説明

混焼システム

【課題】原料ガス(主燃料ガス及び副燃料ガス)夫々の発熱量が比較的安定しており、ガス燃焼設備(ガスエンジン、ボイラ等)に導入する混合ガスにおける原料ガスの混合比を予め設定することが好ましい混焼システムにおいて、可能な限り簡便で、設備コストが低く、信頼性の高い混焼システムを得る。
【解決手段】ガス燃焼設備が混合ガスの発熱量に応じた出力を出力する出力可変型ガス燃料機器である場合に、主燃料ガスg1の圧力を設定圧力に設定した状態で混合器5に導く主燃料ガス供給系統と、副燃料ガスの流量を設定流量に調整する流量調整手段7を備え、調整流量の副燃料ガスg2を混合器5に導く副燃料ガス供給系統とを備え、ガス燃焼設備1の出力検知値、主燃料ガスg1の発熱量、副燃料ガスg2との発熱量と予め定まる原料ガスの混合比R1とに基づいて副燃料ガスg2の流量を流量調整手段7で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主燃料ガスと副燃料ガスとを混合器で混合した混合ガスをガス燃焼設備に供給し、当該ガス燃焼設備で混合ガスを燃焼させて働く混焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球に優しい環境設備を実現する等の目的から、所謂、オンサイトで発生するバイオガスを発生熱量が管理された都市ガス等に混合して燃焼させる混焼システムが提案されている。
このような混焼システムでは、バイオガスと都市ガス等との混合ガスが燃料ガスとして使用される。この種の混焼システムの代表例としては、ガスエンジンにより駆動される発電機を備えたガスエンジン発電システム、混合ガスを燃焼して蒸気を発生するボイラシステム等を挙げることができる。このボイラシステムでは、その蒸気発生量を段階的に設定できる構成のものが多い。
【0003】
ガスエンジン発電システムの一例が、特許文献1に示されている。
特許文献1に開示のシステムは、副燃料ガスの熱量が変動しても安定してガスエンジンを運転することができる発電システムを提供することを目的としている。この文献に開示の技術では、同明細書に記載されているように、副燃料ガスの熱量が減少し、発電機の発電出力が目標出力よりも低下したときには、ガスエンジンに供給される主燃料ガスと副燃料ガスとの総熱量を確保するように、出力制御コントローラがスロットルバルブの開度を増加させる。これに伴い、吸気マニホールド内に吸入される第2混合気の流量が増加し、吸気マニホールド内の圧力が目標圧力よりも増加する。このとき、吸気マニホールド内の圧力が目標圧力に復帰するように、主燃料制御コントローラが主燃料調整弁の開度を増加させる。これにより、ガスエンジンへの主燃料ガスの供給量が増加することになり、出力制御コントローラがスロットルバルブの開度を復帰させる。こうして、副燃料ガスの熱量の不足分を、主燃料ガスの熱量によって補い、吸気マニホールド内の圧力を目標圧力に復帰させることができる。
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比の変化を考慮することなく、ガスエンジン側で所定の出力を得るために、両燃料ガスの供給流量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−30492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比が一定の混合ガスをガスエンジンに供給し、出力の調整は、その出力に応じたスロットルの開度調整で行う方が好ましい場合もある。この状況は、例えば、ガスエンジンが、発熱量が安定的に管理された主燃料ガスのみで運転されていたシステムで副燃料ガスを消費したいといった場合であり、ガスエンジンに許容される発熱量許容幅が所定の幅に制限される場合である。このような既存設備を使用する場合には、混合比を一定に保ち、混合ガスの発熱量を所定の変動幅内に維持した状態で、ガスエンジン側で発生する出力に応じた総発熱量(燃料ガス流量F×燃料ガスの発熱量Q)の混合ガスをガスエンジンに供給する必要が生じる。
【0007】
一方、今日、例えば、食品加工工場(ビール工場等)から発生する食品残渣からバイオガスを製造する製造プロセスが確立されており、このような製造プロセスから製造されるバイオガスの発熱量Qは、その変動が極めて少なく、安定したものとなっている。また、その製造量も年々増加の一途にある。
【0008】
そこで、このような副燃料ガスの供給状況を考慮すると、ガスエンジンに供給する混合ガスの圧力を目標圧力に維持し、さらに、この混合ガスにおいて、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を一定に保つことが好ましいが、このような混焼システムの構成は、本願明細書の図4、図5に示すように、混合器において、その混合ガスの圧力を検出するとともに、その圧力が目標圧力となるように主燃料ガス(図示する例の場合は天然ガス)の供給流量F1を流量調整弁FCV−1で制御するとともに、この供給流量F1に対して、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比として予め設定される所定の供給流量比となるように副燃料ガスの供給流量F2を求め、副燃料ガスを流量調整弁FCV−2で制御する構成となる。
【0009】
図4は、ガスエンジン発電システムを対象とする構成例であり、図5は、蒸気発生量を段階的に変更できるボイラシステムの構成例である。
【0010】
しかしながら、この構成では、流量検出器、流量調整弁及び制御器がそれぞれ一対必要とされるのに加えて、主燃料ガスに対する副燃料ガスの供給流量比から副燃料ガスの供給流量を決定する比率設定器が必要となるため、設備が複雑となるとともに、コスト高となる。
【0011】
本発明の目的は、原料ガス(主燃料ガス及び副燃料ガス)夫々の発熱量が比較的安定しており、ガス燃焼設備(ガスエンジン、ボイラ等)に導入する混合ガスにおける原料ガスの混合比を予め設定することが好ましい混焼システムにおいて、可能な限り簡便で、設備コストが低く、信頼性の高い混焼システムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための、主燃料ガスと副燃料ガスとを混合器で混合した混合ガスをガス燃焼設備に供給し、当該ガス燃焼設備で前記混合ガスを燃焼させて働く混焼システムの特徴構成は、
前記ガス燃焼設備が、当該ガス燃焼設備に供給される前記混合ガスの総発熱量に応じた出力を出力する出力可変型ガス燃料機器であり、
前記主燃料ガスの圧力を設定圧力に設定した状態で前記混合器に導く主燃料ガス供給系統と、前記副燃料ガスの流量を設定流量に調整する流量調整手段を備え、前記流量調整手段で調整された流量の前記副燃料ガスを前記混合器に導く副燃料ガス供給系統とを備え、
前記ガス燃焼設備の出力を検知する出力検知手段と、
前記出力検知手段により検知された出力検知値、前記主燃料ガスの発熱量、前記副燃料ガスの発熱量と予め定まる前記主燃料ガスに対する前記副燃料ガスの混合比とに基づいて前記副燃料ガスの供給目標流量を導出するとともに、導出された前記副燃料ガスの供給目標流量を制御目標として、前記流量調整手段を制御する制御手段を備えたことにある。
【0013】
この混焼システムは、基本的に、主燃料ガス、副燃料ガスの発熱量が安定しており、その混合比を予め設定できる所望の混合比で混合して混合ガスを得る設備に採用される。このシステムでは、先ず、出力検知手段によりシステムの出力を検知し、制御手段で、この出力に応じてガス燃焼設備側で要求される総発熱量を介して、副燃料ガスの供給目標流量を導出し、その供給目標流量になるように副燃料ガスの供給流量を制御する。本願発明の場合は、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を、各制御時点で一定値とするため、主燃料ガスの混合器さらにはガス燃焼設備への供給圧を一定に保つ状態で、副燃料ガスの供給流量の制御のみで、所定の混合比で混合された混合ガスを安定的にガス燃焼設備に供給できる。従って、ガス燃焼設備へ供給される混合ガスの発熱量を、当該ガス機器に許容される許容発熱量変動幅内に容易に抑えながらシステムを運転できる。
【0014】
また、原料ガス(主燃料ガス及び副燃料ガス)夫々の発熱量が比較的安定しており、ガス燃焼設備(ガスエンジン、ボイラ等)に導入する混合ガスにおける原料ガスの混合比を予め設定することが好ましい混焼システムにおいて、可能な限り簡便で、設備コストが低く、信頼性の高い混焼システムを得ることができる。
【0015】
このような混焼システムとして、前記ガス燃焼設備が、前記混合ガスの燃焼により動力を発生するガスエンジンと、前記ガスエンジンにより発生される動力により電力を発生させる発電機とを組み合わせて構成され、前記出力が前記発電機の発電電力量であることが好ましい。
【0016】
ガスエンジン発電システムは、オンサイトでの電力供給に対応でき、しかも、本願が対象とするような発熱量が比較的安定した副燃料ガスを得られる環境において、両原料ガスの混合比を守りながら、電力負荷の変動に容易に対応したガスエンジン発電システムを得ることができる。
【0017】
さて、このようなガスエンジン発電システムでは、前記発電電力量から求まる総発熱量をP´、前記主燃料ガスの発熱量をQ1、前記副燃料ガスの発熱量をQ2、前記混合比をR1として、前記副燃料ガスの供給目標流量F2oをR1×P´/(Q1+R1×Q2)として求め、混合比を守りながら、出力変動に対応できる。
【0018】
一方、前記ガス燃焼設備が、前記出力である前記混合ガスの燃焼ガス量を最小燃焼量から最大燃焼量の範囲で段階的に設定制御して運転されるガス燃焼設備であることも好ましい。
本願にかかる混焼システムでは、ガス燃焼設備に供給される混合ガスの発熱量を混合比との関係で安定的に制御するので、ガス燃焼設備の運転状態において、段階的な出力が要求される機器において、副燃料ガスの供給量を適切量に制御するだけで、負荷に応じた出力を得られる。
【0019】
このような、ガス燃焼設備に対するシステムでは、前記ガス燃焼設備側で設定制御される総発熱量に対応する混合ガスの燃焼ガス量をF3、前記混合比をR2として、前記副燃料ガスの目標流量F2oをR2×F3/(1+R2)として求め、混合比を守りながら、それぞれの出力(負荷)に対応できる。
【0020】
これまで説明した混焼システムでは、主燃料ガスガスと副燃料ガスとの混合比を、一定とする場合について説明したが、不測に副燃料ガスの発熱量が変動した場合に、本願に係る混焼システムでは、混合比の変更だけで対応できる。以下この構成に関して説明する。このような発熱量の変動は、混合ガスの発熱量の変動として検出できる。そこで、このような不測の事態にも対応できる混焼システムを構築するには、これまで説明してきた構成に加えて、以下の構成を追加しておけばよい。
前記混合ガスの発熱量を検出する発熱量検出手段を設け、前記発熱量検出手段が検出する前記混合ガスの発熱量が、前記ガス燃焼設備に関して設定される前記混合ガスの発熱量許容変動幅を外れる場合に、前記混合比を可変設定可能に構成されている。
【0021】
前記混合ガスの発熱量許容変動幅より低い側に外れる場合に、前記混合比を副燃料ガス低下側に変更し、前記混合ガスの発熱量許容変動幅より高い側に外れる場合に、前記混合比を副燃料ガス上昇側に変更するようにしておくと、副燃料ガスの発熱量が当初予想されている発熱量の変動範囲を超えて変動した場合に、混合比の設定変更で、他のシステム構成を変更することなく、容易に対応できる。
【0022】
そして、前記副燃料ガスの流量が前記主燃料ガスの流量より小流量に設定され、前記小流量の燃料ガスが流れる副燃料ガス供給系統に、当該副燃料ガス供給系統を流れる流量を検出する流量検出手段と、前記流量調整手段が設けられる構成を採用すれば、流量検出手段、流量調整手段及びその制御手段を、小流量対応のものとでき、簡易かつ低コストのものを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガスエンジン発電システムの構成を示す図
【図2】本発明に係るガスエンジン発電システムの発電電力量Pとガスエンジンに供給される総発熱量F3×Q3との関係を示す図
【図3】本発明に係るボイラシステムの構成を示す図である。
【図4】主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を維持する運転を可能とするガスエンジン発電システムの構成例を示す図
【図5】主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を維持する運転を可能とするボイラシステムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
本明細書では、本発明をガスエンジン発電システムS1に適用する第1実施形態と、ボイラシステムS2に適用する第2実施形態を説明する。
【0025】
第1実施形態
この実施形態のシステム構成を図1に示した。
図1に示すように、ガスエンジン発電システムS1は、主燃料ガスである天然ガスg1(具体的には都市ガス13A)と、副燃料ガスであるバイオガスg2との混合ガスg3の供給を受けて働くガスエンジン1と、このガスエンジン1で駆動される発電機2とを備えて構成されている。同図に示すように、ガスエンジン1には別途燃焼用酸素含有ガスoが供給されて、当該ガスエンジン1が運転される。さらに、ガスエンジン1はスロットルバルブ1aを備え、発電機2からの出力に従って、出力の増加に伴って開度が高められ、出力の減少に伴って開度が低下される形態で、当該スロットルバルブ1aの開度が調整される。本第1実施形態では、これらガスエンジン1及び発電機2が本願におけるガス燃焼設備を構成する。また、このガスエンジン発電システムS1から得られる発電電力量がガス燃焼設備の出力とされ、この出力を測定することで、システム負荷を検知できる。ここで、発電電力量Pを検出する検出系統が、出力検知手段に相当する。
【0026】
図2に、発電電力量Pと、ガスエンジン1に供給されるべき混合ガスg3の総発熱量F3×Q3(供給流量F3:発熱量Q3)との関係を示した。同図からも判明するように、発電電力量Pの増加に伴って混合ガスg3の総発熱量F3×Q3は、線形に増加する。従って、このガスエンジン発電システムS1では、システム負荷である発電出力が確定した場合、系内に投入すべき総発熱量F3×Q3が確定する。
【0027】
次に、混合ガスg3の供給系に関して説明する。
先にも説明したように、本願発明のガスエンジン発電システムS1が使用される現場では、天然ガスg1及びバイオガスg2の発熱量は、夫々、安定した発熱量に管理されている。今、天然ガスg1の供給流量をF1、発熱量をQ1とし、バイオガスg2の供給流量をF2、発熱量をQ2とする。
【0028】
図1に示すように、主燃料ガスである天然ガスg1は、弁出口側のガス圧を所定の目標圧力とする減圧弁3、開閉弁4を経て混合器5に導入される。
副燃料ガスであるバイオガスg2は、流量検出器6、流量調整弁7及び開閉弁8を経て、混合器5に導入される。流量検出器6、流量調整弁7に対して流量制御器9が設けられており、この流量制御器9は、前記流量検出器6で検出される流量F2が、後述する演算器10により演算される供給目標流量F2oになるように、前記流量調整弁7を制御する。ここで開閉弁4、8は、流路の開閉用に使用される。また流量検出器6は流量検出手段に相当し、流量調整弁7は流量調整手段に相当する。
混合器5に導入された天然ガスg1及びバイオガスg2が、当該混合器5により混合され、混合ガスg3としてガスエンジン1に供給される。
【0029】
ガスエンジン発電システムS1では、バイオガスg2の混合器5への供給形態は、演算器10により演算・設定される供給目標流量F2oを混合器5に供給するように調整される。
【0030】
演算器10による供給目標流量F2oは、発電機の出力である発電電力量をP、この発電電力量Pから求まる総発熱量をP´、天然ガスg1の発熱量をQ1、バイオガスg2の発熱量をQ2、天然ガスg1とバイオガスg2との供給流量比である混合比をR1として、R1×P´/(Q1+R1×Q2)として演算される。従って、演算器10と流量制御器9が、本願の制御手段を構成する。
【0031】
このようにバイオガスg2の供給目標流量F2oを演算・設定できる理由は以下の通りである。
先に説明したように、発電機2からの出力である発電電力量Pを計測することで、図2に示す関係からこの発電電力量Pはガスエンジン1で必要とされる総発熱量P´=F3×Q3に変換できる。ガスエンジン発電システムS1に供給される総供給熱量は、図1に示すシステムではF1×Q1+F2×Q2である。即ち、F1×Q1+F2×Q2=F3×Q3が成立する。従って、バイオガスg2の供給目標流量F2oは、以下の式で求まることとなる。
【0032】
〔数1〕
F2o=(F2/F1)×(F3×Q3)/{Q1+(F2/F1)×Q2}
=R1×(F3×Q3)/(Q1+R1×Q2)
=R1×(P´)/(Q1+R1×Q2)
ここで、P´は、発電電力量Pの線形関数として求まる(F3×Q3)の値を意味する。
【0033】
この供給目標流量F2oを、演算器10よりバイオガスg2の流量制御器9に与えることにより、天然ガスg1とバイオガスg2との混合比を所望の値に維持しながら、所望の電力負荷に適切に対応できる。
【0034】
第2実施形態
この実施形態のシステム構成を図3に示した。
図3に示すように、このボイラシステムS2も、主燃料ガスである天然ガスg1(具体的には都市ガス13A)と、副燃料ガスであるバイオガスg2との混合ガスg3の供給を受けて働くボイラ11を備えて構成されている。同図に示すように、ボイラ11には別途燃焼用酸素含有ガスoが供給されて、当該ボイラ11が運転される。
【0035】
図3の右上に示すように、ボイラ11にはボイラ制御盤11aが設けられており、ボイラ制御盤11aにおいて使用者は、ボイラ11の出力を3段階に設定できるように構成されている。同図には、「高燃焼」「低燃焼」「待機」として記載しているが、これら「高燃焼」「低燃焼」「待機」がそれぞれ、「必要蒸気量が大きい場合のボイラ出力」「必要蒸気量が小さい場合のボイラ出力」及び「待機状態にある場合のボイラ出力」にそれぞれ対応している。従って、このボイラシステムS2でも、ボイラ制御盤11aにおける運転設定が確定した状態で、混合ガスの発熱量をQ3として、ボイラ11に供給する供給流量をF3、ボイラ11に投入すべき総発熱量F3×Q3が確定できる。本第2実施形態では、ボイラ11が本願におけるガス燃焼設備を構成し、このボイラシステムS2に於けるボイラ制御盤の設定状態で、実質的に蒸気発生量に対応するため、この設定からシステムの出力(システム負荷)を検知できる。ここでは、ボイラ制御盤11aが、ガス燃焼設備の出力を検知する出力検知手段に相当する。
【0036】
次に、混合ガスの供給系統に関して説明する。
この例にあっても、図3に示すように、主燃料ガスが天然ガスg1(具体的には都市ガス13A)であり、副燃料ガスがバイオガスg2である例を示している。先にも説明したように、本願発明のボイラシステムS2が使用される現場では、天然ガスg1及びバイオガスg2の発熱量は、夫々、安定した発熱量に管理されており、天然ガスg1の供給流量をF1、発熱量をQ1とし、バイオガスg2の供給流量をF2、発熱量をQ2とする。
【0037】
先のガスエンジン発電システムS1の場合と同様に、主燃料ガスである天然ガスg1は、弁出口側のガス圧を所定の目標圧力とする減圧弁3、開閉弁4を経て混合器5に導入される。
副燃料ガスであるバイオガスg2でも、流量検出器6、流量調整弁7及び開閉弁8を経て、流量調整されたバイオガスg2が導かれる混合器5に導入される。
混合器5に導入された天然ガスg1及びバイオガスg2が、当該混合器5により混合され、混合ガスg3としてボイラ11に供給される。
【0038】
本願発明のボイラシステムS2では、バイオガスg2の混合器5への供給形態は、演算器10により演算・設定される供給目標流量F2oを混合器5に供給するように調整される。
【0039】
演算器10による供給目標流量F2oは、ボイラ制御盤11aで設定制御される混合ガスg3の供給流量をF3、混合比をR2として、バイオガスg2の目標流量F2oはF2o=R2×F3/(1+R2)として演算される。
【0040】
このようにバイオガスg2の供給目標流量F2oを演算・設定できる理由は以下の通りである。
先にも説明したように、ボイラ制御盤11aにおける燃焼量を設定することで、ボイラ11で必要とされる総発熱量F3×Q3が確定する。ボイラシステムS2に供給される総供給熱量は、F1×Q1+F2×Q2であり、この総供給熱量は総発熱量F3×Q3となる。即ち、F1×Q1+F2×Q2=F3×Q3が成立する。さらに、F1+F2=F3の関係が成立するとともに、F2=R2×F1とされるため、混合ガスg3の発熱量Q3は以下の式で求まり、混合比R2を一定としたい本発明の場合、混合ガスg3の発熱量Q3は一定となる。
【0041】
〔数2〕
Q3=(Q1+R2×Q2)/(1+R2×Q2)
【0042】
一方、ボイラ11の出力は混合ガス流量F3に比例するため、F2o=R2×F3/(1+R2)となるが、この場合、R2を一定とする場合、F2とF3との間で、単純な比例関係が成立する。
そこで、本発明のボイラシステムS2では、上記のボイラ制御盤11aで設定される燃料量(蒸気必要量)に応じて予め求められるバイオガスg2の供給目標流量F2oを演算して、適切に流量を制御できる。
この供給目標流量F2oを、演算器10より流量制御器9に与えることにより、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を所望の値に維持しながら、蒸気負荷に適切に対応できる。
【0043】
以下、本願に係る混焼システムにおいて、副燃料ガスの発熱量が変化した場合における、混合ガスの発熱量の変動に関して説明する。通常、ガスエンジン或いはボイラでは、ガス燃焼設備に供給されるガス(本願の場合は混合ガス)は、その発熱量の許容変動幅が±5%程度とされる。
【0044】
(1) 前提条件
主燃料ガスである天然ガスの発熱量 :低位発熱量である40.6MJ/m3
副燃料ガスであるバイオガスの発熱量:低位発熱量である27.7MJ/m3
ガス燃焼設備の発熱量許容変動幅 :±5%
混合比 :天然ガス:バイオガス=7:3
【0045】
(2)バイオガスの発熱量が−10%変化した場合
バイオガスの発熱量が変動する前の混合ガスの発熱量:
27.7×0.3+40.6×0.7=36.73MJ/m3
バイオガスの発熱量が−10%変化した時の混合ガスの発熱量:
27.7×0.9×0.3+40.6×0.7=35.92MJ/m3
となり、混合ガスの発熱量変化率は(35.92−36.73)/36.73×100=−2.2%で、ガス燃焼設備に設定される発熱量の許容変動幅の±5%に収まる。
【0046】
(3)バイオガスの発熱量が−30%変化した場合
バイオガスの発熱量が−30%変化した場合の混合ガスの発熱量:
27.7×0.7×0.3+40.6×0.7=34.24MJ/m3
混合ガスの発熱量変化率は(34.24−36.73)/36.73×100=−6.9%で、ガス燃焼設備に設定される発熱量許容変動幅の±5%から外れる。
【0047】
このような場合は、主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を変更することで、システムで変動を吸収できる。
主燃料ガスと副燃料ガスとの混合比を、7:3から8:2に変更した場合の混合ガスの発熱量の変動は以下のようになる。
27.7×0.7×0.2+40.6×0.8=36.36MJ/m3
結果、混合ガスの発熱量の変化率は、(36.36−36.73)/36.73×100=−1.0%で、ガス燃焼設備の発熱量許容変動幅の±5%に収めることができる。
【0048】
このように、何らかの原因により大幅にバイオガスの発熱量が変動する可能性がある場合は、混合ガスの発熱量を検出する発熱量検出手段を設け、この発熱量検出手段による検出結果に基づいて、混合ガスの発熱量が低下した場合は、主燃料ガスに対する副燃料ガスの量比を低下させる形態で、混合ガスの発熱料が上昇した場合は、主燃料ガスに対する副燃料ガスの量比を増加させる形態で、混合比を変化させればよい。このシステムでは、主燃量ガスの量が副燃量ガスの量より大きく、さらに、主燃料ガスの発熱量が副燃料ガスの発熱量より大きい形態で、このように混合比を変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
原料ガス(主燃料ガス及び副燃料ガス)夫々の発熱量が比較的安定しており、ガス燃焼設備(ガスエンジン、ボイラ等)に導入する混合ガスにおける原料ガスの混合比を予め設定することが好ましい混焼システムにおいて、可能な限り簡便で、設備コストが低く、信頼性の高い混焼システムを得ることができた。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスエンジン(ガス燃焼設備)
2 発電機(ガス燃焼設備)
3 均圧弁
5 混合器
6 流量検出器(制御手段)
7 流量調整弁(流量調整手段)
9 流量制御器(制御手段)
10 演算器(制御手段)
11 ボイラ(ガス燃焼設備)
11a ボイラ制御盤
g1 主燃料ガス
g2 副燃料ガス
g3 混合ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃料ガスと副燃料ガスとを混合器で混合した混合ガスをガス燃焼設備に供給し、当該ガス燃焼設備で前記混合ガスを燃焼させて働く混焼システムであって、
前記ガス燃焼設備が、当該ガス燃焼設備に供給される前記混合ガスの総発熱量に応じた出力を出力する出力可変型ガス燃料機器であり、
前記主燃料ガスの圧力を設定圧力に設定した状態で前記混合器に導く主燃料ガス供給系統と、前記副燃料ガスの流量を設定流量に調整する流量調整手段を備え、前記流量調整手段で調整された流量の前記副燃料ガスを前記混合器に導く副燃料ガス供給系統とを備え、
前記ガス燃焼設備の出力を検知する出力検知手段と、
前記出力検知手段により検知された出力検知値、前記主燃料ガスの発熱量、前記副燃料ガスの発熱量と予め定まる前記主燃料ガスに対する前記副燃料ガスの混合比とに基づいて前記副燃料ガスの供給目標流量を導出するとともに、導出された前記副燃料ガスの供給目標流量を制御目標として、前記流量調整手段を制御する制御手段を備えた混焼システム。
【請求項2】
前記ガス燃焼設備が、前記混合ガスの燃焼により動力を発生するガスエンジンと、前記ガスエンジンにより発生される動力により電力を発生させる発電機とを組み合わせて構成され、前記出力が前記発電機の発電電力量である請求項1記載の混焼システム。
【請求項3】
前記発電電力量から求まる総発熱量をP´、前記主燃料ガスの発熱量をQ1、前記副燃料ガスの発熱量をQ2、前記混合比をR1として、前記副燃料ガスの供給目標流量F2oをR1×P´/(Q1+R1×Q2)として求める請求項2記載の混焼システム。
【請求項4】
前記ガス燃焼設備が、前記出力である前記混合ガスの燃焼ガス量を最小燃焼量から最大燃焼量の範囲で段階的に設定制御して運転されるガス燃焼設備である請求項1記載の混焼システム。
【請求項5】
前記ガス燃焼設備側で設定制御される総発熱量に対応する混合ガスの燃焼ガス量をF3、前記混合比をR2として、前記副燃料ガスの供給目標流量F2oをR2×F3/(1+R2)として求める請求項4記載の混焼システム。
【請求項6】
前記混合ガスの発熱量を検出する発熱量検出手段を設け、前記発熱量検出手段が検出する前記混合ガスの発熱量が、前記ガス燃焼設備に関して設定される前記混合ガスの発熱量許容変動幅を外れる場合に、前記混合比を可変設定可能に構成され、
前記混合ガスの発熱量許容変動幅より低い側に外れる場合に、前記混合比を副燃料ガス低下側に変更し、前記混合ガスの発熱量許容変動幅より高い側に外れる場合に、前記混合比を副燃料ガス上昇側に変更する請求項1〜5の何れか一項記載の混焼システム。
【請求項7】
前記副燃料ガスの流量が前記主燃料ガスの流量より小流量に設定され、前記小流量の燃料ガスが流れる副燃料ガス供給系統に、当該副燃料ガス供給系統を流れる流量を検出する流量検出手段と、前記流量調整手段が設けられる請求項1〜6の何れか一項記載の混焼システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157860(P2011−157860A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19571(P2010−19571)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(501246488)株式会社クリエイティブテクノソリューション (10)
【Fターム(参考)】