説明

液化海藻、その製造方法、及び原料

【課題】コンブ、ワカメ等の褐藻類を液化し、人間用の食材、保健機能食品若しくは医薬品の原料、又は養魚若しくは動物の餌に使用する。
【解決手段】コンブ、ワカメ等の海藻類の3倍量の真水と、海藻類と真水の合計量の3質量%の炭酸水素ナトリウムを加えて溶解液とし、この溶解液を煮沸させ、これを60℃に冷却した後に、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を主体とする酵素を添加することによって海藻類を液体化し冷却させて液体海藻類を製造する。この液体褐藻類は、食材、保健機能食品若しくは医薬品の原料等に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐藻原料、液化海藻、その製造方法、及び原料に関する。詳しくは、食材、保健機能食品、医薬品、及び養魚等の養殖用の餌に使用される液化海藻とその製造技術に関する。更に詳しくは、褐藻類を液状化して食用、又は餌用の液化海藻とその製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
古来食用、調味素材として日本人が好んで用いられている褐藻類に属する海藻には、マコンブ、ワカメ、モズク、ヒジキ等が知られている。これらの海藻中には、フコイダン様多糖体(総称して「フコイダン」と呼ばれている。)が含まれていることが知られている。このフコイダンは、コレストロール低下作用、血糖値上昇抑制作用、中性脂肪抑制作用、抗癌作用等の数多くの薬理効果が研究され報告されている(特許文献1)。フコイダンは、主に褐藻類に属する海藻から抽出されている。
【0003】
フコイダンを抽出する方法は種々提案されている。昆布由来のフコイダンは、例えば低温乾燥した昆布を粉砕して粉末状にし、アルコールで洗浄した後、水で加熱して抽出する方法で作られるものが多い(特許文献2)。しかしながら、昆布を乾燥させるとフロダイン及び/又はアルギン酸を含む藻体に含有される各種成分が影響を受けるので、鮮度保持を行うために一定の海水を含む水溶液若しくはその氷に接触させて鮮度を保持するものも提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】WO97/26896号
【特許文献2】特開2001−181303号
【特許文献3】特開2001−309769号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、海中に存在する豊富な海藻類をいかに有効に活用すべきか研究努力を重ね、試行錯誤を繰り返した。海藻類に効果があるものとして前述のように種々研究がなされてはいるが、実用的な効果を期待するにはまだ尚改善の余地がある。前述したとおり海藻類を乾燥させた後、これを加工して食する、又は有効なエキス分を海藻類から抽出することも行なわれているものが多い。
【0005】
しかしながら、いずれの方法も海藻類を自然のままで食するものではないので、天然由来の有効成分が損なわれる問題があり、又消化吸収の点からも問題がある。しかも従来の方法は、いずれも乾燥後、これを水で戻したり、アルコール処理したりするために工程数が多く、高コストになり、特に食材、保健機能食品、及び養殖用の餌として使用することには無理がある。又、大量処理も困難である。
【0006】
又、特許文献3に記載された鮮度保持を保つための保存方法は、主にオキナワモズクのためのものであり、マコンブ、ワカメ等の保存という観点から最適なものではない。
【0007】
本発明は、前述の背景のもとになされたものであり、特に褐藻類に注目し、下記の目的を達成する。
【0008】
本発明の目的は、褐藻類を食材、保健機能食品として液状化するための液化海藻とその製造方法を提供することになる。
【0009】
本発明の他の目的は、低コストで、資源の有効利用を図った液化海藻とその製造方法の提供にある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、鮮度を保持して長期に亘って保存できる液化海藻の原料の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
【0012】
本発明1の液化海藻は、人間用の食材、保健機能食品若しくは医薬品の原料、又は養魚若しくは動物の餌に使用されるものであって、
褐藻類に属する海藻を収穫して、水切りし、前記海藻に炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し加熱して前記海藻を液化処理したものであることを特徴とする。
【0013】
本発明2の液化海藻は、本発明1の液化海藻において、
前記炭酸水素ナトリウム水溶液の添加の後に、前記褐藻類の分解を促進するための酵素剤を添加して、所定温度に保温して液化したものであることを特徴とする。
【0014】
本発明3の液化海藻は、本発明1の液化海藻において、
前記液化処理は、前記海藻類が100質量%と、真水が200〜400質量%と、炭酸水素ナトリウムが前記海藻類と前記真水を合わせた混合体の1〜10質量%とを混合して液体化する処理であることを特徴とする。
【0015】
本発明4の液化海藻は、本発明2の液化海藻において、
前記液化処理は、前記海藻類が100質量%と、真水が250〜380質量%と、炭酸水素ナトリウムが前記海藻類と前記真水を合わせた混合体の6〜15質量%と、前記酵素剤を0.5〜2.0質量%とを混合して液体化する処理であることを特徴とする。
【0016】
本発明5の液化海藻の製造方法は、
収穫した褐藻類に属する海藻の水切りを行う水切り工程と、
真水に炭酸水素ナトリウムを加え溶解液とする炭酸水素ナトリウム溶解工程と、
前記溶解液に前記水切りされた前記海藻を浸す海藻類浸漬工程と、
前記海藻が浸された前記溶解液を煮沸して前記海藻を液状化する液状化工程と、
前記煮沸温度より低い温度の前記海藻に前記海藻を分解する酵素剤を添加する酵素添加工程と、
前記煮沸された液体海藻を冷却する冷却工程とからなる。
【0017】
本発明6の液化海藻の製造方法は、本発明5の液化海藻の製造方法において、
前記液状化工程は、前記真水を前記海藻の250〜380質量%と、前記炭酸水素ナトリウムを前記海藻と前記真水を合わせた混合体の6〜15質量%とを加えるものであり、
酵素添加工程は、前記酵素剤を0.5〜2.0質量%を加えるものであることを特徴とする。
【0018】
本発明7の液化海藻の原料は、本発明1ないし6に記載の液化海藻の原料であって、
前記海藻を収穫して水切りした後、前記海藻の表層のみを乾燥させて、冷凍したものであることを特徴とする。
【0019】
本発明8の液化海藻の原料は、本発明7の液化海藻の原料であって、
前記乾燥は含水率88〜87質量%であり、前記冷凍はマイナス10〜15℃であることを特徴とする。
[原料となる海藻]
本発明で使用する海藻は、褐藻類に属する海藻を使用する。収穫して水切りした後、海藻の表層のみを風乾燥させると良い。この乾燥は、乾燥は含水率88〜87質量%が最適である。この後に直ちに液状化処理しても良いが、大量に収穫された場合、マイナス10〜15℃で冷凍すると保存ができて良い。
[液状化処理]
原料となる海藻の液状化は、加熱釜に原料の海藻に炭酸水素ナトリウム水溶液、又は原料の海藻と水を混合したものに炭酸水素ナトリウムを添加した後、これを加熱して液化処理する。この液化処理は、海藻類が100質量%と、真水が200〜400質量%と、及び、炭酸水素ナトリウムが海藻類と真水を合わせた混合体の1〜10質量%を混合して液体化する処理すると良い。
【0020】
この炭酸水素ナトリウムによる液化処理のみでも液状化は可能であるが、海藻の分子をより短い分子に分解するには、褐藻類の分解を促進するための酵素剤を添加して、液化すると良い。この酵素による分解処理は、酵素の特性に合致させて所定温度に所定時間保温して行う。この酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を用いると良い。
【0021】
この酵素による液化処理は、海藻類が100質量%と、真水が250〜380質量%と、炭酸水素ナトリウムが海藻類と前記真水を合わせた混合体の6〜15質量%と、酵素剤を0.5〜2.0質量%とを混合して液体化すると良い。
【発明の効果】
【0022】
以上詳記したように、本発明の液化海藻とその製造方法は、褐藻類である海藻を液状化したので、人間、動物、魚類にとって消化吸収が良く、食材、保健機能食品、餌等に使用が可能になった。又、本発明の液化海藻の原料は、長期に亘って鮮度を維持した状態で保存が可能になった。更に、従来大量に廃棄処分されていた海藻の有効利用を図ることができるようになったので、環境を悪化させることなく資源を有効利用できるようになり、低コストで大量に製造、保管ができ、海藻の有効利用に寄与することとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の製造工程を示したフロー図である。このフロー図に従い本発明の製造方法を具体的に説明する。本発明で使用する海藻類は褐藻類である。本実施の形態において、海藻類はマコンブ、ワカメを適用するものとする。マコンブ、ワカメはどの漁場においても大量に養殖採取されるものであり、魚類養殖場の水質浄化作用もあるため、各地で採取されるものでもある。これらのマコンブは収穫後、遮光率85%以上の寒冷紗(ポリエステル等でできたレース地のような布地で、温度や日射量を調節するために使われるもの。)の下で、網干し場に広げまたロープに吊り下げて水切りを行う(工程1)。
【0024】
処理に長時間を要する場合は乾燥させることもある。又、直ちに次の処理ができない場合は、冷凍保管されることもある。これは採取後短時間で海藻類が腐敗してしまうことを防ぐためである。この水切りされた海藻類は予め準備されている溶解液に浸される(工程2)。この溶解液は真水(工程3)に炭酸水素ナトリウム(工程4)を溶解させたものである。又、溶解液は予め準備しなくても、褐藻類、真水、炭酸水素ナトリウムを順序不順に混合させて溶解液としてもよい。現場の状況に応じて処理されればよい。
【0025】
更に具体的に説明すると、この液化処理は、海藻類が100質量%、真水が200〜400質量%と、炭酸水素ナトリウムが海藻類と真水を合わせた混合体の1〜10質量%とを混合する処理である。褐藻類の質量は海水から引き上げられて水切りされた後のものを基準とする。好ましくは、褐藻類に、褐藻類の300質量%の真水と、褐藻類と真水を合計した混合液の3質量%の炭酸水素ナトリウムを加えたものがよい。
【0026】
この各々の混合割合は海藻類の種類によって異なってくる。各々の海藻類に応じて経験的に定められた最適値に合わせるようにする。次にこの褐藻類の浸漬された溶解液を煮沸させる(工程5)。これは、漁場においては、生鮮褐藻類を採取した状態で水切りされたものをそのまま釜の中に入れ攪拌しながら煮沸することになる。
【0027】
1〜2トン容量の釜であると、2時間で完全に溶解し、海藻類は液体化する。次に煮沸された溶解液は、液体海藻類として冷却させる(工程6)。この冷却は、例えば3〜4時間放置して熱を冷ますようにして冷却する。又、大量生産で早く処理させる必要があるときは、冷却設備等により強制的に短時間で冷却させるようにしてもよい。冷却された液体海藻類は、例えば20リットル程度のポリ容器に分割して入れ保管する(工程7)。このポリ容器保管は、人手での持ち運びができ運搬が容易である。冷却された液体海藻類はすぐそのまま利用される場合と保管後一定期間をおいてから利用される場合がある。
【0028】
[養魚用の餌としての使用例]
このように、完成した液体海藻類は、養魚用の場合、他の養魚用飼料に配合させて使用される(工程8)。この配合割合は、養魚用の場合、投与する飼料の量の3〜10質量%が目安である。又、この液体海藻類を配合して給餌する期間は、1回当たり連続して1〜3ヶ月間であり、1年間でみた場合、給餌回数2〜3回で6ヶ月以内が目安である。この配合の方法は、例えば、市販の乾燥しているペレット商品に浸潤吸着させる、又は現場調合のモイストペレット(水分を含んだ固形飼料)の場合は、攪拌造粒の際に液体海藻類を添加して配合する。
【0029】
養魚以外に例えば家畜に与えるような場合には、家畜の飲料水に入れ希釈させて飲ませることもでき、養魚用と同様に他の飼料に混ぜて投与することもできる。又、詳細は説明しないが、養魚用、他の養殖用、あるいは家畜の飼料以外に、新鮮で安全面が考慮されれば食品用の加工食品として利用することもできる。これらの効用は前述したとおりで、研究結果に沿う内容が人間の食品用にも期待できる。
【0030】
以上種々説明したが、本発明は実施の形態に限定されないことはいうまでもない。尚、本発明で完成した製品を液体海藻類と称したが、液状海藻類と称しても同様であり、本発明の要旨に含まれる範囲においては他の表現でもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
図2は、本発明のマコンブを原料に液化工程を示したフロー図である。基本的には図1の液化工程と同様である。本実施例1の実験地は、長崎県の橘湾奥に位置する長崎市戸石漁業協同組合管理の魚類養殖用区画漁業権内である。また、コンブ養殖地は、前記実験地の漁業権に隣接した同組合の共同漁業権内であり コンブの種類はマコンブである。
【0032】
このマコンブを収穫した後に水切りし、圧縮して袋詰めして冷凍した。通常収穫してすぐ全てを液化処理するようなことはしないので、一般的には冷凍して冷凍倉庫に保管する。使用するときに需要に応じて必要量を解凍して液化する。一方、予め炭酸水素ナトリウムと、真水、本例では水道水とを所定の割合の炭酸水素ナトリウム水溶液を溶解液として準備しておいた。
【0033】
これに解凍したマコンブを一緒に混合させ煮沸釜に入れる。この煮沸釜は既存のいわし等の煮干釜に使用されるものを使用した。煮沸釜には、コンブと水道水とを1対3の割合で投入し、このコンブと水道水の全量の3質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を入れて混合体とし、蒸気ボイラーで煮沸した。この混合割合は、海藻の状態で調整されるが、本例の場合は冷凍されたものを解凍して使用したので前述の割合とした。約2時間煮沸させこの混合体全体を液状に溶解させた。これを60〜65℃まで放熱して冷却させた。これが本実施例1の液体海藻類である。これを複数の18リットルのポリ容器に分配して入れ、予冷庫で冷暗保存した。
【0034】
[使用例1]
このようにして製造した本発明の液体海藻類(コンブ)をトラフグ養魚用飼料へ配合して試験し、トラフグへの給餌効果を確認した。この給餌効果の確認方法は、トラフグの成長過程において、液体海藻類を配合しない場合(従来の給餌方法)と、液体海藻類を配合した場合(液体海藻類を添加した方法)と、で各々飼料を投与しその比較をして行った。液体海藻類の配合しない場合の飼料は、抗酸化剤やビタミン等をモイストペレットへ0.5質量%の質量割合で配合している。液体海藻類の配合した飼料は、液体コンブをモイストペレットヘ5質量%の質量割合で配合した。
【0035】
表1のA,B,Cは同一配合条件で、異なる人が異なるトラフグに投与したことを示している。表の測定値は、配合なし、あり、ともに同一所定期間(2ヶ月間)での結果である。以下に示す表1は、トラフグの成長状態を魚体の変化を測定して表示したものである。
【0036】
【表1】

3者に若干のバラツキがあるものの、平均で体長と実体重が配合なしの場合に比して、配合ありの方が伸びていることを確認した。又、特異的変化として、腸管の状態を推定できる腸・体長比も確実に伸びており、さらに尾鰭率も伸びていることを確認した。以上のことから、トラフグのコンディションに多少の相違はあるものの、傾向として本発明の液体海藻物(コンブ)の有効性は確認できた。
[使用例2]
次に示す表2は、前述同様の図2のフローにより製造した液体海藻にもとづくトラフグの成長過程を調査したものである。使用した海藻は、実施例1のものと同一のものを使用した。2才魚のトラフグへ液体コンブをモイストペレットに配合して約40日間投与して飼育した結果のものである。表2のA〜Dは異なる配合者を示しているが、配合条件は全て同一である。尚、測定開始時は2004年10月10日で、測定終了時は2004年11月24日である。
【表2】

肝比重は真水の水温15℃に換算した比重で、0.970以下は脂肪肝症が懸念される実施対象のトラフグへは秋に投与している。秋は一般に海水温の降下とともに食欲が高まり摂餌量が増え、成長量も急増する。本実施例1の場合も1日当たり平均で6.14g、1ヶ月で平均185g、最大237gと順調に成長した。
【0037】
しかも、食い込みによる肝・体重比が約25質量%増大したにもかかわらず、肝比重の軽減は見られず、脂肪肝症への移行がほとんどなく健康な成長状態にあると判断された。結果として、4者とも成長率の向上がみられ、2才魚は出荷時期の魚になるが、本発明の液体海藻類(液体コンブ)の有効性は確認できた。
【0038】
[実施例2]
前述した実施例1は、主に養魚用の餌用として開発したものである。実施例2は、主に食品用として開発したものである。以下、この製造工程を詳記する。図3は、マコンブを原料に液化工程を示したフロー図である。基本的な工程は図2に示した工程と同様である。本実施例2で使用したマコンブは、実施例1と同一の産地のものである。
【0039】
成長・品質共に良好な葉体のみを摂取したマコンブを収穫した後水切りし(工程1〜3)、遮光率85%以上の寒冷紗の下の風通しの良い場所で、葉1枚単位で約30分程度吊り下げて表層のみを乾燥させる(工程1〜3)。表層のみを乾燥させることにより、表面に皮膜を形成するので、これが保護膜を形成し細胞膜及びその内部はそのまま壊れることなく残る。この乾燥は含水率で約88%の水分が約87%程度までの低下である。この低下は質量比で約1.8%低下する程度である。この後、その先端部等の汚れ部分を切り捨てて(工程4)、茎部と葉体部は別々にポリエチレン袋に内部の空気を抜いて収納して冷凍する(工程5〜6)。この冷凍温度は、細胞を破壊しない程度のマイナス10〜15℃が好ましく、これより高温では腐敗し易く、低温では細胞を破壊することになる。
【0040】
通常収穫して直ちに全てを液化処理するようなことはないので、一般的には冷凍して倉庫に保管する。即ち、収穫後は直ちに、液化するのであればこの冷凍工程は、必ずしも必要ではないが、液化して保存するより鮮度が保てる等の理由により、冷凍により保存し需要に応じて後述する液化を行う。使用するときに需要に応じて必要量を解凍する。この解凍は、風通しの良いところで自然解凍が好ましい(工程7)。
【0041】
解凍が終了したら、これを裁断機にかけて幅5〜6cmに裁断する(工程8)。一方予め、炭酸水素ナトリウムと真水を準備しておく。炭酸水素ナトリウムの量は、葉体部で水と原料の2質量%、茎の部で水と原料の3質量%である(工程9)。真水の量は、攪拌混合する全量に対して釜容量の70質量%以内である。真水を加熱釜に投入し(工程10)、炭酸水素ナトリウムも投入して真水に炭酸水素ナトリウムを溶解させる(工程11)。
【0042】
これに解凍したコンブを一緒に混合させ煮沸釜に入れる(工程12)。この煮沸釜は蒸気熱で加熱して90℃まで加熱した(工程13)。このとき、煮沸釜で加熱する前に水蒸気を解凍したコンブに吹き込んで、加熱と同時に水分を付加する工程を加えても良い。90℃まで加熱したら60℃まで自然放熱させる。この段階で原料は、炭酸水素ナトリウムの分解作用により、部分的には溶解した状態となる。60℃に自然冷却したら、分解酵素を添加する。この酵素剤は、ペクチナーゼを主体とするものであり、「ペクチナーゼXP−534 NEO」(商標)、ナガセムケテックス株式会社(所在地;日本国京都府)製を用いた。
【0043】
酵素剤の量は、真水と原料に対して0.3質量%を、酵素剤の質量の約10倍の水に溶解させて、60℃に冷却した前述した煮沸釜に投入する(工程15〜17)。そして、これを40℃〜60℃に保って、約6時間以上、定期的に攪拌してマコンブの液化を促進させる(工程18)。液化が完了したら、煮沸釜を90〜100℃に加熱して、酵素剤の活性を失効させる(工程19)。
【0044】
液化されたマコンブを自然冷却して所定の容器に詰めて、冷蔵庫に入れて3〜5℃で保存する(ステップ20〜23)。本実施例の液化マコンブは、炭酸ナトリウムによる細胞膜の破壊と酵素剤による分解を組み合わせたので、マコンブが有しているフコイダン、アルギン酸等の有効成分を変質させることなく、効率的に液化できた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、海藻類を液体化する製造過程を示したフロー図である。
【図2】図2は、コンブを液体化した実施例1の製造過程を示すフロー図である。
【図3】図3は、コンブを液体化した実施例2の製造過程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
1:水切り処理
2:溶解液浸漬処理
3:真水
4:炭酸水素ナトリウム
5:煮沸処理
6:冷却処理
7:保管処理
8:他の養魚用餌料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間用の食材、保健機能食品若しくは医薬品の原料、又は養魚若しくは動物の餌に使用されるものであって、
褐藻類に属する海藻を収穫して、水切りし、前記海藻に炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し加熱して前記海藻を液化処理したものである
ことを特徴とする液化海藻。
【請求項2】
請求項1に記載の液化海藻において、
前記炭酸水素ナトリウム水溶液の添加の後に、前記褐藻類の分解を促進するための酵素剤を添加して、所定温度に保温して液化したものである
ことを特徴とする液化海藻。
【請求項3】
請求項1に記載の液化海藻において、
前記液化処理は、前記海藻類が100質量%と、真水が200〜400質量%と、炭酸水素ナトリウムが前記海藻類と前記真水を合わせた混合体の1〜10質量%とを混合して液体化する処理である
ことを特徴とする液化海藻。
【請求項4】
請求項2に記載の液化海藻において、
前記液化処理は、前記海藻類が100質量%と、真水が250〜380質量%と、炭酸水素ナトリウムが前記海藻類と前記真水を合わせた混合体の6〜15質量%と、前記酵素剤を0.5〜2.0質量%とを混合して液体化する処理である
ことを特徴とする液化海藻。
【請求項5】
収穫した褐藻類に属する海藻の水切りを行う水切り工程と、
真水に炭酸水素ナトリウムを加え溶解液とする炭酸水素ナトリウム溶解工程と、
前記溶解液に前記水切りされた前記海藻を浸す海藻類浸漬工程と、
前記海藻が浸された前記溶解液を煮沸して前記海藻を液状化する液状化工程と、
前記煮沸温度より低い温度の前記海藻に前記海藻を分解する酵素剤を添加する酵素添加工程と、
前記煮沸された液体海藻を冷却する冷却工程と
からなる液化海藻の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液化海藻の製造方法において、
前記液状化工程は、前記真水を前記海藻の250〜380質量%と、前記炭酸水素ナトリウムを前記海藻と前記真水を合わせた混合体の6〜15質量%とを加えるものであり、
酵素添加工程は、前記酵素剤を0.5〜2.0質量%を加えるものである
ことを特徴とする液化海藻の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の液化海藻の原料であって、
前記海藻を収穫して水切りした後、前記海藻の表層のみを乾燥させて、冷凍したものである
ことを特徴とする液化海藻の原料。
【請求項8】
請求項7に記載の液化海藻の原料であって、
前記乾燥は含水率88〜87質量%であり、前記冷凍はマイナス10〜15℃である
ことを特徴とする液化海藻の原料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−254899(P2006−254899A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299834(P2005−299834)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(504141551)
【Fターム(参考)】