説明

測光装置およびカメラ

【課題】測光装置で天側と地側との蓄積信号のレベル差を低減すること。
【解決手段】測光装置は、被写体像を観察するための観察光学系の光軸22から外れた位置に配される撮像素子15と、撮像素子15の受光面において第1の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列と、第1の辺と対向する第2の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列との間で蓄積時間差を有するように撮像素子15を蓄積制御する蓄積制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
光学ファインダーへ導かれた光を、ファインダー光軸から外れた位置に配した測光用素子で受光する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−154192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、測光用素子に導かれた光量が、たとえば受光面の天地方向で異なる場合には、天側と地側の受光信号の差を抑えるための処理が必要になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による測光装置は、被写体像を観察するための観察光学系の光軸から外れた位置に配される撮像素子と、撮像素子の受光面において第1の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列と、第1の辺と対向する第2の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列との間で蓄積時間差を有するように撮像素子を蓄積制御する蓄積制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、たとえば、天側と地側との蓄積信号のレベル差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した一眼レフ電子カメラの要部構成を説明する図である。
【図2】測光装置における受光光量分布を例示する図である。
【図3】電子カメラの構成を例示するブロック図である。
【図4】第一動作による測光センサーの蓄積および読出しタイミングを説明する図である。
【図5】第二動作による測光センサーの蓄積および読出しタイミングを説明する図である。
【図6】第三動作による測光センサーの蓄積および読出しタイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した一眼レフ電子カメラの要部構成を説明する図である。図1において、カメラ本体3に対して着脱可能な撮影レンズ1を構成する鏡筒が装着されている。
【0009】
被写体からの光は、撮影レンズ1を介してカメラ本体3へ入射される。カメラ本体3に入射した被写体光は、レリーズ前は図1に例示したミラーダウン状態にある半透過のクイックリターンミラー(以下メインミラーと呼ぶ)4で上方のファインダー部へ向けて折り曲げられ、スクリーン5へ向けて進行する。また、メインミラー4を透過した被写体光は、サブミラー16によって下方へ折り曲げられ、焦点検出センサー17へ導かれる。
【0010】
スクリーン5へ入射された被写体光束は、撮影レンズ1によって拡散面5aに結像する。スクリーン5を透過した光束はさらに、ファインダー光学系の光軸22に沿ってペンタプリズム7へ入射される。ペンタプリズム7は、入射された被写体光をファインダーレンズ8へ導く。撮影者は、接眼部9からファインダーレンズ8を通してファインダーによる被写体像を観察する。
【0011】
また、スクリーン5を通過した光束の一部は、ファインダー光学系の光軸22から傾いた測光光学系光軸23の方向へ進み、三角プリズム10の反射面10aで上方へ折り曲げられる。この光束は不図示の測光絞り、測光レンズ12、および不図示の赤外光カットフィルタを介して測光センサー15の受光面15aに再結像する。
【0012】
レリーズ後は、メインミラー4が上方へ回動し、全ての被写体光はメカニカルシャッター18を介して撮像素子19へ導かれ、その撮像面上に被写体像を結像する。撮像素子19は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像の明るさに応じた光電変換信号を出力する。
【0013】
一般に、図1に例示した測光光学系では、測光センサー15における受光面15aの天側の中央部が明るく、地側の周辺部が暗くなる。この理由は、測光光学系光軸23がファインダー光学系光軸22に対して傾いていることから、測光光学系がスクリーン5を斜めに観察することに起因する。測光センサー15の受光面15aに照射される光量の分布を例示すると、図2のようになる。図2によれば、カメラを横位置に構えた時の上下方向について非対称であり、いわゆる周辺光量落ちが生じる。光量分布を示す等高線25の内側が最も明るい領域で、等高線26の外側が最も暗い領域である。測光装置における受光光量分布は、スクリーン5の拡散特性、ファインダー光学系光軸22と測光光学系光軸23とがなす角度、撮影レンズ1の光学特性などに依存する。
【0014】
上述した電子カメラにおいて、測光センサー15は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCMOSイメージセンサーなどによって構成される。光電変換素子は、光の強さに応じた信号電荷を蓄積する。測光センサー15による蓄積信号は、測光演算の他にもTTL(through the lens)調光演算の他に、顔検出処理や被写体追尾処理にも用いられる。このため、測光センサー15による蓄積信号に基づいて得られる画像から色情報が得られるように、測光センサー15の受光面15aには画素位置に対応させてベイヤー配列されたカラーフィルタが設けられている。
【0015】
図3は、図1の電子カメラの構成を例示するブロック図である。図3において、測光センサー15の蓄積動作および蓄積信号の読出し動作は、測光センサー制御部32によって制御される。測光センサー15の蓄積および読出し動作は、後述する第一動作から第三動作の3通りが切替え可能に構成されている。システムコントローラ31は測光センサー制御部32に対し、測光センサー15に行わせる動作(第一動作から第三動作のいずれか)を指示する。なお、測光センサー制御部32は、測光センサー15の蓄積時間やゲインの制御も行う。
【0016】
測光センサー15から読出された蓄積信号は、画像処理部33で所定の処理が施され、演算部38に送られる。演算部38は、測光演算部34、顔検出演算部35、被写体追尾演算部36、TTL調光演算部37、焦点検出演算部39を含む。顔検出演算部35、および被写体追尾演算部36による演算結果は、測光演算部34、TTL調光演算部37、および焦点検出演算部39が行う演算に使用される。
【0017】
焦点検出センサ制御部46は、システムコントローラ31の指示により焦点検出センサー17を制御する。焦点検出演算部39は、焦点検出センサー17からの出力信号および上記演算結果に基づいて焦点検出演算を行う。演算部38は、測光演算部34、TTL調光演算部37、および焦点検出演算部39による演算結果を、それぞれ制御部44に送る。
【0018】
制御部44は、照明制御部40、シャッター制御部41、絞り制御部42、AF制御部43を含む。制御部44は、演算部38から入力された演算結果に基づいて、照明装置20に対するTTL調光制御を行う他、シャッタ駆動部61を制御してメカニカルシャッタ18を開閉駆動したり、絞り駆動部62を制御して絞り45を駆動したり、AFレンズ駆動部63を制御してフォーカシングレンズ2(図1)を撮影光学系光軸21(図1)方向へ進退駆動させる。
【0019】
撮像素子19は、システムコントローラ31から指示を受けた撮像素子制御部52によって蓄積動作および蓄積信号の読出し動作が制御される。撮像素子19から読出された蓄積信号は、画像処理部53によって所定の画像処理が施される。画像処理後の画像データは、メモリ制御部54によってメモリ55に記録、またはメモリカード56に記録される。
【0020】
本実施形態は、上述した電子カメラの測光装置を構成する測光センサー15の蓄積および蓄積後の信号読出し動作に特徴を有するので、以下の説明はこれらの動作説明を中心に行う。
<第一動作>
図4は、第一動作による測光センサー15の蓄積および読出しタイミングを説明する図である。図4において、左側は測光センサー15の受光面15aに配設されているRGBのカラーフィルタの配列を示す図である。天側の水平方向の画素並び(水平ライン)を第1水平ラインとし、地側の水平ラインを第N水平ラインとする。図4の右側は、水平ラインごとの蓄積・読出しタイミングを説明する図である。
【0021】
測光センサー15は、いわゆるローリングシャッター制御を行う。この制御は、蓄積制御タイミングが水平ラインごとに異なる。第一動作では、測光センサー15の天側水平ライン(本例では第1水平ライン)から地側水平ライン(本例では第N水平ライン)に向けて、2水平ライン(2行)ごとに蓄積開始時刻、蓄積終了時刻、読出し開始時刻、および読出し終了時刻をそれぞれずらしながら蓄積・読出しを行う。2水平ライン(2行)ごとにタイミングをずらす理由は、R色およびGr色のフィルタが並ぶ行と、B色およびGb色のフィルタが並ぶ行とをペアで制御するためである。
【0022】
具体的には、第1水平ラインおよび第2水平ラインの蓄積開始時刻をフレーム開始時刻tsとし、第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの読出し終了時刻をフレーム終了時刻teとする。ここで、各水平ラインの蓄積時間SH(蓄積開始時刻から蓄積終了時刻までの時間)は、たとえば、前回の蓄積時に得られた信号値に基づいて決定した蓄積時間である。第1水平ラインの読出し開始時刻から第N水平ラインの読出し終了時刻までをフレーム読出し時間RFと呼ぶ。
【0023】
フレーム時間T1は、蓄積制御の開始時点(ts)から終了時点(te)までを含む時間であって、上記蓄積時間SHおよび水平ライン数Nに応じて変動する。すなわち、蓄積時間SHが長いほどフレーム時間T1が長くなり、水平ライン数Nが大きいほどフレーム時間T1が長くなる。また、水平ライン間のフレーム・読出しタイミングのずらし量を大きくするほどフレーム時間T1が長くなる。なお、本例のずらし量は、2行分の読出し時間RHに相当する。
【0024】
システムコントローラ31は、測光センサー15における1フレームの動作時間T1として所定時間を確保できる場合、かつ測光センサー15における上記周辺光量落ちによる明暗の差が所定値以下となる撮影レンズ1を使用する場合において、測光センサー15に上述した第一動作を行わせるように測光センサー制御部32へ指示を送る。
【0025】
<第二動作>
図5は、第二動作による測光センサー15の蓄積および読出しタイミングを説明する図である。図5において、左側は測光センサー15の受光面15aに配設されているRGBのカラーフィルタの配列を示す図であり、図4に例示したものと同様である。図5の右側は、水平方向の画素並び(水平ライン)ごとの蓄積・読出しタイミングを説明する図である。
【0026】
第二動作では、測光センサー15の天側水平ラインから地側水平ラインまでを時刻tsにおいて一斉に蓄積開始させ、天側水平ラインから地側水平ラインに向けて、蓄積終了時刻、読出し開始時刻、および読出し終了時刻をそれぞれ2水平ライン(2行)ごとにずらしながら蓄積・読出しを行う。
【0027】
具体的には、全水平ラインで一斉に蓄積開始する時刻をフレーム開始時刻tsとし、第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの読出し終了時刻をフレーム終了時刻teとする。ここで、各水平ラインの蓄積時間SHm(m+1)(蓄積開始時刻から蓄積終了時刻までの時間、m=1,3,5,…N−1)は、たとえば、前回の蓄積時に得られた信号値、および上記周辺光量落ちによる水平ライン間の受光量差に基づいて決定した蓄積時間である。つまり、周辺光量落ちに起因して水平ライン間で生じる読出し信号レベルの差をキャンセルするように、地側に近い水平ラインほど蓄積時間SHm(m+1)を長く制御する。
【0028】
第二動作による天側蓄積時間、すなわち第1水平ラインおよび第2水平ラインの蓄積時間SH12は、前回の蓄積時に得られた信号値に基づいて決定する。第3水平ラインおよび第4水平ラインの蓄積時間SH34は、第1水平ラインおよび第2水平ラインに比べて第3水平ラインおよび第4水平ラインの蓄積信号レベルの低下を補うための所定時間Δ1234を蓄積時間SH12に加算したものである。以降同様に、地側蓄積時間、すなわち第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの蓄積時間SH(N−1)Nは、第(N−3)水平ラインおよび第(N−2)水平ラインに比べて第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの蓄積信号レベルの低下を補うための所定時間Δ(N−3)(N−2)(N−1)Nを第(N−3)水平ラインおよび第(N−2)水平ラインの蓄積時間SH(N−3)(N−2)に加算したものである。
【0029】
フレーム時間T2は、蓄積制御の開始時点(ts)から終了時点(te)までを含む時間であって、上記蓄積時間SH12、水平ライン数N、および上記周辺光量落ちによる水平ライン間の受光量差に応じて変動する。すなわち、蓄積時間SH12が長いほどフレーム時間T2が長くなり、水平ライン数Nが大きいほどフレーム時間T2が長くなり、水平ライン間の蓄積信号レベルの低下を補うための上記時間が長いほどフレーム時間T2が長くなる。なお、水平ライン間の蓄積信号レベルの低下を補うための時間情報は、あらかじめ測光センサー制御部32に制御データとして与えられている。
【0030】
システムコントローラ31は、測光センサー15における1フレームの動作時間T2として所定時間を確保できる場合、かつ測光センサー15の受光面15aにおける上記周辺光量落ちによる明暗の差が所定値を超える撮影レンズ1を使用する場合において、測光センサー15に上述した第二動作を行わせるように測光センサー制御部32へ指示を送る。
なお、所定時間Δ(N−3)(N−2)(N−1)Nは、上記のように蓄積信号レベルの低下に応じた時間とする他に、水平ライン読出し時間RHと同じとしてもよい。
【0031】
<第三動作>
図6は、第三動作による測光センサー15の蓄積および読出しタイミングを説明する図である。図6において、左側は測光センサー15の受光面15aに配設されているRGBのカラーフィルタの配列を示す図であり、図4、図5に例示したものと同様である。図6の右側は、水平方向の画素並び(水平ライン)ごとの蓄積・読出しタイミングを説明する図である。
【0032】
第三動作では、測光センサー15の天側水平ラインから地側水平ラインのうち、所定ラインごとに蓄積信号を読出す動作、いわゆる間引き読出しを行う。本例では、6水平ライン(6行)につき2水平ライン(2行)ずつ蓄積信号を読出す。時刻tsにおいて読出し対象の水平ラインを一斉に蓄積開始させ、天側水平ラインから地側水平ラインに向けて、蓄積終了時刻、読出し開始時刻、および読出し終了時刻をそれぞれ4水平ライン(4行)おきに2水平ライン(2行)ずつずらしながら蓄積・読出しを行う。
【0033】
具体的には、読出し対象となる水平ラインで一斉に蓄積開始する時刻をフレーム開始時刻tsとし、第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの読出し終了時刻をフレーム終了時刻teとする。ここで、各水平ラインの蓄積時間SHm(m+1)(蓄積開始時刻から蓄積終了時刻までの時間、m=1,7,13,…N−1)は、たとえば、前回の蓄積時に得られた信号値、および上記周辺光量落ちによる水平ライン間の受光量差に基づいて決定した蓄積時間である。つまり、周辺光量落ちに起因して水平ライン間で生じる読出し信号レベルの差をキャンセルするように、地側に近い水平ラインほど蓄積時間SHm(m+1)を長く制御する。
【0034】
第三動作による天側蓄積時間、すなわち第1水平ラインおよび第2水平ラインの蓄積時間SH12は、前回の蓄積時に得られた信号値に基づいて決定する。第7水平ラインおよび第8水平ラインの蓄積時間SH78は、第1水平ラインおよび第2水平ラインに比べて第7水平ラインおよび第8水平ラインの蓄積信号レベルの低下を補うための所定時間Δ1278を蓄積時間SH12に加算したものである。以降同様に、地側蓄積時間、すなわち第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの蓄積時間SH(N−1)Nは、第(N−7)水平ラインおよび第(N−6)水平ラインに比べて第(N−1)水平ラインおよび第N水平ラインの蓄積信号レベルの低下を補うための所定時間Δ(N−7)(N−6)(N−1)Nを第(N−7)水平ラインおよび第(N−6)水平ラインの蓄積時間SH(N−7)(N−6)に加算したものである。
【0035】
フレーム時間T3は、蓄積制御の開始時点(ts)から終了時点(te)までを含む時間であって、上記蓄積時間SH12、水平ライン数N、間引きレート、および上記周辺光量落ちによる水平ライン間の受光量差に応じて変動する。すなわち、蓄積時間SH12が長いほどフレーム時間T3が長くなり、水平ライン数Nが大きいほどフレーム時間T3が長くなり、間引きレートが低いほどフレーム時間T3が長くなり、水平ライン間の蓄積信号レベルの低下を補うための上記時間が長いほどフレーム時間T3が長くなる。水平ライン間の蓄積信号レベルの低下を補うための時間情報は、第二動作の場合と同様に、あらかじめ測光センサー制御部32に制御データとして与えられる。
【0036】
システムコントローラ31は、測光センサー15における1フレームの動作時間T3を所定時間以内に抑えたい場合、かつ測光センサー15の受光面15aにおける上記周辺光量落ちによる明暗の差が所定値を超える撮影レンズ1を使用する場合において、測光センサー15に上述した第三動作を行わせるように測光センサー制御部32へ指示を送る。
なお、所定時間Δ(N−3)(N−2)(N−1)Nは、上記のように蓄積信号レベルの低下に応じた時間とする他に、水平ライン読出し時間RHと同じとしてもよい。
【0037】
測光センサー15における1フレームの動作時間T3を所定時間内に抑えたい場合の例をあげると、たとえば、照明装置20から撮影補助光を発光させる撮影においてTTL調光制御を行う場合である。一般に、システムコントローラ31は、不図示のレリーズボタンが押下操作されることによってレリーズシーケンス処理を開始させる。TTL調光制御時のレリーズシーケンス処理では、システムコントローラ31から指示を受けた制御部44内のシャッタ制御部41がシャッタ駆動部61を駆動させてメカニカルシャッタ18の先幕が開き始めるまでの間に、制御部44内の照明制御部40が照明装置20から公知のモニター発光を行わせる。測光センサー制御部32は、上記モニター発光時に被写体からの反射光を受光するように測光センサー15を蓄積制御する。演算部38のTTL調光演算部37は、測光センサー15から読出された蓄積信号に基づいて照明装置20の本発光量を演算する。
【0038】
上述した蓄積制御の開始時点(ts)から終了時点(te)までを含むフレーム時間が長いと、上記モニター発光時の測光(蓄積・読出し)に要する時間が長くなるので、メカニカルシャッタ18の先幕を開くまでに撮影タイムラグを発生させてしまう。そこで、システムコントローラ31は、TTL調光制御を行う場合であって、かつ測光センサー15の受光面15aにおける上記周辺光量落ちによる明暗の差が所定値を超える撮影レンズ1を使用する場合には、フレーム時間を短縮するべく、測光センサー15に上述した第三動作を行わせるように測光センサー制御部32へ指示を送る。
【0039】
第三動作によれば、第一動作におけるフレーム時間T1および第二動作におけるフレーム時間T2に比べてフレーム時間T3を短くできるので、フレーム時間を短縮させたい場面において好適である。なお、顔検出処理や被写体追尾処理を行う場合も、フレーム時間を短縮させたい場面に該当する。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)電子カメラの測光装置15,32〜34は、被写体像を観察するためのファインダー光学系の光軸22から外れた位置に配される測光センサー15と、測光センサー15の受光面15aにおいて天側に配された第1水平ラインと、第1水平ラインと対向する地側に配された第N水平ラインとの間で蓄積時間差を有するように測光センサー15を蓄積制御する測光センサー制御部32を備えるようにしたので、天側と地側との蓄積信号のレベル差を低減できる。
【0041】
(2)上記(1)の測光装置15,32〜34において、測光センサー制御部32は、第1水平ラインから第N水平ラインまで全水平ラインを一斉に蓄積開始させるとともに、第1水平ラインより第N水平ラインの蓄積終了時刻を遅く制御するようにしたので、適切に、天側の第1水平ラインと地側の第N水平ラインとの間で蓄積時間差を与えるように制御できる。
【0042】
(3)上記測光センサー制御部32は、第1水平ラインから第N水平ラインに向かって2列ごとに蓄積時間を異ならせるようにしたので、たとえば、隣接するR色およびGr色のフィルタが並ぶ行と、B色およびGb色のフィルタが並ぶ行とをペアで制御することができる。
【0043】
(4)上記蓄積制御された測光センサー15の第1水平ラインから第N水平ラインに向かって2列ずつ蓄積信号を出力させる測光センサー制御部32をさらに備えるようにしたので、たとえば、隣接するR色およびGr色のフィルタが並ぶ行と、B色およびGb色のフィルタが並ぶ行からの蓄積信号をペアで読出すことができる。
【0044】
(5)上記測光センサー制御部32は、蓄積制御された測光センサー15の第1水平ラインから第N水平ラインに向かって4列おきに2列ずつ蓄積信号を出力させるので、間引きしないで全水平ラインから蓄積信号を出力させる場合に比べて、上記蓄積開始時点(ts)から読出し終了時点(te)までを含むフレーム時間T3を短く抑えることができる。
【0045】
(6)測光センサー15から出力された蓄積信号は、測光演算以外の顔検出処理、被写体追尾処理、およびTTL調光処理の少なくとも1つに用いるようにした。一般に、顔検出処理、被写体追尾処理、およびTTL調光処理はいずれもフレーム時間を短縮させたい場面であるため、フレーム時間T3を短く抑えられる第三動作は特に好適である。
【0046】
(変形例1)
上述した第二動作および第三動作において、各水平ラインにおいて一斉に蓄積を開始させる例、すなわち、天側の第1水平ラインから地側の第N水平ラインまで、略同時に蓄積を開始させる例を説明した。この代わりに、天側の第1水平ラインから地側の第N水平ラインに向けて、2水平ライン(2行)ごとに蓄積開始時刻をそれぞれずらして、順次蓄積を開始させる構成にしてもよい。この場合の測光センサー制御部32は、天側の第1水平ラインから地側の第N水平ラインに向けて、2水平ライン(2行)ごとに蓄積終了時刻を徐々に遅らせることにより、天側の第1水平ラインにおける蓄積開始時刻から地側の第N水平ラインにおける蓄積開始時刻までの時間が、天側の第1水平ラインにおける蓄積終了時刻から地側の第N水平ラインにおける蓄積終了時刻までの時間よりも短くなるように制御する。
【0047】
(変形例2)
以上の説明では、2水平ライン(2行)ごとに蓄積開始時刻、蓄積終了時刻、読出し開始時刻、および読出し終了時刻を異ならせる例を説明した。タイミングを異ならせる水平ラインの単位は上述した2水平ライン(2行)に限らず、1水平ライン(1行)ごとに異ならせてもよいし、4水平ライン(4行)ごとに異ならせてもよい。
【0048】
(変形例3)
第三動作において間引き読出しする間引きレートは、上述した4列おきに限らず、2列おきでも10列おきでも構わない。
【0049】
(変形例4)
上述した測光装置は、電子カメラに限らずフィルムカメラに搭載しても構わない。
【0050】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1…撮影レンズ
3…カメラ本体
7…ペンタプリズム
10…三角プリズム
12…測光レンズ
15…測光センサー
15a…受光面
20…照明装置
22…ファインダー光学系光軸
23…測光光学系光軸
31…システムコントローラ
32…測光センサー制御部
33…画像処理部
38…演算部
44…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を観察するための観察光学系の光軸から外れた位置に配される撮像素子と、
前記撮像素子の受光面において第1の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列と、前記第1の辺と対向する第2の辺側に配された電荷蓄積型光電変換素子列との間で蓄積時間差を有するように前記撮像素子を蓄積制御する蓄積制御手段と、
を備えることを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1の辺側の光電変換素子列から前記第2の辺側の光電変換素子列まで全光電変換素子列を一斉に蓄積開始させるとともに、前記第1の辺側の光電変換素子列より前記第2の辺側の光電変換素子列の蓄積終了時刻を遅く制御することを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1の辺側の光電変換素子列から前記第2の辺側の光電変換素子列に向かって前記光電変換素子列ごとに順次蓄積開始させるとともに、前記第1の辺側の光電変換素子列の蓄積開始時刻から前記第2の辺側の光電変換素子列の蓄積開始時刻までの時間を、前記第1の辺側の光電変換素子列の蓄積終了時刻から前記第2の辺側の光電変換素子列の蓄積終了時刻までの時間より短く制御することを特徴とする測光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1の辺側の光電変換素子列から前記第2の辺側の光電変換素子列に向かってn列ごとに蓄積時間を異ならせることを特徴とする測光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段によって蓄積制御された前記撮像素子の前記第1の辺側の光電変換素子列から前記第2の辺側の光電変換素子列に向かって前記n列ずつ蓄積信号を出力させる読出し制御手段をさらに備えることを特徴とする測光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測光装置において、
前記読出し制御手段は、蓄積制御手段によって蓄積制御された前記撮像素子の前記第1の辺側の光電変換素子列から前記第2の辺側の光電変換素子列に向かってm列おきに前記n列ずつ蓄積信号を出力させることを特徴とする測光装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の測光装置において、
前記撮像素子から出力された蓄積信号は、測光演算以外の顔検出処理、被写体追尾処理、およびTTL調光処理の少なくとも1つに用いられることを特徴とする測光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の測光装置を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198251(P2012−198251A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60439(P2011−60439)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】