説明

消音装置

【課題】簡単で安価な構成でありながらも、エンジンの出力低下及び重量増加を招くことなく、排気音量を効果的に低減する消音装置を提供する。
【解決手段】排気パイプに接続された内筒と、内筒を覆う外筒と、外筒と内筒との間に形成されて吸音材が充填された第1消音空間と、内筒の周壁に形成された複数のガス流通孔と、外筒及び内筒の各下流側端部に連結されるエンドカップと、を備える消音装置であって、エンドカップは、内筒の下流側端部に接続されるテールパイプと、第1消音空間の下流側を仕切る仕切板と、テールパイプを覆うカップ状のテールカバーと、テールパイプとテールカバーとの間に形成される第2消音空間と、を備え、仕切板は、第1消音空間と第2消音空間とを連通する第1連通孔を有し、テールパイプは、テールパイプの内側空間と第2消音空間とを連通する第2連通孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の車両のエンジンから排気ガスが排出される時の音を消音する消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の車両に搭載されたエンジンの消音装置として、排気ガスを消音装置入口から出口まで直線的に通す通路を有したストレート排気方式のものが知られている。より具体的には、外筒の内部に、エンジンからの排気ガスを通過させる内筒が略同心状に配置され、内筒と外筒との間に吸音材が装填され、エンジンから内筒の内部に導入された排気ガスを、内筒の周面にわたり形成された複数のパンチング孔を介して吸音材側に導くことにより、吸音材で排気音を減衰させるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
当該消音装置では、内筒内部の排気ガス下流端部にパンチングコーン及びテールパイプがそれぞれ内筒と同心状に配置されており、内筒を通過した排気ガスをパンチングコーンを介して、内筒よりも径の小さいテールパイプに導くことにより、消音効果の一層の向上を図っている。
【0004】
ストレート排気方式の消音装置において、吸音材で排気音をより減衰させるよう連通孔の穴径を大きくして排気通過面積を拡大したり、テールパイプの内径を縮小したり、テールパイプに連通孔を設けたりすること(例えば、特許文献2を参照)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−292049号公報
【特許文献2】特開平10−252442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の様なストレート排気方式の消音装置は、一般に、軽量化が容易であり、回転数の急上昇や高回転型の出力特性に向いているので、モトクロス用の自動二輪車においてしばしば使用されている。モトクロスのように競技場の様なオフロードで使用する自動二輪車においては、公道を走行する自動二輪車よりも排気音量が大きくても許容されてきた。しかしながら、競技場で使用する自動二輪車であっても、排気音量に関する規制が強化されており、エンジンの出力低下を招くことなく、より大きな消音効果を発揮することのできる消音装置が望まれている。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、簡単で安価な構成でありながらも、エンジンの出力低下及び重量増加を招くことなく、排気音量を効果的に低減する消音装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の消音装置が提供される。
【0009】
すなわち、本発明に係る消音装置は、排気パイプに接続された内筒と、前記内筒を覆う外筒と、前記外筒と前記内筒との間に形成されて、吸音材が充填された第1消音空間と、前記内筒の周壁に形成された複数のガス流通孔と、前記外筒及び前記内筒の各下流側端部に連結されるエンドカップと、を備える消音装置であって、前記エンドカップは、前記内筒の下流側端部に接続されるテールパイプと、前記外筒の下流側端部に連結されるとともに前記第1消音空間の下流側を仕切る仕切板と、前記外筒の下流側端部に連結されるとともに前記テールパイプを覆うカップ状のテールカバーと、前記テールパイプと前記テールカバーとの間に形成される第2消音空間と、を備え、前記仕切板は、前記第1消音空間と前記第2消音空間とを連通する複数の第1連通孔を有するとともに、前記テールパイプは、前記テールパイプの内側空間と前記第2消音空間とを連通する複数の第2連通孔を有することを特徴とする。
【0010】
上記発明において、好ましくは、次のような構成を採用することができる。
【0011】
(a)前記第1連通孔は、前記外筒に近い位置に形成されている。
【0012】
(b)前記第2連通孔は、略水平方向に延びるように形成されている。
【0013】
(c)前記テールパイプの上流側端部及び下流側端部は、それぞれ、前記仕切板の内周端部、及び、前記テールカバーの下流側端部に対して溶接又はシール剤によって接続固定される。
【0014】
(d)前記内筒の外周面と前記吸音材との間には、保持部材が介在配置されている。
【0015】
(e)前記第1消音空間の外筒側には耐熱性を有する吸音材が装填されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、仕切板及びテールパイプのそれぞれに形成された第1連通孔及び第2連通孔を介して、第1消音空間と第2消音空間との間、及び、テールパイプの内側空間と第2消音空間との間、がそれぞれ連通している。すなわち、第1消音空間は、第1連通孔、第2消音空間及び第2連通孔を介して、テールパイプの内側空間と連通している。内筒からテールパイプの内側空間内に入った排気ガスの一部が第2連通孔を通って第2消音空間に入ることにより膨張してエネルギを失うとともに、第2消音空間内のレゾネータ(共鳴器)効果により排気音が低減される。それとともに、内筒からテールパイプの内側空間内に入った排気ガスと、内筒に形成された複数のパンチング孔、第1消音空間、第1連通孔、第2消音空間及び第2連通孔を経由してテールパイプの内側空間に入る排気ガスとが、排気干渉を起こすことにより排気音が低減される。
【0017】
構成(a)によると、第1消音空間から、外筒に近い位置に形成された第1連通孔を介して、第2消音空間に至る排気経路が長くなるので、排気音がさらに低減される。
【0018】
構成(b)によると、第1連通孔から、略水平方向に延びるように形成された第2連通孔を介して、テールパイプの内側空間に至る排気経路が長くなるので、排気音がさらに低減される。
【0019】
構成(c)によると、テールパイプと仕切板とテールカバーとが一体的に接続固定されて長期的に安定した取付構造が得られるとともに、密閉性の高い第2消音空間を得ることができる。
【0020】
構成(d)によると、保持部材の介在配置により、第1消音空間に充填された吸音材がガス流通孔を通して内筒空間にはみ出すことを防止することができる。
【0021】
構成(e)によると、外筒の温度上昇を抑えることができるので、外筒について十分な強度が保たれるとともに長期にわたって美観が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る消音装置を装備した自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る消音装置の正面図である。
【図3】図2に示した消音装置の上面図である。
【図4】図2に示した消音装置の縦断面図である。
【図5】図2に示した消音装置を構成するエンドカップの縦断面図である。
【図6】図5に示したエンドカップの左側面図である。
【図7】図4のA−A線に沿った仕切板の拡大断面図である。
【図8】図5に示したエンドカップを構成する仕切板の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る消音装置10について、添付した図1乃至8を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る消音装置10を備えた自動二輪車1を示す左側面図である。消音装置10の搭載される車両の好適な一例として、モトクロス用の自動二輪車1を示しているが、本願発明を限定するものではない。本明細書における前後方向、左右方向、及び上下方向は、自動二輪車10等に乗車する運転席から見たときを基準にして、自動二輪車1の車長方向、車幅方向、及び車高方向をそれぞれ意味している。また、本明細書における上流側及び下流側は、それぞれ、内筒10bの中を流れる排気ガスG,G1の上流側及び下流側を意味し、言い換えれば、消音装置10において、排気パイプ20の側が上流側であり、エンドカップ40の側が下流側である。
【0025】
図1において、自動二輪車1の車体フレーム2aは、その前端部にヘッドパイプ2bを備え、ヘッドパイプ2bに対して左右方向に回動可能(操向可能)に装着されたフロントフォーク2cにより、前輪2dが軸支されている。また、スイングアーム3aの後端部には、後輪3bが軸支されている。車体フレーム2aの中央部には、エンジン3eが搭載されている。エンジン3eの上方においては、前方側に燃料タンク3cが設置され、後方側にシート3dが設置されている。
【0026】
エンジン3eの前面側に形成された排気口には、排気パイプ20が接続されており、当該排気パイプ20は、エンジン3eの側方を通って後方に延びて、後輪3bの上方に配置された消音装置10に接続されている。エンジン3eから排出された排気ガスGは、排気パイプ20を通じて、消音装置10に導入され、消音装置10により排気ガスGの圧力の脈動が減じられて消音されたあと、エンドカップ40の下流側出口50から外部に排出される。消音装置10は、後述するブラケット32,33により、後部フレーム2fに取り付けられている。
【0027】
次に、図2乃至8を参照しながら、本発明の一実施形態に係る消音装置10について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る消音装置10の正面図であり、図3は、図2に示した消音装置10の上面図であり、図4は、図2に示した消音装置10の縦断面図である。
【0028】
本発明に係る消音装置10は、図2乃至4に示すように、全体形状がおおむね円筒形状をしており、排気パイプ20からの排気ガスGが流れる内筒10bと、この内筒10bを覆うように内筒10bに対して略同心状に配置された外筒10aと、内筒10bと外筒10aとの間に形成された第1消音空間11に装填された吸音材22と、外筒10aの下流側に連結固定されたエンドカップ40と、を備えている。
【0029】
外筒10aの上流側端部15aと排気パイプ20とは、排気パイプ20を覆うテーパー状の前壁24を介して連結固定されている。テーパー状の前壁24の上流側端部は、排気パイプ20の外周面に嵌合しているとともに溶接によって連結固定されている。テーパー状の前壁24の下流側端部は、外筒10aの上流側端部15aの内周面に対して嵌合しているとともに、シール剤を介在してボルト17で連結固定されている。外筒10aの外周面の上側中央部と、排気パイプ20の外周側面とにおいては、消音装置10を自動二輪車1の後部フレーム2fに固定するためのブラケット32,33が、それぞれ設けられている。
【0030】
外筒10aは、例えばアルミニウム合金材料からなり、車高方向に長軸を有する長円形の横断面形状をした管状体である。外筒10aの横断面形状は、楕円形、三角形、四角形以上の多角形または円形であってもよい。
【0031】
内筒10bは、例えばSUS304のオーステナイト系ステンレス鋼からなる円筒形状をした直管体である。内筒10bの内側部分には、内筒空間13が形成されている。内筒10bの上流側端部19aは、排気パイプ20の内周面に対して嵌合接続している。当該接続部分は、溶接固定されていてもよく、またフローティングであってもよい。内筒10bの下流側の下流側端部19bは、テールパイプ44の内周面に対して嵌合して接続されている。
【0032】
内筒10bの周壁には、2組の対の排気ガス導出部14が設けられている。各排気ガス導出部14は、上流側から流れてくる排気ガスGを取り込めるように、内筒10bの周壁から内筒10bの軸芯の側に向けて突出した形状、すなわち内筒10bの周壁が内筒空間13の側に凹んだ湾曲面形状をしている。各排気ガス導出部14は、上流側から下流側に向けて先すぼまりの形状をしている。上流側及び下流側の対の排気ガス導出部14は、それぞれ、内筒10bの周壁上に180度の角度をなして対向配置されている。上流側の対の排気ガス導出部14と、下流側の対の排気ガス導出部14とは、軸長さ方向に沿って千鳥状に離間配置されている。各排気ガス導出部14の上流側であって近接する位置の周壁には、切込部18が形成されている。切込部18は、内筒10bの周壁が円周方向に部分的に切り込まれた円弧状スリットである。
【0033】
内筒10bの周壁には多数の小さなガス流通孔12が設けられている。当該ガス流通孔12は、排気ガス導出部14及び切込部18のそれぞれと、それらの周辺部分とを避けるように、軸長さ方向に千鳥状に整列した状態で形成されている。軸長さ方向に整列配置されたガス流通孔12は、円周方向にも形成されている。ガス流通孔12は、パンチングによって形成されて内筒10bの周壁を貫通する穴であり、内筒10bの内筒空間13と第1消音空間11とを連通している。
【0034】
内筒10b、外筒10a、テーパー状の前壁24及びエンドカップ40で囲まれた第1消音空間11には、吸音材22が装填されている。吸音材22は、グラスウール又はスチールウール等の繊維状の素材からなる。吸音材22は、なお、図4では、吸音材22が第1消音空間11において略均等に配置した形態で図示しているが、図4の図示はあくまで模式的なものであり、装填箇所は特に限定されない。例えば吸音材22は、第1消音空間11を部分的に満たすように分散配置してもよい。内筒10bの外周面と吸音材22との間には、保持部材30が介在配置されている。保持部材30は、ステンレスウール材と鉄製のワイヤークロス材とを編み込んだものを重ねて巻回したものであり、第1消音空間11に充填された吸音材22がガス流通孔12を通して内筒空間13にはみ出すことを防止している。また、外筒10aの内周面と吸音材22との間には、耐熱性を有する吸音材23が装填されていて、例えばアルミニウム合金材料からなる外筒10aについて、温度上昇を抑えることができるので、十分な強度が保たれるとともに長期にわたって美観が保たれる。
【0035】
外筒10a及び内筒10bの各下流側端部15b,19bに連結されるエンドカップ40は、図5に示すように、カップ状のテールカバー42と、テールパイプ44と、仕切板46と、を備えてなる。テールカバー42は、例えばステンレスからなり、下流側に向けて先細である部材であり、テールカバー42の壁面部42aが、テールパイプ44から離間する状態でテールパイプ44を覆っている。テールカバー42の下流側壁面部42cには開口が形成されており、当該下流側壁面部42cの内側面に対して、テールパイプ44の下流側端部44cが溶接によって接続固定されていて、当該接続固定部分から排気ガスG2が外部に流出することが防止される。テールカバー42の上流側端部42bには、複数の取付孔37が形成されている。
【0036】
テールパイプ44は、例えばステンレスからなる筒状の部材であり、消音装置10の中に流入した排気ガスGを下流側出口50から最終的に外部に排出する役割を有している。テールパイプ44は、テールパイプ44の上流部分44aが下流部分44dよりも僅かに外方に膨出した段差構成となっている。テールパイプ44は、その上流部分44aの内周面に対して内筒10bの下流側端部19bが嵌合するように構成されている(図4に図示)。
【0037】
テールパイプ44の下流部分44dにおける上流側の左右の側面部分には、横方向(すなわち略水平方向)に延びる第2連通孔54がそれぞれ形成されている(図5及び図7に図示)。2つの第2連通孔54は、下流部分44dの壁面を貫通して第2消音空間41と内部空間43とを連通している。
【0038】
第2連通孔54により、第2消音空間41を流れる分流排気ガスG2が内部空間43に流入するか、又は、内部空間43を流れる直進排気ガスG1の一部が第2消音空間41に流入する。第2連通孔54を介して、第2消音空間41からテールパイプ44の内部空間43に流れる分流排気ガスG2と、内筒10bの内筒空間13からテールパイプ44の内部空間43に流入する直進排気ガスG1と、が排気干渉を生じることにより、排気音が低減される。そして、テールパイプ44の内部空間43を流れる直進排気ガスG1の一部が、第2連通孔54を介して第2消音空間41に流入してエネルギを失うとともに第2消音空間41で共鳴するレゾネータ(共鳴器)効果により、排気音が低減される。
【0039】
上述した第2連通孔54は、図5及び図7に例示した態様(すなわち、横方向に延びる2つの第2連通孔54)以外に、様々な変形した態様とすることができる。例えば、2つの縦方向(すなわち上下方向)に離間した態様で形成することも可能である。また、テールパイプ44の側面部分に離間して形成される第2連通孔54の個数も、例えば3つ、4つあるいは8つ等の2つ以上とすることも可能である。第2連通孔54は、第2連通孔54を横方向(すなわち略水平方向)にも形成することは、分流排気ガスG2の中に混入する恐れのある吸音材22の流出防止や、第1連通孔52からの排気経路が長くなることによる排気音の低減に寄与する。
【0040】
仕切板46は、例えばステンレスからなる蓋状の部材であり、上流側に位置する第1消音空間11と、下流側に位置する第2消音空間41との間での境界を仕切る壁面としての役割を有している。仕切板46は、壁面部46aと、当該壁面部46に対して大略90度の角度で折曲形成されたフランジ部46cと、壁面部46aの中央部分に形成された中央開口を囲繞する上流側開口縁46bと、を備えている。テールパイプ44の上流側端部44bが、上流側開口縁46bの外側面に対して溶接によって接続固定されている。フランジ部46cにも、複数の取付孔37が形成されている。
【0041】
図4乃至8に示すように、仕切板46の壁面部46aには、前後方向に延びる複数の第1連通孔52が形成されている。第1連通孔52は、壁面部46aを貫通して第1消音空間11と第2消音空間41とを連通している。分流排気ガスG2は、第1消音空間11から、第1連通孔52を介して第2消音空間41に流入する。第1連通孔52は、テールパイプ44から離れた位置であってフランジ部46cに近い位置、言い換えれば、外筒10aに近い上下位置にそれぞれ形成されている。内筒10b又はテールパイプ44から離れて外筒10aの近傍に第1連通孔52を配設することにより、分流排気ガスG2が外筒10aの近傍を流れて、外筒10aの近傍に充填された吸音材22を有効利用して排気音を低減することができる。
【0042】
また、仕切板46の壁面部46aには、下流側に向けてわずかに膨出した円弧状の補強部46dが形成されている。円弧状の補強部46dは、中央開口をはさんだ上下位置にそれぞれ形成されている。円弧状の補強部46dは、第1消音空間11から第2消音空間41に流れる分流排気ガスG2によって壁面部46aが振動して異音を発することを防止するために設けられている。したがって、円弧状の補強部46dは、壁面部46aに対して適宜な場所や個数で配置することができる。
【0043】
図4に示すように、外筒10aの下流側端部15bと、テールカバー42及びエンドカップ40とが、複数のリベット38により一体に連結されている。すなわち、外筒10aの下流側端部15bにも複数の取付孔37が形成されており、テールカバー42の上流側端部42bに形成された取付孔37と、仕切板46のフランジ部46cに形成された取付孔37を位置合わせして、それらにリベット38を挿通することにより三者を一体的に連結固定している。テールパイプ44は、テールカバー42及び仕切板46のそれぞれに対して溶接又はシール剤により接続固定されている。
【0044】
したがって、エンドカップ40の上記構成によれば、テールカバー42の壁面部42a及び下流側壁面部42cと、テールパイプ44の上流部分44a及び下流部分44dと、仕切板46の壁面部46aと、によって囲まれた空間には、密閉された第2消音空間41が形成されている。また、テールパイプ44の上流部分44a及び下流部分44dにおける内側部分には、内部空間43が形成されている。第1消音空間11と第2消音空間41とは、複数の第1連通孔52を介して連通し、第2消音空間41と内部空間43とは、2つ以上の第2連通孔54を介して連通している。
【0045】
次に、エンドカップ40を有する消音装置10の作用・効果について説明する。
【0046】
排気パイプ20を通じて内筒10bの内筒空間13に導入された排気ガスGは、その一部が分流排気ガスG2として多数のガス流通孔12及び対の排気ガス導出部14及び切込部18を通じて第1消音空間11に流入し、残りが直進排気ガスG1として内筒10bの内筒空間13内を直進する。排気ガス導出部14及び切込部18により、排気ガスGのうち大部分が分流排気ガスG2として吸音材22に導かれることにより、排気音が低減される。
【0047】
内筒10bの上流側端部19aから下流側端部19bまでの空間では、直進排気ガスG1及び分流排気ガスG2が、多数のガス流通孔12を通じて、第1消音空間11及び内筒空間13の間を通過することにより、排気音が低減される。
【0048】
第1消音空間11に流入した分流排気ガスG2のうち第1消音空間11の下流側であって外筒10aの近傍を流れる分流排気ガスG2は、複数の第1連通孔52を通して第2消音空間41に流入する。第2消音空間41に流入した分流排気ガスG2は、複数の第2連通孔54を通して内部空間43に流入する。内部空間43に流入した分流排気ガスG2は、内筒空間13から内部空間43に流入してきた直進排気ガスG1と合流する。直進排気ガスG1と分流排気ガスG2とが合流した合流排気ガスG3は、下流側出口50から外部に排出される。
【0049】
したがって、本発明に係る消音装置10によれば、エンドカップ40内に複数の第1連通孔52及び第2連通孔54を設けることにより、排気パイプ20から流入してきた排気ガスGは、内筒空間13から内部空間43に流れる直進排気ガスG1と、第1消音空間11、複数の第1連通孔52、第2消音空間41及び複数の第2連通孔54を経て内部空間43に流れる分流排気ガスG2と、に分流される。内部空間43内に入った直進排気ガスG1が、第2連通孔54を通して第2消音空間41に入ることにより膨張してエネルギを失うとともに、第2消音空間41内のレゾネータ(共鳴器)効果により排気音が低減される。それとともに、内筒10bの内筒空間13からテールパイプ44の内部空間43に流れる直進排気ガスG1と、内筒空間13から複数のガス流通孔12、第1消音空間11、第1連通孔52、第2消音空間41及び第2連通孔54を経由して内部空間43に入る分流排気ガスG2とが、排気干渉を起こすことにより排気音が低減される。例えば、エンドカップ40内に複数の第1連通孔52及び第2連通孔54を有しない従来型の消音装置との比較で、2mMAX法による音量測定により2kHz付近での排気音が5dB程度低下することを確認することができた。また、エンジン出力も低下していなかった。そして、エンドカップ40の仕切板46及びテールパイプ44のそれぞれに、第1連通孔52及び第2連通孔54を形成するだけであるので、構成が簡単であり安価に製造することができ、重量増加もない。
【0050】
なお、好適な実施形態として、本発明に係る消音装置10を自動二輪車1に搭載した例を示したが、本発明に係る消音装置10は、三輪車や四輪車等の種々の車両のエンジンの他に、携帯型や地上設置型のエンジンにも適用可能である。
【0051】
また、具体的な数値や材料を示して説明したが、それらにとらわれることなく、適宜に変更することができる。第1連通孔52及び第2連通孔54の配置個数や配置場所や穴径を適宜に設定することにより、排気音の低減レベルを調整することができる。さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の構成要素の追加や変更や組合せや削除を行うことが可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1:自動二輪車
10:消音装置
10a:外筒
10b:内筒
11:第1消音空間
12:ガス流通孔
19a:上流側端部
19b:下流側端部
20:排気パイプ
22:吸音材
23:耐熱性吸音材
30:保持部材
38:リベット
40:エンドカップ
41:第2消音空間
42:テールカバー
43:内部空間
44:テールパイプ
46:仕切板
52:第1連通孔
54:第2連通孔
G:排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気パイプに接続された内筒と、
前記内筒を覆う外筒と、
前記外筒と前記内筒との間に形成されて吸音材が充填された第1消音空間と、
前記内筒の周壁に形成された複数のガス流通孔と、
前記外筒及び前記内筒の各下流側端部に連結されるエンドカップと、を備える消音装置であって、
前記エンドカップは、前記内筒の下流側端部に接続されるテールパイプと、前記外筒の下流側端部に連結されるとともに前記第1消音空間の下流側を仕切る仕切板と、前記外筒の下流側端部に連結されるとともに前記テールパイプを覆うカップ状のテールカバーと、前記テールパイプと前記テールカバーとの間に形成される第2消音空間と、を備え、
前記仕切板は、前記第1消音空間と前記第2消音空間とを連通する複数の第1連通孔を有するとともに、
前記テールパイプは、前記テールパイプの内側空間と前記第2消音空間とを連通する複数の第2連通孔を有することを特徴とする消音装置。
【請求項2】
前記第1連通孔は、前記外筒に近い位置に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記第2連通孔は、略水平方向に延びるように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記テールパイプの上流側端部及び下流側端部は、それぞれ、前記仕切板の内周端部、及び、前記テールカバーの下流側端部に対して溶接又はシール剤によって接続固定されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の消音装置。
【請求項5】
前記内筒の外周面と前記吸音材との間には、保持部材が介在配置されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の消音装置。
【請求項6】
前記第1消音空間の外筒側には耐熱性を有する吸音材が装填されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60920(P2013−60920A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201006(P2011−201006)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】