説明

温度制御装置及び温度制御方法

【課題】本発明は、電池パックの温度制御を精度良く行なうことができる温度制御装置及び温度制御方法を提供する。
【解決手段】温度計測部13により電池パック11の温度を計測して制御部20に常に出力する。制御部20は、温度計測部13から入力された電池パック11の温度と、予め設定された目標温度を比較する。そして、制御部20は、電池パック11の温度が目標温度よりも高い場合には、熱電素子12に電池パック11を冷却するための電流を供給するように電流供給部14を制御する。また、電池パック11の温度が目標温度よりも低い場合には、熱電素子12に電池パック11を加熱するための電流を供給するように電流供給部14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電素子を用いた温度制御装置及び温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車等に搭載される単数又は複数の二次電池で構成されている電池パックがある。
電池パックは、高温で使用すると劣化し、低温で使用すると出力が低下するという問題がある。したがって、電池パックの使用中は、高温での劣化や低温での出力低下の影響が無視できる温度に、電池パックの温度を保つことが望ましい。
【0003】
そのために、従来から熱電素子により電池パックを冷却及び加熱することにより、高温での劣化や低温での出力低下の影響が無視できる温度に、電池パックの温度を保つ制御が行なわれている。
【0004】
図13は、従来の電池パックの温度制御を示すグラフである。図13において、目標温度は高温での劣化や低温での出力低下の影響が無視できる温度である。また、冷却閾値は電池パックを冷却し始める閾値温度である。さらに、加熱閾値は電池パックを加熱し始める閾値温度である。そして、縦軸は電池パックの温度、横軸は経過時間を示している。
【0005】
図13に示す制御では、まず、サーミスタ等で電池パックの温度を計測する。そして、計測温度が冷却閾値よりも高い温度になった場合には、熱電素子で電池パックを冷却する。逆に、計測温度が加熱閾値よりも低い温度になった場合には、熱電素子で電池パックを加熱する。この制御により、電池パックの温度を目標温度付近に保つようにしている。しかし、従来の電池パックの温度制御では、冷却閾値と加熱閾値に基づいた制御をしているため、それらの閾値の範囲によって、電池パックの温度が目標温度から離れてしまう。このため、温度精度(電池パックの温度が目標温度付近に保たれているほど温度精度は高い。)が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−41614号公報
【特許文献2】特開2009−43080号公報
【特許文献3】特開2000−220932号公報
【特許文献4】特開2004−47133号公報
【特許文献5】特開2010−226894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、本発明は、電池パックの温度制御を精度良く行なうことができる温度制御装置及び温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、電池の温度を目標温度にする温度制御装置において、供給される電流に応じて、前記電池を加熱または冷却する熱電素子と、前記電池の温度を計測する温度計測手段と、前記熱電素子に電流を供給する電流供給手段と、前記電池の温度が前記目標温度よりも高い場合には、前記熱電素子に前記電池を冷却するための電流を供給し、前記電池の温度が前記目標温度よりも低い場合には、前記熱電素子に前記電池を加熱するための電流を供給するように前記電流供給手段の動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常に熱電素子を駆動させながら温度制御することで、電池パックの温度と目標温度との乖離を狭い範囲に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1の温度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態1の制御部の構成を示す図である。
【図3】実施形態1の温度制御のフローチャートである。
【図4】実施形態1の第1の電流値算出のフローチャートである。
【図5】実施形態1の要求熱量マップ、吸熱量マップ及び発熱量マップを示す図である。
【図6】実施形態1の第2の電流値算出のフローチャートである。
【図7】実施形態1の電池パックの温度制御を示すグラフである。
【図8】実施形態2の制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】実施形態2の温度制御のフローチャートである。
【図10】実施形態2の電池パックの温度制御を示すグラフである
【図11】実施形態3の温度制御のフローチャートである。
【図12】実施形態3の電池パックの温度制御を示すグラフである。
【図13】従来の電池パックの温度制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、発明の実施形態1の温度制御装置10について説明する。
まず、温度制御装置10の構成について説明する。
【0012】
図1は、実施形態1の温度制御装置10の構成を示した図である。
温度制御装置10は、電池パック11の温度を目標温度付近に保つ制御をする制御装置であり、電池パック11(電池)、熱電素子12、温度計測部13(温度計測手段)、電流供給部14(電流供給手段)、制御部20(制御手段)を備えている。
【0013】
電池パック11は、例えば、単数又は複数の二次電池で構成される。また、電池パック11は、ヒートシンクが備え付けられていても良いし、そのヒートシンクの放熱のための軸流ファンを備えていても良い。
【0014】
熱電素子12は、例えば、単数又は複数のペルチェ素子からなり、電池パック11を冷却及び加熱するための熱源として用いられる。そして、電流の通電方向により、一方の接合部で発熱をして他方の接合部で吸熱をする。また、電流の通電方向を逆にすると、一方の接合部で吸熱をして他方の接合部で発熱を行う。これにより、熱電素子12は、電池パック11を冷却するための熱量(吸熱量)、及び電池パック11を加熱するための熱量(発熱量)を発生する。
【0015】
また、熱電素子12は、2つ一組で電池パック11を挟み込むように設置されている。
なお、熱電素子12は、ペルチェ素子に特に限定されるものではなく、電池パック11を冷却及び加熱させる熱量を発生する素子であれば良い。また、熱電素子12の設置位置についても特に限定されるものではなく、電池パック11を加熱及び冷却できるように設置すれば良い。以下の説明では、熱量と記載した場合には、吸熱量と発熱量を含めたものとする。
【0016】
温度計測部13は、例えば、サーミスタ等を用いた温度センサで構成され、電池パック11の温度を計測した温度(以下、計測温度という。)を制御部20に出力する。
なお、温度計測部13は、サーミスタに特に限定されるものではなく、電池パック11の温度を計測できる温度センサであれば良い。
【0017】
電流供給部14は、例えば、DC−DCコンバータ等で構成されている。この場合には、制御部20から入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号により出力電圧を可変制御される。そして、制御された電圧に応じた電流を熱電素子12に供給する。
【0018】
さらに、電流供給部14は、制御部20から出力される電流の向きを切替える制御信号である方向切替え信号に基づいて、熱電素子12に供給する電流の方向を切替える電流方向切替え回路(図示なし)を含む。
【0019】
また、電流供給部14を駆動する電源は、図示しない外部電源を用いても良いし、電池パック11を用いても良い。
なお、電流供給部14は、DC−DCコンバータに特に限定されるものではなく、制御部20からの入力される制御信号に基づいて熱電素子12に供給する電流の大きさを可変できる構成であれば良い。
【0020】
制御部20は、例えば、演算処理をする図示しないECU(Electronic Control Unit)等のコンピュータを備えて構成され、電流供給部14が熱電素子12に供給する電流の通電方向と、電流値とを制御する制御信号とを作成して出力する。
【0021】
また、制御部20は、図示しない入力装置を用いてユーザにより入力される温度制御開始の要求や、電池パック11を搭載している電気自動車やプラグインハイブリッド車のエンジン始動等をトリガとして作成される信号が入力されると、電池パック11の温度制御を開始する。以下、この時に制御部20に入力される信号を、制御開始信号という。
【0022】
さらに、制御部20は、図示しない入力装置を用いてユーザにより入力される温度制御終了の要求や、電池パック11を搭載している電気自動車やプラグインハイブリッド車のエンジン停止等をトリガとして作成される信号が入力されると、電池パック11の温度制御を停止する。以下、この時に制御部20に入力される信号を、制御終了信号という。
【0023】
また、制御部20は、コンピュータ等のクロックをカウントする図示しない計時手段により、時間を計時する。なお、計時手段は、コンピュータ等のクロックをカウントする構成に特に限定するものではなく、計時が行える構成であれば他の構成を用いても良い。また、時間の計時手段を別に設けていても良い。
【0024】
なお、制御部20は、ECUに特に限定されるものではなく、演算処理ができるコンピュータであれば良い。また、温度制御の開始は、上記に列挙した構成のみをトリガとするものではなく、電池パック11の温度制御が必要な場面において適宜温度制御を開始するように設定すれば良い。さらに、温度制御の終了は、上記に列挙した構成のみをトリガとするものではなく、電池パック11の温度制御が不要な場面において適宜温度制御を終了するように設定すれば良い。
【0025】
ファン30は、例えば、軸流ファンであり、図1に示す位置に設置され、送風31の向きに風を送ることで熱電素子12の放熱を行なう。そして、送風31の風量は一定でも良いし、制御部20からの制御信号により制御されても良い。なお、ファン30は、軸流ファンに特に限定されるものではなく、熱電素子12の熱量を放熱できるものであれば良い。また、電池パック11に対する熱電素子12の設置位置が異なる場合には、熱電素子12の放熱ができる最適な位置にファン30を適宜設置すれば良い。
【0026】
次に、温度制御装置10の制御部20の構成について説明する。
図2は、実施形態1の制御部の構成を示す図である。
制御部20は、記憶部21、判定部22、算出部23及び制御信号作成部24を備えている。
【0027】
記憶部21は、例えば、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体で構成され、コンピュータにより記憶の読み出し書込みが行われる。そして、予め目標温度と、熱電素子12を目標温度にするまでの制御時間と、計測温度から目標温度を減算した温度差と、その温度差に対応して電池パック11を目標温度とするために必要な熱量(以下、要求熱量という。)との対応関係を示す要求熱量マップと、熱電素子12に供給する電流の値と、熱電素子12の単位時間当たりの吸熱量との対応関係を示す吸熱量マップと、熱電素子12に供給する電流の値と、熱電素子12の単位時間当たりの発熱量との対応関係を示す発熱量マップが記憶されている。なお、制限時間は、例えば、電池パック11の温度が高温又は低温となった時に高温での劣化や低温での出力低下の影響が許容範囲ですむ時間等を、ユーザが実験により予め定めた時間である。よって、制限時間は、電池パック11に使用される二次電池の特性により適宜設定すれば良い。
【0028】
判定部22は、例えば、コンピュータの一部として構成され、温度計測部13から計測温度を取得する。そして、記憶部21に記憶されている目標温度よりも、取得した計測温度が高い温度であるか、低い温度であるかを判定する。また、計測温度が目標温度よりも高い場合には、計測温度を含む高温判定信号を作成し、計測温度が目標温度よりも低い場合には、計測温度を含む低温判定信号を作成し、算出部23に出力する。なお、計測温度の取得は、常に取得しても良いし、制御時間おきに取得しても良い。また、判定部22は、コンピュータの一部に特に限定されるものではなく、電池パック11の温度と目標温度との比較ができる構成であれば別に設けても良い。
【0029】
算出部23は、例えば、コンピュータの一部として構成され、電池パック11を冷却する際に、電流供給部14から熱電素子12に供給する電流の値である第1の電流値と、電池パック11を加熱する際に、電流供給部14から熱電素子12に供給する電流の値である第2の電流値とを算出する。そして、算出した第1の電流値又は第2の電流値を、制御信号作成部24に出力する。なお、算出部23は、コンピュータの一部に特に限定されるものではなく、電池パック11へ供給する電流の大きさを算出できる演算器であれば良い。
【0030】
制御信号作成部24は、例えば、コンピュータの一部として構成され、算出部23から入力された第1の電流値の電流(以下、第1の電流という。)又は第2の電流値の電流(以下、第2の電流という。)を、電流供給部14に出力させるための制御信号を作成する。さらに、作成した制御信号を電流供給部14に出力する。一例として、電流供給部14がDC−DCコンバータである場合には、制御信号作成部24は、PWM信号を制御信号(後述する第1の制御信号及び第2の制御信号に対応する。)として作成し、電流供給部14に出力する。なお、PWM信号のDuty比は、算出部23で算出された電流値に基づいて決定される。
【0031】
また、制御信号作成部24は、算出部23により算出された電流値が入力されると、その電流値に基づいて、電流供給部14から熱電素子12に供給する電流の向きを決定し、電流方向切替え回路に電流方向を指示する方向切替え信号を作成する。そして、方向切替え信号を電流方向切替え回路に出力する。なお、電流方向切替え回路は、例えば、公知のインバータ回路の構成を用いて、そのスイッチを方向切替え信号に基づいて切替えることにより熱電素子12に供給する電流の方向を切替える構成でも良いし、他の構成でも熱電素子12に供給する電流の方向を、方向切替え信号に基づいて切替えることができる構成であれば良い。また、制御信号作成部24は、コンピュータの一部に特に限定されるものではなく、電流供給部14が電池パック11へ供給する電流の値と方向示す、制御信号と方向切替え信号の作成及び出力ができる構成であれば良い。
【0032】
次に、実施形態1の温度制御装置10の温度制御について説明する。
図3は、実施形態1の温度制御のフローチャートである。
まず、制御開始信号が制御部20に入力されると、制御部20は、温度計測部13に電池パック11の温度の計測を開始するための温度制御開始信号を出力する。そして、制御開始信号が入力されると、温度計測部13は電池パック11の温度計測を開始する(S301)。
【0033】
温度計測部13は、電池パック11の温度を計測した計測温度を、判定部22に通知する計測温度信号を出力する。計測温度信号が判定部22に入力されると、判定部22は電池パック11の計測温度を取得し、かつ、記憶部21から目標温度を取得する(S302)。
【0034】
そして、判定部22は、計測温度が目標温度よりも高い温度であるか否かを比較判定する(S303)。計測温度が目標温度よりも高い温度であると判定された場合には、算出部23にその判定結果である高温判定信号を出力し、S304に進む。
【0035】
高温判定信号が算出部23に入力されると、算出部23は第1の電流値を算出して制御信号作成部24に出力する(S304)。なお、第1の電流値の算出方法については後述する。
【0036】
そして、制御信号作成部24は、第1の電流値が入力されると第1の電流値に基づいた第1の制御信号を作成する(S305)。
さらに、制御信号作成部24は、第1の電流値が入力されると、電池パック11を冷却する方向の電流を、電流供給部14が熱電素子12に供給するように、電流方向切替え回路のスイッチを切替える制御をする第1の方向切り替え信号を作成する(S306)。
【0037】
そして、制御信号作成部24は、電流供給部14に第1の制御信号を電流供給部14に出力し、かつ、第1の方向切替え信号を電流方向切替え回路に出力する(S307)。
第1の制御信号を出力したことをトリガとして、計時手段により経過時間を計時する。そして、制御信号作成部24は、記憶部21に記憶されている制限時間を取得し、計時手段の計時を監視することで、その制限時間の間、電流供給部14から熱電素子12に第1の電流を供給させる(S308)。
【0038】
制限時間が経過すると、制御部20は、S301以降に制御終了信号が入力されたか否かを確認し、制御終了信号の入力がなければS301に戻る。S301以降に制御終了信号の入力がされていた場合には、温度制御を終了する(S309)。
【0039】
S303において、計測温度が目標温度よりも高くないと判定した場合には、判定部22は、さらに計測温度が目標温度よりも低い温度であるか否かを比較判定する(S310)。そして、計測温度が目標温度よりも低い温度であると判定された場合には、算出部23にその判定結果である低温判定信号を出力し、S311に進む。
【0040】
低温判定信号が算出部23に入力されると、算出部23は第2の電流値を算出して、制御信号作成部24に出力する(S311)。なお、第2の電流値の算出方法については後述する。
【0041】
そして、制御信号作成部24は、第2の電流値が入力されると第2の電流値に基づいた第2の制御信号を作成する(S312)。
さらに、制御信号作成部24は、第2の電流値が入力されると、電池パック11を過熱する方向の電流を、電流供給部14が熱電素子12に供給するように、電流方向切替え回路のスイッチを切替える制御をする第2の方向切り替え信号を作成する(S313)。そして、S307に進む。
【0042】
また、S303において、計測温度が目標温度よりも低くないと判定した場合、すなわち計測温度と目標温度が等しい場合には、S309に進む。
次に、第1の電流値の算出について説明する。
【0043】
図4は、実施形態1の第1の電流値算出のフローチャートである。
判定部22から高温判定信号が算出部23に入力される(S401)。
算出部23は、高温判定信号から計測温度を取得する(S402)。
【0044】
算出部23は、記憶部21から目標温度を取得する(S403)。
算出部23は、計測温度から目標温度を減算して、温度差を算出する(S404)。
算出部23は、記憶部21に記憶されている図5に示す要求熱量マップ100から、温度差に対応する要求熱量を取得する(S405)。なお、図5の要求熱量マップ100の要求熱量に付されているマイナス符号は、吸熱量であることを示している。また、要求熱量に付されているプラス符号は、発熱量であることを示している。そして、図5に示される要求熱量マップ100は一例であり、さらに広範囲で詳細なマップを用いても良い。また、他の形態として、電池パック11の熱容量を記憶部21に記憶しておき、温度差に熱容量を乗算することで要求熱量を取得しても良い。
【0045】
算出部23は、記憶部21から制限時間を取得する(S406)。
算出部23は、要求熱量を制限時間で除算することで、制限時間以内に電池パック11を目標温度にするために必要な、単位時間当たりの吸熱量を算出する(S407)。以下、単位時間当たりの吸熱量を第1の単位熱量という。
【0046】
算出部23は、記憶部21に記憶されている図5に示す吸熱量マップ200から、第1
の単位熱量に対応する第1の電流値を取得する(S408)。なお、図5に示される吸熱量マップ200の値は一例であり、さらに広範囲で詳細なマップを用いても良い。
【0047】
次に、第2の電流値の算出について説明する。
図6は、実施形態1の第2の電流値算出のフローチャートである。
判定部22から低温判定信号が算出部23に入力される(S601)。
【0048】
算出部23は、低温判定信号から計測温度を取得する(S602)。
算出部23は、記憶部21から目標温度を取得する(S603)。
算出部23は、計測温度から目標温度を減算して、温度差を算出する(S604)。
【0049】
算出部23は、記憶部21に記憶されている図5に示す要求熱量マップ100から、温度差に対応する要求熱量を取得する(S605)。なお、他の形態として、電池パック11の熱容量を記憶部21に記憶しておき、温度差に熱容量を乗算することで要求熱量を取得しても良い。
【0050】
算出部23は、記憶部21から制限時間を取得する(S606)。
算出部23は、要求熱量を制限時間で除算することで、制限時間以内に電池パック11を目標温度にするために必要な、単位時間当たりの発熱量を算出する(S607)。以下、単位時間当たりの発熱量を第2の単位熱量という。
【0051】
算出部23は、記憶部21に記憶されている図5に示す発熱量マップ200から、第2
の単位熱量に対応する第2の電流値を取得する(S608)。なお、図5に示される発熱量マップ300の値は一例であり、さらに広範囲で詳細なマップを用いても良い。
【0052】
上記の説明では、簡潔に説明するため、熱電素子12で発生した熱量は全て電池パック11に伝わるものとして制御信号を算出している。しかし、実際には全ての熱量が伝わるわけではない。また、実際に電池パック11に伝わる熱量は、ファン30の風量、電池パック11と熱電素子12の配置及び外気温等に影響を受けて変化する。したがって、実際に温度制御装置10を使用する際には、熱電素子12で発生した熱量が電池パック11に伝わる効率を考慮すると良い。
【0053】
以上のように、実施形態1では、熱電素子12へ供給する電流値を目標温度からの温度差に基づいて変更し、制限時間以内に電池パック11の温度を目標温度にする温度制御を行なっている。そして、温度制御を行なっている間、電池パック11の温度を目標温度に近づけるために熱電素子12を常に駆動する。これにより、目標温度以外の閾値を設けて断続的に熱電素子12を駆動する従来の温度制御と比較して、図7に示されるように使用中の電池パック11の温度と目標温度との乖離を狭い範囲に収めることができる。
【0054】
また、制限時間おきに、計測温度と目標温度との温度差をなくすように温度制御をしているので、制御信号及び方向切替え信号を常に作成しなくても良いので、制御が煩雑になるのを防ぐことができる。
【0055】
[実施形態2]
次に、発明の実施形態2の温度制御装置10について説明する。
実施形態2の構成については、制御部20の構成以外は実施形態1の構成と同じである。したがって、一部動作や内容が異なるところのみを説明する。
【0056】
図8は、実施形態2の制御部の構成を示す図である。なお、図8において、図2と重複する構成要素については同じ参照符号を付与している。
制御部20は、実施形態1の制御部20の構成と異なり、算出部23と計時手段を除いた構成である。
【0057】
記憶部21は、予め目標温度と、第3の電流値と、第4の電流値とを記憶している。第3の電流値とは、固定値であり、電池パック11を冷却するために熱電素子12に供給する第3の電流の電流値である。第4の電流値とは、固定値であり、電池パック11を加熱するために熱電素子12に供給する第4の電流の電流値である。また、第3の電流値と第4の電流値には、電池パック11の使用環境により、ユーザが適宜選択した値を設定すれば良い。例えば、COP(Coefficient of performance)が最大になる電流値を選択すると良い。また、COPが最大になる電流値では、電池パック11を目標温度にできる単位時間当たりの熱量が得られない使用環境では、実験等で電池パック11を目標温度にすることができる電流値を割り出して設定すれば良い。なお、実施形態2では、要求熱量マップ100と、吸熱量マップ200と、マップ300は記憶しておかなくても良い。また、制限時間を記憶しなくても良い。
【0058】
判定部22は、温度計測部13から計測温度を常に取得する。そして、記憶部21に記憶されている目標温度よりも高い温度であるか、低い温度であるかを常に判定する。そして、判定結果に基づいて、高温判定信号又は低温判定信号を制御信号作成部24に常に出力する。なお、判定部22への計測温度の入力、温度判定信号の出力は、ECU等のコンピュータのクロックを用いて、適宜定めた周期ごとに行なっても良い。
【0059】
制御信号作成部24は、判定部22から高温判定信号が入力された場合には、記憶部21から第3の電流値を取得して、第3の電流値に基づいた第3の制御信号を作成する。また、判定部22から低温判定信号が入力された場合には、記憶部21から第4の電流値を取得して、第4の電流値に基づいた第4の制御信号を作成する。そして、作成した第3の制御信号又は第4の制御信号を電流供給部14に出力する。なお、第3の制御信号又は第4の制御信号は、一例として、電流供給部14がDC−DCコンバータである場合には、制御信号作成部24によりPWM信号として作成される。なお、PWM信号のDuty比は、第3の電流値と第4の電流値のそれぞれについて、予め記憶部21に記憶しておいても良い。または、電流供給部14の供給する電流の電流値が、第3の電流値と第4の電流値で切り替わる毎に算出してもよい。
【0060】
次に、実施形態2の温度制御装置10の温度制御について説明する。
図9は、実施形態2の温度制御のフローチャートである。なお、実施形態1の温度制御のフローチャートである図3と同じ動作フローについては、同じ参照符号を付している。以下の説明では、図3と異なる動作フローについてのみ説明する。その他の動作フローは実施の形態1と同じである。なお、実施形態2では制限時間がなくなったので、制限時間待ちのS308を省略している。
【0061】
高温判定信号が制御信号作成部24に入力されると、制御信号作成部24は、第3の電流値を記憶部21から取得する(S901)。
そして、制御信号作成部24は、第3の電流値に基づいた第3の制御信号を作成する(S902)。
【0062】
さらに、制御信号作成部24は、高温判定信号が入力されると、第1の方向切り替え信号を作成する(S903)。
低温判定信号が制御信号作成部24に入力されると、制御信号作成部24は、第4の電流値を記憶部21から取得する(S904)。
【0063】
そして、制御信号作成部24は、第4の電流値に基づいた第4の制御信号を作成する(S905)。
さらに、制御信号作成部24は、低温判定信号が入力されると、第2の方向切り替え信号を作成する(S906)。
【0064】
実施形態2によれば、図10に示すように、常に計測温度が目標温度よりも高いか否かにより、電池パック11へ供給する電流を第3の電流値及び第4の電流値を切替えているので、使用中の電池パック11の温度と目標温度との乖離を狭い範囲に収めることができる。
【0065】
また、第3の電流値及び第4の電流値をユーザが設定した固定値としたので、温度制御のための演算を簡略化することができる。
また、実施形態2では、記憶部21に記憶されている電流値は、第3の電流値と第4の電流値のみとしたが、その他の電流値を複数記憶しておいても良い。そして、目標温度と計測温度との温度差によって、熱電素子12に供給する電流値を切替える構成としても良い。その場合には、例えば、目標温度と計測温度との温度差が大きいほど、熱電素子12に大きな電流が流れるように設定する。また、目標温度と計測温度との温度差が小さいほど、熱電素子12に小さな電流が流れるように設定する。さらに、目標温度と計測温度との大小関係によって、計測温度>目標温度のときには、第1の方向切り替え信号を作成し、計測温度<目標温度のときには、第2の方向切替え信号を作成する。以上のように設定することで、電池パック11の温度と目標温度の温度差が大きい場合には、大きな電流値で熱電素子12を駆動して、短時間で電池パック11の温度を目標温度に近づけることができる。これにより、電池パック11の高温での劣化や低温での出力低下の影響を少なくすることができる。また、電池パック11の温度と目標温度の温度差が小さい場合には、小さな電流値で熱電素子12を駆動して、緩やかな温度変化で電池パック11の温度を目標温度に近づけることができる。これにより、電池パック11を余分に冷却することや、余分に加熱することを防ぐことができる。
【0066】
[実施形態3]
次に、発明の実施形態3の温度制御装置10について説明する。
実施形態3の構成は実施形態1と実施形態2を組み合わせたものである。
実施形態1と実施形態2の構成に加えた点としては、記憶部21に所定の温度差α及び所定の温度差βをさらに記憶したところである。
【0067】
図11は、実施形態3の温度制御のフローチャートである。なお、実施形態2の温度制御のフローチャートである図9と同じ動作フローについては、同じ参照符号を付している。以下では図9と異なる動作フローについてのみ説明する。
【0068】
温度計測部13から計測温度が入力されると判定部22は、計測温度が目標温度+αよりも高い温度であるか否かを比較判定する(S1201)。計測温度が目標温度+αよりも高い温度であると判定された場合には、制御信号作成部24にその判定結果である高温判定信号を出力し、S901に進む。
【0069】
S1201において、計測温度が目標温度+αよりも高くないと判定した場合には、判定部22は、さらに計測温度が目標温度−βよりも低い温度であるか否かを比較判定する。そして、計測温度が目標温度−βよりも低い温度であると判定された場合には、制御信号作成部24にその判定結果である低温判定信号を出力し、S904に進む。
【0070】
また、S1202において、計測温度が目標温度−αよりも低くないと判定した場合、すなわち目標温度+α≧計測温度≧目標温度−β(所定の温度範囲)である場合には、S1203に進み、実施形態1の温度制御を行なう。
【0071】
実施形態3では、例えば、図12に示すように、第3の電流値を熱電素子12の第1の単位熱量が最も大きくなる電流値、すなわち熱電素子12の最大出力となる電流値に設定し、かつ、第4の電流値を熱電素子12の第2の単位熱量が最も大きくなる電流値、すなわち熱電素子12の最大出力となる電流値に設定する。さらに、目標温度+αを電池パック11の高温での劣化の影響が大きくなる温度に設定し、目標温度−βを電池パック11の低温での出力低下の影響が大きくなる温度に設定する。これにより、電池パック11の高温での劣化や低温での出力低下の影響が大きくなる温度では、電池パック11の温度をできる限り短時間で目標温度に近づけることができる。また、目標温度+α≧計測温度≧目標温度−βの温度範囲では、実施形態1の制御をすることで、必要な熱量だけ熱電素子12に発生させるように制御することができる。
【0072】
上述した実施形態1〜3により、目標温度と計測温度との温度差に基づいて制御をし、熱電素子12を常に駆動することで、電池パックの温度と目標温度との乖離を狭い範囲に収めることができる温度制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 温度制御装置
11 電池パック
12 熱電素子
13 温度計測部
14 電流供給部
20 制御部
21 記憶部
22 判定部
23 算出部
24 制御信号作成部
30 ファン
31 送風
100 要求熱量マップ
200 吸熱量マップ
300 発熱量マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の温度を目標温度にする温度制御装置において、
供給される電流に応じて、前記電池を加熱または冷却する熱電素子と、
前記電池の温度を計測する温度計測手段と、
前記熱電素子に電流を供給する電流供給手段と、
前記電池の温度が前記目標温度よりも高い場合には、前記熱電素子に前記電池を冷却するための電流を供給し、前記電池の温度が前記目標温度よりも低い場合には、前記熱電素子に前記電池を加熱するための電流を供給するように、前記電流供給手段の動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする温度制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、制限時間ごとに前記電流供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記目標温度は所定の温度範囲を有し、
前記制御手段は、前記電池の温度が前記所定の温度範囲内であるときに、前記制限時間ごとに前記電流供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記熱電素子はペルチェ素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の温度制御装置。
【請求項5】
電池の温度を目標温度にする温度制御装置の温度制御方法において、
温度計測手段により前記電池の温度を計測し、
前記電池の温度が前記目標温度よりも高い場合には、供給される電流に応じて、前記電池を加熱または冷却するための熱量を発生する熱電素子に前記電池を冷却するための電流を供給し、前記電池の温度が前記目標温度よりも低い場合には、前記熱電素子に前記電池を加熱するための電流を供給するように、前記熱電素子に電流を供給する電流供給手段の動作を制御することを特徴とする温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−48063(P2013−48063A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186452(P2011−186452)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】