説明

液浸露光用レジスト保護膜組成物およびレジストパターンの形成方法

【課題】液浸露光用レジスト保護膜組成物を提供する。
【解決手段】CF=CF−CHCHR(CH−CH=CH(Rは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のフルオロアルキル基を、mは0、1または2を、示す。)等の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体であって、繰り返し単位(A)を全繰り返し単位に対して10モル%以上含む重合体(A)と、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の極性基を有する重合性単量体(b)の重合により形成された繰り返し単位を含むアルカリ可溶性の重合体(B)とを含み、かつ重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む液浸露光用レジスト保護膜組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸露光用レジスト保護膜組成物およびレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の集積回路の製造においては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を基板上の感光性レジストに投影して、該パターン像を感光性レジストに転写するリソグラフィー法が用いられる。通常、前記パターン像は、感光性レジスト上を相対的に移動する投影レンズを介して、感光性レジストの所望の位置に投影される。
【0003】
さらに近年では、液状媒体中における光の波長が液状媒体の屈折率の逆数倍になる現象を利用した露光工程、すなわち投影レンズ下部と感光性レジスト上部との間を液状媒体(水等。)で満たしつつ、投影レンズを介してマスクのパターン像を基板上の感光性レジストに投影する液浸露光工程を含む液浸リソグラフィー法が検討されている。
【0004】
しかし、液浸露光工程においては、投影レンズと感光性レジストの間が水で満たされるため、感光性レジスト中の成分(光酸発生剤等。)が水に溶出する、水が感光性レジスト中に浸入して感光性レジストが膨潤する等の問題がある。そのため、感光性レジスト上にレジスト保護膜を設け、感光性レジストの水中への溶出、水の感光性レジスト中への侵入等を抑制する試みがされている。
【0005】
レジスト保護膜としては、極性基を有する重合性単量体(たとえば、下式(g1)で表される化合物。)の重合により形成された繰り返し単位を含むアルカリ可溶性重合体とフッ素系界面活性剤を含むレジスト保護膜(特許文献1参照。)、および、式CF=CFCFC(CF)(OR)CHCH=CHで表される化合物の重合により形成された下式(G2)で表される繰り返し単位を含む重合体からなるレジスト保護膜(特許文献2参照。)が知られている。ただし、Rは水素原子、または、炭素数1〜15の、アルキルオキシ基もしくはアルキルオキシアルキル基を、示す。
【0006】
【化1】

【0007】
【特許文献1】特開2005−352384号公報
【特許文献2】特開2005−264131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液浸露光工程において感光性レジスト上にレジスト保護膜を形成する場合には、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズに水がよく追従するように、レジスト保護膜を選定するのが望ましい。
【0009】
しかし、特許文献1のレジスト保護膜において開示されるフッ素系界面活性剤は、非重合体状の線状含フッ素化合物と、線状フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートの重合により形成された重合体にとどまる。したがって、前記レジスト保護膜の動的撥水性は充分に高くない。そのため、前記レジスト保護膜を液浸露光用レジスト保護膜として用いた場合、レジスト保護膜上を高速移動する投影レンズに水が充分に追従せず、液浸露光工程を安定実施できないと考えられる。特許文献2のレジスト保護膜の動的撥水性も、未だ充分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、液浸レジスト保護膜特性(水の侵入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制等。)に優れ、かつ動的撥水性に特に優れた水によく滑るレジスト保護膜を得るべく、鋭意検討を行った。その結果、かかる物性に優れたレジスト保護膜を見出した。
【0011】
すなわち、本発明は下記の発明を提供する。
[1] 下記重合体(A)と下記重合体(B)とを含み、かつ重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む液浸露光用レジスト保護膜組成物。
重合体(A):下式(a1)で表される化合物、下式(a2)で表される化合物または下式(a3)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体であって、全繰り返し単位に対して繰り返し単位(A)を10モル%以上含む重合体。
CF=CF−Q−CX=CX (a1)。
【0012】
【化2】

【0013】
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
Q:メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オキシメチレン基、オキシジメチレン基およびオキシトリメチレン基からなる群から選ばれる基。該基中の水素原子は、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基およびフルオロアルコキシ基からなる群から選ばれる基であって炭素数1〜12の基、またはフッ素原子に置換されていてもよい。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のフルオロアルキル基。
、X:それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子。
:フッ素原子または炭素数1〜3のペルフルオロアルコキシ基。
、W、W、W:それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基。
【0014】
重合体(B):ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる極性基を有する重合性単量体(b)の重合により形成された繰り返し単位を含むアルカリ可溶性重合体。
【0015】
[2] 重合体(A)が、下式(a11)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A11)を含む重合体であって、全繰り返し単位に対して繰り返し単位(A11)を10モル%以上含む重合体である[1]に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CF=CF−CHCHR(CH−CX11=CH (a11)。
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
R:炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のフルオロアルキル基。
m:0、1または2。
11:水素原子または炭素数1〜12のアルキル基。
【0016】
[3] 重合体(A)が、下式(a11)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A11)と下式(b1)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(B1)とを含む重合体であって、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を10モル%以上含み、かつ繰り返し単位(B1)を10モル%以上含む重合体である[1]または[2]に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CF=CF−CHCHR(CH−CX11=CH (a11)。
CF=CF−Qb1−CXb1=CH (b1)。
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
b1:式−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基または式−CHCH(C(O)OH))(CH−で表される基。
n、p:それぞれ独立に、0、1または2。
b1:水素原子または炭素数1〜12のアルキル基。
【0017】
[4] 重合性単量体(b)が、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有する重合性単量体である[1]〜[3]のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
[5] 重合性単量体(b)が、ポリフルオロアルキル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子に結合したヒドロキシ基、またはカルボキシ基を有する重合性単量体である[1]〜[4]のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
【0018】
[6] 重合性単量体(b)が、式(b1)で表される化合物、下式(b2)で表される化合物、下式(b3)で表される化合物または下式(b4)で表される化合物である[1]〜[5]に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CH=CRb2C(O)O−Wb2(−C(CFOH) (b2)、
CH=CH−Wb3(−C(CFOH) (b3)。
【0019】
【化3】

【0020】
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
b2:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
b2およびWb3:それぞれ独立に、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基。
r:1または2。
b4:単結合またはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価炭化水素基。
【0021】
[7] 有機溶媒を含む[1]〜[6]のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
【0022】
[8] 感光性レジストを基板上に塗布して該基板上にレジスト膜を形成する工程、[7]に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物を該レジスト膜上に塗布して該レジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、液浸露光工程、現像工程を順に行うことにより基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液浸レジスト保護膜特性(水の侵入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制等。)に優れ、動的撥水性に特に優れた液浸露光用レジスト保護膜組成物が提供される。本発明の液浸露光用レジスト保護膜組成物を用いることにより、マスクのパターン像を高解像度に転写可能な液浸リソグラフィー法を安定実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書において、式(a)で表される化合物を化合物(a)と、式(A)で表される繰り返し単位を単位(A)とも記す。他の式で表される化合物と繰り返し単位も同様に記す。また基中の記号は特に記載しない限り前記と同義である。
【0025】
本発明の液浸露光用レジスト保護膜組成物(以下、保護膜組成物ともいう。)は、下記化合物(a1)、下記化合物(a2)または下記化合物(a3)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体であって、繰り返し単位(A)を全繰り返し単位に対して10モル%以上含む重合体(A)を含む。
CF=CF−Q−CX=CX (a1)。
【0026】
【化4】

【0027】
重合体(A)は、撥水性に優れ、動的撥水性に特に優れている。その理由は必ずしも明確ではないが、重合体(A)は、主鎖にかさ高い含フッ素環構造を有する重合体であるため、すなわち化合物(a1)の重合により形成される重合体は下記単位(A1)〜(A1)のいずれかを含む重合体であり、化合物(a2)の重合により形成される重合体は下記単位(A2)を含む重合体であり、化合物(a3)の重合により形成される重合体は下記単位(A3)を含む重合体であるため、と考えられる。
【0028】
【化5】

【0029】
したがって、重合体(A)を含む本発明の保護膜組成物は、高撥水性で水に浸入されにくく、かつ動的撥水性に特に優れた水によく滑る液浸露光用レジスト保護膜となると考えられる。
【0030】
化合物(a)は、1種の化合物(a)を用いてもよく、2種以上の化合物(a)を用いてもよい。
【0031】
化合物(a1)のQは、トリメチレン基、テトラメチレン基およびオキシジメチレン基からなる群から選ばれる基が好ましい。該基中の水素原子は、アルキル基およびフルオロアルキル基からなる群から選ばれる基であって炭素数1〜12の基、またはフッ素原子に置換されているのが好ましい。
Qは、−CFCFCH−、式−CFRCFCH−で表される基、式−CFCFRCH−で表される基、式−CHCHRCH−で表される基、−OCFCF−、式−OCFCFR−で表される基または式−OCFRCF−で表される基が好ましく、式−CHCHRCH−で表される基が特に好ましい。ただし、Rは炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を、示す。
【0032】
化合物(a1)のXは、水素原子またはフッ素原子が好ましい。
【0033】
化合物(a1)の具体例(ただし、後述の化合物(a11)を除く。)としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFCFCFCHCH=CH
CF=CFCF(CF)CFCHCH=CH
CF=CFCFCF(CF)CHCH=CH
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCH=CF
CF=CFOCF(CF)CFCH=CF
CF=CFOCFCF(CF)CH=CF
CF=CFOCFCFCH=CH
CF=CFOCF(CF)CFCH=CH
CF=CFOCFCF(CF)CH=CH
【0034】
化合物(a2)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0035】
【化6】

【0036】
化合物(a3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0037】
【化7】

【0038】
化合物(a)は、重合体(B)に対する相溶性の観点から、炭素原子に結合した水素原子を有する化合物が好ましい。
【0039】
化合物(a)は、下記化合物(a11)が好ましい。
CF=CF−CHCHR(CH−CX11=CH (a11)。
Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基が好ましい。
mは、1が好ましい。
11は、水素原子が好ましい。
【0040】
化合物(a11)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFCHCH(CHCH)CHCH=CH
CF=CFCHCH((CHCH)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CHCH(CH)CHCH=CH
CF=CFCHCH((CHCH)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CHCF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CHCFCF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CH(CFCF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CHCF(CF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CH(CFCF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CF)CHCH=CH
CF=CFCHCH(CFCF)CHCH=CH
CF=CFCHCH((CFCF)CHCH=CH
【0041】
化合物(a11)は文献未知の新規化合物である。化合物(a11)は、式CH=CHRで表される化合物とCFClCFClIを反応させて下記化合物(pa31)を得て、つぎに化合物(pa31)とCH=CX11(CHMgClを反応させて下記化合物(pa21)を得て、つぎに化合物(pa21)をZn存在下に脱塩素化反応させることにより製造できる。
CFClCFCl−CHCHIR (pa31)、
CFClCFCl−CHCHR(CH−CX11=CH (pa21)。
【0042】
重合体(A)は、重合体(B)に対する相溶性の観点から、炭素原子に結合した水素原子フッ素原子を有する重合体が好ましい。
【0043】
重合体(A)は、全繰り返し単位に対して単位(A)を10モル%以上含む。単位(A)は、1種の単位(A)のみからなってもよく、2種以上の単位(A)からなっていてもよい。
【0044】
重合体(A)は、単位(A)のみからなる重合体であってもよく、単位(A)と単位(A)以外の繰り返し単位(以下、他の単位ともいう。)とからなる重合体であってもよい。いずれにしても重合体(A)は、全繰り返し単位に対して、単位(A)を、10モル%以上含み、30モル%以上含むのが好ましい。重合体(A)が他の単位を含む場合、重合体(A)は、全繰り返し単位に対して、他の単位を、90モル%以下含むのが好ましく、70モル%以下含むのが特に好ましい。
【0045】
他の単位は、下記化合物(b1)の重合により形成された繰り返し単位(B1)が好ましい。
CF=CF−Qb1−CXb1=CH (b1)。
【0046】
化合物(b1)は重合により下式で表されるいずれかの繰り返し単位を形成する。そのため、単位(B1)を含む重合体(A)を含む本発明の保護膜組成物は、高撥水性で水に浸入されにくい、動的撥水性に特に優れた水によく滑る保護膜組成物になると考えられる。
【0047】
【化8】

【0048】
また、単位(B1)は、Qb1部分(−CFC(CF)(OH)(CH−部分、−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−部分または−CHCH(C(O)OH))(CH−部分。)を有するため、親アルカリ性である。したがって、単位(A)と単位(B1)を含む重合体(A)を含む本発明の保護膜組成物を用いた場合には、液浸露光工程の安定実施と、現像工程におけるアルカリ溶液によるレジスト保護膜の除去とが可能な液浸リソグラフィー法が実現する。
【0049】
化合物(b1)におけるXb1は、水素原子が好ましい。
化合物(b1)のQb1におけるnは、1が特に好ましい。
化合物(b1)のQb1におけるpは、0または1が好ましい。
化合物(b1)のQb1は、−CFC(CF)(OH)CH−、−CHCH(C(CF(OH))CH−または−CHCH(C(O)OH))CH−が好ましい。
【0050】
化合物(b1)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH
CF=CFCHCH(C(CF(OH))CHCH=CH
CF=CFCHCH(C(O)OH)CHCH=CH
【0051】
単位(B1)以外の他の単位としては、後述の化合物(b2)、後述の化合物(b3)または後述の化合物(b4)の重合により形成された繰り返し単位が挙げられる。
【0052】
重合体(A)の重量平均分子量は、1000〜30000が好ましく、1000〜10000が特に好ましい。
【0053】
本発明における重合体(A)の好ましい態様としては、化合物(a11)の重合により形成された繰り返し単位(A11)のみからなる重合体、繰り返し単位(A11)と繰り返し単位(B1)とを含む重合体であって、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を10モル%以上含み、かつ繰り返し単位(B1)を10モル%以上含む重合体が挙げられる。後者の重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を10〜70モル%含み、かつ繰り返し単位(B1)を10〜90モル%含むのが好ましい。また、前記態様における重合体(A)の重量平均分子量は、5000〜30000が好ましい。
【0054】
本発明の保護膜組成物は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる極性基を有する重合性単量体(b)の重合により形成された繰り返し単位(以下、単位(b)ともいう。)を含むアルカリ可溶性重合体(すなわち、重合体(B)。)を含む。本発明の保護膜組成物は、重合体(B)がアルカリと相互作用してアルカリ溶液に溶解することから、アルカリ溶液により容易に除去可能である。
【0055】
重合性単量体(b)は、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有する重合性単量体が好ましい。ヒドロキシ基は、アルコール性ヒドロキシ基であってもよく、フェノール性ヒドロキシ基であってもよい。
【0056】
重合性単量体(b)は、重合体(B)の撥水性と、重合体(B)の親アルカリ性の親和との観点から、ポリフルオロアルキル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子に結合したヒドロキシ基、またはカルボキシ基を有する重合性単量体がより好ましく、式−C(C2d+1)(OH)−で表される基、式−C(C2d+1(OH)で表される基またはカルボキシ基を有する重合性単量体(ただし、dは1〜6の整数を示す。)が特に好ましく、−C(CF)(OH)−、−C(CF(OH)またはカルボキシ基を有する重合性単量体が最も好ましい。
【0057】
重合性単量体(b)は、化合物(b1)、下記化合物(b2)、下記化合物(b3)または下記化合物(b4)が好ましく、化合物(b1)が特に好ましい。
CH=CRb2C(O)O−Wb2(−C(CFOH) (b2)、
CH=CH−Wb3(−C(CFOH) (b3)。
【0058】
【化9】

【0059】
化合物(b2)のRb2は、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0060】
化合物(b2)のWb2および化合物(b3)のWb3がフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基である場合には、Wb2およびWb3は、それぞれ独立に、環系炭化水素基を有するフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基であるのが好ましい。この場合、前記(r+1)価の炭化水素基は、環系炭化水素基のみからなる基であってもよく、基中に環系炭化水素基を含む基であってもよい。前記環系炭化水素基は、脂肪族の基であってもよく、芳香族の基であってもよい。また、前記環系炭化水素基は、単環系炭化水素基であってもよく、多環系炭化水素基であってもよい。多環系炭化水素基は、縮合多環系炭化水素基であってもよく、橋かけ環炭化水素基であってもよい。
【0061】
化合物(b2)のWb2および化合物(b3)のWb3は、下式で表されるいずれかの基であるのが特に好ましい。
【0062】
【化10】

【0063】
化合物(b2)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0064】
【化11】

【0065】
化合物(b3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0066】
【化12】

【0067】
化合物(b4)のWは、単結合またはメチレン基が好ましい。
化合物(b4)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0068】
【化13】

【0069】
本発明における重合体(B)は、単位(b)を全繰り返し単位に対して10モル%以上含むのが好ましく、50モル%以上含むのが特に好ましい。重合体(B)は、単位(b)のみからなる重合体であってもよく、単位(b)と単位(b)以外の繰り返し単位(以下、他の単位(b)ともいう。)とを含む重合体であってもよい。また、単位(b)は、1種の単位(b)のみからなってもよく、2種以上の単位(b)からなっていてもよい。重合体(B)が他の単位(b)を含む場合、重合体(A)は、他の単位(b)を全繰り返し単位に対して、90モル%以下含むのが好ましく、50モル%以下含むのが特に好ましい。
【0070】
他の単位(b)としては、下記化合物の重合により形成された繰り返し単位等が挙げられる。
【0071】
【化14】

【0072】
本発明における重合体(B)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0073】
本発明における重合体(B)の好ましい態様としては、化合物(b1)の重合により形成された繰り返し単位を全繰り返し単位に対して70〜100モル%含む重合体であって、かつ重量平均分子量が1000〜100000の重合体が挙げられる。より好ましい態様としては、化合物(b1)の環化重合により形成された繰り返し単位のみからなる、重量平均分子量が1000〜50000の重合体が挙げられる。
【0074】
本発明の保護膜組成物は、重合体(A)と重合体(B)を含み、かつ重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む。より好ましくは、重合体(B)に対して重合体(A)を1〜10質量%含む。この場合、重合体(A)と重合体(B)が相溶しやすく、保護膜組成物の造膜性が優れるという効果がある。
【0075】
本発明の保護膜組成物は、重合体(A)と重合体(B)以外の成分(以下、他の成分ともいう。)を含んでいてもよい。他の成分としては、有機溶媒、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤等が挙げられる。
本発明の保護膜組成物は、通常は基板(シリコンウェハ等。)上に形成されたレジスト膜上に塗布されて製膜されて用いられるため、製膜性の観点から、液状に調製されるのが好ましい。本発明の保護膜組成物は、有機溶媒を含むのが好ましい。
【0076】
有機溶媒は、重合体(A)および重合体(B)に対する相溶性の高い溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
有機溶媒の具体例としては、含フッ素化合物からなる含フッ素有機溶媒、フッ素原子を含まない化合物からなる有機溶媒が挙げられる。
【0077】
前記含フッ素化合物の具体例としては、CClFCH、CFCFCHCl、CClFCFCHClF等のハイドロクロロフルオロカーボン類;CFCHFCHFCFCF、CF(CFH、CF(CF、CF(CF、CF(CF等のハイドロフルオロカーボン類;1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のハイドロフルオロベンゼン類;ハイドロフルオロケトン類;ハイドロフルオロアルキルベンゼン類;CFCFCFCFOCH、(CFCF−CF(CF)CFOCH、CFCHOCFCHF等のハイドロフルオロエーテル類;CHFCFCHOH等のハイドロフルオロアルコール類が挙げられる。
【0078】
前記フッ素原子を含まない化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチルブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノまたはジアルキルエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0079】
本発明の保護膜組成物は、重合体(A)と重合体(B)の総量に対して、有機溶媒を100重量%〜10000質量%含むのが好ましい。
【0080】
本発明の保護膜組成物の製造方法は、特に限定されず、重合体(A)を有機溶媒に溶解させて得られた溶液(以下、樹脂溶液(A)ともいう。)と重合体(B)を有機溶媒に溶解させて得られた溶液(以下、樹脂溶液(B)ともいう。)とを混合する方法、重合体(A)と樹脂溶液(B)を混合する方法、樹脂溶液(A)と重合体(B)を混合する方法が挙げられる。樹脂溶液(A)は、重合体(A)を0.01〜10質量%含むのが好ましい。樹脂溶液(B)は、重合体(B)を0.1〜20質量%含むのが好ましい。
【0081】
本発明の保護膜組成物は、液浸リソグラフィー法に用いられる。液浸リソグラフィー法は、特に限定されず、感光性レジストを基板(シリコンウェハ等。)上に塗布して該基板上にレジスト膜を形成する工程、本発明の液浸露光用レジスト保護膜組成物を該レジスト膜上に塗布して該レジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、液浸露光工程、現像工程、エッチング工程、およびレジスト剥離工程を順に行う液浸リソグラフィー法が挙げられる。
【0082】
本発明における感光性レジストは、光酸発生剤と、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する重合体とを含む感光性レジスト組成物であれば、特に限定されない。感光性レジスト組成物の具体例としては、特開2005−234178号公報等に記載の感光性レジストが挙げられる。より具体的には、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフレートを含み、かつ前記重合体として下式で表される3種の化合物の重合により形成された繰り返し単位をそれぞれ含む重合体を含む感光性レジスト組成物が挙げられる。
【0083】
【化15】

【0084】
液浸リソグラフィー法における露光光源としては、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)が挙げられる。露光光源は、ArFエキシマレーザー光またはFエキシマレーザー光が好ましく、ArFエキシマレーザー光が特に好ましい。
【0085】
本発明における液浸露光工程としては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズを介し、かつ投影レンズとレジスト保護膜間を液状媒体で満たしながら、基板上のレジスト膜の所望の位置に投影する工程が挙げられる。液状媒体は、水を主成分とする液状媒体が好ましく、超純水が特に好ましい。
【0086】
本発明における液浸露光工程においては、レジスト膜は、本発明の液浸保護膜組成物からなる保護膜によって液状媒体(水等。)から遮断されており、液状媒体に侵入されにくく、かつレジスト膜中の成分が液状媒体に溶出しにくい。そのため、本発明における液浸露光工程においては、レジスト膜が膨潤しにくく、液状媒体の屈折率等の光学的特性が変化しにくい。さらに、本発明における液浸露光工程においては、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズに水がよく追従するため、安定した液浸露光工程の実施が可能である。
【0087】
本発明における現像工程としては、レジストの露光部分をアルカリ溶液により除去する工程が挙げられる。アルカリ溶液としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドおよびトリエチルアミンからなる群から選ばれるアルカリ化合物を含むアルカリ水溶液が挙げられる。本発明における現像工程においては、アルカリ溶液処理により、レジスト膜の感光部分とレジスト保護膜とをまとめて除去できる。
【実施例】
【0088】
本発明を、実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例においては、重量平均分子量をMwと、数平均分子量をMnと、ジクロロペンタフルオロプロパンをR225と、テトラヒドロフランをTHFと、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートをIPPと、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートをPGMEAと、記す。
【0089】
MwとMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィ法を用いて測定した。測定に際しては、THFを展開溶媒に用い、ポリスチレンを内部標準に用いた。
【0090】
化合物(a11)として、下記化合物(a11)を用いた。
CF=CFCHCH(CHCF(CF)CHCH=CH (a11)。
また、下式(A11)で表される繰り返し単位を単位(A11)と記す。
【0091】
【化16】

【0092】
重合体(B)として、下記化合物(b1)を単独重合させて得られた下式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(B1)という。)からなる重合体(Mw11000)(重合体(B−1)という。)、または下記化合物(b1)を単独重合させて得られた下式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(B1)という。)からなる重合体(Mw5000)(重合体(B−2)という。)を用いた。
CF=CFCHCH(C(CFOH)CHCH=CH (b1)、
CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH (b1)。
【0093】
【化17】

【0094】
[例1]化合物(a11)の製造例
反応器に、CH=CHCHOCOCH(158g)とアゾイソブチロニトリル(4.77g)を入れ、反応器内温65℃にて(CFCFI(430g)を滴下し、さらに反応器内を撹拌した。反応器内溶液を、亜鉛(105g)とメタノール(446g)を入れた反応器に25℃にて滴下し、さらに反応器内を撹拌した。反応器内溶液を減圧蒸留してCH=CHCHCF(CF(199g)を得た。
【0095】
反応器に、CFClCFClI(312g)とアゾイソブチロニトリル(3.0g)を入れ、反応器内温70℃にてCH=CHCHCF(CF(199g)を滴下し、さらに反応器内を撹拌した。反応器内溶液を減圧蒸留してCFClCFClCHCHI(CHCF(CF)(430g)を得た。
【0096】
反応器に、CFClCFClCHCHI(CHCF(CF)(430g)とTHF(935g)を入れ、反応器内温−70℃にてCH=CHCHMgClを含むTHF溶液(482g)を1時間かけて滴下し、反応器内温25℃にて12時間、反応器内を撹拌した。反応器内溶液の濾液を濃縮し、さらに塩酸水溶液と飽和食塩水で洗浄した後に減圧蒸留してCFClCFClCHCH(CHCF(CF)CHCH=CH(175g)を得た。
【0097】
反応器に、亜鉛(55g)とN−メチル−2−ピロリジノン(310g)を入れ、反応器内温75℃にてCFClCFClCHCH(CHCF(CF)CHCH=CH(175g)を滴下し、さらに反応器内を撹拌した。反応器内溶液を濃縮し、塩酸水溶液と飽和食塩水で洗浄してから減圧蒸留して化合物(a11)(92g)を得た。
【0098】
化合物(a11)のNMRスペクトルを以下に示す。
H−NMR(399.8MHz、溶媒:重アセトン、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):2.42(m,7H),5.14(m,2H),5.80(m,1H)。
19F−NMR(376.2MHz、溶媒:重アセトン、基準:CFCl)δ(ppm):−185.1(m,1F),−172.3(m,1F),−123.7(m,1F),−104.9(m,1F),−76.5(m,6F)。
【0099】
[例3]重合体(A)の製造例
[例3−1]重合体(A−1)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(a11)(2.5g)と酢酸エチル(4.5g)を入れ、重合開始剤としてIPPを50質量%含むR225溶液(0.21g)を入れた。耐圧反応器内を減圧脱気した後、反応器内温40℃にて18時間重合反応を行った。つぎに、反応器内溶液をメタノール中に滴下して生成した固形分を回収し、該固形分を90℃にて24時間真空乾燥して、25℃にて白色粉末状の重合体(2.17g)(重合体(A−1)という。)を得た。重合体(A−1)は、単位(A11)からなる重合体であった。重合体(A−1)のMnは7300であり、Mwは15900であった。
【0100】
示差走査熱分析法を用いて測定した重合体(A−1)のガラス転移温度は、82℃であった。また、重合体(A−1)は、アセトン、THF、酢酸エチル、R225およびキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【0101】
[例3−2]重合体(A−2)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(a11)(3.16g)、化合物(b1)(2.0g)とR225(19.6g)および2−プロパノール(0.67g)を入れ、重合開始剤としてIPPを50質量%含むR225溶液(0.77g)を入れた。耐圧反応器内を減圧脱気した後、反応器内温40℃にて18時間重合反応を行った。つぎに、反応器内溶液をヘキサン中に滴下して生成した固形分を回収し、該固形分を80℃にて24時間真空乾燥して、25℃にて白色粉末状の重合体(4.09g)(重合体(A−2)という。)を得た。19F−NMR測定の結果、重合体(A−2)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を60モル%含み、繰り返し単位(B1)を40モル%含む重合体であることを確認した。重合体(A−2)のMnは4500であり、Mwは9300であった。
【0102】
示差走査熱分析法を用いて測定した重合体(A−2)のガラス転移温度は、94℃であった。重合体(A−2)は、アセトン、THF、酢酸エチル、R225およびキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【0103】
[例3−3]重合体(A−3)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(a11)(1.61g)、化合物(b1)(0.87g)、酢酸メチル(9.57g)および2−プロパノール(0.24g)を入れ、重合開始剤としてIPPを50質量%含むR225溶液(0.373g)を入れた。耐圧反応器内を減圧脱気した後、反応器内温40℃にて18時間重合反応を行った。つぎに、反応器内溶液をヘキサン中に滴下して生成した固形分を回収し、該固形分を100℃にて24時間真空乾燥して、25℃にて白色粉末状の重合体(1.86g)(重合体(A−3)という。)を得た。19F−NMR測定とH−NMR測定の結果、重合体(A−3)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を55モル%含み、繰り返し単位(B1)を45モル%含む重合体であることを確認した。重合体(A−3)のMnは3900であり、Mwは8100であった。
【0104】
示差走査熱分析法を用いて測定した重合体(A−3)のガラス転移温度は、82℃であった。重合体(A−3)は、アセトン、THF、酢酸エチル、R225およびキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【0105】
[例4]組成物の製造例
[例4−1]組成物(1)の製造例
0.36質量%の重合体(A−1)を含むメタキシレンヘキサフルオライド溶液(1.117g)と、5.4質量%の重合体(B−1)を含む溶液(1.855g)とを混合して均一な重合体溶液を得た。該重合体溶液を孔径0.2μmのフィルター(PTFE製)に通して濾過をして、重合体(B−1)の総量に対して4.0質量%の重合体(A−1)を含む組成物(1)を得た。
【0106】
[例4−2]組成物(2)の製造例
0.09質量%の重合体(A−1)を含むメタキシレンヘキサフルオライド溶液(1.117g)と、5.5質量%の重合体(B−1)を含む溶液(1.081g)とを混合して均一な重合体溶液を得た。該重合体溶液を孔径0.2μmのフィルター(PTFE製)に通して濾過をして、重合体(B−1)の総量に対して1.0質量%の重合体(A−1)を含む組成物(2)を得た。
【0107】
[例4−3]組成物(3)の製造例
0.96質量%の重合体(A−2)を含む2−メチル−1−プロパノール溶液(0.829g)と、7.5質量%の重合体(B−1)を含む溶液(1.331g)とを混合して均一な重合体溶液を得た。該重合体溶液を孔径0.2μmのフィルター(PTFE製)に通して濾過をして、重合体(B−1)の総量に対して8.0質量%の重合体(A−2)を含む組成物(3)を得た。
【0108】
[例4−4]組成物(4)の製造例
0.96質量%の重合体(A−2)を含む2−メチル−1−プロパノール溶液(0.829g)と、7.5質量%の重合体(B−2)を含む溶液(1.331g)とを混合して均一な重合体溶液を得た。該重合体溶液を孔径0.2μmのフィルター(PTFE製)に通して濾過をして、重合体(B−2)の総量に対して8.0質量%の重合体(A−2)を含む組成物(4)を得た。
【0109】
[例4−5]組成物(5)の製造例
0.50質量%の重合体(A−3)を含む2−メチル−1−プロパノール溶液(0.794g)と、7.8質量%の重合体(B−2)を含む溶液(1.285g)とを混合して均一な重合体溶液を得た。該重合体溶液を孔径0.2μmのフィルター(PTFE製)に通して濾過をして、重合体(B−2)の総量に対して4.0質量%の重合体(A−3)を含む組成物(5)を得た。
【0110】
[例4−6]組成物(6)の製造例
CF=CFOCFCFCH=CHを環化重合させて得られた下記繰り返し単位(A1)からなる重合体(Mw21000)(重合体(A−3)という。)を0.36質量%含むメタキシレンヘキサフルオライド溶液を調製した。
【0111】
【化18】

【0112】
該溶液(1.117g)と、5.4質量%の重合体(B−1)を含む溶液(1.855g)とを混合し、重合体(B−1)の総量に対して3.8質量%の重合体(A−3)を含む組成物(6)を得た。
【0113】
[例4−7]組成物(7)の製造例
CF=CFOCFCF(CF)CH=CHを環化重合させて得られた下記繰り返し単位(A1)からなる重合体(Mw93000)(重合体(A−4)という。)を重合体(A−4)のかわりに用いる以外は例4−4と同様にして、重合体(B−1)の総量に対して3.8質量%の重合体(A−6)を含む組成物(7)を得た。
【0114】
【化19】

【0115】
[例5]組成物の撥水性評価例
表面に反射防止膜(ROHM AHD HAAS Electronic Materials社製 商品名AR26)が形成されたシリコン基板上に、組成物(1)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を加熱処理して、重合体(A−1)と重合体(B−1)からなる樹脂薄膜(膜厚50nm)をシリコン基板上に形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱し、さらに130℃にて60秒間加熱するか、100℃にて60秒間加熱することにより行った。
【0116】
つづいて、該樹脂薄膜の水に対する、静的接触角、動的転落角、動的後退角をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。なお、滑落法により測定した転落角を動的転落角と、滑落法により測定した後退角を動的後退角と、いう。
組成物(1)のかわりに組成物(2)〜(7)をそれぞれ用いる以外は同様にして、シリコン基板上に樹脂薄膜を形成し、水に対する静的接触角、動的転落角および動的後退角を測定した。
また、重合体(B−1)のみからなる樹脂薄膜の静的接触角、動的転落角および動的後退角を測定した。結果をまとめて表1に示す。静的接触角、動的転落角および動的後退角の単位は、それぞれ角度(°)である。
【0117】
【表1】

【0118】
以上の結果から明らかであるように、重合体(A)と重合体(B)を含む組成物から形成される樹脂薄膜は、重合体(B)のみから形成される樹脂薄膜に比較して、撥水性に優れ、動的撥水性に特に優れていることがわかる。したがって、重合体(A)と重合体(B)を含む本発明の液浸レジスト保護膜組成物を液浸リソグラフィー法に用いた場合には、液浸レジスト保護膜上を高速移動する投影レンズに水がよく追従するため、液浸リソグラフィー法の安定した高速実施が可能である。
【0119】
[例6]組成物の現像速度評価例
組成物(1)を水晶振動子上に回転塗布し、加熱処理して水晶振動子上に重合体(A−1)と重合体(B−1)からなる薄膜を形成する。つぎに該水晶振動子をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に浸漬し、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を用いて水溶液中での該薄膜の減膜速度を測定すると、減膜速度は100nm/s以上である。
【0120】
以上の結果からも明らかであるように、本発明の液浸レジスト保護膜組成物はアルカリ水溶液により容易に除去できる。本発明の液浸レジスト保護膜組成物を用いることにより、液浸露光工程後にレジスト保護膜と感光性レジストの感光部分とをアルカリ溶液により除去できる効率的な液浸リソグラフィー法が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、液浸レジスト保護膜特性(水の侵入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制等。)に優れ、高撥水性で水に浸入されにくく、動的撥水性に特に優れた液浸露光用レジスト保護膜組成物が提供される。本発明の液浸露光用レジスト保護膜組成物を用いることにより、高解像度なマスクのパターン像を形成可能な安定した液浸リソグラフィー法を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重合体(A)と下記重合体(B)とを含み、かつ重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む液浸露光用レジスト保護膜組成物。
重合体(A):下式(a1)で表される化合物、下式(a2)で表される化合物または下式(a3)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体であって、全繰り返し単位に対して繰り返し単位(A)を10モル%以上含む重合体。
CF=CF−Q−CX=CX (a1)。
【化1】

ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
Q:メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オキシメチレン基、オキシジメチレン基およびオキシトリメチレン基からなる群から選ばれる基。該基中の水素原子は、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基およびフルオロアルコキシ基からなる群から選ばれる基であって炭素数1〜12の基、またはフッ素原子に置換されていてもよい。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のフルオロアルキル基。
、X:それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子。
:フッ素原子または炭素数1〜3のペルフルオロアルコキシ基。
、W、W、W:それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基。
重合体(B):ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる極性基を有する重合性単量体(b)の重合により形成された繰り返し単位を含むアルカリ可溶性重合体。
【請求項2】
重合体(A)が、下式(a11)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A11)を含む重合体であって、全繰り返し単位に対して繰り返し単位(A11)を10モル%以上含む重合体である請求項1に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CF=CF−CHCHR(CH−CX11=CH (a11)。
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
R:炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のフルオロアルキル基。
m:0、1または2。
11:水素原子または炭素数1〜12のアルキル基。
【請求項3】
重合体(A)が、下式(a11)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A11)と下式(b1)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(B1)とを含む重合体であって、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A11)を10モル%以上含み、かつ繰り返し単位(B1)を10モル%以上含む重合体である請求項1または2に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CF=CF−CHCHR(CH−CX11=CH (a11)。
CF=CF−Qb1−CXb1=CH (b1)。
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
b1:式−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基または式−CHCH(C(O)OH))(CH−で表される基。
n、p:それぞれ独立に、0、1または2。
b1:水素原子または炭素数1〜12のアルキル基。
【請求項4】
重合性単量体(b)が、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有する重合性単量体である請求項1〜3のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
【請求項5】
重合性単量体(b)が、ポリフルオロアルキル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子に結合したヒドロキシ基、またはカルボキシ基を有する重合性単量体である請求項1〜4のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
【請求項6】
重合性単量体(b)が、下式(b1)で表される化合物、下式(b2)で表される化合物、下式(b3)で表される化合物または下式(b4)で表される化合物である請求項1〜5に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
CF=CF−Qb1−CXb1=CH (b1)。
CH=CRb2C(O)O−Wb2(−C(CFOH) (b2)、
CH=CH−Wb3(−C(CFOH) (b3)。
【化2】

ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
b1:式−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基または式−CHCH(COOH)(CH−で表される基で表される基。
n、p:それぞれ独立に、0、1または2。
b1:水素原子または炭素数1〜12のアルキル基。
b2:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
b2およびWb3:それぞれ独立に、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基。
r:1または2。
b4:単結合またはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価炭化水素基。
【請求項7】
有機溶媒を含む請求項1〜6のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物。
【請求項8】
感光性レジストを基板上に塗布して該基板上にレジスト膜を形成する工程、請求項7に記載の液浸露光用レジスト保護膜組成物を該レジスト膜上に塗布して該レジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、液浸露光工程、現像工程を順に行うことにより基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2008−32758(P2008−32758A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200871(P2006−200871)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】