説明

減衰バルブ

【課題】減衰力調整の応答性を向上することができる減衰バルブを提供することである。
【解決手段】上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、緩衝器の伸縮時に流体が通過する通路の途中に設けられる固定部材1と、固定部材1に対して相対移動可能であって固定部材1と協働して通路を制限する可動部材2と、可動部材2に推力を与える駆動手段3とを備え、通路面積あるいは開弁圧を調節可能な減衰バルブV1において、駆動手段3が可動部材2に連結される磁歪素子4と、磁歪素子4に磁界を与えるコイル5とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種減衰バルブにあっては、たとえば、車両用の緩衝器等に具現化され、緩衝器内に封入された作動油が通過する通路の途中に設けらており、緩衝器の伸縮時に生じる作動油の流れに抵抗を与えるとともに、この抵抗を通路面積の調節、すなわち通路面積の大きさを調節することによって変更して、緩衝器の発生減衰力を可変ならしめるものが知られている。
【0003】
そして、このような減衰バルブは、たとえば、ニードル弁におけるニードルをソレノイドによって駆動して、通路面積を調節するようになっており、この通路面積の調節によって、主たる通路に設けたリーフバルブの背面に設けた押圧部材をリーフバルブ側へ押付ける圧力を作用させる背圧室内の圧力を制御して、リーフバルブの開弁圧を調節して緩衝器の発生減衰力を最適なものにするようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−330977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した減衰バルブの制御は、車両の走行状況をモニタする制御装置に行われ、制御装置の指令に対して実際に減衰バルブが減衰力を調整するまでの応答時間が短いほど制御性が向上するため、可能な限り応答時間を短縮したいが、従来の減衰バルブにあっては、ソレノイドを用いて減衰力を調節しており、応答時間はソレノイドの特性に依存して決まり、これ以上の応答性の向上を望むことが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、減衰力調整の応答性を向上することができる減衰バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、緩衝器の伸縮時に流体が通過する通路の途中に設けられる固定部材と、固定部材に対して相対移動可能であって固定部材と協働して通路を制限する可動部材と、可動部材に推力を与える駆動手段とを備え、通路面積あるいは開弁圧を調節可能な減衰バルブにおいて、駆動手段が可動部材に連結される磁歪素子と、磁歪素子に磁界を与えるコイルとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の減衰バルブによれば、コイルへの通電量に応じて固定部材に対して可動部材を相対移動させて通路面積あるいは開弁圧を調節して、緩衝器の発生減衰力を調節することができる。
【0008】
そして、この固定部材の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0009】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブにおけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の縦断面図である。図2は、一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。図3は、一実施の形態の変形例における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。図4は、他の実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。図5は、他の実施の形態の変形例における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。図6は、別の実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【0011】
一実施の形態における減衰バルブV1は、この実施の形態の場合、図1および図2に示すように、ユニフロー型に設定される緩衝器の減衰力発生用のバルブに具現化されており、緩衝器のシリンダ10内に設けたロッド側室R1とリザーバRとを連通する通路の途中に設けた固定部材たる弁座1と、弁座1に対して相対移動可能であって弁座1と協働して通路を制限する可動部材たる弁体2と、弁体2に推力を与える駆動手段たるアクチュエータ3とを備えて構成され、アクチュエータ3は、弁体2に連結される磁歪素子4と、磁歪素子4に磁界を与えるコイル5とを備えて、弁体2を弁座1に対して駆動して弁座1の間の通路面積を調節して緩衝器が発生する減衰力を調節するようになっている。
【0012】
なお、緩衝器は、たとえば、図1に示すように、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内に移動挿入されてピストン11に連結されるロッド12と、シリンダ10内に挿入したピストン11で区画したロッド側室R1とピストン側室R2と、シリンダ10の外周を覆ってシリンダ10との間に排出通路15を形成するパイプ13と、さらに、パイプ13の外周を覆ってパイプ13との間にリザーバRを形成する外筒14とを備えて構成されており、ロッド側室R1、ピストン側室R2およびリザーバR内には作動油等の流体が充填されるとともにリザーバRには作動油の他に気体が充填されている。なお、流体は、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な流体であれば使用可能である。
【0013】
そして、この緩衝器の場合、リザーバRからピストン側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する吸込通路16と、ピストン11に設けられてピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう流体の流れのみを許容するシリンダ内通路17とを備え、排出通路15はピストン側室R1とリザーバRとを連通し、この場合、減衰バルブV1は、特許請求の範囲に言う通路としての排出通路15の途中に設けられている。
【0014】
この緩衝器は、圧縮作動する際には、ピストン11が図1中下方へ移動してピストン側室R2が圧縮され、ピストン側室R2内の流体がシリンダ内通路17を介してロッド側室R1へ移動する。この圧縮作動時には、ロッド12がシリンダ10内に侵入するためシリンダ10内でロッド侵入体積分の流体が過剰となり、過剰分の流体がシリンダ10から押し出されて排出通路15を介してリザーバRへ排出される。緩衝器は、ロッド側室R1から排出通路15を通過してリザーバRへ移動する流体の流れに減衰バルブV1で抵抗を与えることによって、シリンダ10内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
【0015】
反対に、緩衝器が伸長作動する際には、ピストン11が図1中上方へ移動してロッド側室R1が圧縮され、ロッド側室R1内の流体が排出通路15を介してリザーバRへ移動する。この伸長作動時には、ピストン11が上方へ移動してピストン側室R2の容積が拡大して、この拡大分に見合った流体が吸込通路16を介してリザーバRから供給される。そして、緩衝器は、ロッド側室R1から排出通路15を通過してリザーバRへ移動する流体の流れに減衰弁V1で抵抗を与えることによってロッド側室R1内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
【0016】
上述したところから理解できるように、緩衝器は、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ10内から排出通路15を介して流体をリザーバRへ排出し、流体がピストン側室R2、ロッド側室R1、リザーバRを順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰バルブV1によって発生するようになっている。なお、ロッド12の断面積をピストン11の断面積の二分の一に設定しておくことで、同振幅であればシリンダ10内から排出される流体量を伸圧両側で等しく設定できるため、減衰バルブV1が流れに与える抵抗を同じにしておくことで伸側と圧側の減衰力を同じに設定することができる。また、緩衝器の作動流体が気体であって体積補償が不要である場合にはリザーバの設置は任意であるが、この緩衝器の場合、ユニフロー型に設定されているため、リザーバを設けておくほうが好ましい。
【0017】
つづいて、減衰バルブV1は、外筒14の側方に設けた開口部14aに固定される中空なハウジング20と、ハウジング20内に収容されてパイプ13の開口部に取付けられた有底筒状の弁座部材21と、弁座部材21に形成した環状の弁座1に遠近して離着座可能な弁体2と、弁体2に接続される磁歪素子4とコイル5とを備えてハウジング20に取付けられるアクチュエータ3とを備えて構成されている。
【0018】
ハウジング20は、図2に示すように、筒状であって外筒14の開口部14aに固定されており、このハウジング20内には、弁座部材21が収容される。そして、弁座部材21は、有底筒状とされており図2中右端の底部外周に鍔21aが設けられ、当該鍔21aをハウジング20の内周に嵌合させてある。また、底部にはこれを貫く孔21bが設けられ、当該孔21bの図2中右端となる外方側開口端の内縁で環状の弁座1を形成している。また、鍔21aの外周には切欠21cが設けられている。
【0019】
したがって、弁座部材21は、ハウジング20との間にリザーバRに通じる環状隙間を形成し、また、弁座部材21の内部はパイプ13とシリンダ10との間の環状隙間を介してロッド側室R1に通じている。そして、上記孔21bを介して弁座部材21の内外が連通されており、パイプ13とシリンダ10との間の環状隙間、弁座部材21内、孔21b、弁座部材21とハウジング20との間の環状隙間を介してロッド側室R1とリザーバRとが連通され、これらでロッド側室R1とリザーバRとを連通する通路たる排出通路15を形成している。
【0020】
転じて、アクチュエータ3は、コイル5を収容する筒状のコイルケース6と、コイルケース6の図2中右端内周に螺着されてコイルケース6内を封止するキャップ7と、一端がキャップ7に保持されてコイルケース6内に収容されコイル5内に配置される磁歪素子4とを備えて構成され、コイルケース6の図2中左端に設けた筒状のソケット部6aをハウジング20の外周に嵌合し、外周からロール加締めを施すことによってハウジング20に固定されている。
【0021】
コイルケース6は、ケース内筒6bと、ケース内筒6bの間に空間を形成するケース外筒6cとを備えて、当該空間内にコイル5を収容している。この場合、コイルケース6は、このようにコイル5を収容可能なように、ケース内筒6bとケース外筒6cの二つの部品で構成されている。また、コイルケース6は、外周に切欠孔6dを備えており、コイル5には、この切欠孔6dに挿通される電力供給用のリード線5aを介して図示しない外部電源から電流供給されるようになっている。
【0022】
なお、コイルケース6の内周とキャップ7の外周との間にはシールリング8が介装されており、コイルケース6とキャップ7との間がシールされるとともに、コイルケース6のソケット部6aの内周とハウジング20の外周との間にもシールリング9が介装され、コイルケース6とハウジング20との間がシールされ、これらシールリング8,9によってハウジング20、コイルケース6およびキャップ7で形成される空間が密閉状体に維持されている。
【0023】
なお、このコイルケース6の場合、図示したところでは、ハウジング20にソケット6aをロール加締めすることによって固定されているが、ハウジング20とソケット6aに螺子部を形成して両者を螺子締結することでコイルケース6とハウジング20とを固定するようにしてもよい。また、コイルケース6の構成および形状は任意であり、上記したところに限定されない。
【0024】
また、磁歪素子4は、コイル5が励磁されることによる磁界の発生や磁界の大きさの調節によって、伸長する正歪を生じて軸方向の長さを変更することができるようになっている。なお、磁歪素子4は、作用する磁界の大きさに対する歪量が大きい超磁歪素子とすると、伸縮量を大きくできるので好ましい。
【0025】
弁体2は、この場合、弁座部材1に離着座する円錐台状の弁頭2aと、弁頭2aの外周に設けたフランジ2bとを備えたポペット型の弁体とされ、上記した磁歪素子4の他端に連結されており、弁体2におけるフランジ2bと弁座部材21の底部との間には、皿バネ22が介装され、弁体2は弁座1から遠ざかる方向へ附勢されている。そして、弁体2は、コイル5の励磁によって磁歪素子4が伸長すると弁座1側へ接近し、コイル5への通電量に応じて弁座1に対する弁体2の位置を調節でき、当該弁座1と弁体2の間で形成される環状隙間の面積、すなわち、通路面積を調節することができるようになっている。なお、皿バネ22あるいは弁体2には、弁体2と弁座1との間を通過した流体が、ハウジング20と弁座部材21との間の環状隙間へ移動することが可能なように、切欠を備えており、この場合、弁体2のフランジ2bに切欠2cを設けてある。
【0026】
また、この場合、磁歪素子4は、正歪を呈するが、磁界の作用によって収縮する負歪を呈するものを採用してもよく、また、永久磁石で磁歪素子4にバイアス磁界を作用させてコイル5への通電量と磁歪素子4の歪量を任意に設定できるようにしてもよい。なお、弁座部材21の底部には、孔21bを迂回するオリフィス孔21dが設けられており、オリフィス孔21dを設けることによって、寸法公差によってコイル5へ通電が断たれた状態で弁体2の弁頭2aが完全に弁座1に接触して孔21bを閉塞状態としてしまうような事態が生じても通路が完全遮断されて緩衝器が伸縮不能に落ちってしまうことが防止され、減衰バルブV1の組み立てを簡単ならしめることができる。
【0027】
さらに、この実施の形態の場合、弁体2を弁座1から遠ざかるように附勢しているので、磁歪素子4に弁体2を介して皿バネ22の附勢力を作用させているが、こうすることによって、磁歪素子4に予荷重を与えて磁歪素子4の変位量を大きくすることができるようになっているが、予荷重を与えずとも充分な変位量が確保できるのであれば皿バネ22を廃止してもよい。また、この場合、弁体2を磁歪素子4に連結しているが、磁歪素子4に弁頭を形成して、磁歪素子4自体を弁体としてもよい。
【0028】
このように構成された減衰バルブV1にあっては、コイル5の励磁によって磁界が磁歪素子4に作用すると、磁歪素子4が弁体2に推力を与えて弁座1に対して弁体2を軸方向となる図2中左右方向へ変位させ、弁座1と弁体2との間の通路における通路面積を、コイル5への通電量に応じて変更させることができる。
【0029】
そして、この弁体2の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子4を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0030】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブV1におけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【0031】
つづいて、一実施の形態の変形例における減衰バルブV2について説明する。この減衰バルブV2は、一実施の形態と同様の緩衝器に適用されており、図3に示すように、一実施の形態の減衰バルブV1の構成によって開弁圧が制御される主弁30を追加したものである。この変形例における減衰バルブV2の説明に当たり、一実施の形態の減衰バルブV1と同様の部材については、説明が重複するので、同じ符号を付すのみとしてその詳しい説明を省略することとする。
【0032】
この主弁30は、上記の一実施の形態の減衰バルブV1の構成と同様の構成によって弁座部材34内に摺動自在に挿入された主弁体31の背面圧を調節して、主弁体31が主弁座32aから離座する開弁圧を制御するようにしている。
【0033】
そのため、一実施の形態の変形例における減衰バルブV2は、弁座部材34とパイプ13の開口部との間に主弁座32aを備えた主弁座部材32を介装し、この主弁座部材32に離着座可能な主弁体31を弁座部材34内に摺動自在に挿入し、主弁体31を主弁座32aへ向けて附勢するバネ33を主弁体31と弁座部材34の底部との間に介装してある。
【0034】
また、主弁座部材32は、パイプ13の開口部に挿入される筒部32bと、筒部32bの図3中右端外周に設けた鍔状の主弁座32aとを備えて構成され、ハウジング20に固定される弁座部材34とパイプ13とによって挟持されて、緩衝器に固定されている。そして、弁座部材34の図3中左端には切欠34dが設けられており、この切欠34dを介して弁座部材34内とリザーバRとが連通されるようになっている。すなわち、切欠34dは、弁体2と弁座1とが設けられる通路を迂回してロッド側室R1とリザーバRとを連通させて主通路を形成しており、上記主弁30は主通路の途中に設けられている。
【0035】
弁座部材34は、内部で図3中左右に動く主弁体31を収容するため、一実施の形態における減衰バルブV1における弁座部材21より軸方向に長くされており、切欠34dが設けられるほかは弁座部材21と同様に、底部に設けた孔34aと、ハウジング20に当接する鍔34bと、鍔34bの外周に設けた切欠34cとを備えて構成されている。
【0036】
主弁体31は、有底筒状であって、筒部31aを弁座部材34の内周に摺接させており、弁座部材34内を主弁座32a側となる正面側の空間Aと弁座部材34の底部側となる背面側の空間Bとに仕切っている。また、主弁体31は、底部31bにオリフィス孔31bを備えており、正面側の空間Aと背面側の空間Bとを連通させるとともに、正面側の圧力と背面側の圧力とに差圧が生じるようになっている。
【0037】
なお、この実施の形態の場合、通路は、シリンダ10とパイプ13との間に環状隙間から主弁座部材32の筒部32b内、主弁体31のオリフィス孔31b、弁座部材34内に形成される上記した背面側の空間D、弁座部材34とハウジング20との間の環状隙間によって形成されてロッド側室R1とリザーバRとを連通し、ロッド側室R1から主弁座部材32の筒部32bへ通じた後に切欠34dによって主通路と分岐されている。
【0038】
そして、この背面側の空間Bの圧力は、一実施の形態の減衰バルブV1と同様の構成のバルブによって調節されるようになっており、具体的には、弁体2と弁座1との間の環状隙間の大きさによって、当該環状隙間を通過する流体の流れに与える抵抗を変化させ、オリフィス孔31bと環状隙間との間の圧力、すなわち、上記した主弁体31の背面側に作用する背面側の空間B内の圧力を調節し、主弁体31が主弁座32aから離座する時の圧力、つまり、主弁30における開弁圧を調節するようにしている。
【0039】
そして、正面側から作用するロッド側室R1の圧力によって主弁体31を図3中右方へ押す力が、背面側から作用する圧力とバネ33のバネ力によって主弁体31を図3中左方へ押す力に打ち勝つと、主弁体31が主弁座32aから離座して主弁座32aとの間に隙間を生じさせ、この隙間を通過した流体は切欠34dを介してリザーバRへ移動するようになる。そして、この隙間を通過する流体の流れに対して主弁体31と主弁座32aとで抵抗を与えることによって緩衝器が減衰力を発揮する。
【0040】
したがって、この一実施の形態の変形例における減衰バルブV2にあっては、コイル5への通電量に応じて弁体2と弁座1とで通路面積の大きさ、つまり開弁度合を調節することで、主弁体31の背面側に作用する背面側の空間B内の圧力を調節し、主弁体31が主弁座32aから離座する開弁圧を調節して緩衝器の発生減衰力を調節することができる。
【0041】
つまり、このように構成された減衰バルブV2にあっては、コイル5の励磁によって磁界が磁歪素子4に作用すると、磁歪素子4が弁体2に推力を与えて弁座1に対して弁体2を軸方向となる図3中左右方向へ変位させ、弁座1と弁体2との間の通路における通路面積をコイル5への通電量に応じて変更させることで主弁体31の開弁圧を調節することができる。
【0042】
そして、この弁体2の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子4を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0043】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブV1におけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【0044】
つづいて、他の実施の形態の減衰バルブV3について説明する。この他の実施の形態の減衰バルブV3は、図4に示すように、上述の減衰バルブV1,V2と同様に、ユニフロー型に設定される緩衝器の減衰力発生用のバルブに具現化されており、緩衝器のシリンダ10内に設けたロッド側室R1とリザーバRとを連通する通路の途中に設けた固定部材たる弁体40と、弁体40に対して相対移動可能であって弁体40と協働して通路を制限する可動部材たる弁座部材41と、弁座部材41に推力を与える駆動手段たるアクチュエータ42とを備えて構成され、アクチュエータ42は、弁座部材41に連結される磁歪素子43と、磁歪素子43に磁界を与えるコイル44とを備えて、弁座部材41を弁体40に対して駆動して弁体40の開弁圧を調節して緩衝器が発生する減衰力を調節するようになっている。
【0045】
減衰バルブV3は、詳細には、図4に示すように、外筒14の側方に設けた開口部14aに固定される中空なハウジング45と、パイプ13の開口部に設けたスリーブ13aに螺着されてハウジング45内に突出する軸46と、軸46に内周が固定されて外周を自由端として撓みが許容される環状板でなる弁体40と、ハウジング45内に摺動自在に挿入されて弁体40の外周に対向する環状弁座41aを備えた弁座部材41と、ハウジング45に取付けられるアクチュエータ42とを備えて構成されている。
【0046】
ハウジング45は、図4に示すように、筒状とされて外筒14の開口部14aに固定され、このハウジング45内には、摺動自在に弁座部材41が収容される。そして、弁座部材41は、有底筒状とされており、筒部の先端となる図4中左端には環状の弁座41aが設けられ、図4中右端の底部にはこれを貫く透孔41bが設けられ、弁座部材41の外周にはシールリング47が装着され、当該シールリング47によって弁座部材41とハウジング40との間がシールされている。
【0047】
軸46は、中空であって基端となる図4中左端がスリーブ13aの内周に螺合され、先端となる図4中右端外周には鍔46aが設けられている。この軸46の外周には、間座48,49とこれらに挟持される環状板でなる弁体40が組み付けられており、間座48,49および弁体40は、スリーブ13aと鍔46aとで挟持されて軸46に固定されるようになっている。
【0048】
なお、弁体40は、複数の環状板を積み重ねて構成されており、環状板の枚数やそれぞれの外径の設定によって撓み剛性を任意に設定できるようになっているが、環状板の枚数および外径は、この減衰バルブV3が適用される緩衝器に発生させる減衰力に応じて任意の設定することができる。
【0049】
そして、上記弁体40に弁座部材41における弁座41aを当接させており、弁体40に弁座41aを当接させた状態で、弁座部材41を弁体40に対して軸方向となる図4中左右方向へ移動せしめて、弁体40における初期撓み量を調節することができるようになっており、初期撓み量を調節することで弁体40が弁座41aから離座する開弁圧を調節することができるようになっている。なお、弁座部材41が有底筒状とされているので、弁体40に対して遠近しても弁体40を排出通路15の途中に固定的に支持するための軸46に干渉しないようになっている。
【0050】
また、弁体40が撓んで弁座41aから離座すると、シリンダ10とパイプ13との間の環状隙間を介してロッド側室R1に通じている軸46内が弁体40と弁座41aとの間に形成される通路を介してリザーバRへ通じて、ロッド側室R1とリザーバRとが連通されることになる。
【0051】
したがって、この実施の形態の場合、パイプ13とシリンダ10との間の環状隙間、軸46内、ハウジング45と軸46の外周との間の環状隙間を介してロッド側室R1とリザーバRとが連通され、これらでロッド側室R1とリザーバRとを連通する通路たる排出通路15を形成している。
【0052】
転じて、アクチュエータ42は、コイル44を収容する筒状のコイルケース50と、コイルケース50の図4中右端内周に螺着されてコイルケース50内を封止するキャップ51と、一端がキャップ51に保持されてコイルケース50内に収容されコイル44内に配置される磁歪素子43とを備えて構成され、コイルケース50の図4中左端に設けた筒状のソケット部50aをハウジング45の外周に螺号することでハウジング45に固定されるようになっている。
【0053】
コイルケース50は、ケース内筒50bと、ケース内筒50bの間に空間を形成するケース外筒50cとを備えて、当該空間内にコイル44を収容している。この場合、コイルケース50は、このようにコイル44を収容可能なように、ケース内筒50bとケース外筒50cの二つの部品で構成されている。また、コイルケース50は、外周に切欠孔50dを備えており、コイル44には、この切欠孔50dに挿通される電力供給用のリード線44aを介して図示しない外部電源から電流供給されるようになっている。
【0054】
なお、コイルケース50の内周とキャップ51の外周との間にはシールリング52が介装されており、コイルケース50とキャップ51との間がシールされ、ハウジング40、コイルケース50およびキャップ51で形成される空間が密閉状体に維持されている。
【0055】
また、磁歪素子43は、コイル44が励磁されることによる磁界の発生や磁界の大きさの調節によって、伸長する正歪を生じて軸方向の長さを変更することができるようになっている。なお、磁歪素子43は、作用する磁界の大きさに対する歪量が大きい超磁歪素子とすると、伸縮量を大きくできるので好ましい。なお、磁歪素子43に、負歪を呈するものを採用してもよい。
【0056】
そして、弁座部材41は、上述したように弁体40に当接して弁体40に初期撓みを与えており、磁歪素子43には、弁座部材41を介して弁体40の初期撓みによる附勢力が作用して予荷重が与えられているので、磁歪素子43の歪量が確保されており、他の手立てによって予荷重を与える必要はないようになっている。
【0057】
また、弁座部材41の底部に透孔41bが設けられているので、軸46内を介して弁座部材41に作用するロッド側室R1内の圧力で弁座部材41を図4中左右のいずれか一方に押付けてしまうといった事態が阻止され、圧力による影響を受けずに磁歪素子43の推力によって弁座部材41を変位させることができるようになっている。
【0058】
このように構成された他の実施の形態の減衰バルブV3にあっては、緩衝器が伸縮して、ロッド側室R1から排出通路15を通過してリザーバRへ移動しようとする流体に弁体40と弁座41aとによって抵抗を与えて減衰力を発生するが、ロッド側室R1の圧力が弁体40の開弁圧に達していないと弁体40は弁座41aに着座したままとなり、流体は、弁体40の外周に設けられる図示しない切欠あるいは弁座41aの一部に設けた図示しない凹みによって形成されるオリフィスを通過してリザーバRへ排出される。
【0059】
これに対して、ピストン速度が大きくなりロッド側室R1内の圧力が弁体40の開弁圧以上となると、弁体40が撓んで弁座41aから離座して弁座41aとの間に隙間を生じせしめて流体の流れを許容しつつ当該流れに抵抗を与えて減衰力を発生させる。
【0060】
ここで、減衰バルブV3にあっては、コイル44に供給する電流量に応じて磁歪素子43の軸方向長さを調節して、弁座部材41の弁体40に対する軸方向の相対位置を調節することができ、当該調節によって弁体40の初期撓み量を調節できるようになっている。
【0061】
したがって、この減衰バルブV3にあっては、コイル44への通電量に応じて弁体40の初期撓み量を調節することで、弁体40の開弁圧を調節して、緩衝器の発生減衰力を調節することができる。
【0062】
そして、この減衰バルブV3にあっては、弁座部材41の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子43を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0063】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブV3におけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【0064】
次に、他の実施の形態の変形例における減衰バルブV4について説明する。この減衰バルブV4もまた他の実施の形態と同様の緩衝器に適用されており、図5に示すように、他の実施の形態一実施の形態の減衰バルブV3の構成によって開弁圧が制御される主弁60を追加したものである。この変形例における減衰バルブV3の説明に当たり、上記した各実施の形態の減衰バルブと同様の部材については、説明が重複するので、同じ符号を付すのみとしてその詳しい説明を省略することとする。
【0065】
この主弁60は、上記の他の実施の形態の減衰バルブV3の構成と同様の構成によって弁体保持部材64内に摺動自在に挿入された主弁体61の背面圧を調節して、主弁体61が主弁座62aから離座する開弁圧を制御するようにしている。
【0066】
そのため、他の実施の形態の変形例における減衰バルブV4は、弁体保持部材64とパイプ13の開口部との間に主弁座62aを備えた主弁座部材62を介装し、この主弁座部材62に離着座可能な主弁体61を弁座部材64内に摺動自在に挿入し、主弁体61を主弁座62aへ向けて附勢するバネ63を主弁体61と弁体保持部材64の底部との間に介装してある。
【0067】
また、主弁座部材62は、パイプ13の開口部に挿入される筒部62bと、筒部62bの図5中右端外周に設けた鍔状の主弁座62aとを備えて構成され、筒状のハウジング65に嵌合される弁体保持部材64とパイプ13とによって挟持されて、緩衝器に固定されている。そして、弁体保持部材64の図5中左端には切欠64aが設けられており、この切欠64aを介して弁体保持部材64内とリザーバRとが連通されるようになっている。すなわち、切欠64aは、弁体40と弁座41aとが設けられる通路を迂回してロッド側室R1とリザーバRとを連通させて主通路を形成しており、上記主弁60は主通路の途中に設けられている。
【0068】
弁体保持部材64は、有底筒状であって、底部に弁体40の内周を固定する中空な軸64dを備え、筒部の内周には図5中左右に動く主弁体61が収容され、筒部に設けた切欠64aと、外周に設けたハウジング65の内周に当接する鍔64bと、鍔64bの外周に設けた切欠64cとを備えて構成されている。なお、ハウジング65に固定されるコイルケース50と弁保持部材64との間には、筒状のスペーサ66が介装されており、弁保持部材64は、当該スペーサ66および主弁座部材62を介してコイルケース50とパイプ13とによって挟持され、ハウジング65に対して位置決めされて固定されている。
【0069】
主弁体61は、有底筒状であって、筒部61aを弁体保持部材64の内周に摺接させており、弁体保持部材64内を主弁座62a側となる正面側の空間Cと弁体保持部材64の底部側となる背面側の空間Dとに仕切っている。また、主弁体61は、底部61bにオリフィス孔61bを備えており、正面側の空間Cと背面側の空間Dとを連通させるとともに、正面側の圧力と背面側の圧力とに差圧が生じるようになっている。
【0070】
なお、この実施の形態の場合、通路は、シリンダ10とパイプ13との間に環状隙間から主弁座部材62の筒部62b内、主弁体61のオリフィス孔61b、弁体保持部材64内に形成される上記した背面側の空間D、弁体保持部材64とハウジング65との間の環状隙間によって形成されてロッド側室R1とリザーバRとを連通し、ロッド側室R1から主弁座部材62の筒部62bへ通じた後に切欠64aによって主通路と分岐されている。
【0071】
そして、この背面側の空間Dの圧力は、他実施の形態の減衰バルブV3と同様の構成のバルブによって調節されるようになっており、具体的には、弁体40の開弁圧の大きさによって、弁体40と弁座41aとの間の通路を通過する流体の流れに与える抵抗を変化させ、オリフィス孔61bと弁体40との間の圧力、すなわち、上記した主弁体61の背面側に作用する背面側の空間D内の圧力を調節し、主弁体61が主弁座62aから離座する時の圧力、つまり、主弁60における開弁圧を調節するようにしている。
【0072】
そして、正面側から作用するロッド側室R1の圧力によって主弁体61を図5中右方へ押す力が、背面側から作用する圧力とバネ63のバネ力によって主弁体61を図5中左方へ押す力に打ち勝つと、主弁体61が主弁座62cから離座して主弁座62cとの間に隙間を生じさせ、この隙間を通過した流体は切欠64aを介してリザーバRへ移動するようになる。そして、この隙間を通過する流体の流れに対して主弁体61と主弁座62cとで抵抗を与えることによって緩衝器が減衰力を発揮する。
【0073】
したがって、この他の実施の形態の変形例における減衰バルブV4にあっては、コイル44への通電量に応じて弁体40が弁座41aから離座する開弁圧を調節することで、主弁体61の背面側に作用する背面側の空間D内の圧力を調節し、主弁体61が主弁座52aから離座する開弁圧を調節して緩衝器の発生減衰力を調節することができる。
【0074】
そして、この弁座部材41の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子43を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0075】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブV4におけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【0076】
最後に、別の実施の形態の減衰バルブV5について説明する。この別の実施の形態の減衰バルブV5は、図6に示すように、上述の減衰バルブV1,V3と同様に、ユニフロー型に設定される緩衝器の減衰力発生用のバルブに具現化されており、緩衝器のシリンダ10内に設けたロッド側室R1とリザーバRとを連通する通路の途中に設けた固定部材たるバルブディスク70と、バルブディスク70に設けた弁孔70aに摺動自在に挿入されてバルブディスク70に対して相対移動可能な可動部材たるスプール71と、スプール71に推力を与える駆動手段たるアクチュエータ72とを備えて構成され、アクチュエータ72は、スプール71に連結される磁歪素子73と、磁歪素子73に磁界を与えるコイル74とを備えて、スプール71をバルブディスク70に対して駆動して通路面積を調節して緩衝器が発生する減衰力を調節するようになっている。
【0077】
減衰バルブV5は、具体的には、図6に示すように、外筒14の側方に設けた開口部14aに固定される中空なハウジング75と、ハウジング75内に収容固定される固定部材たるバルブディスク70と、バルブディスク70に設けた弁孔70aと、弁孔70a内に摺動自在に挿入される可動部材たる有底筒状のスプール71と、ハウジング75に取付けられてスプール71をバルブディスク70に対して相対移動させるアクチュエータ72とを備えて構成され、スプール71が筒部にスプール71の内外を連通するポート71aを備えており、当該ポート71aを介してロッド側室R1とリザーバRを連通することができるようになっている。
【0078】
また、この場合、スプール71の筒部に設けたスプール71の内外を連通するポート71aを弁孔70aの周面を対向させて当該ポート71aと弁孔70aの重なり度合に応じてポート71aが開放される面積、すなわち、ポート71aにおける弁孔70aの周面にて閉塞されない面積を調節することができるようになっており、スプール71をバルブディスク70に対して図6中左右方向へ相対移動させることでポート71aの開放面積を調節するようになっており、このスプール71の駆動を磁歪素子73で行うようになっている。
【0079】
詳しくは、バルブディスク70は、有底筒状とされて、底部に設けた弁孔70aと、外周に設けられてハウジング75の内周に設けた段部75aに嵌合する鍔70bと、鍔70bに設けた透孔70cと、筒部の先端となる図6中左端に設けた環状弁座70dとを備えて構成されている。そして、バルブディスク70における鍔70bがハウジング75に固定されるアクチュエータ72と段部75aとで挟み込まれており、これによってバルブディスク70はハウジング75に固定されている。
【0080】
つづいて、弁孔70a内に摺動自在に挿入されるスプール71は、有底筒状とされて、筒部に設けられて内外を連通するポート71aと、底部外周に設けられたフランジ71bとを備え、フランジ71bとバルブディスク70の底部との間に介装した皿バネ78によって、スプール71は弁孔70aからアクチュエータ72側となる図6中右方へ突出するように附勢されている。
【0081】
また、バルブディスク70内は、パイプ13の開口部に設けたスリーブ13aに螺着されてハウジング75内に突出する中空な軸77内を介してロッド側室R1へ連通されている。したがって、ロッド側室R1は、軸77内、バルブディスク70の筒部内、スプール71のポート71a、バルブディスク70に設けた透孔70c、およびバルブディスク70の外周とハウジング75の内周との間の環状隙間を介してリザーバRへ通じており、これらで通路を形成している。
【0082】
そして、上記スプール71におけるポート71aの開放面積が調節される通路面積であり、通路面積の調節によって通路を通過する流体の流れに与える抵抗を調整するようになっている。
【0083】
この調整には、スプール71に連結される磁歪素子73と、磁歪素子73の外周に配置したコイル74とを備えたアクチュエータ72によって行われることになる。アクチュエータ72は、コイル74を内部に保持するとともにハウジング75に固定される筒状のコイルケース79と、コイルケース79の開口端を密閉するキャップ80と、キャップ80に保持されてコイル74内に収容される磁歪素子73とを備えて構成され、磁歪素子73をスプール71に連結している。なお、スプール71が皿バネ78によって附勢され、磁歪素子73にも当該附勢力が作用するので、磁歪素子73に予荷重を作用させる別の手立てを設ける必要はない。磁歪素子73は、正歪と呈するものでも負歪を呈するものでもよい。
【0084】
なお、アクチュエータ72とハウジング75との間、およびコイルケース79とキャップ80との間には、それぞれシールリング81,82が介装されており、ハウジング75、コイルケース79およびキャップ80で形成される空間は密閉状態に維持されている。
【0085】
さらに、この実施の形態にあっては、上記通路を迂回する減衰通路を備え、当該減衰通路の途中にリーフバルブ76を設けてある。具体的には、この減衰バルブV5にあっては、上述の中空な軸77に上述のリーフバルブ76の内周を固定してあり、この軸77に固定されて外周を自由端として撓みが許容されるリーフバルブ76を当該環状弁座70dに着座させている。
【0086】
よって、リーフバルブ76がロッド側室R1の圧力の作用によって撓むと、環状弁座70bから離座してバルブディスク70と軸77との間の環状の減衰通路を開放して、当該減衰通路を介してロッド側室R1をリザーバRへ連通するとともに当該減衰通路を通過する流体の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0087】
したがって、この減衰バルブV5では、通路の途中に設けたスプール71およびバルブディスク70と、減衰通路の途中に設けたリーフバルブ76とで協働して緩衝器に減衰力を発揮させるとともに、通路における通路面積を調節することでこの緩衝器が発生する減衰力を調節するようになっている。
【0088】
そして、このように構成された減衰バルブV5にあっては、コイル74に供給する電流量に応じて磁歪素子73の軸方向長さを調節して、ポート71aのバルブディスク70に対する相対位置を調節することで通路面積を調節でき、当該調節によって通路を通過する流体に与える抵抗を調節することができる。
【0089】
したがって、この減衰バルブV5にあっては、コイル44への通電量に応じて通路面積を調節することで、緩衝器の発生減衰力を調節することができる。
【0090】
そして、この減衰バルブV5にあっては、スプール71の駆動に際してソレノイドに比較して伸縮応答性が高い磁歪素子73を利用しているので、緩衝器の減衰力調整の応答性を向上し制御性をも向上することができる。
【0091】
また、ソレノイドのように固定鉄心と可動鉄心といった部材の設置を要しないので、減衰バルブV5におけるアクチュエータ部分の構成をソレノイドを使用した減衰バルブに比較して簡素にすることができる点で有利となる。
【0092】
なお、緩衝器は、上述したところでは、ユニフロー型に設定されているので、一つの減衰バルブで伸圧の減衰力を調節することができ、経済性に優れるが、緩衝器の構成は上述したものに限定されるものではなく、また、減衰バルブは、緩衝器のピストン部に具現化されてもよい。
【0093】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の縦断面図である。
【図2】一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【図3】一実施の形態の変形例における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【図4】他の実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【図5】他の実施の形態の変形例における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【図6】別の実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 固定部材たる弁座
2 可動部材たる弁体
2a 弁体における弁頭
2b 弁体におけるフランジ
3,42,72 駆動手段たるアクチュエータ
4,43,73 磁歪素子
5,44,74 コイル
5a,44a リード線
6,50,79 コイルケース
6a,50a コイルケースにおけるソケット部
6b,50b コイルケースにおけるケース内筒
6c,50c コイルケースにおけるケース外筒
6d,50d コイルケースにおける切欠孔
7,51,80 キャップ
8,9,47,81,82 シールリング
10 シリンダ
11 ピストン
12 ロッド
13 パイプ
13a スリーブ
14 外筒
14a 外筒における開口部
15 排出通路
16 吸込通路
17 シリンダ内通路
20,45,65,75 ハウジング
21 弁座部材
21a 弁座部材における鍔
21b 弁座部材における孔
21c 弁座部材における切欠
21d 弁座部材におけるオリフィス孔
22,78 皿バネ
30,60 主弁
31,61 主弁体
31a,61a 主弁体における筒部
31b,61b 主弁体におけるオリフィス孔
32,62 主弁座部材
32a,62a 主弁座部材における主弁座
32b,62b 主弁座部材における筒部
33,63 バネ
34 弁座部材
34a 弁座部材における孔
34b 弁座部材における鍔
34c,34d 弁座部材における切欠
40 固定部材たる弁体
41 可動部材たる弁座部材
41a 弁座部材における弁座
41b 弁座部材における透孔
46,77 軸
46a 軸における鍔
48,49 間座
64 弁体保持部材
64a,64c 弁体保持部材における切欠
64b 弁体保持部材における鍔
64d 弁体保持部材における軸
66 スペーサ
70 固定部材たるバルブディスク
70a バルブディスクにおける弁孔
71 可動部材たるスプール
71a スプールにおけるポート
70b バルブディスクにおける鍔
70c バルブディスクにおける透孔
70d バルブディスクにおける環状弁座
71b スプールにおけるフランジ
75a ハウジングにおける段部
76 リーフバルブ
A,B,C,D 空間
R1 ロッド側室
R2 ピストン側室
V1,V2,V3,V4,V5 減衰バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器の伸縮時に流体が通過する通路の途中に設けられる固定部材と、固定部材に対して相対移動可能であって固定部材と協働して通路を制限する可動部材と、可動部材に推力を与える駆動手段とを備え、通路面積あるいは開弁圧を調節可能な減衰バルブにおいて、駆動手段が可動部材に推力を与える磁歪素子と、磁歪素子に磁界を与えるコイルとを備えたことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
固定部材が通路の途中に設けた環状弁座であって、可動部材が磁歪素子に連結されるポペット型弁体であることを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
固定部材が通路の途中に設けたリーフバルブであって、可動部材がリーフバルブの外周に対向してリーフバルブに遠近される環状弁座であることを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
固定部材が弁孔を備え、可動部材が弁孔内に摺動自在に挿入されるスプールとされることを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
通路を迂回する主通路と、主通路の途中に設けた主弁座と、主弁座に離着座して主通路を開閉する主弁体と、主弁体に主通路を制限する方向へ向けて附勢するとともに上記通路内の圧力が導かれる背圧室とを備えた主弁を設け、背圧室内の圧力を固定部材と可動部材とで通路面積あるいは開弁圧を調節することで調節することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の減衰バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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