説明

流量調整弁

【課題】パルス電流のパルス巾を可変とするデューティ比による開弁時間制御を用い、アーマチュアの定ストローク作動により作動の安定性と、アーマチュアの定ストローク量を規制する部材との衝突音の低減を図ること。
【解決手段】通孔8内にボール弁13が着座され、このボール弁13がプッシュロッド26を介して開閉させるアーマチュア25を有し、このアーマチュア25は、その上方動がスティタ6の下端に固装のエラストマ製のストッパ23に規制され、その下方動が、その下端に固着のエラストマ製の閉止弁27を介してアジャスタ34に規制され、その間を定ストロール運動される。定ストロークから作動の安定性が図られ、またエラストマ製のストッパ23と閉止弁27により当接時に発生する衝突音を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流量を調整する弁で、主に石油給湯機、石油暖房機等の石油燃焼機器の燃油量の可変制御や、ディーゼルエンジンの排ガス中の窒素酸化物(NO)の還元装置の尿素水の噴射量の制御に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、石油給湯機、石油暖房機等の石油燃焼機器の燃料油量の可変制御装置は、例えば特許文献1に示すように公知であり、図示しないが、燃料タンクから往路を介して導入された燃料がポンプで加圧され、戻り式加圧噴霧ノズルに供給されるが、該ノズルの近傍から戻し路が接続され、この戻し路に流量調整弁(比例制御弁)が設けられ、その端は前記ポンプの吸入側に接続されて構成される。即ち比例制御弁に印加される電流値を制御することで、戻し路内を流れる圧力が変化され、もってノズルから噴霧量が無段階に変化されている。
【0003】
このような従来例を概略図として図示すると図2に表され、戻り式加圧噴霧ノズルからの噴霧量(Qn)は、比例制御弁(PRV)の電流値(直流)を制御することによって戻し路内圧力(P)を低い圧力(PL)から高い圧力(PH)まで調節することで得られ、その特性は図3に示され、bとc間で行われている。
【0004】
しかしながら、ポンプ(pump)が何らの原因で図3に示されるように、その吐出圧力が例えば0.98MPaから0.882MPaに低下した場合に、その運転特性はb′とC′に移行してしまい、噴射量(Qn)は、QnH′からQnL′−QnL分増加してしまう。この原因は、ポンプ(pump)の吐出圧力が低下したにも拘わらず比例制御弁(PRV)の特性、即ち圧力差による自動開閉弁であるため、戻し路内圧力(P)がほとんど変化しないことにある。従って、ポンプ(pump)の吐出圧力が低下しても戻し路内圧は殆ど変化せず空燃比を悪化させる原因となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このために、前記の特許文献1が開発され提案された。即ち、流量制御弁を、戻し路となる流路に通孔を持つ弁座と、この弁座に着座する弁体と、この弁体を開閉させるプランジャとを配し、該プランジャは対向するばねにて支持されると共に流量調整弁の電磁コイルに所望のパルスを印加して、前記弁体をデューティによる開弁時間制御したことにある。これにより、弁体の開弁時間制御がなされ、ポンプの吐出圧力の低下にあっても、燃料噴霧量に変化を与えず、不具合が防止された。
【特許文献1】特開2003−262330号公報
【0006】
また、前述の流量調整弁に代えて自動車用の内燃機関用の燃料噴射用のインジェクタを用いることも試みられているが、この場合には、戻し路にパルスにて強制的に開弁時間制御しているために、噴霧量も変化せず、同様に不都合は起きていない。
【0007】
しかしながら、インジェクタを用いた場合には、運転音が極めて大きく、家庭用の燃焼機器としては耐え難いものであり、その対策として、インジェクタの全体を覆う防音箱を付けているが、部品増から、コスト増となる不利益が生じていた。
【0008】
前記した特許文献1もフッ素樹脂製の弁体29が金属製の弁座30に当接を繰り返すため、運転音も大きくなる欠点を有していた。また、弁体29を往復動させる電磁プランジャ24は、上下のばね25,26で支えられているため、正確な定ストロークでなく、開弁時間制御の作動の安定性に問題点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、弁体の開閉を司るアーマチュアを定ストロークさせて当該弁体の開閉動作の安定性を向上させ、併せてアーマチュアの定ストローク時に生じる運転音の低減を図ることを目的とする。
【0010】
この発明に係る流量調整弁は、一方を上流側とし、他方を下流側とするシリンダと、このシリンダ内に通孔を持ちボール弁が着座する弁座が設けられたスティタと、前記ボール弁をプッシュロッドを介して強制的に開閉させるアーマチュアと、このアーマチュアを稼働させる電磁コイルと、前記スティタの下流端に設けられ前記アーマチュアの上流端と対峙するエラストマ製のストッパと、前記アーマチュアの下流端に設けられたエラストマ製の閉止弁と、この閉止弁が着座し通孔を持ち弁座となるアジャスタとより成ることにある(請求項1)。
【0011】
これにより、電磁コイルにパルス電流が印加され、そのデューティ比による開弁時間制御がなされるが、アーマチュアは、その上方動がスティタの下端に固装のエラストマ製のストッパに規制され、またその下方動が、その下端に固着のエラストマ製の閉止弁を介してアジャスタに規制され、その間を定ストローク運動される。
【0012】
そして、このアーマチュアの動きは、プッシュロッドを介して伝えられ、ボール弁を強制的に開閉されることから、内部圧力に影響を受けずに制御量(流出流量)を安定させることができる。そしてまた、アーマチュアの稼働のたびに上方動ではエラストマ製のストッパに当たり、下方動ではエラストマ製の閉止弁を介してアジャスタに当たることから、当接時に発生する運転音が小さくなり、家庭用の燃焼機器にも使用が可能とすることができる。
【0013】
また、前記アジャスタは、シリンダの軸方向に変位するように弁本体に螺合されていることにあり(請求項2)、前記アーマチュアのストローク量を任意に変化させることができる。
【0014】
前記アジャスタに形成の通孔にはオリフィスを有しており(請求項3)、脈動が平滑され、またアジャスタに形成の通孔の下流には、ポンプ本体に設けられたタンク側継手とポンプ側継手とをつなぐ流路に接続されている(請求項4)。戻り式圧力噴霧ノズルに用いられる時には、前記タンク側継手にタンクが、そしてポンプ側継手にポンプが接続されて、メイン流路の一部を構成している。
【0015】
前記アーマチュアは戻しばねにより反スティタ方向に押圧され、前記エラストマ製の閉止弁が前記アジャスタに設けられた弁座に着座されていて(請求項5)、本発明の流量調整弁の停止時には、閉止弁が着座して通孔が閉じられ、流体の流動が止められる。
【0016】
前記ボール弁は、戻しばねにより、前記スティタの弁座に着座され、プッシュロッドを介して突き上げられて強制的に開弁されている。この戻しばねがあることで(請求項6)、バタ付くことなく閉止時の衝突音の発生が回避される。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、アーマチュアが定ストロークし、それに伴ってボール弁が強制的に開閉制御されることから、調節流量が内部圧力に影響されず制御量を安定させることができる。それから、アーマチュアは稼働のたびに一方ではエラストマ製のストッパに当たり、他方ではエラストマ製の閉止弁を介してアジャスタに当たることから、当接時に発生する運転音を低減させて、家庭用の燃焼機器にも採用できる(請求項1)。
【0018】
また、アーマチュアの下流側に設けられたエラストマ製の閉止弁が着座するアジャスタは、前記シリンダの軸方向に変位が可能であり、前記アーマチュアのストローク量を変更することができる(請求項2)。
【0019】
アジャスタに形成の通孔に設けられるオリフィスにより、脈動を平滑させる効果を有している(請求項3)。
【0020】
前記ボール弁は、戻しばねにより、前記スティタの弁座に着座されているから、バタツキを防いで稼働音の発生を抑えることができる(請求項6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
【0022】
図1において、流量調整弁1が示され、ボビン2に巻装の電磁コイル3を備え、この電磁コイル3の上端及びケースより成るヨーク4が設けられている。また前記ボビン2の中央を貫通して形成された貫通孔には、非磁性材のシリンダ5が挿入され、このシリンダ5の上端には磁性材のスティタ6が内嵌されている。
【0023】
スティタ6は、磁性材で製造され、ほぼ円筒状の部材で、中心に通孔8を有し、上流側は大径部8aとなり、下流側は小径部8bとなっている。前記大径部8aと小径部8bとの変化部位は、下記するボール弁13が着座する弁座9となっている。この弁座9は上流に向かって広がる漏斗状の形状となっている。
【0024】
ボール弁13は、非磁性材料より成る球で、戻しばね14により押圧され、前記した弁座9に着座されている。このボール弁13の弁座9への着座により流体の通過が阻止されている。15は前記戻しばね14の抑え、16はフィルタで、前記通孔8の大径部8a内に装着されている。
【0025】
また、前記スティタ6の上流側には、戻り側継手18が固着され、この継手18内に前記通孔8と連通する通孔19が形成され、その一端は、流入口20に至っているが、この通孔19内に逆流防止の逆止弁21が設けられている。
【0026】
前記したスティタ の小径部8b内には、下記するプッシュロッド26と戻しばね28が配されると共に、下流端にゴムなどのエラストマ製のストッパ23が固装され、下記するアーマチュア25の上端と対峙している。
【0027】
アーマチュア25は、円柱状で磁性材で製造され、上端にプッシュロッド26がその軸方向に突設され、また下端にゴムなどのエラストマ製の閉止弁27が固装されており、前記スティタ6の下端の前記シリンダ5内に摺動自在に配されている。前記プッシュロッド26は、前記ボール弁13に当接していて、前記アーマチュア25の稼働により前記ボール弁13は開閉される。
【0028】
このアーマチュア25は、前記スティタ6との間で前記小径部8b内に配された戻りばね28により押圧され、前記閉止弁27が下記するアジャスタ34に形成の弁座36に着座されている。このアーマチュア25は外側で縦方向に縦溝29が形成されていて、この縦溝29は、その上方で前記小径部8bに、その下方で下記するアジャスタ34の通孔35に連通している。
【0029】
このアーマチュア25は、電磁コイル3にパルス巾が変化される周期的な高周波(例えば50HZ)パルス電流(PWM)が印加されることから、前記プッシュロッド26を介してボール弁13が振動(稼働)し、デューティ比による開弁時間制御が行われる。
【0030】
弁本体31は、ダイキャスト加工による非磁性材で製造され、縦孔32内に前記シリンダ5の下端が挿入されると共にアジャスタ34が配されている。
【0031】
このアジャスタ34は非磁性材で製造され、円柱状で、その軸方向に通孔35を有し、上端が前記閉止弁27の弁座36となっている。それから、通孔35の中程に脈動平滑のオリフィス38を備えている。そして、この通孔35は中程で径方向の横孔35aとなっている。さらに下端が螺子部34aとなっていて、弁本体31と螺合していて、外部への露出部位のドライバー溝から回転力を加えれば、アジャスタ34は縦孔32内を動き、弁座36の位置を変化させることができる。即ち、アーマチュア25のストローク量を調節することができる。
【0032】
40はタンク側継手、41はポンプ側継手で、流路42a,42bが形成され、前記した通孔35の横孔35aに接続されている。
【0033】
前述の構成において、流量調整弁1の稼働は、電磁コイル3にパルス巾が変化される周期的な高周波(例えば50HZ)パルス電流(PWM)が印加されると、デューティ比による開弁時間制御が行われ、その開弁時間により戻り路を通って戻される量が決定される。
【0034】
アーマチュア25は、上死点では上端がエラストマ製のストッパ23に当たり、また下死点では下端がエラストマ製の閉止弁27を介してアジャスタ34の弁座36に当たり、定ストローク作動で、開弁時間制御が行われて、安定した作動が行われる。
【0035】
アーマチュア25は上死点のみならず下死点時にもエラストマ製のストッパ23と閉止弁27に衝突するため、その衝突音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係る流量調整弁の断面図である。
【図2】石油燃焼器用バーナの燃料流量制御装置の構成図で、戻し路に従来例の比例制御弁を設けた例である。
【図3】同上の特性線図で、電磁ポンプの能力が0.98MPaと0.882MPaとにおける噴霧量と戻し路内の圧力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 流量調整弁
3 電磁コイル
5 シリンダ
6 スティタ
8 通孔
9 弁座
13 ボール弁
14 戻しばね
20 流入口
23 ストッパ
25 アーマチュア
26 プッシュロッド
27 閉止弁
28 戻りばね
29 縦溝
31 弁本体
32 縦孔
34 アジャスタ
36 弁座
38 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方を上流側とし、他方を下流側とするシリンダと、このシリンダ内に通孔を持ちボール弁が着座する弁座が設けられたスティタと、前記ボール弁をプッシュロッドを介して強制的に開閉させるアーマチュアと、このアーマチュアを稼働させる電磁コイルと、前記スティタの下流端に設けられ前記アーマチュアの上流端と対峙するエラストマ製のストッパと、前記アーマチュアの下流端に設けられたエラストマ製の閉止弁と、この閉止弁が着座し通孔を持ち弁座となるアジャスタとより成ることを特徴とする流量調整弁。
【請求項2】
前記アジャスタはシリンダの軸方向に変位するように弁本体に螺合されていることを特徴とする請求項1記載の流量調整弁。
【請求項3】
前記アジャスタに形成の通孔にはオリフィスを有することを特徴とする請求項1記載の流量調整弁。
【請求項4】
前記アジャスタに形成の通孔の下流は、弁本体に設けられたタンク側継手とポンプ側継手とをつなぐ流路に接続されていることを特徴とする請求項1又は3記載の流量調整弁。
【請求項5】
前記アーマチュアは戻しばねにより反スティタ方向に押圧され、前記エラストマ製の閉止弁が前記アジャスタに設けられた弁座に着座されていることを特徴とする請求項1記載の流量調整弁。
【請求項6】
前記ボール弁は、戻しばねにより、前記スティタの弁座に着座されていることを特徴とする請求項1記載の流量調整弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−210040(P2009−210040A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54405(P2008−54405)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000228693)日本コントロール工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】