説明

測定装置

【課題】工具をほとんど回転させる必要なく、短時間で心厚等を測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置の提供。
【解決手段】外周に一若しくは複数条の溝1a・1bが形成された略円筒状の被測定部材2を軸心周りに回転させる回転駆動機構と、前記被測定部材2に照明光を照射する照明部及び該照明光が照射された前記被測定部材2を撮影して画像を取得する撮像部を有し該撮像部で取得した画像から前記被測定部材2の外形を測定する測定機構とを備えた測定装置であって、前記撮像部を、前記被測定部材2の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外周に螺旋状の切り屑排出溝が設けられるドリルやエンドミル等の回転切削工具の溝底によって形成された部分(ウェブ若しくはコア)の厚さ(ウェブ厚若しくは心厚。以下、「心厚」という。)を測定する際に用いる測定装置としては、例えば切り屑排出溝が2つ設けられた回転切削工具において溝を両側から挟んで心厚を測定する接触式の測定装置が知られている。
【0003】
しかしながら、接触式では直径1mm以下の小径工具の心厚を精度良く測定することが困難であり、また、工具の折損の危険性もあることから、例えば特許文献1に開示されるように工具にレーザー光を照射しながら工具を軸心周りに少なくとも1回転させ、工具の外形を測定して心厚等を算出する非接触式の測定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−207318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の非接触式の測定装置は、上述のように工具を少なくとも1回転させる必要があることから、測定時間が長くなり、また、測定値に回転振れ成分誤差が含まれる等の問題点がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決したものであり、被測定部材の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影して得られた複数の画像を用いて心厚等を測定することで、工具をほとんど回転させる必要なく、短時間で心厚等を測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
外周に一若しくは複数条の溝1a・1bが形成された略円筒状の被測定部材2を軸心周りに回転させる回転駆動機構と、前記被測定部材2に照明光を照射する照明部及び該照明光が照射された前記被測定部材2を撮影して画像を取得する撮像部を有し該撮像部で取得した画像から前記被測定部材2の外形を測定する測定機構とを備えた測定装置であって、前記撮像部は、前記被測定部材2の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影し得るように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の測定装置において、前記被測定部材2と前記測定機構とを該被測定部材2の軸心方向に相対的に移動させる相対移動機構が設けられていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記照明部は前記被測定部材2の軸心方向における所定位置に異なる複数方向から同時に照明光を照射するように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0011】
また、請求項3記載の測定装置において、前記照明部はその光軸が被測定部材2の溝1a・1bの形成方向に沿うように設けられていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の測定装置において、前記測定機構はプリズム3a・3bを有し、前記撮像部は前記被測定部材2の軸心方向における所定位置を前記プリズム3a・3bを介して異なる複数の方向から同時に撮影し得るように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0013】
また、請求項5記載の測定装置において、前記プリズム3a・3bは対向状態に設けられる一対のプリズム3a・3bであることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0014】
また、請求項6記載の測定装置において、前記一対のプリズム3a・3bは対向離間状態に設けられ、また、前記被測定部材2の軸直角方向から照明光を照射する照明部が設けられ、前記撮像部は前記被測定部材2を挟んで前記軸直角方向から照明光を照射する照明部の対向位置に設けられ、前記プリズム3a・3b間を通じて前記被測定部材2の軸心方向における所定位置を軸直角方向から撮影できるように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材2は外周に螺旋状の切り屑排出溝1a・1bが設けられたドリル若しくはエンドミル等の回転切削工具2であることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0016】
また、請求項8記載の測定装置において、前記回転切削工具2は前記切り屑排出溝1a・1bが一若しくは偶数条設けられたものであることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0017】
また、請求項8,9いずれか1項に記載の測定装置において、前記測定機構は、前記照明部に照明されて影として映し出される前記切り屑排出溝1a・1bが形成された部分における外形の最小値を求めることで前記回転切削工具2の心厚を測定するように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、工具をほとんど回転させる必要なく、短時間で心厚等を測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例の概略説明正面図である。
【図2】本実施例の概略説明平面図である。
【図3】本実施例の押さえ機構の概略説明拡大平面図である。
【図4】本実施例の押さえ機構の概略説明拡大左側面図である。
【図5】本実施例の構成概略説明図である。
【図6】本実施例の心厚の算出方法を説明する概略説明図である。
【図7】実際の撮像画像の一例である。
【図8】別例の要部の構成概略説明図である。
【図9】本実施例の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
被測定部材2の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影して取得した画像を用いて被測定部材2の外形を測定する。この際、例えば、2つの切り屑排出溝1a・1bを有する回転切削工具2の軸心方向における所定位置の一方の切り屑排出溝1aの溝底が映る画像と、当該位置における他方の切り屑排出溝1bの溝底が映る画像とを同時に取得し、これらの画像を用いて画像処理等により各溝1a・1bの溝底間の距離を夫々算出することで、被測定部材2を軸心周りにほとんど回転させることなく心厚等を測定することが可能で、また、測定時間も短くなり、しかも、回転振れ成分誤差の影響をほとんど受けない正確な測定が可能となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、外周に一若しくは複数条の溝1a・1bが形成された略円筒状の被測定部材2をその軸心方向に相対的に移動させる相対移動機構と、前記被測定部材2を軸心周りに回転させる回転駆動機構と、前記被測定部材2に照明光を照射する照明部及び該照明光が照射された前記被測定部材2を撮影して画像を取得する撮像部を有し該撮像部で取得した画像から前記被測定部材2の外形を測定する測定機構とを備えた測定装置であって、前記撮像部は、前記被測定部材2の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影することで当該複数の方向から見た画像が同時に得られるように構成され、前記複数の画像を用いて軸心方向における所定位置の前記被測定部材2の外形を測定するように構成されているものである。
【0024】
具体的には、外周に一若しくは偶数条の螺旋状の切り屑排出溝1a・1bが設けられたドリル若しくはエンドミル等の回転切削工具2を被測定部材2とし、その心厚等を測定するものである。
【0025】
本実施例においては、2つの切り屑排出溝1a・1bを有するドリル2の心厚を測定する場合について説明する。
【0026】
本実施例の相対移動機構(軸心方向駆動機構)及び回転駆動機構は、図1,2に図示したように、テーブル送りモータ6により固定テーブル7に対して工具軸心方向に直線スライド移動せしめられる移動テーブル8上に、ドリル2を把持するチャック9を装着可能なスピンドル10を有するドリル保持体11を設け、このスピンドル10とベルト12を介して連結され該スピンドル10を回転せしめるドリル回転駆動用モータ13をドリル保持体11と共に移動テーブル8上に設けて構成している。移動テーブル8は公知のボールねじ機構により移動せしめられるように構成される。即ち、本実施例の相対移動機構は移動テーブル8とテーブル送りモータ6とボールねじ機構とで構成され、回転駆動機構はドリル保持体11(のスピンドル10)とドリル回転駆動用モータ13とベルト12とで構成される。
【0027】
また、移動テーブル8上には、適宜なベアリング機構を介して設けられ、ドリル2を着脱するために、固定テーブル7上に設けられる回転切削工具2を受ける断面視略V字状の受け部を有するシャンク受け14に対して工具軸心方向に直線スライド移動可能なドリル着脱テーブル15が設けられている。本実施例においては、ドリル保持体11及びドリル回転駆動用モータ13はこのドリル着脱テーブル15に取り付けられ、移動テーブル8に対しても直線スライド移動できるように構成されている。
【0028】
また、シャンク部がシャンク受け14の受け部に受けられたドリル2は、図3,4に図示したような押さえ機構により押さえられる。具体的には、ピン18を中心に先端側の押さえ部が起伏回動するシャンク押さえ16を、このシャンク押さえ16の基端側に枢着されるロッド17を上下動させることで作動せしめてドリル2を押さえる。図3,4に図示した構成では、ロッド17を上方に移動させることでシャンク押さえ16の押さえ部によりドリル2が押さえられる。尚、シャンク部に限らず、刃部の一部若しくは刃部とシャンク部とを連設するように設けられるボデー部の一部を受け部で受け、押さえ部で押さえる構成としても良い。また、本実施例ではシャンク受け14とシャンク押さえ16とを設けているが、これは、チャック自体に柔軟性(自由度)を持たせた状態で、被受け部(シャンク部、刃部、ボデー部)で被測定部材2を押さえて、被受け部基準で被測定部材2を回転させるための一形態を示したものである。別の実施例として、図示しないが、回転振れが小さく安定したチャックを使用して被測定部材2を把持固定する場合には、チャック基準で被測定部材2を回転させれば良いため、シャンク受け14等で前記被受け部を受ける必要もなく、よってシャンク押さえ16等も不要となる。
【0029】
また、図5に図示したように、本実施例の測定機構は、照明部と、撮像部と、照明部及び撮像部の間に設けられるプリズム3a・3bと、撮像部で撮影した被測定部材2の像A,Bを画像処理するデータ処理部23(PC)と、この被測定部材2の像A,Bや画像処理中の画面を表示する画像表示部24(モニタ)とで構成されている。
【0030】
具体的には、固定テーブル7上に、照明部としての2つの光源4a・4b(LED)、撮像部としての1つのカメラ5及び前記光源4a・4bから照射された照明光をこのカメラ5に同時に入射せしめるプリズム3a・3bが設けられている。尚、図中符号19は光源支持体、20はカメラ支持体、21は支持台部、22は支持脚部である。
【0031】
そして、一の光源(下側光源)4aはその光軸が工具軸心と水平方向に交差する向きで且つドリル2の一方側(下側)の溝(下溝)1aの形成方向(−α)に沿うように設けられ、他の光源(上側光源)4bはその光軸が工具軸心と水平方向に交差する向きで且つドリル2の他方側(上側)の溝(上溝)1bの形成方向(ねじれ角α)に沿うように設けられる。
【0032】
即ち、各光源4a・4bは工具軸心に対して光軸が夫々±α度傾斜するように設けられる。尚、各光源が工具軸心に対して傾斜して設けられる方向は、ねじれ角αに相当する角度に完全に一致させる必要は無く、ドリル2の仕様(溝形状)によって変わるが、カメラ5に撮像し画像表示部24(モニタ)に表示した際に溝の最下点を確認できる範囲に設定すれば良い。また、下側光源4aと上側光源4bとは略同じ高さ位置に設けられる。本実施例では、各光源4a・4bの光軸及び工具軸心が交わる位置を心厚の測定位置に設定している。
【0033】
また、カメラ5はその光軸が工具軸心と水平方向に直交するように設けられる。尚、本実施例においては、光源4a・4b及びカメラ5にはモータ等の駆動機構を設けず、固定状態に設けている(ねじれ角等が異なる別の回転切削工具2を測定する場合には、光源の傾斜向きを変えたり、プリズムを交換したりすることで対応する。)。
【0034】
また、本実施例の測定機構は対向する一対のプリズム3a・3bを有しており、撮像部によりプリズム3a・3bを介して被測定部材2の軸心方向所定位置(同一位置)を夫々異なる方向(工具軸心と交差する方向)から同時に撮影し得る(複数方向から見た複数の像A,Bを同時に撮像し得る)ように構成されている。尚、プリズム3a・3bはその対向面部の一部が当接した状態で一体となるように連結されている。
【0035】
具体的には、下側光源4a及び上側光源4bからの光は、各光源4a・4bの光軸上に設けられる対応する各プリズム3a・3bの先端入射面25a・25bに入射して第一反射面26a・26bにより反射されて第二反射面27a・27bへ導かれ該第二反射面27a・27bにより反射されて基端出射面28a・28bから出射され、撮像部のレンズ29(テレセントリックレンズ)へと夫々入射せしめられ、各光により照明されて影として映し出される各像A,Bがカメラセンサ30に結像せしめられる。
【0036】
本実施例においては、カメラセンサ30の左側領域に下溝1aを照明する下側光源4aの光により影として映し出されるドリル2の像Aが結像され、右側領域に上溝1bを照明する上側光源4bの光により影として映し出されるドリル2の像Bが結像されるように設定している。図7は、夫々結像された像A,Bを画像表示部24(モニタ)に表示した、実際の撮像画像の例である。
【0037】
即ち、本実施例は、同じ測定位置における上下2つの溝1a・1bを、1つのカメラ5により同時に撮像しこれらを同一画面上に表示して、対応する上下2つの溝1a・1bの最下点(最底点)位置における厚さ(外形の最小値)を測定することで、心厚を測定するものである。
【0038】
また、本実施例においては、測定位置からカメラセンサ30までの光学距離(光路長)が等しくなるようにプリズム3a・3b等が設計されている。また、このプリズム3a・3bを取り除いた際に、カメラ5により該カメラ5の光軸心方向のドリル2の画像(ドリル2の軸直角方向の画像)を焦点が合った状態で得られるようにプリズム3a・3bが設計されている。この場合、レンズの焦点やテーブルの送り位置を変更する必要がなく(カメラを前後させる必要がなく)、例えば被測定部材の外径など、軸直角方向視の外形を高精度で容易に求めることができ、被測定部材として基準ゲージを用いて前記カメラ5の光軸と被測定部材の軸心の位置関係の調整にも容易に利用できる。またこの場合、より明瞭に被測定部材の外形を撮像するため、カメラ5の光軸上にして被測定部材の軸心を挟むように図示しない光源を配置して被測定部材に照明光を照射すれば良い。
【0039】
また、本実施例においては当接状態に設けたプリズム3a・3bを、対向離間状態で設置できるように設計し、このプリズム3a・3b間を通じて、上記のカメラ5の光軸上にして被測定部材2の軸心を挟むように配置した光源から軸直角方向の照明を照射し、プリズムを介さずに直接軸直角方向視の像を撮像できるように構成しても良い。即ち、被測定部材2に軸直角方向から照明を照射する照明部と撮像部とを被測定部材2を挟んで照明部の対向位置に配置して前記プリズム3a・3b間を通じて被測定部材2の軸心方向所定位置(心厚の測定位置)における軸直角方向から撮影して(軸直角方向視の像を撮像して)その外形を求めるように構成しても良い。
【0040】
この場合、像A,B及び軸直角方向視の像を同時に撮像してモニタに表示することが可能となり、また、測定する方向のみ照明を点灯するなどの切替も可能となり、物理的にプリズムを外すなどの作業も不要となるため、測定の汎用性が広がることになる。尚、この場合も、プリズムを介した場合の光路長及びプリズムを介さない場合(軸直角)の光路長が等しくなるようにプリズムを設計する。
【0041】
測定機構のデータ処理部23は、照明部に照明されて影として映し出される切り屑排出溝1a・1bが形成された部分における外形の最小値を求めることで回転切削工具の心厚を測定し得る心厚算出手段を備えている。
【0042】
具体的には、図6に図示したように、測定位置における上下の溝1a・1bの最下点間の距離(左側の像Aの溝1aの最下点から右側の像Bの溝1bの最下点までの長さ)を画像処理により求めて(例えば像Aの測定位置における画面上端から溝1aの最下点までの長さと像Bの測定位置における画面上端から溝1bの最下点までの長さの差を求める)心厚を算出するように心厚算出手段を構成している。
【0043】
尚、同一画面上に同時に表示したドリル2の2つの像A,Bは、基準ゲージを映し込み校正することで、具体的には本実施例においては、ドリル2の測定前に基準ゲージの2つの像A,Bを前記画面上に映し込み、その座標位置をもとに校正することで、ドリル2の各像A,Bの座標を一致させることができ、正確に心厚を求めることができる。
【0044】
更に、本実施例においては、一方の溝の最下点位置を測定位置と一致させた際に、他の溝の最下点位置が測定位置と一致しない場合には、ドリル2を回転駆動機構により若干(数°程度)回転させて各溝1a・1bの最下点を夫々探り、各溝1a・1bの最下点位置から工具軸心までの距離を合算して心厚を求めるように心厚算出手段を構成している。例えば、溝1a・1bの最下点位置をドリル2を回転させつつ画面を見ながら目視で判断しても良いし、所定範囲で溝底から工具軸心までの距離を所定間隔で自動的に測定し、最も値の小さいものを各溝1a・1bの最下点位置から軸心までの距離として合算しても良い。尚、この際のドリル2の回転は極僅かであるため、この操作により、回転振れ成分誤差の影響を受けることはほとんどない。
【0045】
また、本実施例においては2つの切り屑排出溝を有するドリルの心厚測定について説明しているが、切り屑排出溝が偶数(2n)の場合には、2溝ずつn回測定することで、同様に測定することができる。更に、溝が1つの場合はその形状より、切り屑排出溝が偶数(2n)のドリルのような2つの溝の最下点の距離として定義される心厚は存在しないが、像A,Bいずれか一方の像だけで外形の最小値(溝の最下点から軸心を通り外周縁までの距離)を心厚として測定できる。また、ドリルに限らず、エンドミル等の他の回転切削工具を測定することも可能であり、更に、樹脂や透明なアクリル等、金属以外の素材であっても同様に測定できる。また、徐々にねじれ角が変わる不等ねじれや2段ねじれの回転切削工具であっても同様に測定でき、不等分割仕様の回転切削工具であっても、例えば画像を見ながら補正することで測定できる。また、溝は被測定部材を1周(1回転)していなくても問題なく測定できる。
【0046】
また、本実施例においてはプリズム3a・3bを用いて同時に撮像した複数の像A,Bを同一画面上に表示できるようにしているが、図8に図示したように、例えば撮像部としてのカメラ5a・5bを照明部としての各光源4a・4bに1対1に設け、夫々のカメラ5a・5bで同時に撮像した像の溝底の最下点から工具軸心までの距離を夫々算出しこれらを合算することで心厚を求めるようにデータ処理部を構成しても良い。
【0047】
本実施例は上述のように構成したから、例えば、図9に図示したように、ドリル2をチャック9に取り付け、ドリル着脱テーブル15を移動してドリル2をシャンク受け14の位置まで送り、シャンク押さえ16によりドリル2をシャンク受け14に押さえ、テーブル送りモータ6で(移動)テーブル8を移動し、ドリル2を測定する位置まで送り、ドリル回転モータ13でドリル2を半回転(溝数が2つの場合。4つの場合は1/4回転)しながら1°毎に照明で照らしたドリル2の影の画像をカメラ5で取得し、取得した画像毎に測定位置のドリル2の外形を求め、求めたドリル2の外形の最小値を求めることで、心厚を測定することが可能となる。
【0048】
よって、本実施例は、工具をほとんど回転させる必要なく、短時間で心厚等を測定可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0049】
1a・1b 溝
2 被測定部材
3a・3b プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に一若しくは複数条の溝が形成された略円筒状の被測定部材を軸心周りに回転させる回転駆動機構と、前記被測定部材に照明光を照射する照明部及び該照明光が照射された前記被測定部材を撮影して画像を取得する撮像部を有し該撮像部で取得した画像から前記被測定部材の外形を測定する測定機構とを備えた測定装置であって、前記撮像部は、前記被測定部材の軸心方向における所定位置を異なる複数の方向から同時に撮影し得るように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記被測定部材と前記測定機構とを該被測定部材の軸心方向に相対的に移動させる相対移動機構が設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記照明部は前記被測定部材の軸心方向における所定位置に異なる複数方向から同時に照明光を照射するように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の測定装置において、前記照明部はその光軸が被測定部材の溝の形成方向に沿うように設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の測定装置において、前記測定機構はプリズムを有し、前記撮像部は前記被測定部材の軸心方向における所定位置を前記プリズムを介して異なる複数の方向から同時に撮影し得るように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の測定装置において、前記プリズムは対向状態に設けられる一対のプリズムであることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置において、前記一対のプリズムは対向離間状態に設けられ、また、前記被測定部材の軸直角方向から照明光を照射する照明部が設けられ、前記撮像部は前記被測定部材を挟んで前記軸直角方向から照明光を照射する照明部の対向位置に設けられ、前記プリズム間を通じて前記被測定部材の軸心方向における所定位置を軸直角方向から撮影できるように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材は外周に螺旋状の切り屑排出溝が設けられたドリル若しくはエンドミル等の回転切削工具であることを特徴とする測定装置。
【請求項9】
請求項8記載の測定装置において、前記回転切削工具は前記切り屑排出溝が一若しくは偶数条設けられたものであることを特徴とする測定装置。
【請求項10】
請求項8,9いずれか1項に記載の測定装置において、前記測定機構は、前記照明部に照明されて影として映し出される前記切り屑排出溝が形成された部分における外形の最小値を求めることで前記回転切削工具の心厚を測定するように構成されていることを特徴とする測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−13538(P2012−13538A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150269(P2010−150269)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000115120)ユニオンツール株式会社 (44)
【Fターム(参考)】