説明

液晶配向剤

【課題】液晶配向膜の形成後に空気にさらされたとしても膜の吸水に伴う劣化が発生せず、塗膜の剥離性に優れるとともに、印刷性にも優れる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、ただし前記ジアミンがフェニル−ジヒドロインデン構造を有する特定のジアミンおよびカルボキシル基を有するジアミンを含むものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶配向剤に関する。
さらに詳しくは、液晶配向膜の製造工程において良好なリワーク性を示し、耐水性に優れる液晶配向膜を形成することができるとともに印刷性にも優れる液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS(In−Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend:光学補償ベンド)型などの各種液晶表示素子が知られている。
これらの液晶表示素子において液晶分子を配向する機能を有する液晶配向膜の材料としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂材料が知られており、特にポリアミック酸またはポリイミドからなる液晶配向膜は耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などに優れており、多くの液晶表示素子に使用されている(特許文献1〜6)。
このような液晶配向膜は、基板上に液晶配向剤を塗布して塗膜とし、必要に応じて該塗膜にラビング処理または光照射処理を施すことにより形成される。次いで液晶配向膜が形成された基板の2枚を一対としてその間隙に液晶分子を挟持して液晶セルを構成することとなる。ここで、液晶配向膜の形成から液晶セルの構成までの間に電圧保持率などの電気特性が劣化する場合があることが知られている。これは、形成された液晶配向膜が空気にさらされたときに、空気中の水分を吸収して劣化することに起因すると信じられている。上記の如き吸水劣化を改善すべく、液晶配向剤にエポキシ基を有する化合物を配合することが提案されており(特許文献7)、一定の効果を挙げている。
【0003】
ところで、液晶パネル製造における液晶配向膜の形成工程において発生した不良基板(塗膜のピンホール、塗布ムラなどの欠陥を含んだ膜が形成された基板)は、基板上の不良塗膜を剥離したうえで基板を再利用する(リワークする)ことがしばしば行われている。そのため、かかる観点からは剥離性が良好な液晶配向膜材料が望まれている。ところが、上記の吸水劣化を低減する目的でエポキシ基を有する化合物を配合した液晶配向剤から形成された液晶配向膜はリワークの際の剥離性が不十分であることが指摘されている。
さらに、液晶表示素子業界における近年の厳しいコスト削減の要請のもと、上記の如きリワークの必要な不良塗膜の出現確率を可及的に低減すべく、印刷性に極めて優れる液晶配向剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開昭56−91277号公報
【特許文献4】米国特許第5928733号明細書
【特許文献5】特開昭62−165628号公報
【特許文献6】特開平11−258605号公報
【特許文献7】特開平6−222366号公報
【特許文献8】特開平6−281937号公報
【特許文献9】特開平5−107544号公報
【特許文献10】特開2010−97188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、
液晶配向膜の形成後に空気にさらされる有意の時間が存在したとしても、膜の吸水に伴う劣化が発生することがない耐水性を有し、しかも一旦形成された塗膜の剥離性に優れるとともに、印刷性にも優れる液晶配向膜材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記ジアミンが下記式(A1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式(A1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり;
は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基または水酸基であり:
は、それぞれ、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく、前記フェニレン基およびシクロへキシレン基は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキレン基、水酸基、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されていてもよく;
aは0〜5の整数であり;
bは0〜4の整数であり;
cは0〜3の整数である。)
で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むものである、前記液晶配向剤によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜の形成後に空気にさらされる有意の時間が存在したとしても電気特性の悪化などの表示品位の低下を来たす劣化が発生することがない液晶配向膜を与えることができ、しかも一旦形成された塗膜の剥離性に優れるものである。さらに、本発明の液晶配向剤は印刷性に優れ、リワークの必要な不良塗膜が出現する確率が可及的に低減されたものである。
本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、表示品位に優れるとともに、リワークに伴うコストの発生が抑制されたものである。従って本発明の液晶表示素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、上記のとおり、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、
ただし前記ジアミンは、上記式(A1)で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むものであることを特徴とする。
【0011】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献10(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0012】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物および2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物および2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることがさらに好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記の如き脂環式テトラカルボン酸二無水物(好ましくは2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物および2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種、より好ましくは2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物および2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種、特に好ましくは2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物)を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましい。テトラカルボン酸二無水物としては2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種のみからなるものであることがさらに好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物のみからなるものであることが最も好ましい。
【0013】
<ジアミン>
本発明におけるジアミンは、上記式(A1)で表される化合物(以下、「ジアミン(1)」という。)ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物(以下、「ジアミン(2)」という。)を含むものである。
本発明におけるジアミンとしては、ジアミン(1)およびジアミン(2)のみからなるものであってもよく、あるいはジアミン(1)およびジアミン(2)以外にこれら以外のジアミン(以下、「ジアミン(3)」という。)を含有していてもよい。
上記ジアミン(1)におけるXは単結合であることが;
aは3であることが;
bおよびcは、それぞれ、0であることが、それぞれ好ましい。ジアミン(1)としては、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、すなわち下記式(A1−1)
【0014】
【化2】

【0015】
で表される化合物を使用することが、入手性および掲載される液晶配向膜の剥離性の観点から好ましい。
上記ジアミン(2)中のカルボキシル基の数は、1〜4個であることが好ましい。かかるジアミン(2)として、好ましくは下記式(A2)
【0016】
【化3】

【0017】
(式(A2)中、nは0〜2の整数であり;
dは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただしdが複数存在するとき、各dは同一であっても相違していてもよく;
は、それぞれ、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
は単結合、メチレン基、フルオロメチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のフルオロアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、−NHCO−(以上において「*」は、これを付した結合手が式(A2)の左方向に向くことを表す。)または下記式(X−1)
【0018】
【化4】

【0019】
(式(X−1)中、Rは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または基−RCOOH(ここで、Rは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよい。)である。)
で表される基であり、そして
式(A2)中のカルボキシル基の数は1以上の整数である。)
で表される化合物である。
上記式(A2)におけるRとしては、それぞれ、メチレン基または炭素数2〜5のアルキレン基であることが好ましい。式(A2)中のカルボキシル基の数は1〜4の整数であることが好ましい。
上記式(A2)で表される化合物としては、上記式(A2)においてdのうちの少なくとも一つが1であって基Xが上記式(X−1)で表される基ではない化合物であるか、または
上記式(A2)においてdのすべてが0であって基Xが上記式(X−1)で表される基である化合物であることが好ましい。
上記式(A2)で表される化合物としてさらに好ましくは、例えば下記式(A2−1)〜(A2−5)
【0020】
【化5】

【0021】
(上記式中、Xは、それぞれ、上記式(A2)におけるXと同義であり;
は炭素数1〜6のアルキル基であり;
dは、それぞれ1〜4の整数であり;
eは、それぞれ、1〜5の整数であり;
fは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただし2つのfがともに0であることはない。)
のそれぞれで表される化合物である。上記式(A2−1)および(A2−5)におけるdならびに上記式(A2−2)におけるfは、それぞれ、1であることが好ましい。
上記式(A2)で表される化合物としては、上記式(A2−1)、(A2−2)または(A2−5)で表される化合物が好ましく、これらの好ましい例としては、それぞれ、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、下記式(A2−2−1)、(A2−2−2)および(A2−5−1)
【0022】
【化6】

【0023】
(式(A2−2−2)中のXは上記式(A2−2)におけるXと同義であり、fは1〜4の整数である。)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記ジアミン(3)は、ジアミン(1)およびジアミン(2)以外のジアミンである。ジアミン(3)としては、液晶分子を垂直に配向する機能を有する基を有するジアミン(以下、「ジアミン(3−1)」という。)およびそれ以外のジアミン(以下、「ジアミン(3−2)」という。)を挙げることができる。
上記ジアミン(3−1)としては、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンであることが好ましい。ここで、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンがさらに炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基または炭素数4〜20のアルコキシル基を有していてもよい。ここでステロイド構造を有する基としては、例えばコレスタン−3−イル基、コレスタン−5−エン−3−イル基、コレスタン−24−エン−3−イル基、コレスタン−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基などを挙げることができる。
本発明におけるジアミン(3−1)としては、例えば1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、下記式(3−1−1)
【0024】
【化7】

【0025】
(式(3−1−1)中、Xは単結合、メチレン基、炭素数2または3のアルキレン基、−O−、−COO−、−OCO−、−X’−R−、−R−X’−または−X’−R−X’−(ただし、X’は、それぞれ、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「+」はこれを付した結合手が式(3−1−1)の左方向に向くことを表す。)であり、Rは、それぞれ、炭素数2または3のアルキレン基であり、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、hは0〜2の整数であり、iは0または1であり、h+iが2以上のときRは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、h+iが0または1のときRはステロイド構造を有する基、炭素数4〜20のアルキル基または炭素数4〜20のフルオロアルキル基である。)
で表される化合物などを挙げることができる。上記式(3−1−1)におけるアルキル基およびフルオロアルキル基としては、それぞれ、直鎖のものが好ましい。
【0026】
本発明におけるジアミン(3−1)としては、上記式(3−1−1)で表される化合物が好ましく、その具体例として、例えばn−ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、下記式(3−1−1−1)〜(3−1−1−5)
【0027】
【化8】

【0028】
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
ジアミン(1)およびジアミン(2)に加えて上記の如きジアミン(3−1)を含むジアミンを用いて合成されたポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドを含有する液晶配向剤は、特にVA型液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために好適である。
上記ジアミン(3−2)は、ジアミン(1)、ジアミン(2)およびジアミン(3−1)以外のジアミンであり、例えばこれら以外の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどであることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0029】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエートおよび4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエートなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献10(特開2010−97188号公報)に記載のジアミンを用いることができる。
【0030】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(1)を、全ジアミンに対して、1モル%以上含むものであることが好ましく、1〜90モル%含むものであることがより好ましく、10〜70モル%含むものであることがさらに好ましく、特に20〜50モル%含むものであることが好ましく;
ジアミン(2)を、全ジアミンに対して、5モル%以上含むものであることが好ましく、9〜98モル%含むものであることがより好ましく、20〜80モル%含むものであることがさらに好ましく、特に40〜70モル%含むものであることが好ましい。前記ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンにおけるジアミン(3−1)の割合は、全ジアミンに対して、40モル%以下の範囲であることが好ましく、0.1〜40モル%であることがより好ましく、1〜30モル%であることがさらに好ましく、特に10〜20モル%であることが好ましい。前記ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンにおけるジアミン(3−2)の割合は、全ジアミンに対して、30モル%以下の範囲であることが好ましく、1〜20モル%含むものであることがより好ましい。
【0031】
<分子量調節剤>
前記ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。特定重合体を、かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0032】
<ポリアミック酸の合成>
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
【0033】
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0034】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒ならびにフェノールおよびその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、または前記第一群の有機溶媒から選択される1種以上とアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素および炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒および第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに30重量%以下であることが好ましい。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0035】
<ポリイミドの合成>
前記ポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30〜90%であることが好ましく、40〜80%であることがより好ましく、50〜70%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0036】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0037】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドは、これらをそれぞれ濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0038】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドを必須の成分として含有するが、本発明の効果を減殺しない範囲においてその他の成分をさらに含有していてもよい。
かかるその他の成分としては、例えばその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
【0039】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、上記の如きポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド以外の重合体であり、例えばポリオルガノシロキサン、テトラカルボン酸二無水物とジアミン(ただしこのジアミンは、ジアミン(1)およびジアミン(2)のうちの少なくとも一方を含まない。)とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、ポリオルガノシロキサン、他のポリアミック酸および他のポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、ポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【0040】
−ポリオルガノシロキサン−
上記ポリオルガノシロキサンとしては、炭素数4〜40のアルキル基、炭素数4〜40のフルオロアルキル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するポリオルガノシロキサンであることが好ましい。ポリオルガノシロキサンがこのような基を有することにより、これを含有する重合体組成物から形成された液晶配向膜が良好な液晶配向能を発揮することとなり、好ましい。
上記ポリオルガノシロキサンは、上記の基に加えてさらにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンであることがより好ましい。ポリオルガノシロキサンがエポキシ基を有することにより、これを含有する重合体組成物から形成された液晶配向膜が強靭な機械的特性を有し、耐熱性、耐光性などの諸性能に優れることとなり、好ましい。
このようなポリオルガノシロキサンは、例えば
エポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物を含むシラン化合物を、好ましくは有機溶媒、水および触媒の存在下に加水分解縮合してエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを先ず合成し、次いで
該ポリオルガノシロキサンを、炭素数4〜40のアルキル基、炭素数4〜40のフルオロアルキル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基とカルボキシル基とを有する化合物(以下、「カルボン酸(1)」という。)と反応させることにより合成することができる。
エポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物のエポキシ構造は、3−グリシジロキシプロピル基または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基中の1,2−エポキシ構造として存在することが好ましい。
【0041】
上記エポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きエポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物のみからなるものであってもよく、あるいは上記シラン化合物のほかに、他のシラン化合物を含むものであってもよい。
ここで使用することのできる他のシラン化合物としては、例えばメチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
【0042】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きエポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物を、全シラン化合物に対して5モル%以上含有するものであることが好ましく、10モル%以上含有するものであることがより好ましい。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレンなどを;
上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。これらのうち、非水溶性のものを選択して用いることが好ましい。
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物の100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
【0043】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを用いることができ、これらのうち、アルカリ金属化合物または有機塩基を用いることが好ましい。触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いることにより、三次元構造の形成が促進され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られる。このため、後述のカルボン酸との反応時および該反応の生成物を含有する液晶配向剤とした後においてもシラノール基同士の縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる液晶配向剤を得ることができる点で好ましい。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0044】
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計1モルに対して好ましくは0.01〜3モルであり、より好ましくは0.05〜1モルである。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の加水分解縮合反応は、シラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴などの適当な加熱装置を用いて加熱することによって実施することが好ましい。
加水分解縮合反応の際には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱することが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、撹拌しなくてもよく、あるいは混合液を還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応混合物から分離した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液などで洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブスなどの適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0045】
このようにして得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを、次いで好ましくは触媒および有機溶媒の存在下に、カルボン酸(1)と反応させることにより、カルボン酸(1)に由来する炭素数4〜40のアルキル基、炭素数4〜40のフルオロアルキル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。ここで、カルボン酸(1)の使用割合を、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ基1モルに対して、1モル未満とすることにより、上記の基のほかにエポキシ基をも有するポリオルガノシロキサンとすることができる。
カルボン酸(1)としては、例えば下記式(C)
【0046】
【化9】

【0047】
(式(C)中、Xは単結合、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR’側である。)であり、Rはシクロへキシレン基またはフェニレン基であり、f1は1または2であり、ただしf1が2であるとき2個のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、f2は0または1であり;
−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR’側である。)であり、RIIはメチレン基であるか、あるいは炭素数1〜4のアルキル基を有する(ジ)アルキルメチレン基であり、f3は0〜3の整数であり、ただしf3が2または3であるとき複数のRIIは互いに同一であっても異なっていてもよく、f4は0または1であり;
f1が2以上であってf2が1であるときR’は水素原子または炭素数1〜40のアルキル基または炭素数1〜40のフルオロアルキル基であり、f1が1であるかまたはf2が0であるときR’はステロイド構造を有する基、炭素数4〜40のアルキル基または炭素数4〜40のフルオロアルキル基である。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0048】
上記R’の炭素数1〜40のアルキル基および炭素数4〜40のアルキル基は、それぞれ、炭素数5〜20の直鎖のアルキル基であることが好ましく、その具体例として例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、ステアリル基などを挙げることができる。炭素数1〜40のフルオロアルキル基および炭素数4〜40のフルオロアルキル基としては、それぞれ、炭素数4〜20の直鎖のフルオロアルキル基であることが好ましく、その具体例として例えば4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、7,7,7−トリフルオロヘプチル基、11,11,11−トリフルオロウンデシル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、5,5,6,6,6−ペンタフルオロヘキシル基、9,9,10,10,10−ペンタフルオロデシル基などを挙げることができる。ステロイド骨格を有する基としては、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基であることが好ましく、その具体例として例えば3−コレスタニル基、3−コレステニル基、3−ラノスタニル基などを挙げることができる。
上記式(C)におけるRのシクロへキシレン基およびフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基および1,4−フェニレン基であることが好ましい。上記式(C)において−(Rf1−で表される2価の基としては、f1が1である場合として、例えば1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基などを;
f1が2である場合として、例えば4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロへキシレン基、下記式(R−1)および(R−2)
【0049】
【化10】

【0050】
(上記式中、「*」を付した結合手がR’側である。)
のそれぞれで表される基などを挙げることができる。
上記式(C)におけるf3は2または3であることが好ましい。
カルボン酸(1)の具体例としては、例えば4−オクチロキシ安息香酸、4−シクロヘキシル安息香酸、下記式(C−1)〜(C−5)
【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
のそれぞれで表される化合物を挙げることができ、これらのうちから選択される一種以上を使用することが好ましい。
上記式(I)で表される構造を有するカルボン酸の使用割合としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ基1モルに対して、1モル未満とすることが好ましく、1〜90モルとすることがより好ましく、さらに10〜70モルとすることが好ましい。
上記触媒としては、有機塩基、またはエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0054】
上記硬化促進剤としては、例えば3級アミン、イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩、ジアザビシクロアルケン、有機金属化合物、4級アンモニウム塩、ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物などを挙げることができるほか、潜在性硬化促進剤として知られているものを使用することができる。
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
上記有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコールなどを挙げることができる。これらのうち、エーテル、エステルまたはケトンが、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる割合で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。
上記の如きポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜50,000であり、より好ましくは1,000〜10,000である。
【0055】
−エポキシ化合物−
上記エポキシ化合物は、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物であるが、上記のポリオルガノシロキサンまたは後述の官能性シラン化合物に該当するものは除かれる。
このようなエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計(テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A1)で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ならびにその他の重合体の合計をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下であり、さらに好ましくは10重量部以下であり、特に1重量部未満であることが好ましい。
【0056】
−官能性シラン化合物−
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら官能性シラン化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。
【0057】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体ならびに必要に応じて任意的に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤に使用できる有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0058】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10℃〜50℃であり、より好ましくは20℃〜30℃である。
【0059】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。
本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)ないし(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)および(3)は各動作モードに共通である。
【0060】
(1)先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)TN型、STN型またはVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法またはインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。本発明の液晶配向剤は、特にこれをオフセット印刷法に用いたときに印刷性に優れるという本発明の効果が最大限に発揮されるため、好ましい。
ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO )からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶媒を完全に除去し、必要に応じてポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0061】
(1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
このとき使用される基板および透明導電膜の材質、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに液晶配向剤の塗布方法および塗布後の加熱方法については上記(1−1)と同様である。
形成される塗膜の好ましい膜厚は、上記(1−1)と同様である。
【0062】
(2)本発明の方法により製造される液晶表示素子がVA型の液晶表示素子である場合には、上記のようにして形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、所望に応じて次に述べるラビング処理を行った後に使用に供してもよい。
一方、VA型以外の液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜とする。
ラビング処理は、上記のようにして形成された塗膜面に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
さらに、上記のようにして形成された液晶配向膜に対し、例えば特許文献7(特開平6−222366号公報)や特許文献8(特開平6−281937号公報)に示されているような液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、特許文献9(特開平5−107544号公報)に示されているような液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
本発明の液晶配向膜は、PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。合成例における重合体溶液の溶液粘度およびポリイミドのイミド化率は、それぞれ以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、合成例で特定した各重合体溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、
はその他のプロトン由来のピーク面積であり、
αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0064】
<ポリイミドの合成例>
合成例J−1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物220g(1.0モル)ならびにジアミンとして3−(2,4−ジアミノフェノキシ)コレスタン49g(0.1モル)、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン(上記式(A1−1)で表される化合物)53g(0.2モル)、上記式(A2−2−1)で表される化合物54g(0.2モル)および4,4’−ジアミノジフェニルメタン99g(0.5モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1,900gに溶解し、60℃において6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は約1,400mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,400gを追加し、ピリジン120g(上記ポリアミック酸の有するアミック酸単位1モルに対して1.5モルに相当する。)および無水酢酸153g(上記ポリアミック酸の有するアミック酸単位のモル数に対して1.5倍モルに相当する。)を添加して110℃において4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作により脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約61%のポリイミド(I−1)を約15重量%含有する溶液を得た。
【0065】
合成例J−2〜J−17
上記合成例J−1において、原料モノマーとして使用したテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの種類および量ならびに脱水閉環反応におけるピリジンおよび無水酢酸の使用量(各ポリアミック酸の有するアミック酸単位のモル数に対する倍モル量。)を、それぞれ表1に記載のとおりとしたほかは上記合成例J−1と同様にして、ポリイミド(I−2)〜(I−10)および(II−1)〜(II−7)をそれぞれ15重量%含有する溶液を得た。
これらポリイミド溶液の合成過程におけるポリアミック酸溶液の粘度および得られたポリイミドのイミド化率を、それぞれ表1に示した。
なお、合成例J−11〜J−17は、比較合成例である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1において、原料モノマーの略称は、それぞれ以下の意味であり、「−」はその欄に該当する原料モノマーを使用しなかったことを示す。
[テトラカルボン酸二無水物]
T−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T−2:ピロメリット酸二無水物
[ジアミン]
−ジアミン(1)−
D−1:1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン(上記式(A1−1)で表される化合物)
−ジアミン(2)−
D−2−1:2,2’−ジカルボキシベンジジン(上記式(A2−2−1)で表される化合物)
D−3:3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸
D−4:3,5−ジアミノ安息香酸
−ジアミン(3−1)−
D−5:3−(2,4−ジアミノフェノキシ)コレスタン
D−6:3−(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン
D−7:4−(2−(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ)エトキシ)ベンゼン−1,3−ジアミン(上記式(3−1−1−4)で表される化合物)
D−8:3,5−ジアミノ安息香酸4−(2−(4−(−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ)エチル(上記式(3−1−1−5)で表される化合物)
−ジアミン(3−2)−
D−9:p−フェニレンジアミン
D−10:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
【0068】
<ポリオルガオンシロキサンの合成例>
合成例P−1
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン99g、溶媒としてメチルイソブチルケトン500gおよび触媒としてトリエチルアミン10gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
この加水分解縮合物について、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとカルボン酸(1)との反応]
200mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、溶媒としてメチルイソブチルケトン30g、カルボン酸(1)として4−オクチロキシ安息香酸25g(上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基に対して25モル%に相当する。)および触媒としてUCAT 18X(商品名。サンアプロ(株)製のエポキシ化合物の硬化促進剤である。)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(S−1)を得た。このS−1につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6,300であった。
【0069】
合成例P−2〜P―10
上記合成例P−1において、表2に記載した種類および量のカルボン酸(1)を用いたほかは合成例P−1と同様にしてエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成および該ポリオルガノシロキサンとカルボン酸(1)との反応を行うことにより、ポリオルガノシロキサン(S−2)〜(S−10)をそれぞれ得た。これらポリオルガノシロキサンのMwを表2に合わせて示した。
【0070】
【表2】

【0071】
表2におけるカルボン酸(1)の略称は、それぞれ以下の意味であり、カルボン酸(1)の使用量(モル比)は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基に対するモル比(%)である。
1−1:4−オクチロキシ安息香酸
1−2:上記式(C−1)で表される化合物
1−3:上記式(C−2)で表される化合物
1−4:上記式(C−3)で表される化合物
1−5:上記式(C−4)で表される化合物
1−6:上記式(C−5)で表される化合物
【0072】
<液晶配向剤の調製および評価>
実施例1
(I)液晶配向剤の調製
ポリイミドとして上記合成例J−1で得たポリイミド(I−1)を含有する溶液にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに上記合成例P−3で得たポリオルガノシロキサン(S−3)をポリイミド(I−1)100重量部に対して5重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:BC=48:52(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
(II)塗膜の形成および評価
(1)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤につき、オフセット型の液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、蝕針式膜厚計(KLAテンコール社製)で測定した平均膜厚が600Åである塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷ムラおよびピンホールの有無を調べたところ、印刷ムラおよびピンホールとも観察されず、印刷性は「良好」であった。
(2)塗膜の膜厚均一性の評価
上記で形成した塗膜につき、蝕針式膜厚計(KLAテンコール社製)を用いて基板の中央部における膜厚と基板の外側端から15mm中央に寄った位置における膜厚とをそれぞれ測定した。両者の膜厚差が20Å以下のものを膜厚均一性「良好」、膜厚差20Åを超えたものを膜厚均一性「不良」として評価したところ、塗膜均一性は良好であった。
(3)塗膜の耐水性の評価
上記で塗膜を形成した基板につき、(株)溝尻光学工業所製「DVA−36LH」自動エリプソメーターを使用し、光源としてHe−Neレーザー(632.8nm)を用いて入射角度φ=70°にて膜厚の測定を行った。
次いで、この基板を相対湿度50%、25℃の恒温恒湿槽に18時間保管して吸湿させた。その後、同様にして再度膜厚測定を行って吸湿前後の平均膜厚の変化率を算出した。計算には下記数式(2)
【0073】
【数1】

【0074】
を用いた。この塗膜の変化率は0.4%であった。
ここで、この変化率が0.5%未満であった場合には耐水性は「優良」、0.5〜1.5%であった場合には耐水性は「良好」、1.5%を超えた場合には耐水性は「不良」であると判断することができる。
(4)塗膜の剥離性評価
上記で調製した液晶配向剤を用い、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布した後、ホットプレート上で120℃にて3分間加熱した後230℃のクリーンオーブン内で30分間加熱して蝕針式膜厚計(KLAテンコール社製)測定した平均膜厚が600Åである塗膜を形成した。
次いでN−メチル−2−ピロリドン溶液を液温25℃に調整し、この中に上記塗膜を形成した基板を浸漬時間を変量として浸漬した。次いで基板をアセトンで洗浄した後、エアブローによりアセトンを除去したうえで、上記と同様にして蝕針式膜厚計により膜厚を再度測定し、浸漬後の膜厚が浸漬前の10%未満となる浸漬時間を調べた。
この時間が10秒以下であった場合を剥離性「優良」、10秒を超えて10分未満であった場合を剥離性「良好」、10分以上であった場合を剥離性「不良」として評価したところ、この塗膜の剥離性は「良好」であった。
【0075】
(II)液晶セルの製造および評価
(1)液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した。次いで一対の基板を各液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。その後、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
(2)耐熱安定性の評価
上記で製造した液晶セルにつき、交流6.0V(ピーク−ピーク)を重畳した30Hz、3.0Vの矩形波を、70℃の環境温度で500時間印加した。500時間経過後のセルを、偏光方向を90°ずらした2枚の偏光板に挟んで目視で観察したときに、表示不良が見られなかった場合を耐熱安定性「良好」、表示不良が見られた場合を耐熱安定性「不良」として評価したところ、この液晶セルの耐熱安定性は「良好」であった。
(3)電圧保持率の測定
上記と同様にして製造した液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定したところ、この液晶セルの電圧保持率は97%であった。ここで、測定装置には(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を使用した。
この電圧保持率が96%以上であった場合には電圧保持率は「優良」、94%以上96%未満であった場合には電圧保持率は「良好」、94%未満であった場合には電圧保持率は「不良」であると判断することができる。
【0076】
実施例2〜11および比較例1〜4
使用したポリイミドおよびポリオルガノシロキサンの種類および量を、それぞれ表3に記載のとおりとしたほかは、上記実施例1と同様にして液晶配向剤を調製し、評価した。なお、実施例3においてはポリオルガノシロキサンを使用しなかった。
評価結果は表3に示した。
なお、比較例2および4においては、ともに柚子肌状の印刷ムラが観察されたため、印刷性が「不良」であると判断した。
比較例5
ポリイミドとして上記合成例J−15で得たポリイミド(II−5)を含有する溶液にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに上記合成例P−7で得たポリオルガノシロキサン(S−7)をポリイミド(II−5)100重量部に対して5重量部加えて十分に撹拌した後、さらにエポキシ化合物として表3に記載のEP−1をポリイミド(II−5)100重量部に対して5重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:BC=48:52(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤を調製したほかは、上記実施例1と同様にして塗膜の形成およびその評価、液晶セルの製造およびその評価を行った。
比較例6および7
使用したポリイミド、ポリオルガノシロキサンおよびエポキシ化合物の種類および量を、それぞれ表3に記載のとおりとしたほかは、上記比較例5と同様にして液晶配向剤を調製し、評価した。
評価結果は表3に示した。
【0077】
【表3】

【0078】
なお、表3におけるエポキシ化合物の略称は、それぞれ以下の意味である。
EP−1:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
EP−2:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記ジアミンが下記式(A1)
【化1】

(式(A1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり;
は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基または水酸基であり:
は、それぞれ、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく、前記フェニレン基およびシクロへキシレン基は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキレン基、水酸基、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されていてもよく;
aは0〜5の整数であり;
bは0〜4の整数であり;
cは0〜3の整数である。)
で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むものであることを特徴とする、前記液晶配向剤。
【請求項2】
上記テトラカルボン酸二無水物が、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物および2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものである、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記ジアミンがさらに、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンを含むものである、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
ポリオルガノシロキサンをさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成されたことを特徴とする、液晶配向膜。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項7】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸であって、
前記ジアミンが上記式(A1)で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むものであることを特徴とする、前記ポリアミック酸。
【請求項8】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドであって、
前記ジアミンが上記式(A1)で表される化合物ならびにカルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むものであることを特徴とする、前記ポリイミド。

【公開番号】特開2011−257736(P2011−257736A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65958(P2011−65958)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】