説明

消火設備

【課題】通常時は消火用水のみを充水していても、火災時に作動したヘッドから直ちに消火剤水溶液を散水でき消火遅れを最小限ととする消火設備を提供する。
【解決手段】火災時に、消火ポンプ10により加圧供給される消火用水に薬剤タンク46から供給された消火剤45を混合器で混合し、分岐管28に接続された複数の閉鎖型ヘッド34の中の火災により作動した閉鎖型ヘッドに消火剤水溶液を供給して散水させる。分岐管28の末端に末端制御弁42を設ける。監視制御盤50は、通常時、末端制御弁42を閉状態に維持し、流水検知装置32から流水検知信号が得られず火災感知器44の火災信号が得られた際に、末端制御弁42を所定時間のあいだ開状態に制御し、分岐管38内の消火用水を排水して混合器26からの消火剤水溶液に置き換えた後に閉状態に復旧制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された消火薬剤を混合してヘッドから消火剤水溶液を散水する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火用水に消火剤を混合した消火剤水溶液を放射する閉鎖型噴霧消火設備として予作動式の消火設備が知られている(特許文献1)。この従来の消火設備にあっては、ポンプからの配管を消火剤タンクからの水成泡消火剤を混合する混合器を通して予作動式の流水検知装置の1次側に接続し、その2次側配管に閉鎖型ヘッドを接続し、更に閉鎖型ヘッドの放射区画に火災感知器を設置している。
【0003】
このような消火設備にあっては、消火剤水溶液を長期間にわたり配管内に充水しておくと、配管設備に悪影響を及ぼす可能性があり、また、消火剤水溶液が希釈化されて消火能力が低下する可能性もある。
【0004】
そこで、消火設備の使用開始時には、流水検知装置を開弁し、消火剤タンクの消火剤供給管に設けた開閉弁を閉じた状態でポンプを運転し、流水検知装置の2次側配管に消火用水だけを充水する。2次側配管への消火用水の充水が済んだら、流水検知装置を閉弁し、消火剤供給管の開閉弁は開いて消火剤を混合器に供給可能な状態とする。
【0005】
火災が発生すると、火災感知器からの火災信号により制御盤は流水検知装置に信号を送って開弁すると共にポンプを起動し、この状態で閉鎖型ヘッドが火災を感知すると開放作動し、混合器により消火剤を消火用水に混合した消火剤水溶液が作動した噴霧ヘッドから散水される。
【特許文献1】特開2002−291931号公報
【特許文献2】特開2001−238977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の消火設備にあっては、通常時、配管内には消火用水のみが充水された状態にあるため、火災により閉鎖型ヘッドが作動した場合、まず混合器の2次側の配管に充水している消火用水の散水が終了しないと混合器からの消火剤水溶液の散水に切り替わらず、ヘッドが作動してから消火効果の高い消火剤水溶液の散水が始まるまでに時間遅れがある。特に、混合器からヘッドまでの配管距離が長くなると、ヘッドが作動してから消火剤水溶液が散水されるまでの時間遅れがかなり大きくなる問題がある。
【0007】
本発明は、通常時は消火用水のみを充水して消火剤水溶液による配管への悪影響を防ぐと共に、火災時には作動したヘッドから直ちに消火剤水溶液を散水可能とし、消火遅れを最小限とした消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、 火災時に、消火ポンプにより加圧供給された消火用水に薬剤タンクから供給された消火剤を混合器で混合し、分岐管に接続されたヘッドに消火剤水溶液を供給して散水させる消火設備に於いて、
ヘッドを設置した区画の火災を検出して火災信号を出力する火災感知器と、
分岐管に設けられ、分岐管内の流水を検知して流水検知信号を出力する流水検知装置と、
流水検知装置の1次側配管の圧力が所定値以下に低下したことを検出して消火ポンプを起動するポンプ制御部と、
分岐管に設けられ、分岐管を排水管へ接続もしくは非接続に制御する制御弁と、
通常時は制御弁を排水管とは非接続状態に維持し、流水検知信号が得られず火災信号が得られた際に、制御弁を所定時間のあいだ排水管と接続状態に制御し、分岐管内の消火用水を排水して混合器からの消火剤水溶液に置き換えた後に排水管と非接続状態に復旧制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、制御弁は分岐管の末端に設ける。また制御弁は分岐管のヘッドよりも前段の流水検知装置側に設けても良い。
【0010】
更に、本発明の消火設備において、制御部は、火災信号が得られずに流水検知信号が得られた際に、制御弁を所定時間のあいだ排水管と接続状態に制御し、火災により作動した閉鎖型ヘッドによる散水に加えて分岐管内の消火用水を排水して混合器からの消火剤水溶液に置き換えを促進した後に排水管と非接続状態に復旧制御する。
【0011】
ヘッドは、感熱ヘッドを一体に備えた閉鎖型ヘッド、又は火災感知ヘッドを備えた一斉開放弁の2次配管に接続された1又は複数の開放型ヘッドである。
【0012】
本発明の消火設備は、流水検知装置と一体又は直列に前記分岐管に設けられ、開状態又は閉状態に制御される制御弁を設け、制御部は、制御弁を通常時は開状態に制御し、流水検知信号が得られた際に火災信号が得られていない場合は閉状態に制御し、その後、火災信号が得られた際に開状態に制御する。
【0013】
また本発明の消火設備は、流水検知装置と一体又は直列に分岐管に設けられ、開状態又は閉状態に制御される制御弁を設け、制御部は、制御弁を通常時は閉状態に制御し、火災信号が得られた際に開状態に制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通常時に配管内に消火用水のみを充水しているため、分岐管や給水本管に消火剤で悪影響を及ぼすことがなく、しかも、火災時には、火災感知器から火災信号が得られた際に、火災区画の分岐管の末端や途中に設けている制御弁を排水管と接続状態に制御し、配管内の消火用水を排水管側に流し、この消火用水の排水に伴い混合器から消火剤水溶液を2次側配管に流し、消火剤水溶液が火災区画の分岐管に充水されるに十分な所定時間後に、制御弁を排水管と非接続状態に復旧する。
【0015】
このため、その後、火災による熱気流を受けてヘッドが散水状態となった場合、この段階で分岐管内は消火剤水溶液に置き換わっており、ヘッド作動で直ちに消火能力の高い消火剤水溶液を散水し、消火遅れを生ずることなく、迅速且つ確実に消火することができる。
【0016】
また制御弁を排水管と接続状態に制御している途中でヘッドが火災の熱気流を受けて作動した場合であっても、それまでの間に混合器の2次側配管は制御弁から消火用水を排水できた分の配管位置まで消火剤水溶液に置き換わっており、ヘッドまでの間に残っている消火用水の配管部分が短くなっており、短い遅れ時間で消火剤水溶液の散水に移行し、消火遅れを可能な限り低減することができる。
【0017】
更に、火災によりヘッドが先に作動して散水を開始した場合についても、ヘッド作動に伴う流水検知装置からの流水検知信号に基づいて制御弁により排水状態に所定時間制御することで、作動したヘッドからの散水と同時に制御弁を通して消火用水を排水し、ヘッドが略2台作動したと同等の消火用水の流れを作り出し、混合器からの消火剤水溶液の作動中のヘッドから散水されるまでの時間を短縮し、消火遅れを可能な限り短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、本発明の消火設備にあっては地下室などに消火ポンプ10が設置され、消火ポンプ10にはモータ12が連結され、モータ12はポンプ制御盤14により起動停止できるようにしている。
【0019】
消火ポンプ10はモータ12によるポンプ起動による運転状態で、水源水槽16から消火用水を吸引して給水本管18に加圧供給する。給水本管18は混合器26を介して建物の高さ方向に立ち上げられており、給水本管18の上部には屋上などに設置した高架水槽が連結され、高架水槽からの水により管内圧力を規定圧に維持している。
【0020】
混合器26の2次側となる給水本管18からは、分岐管28が駐車場などの消火対象区画に引き出されている。分岐管28の分岐部分には電動弁などを用いた制御弁30と流水検知装置32が設けられる。この実施形態において、制御弁30は常時開に制御されている。流水検知装置32は分岐管28内の流水を検知して流水検知信号E1を出力する。
【0021】
分岐管28が引き出された消火対象区画には複数の閉鎖型ヘッド34が複数設置されている。閉鎖型ヘッド34は感熱ヘッドを一体に備え、火災による熱気流を受けて感熱ヘッドが作動すると、弁機構が作動して開放し、分岐管28内に充水している消火用水を散水する。
【0022】
閉鎖型ヘッド34に続いては、末端側には一斉開放弁36、感熱ヘッド38及び開放型ヘッド40が設けられている。一斉開放弁36は、1次側を分岐管28に接続し、2次側に開放型ヘッド40を接続している。一斉開放弁36は弁機構を内蔵しており、この弁機構は感熱ヘッド38の非作動状態による1次側圧力水の導入で閉鎖状態に切り替えられており、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド38が作動して圧力水が放出されると、開状態に動作し、開放型ヘッド40から消火用水を散水させる。
【0023】
分岐管28の末端には末端制御弁42が設けられる。末端制御弁42は外部からの制御信号により開状態と閉状態に制御される弁であり、開状態に制御した場合には閉鎖型ヘッド34が作動したと同等な水量を排水管側に流すようにしている。また末端制御弁42と並列には手動操作により開閉する末端試験弁43が設けられているが、末端試験弁43による試験放水は末端制御弁42の遠隔開閉で代替することもできる。
【0024】
消火対象区画には火災感知器44が設置され、火災を検出すると火災信号E2を出力する。
【0025】
給水本管18に設けた混合器26に対しては、消火剤45を充填した薬剤タンク46が設けられている。薬剤タンク46は金属製の圧力タンクであり、内部にダイヤフラムなどの仕切壁を設けており、上部から給水本管18による消火用水の圧力水を導入し、充填している消火剤45を加圧している。
【0026】
薬剤タンク46からは薬剤供給管が混合器26に接続され、この薬剤供給管の途中に薬剤タンク元弁48を設けている。薬剤タンク元弁48は、外部からの制御信号により開状態と閉状態に制御される例えば電動弁や電磁弁である。
【0027】
監視制御盤50は消火設備の監視制御を行う制御部を備えており、この制御部は例えばマイクロコンピュータなどのプログラム制御の機能により実現される。制御盤50は末端制御弁42を制御する制御機能を備えている。
【0028】
末端制御弁42の制御は、通常時は末端制御弁42を閉状態に維持し、火災時に流水検知装置32から流水検知信号E1が得られず、消火対象区画に設置している火災感知器44から火災信号E2が得られた際に、末端制御弁42を所定時間の間、開状態に制御し、これによって給水本管18、分岐管28内の消火用水を排水して混合器26からの消火剤水溶液に置き換えた後に、閉状態に復旧する。
【0029】
監視制御盤50の制御機能により末端制御弁42を開状態に制御している時間としては、給水本管18に設けた混合器26の2次側から分岐管28の末端までの配管容積、即ち配管内に充填している消火用水の量を、末端制御弁42の開制御により排水できるに十分な時間として設定する。
【0030】
このため、末端制御弁42を開制御する時間は混合器26から末端制御弁42までの配管距離に応じた時間とすることが望ましいが、分岐管ごとに設定することは煩雑であることから、末端制御弁42までの最大配管距離に対応した時間を設定してもよい。
【0031】
また図1の消火設備にあっては、設備の運用を開始する場合あるいは火災による消火を行った後に復旧する際には、給水本管18及び分岐管28の管内から消火剤水溶液を全て排出し、消火用水のみを充水させている。
【0032】
このように消火用水を給水本管18及び分岐管28に充水するためには、監視制御盤50からの操作指示で薬剤タンク元弁48を閉鎖し、末端制御弁42を開放した状態で、消火ポンプ10を運転して、給水本管18から分岐管28、更に配水管に消火用水を流し、消火用水が完全に充水された状態で末端制御弁42を閉状態に制御した後に消火ポンプ10の運転を停止する。
【0033】
更に図1の実施形態の監視制御盤50にあっては、分岐管28に設けた制御弁30を通常時において常時開としている。制御弁30を常時開とした消火設備の制御処理は、火災により例えば閉鎖型ヘッド34のいずれかが作動して消火用水が散水され、流水検知装置32が流水検知信号E1を出力した場合、火災感知器44から火災信号E2が得られているか否かチェックし、もし火災信号E2が得られていない場合には非火災の可能性があることから、制御弁30を閉状態に制御する。この制御弁30を閉状態に制御した状態で火災信号E2が得られると、制御弁30を再び開状態に制御し、作動した閉鎖型ヘッド34からの散水を再開させる。
【0034】
また、監視制御盤50は、通常時、薬剤タンク元弁48を常時開としており、復旧処理の際に給水本管18及び分岐管28を消火用水に置き換える際に薬剤タンク元弁48を閉状態に制御する。
【0035】
図2は図1の監視制御盤50による本発明の消火設備の制御処理のフローチャートである。図2において、監視制御盤50は、まずステップS1で初期設定として末端制御弁42を閉鎖状態とし、制御弁30は開状態とし、更に薬剤タンク元弁48は開放状態とし、設備運用開始前の操作で給水本管18及び分岐管28内に消火用水を充水している。
【0036】
通常の監視状態にあっては、ステップS2で流水検知装置32からの流水検知信号E1が得られるか否か、得られない場合にはステップS3で火災感知器44からの火災信号E2が得られるか否かを監視している。
【0037】
火災発生により、最初に火災感知器44からの火災信号E2が得られたとすると、この火災信号E2はステップS3で判別され、ステップS4で末端制御弁42を開制御する。続いてステップS5でタイマをスタートし、ステップS6で予め設定した設定時間のタイムアップを監視する。
【0038】
タイマの設定時間を経過してタイムアップすると、ステップS7に進み、末端制御弁42を閉鎖する。このように、最初に火災信号E2が得られた場合の一定時間に亘る末端制御弁42の開制御により、給水本管18及び分岐管28に充水している消火用水は開放した末端制御弁42を通って排水管に流れる。
【0039】
分岐官28の排水に伴い給水本管18の管内圧力が低下し、圧力タンク20に設けている圧力スイッチ22が規定圧力以下に低下したときに圧力低下検出信号E5を出力し、ポンプ制御盤14によるモータ12の駆動で消火ポンプ10を起動し、消火ポンプ10からの加圧消火用水を、混合器26を介して末端制御弁42が開放している分岐管28に流す。
【0040】
この消火ポンプ10からの消火用水が混合器26を流れる際に、開状態にある薬剤タンク元弁48を通って薬剤タンク46から消火剤45が混合され、混合器26から消火剤水溶液が分岐管28に供給される。このため、タイマ設定による所定時間を経過すると、混合器26の2次側となる分岐管28の末端までの消火用水は全て排水され、混合器26からの消火剤水溶液に置き換わり、その時点でタイムアップして末端制御弁42が閉鎖状態に制御され、この状態で閉鎖型ヘッド34もしくは一斉開放弁36の作動による開放型ヘッド40からの散水を待つ。
【0041】
ステップS7で末端制御弁42を閉鎖した後、火災による熱気流を受けて例えば閉鎖型ヘッド34のいずれかが作動すると、作動した閉鎖型ヘッド34から、このとき分岐管28に充水されている消火剤水溶液が放出される。この消火剤水溶液の放出に伴う流水を検知して流水検知装置32による流水検知信号E1を出力し、流水検知信号E1がステップS8で判別されてステップS15に進み、鎮火の待機状態となる。
【0042】
そして鎮火が確認されると、ステップS16に進み、薬剤タンク元弁48を閉鎖して消火剤45の供給を停止し、更にステップS17で開閉弁30を閉鎖して、作動している閉鎖型ヘッドからの散水を停止する。
【0043】
一方、ステップS2で流水検知をチェックし、続いてステップS3で火災信号をチェックする処理を繰り返している監視状態で、火災により先に例えば閉鎖型ヘッド34が作動して流水検知装置32から流水検知信号E1が得られた場合には、流水検知信号をステップS2で判別してステップS9に進み、火災信号E1の有無をチェックする。
【0044】
このとき火災信号E1が得られていれば、そのまま制御弁30を開状態としたまま、ステップS15の鎮火待ちの処理に移行する。これに対しステップS9で火災信号E1が得られていなかった場合には、閉鎖型ヘッド34に物などが当たって誤作動した可能性があることから、ステップS10に進み、制御弁30を閉鎖状態に制御し、続いてステップS11で薬剤タンク元弁48も不必要に消火剤45が給水本管18側に流れるのを防止するために閉鎖状態に制御し、作動した閉鎖型ヘッド34からの散水を停止させる。
【0045】
この状態で、ステップS12で火災信号E1の有無をチェックしており、火災信号が得られれば、ステップS13で薬剤タンク元弁48を再度開放し、またステップS14で制御弁30を再度開放し、消火用水の散水を再開させる。
【0046】
図3は図1の監視制御盤50による本発明の消火設備における復旧処理のフローチャートである。この復旧処理のフローチャートは、設備の使用開始時及び火災により消火が終了した後の復旧処理の処理手順となる。
【0047】
図3において、復旧処理は、ステップS1で薬剤タンク元弁48を閉鎖制御し、続いてステップS2で制御弁30を開放状態に制御し、更にステップS3で末端制御弁42を開状態に制御する。この状態でポンプ制御盤14により消火ポンプ10を運転し、ステップS4でタイマをスタートする。
【0048】
復旧処理の際には、混合器26の2次側から分岐管28の末端までの間に消火剤水溶液が充水されていることから、タイマ設定時間として充水されている消火剤水溶液が末端制御弁42を通って排水されて消火用水に置き換わるに十分な時間を設定し、ステップS5でタイムアップを判別すると、末端制御弁42を閉鎖状態に制御し、これによって分岐管28及び給水本管18の配管内は消火用水のみの充水状態となる。
【0049】
そして最終的に、ステップS7で薬剤タンク元弁48を開放状態に制御し、一連の復旧処理を終了する。この復旧処理が終了した状態にあっては、図2の監視制御のステップS1における初期設定状態が作り出されている。
【0050】
図4は図1の監視制御盤50による本発明の消火設備における制御処理の他の実施形態のフローチャートである。この実施形態にあっては、火災感知器44からの火災信号E2が得られずに流水検知装置32からの流水検知信号E1が得られた際にも、即ち火災による熱気流を受けてヘッドが作動して散水が開始された場合に、末端制御弁42を所定時間のあいだ開状態に制御し、作動したヘッドと末端制御弁42からの排水により分岐管28内にヘッドがほぼ2台作動したと同等の水流を作り出し、流水量を増やすことで、混合器26の2次側から分岐管28の末端までの間の消火用水を消火剤水溶液に置き換えるための時間を短縮させるようにしたことを特徴とする。
【0051】
図4において、この実施形態の制御処理は、ステップS1における初期設定状態、即ち末端制御弁42を閉鎖、制御弁32を開放、薬剤タンク元弁48を開放、配管内に消火用水を充水した状態で、ステップS2で流水検知信号の有無をチェックし、なければステップS3で火災信号の有無をチェックしている。
【0052】
火災により、最初に火災信号が得られた場合のステップS4〜S8の処理は、図2のステップS3〜S8と同じである。即ち、最初に火災信号が得られた場合には、末端制御弁42をタイマ設定による一定時間、開状態として消火用水を排水することで、混合器からの消火剤水溶液に置き換える。
【0053】
これに対し、最初にヘッド作動に伴う流水検知信号が得られてステップS2で判別され、続いてステップS9で火災信号をチェックした際に、この時点で火災信号E2が得られていた場合、図2の実施形態にあってはステップS15の鎮火の判定処理に移行していたが、図4の実施形態にあってはステップS4に進んで末端制御弁42を開放し、ステップS5でタイマをスタートし、ステップS6でタイムアップを判別すると、ステップS7で末端制御弁を閉鎖し、ステップS8で流水検知信号の有無をチェックしている。
【0054】
即ち図4の実施形態にあっては、閉鎖型ヘッド34あるいは開放型ヘッド40からの火災に伴う消火用水の散水が流水検知信号E1から検知され、且つ火災信号E2が得られている場合についても、末端制御弁42をタイマ設定により一定時間、開状態に制御し、作動したヘッドからの散水に加えて末端制御弁42を通して排水することにより分岐管28に流れる水量を増やし、これによって、火災により作動しているヘッドからの散水が混合器26からの消火剤水溶液の散水に置き換わるまでの時間を短縮するようにしている。
【0055】
なお、図1の実施形態においては、給水本管18及ぴ分岐管28共に消火用水を充填しているが、給水本管18は消火剤水溶液を予め充填しておき、分岐管28に消火用水を充填しておいて、火災時の末端制御弁42の開放制御で分岐管を消火剤水溶液に置き換える構成であってもよく、火災時により迅速な散水が行うことができる。
【0056】
図5は本発明の消火設備の他の実施形態を示した説明図である。図5の消火設備は、図1の末端制御弁42の代わりに、流水検知装置32側の電動弁30が消火用水を排水して消火剤水溶液を入れ替える制御弁としての機能を備えたものである。また、流水検知装置32の2次側の分岐管28に一斉開放弁51が設けられており、一斉開放弁51の2次側の分岐管には開放型ヘッド52が設けられている。
【0057】
一斉開放弁51は感知ヘッド53を有し、火災による熱を受けて感知ヘッド53が作動すると、内蔵する弁が開いて1次側と2次側を連通し、開放型ヘッド52から散水が行われる。電動弁30は3方弁であり、追加されたポートは排水管に接続されている。通常は分岐管28の1次側と2次側が連通しており、図1と同様に弁開放状態になって消火用水が充填されている。これにより消火剤による給水本管18や分岐管28への悪影響を防いでいる。
【0058】
火災信号を受信して給水本管18及ぴ分岐管28内に消火剤水溶液を充填して散水待機状態にするときは、電動弁30を切り替えて分岐管28の1次側と排水管が連通することで電動弁30の1次側の消火用水を排水し、消火剤水溶液に入れ替え、所定時間経過後に電動弁30を通常状態に復帰制御する。
【0059】
この実施形態の制御フローは図2などとほぼ同じであり、制御弁30を分岐管28の末端に設けるか途中に設けるかの違いである。図5の実施形態においては、分岐管28の末端まで消火剤水溶液を入れ替え充填せず、電動弁30が設けられた分岐管28の途中まで入れ替え充填する構成であるため、閉鎖型ヘッド34が開放した最初には消火用水が少し散水されることになるが、電動弁30の接続位置まで消火用水が消火剤水溶液に入れ替えられるため、消火剤水溶液の散水は迅速に行われる。
【0060】
特に配管が太く距離が長い給水本管18は完全に消火剤水溶液に切り替わっているため、従来の全ての配管が消火用水である場合の散水よりも迅速に消火剤水溶液の散水を行うことができる。
【0061】
なお、電動弁30と流水検知装置32は一体であっても良いし、流水検知装置32の2次側の一斉開放弁51により近い位置に設けても良い。また、制御弁30は、3方弁によりヘッド誤差動時の散水停止制御と、消火用水の入れ替え制御を共に行っているが、別々に制御弁を用意してそれぞれ別の制御弁が行っても良い。
【0062】
また、図1のステップS9において流水検知信号を受信したときに火災信号が無い場合には閉鎖型ヘッド34の誤作動の場合もあるため、ステップS10で制御弁30を閉鎖制御してステップS12の火災信号を待機するが、実火災である場合もあるため、この待機期間中に制御弁30の排水制御により消火用水を消火剤水溶液への切換えを行っても良い。 また、図5の実施形態の散水ヘッドの構成は図1の閉鎖型ヘッドの配管構成であっても良い。
【0063】
また、上記の実施形態は、分岐管に設けた制御弁30を常時開とした場合を例にとるものであったが、制御弁30は常時閉とするようにしてもよい。制御弁30を常時閉とした制御処理にあっては、火災感知器44からの火災信号E2が得られた際に制御弁30を開状態に制御し、その後の火災によるヘッド作動による放水に備えることになる。
【0064】
この場合にも、制御弁30の開状態の制御と同時に末端制御弁42を開制御し、消火用水を排水管に流すことで混合器26からの消火剤水溶液に置き換え、置換えが済んだ状態でヘッド作動を待つことになる。
【0065】
また図1の実施形態にあっては、流水検知装置32と別に制御弁30を設けているが、流水検知装置32と一体に制御弁30を設けた弁構造のものであってもよい。
【0066】
また図1の実施形態にあっては、薬剤タンク元弁48を常時開としているが、これを常時閉としてもよい。薬剤タンク元弁48を常時閉とした場合には、末端制御弁42を開いて消火用水を排出する際に、同時に薬剤タンク元弁48を開いて混合器26からの消火剤水溶液の供給を可能とするように制御する。よって、通常待機時に消火剤45が不必要に給水本管18側へ流れ、消費するのを抑えている。
【0067】
更に図1の実施形態にあっては、分岐管28に閉鎖型ヘッド34と開放型ヘッド40を混在させた場合を例にとっているが、閉鎖型ヘッド34のみの設備あるいは開放型ヘッド40のみの設備としてもよい。
【0068】
開放型ヘッド40のみの設備にあっては、一斉開放弁36を流水検知装置32の2次側に配置し、一斉開放弁36の2次側から分岐管を接続し、この分岐管に複数の開放型ヘッド40を接続することになる。
【0069】
更に本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、また上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1の監視制御盤による本発明の消火設備における制御処理のフローチャート
【図3】図1の監視制御盤による本発明の消火設備における復旧処理のフローチャート
【図4】図1の監視制御盤による本発明の消火設備における制御処理の他の実施形態のフローチャート
【図5】本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図
【符号の説明】
【0071】
10:消火ポンプ
12:モータ
14:ポンプ制御盤
16:水源水槽
18:給水本管
20:圧力タンク
22:圧力スイッチ
24:呼水槽
26:混合器
28:分岐管
30:制御弁
32:流水検知装置
34:閉鎖型ヘッド
36:一斉開放弁
38:感熱ヘッド
40:開放型ヘッド
42:末端制御弁
44:火災感知器
45:消火剤
46:薬剤タンク
48:薬剤タンク元弁
50:監視制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に、消火ポンプにより加圧供給された消火用水に薬剤タンクから供給された消火剤を混合器で混合し、分岐管に接続されたヘッドに消火剤水溶液を供給して散水させる消火設備に於いて、
前記ヘッドを設置した区画の火災を検出して火災信号を出力する火災感知器と、
前記分岐管に設けられ、分岐管内の流水を検知して流水検知信号を出力する流水検知装置と、
前記流水検知装置の1次側配管の圧力が所定値以下に低下したことを検出して前記消火ポンプを起動するポンプ制御部と、
前記分岐管に設けられ、前記分岐管を排水管へ接続もしくは非接続に制御する制御弁と、
通常時は前記制御弁を排水管とは非接続状態に維持し、前記流水検知信号が得られず前記火災信号が得られた際に、前記制御弁を所定時間のあいだ排水管と接続状態に制御し、前記分岐管内の消火用水を排水して前記混合器からの消火剤水溶液に置き換えた後に排水管と非接続状態に復旧制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記制御弁は分岐管の末端に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記制御弁は分岐管のヘッドよりも前段の流水検知装置側に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記制御部は、前記火災信号が得られずに流水検知信号が得られた際に、前記制御弁を所定時間のあいだ排水管と接続状態に制御し、火災により作動した閉鎖型ヘッドによる散水に加えて前記分岐管内の消火用水を排水して前記混合器からの消火剤水溶液に置き換えを促進した後に排水管と非接続状態に復旧制御することを特徴とする消火設備。
【請求項5】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記ヘッドは、感熱ヘッドを一体に備えた閉鎖型ヘッド、又は火災感知ヘッドを備えた一斉開放弁の2次配管に接続された1又は複数の開放型ヘッドであることを特徴とする消火設備。
【請求項6】
請求項1記載の消火設備に於いて、更に、前記流水検知装置と一体又は直列に、開状態又は閉状態に制御される制御弁を設け、
前記制御部は、前記制御弁を通常時は開状態に制御し、前記流水検知信号が得られた際に火災信号が得られていない場合は閉状態に制御し、その後、前記火災信号が得られた際に開状態に制御することを特徴とする消火設備。
【請求項7】
請求項1記載の消火設備に於いて、更に、前記流水検知装置と一体又は直列に、開状態又は閉状態に制御される制御弁を設け、
前記制御部は、前記制御弁を通常時は閉状態に制御し、前記火災信号が得られた際に開状態に制御することを特徴とする消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−89854(P2007−89854A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283806(P2005−283806)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】