説明

注出口栓

【課題】容易にプルリングを引き出し、スパウトの開口を行なうことができ、かつ、高い生産性で製造することができるプルリングつき注出口栓を提供する。
【解決手段】スパウトとキャップとからなる注出口栓であって、スパウトは、円筒形状の側壁と、側壁の内部を封鎖する隔壁と、隔壁に接続される支柱と、支柱に接続される環状のプルリングと、側壁の外面に形成される雄ねじとを備え、キャップは、天板と、天板の外周縁から垂設された周壁と、周壁の内面に設けられ、スパウトの側壁外面に形成される雄ねじと螺合する雌ねじとを備え、プルリングは、少なくとも一部がスパウトの側壁上端から突出し、スパウトとキャップとの螺合に際し、螺合完了前にキャップの天板とプルリングの任意の1点とが当接し、プルリングとキャップの天板との当接開始から螺合完了までの、キャップのスパウトに対する回転角度が180°以下である、注出口栓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や紛体を包装する容器に取り付けられる注出口栓に関する。より詳細には、スパウトとキャップとからなり、スパウトを開口させるためのプルリングを備える注出口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙パック容器に取り付けられるスパウトは、円筒状の側壁内部に環状薄肉部を有する隔壁を備え、使用開始前は該隔壁により容器開口を封止するものであった。そして、使用開始時に、支柱を介して隔壁に接続するプルリングを引っ張り、隔壁を環状薄肉部に沿って破断してスパウトを開口していた。使用後は、キャップをスパウトの側壁に螺着することで、繰り返し封止することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−84079号公報
【特許文献2】特開2009−35315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プルリングが側壁内部に沈みこんでいると、指先でプルリングを引き出し難い。容易にプルリングを引き出せるように、プルリングは側壁の上端から突出していることが好ましい。ところが、注出口栓の製造工程には、別々に成型したスパウトとキャップとを機械を用いて高速で螺合するキャッピングの工程が含まれる。すなわち、プルリングが側壁から突出していると、前記キャッピング工程において、プルリングがキャップの回転に巻き込まれて歪んだ不良品が発生しやすい。キャッピング速度を減じればこのような不良品の発生を抑えることができるが、生産性が著しく低下する。
【0005】
本発明は、プルリングの引き出しが容易であり、プルリングの変形を引き起こすことなく高い生産性で製造することができる、注出口栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、キャップ螺合時におけるキャップのスパウトに対する回転角度を調節することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
スパウトとキャップとからなる注出口栓であって、
スパウトは、円筒形状の側壁と、側壁の内部を封鎖する隔壁と、隔壁に接続される支柱と、支柱に接続される環状のプルリングと、側壁の外面に形成される雄ねじとを備え、
キャップは、天板と、天板の外周縁から垂設された周壁と、周壁の内面に設けられ、スパウトの側壁外面に形成される雄ねじと螺合する、雌ねじとを備え、
プルリングは、少なくとも一部がスパウトの側壁上端から突出し、スパウトとキャップとの螺合に際し、螺合完了前にキャップの天板とプルリングの任意の1点とが当接し、
プルリングとキャップの天板との当接開始から螺合完了までの、キャップのスパウトに対する回転角度が180°以下である、注出口栓を提供する。
【0007】
本発明は、また、
スパウトとキャップとからなる注出口栓であって、
スパウトは、円筒形状の側壁と、側壁の内部を封鎖する隔壁と、隔壁に接続される支柱と、支柱に接続される環状のプルリングと、側壁の外面に形成される雄ねじとを備え、
キャップは、天板と、天板の外周縁から垂設された周壁と、周壁の内面に設けられ、スパウトの側壁外面に形成される雄ねじと螺合する、雌ねじとを備え、
プルリングは、上端面全体がスパウトの側壁上端から突出し、スパウトとキャップとの螺合に際し、螺合完了前にキャップの天板とプルリングの上端面全体とが同時に当接し、
プルリングとキャップの天板との当接開始から螺合完了までの、キャップのスパウトに対する回転角度が210°以下である、注出口栓を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の注出口栓は、プルリングの引き出しが容易であり、プルリングの変形を引き起こすことなく高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の注出口栓を取り付けた液体用包装容器を示す斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る注出口栓を示す断面図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る注出口栓を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の注出口栓を取り付けた、カートン容器を示す斜視図である。注出口栓は、包装容器に固定されたスパウト1と、スパウトに螺合して取り付けられるキャップ2とからなる。
【0011】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る注出口栓の一例を示す断面図である。 図1に示すように、本発明の注出口栓はスパウト1とキャップ2とからなる。スパウト1は、円筒状の側壁11と、側壁11の内部を封鎖する隔壁12と、隔壁12に接続される支柱13と、支柱13に接続されるプルリング14と、隔壁11の外面に形成される雄ねじ15とを備える。
【0012】
キャップ2は、円形状の天板21と、天板21の外周縁から垂設された円筒形状の周壁22と、周壁22の内面に形成され、スパウト1の雄ねじ15と螺合される、雌ねじ23とを備える。
【0013】
スパウト1の、隔壁12の下面には、環状の薄肉部16が形成されている。薄肉部16は、隔壁12の他の部分より薄いため、外力を受けて破断しやすい。したがって、プルリング17を引っ張った場合には、隔壁12は薄肉部16に沿って破断する。このようにして隔壁12の薄肉部16で囲まれた部分を除去し、スパウト1を開口することができる。
【0014】
スパウト1を開口した後も、スパウト1とキャップ2は、それぞれ、雄ねじ15と雌ねじ23を備えているため、両者を螺合することにより繰り返しスパウト1の開口を封止することができる。なお、このような注出口栓は、スパウト1とキャップ2とを機械を用いて高速で螺合して製造し、螺合状態で容器の開口部に取り付けられる。
【0015】
プルリング14は、少なくとも一部が側壁11の上端から突出するように形成されるのが好ましい。というのは、プルリング14の一部が側壁11から突出していると、プルリング14を引き出しやすく、容易にスパウト1の開口を行なうことができる。プルリング14は、全体が側壁11から突出していることを要しないが、できるだけ多くの部分が突出しているほうが、プルリングの引き出しが容易になる。
【0016】
ところが、上述のようにプルリング14が側壁11から突出していると、キャップ2をプルリング1に螺合する際に、プルリング14とキャップの天板21とが当接することとなる。つまり、このようにねじの螺合完了前に両者が当接することは、製造過程でプルリング14がキャップ2の天板の回転に巻き込まれ、その結果、支柱13及びプルリング14に変形や破断が生じることがあるため、好ましくないとされていた。
【0017】
本発明の第1の実施形態に係る注出口栓においてプルリング14は、プルリング14と天板21との当接が、プルリングの任意の1点(図2中、当接開始点17)から開始されるように形成される。さらに、プルリング14と天板21との当接開始から、螺合完了までのキャップ2のスパウト1に対する回転角度は180°以下である。このような構成とすることにより、高速でキャップを螺合した場合でも、プルリング14が天板21の回転に巻き込まれることは極めて稀であり、支柱13及びプルリング14の変形や破断を生じることなく、効率的に注出口栓の製造を行なうことが可能である。
【0018】
螺合完了までのキャップの回転角度を180°以下にする方法として、以下の3つの方法を例示できる。
i)ねじの条数を増す
ii)ねじのリード角を大きくする
iii)i)及びii)を組み合わせる
ねじの条数を増やすと、螺合開始から完了までの回転角度を減じることができる。ねじのリード角を大きくすると、当接開始から螺合完了までの回転角度を減じることができる。iii)の1例として、ねじの条数を3条とし、リード角を5°とすることが挙げられる。
【0019】
プルリング14と天板21との当接は、図示したようにねじの螺合過程(螺合開始から螺合完了前までのいずれかの時点)に開始してもよいが、ねじの螺合開始と同時に開始してもよい。また、プルリング14と天板21の当接があった後にねじの螺合が開始してもよい。
【0020】
ねじの螺合が進むにつれ、プルリング14と天板21との当接面積が増大する。ねじの螺合完了時において、プルリング14は全周において天板21と当接していてもよく、プルリング14の一部分において天板21と当接していてもよい。
【0021】
図2は、プルリング14のうち、支柱13と反対側の部分を、支柱側に対して突出させ、これにより、当接開始点17からプルリング14と天板21との当接が開始する例を示した。しかしながら、第1の実施形態に係る本発明はこれに限定されず、プルリング14と天板21との当接が、プルリング14の任意の1点から開始される他の構成も包含する。
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る本発明の注出口栓の一例を示す断面図である。以下、第1の実施形態に係る発明と相違する点を説明する。
【0022】
第2の実施形態に係る発明は、以下の3点が相違する。
(1)プルリング14上端面全体が、スパウト1の側壁11の上端から突出していること。
(2)キャップ2の天板21と、プルリング14上端面全体とが同時に当接すること。
(3)プルリング14と天板21との当接開始から螺合完了までの、キャップ2のスパウト1に対する回転角度が210°以下であること。
【0023】
第2の実施形態に係る本発明の注出口栓では、キャップ2の回転軸を中心とする回転運動の力が、プルリング14の上端面全周に均等に働く。従って、キャップ2のスパウト1に対する回転角度がより大きくても、当接がプルリングの1点から開始される場合に比べて変形等を生じにくくなる。
【実施例】
【0024】
(実施例1〜3)
実施例1〜3は、実施形態1に係る本発明の注出口栓であり、プルリングの当接開始点とキャップ天板との当接開始から螺合完了までのキャップのスパウトに対する回転角度は、表1に示す通り、それぞれ120°、150°、180°である。
【0025】
(比較例1及び2)
比較例1及び2は、プルリングとキャップの天板との当接が、当接開始点から開始されるようにプルリングを設置したものであるが、当接開始から螺合完了までのキャップのスパウトに対する回転角度が、表1に示す通りそれぞれ、210°、240°である。
【0026】
(実施例4〜7)
実施例4〜7は、実施形態2に係る本発明の注出口栓であり、プルリングの当接開始点とキャップ天板との当接開始から螺合完了までのキャップのスパウトに対する回転角度は、表2に示す通り、それぞれ120°、150°、180°、210°である。
【0027】
(比較例3)
比較例3は、プルリングと天板との当接が、プルリングの全周において一時に開始されるように、プルリングが設置された注出口栓であり、当接開始から螺合完了までのキャップのスパウトに対する回転角度は240°である。
【0028】
(螺合試験)
実施例及1〜7及び比較例1〜3の注出口栓について、機械を用いて100個ずつ螺合して、プルリングの変形等の不具合が生じた個数を数えた。結果を表1及び表2に示す。なお、表中、高速、中速及び低速の語の定義は下記の通りである。
高速:螺合開始から螺合完了までを0.4秒で行なった。
中速:螺合開始から螺合完了までを0.8秒で行なった。
低速:螺合開始から螺合完了までを1.2秒で行なった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
実施例1〜7の注出口栓は、プルリングに指を差し入れやすく、簡易に開口できる構成でありながら、高速で螺合を行なった場合でも、変形等の不具合を生じず、効率よく生産できる注出口栓であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、酒類、飲料、調味料等の液体や、粉体を包装するための包装容器に取り付けられる注出口栓として利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 スパウト
2 キャップ
11 側壁
12 隔壁
13 支柱
14 プルリング
15 雄ねじ
16 薄肉部
17 当接開始点
21 天板
22 周壁
23 雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトとキャップとからなる注出口栓であって、
前記スパウトは、円筒形状の側壁と、前記側壁の内部を封鎖する隔壁と、隔壁に接続される支柱と、前記支柱に接続される環状のプルリングと、前記側壁の外面に形成される雄ねじとを備え、
前記キャップは、天板と、前記天板の外周縁から垂設された周壁と、前記周壁の内面に設けられ、前記スパウトの側壁外面に形成される雄ねじと螺合する、雌ねじとを備え、
前記プルリングは、少なくとも一部が前記スパウトの側壁上端から突出し、前記スパウトと前記キャップとの螺合に際し、螺合完了前に前記キャップの天板と前記プルリングの任意の1点とが当接し、
前記プルリングとキャップの天板との当接開始から螺合完了までの、前記キャップの前記スパウトに対する回転角度が180°以下である、注出口栓。
【請求項2】
スパウトとキャップとからなる注出口栓であって、
前記スパウトは、円筒形状の側壁と、前記側壁の内部を封鎖する隔壁と、隔壁に接続される支柱と、前記支柱に接続される環状のプルリングと、前記側壁の外面に形成される雄ねじとを備え、
前記キャップは、天板と、前記天板の外周縁から垂設された周壁と、前記周壁の内面に設けられ、前記スパウトの側壁外面に形成される雄ねじと螺合する、雌ねじとを備え、
前記プルリングの上端面全体が前記スパウトの側壁から突出し、前記スパウトと前記キャップとの螺合に際し、螺合完了前に前記キャップの天板と前記プルリングの上端全体とが同時に当接し、
前記プルリングとキャップの天板との当接開始から螺合完了までの、前記キャップの前記スパウトに対する回転角度が210°以下である、注出口栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136238(P2012−136238A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288907(P2010−288907)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】