説明

洋風水洗式便器

【課題】捨て水ホースの出口の汚れが生じないとともに、捨て水の落下音及び跳ね水による不具合をより一層防止できる洋風水洗式便器を提供する。
【解決手段】洋風便器本体20の上縁にリム通水路23aを形成。便器洗浄装置は洋風便器本体20の後部に設けられ、先端がリム通水路23aの後部に延在されるリム給水管88を有する。局部洗浄装置は、洋風便器本体20の後部に設けられ、温水タンク97とノズル98と、水道管90との流路の途中に設けられ、温水タンク97に供給される水量を適量に調整しつつ調整時の余剰水を捨て水として排出する流量調整弁と、流量調整弁と接続され捨て水を洋風便器本体20に案内する捨て水ホース96とを有する。この洋風水洗式便器1において、洋風便器本体20の後部には、リム通水路23aに隔てなく繋がり、リム給水管88が延在されるリム導水室10が形成され、捨て水ホース96の出口26はリム導水室10内に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋風水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な洋風水洗式便器は、洋風便器本体、便器洗浄装置及び局部洗浄装置を備えている。
【0003】
洋風便器本体は、便鉢と、便鉢の上縁に形成され、内側が便鉢の鉢面を洗浄するためのリム通水路とされたリムと、便鉢の下端に接続されたトラップとを有している。
【0004】
便器洗浄装置は、洋風便器本体の後部に設けられ、水道管から供給された洗浄水をリム通水路を介して吐水させるものである。一般的な便器洗浄装置は、先端がリム通水路の後部に延在されるリム給水管を有し、水道管から供給された洗浄水をリム給水管によって吐水させるものである。
【0005】
通常、便器洗浄タンクを有する便器洗浄装置は、洋風便器本体に固定されるベースプレート上にその便器洗浄タンクが設けられており、リム給水管はそのベースプレートを介して便器洗浄タンクに接続されている。特に、近年の便器洗浄装置は、洋風便器本体と固定される後部ベースプレートと、その後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートとを有しており、便器洗浄タンクは後部ベースプレート上に設けられている。
【0006】
また、便器洗浄タンクを有しない便器洗浄装置は、洋風便器本体に固定されるベースプレート上に水道管とリム給水管とを直結する開閉弁を有している。特に、近年の便器洗浄装置は、洋風便器本体と固定される後部ベースプレートと、その後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートとを有しており、開閉弁は後部ベースプレート上に設けられている。
【0007】
局部洗浄装置は、洋風便器本体の後部に設けられ、水道管から供給された洗浄水を温水タンクに貯留し、ノズルによって人体の局部に吐水させるものである。
【0008】
近年の洋風水洗式便器では、便器洗浄装置と局部洗浄装置とが一体に組み付けられている。そして、便器洗浄装置又は局部洗浄装置では、例えば便器洗浄タンクを有する便器洗浄装置を採用している場合、図5に模式的に示すように、水道管90にフレキシブルホース91によって給水ユニット92が接続されている。
【0009】
一般的な給水ユニット92は、便器洗浄タンク用ホース93aを介して、便器洗浄タンク89に水を分岐する分岐部93と、この分岐部93と一体をなし、水の残部が供給される流量調整部94とからなる。流量調整部94は、流量調整弁(図示しない)を内蔵しており、二つの排水口94a、94bを有している。一方の排水口94aには温水タンク用ホース95が接続され、他方の排水口94bには捨て水ホース96が接続されている。温水タンク用ホース95は温水タンク97の下方に接続されており、温水タンク97の上方は、ノズル98に接続されている。捨て水ホース96の出口96aは、ベースプレート99を貫通して洋風便器本体80のトラップ81に溜まった封水82に対面されている。なお、後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートを有する洋風水洗式便器においては、捨て水ホースの出口は前部ベースプレートを貫通して洋風便器本体80の封水82に対面されている。
【0010】
このような構成である従来の洋風水洗式便器では、便器洗浄装置が便器洗浄タンク89を有する場合には、水道管90から供給された洗浄水を便器洗浄タンク89内に一旦貯留する。そして、その洗浄水をリム給水管88によってリム通水路83a内に吐水させることにより、洋風便器本体80における便鉢84の鉢面84aを洗浄することができる。鉢面84aの洗浄が終われば、給水ユニット92の分岐部93を介して便器洗浄タンク89内に新たな洗浄水が供給される。また、便器洗浄装置が便器洗浄タンク89を有しない場合には、水道管90から供給された洗浄水を直接リム給水管88によってリム通水路83a内に吐水させることにより、鉢面84aを洗浄することができる。
【0011】
また、この洋風水洗式便器では、局部洗浄装置によって、水道管90から供給された洗浄水を適温の温水として温水タンク97に貯留する。そして、流量調整部94により流量が調整された洗浄水を温水タンク97に供給することにより、温水タンク97内の温水をノズル98から人体の局部に吐水させ、使用者の局部を洗浄することもできる。この際、給水ユニット92における流量調整部94の流量調整弁は、温水タンク用ホース95によって温水タンク97に供給する水量を適量に調整して、温水タンク97の内圧の上昇を抑制し、温水タンク97の破損を防止する。そして、調整時の余剰水は、捨て水ホース96に案内され、洋風便器本体80の封水82に捨て水として排出される。
【0012】
しかし、上記一般的な洋風水洗式便器では、捨て水ホース96の出口96aが洋風便器本体80の封水82に対面されていたため、捨て水が封水82に直接落下し、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音を生じたりする不具合がある。
【0013】
このため、特許文献1、2開示の洋風水洗式便器も提案されてはいる。
【0014】
特許文献1の洋風水洗式便器は、捨て水ホースの出口を洋風便器本体の後部の上方に配置したものである。この洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口から排出された捨て水が直接封水に落下せず、上記不具合が緩和される。
【0015】
また、特許文献2の洋風水洗式便器は、捨て水ホースの出口を洋風便器本体の後部の鉢面に沿うように配置したものである。この洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口から排出された捨て水が鉢面をなめるようにして流れ、やはり上記不具合が緩和される。
【0016】
【特許文献1】特開2004−108076号公報
【特許文献2】特開平7−259161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1の洋風水洗式便器においては、捨て水が鉢面に落下することから、その際に落下音や跳ね水が生じるおそれがあり、必ずしも上記不具合を解決することができない。
【0018】
また、特許文献1開示の洋風水洗式便器では、流量調整部から洋風便器本体の後部まで捨て水を案内するために、捨て水ホースが長くされ、かつ構成部材同士の隙間をぬう様にこれを配置しなければならない。このため、捨て水ホースの材料コストと、捨て水ホースの装着作業の煩雑さとにより、製造コストの上昇を招いてしまう。この点、特許文献2開示の洋風水洗式便器も同様である。
【0019】
さらに、特許文献2の洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口が鉢面に剥き出しになりやすく、意匠性の点で満足し難いものがあるとともに、捨て水ホースの出口に汚水が付着することにより、汚れが生じやすい。
【0020】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現し、意匠性に優れ、かつ捨て水ホースの出口の汚れが生じないとともに、捨て水の落下音及び跳ね水による不具合をより一層防止できる洋風水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の洋風水洗式便器は、便鉢と、該便鉢の上縁に形成され、内側が該便鉢の鉢面を洗浄するためのリム通水路とされたリムと、該便鉢の下端に接続されたトラップとを有する洋風便器本体と、
【0022】
該洋風便器本体の後部に設けられ、水道管から供給された洗浄水を該リム給水管によって吐水させる便器洗浄装置と、
【0023】
該洋風便器本体の後部に設けられ、該水道管から供給された該洗浄水を温水タンクに貯留し、ノズルによって人体の局部に吐水させる局部洗浄装置とを備え、
【0024】
該便器洗浄装置又は該局部洗浄装置は、該水道管との流路の途中に設けられ、該温水タンクに供給される水量を適量に調整しつつ調整時の余剰水を捨て水として排出する流量調整弁と、該流量調整弁と接続され、該捨て水を該洋風便器本体に案内する捨て水ホースとを有する洋風水洗式便器において、
【0025】
前記洋風便器本体の後部には、前記リム通水路に隔てなく繋がるリム導水室が形成され、前記捨て水ホースの出口は該リム導水室内に設けられていることを特徴とする。
【0026】
このような構成である本発明の洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口から排出された捨て水は、リム導水室からリム通水路を経由し、鉢面を伝って洋風便器本体の封水に流下する。このため、この洋風水洗式便器では、捨て水が封水に直接落下したり、鉢面に落下したりすることがなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音を生じたりする不具合を防止できる。
【0027】
また、この洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口がリム導水室内に設けられているので、捨て水ホースを従来のものよりも短くすることができ、かつ構成部材同士の隙間をぬう様に配置する必要性が低下する。このため、捨て水ホースの材料コストの削減と、捨て水ホースの装着作業の容易化とにより、製造コストの低廉化を実現できる。
【0028】
さらに、この洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口が鉢面に剥き出しになっていないので、意匠性を低下させることがなく、捨て水ホースの出口に汚水が付着することもない。このため、この洋風水洗式便器では、捨て水ホースの出口に汚れが生じない。
【0029】
したがって、本発明の洋風水洗式便器は、製造コストの低廉化を実現し、意匠性に優れ、かつ捨て水ホースの出口に汚れが生じないとともに、捨て水の落下音及び跳ね水による不具合をより一層防止できる。
【0030】
便器洗浄装置は、先端がリム通水路の後部に延在されるリム給水管を有し、水道管から供給された洗浄水をリム給水管によって吐水させるものであり得る。この場合、リム導水室にはリム給水管が延在され得る。
【0031】
便器洗浄装置は、洋風便器本体に固定されるベースプレート上に設けられ、リム給水管が接続される便器洗浄タンクを有し得る。この場合、捨て水ホースの出口は、便器洗浄タンクの裏面に位置するベースプレートを貫通してリム導水室内に設けられ得る。
【0032】
本発明の洋風水洗式便器は便器洗浄装置が便器洗浄タンクを有するものである。この場合、捨て水ホースの出口がベースプレートを貫通しているので、捨て水ホースの長さをより短くすることができ、かつ構成部材同士の隙間をぬう様に配置する必要性がさらに低下する。このため、この洋風水洗式便器は、本発明の効果を確実に奏することができる。また、この洋風水洗式便器は、ベースプレートに形成される貫通孔に捨て水ホースの出口の固定部を一体に設ける構造とすることにより、組立て作業性をも向上させることができる。
【0033】
便器洗浄装置は、洋風便器本体と固定される後部ベースプレート上に設けられ、リム給水管が接続される便器洗浄タンクを有し、局部洗浄装置は後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートを有し得る。この場合、捨て水ホースの出口は、便器洗浄タンクの裏面に位置する後部ベースプレートを貫通してリム導水室内に設けられ得る。
【0034】
このような構成である場合、本発明の洋風水洗式便器は、前部ベースプレートを上昇させることにより洋風便器本体の便器上面と前部ベースプレートとの間の清掃を容易に行うことができる。そして、捨て水ホースの出口を後部ベースプレートで貫通させているため、前部ベースプレートの上昇量が捨て水ホースの長さによって制限されず、高い自由度を実現できるとともに、逆に捨て水ホースにその上昇量に相当する余剰分を設ける必要がなくなり、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
【0035】
洋風便器本体はリム導水室を隠蔽する壁面を有し、便器洗浄装置は、壁面に固定されるベースプレート上に設けられ、水道管とリム給水管とを直結する開閉弁を有し得る。この場合、捨て水ホースの出口は、ベースプレート及び壁面を貫通してリム導水室内に設けられ得る。
【0036】
本発明の洋風水洗式便器は便器洗浄装置が便器洗浄タンクを有しないものである。この場合も、捨て水ホースの出口がベースプレート及び壁面を貫通してリム導水室内に設けられているので、捨て水ホースの長さをより短くすることができ、かつ構成部材同士の隙間をぬう様に配置する必要性がさらに低下する。このため、この洋風水洗式便器は、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0037】
便器洗浄装置は、洋風便器本体と固定される後部ベースプレート上に設けられ、水道管とリム給水管とを直結する開閉弁を有し、局部洗浄装置は後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートを有し得る。この場合、捨て水ホースの出口は、後部ベースプレート及び壁面を貫通してリム導水室内に設けられ得る。
【0038】
このような構成である場合も、本発明の洋風水洗式便器は、前部ベースプレートを上昇させることにより洋風便器本体の便器上面と前部ベースプレートとの間の清掃を容易に行うことができる。そして、捨て水ホースの出口を後部ベースプレート及び壁面で貫通させているため、前部ベースプレートの上昇量が捨て水ホースの長さによって制限されず、高い自由度を実現できるとともに、逆に捨て水ホースにその上昇量に相当する余剰分を設ける必要がなくなり、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
【0039】
本発明において、リム導水室はリム通水路に隔てなく繋がっている。ここで、リム導水室を構成する下面は、滑らかにリム通水路に繋がっていることが好ましい。また、この下面はリム導水室からリム通水路に向かって下っていることが好ましい。この場合、リム導水室内に捨て水が残存し難く、湿気や黴を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ、説明する。
【実施例1】
【0041】
図1〜3に示すように、実施例1の洋風水洗式便器1は、洋風便器本体20を備えている。また、洋風水洗式便器1は、後述する便器洗浄装置及び局部洗浄装置も備えている。
【0042】
洋風便器本体20は、便鉢24と、便鉢24の上縁に形成され、内側が便鉢24の鉢面24aを洗浄するためのリム通水路23aとされたリム23と、便鉢24の下端に接続されたトラップ21とを有している。
【0043】
洋風便器本体20の後部には、上方に向けて開放されているとともに、リム通水路23aに隔てなく繋がるリム導水室10が形成されている。そして、リム導水室10を構成する下面10aは、リム導水室10からリム通水路23aに向かって下っている。
【0044】
また、洋風便器本体20の後部には、一端がリム通水路23aの後部に延在され、他端がリム導水室10に延在されるリム給水管88が設けられている。
【0045】
さらに、洋風便器本体20の後部上面には、リム導水室10の上方を覆蓋するように後部ベースプレート29aが固定されている。後部ベースプレート29aの上には、便器洗浄タンク89が設けられており、リム給水管88は後部ベースプレート29aを介して便器洗浄タンク89に接続されている。また、後部ベースプレート29aには後述する温水タンク97が載置されている。後部ベースプレート29aの前方には、後部ベースプレート29aに対して昇降可能な前部ベースプレート29bが設けられている。
【0046】
前部ベースプレート29bには後述するノズル98が載置されている。また、前部ベースプレート29bには、便座78及び便蓋79を開閉可能に支承しつつ、洗浄タンク89、温水タンク97及びノズル98等を隠蔽するタンクカバー77が固定されている。このため、前部ベースプレート29bを後部ベースプレート29aに対して上昇させれば、タンクカバー77、便座78及び便蓋79も一体となって上昇するので、洋風便器本体20の便器上面と前部ベースプレート29bとの間を清掃し易くなっている。
【0047】
一方、水道管90にはフレキシブルホース91によって給水ユニット92が接続されている。なお、給水ユニット92は、図1及び図2では、模式的に洋風便器本体20から離れた位置に描かれているが、実際には、タンクカバー77内の後部ベースプレート29aに固定されている。
【0048】
給水ユニット92は、便器洗浄タンク用ホース93aを介して、便器洗浄タンク89に水を分岐する分岐部93と、この分岐部93と一体をなし、水の残部が供給される流量調整部94とからなる。流量調整部94は、流量調整弁(図示しない)を内蔵しており、二つの排水口94a、94bを有している。一方の排水口94aには温水タンク用ホース95が接続され、他方の排水口94bには捨て水ホース96が接続されている。温水タンク用ホース95は温水タンク97の下方に接続されており、温水タンク97の上方はノズル98に接続されている。捨て水ホース96の出口26は、後部ベースプレート29aを貫通孔29cによって貫通して洋風便器本体20のリム導水室10内に設けられている。給水ユニット92の排水口94b及び捨て水ホース96の出口26は、共に後部ベースプレート29a側にあるため、捨て水ホース96は比較的短い長さとされ、かつ構成部材同士の隙間をぬうように配置しなくてもよくなっている。
【0049】
給水ユニット92、便器洗浄タンク用ホース93a、便器洗浄タンク89及びリム給水管88により、便器洗浄装置が構成されている。この便器洗浄装置は、水道管90から供給された洗浄水をリム給水管88によって吐水させるものである。
【0050】
給水ユニット92、温水タンク用ホース95、温水タンク97、ノズル98及び捨て水ホース96により、局部洗浄装置が構成されている。この局部洗浄装置は、水道管90から供給された洗浄水を温水タンク97に貯留し、ノズル98によって人体の局部に吐水させるものである。
【0051】
このような構成である実施例1の洋風水洗式便器1では、水道管90から供給された洗浄水を便器洗浄タンク89内に一旦貯留する。そして、その洗浄水をリム給水管88によってリム通水路23a内に吐水させることにより、洋風便器本体20における便鉢24の鉢面24aを洗浄することが可能となっている。鉢面24aの洗浄が終われば、給水ユニット92の分岐部93及び便器洗浄タンク用ホース93aを介して便器洗浄タンク89内に新たな洗浄水が供給される。
【0052】
また、この洋風水洗式便器1では、局部洗浄装置によって、水道管90から供給された洗浄水を適温の温水として温水タンク97に貯留する。そして、流量調整部94により流量が調整された洗浄水を温水タンク97に供給することにより、温水タンク97内の温水をノズル98から人体の局部に吐水させ、使用者の局部を洗浄することも可能となっている。この際、給水ユニット92における流量調整部94の流量調整弁は、温水タンク用ホース95によって温水タンク97に供給する水量を適量に調整して、温水タンク97の内圧の上昇を抑制し、温水タンク97の破損を防止する。そして、調整時の余剰水は、捨て水ホース96に案内され、洋風便器本体20のリム導水室10内に設けられた捨て水ホース96の出口26から捨て水として排出される。
【0053】
さらに、この洋風水洗式便器1は、前部ベースプレート29bを上昇させることにより洋風便器本体20の便器上面と前部ベースプレート29bとの間の清掃を容易に実施可能となっている。
【0054】
ここで、この洋風水洗式便器1において、洋風便器本体20の後部には、リム通水路23aに隔てなく繋がり、リム給水管88が延在されるリム導水室10が形成され、捨て水ホース96の出口26はリム導水室10内に設けられている。
【0055】
このため、捨て水ホース96の出口26から排出された捨て水は、リム導水室10からリム通水路23aを経由し、鉢面24aを伝って洋風便器本体20の封水82に流下する。このため、この洋風水洗式便器1では、捨て水が封水82に直接落下したり、鉢面24aに落下したりすることがなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音を生じたりする不具合を防止できている。
【0056】
また、この洋風水洗式便器1では、捨て水ホース96の出口26が後部ベースプレート29aを貫通孔29cにより貫通して、リム導水室10内に設けられているので、捨て水ホース96を従来のものよりも短くすることができており、かつ構成部材同士の隙間をぬう様に配置する必要性が低下している。このため、捨て水ホース96の材料コストの削減と、捨て水ホース96の装着作業の容易化とにより、製造コストの低廉化を実現できている。
【0057】
さらに、この洋風水洗式便器1では、捨て水ホース96の出口26が鉢面24aに剥き出しになっていないので、意匠性を低下させることがなく、捨て水ホース96の出口26に汚水が付着することもない。このため、この洋風水洗式便器1では、捨て水ホース96の出口26の汚れが生じない。
【0058】
したがって、実施例1の洋風水洗式便器1は、製造コストの低廉化を実現し、意匠性に優れ、かつ捨て水ホース96の出口26の汚れが生じないとともに、捨て水の落下音及び跳ね水による不具合をより一層防止できている。
【0059】
また、この洋風水洗式便器1において、リム導水室10を構成する下面10aは、リム導水室10からリム通水路23aに向かって下っている。このため、リム導水室10内に捨て水が残存し難くなっており、湿気や黴を防止することができている。
【0060】
さらに、この洋風水洗式便器1は、捨て水ホース96の出口26を後部ベースプレート29aで貫通させているため、前部ベースプレート29bの上昇量が捨て水ホース96の長さによって制限されず、高い自由度を実現できているとともに、逆に捨て水ホース96にその上昇量に相当する余剰分を設ける必要がなくなっており、製造コストの一層の低廉化が可能となっている。
【実施例2】
【0061】
図4に示すように、実施例2の洋風水洗式便器2は、実施例1の洋風水洗式便器1に対して、便器洗浄タンク89を有しておらず、後述する便器洗浄装置が水道管90から供給された洗浄水を直接リム給水管88aによって吐水させるものである点が大きく異なる。
【0062】
洋風便器本体30は、便鉢34と、便鉢34の上縁に形成され、内側が便鉢34の鉢面34aを洗浄するためのリム通水路33aとされたリム33と、便鉢34の下端に接続されたトラップ31とを有している。
【0063】
また、洋風便器本体30は、便器洗浄タンク89を有しないことにより、洋風便器本体30の後部が実施例1の洋風便器本体20よりも小さくされている。具体的には、洋風便器本体30の後部には、リム通水路33aに隔てなく繋がるリム導水室11が形成されており、リム導水室の上方及び後方を隠蔽する壁面35を有している。そして、リム導水室11を構成する下面11aは、リム導水室11からリム通水路33aに向かって下っている。
【0064】
また、洋風便器本体30の後部には、一端がリム通水路33aの後部に延在され、他端がリム導水室11に延在されるリム給水管88aが設けられている。さらに、洋風便器本体30の後部下側にはジェット洗浄管88bの一端が設けられており、ジェット洗浄管88bの他端は便鉢34の下端に接続されまで延在され、トラップ31に固定されたノズル88cに接続されている。
【0065】
さらに、洋風便器本体30の後部上面には後部ベースプレート39aが固定されている。後部ベースプレート39aの上には、後述する開閉弁37a、37bが設けられている。なお、開閉弁37a、37bは、図4では、模式的に洋風便器本体30から離れた位置に描かれているが、実際には、カバー77a内の後部ベースプレート39aに固定されている。リム給水管88aは後部ベースプレート39aを介して開閉弁37aに接続され、ジェット洗浄管88bの一端は後部ベースプレート39aを介して開閉弁37bに接続されている。また、後部ベースプレート39aには後述する温水タンク97も載置されている。後部ベースプレート39aの前方には、後部ベースプレート39aに対して昇降可能な前部ベースプレート39bが設けられている。
【0066】
前部ベースプレート39bにはノズル98が載置されている。また、前部ベースプレート39bには、便座78及び便蓋79を開閉可能に支承しつつ、温水タンク97及びノズル98等を覆うカバー77aが固定されている。このため、前部ベースプレート39bを後部ベースプレート39aに対して上昇させれば、カバー77a、便座78及び便蓋79も一体となって上昇するので、洋風便器本体30の便器上面と前部ベースプレート39bとの間を清掃し易くなっている。
【0067】
一方、水道管90にフレキシブルホース91によって給水ユニット92が接続されている。なお、給水ユニット92は、図4では、模式的に洋風便器本体30から離れた位置に描かれているが、実際には、カバー77a内の後部ベースプレート39aに固定されている。
【0068】
給水ユニット92は、便器洗浄用ホース93bを介して開閉弁37a、37bに接続される分岐部931と、この分岐部931と一体をなし、水の残部が供給される流量調整部94とからなる。流量調整部94は、流量調整弁(図示しない)を内蔵しており、二つの排水口94a、94bを有している。一方の排水口94aには温水タンク用ホース95が接続され、他方の排水口94bには捨て水ホース96が接続されている。温水タンク用ホース95は温水タンク97の下方に接続されており、温水タンク97の上方は、ノズル98に接続されている。捨て水ホース96の出口36は、後部ベースプレート39a及び洋風便器本体30の背面側の壁面35を貫通孔39c、39dによって貫通して、洋風便器本体30のリム導水室11内に設けられている。給水ユニット92の排水口94b及び捨て水ホース96の出口36は、共に洋風便器本体30の後部付近にあるため、捨て水ホース96は比較的短い長さとされ、かつ構成部材同士の隙間をぬうように配置しなくてもよくなっている。
【0069】
給水ユニット92、便器洗浄用ホース93b、開閉弁37a、37b、リム給水管88a、ジェット洗浄管88bにより、便器洗浄装置が構成されている。この便器洗浄装置は、後部ベースプレート39a上に設けられ、水道管90から供給された洗浄水を開閉弁37a、37b、リム給水管88a及びジェット洗浄管88bによって吐水させるものである。
【0070】
給水ユニット92、温水タンク用ホース95、温水タンク97、ノズル98及び捨て水ホース96により、局部洗浄装置が構成されている。この局部洗浄装置は、水道管90から供給された洗浄水を温水タンク97に貯留し、ノズル98によって人体の局部に吐水させるものである。
【0071】
このよう構成である実施例2の洋風水洗式便器2では、水道管90から供給された洗浄水を開閉弁37a、37b、リム給水管88a及びジェット洗浄管88bによってリム通水路33a内に吐水させることにより、洋風便器本体30における便鉢34の鉢面34aを洗浄することが可能となっている。
【0072】
また、この洋風水洗式便器2では、局部洗浄装置によって、水道管90から供給された洗浄水を適温の温水として温水タンク97に貯留する。そして、流量調整部94により流量が調整された洗浄水を温水タンク97に供給することにより、温水タンク97内の温水をノズル98から人体の局部に吐水させ、使用者の局部を洗浄することも可能となっている。この際、給水ユニット92における流量調整部94の流量調整弁は、温水タンク用ホース95によって温水タンク97に供給する水量を適量に調整して、温水タンク97の内圧の上昇を抑制し、温水タンク97の破損を防止する。そして、調整時の余剰水は、捨て水ホース96に案内され、洋風便器本体30のリム導水室11内に設けられた捨て水ホース96の出口36から捨て水として排出される。
【0073】
ここで、この洋風水洗式便器2において、洋風便器本体30は、リム導水室11を隠蔽する壁面35を有し、便器洗浄装置は、洋風便器本体30と固定される後部ベースプレート39a上に設けられ、水道管90とリム給水管88aとを直結する開閉弁37a、37bを有している。そして、捨て水ホース96の出口36は、後部ベースプレート39a及び壁面35を貫通孔39c、39dによって貫通してリム導水室11内に設けられている。
【0074】
このため、捨て水ホース96の出口36から排出された捨て水は、リム導水室11からリム通水路33aを経由し、鉢面34aを伝って洋風便器本体30の封水82に流下する。このため、この洋風水洗式便器2でも、捨て水が封水82に直接落下したり、鉢面34aに落下したりすることがなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音を生じたりする不具合を防止できている。
【0075】
また、この洋風水洗式便器2では、捨て水ホース96の出口36が後部ベースプレート39a及び壁面35を貫通孔39c、39dによって貫通して、リム導水室11内に設けられているので、捨て水ホース96を従来のものよりも短くすることができており、かつ構成部材同士の隙間をぬう様に配置する必要性が低下している。このため、捨て水ホース96の材料コストの削減と、捨て水ホース96の装着作業の容易化とにより、製造コストの低廉化を実現できている。
【0076】
さらに、この洋風水洗式便器2でも、捨て水ホース96の出口36が鉢面34aに剥き出しになっていないので、意匠性を低下させることがなく、捨て水ホース96の出口36に汚水が付着することもない。このため、この洋風水洗式便器2でも、捨て水ホース96の出口36の汚れが生じない。
【0077】
したがって、実施例2の洋風水洗式便器2も、製造コストの低廉化を実現し、意匠性に優れ、かつ捨て水ホース96の出口36に汚れが生じないとともに、捨て水の落下音及び跳ね水による不具合をより一層防止できている。
【0078】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例1の洋風水洗式便器の模式図である。
【図2】実施例1の洋風水洗式便器の要部拡大模式図である。
【図3】実施例1の洋風水洗式便器に係り、図1のA−A断面図である。
【図4】実施例2の洋風水洗式便器の模式図である。
【図5】従来の洋風水洗式便器の模式図である。
【符号の説明】
【0081】
10、11…リム導水室
10a、11a…リム導水室を構成する下面
20、30…洋風便器本体
21、31…トラップ
23、33…リム
23a、33a…リム通水路
24、34…便鉢
24a、34a…鉢面
29a、39a…後部ベースプレート
29b、39b…前部ベースプレート
35…壁面
37a、37b…開閉弁
88、88a…リム給水管
89…便器洗浄タンク
90…水道管
94…流量調整部
88、88a、89、92、93a、93b、37a…便器洗浄装置(88、88a…リム給水管、89…便器洗浄タンク、92…給水ユニット、93a…便器洗浄タンク用ホース、93b…便器洗浄用ホース、37a…開閉弁)
92、95、96、97、98、37b…局部洗浄装置(92…給水ユニット、95…温水タンク用ホース、96…捨て水ホース、97…温水タンク、98…ノズル、37b…開閉弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、該便鉢の上縁に形成され、内側が該便鉢の鉢面を洗浄するためのリム通水路とされたリムと、該便鉢の下端に接続されたトラップとを有する洋風便器本体と、
該洋風便器本体の後部に設けられ、水道管から供給された洗浄水を該リム通水路によって吐水させる便器洗浄装置と、
該洋風便器本体の後部に設けられ、該水道管から供給された該洗浄水を温水タンクに貯留し、ノズルによって人体の局部に吐水させる局部洗浄装置とを備え、
該便器洗浄装置又は該局部洗浄装置は、該水道管との流路の途中に設けられ、該温水タンクに供給される水量を適量に調整しつつ調整時の余剰水を捨て水として排出する流量調整弁と、該流量調整弁と接続され、該捨て水を該洋風便器本体に案内する捨て水ホースとを有する洋風水洗式便器において、
前記洋風便器本体の後部には、前記リム通水路に隔てなく繋がるリム導水室が形成され、前記捨て水ホースの出口は該リム導水室内に設けられていることを特徴とする洋風水洗式便器。
【請求項2】
前記便器洗浄装置は、先端が前記リム通水路の後部に延在されるリム給水管を有し、前記水道管から供給された前記洗浄水を該リム給水管によって吐水させるものであり、
前記リム導水室には該リム給水管が延在されることを特徴とする請求項1記載の洋風水洗式便器。
【請求項3】
前記便器洗浄装置は、前記洋風便器本体に固定されるベースプレート上に設けられ、前記リム給水管が接続される便器洗浄タンクを有し、前記捨て水ホースの出口は、該便器洗浄タンクの裏面に位置する該ベースプレートを貫通して前記リム導水室内に設けられていることを特徴とする請求項2記載の洋風水洗式便器。
【請求項4】
前記便器洗浄装置は、前記洋風便器本体と固定される後部ベースプレート上に設けられ、前記リム給水管が接続される便器洗浄タンクを有し、前記局部洗浄装置は該後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートを有し、前記捨て水ホースの出口は、該便器洗浄タンクの裏面に位置する該後部ベースプレートを貫通して前記リム導水室内に設けられていることを特徴とする請求項3記載の洋風水洗式便器。
【請求項5】
前記洋風便器本体は前記リム導水室を隠蔽する壁面を有し、前記便器洗浄装置は、該壁面に固定されるベースプレート上に設けられ、前記水道管と前記リム給水管とを直結する開閉弁を有し、前記捨て水ホースの出口は、該ベースプレート及び該壁面を貫通して前記リム導水室内に設けられていることを特徴とする請求項2記載の洋風水洗式便器。
【請求項6】
前記便器洗浄装置は、前記洋風便器本体と固定される後部ベースプレート上に設けられ、前記水道管と前記リム給水管とを直結する開閉弁を有し、前記局部洗浄装置は該後部ベースプレートに対して昇降可能な前部ベースプレートを有し、前記捨て水ホースの出口は、該後部ベースプレート及び該壁面を貫通して前記リム導水室内に設けられていることを特徴とする請求項5記載の洋風水洗式便器。
【請求項7】
前記リム導水室を構成する下面は、該リム導水室から前記リム通水路に向かって下っていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の洋風水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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