定圧側ライン同士が、常時、絞りを介して連通された状態とされている。つまり、前記従来の作業車輌においては、走行時は常に、前記絞りによる負荷を受けた状態でしか油圧センターディファレンシャル作用を得ることができず、その結果、前記油圧ポンプ本体に負荷が掛かると共に、前記油圧モータ本体の性能を充分に引き出すことができず、伝動効率の観点で問題があった。
【0093】
これに対し、本実施の形態に係る作業車輌1においては、通常の路面を走行する通常走行時には、前記前後デフロック切換弁800をフル連通状態とさせることにより、伝動効率のロスを招くことなく前後輪間の油圧ディファレンシャル作用を得ることができ、且つ、滑りそうな路面又は前後輪の一方が凹部又は泥地等に入り込んだ場合には、前記前後デフロック切換弁800を絞り連通状態とさせることによって、油圧センターディファレンシャル作用を得つつ、前記作業車輌1が走行不能状態になることを有効に防止することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態に係る作業車輌1は、図3に示すように、前記一対の副作動油ライン600(2)のうち前記前後デフロック切換弁800を介して前記一対の主作動油ライン600(1)に流体接続される接続点605より前記副油圧モータ本体50(2)に近接する側において前記一対の副作動油ライン600(2)の各々をポンプ側ライン601(2)及びモータ側ライン602(2)に分離するように前記一対の副作動油ライン600(2)に介挿された2駆/4駆切換弁850であって、開状態及び閉状態を選択的にとり得る2駆/4駆切換弁850を備えている。
【0095】
前記2駆/4駆切換弁850は、開状態においては前記一対の副作動油ライン600(2)の各々の前記ポンプ側ライン601(2)及びモータ側ライン602(2)を流体接続させ、閉状態においては前記一対の副作動油ライン600(2)の前記ポンプ側ライン601(2)を遮断し且つ前記モータ側ライン602(2)同士を互いに対して流体接続させるように構成されている。
【0096】
斯かる2駆/4駆切換弁850を備えることにより、前記主駆動輪30(1)及び前記副駆動輪30(2)の双方を駆動する4輪駆動状態と前記主駆動輪30(1)のみを駆動する2輪駆動状態とを適宜選択することができると共に、2輪駆動状態において、前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)における油圧モータ本体50(2)が前記副駆動輪30(2)の回転に伴って従動回転することを許容することができる。
なお、2輪駆動状態においては、前記主及び副油圧ポンプ本体40(1),40(2)から吐出された作動油の全量が前記主油圧モータ本体50(1)へ供給される為、前記作業車輌1を高速走行させることができる。
【0097】
本実施の形態においては、前記2駆/4駆切換弁850は、前記一対の副作動油ライン600(2)の各々の前記ポンプ側ライン601(2)及びモータ側ライン602(2)を流体接続させる開位置及び前記一対の副作動油ライン600(2)の前記ポンプ側ライン601(2)を遮断し且つ前記モータ側ライン602(2)同士を互いに流体接続させる閉位置を選択的にとり得る弁本体を備えた電磁弁とされている。
【0098】
前記2駆/4駆切換弁850の弁本体は、前記運転席60の近傍に配置される第2切換操作部材66(図3参照)の操作に応じた前記制御装置90からの制御信号に基づき位置制御される。
【0099】
好ましくは、前記2駆/4駆切換弁850が閉状態とされると、前記前後デフロック切換弁800は自動的にフル接続状態とされるように構成される。
斯かる構成を備えることにより、2輪駆動状態における伝動効率の悪化を防止することができる。
【0100】
即ち、前記2駆/4駆切換弁850が閉状態とされた2輪駆動状態においては、前記副油圧ポンプ本体40(2)から吐出される作動油は全量が前記高圧側連通ライン810Hを介して前記一対の主作動油ライン600(1)のうち前進時高圧側ライン600H(1)に供給される。
従って、前記2駆/4駆切換弁850が閉状態とされている場合において前記前後デフロック切換弁800が絞り接続状態とされると、前記副油圧ポンプ本体40(2)から吐出される作動油の全量が絞りを介して前記前進時高圧側ライン600H(1)に供給されることになり、前記副油圧ポンプ本体40(2)及び前記主油圧モータ本体50(1)の性能を十分に引き出すことができず、その結果、伝動効率が悪化する。
【0101】
これに対し、前述の通り、前記2駆/4駆切換弁850が閉状態とされると前記前後デフロック切換弁800が自動的にフル接続状態とされるよう構成すれば、前記副油圧ポンプ本体40(2)から吐出される作動油を前記高圧側連通ライン810Hを介してスムースに前記一対の主作動油ライン600(1)における前進時高圧側ライン600H(1)に供給することができ、これにより、良好な伝動効率を得ることができる。
【0102】
好ましくは、図3に示すように、前記前後デフロック切換弁800及び前記2駆/4駆切換弁850は単一のバルブブロック870に装着される。
前記バルブブロック870は、前記一対の主駆動輪側作動油配管670(1)及び前記一対の副駆動輪側作動油配管670(2)に介挿された状態で、前記車輌フレーム10の所望箇所に設置される。
このように、前記前後デフロック切換弁800及び前記2駆/4駆切換弁850を単一のバルブブロック870に集約させることにより、前記作業車輌1における配管作業の効率化を図ることができる。
【0103】
なお、本実施の形態においては、前記前後デフロック切換弁800及び前記2駆/4駆切換弁850は共に電磁弁とされているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
例えば、前記第1切換操作部材65の操作に応じて前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800Lが同期制御されるように、前記第1切換操作部材65,前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800Lを機械式リンク機構によって作動連結することも可能である。
又、前記第2切換操作部材66の操作に応じて前記2駆/4駆切換弁850が制御されるように、両者を機械式リンク機構によって作動連結することも可能である。
【0104】
実施の形態2
以下、本発明に係る油圧四輪駆動型作業車輌の他の形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施の形態に係る油圧四輪駆動型作業車輌2における部分油圧回路図であり、前記実施の形態1における図3に対応した油圧回路図である。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0105】
前記実施の形態1に係る前記作業車輌1においては、前記一対の主駆動輪30(1)及び前記一対の副駆動輪30(2)はそれぞれ専用のホイールモータ装置200によって駆動されている。
これに対し、本実施の形態に係る作業車輌2においては、前記一対の主駆動輪30(1)はそれぞれ専用のホイールモータ装置200によって駆動されているが、前記一対の副駆動輪30(2)は単一の副油圧モータ本体50(2)から機械式ディファレンシャルギヤ機構920を介して差動伝達される回転動力によって駆動されている。
【0106】
即ち、前記作業車輌2は、実施の形態1に係る作業車輌1において、前記一対の副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)に代えて、単一のアクスル装置900を備えている。
【0107】
前記アクスル装置900は、図6に示すように、前記副油圧ポンプ本体40(2)に前記一対の副作動油ライン600(2)を介して流体接続される単一の副油圧モータ本体50(2)と、前記一対の副駆動輪30(2)にそれぞれ連結された一対の副駆動車軸35(2)と、前記副油圧モータ本体50(2)から作動的に入力される回転動力を前記一対の副駆動車軸35(2)に差動的に伝達する前記機械式ディファレンシャルギヤ機構920と、前記ディファレンシャルギヤ機構920並びに前記一対の副駆動車軸35(2)を収容するアクスルハウジング910とを備えている。
斯かる構成の前記作業車輌2においても、前記実施の形態1におけると同様の効果を得ることができる。
【0108】
なお、本実施の形態においては、前記副油圧モータ本体50(2)は油圧モータユニット300Bの一構成要素とされており、前記油圧モータユニット300Bは前記アクスルハウジング910に連結されている。
前記油圧モータユニット300Bは、前記実施の形態1に係る作業車輌1における前記副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)の油圧モータユニット300と同様、モータ側自吸構造を有している。
【0109】
又、本実施の形態に係る作業車輌2は、図6に示すように、前記前後デフロック切換弁800として、4ポート2ポジション型の単一の切換弁800Bを有している。
即ち、前記作業車輌2は、前記実施の形態1における2ポート2ポジション型の2個の切換弁(前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800L)に代えて、4ポート2ポジション型の単一の切換弁800Bを有している。
【0110】
前記単一の切換弁800Bは、前記一対の主作動油ライン600(1)及び前記一対の副作動油ライン600(2)における車輌前進時高圧側ライン600H(1),600H(2)同士及び車輌前進時低圧側ライン600L(1),600L(2)同士を絞りが介挿された状態で流体接続する絞り接続状態と、前記対応するライン同士を絞りが介挿されていない状態で流体接続するフル接続状態とをとり得るように構成されている。
【0111】
当然ながら、前記実施の形態1に係る作業車輌1において、2ポート2ポジション型の2個の切換弁(前記高圧側前後デフロック切換弁800H及び前記低圧側前後デフロック切換弁800L)に代えて、4ポート2ポジション型の単一の切換弁800Bを備えることも可能である。
【0112】
又、本実施の形態に係る作業車輌2においては、前記一対の副駆動輪30(2)が前記単一の油圧モータ本体50(2)及び前記ディファレンシャルギヤ機構920によって差動的に駆動され且つ前記一対の主駆動輪30(1)がそれぞれ一対の主駆動輪側ホイールモータ装置200(1)によって駆動されているが、本発明は斯かる形態に限定されるものでない。
【0113】
即ち、前記一対の主駆動輪30(1)を単一の油圧モータ本体50(1)及びディファレンシャルギヤ機構920によって差動的に駆動し、且つ、前記一対の副駆動輪30(2)をそれぞれ一対の副駆動輪側ホイールモータ装置200(2)によって駆動するように構成することも可能であるし、若しくは、前記一対の主駆動輪30(1)及び前記一対の副駆動輪30(2)を、それぞれ、単一の油圧モータ本体及びディファレンシャルギヤ機構を含むアクスル装置900によって駆動するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、本発明の第1実施の形態に係る油圧四輪駆動型作業車輌の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す作業車輌における油圧ポンプ本体側の油圧回路図である。
【図3】図3は、図1に示す作業車輌における油圧モータ本体側の油圧回路図である。
【図4】図4は、図1に示す作業車輌における副駆動輪として作用する前輪を駆動するホイールモータ装置の縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示す作業車輌における前輪側の部分縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施の形態に係る油圧四輪駆動型作業車輌におけるモータ側の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0115】
1,2 作業車輌
30(1),30(2) 主駆動輪,副駆動輪
40(1),40(2) 主油圧ポンプ本体,副油圧ポンプ本体
50(1),50(2) 主油圧モータ本体,副油圧モータ本体
600(1),600(2) 主作動油ライン,副作動油ライン
601(2) 副作動油ラインにおけるポンプ側ライン
602(2) 副作動油ラインにおけるモータ側ライン
800 前後デフロック切換弁
850 2駆/4駆切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌前後方向一方側及び他方側にそれぞれ配設された主駆動輪及び副駆動輪と、前記主駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する主油圧モータ本体と、前記副駆動輪を駆動する為の回転動力を出力する副油圧モータ本体と、駆動源によって作動的に駆動される一又は複数の油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体及び前記主油圧モータ本体が主駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続する一対の主作動油ラインと、前記油圧ポンプ本体及び前記副油圧モータ本体が副駆動輪用HSTを形成するように両者を流体接続し且つ前記一対の主用作動油ラインとは独立された一対の副作動油ラインとを備えた油圧四輪駆動型作業車輌であって、
前記一対の主作動油ライン及び前記一対の副作動油ラインにおける車輌前進時高圧側ライン同士及び車輌前進時低圧側ライン同士の間を前後デフロック切換弁を介して流体接続させ、
前記前後デフロック切換弁は、絞りが介挿された状態で対応するライン同士を流体接続する絞り接続状態と絞りが介挿されていない状態で対応するライン同士を流体接続するフル接続状態とをとり得るように構成されていることを特徴とする油圧四輪駆動型作業車輌。
【請求項2】
前記一対の副作動油ラインのうち前記前後デフロック切換弁を介して前記一対の主作動油ラインに流体接続される接続点より前記副油圧モータ本体に近接する側において前記一対の副作動油ラインの各々をポンプ側ライン及びモータ側ラインに分離するように前記一対の副作動油ラインに介挿され、開状態及び閉状態を選択的にとり得る2駆/4駆切換弁をさらに備え、
前記2駆/4駆切換弁は、開状態においては前記一対の副作動油ラインの各々の前記ポンプ側ライン及びモータ側ラインを流体接続させ、閉状態においては前記一対の副作動油ラインの前記ポンプ側ラインを遮断し且つ前記モータ側ラインを互いに対して流体接続させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧四輪駆動型作業車輌。
【請求項3】
前記2駆/4駆切換弁の閉状態時には前記前後デフロック切換弁がフル接続状態とされることを特徴とする請求項2に記載の油圧四輪駆動型作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262840(P2009−262840A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116601(P2008−116601)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】