説明

測距装置および撮像装置

【課題】測距装置が備える2つの測距用撮像素子の同期ずれを検知し、画像データの出力タイミングを補正することができる測距装置および同装置を搭載した撮像装置に関する。
【解決手段】測距対象を結像するレンズと、レンズで結像される被写体像に応じた画像信号を出力する第1撮像素子および第2撮像素子と、第1撮像素子と第2撮像素子のそれぞれから出力される画像信号を用いて測距対象までの距離を算出する測距部と、を備え、第1撮像素子からの第1同期信号と第2撮像素子からの第2同期信号のそれぞれを取得する同期検出部、第1撮像素子に対する第1リセット信号と第2撮像素子に対する第2リセット信号のそれぞれを出力するリセット部、を有し、リセット部が同期検出部が第1撮像素子と第2撮像素子の同期のずれを検出したとき、第1リセット信号と第2リセット信号のそれぞれを同時に出力する測距装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置および撮像装置に関するものであって、測距装置が備える2つの測距用撮像素子の同期ずれを検知し、各撮像素子から出力される画像データの出力タイミングを補正する測距装置、および同装置を備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクトデジタルカメラに代表される撮像装置に搭載される自動合焦機能(AF機能)には、複数の方式が知られている。そのうちの一つに、コントラストAF方式がある。コントラストAF方式は、撮像光学系を構成するフォーカスレンズの位置を変化させながら、各レンズ位置で画像データを取得し、各画像データのコントラスト値を算出する方式である。算出されたコントラスト値が最大値となるレンズ位置を被写体への合焦位置として、撮像光学系のレンズを移動させることで、被写体に焦点が合った撮影をすることができる。コントラストAF方式では、撮像光学系のレンズを実際に駆動させて合焦位置を特定するので、長焦点レンズの場合は駆動範囲が長くなり、合焦位置を特定するまでの処理時間が長くなる。
【0003】
また、その他の方式として、撮像光学系とは別の光学系(測距光学系)による位相差検出AF方式が知られている。位相差検出AF方式は、測距光学系が備える2つのレンズと撮像素子によって、被写体像に係る画像データの位相差(視差)を算出し、算出された視差を用いて三角測量の原理によって被写体までの距離を算出するものである。位相差検出AF方式では、2つの画像データの同期がとれていることが重要となる。位相差検出AF方式は、レンズを駆動させる必要がなく、被写体画像によって演算によって距離を求めることができるので、コントラストAF方式に比べて、素早く合焦位置を特定することができる。
【0004】
コントラストAF方式にも、位相差検出AF方式にも一長一短がある。そこで、これらを組み合わせて、より素早く正確に自動合焦処理を行うハイブリットAF方式が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
ハイブリットAF方式は、まず位相差検出AF方式によって被写体までの距離を大まかに算出し、算出された距離に基づいて撮像光学系のレンズを所定のレンズ位置まで移動させ、その後に、移動したレンズ位置近傍の所定範囲においてコントラストAF方式を実行することで合焦させる方式である。つまり、ハイブリット方式によれば、位相差検出AF方式によって大まかな合焦位置を特定した後に、コントラストAF方式を用いて精度の高い合焦検出を行うことができる。よって、撮像光学系の移動量が少なく合焦までの時間を短縮することができ、かつ、測距光学系の位置合わせ精度が多少粗くても精度の高い合焦処理を行うことができる方式である。
【0006】
前述のとおり、位相差AF検出方式は、2つの撮像素子から出力される画像データに基づいて距離を算出する方式であるから、各撮像素子から得られる画像データの取得タイミングが合っている必要がある。仮に、各画像データの取得タイミングが合っていないと、各画像データは異なる画像になってしまい、正確に相関を算出することができなくなるからである。画像データの取得タイミングを合わせるには、各撮像素子の動作を同期させる必要がある。しかし、従来の位相差検出AF方式において、撮像素子はそれぞれ独立して動作しているため、同期を合わせることが難しい。また、各撮像素子から出力される同期信号を用いて、撮像素子間の同期を合わせるにしても、同期のずれを検出する機構が設けられていないことから、同期ずれの検出ができないという課題があった。
【0007】
そこで、測距装置に関するものではないが、2つのカメラの画像出力タイミングを同期させることで、立体画像を撮影できるステレオカメラに関する発明が知られている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2記載の発明によれば、複数のカメラの同期を、カメラ外部から供給される信号によって合わせることはできる。しかし、「同期信号を発生させるセンサ(撮像素子)に対して同期をとることができない」という、位相差検出AF方式の課題を解消することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、位相差検出AF方式に用いる2つの撮像素子の同期ずれを検出することができ、かつ、同期ずれを補正することで、動体に対しても正確な距離情報の取得をすることができる測距装置および同装置を備える撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測距装置に関するものであって、測距対象からの入射光を結像するレンズと、レンズで結像される被写体像に応じた画像信号を出力する第1撮像素子および第2撮像素子と、第1撮像素子と第2撮像素子のそれぞれから出力される画像信号を用いて測距対象までの距離を算出する測距部と、を備えた測距装置であって、第1撮像素子からの第1同期信号と第2撮像素子からの第2同期信号のそれぞれを取得する同期検出部と、第1撮像素子に対する第1リセット信号と第2撮像素子に対する第2リセット信号のそれぞれを出力するリセット部と、を有してなり、リセット部は、同期検出部が第1撮像素子と第2撮像素子の同期のずれを検出したときに、第1リセット信号と第2リセット信号のそれぞれを同時に出力する、ことを主な特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記の測距装置に係るものであって、リセット部は、第1リセット信号と第2リセット信号を共通の信号線を介して第1撮像素子と第2撮像素子のそれぞれに出力する、こと特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記の測距装置に係るものであって、リセット部は、第1リセット信号と第2リセット信号のうち、第1リセット信号のみ遅延部を介して第1撮像素子に出力する、こと特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記の測距装置に係るものであって、遅延部は、リセット信号を取得してから動作開始までの時間に関する第1撮像素子と第2撮像素子の個体差に応じて設定された時間の遅延を実現する、こと特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記の測距装置に係るものであって、第1リセット信号と第2リセット信号とは、リセット部から異なる信号線を介して出力される、こと特徴とする。
【0014】
また本発明は、被写体を撮像する撮像光学系と、撮像光学系による光学像を電気信号に変換する撮像素子と、被写体までの距離を測距する測距装置と、を備えた撮像装置に関するものであって、測距装置が、上記のいずれかの測距装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位相差検出AF方式に用いる2つの撮像素子の同期ずれを検出し、各撮像素子に対してリセット信号を出力することで、撮像素子の同期ずれを解消することができる。これによって、動体に対する焦点距離の算出も、より高速かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る撮像装置の例を示す外観斜視図である。
【図2】上記撮像装置の例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る測距装置の例を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明に係る測距装置の別の例を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明に係る測距装置のさらに別の例を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明に係る測距装置の動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る測距装置および撮像装置の実施の形態について図面を用いながら説明する。
【0018】
本発明に係る測距装置は、2つの撮像素子を備えており、この撮像素子から出力される画像データを用いて、位相差検出AF方式による測距を行うものである。この画像データを取得するときに、まず、各撮像素子に対して画像出力指示信号が送信され、これを受けた各撮像素子が画像データを出力する。画像データの出力指示は、測距装置が備える制御CPUによって行われるものであってもよいし、撮像装置が備える制御CPUから行われるものであってもよい。
【0019】
図1は、本発明に係る撮像装置の例を示す外観斜視図である。図1において撮像装置1の正面には、フォーカスレンズを含む撮像レンズを介して被写体像を取得する撮像光学系20と、測距用のレンズ111と112を介して被写体像を取得する測距光学系を有する測距装置100と、を備えている。撮像光学系20と測距装置100は、撮像装置1の乖離した位置に配置されている。また、図1に示すように、撮像装置1の上端面には、シャッタースイッチであるレリーズボタンSW1、撮影モードを選択するためのモードダイヤルSW2が配置されている。レリーズSW1は2つのスイッチが内部に配置されており、レリーズSW1を半押しすると第1レリーズ信号を発し、レリーズSW1を全押しすると第2レリーズ信号を発する構成を備えている。撮像装置1は、例えば、第1レリーズ信号によって、被写体への自動合焦処理を行い、第2レリーズ信号によって被写体の撮像処理を行う。
【0020】
次に、図2に示す本発明に係る撮像装置の機能ブロックの例について説明する。本発明に係る撮像装置の各種動作(処理)は、デジタル信号処理IC(集積回路)等として構成されるデジタルスチルカメラプロセッサ104(以下、単に「プロセッサ104」という。)で動作する撮像プログラムによって制御される。プロセッサ104は、第1のCCD(電荷結合素子)信号処理ブロック104−1,第2のCCD信号処理ブロック104−2,CPU(中央処理ユニット)ブロック104−3,ローカルSRAM(SRAM:スタティックランダムアクセスメモリ)104−4,USB(ユニバーサルシリアルバス)ブロック104−5,シリアルブロック104−6,JPEGコーデック(CODEC)ブロック104−7,リサイズ(RESIZE)ブロック104−8,TV信号表示ブロック104−9、およびメモリカードコントローラブロック104−10を有してなる。これら各ブロックは相互にバスラインで接続されている。
【0021】
プロセッサ104の外部には、RAW−RGB画像データ、YUV画像データおよびJPEG画像データを保存するためのSDRAM(シンクロナスランダムアクセスメモリ)103、RAM107、内蔵メモリ120および制御プログラムが格納されたROM108が配置されており、これらはバスラインを介してプロセッサ104に接続されている。
【0022】
鏡胴ユニット7は、ズーム(ZOOM)レンズ7−1aを有するズーム光学系7−1、フォーカス(FOCUS)レンズ7−2aを有するフォーカス光学系7−2、絞り7−3aを有する絞りユニット7−3およびメカニカルシャッタ(メカシャッタ)7−4aを有するメカシャッタユニット7−4、を備えている。ズーム光学系7−1,フォーカス光学系7−2,絞りユニット7−3およびメカシャッタユニット7−4はそれぞれズーム(ZOOM)モータ7−1b、フォーカスレンズ移動手段としてのフォーカス(FOCUS)モータ7−2b、絞りモータ7−3bおよびメカシャッタモータ7−4bによって駆動される。これらズームモータ7−1b、フォーカスモータ7−2b、絞りモータ7−3bおよびメカシャッタモータ7−4bの各モータはモータドライバ7−5によって駆動され、モータドライバ7−5はプロセッサ104のCPUブロック104−3によって動作が制御される。
【0023】
鏡胴ユニット7のズームレンズ7−1aおよびフォーカスレンズ7−2aは、撮像素子であるCCD101の撮像面上に被写体光学像を結像するための撮像レンズを構成する。CCD101は、前記被写体光学像を電気的な画像信号に変換してF/E−IC(フロントエンドIC)102に入力する。
【0024】
F/E−IC102は、CDS(相関2重サンプリング部)102−1、AGC(自動利得制御部)102−2およびA/D(アナログ−デジタル)変換部102−3を有し、前記画像信号にそれぞれ所定の処理を施して、デジタル信号に変換し、プロセッサ104の第1のCCD信号処理ブロック104−1に入力する。これらの信号処理動作は、プロセッサ104のCCD信号処理ブロック104−1から出力されるVD信号(垂直駆動信号)とHD信号(水平駆動信号)により、TG(タイミングジェネレータ)102−4を介して制御される。第1のCCD信号処理ブロック104−1は、CCD101からF/E−IC102を経由して入力されたデジタル画像データに対して、ホワイトバランス調整およびγ調整等の信号処理を行うとともに、VD信号およびHD信号を出力する。
【0025】
また、測距装置100は、図示しない測距用レンズと撮像素子を備えている。測距装置100には、後述するように、2つの測距用レンズと、これら測距用レンズに対応する撮像素子、および、撮像素子の動作を制御する制御CPUが備わっている。測距用レンズを介して撮像素子に結像した被写体像から得られた画像データは、CPU信号処理ブロック104−1に出力される。CPU信号処理ブロック104−1および図示しない測距部によって、画像データの相関演算処理が行われる。この相関演算処理から2つの画像の視差を算出し、これによって被写体像までの距離を算出する。算出された距離に基づいて、CPUブロック104−3からモータドライバ7−5に動作指示がなされて、フォーカスレンズ7−2aが当該距離に相当するレンズ位置に移動する。
【0026】
プロセッサ104のCPUブロック104−3は、音声記録回路115−1による音声記録動作も制御する。音声記録回路115−1は、マイクロホン(マイク)115−3で変換されマイクロホンアンプ(マイクAMP)115−2によって増幅した音声信号を、CPUブロック104−3の指令に応じて記録する。
【0027】
また、CPUブロック104−3は、音声再生回路116−1の動作も制御する。音声再生回路116−1は、CPUブロック104−3の指令により、適宜なるメモリに記録されている音声信号をオーディオアンプ(オーディオAMP)116−2で増幅してスピーカ116−3に入力し、スピーカ116−3から音声を再生出力する。
【0028】
また、CPUブロック104−3は、ストロボ回路114を制御して動作させることによってストロボ発光部3から照明光を発光させる。また、CPUブロック104−3は、被写体距離を測定する測距ユニット5の動作も制御する。
【0029】
さらに、CPUブロック104−3は、プロセッサ104の外部に配置されたサブCPU(SUB−CPU)109にも結合されており、サブCPU109は、LCDドライバ111を介してサブLCD1による表示を制御する。また、サブCPU109は、AF用LED8,ストロボLED9,リモコン受光部6,上記スイッチSW1からスイッチSW13からなる操作部およびブザー113にもそれぞれ結合されている。
【0030】
USBブロック104−5は、USBコネクタ122に結合される。シリアルブロック104−6は、シリアルドライバ回路123−1を介してRS−232Cコネクタ123−2に結合される。
【0031】
TV信号表示ブロック104−9は、LCDドライバ117を介してLCDモニタ10に結合され、また、TV信号表示ブロック104−9は、ビデオアンプ(AMP)118を介してビデオジャック119にも結合される。
【0032】
メモリカードコントローラブロック104−10は、メモリカードスロット121のカード接点に結合されている。メモリカードがこのメモリカードスロット121に装填されると、メモリカードの接点に接触して電気的に接続され、装填されたメモリカードに画像ファイルを記憶する。
【0033】
次に、本発明に係る測距装置の実施形態について詳細に説明する。図3は、本実施例に係る測距装置100の構成を示す機能ブロック図である。図3において、測距装置100は、測距ユニット10と、測距ユニット10の動作を制御する制御CPU20と、を有してなる。測距ユニット10は、測距用レンズ111に対応する第1撮像素子であるセンサ11と、測距用レンズ112に対応する第2撮像素子であるセンサ12と、を有してなる。センサ11とセンサ12はそれぞれ、リセット信号が入力されると動作をリセットして再動作し、また、動作中はそれぞれ同期信号(センサ11は第1同期信号、センサ12は第2同期信号)を出力する。制御CPU20は、図示しない記憶装置に記憶されている測距プログラムによって動作するリセット回路21と、同プログラムによって動作する同期検出回路22と、を有してなる。
【0034】
リセット回路21は、センサ11とセンサ12の動作をリセットさせる「リセット信号」を所定のタイミングで出力する回路である。リセット信号の出力タイミングは、同期検出回路22によって与えられる。
【0035】
同期検出回路22は、センサ11からの第1同期信号と、センサ12からの第2同期信号の時間差を検出し、この時間差に応じてリセット回路21にリセット信号の出力タイミングを与える回路である。
【0036】
測距装置100は、リセット回路21がセンサ11とセンサ12に出力するリセット信号が使用する配線を、センサ11とセンサ12において共通の配線を用いるように構成している。すなわち、リセット回路21がリセット信号を出力すると、センサ11とセンサ12には同時にリセット信号が入力されるように構成されている。これによって、同期検出回路21が、センサ11とセンサ12から入力される同期信号(第1同期信号,第2同期信号)の入力タイミングに基づいて同期のずれを検出したとき、同期検出回路21がリセット回路21にリセット信号の出力を指示することで、リセット信号がセンサ11とセンサ12に同時に入力され、センサ11とセンサ12は同時に動作をリセットすることができ、同期ずれを解消することができる。
【0037】
同期ずれが解消された測距装置100のセンサ11とセンサ12から出力される各画像データは、同期がとれているので、相関演算処理によって各画像間の視差を精度よく算出することができるので、測距結果の精度も向上させることができる。
【0038】
次に、本発明に係る測距装置の別の実施形態について、図4を用いて説明する。図4において測距装置100aは、測距ユニット10と、測距ユニット10の動作を制御する制御CPU20と、遅延回路30と、を有してなる。測距ユニット10は、すでに説明した実施例と同様のセンサ11とセンサ12と、を有してなる。また、制御CPU20もすでに説明した実施例と同様のリセット回路21と同期検出回路22と、を有してなる。
【0039】
ここで、リセット回路21からリセット信号を取得してから動作開始するまでの時間、つまり、リセット信号を取得してから動作をリセットして再動作を開始するまでの時間は、センサ11とセンサ12とで異なっているものとする。また、リセット信号を取得してから動作開始までの時間は、センサ11の方がセンサ12よりも短く、この時間差はTとする。そこで、測距装置110aは、リセット回路21からのリセット信号が、遅延時間Tが設定された遅延回路30を介してセンサ11に出力されるように構成されている。一方、センサ12には、リセット回路21から直接(遅延回路30を介することなく)、リセット信号が出力されるように構成されている。
【0040】
この構成により、リセット回路21がリセット信号を出力すると、センサ11は遅延回路30を介してリセット信号(第1リセット信号)を取得し、センサ12はリセット回路21から直接にリセット信号(第2リセット信号)を取得する。ここで、センサ11は、センサ12が第2リセット信号を取得してから時間T後に、第1リセット信号を取得することになるが、第2リセット信号を取得したセンサ12が動作を開始するタイミングと、第1リセット信号を取得したセンサ11が動作を開始するタイミングとは一致する。
【0041】
このように、センサ11とセンサ12との間に、リセット信号を取得してから動作開始までの時間の個体差があったとしても、その時間差が設定された遅延回路を設けることで、センサ11とセンサ12の再動作のタイミングを一致させることができる。
【0042】
なお、図4は、リセット信号を取得してから動作開始までの時間が、センサ11の方がセンサ12より短いため、遅延回路30をリセット回路21とセンサ11との間に設けてあった。しかし、逆に、リセット信号を取得してから動作開始までの時間が、センサ11の方がセンサ12より長い場合には、センサ12の動作開始までの時間に同期信号の周期の整数倍を加算することで、センサ11の動作開始までの時間をセンサ12よりも短い、とみなすこともできる。いうまでもなく遅延回路30をリセット回路21とセンサ12との間に設けてもよい。
【0043】
このように、測距装置100aによれば、センサ11とセンサ12との間で、リセット信号を取得してから動作開始までの時間に個体差(時間差T´)があったとしても、リセット回路21からの共通のリセット信号を、一方のセンサにのみT´が設定されている遅延回路を介して出力することで、センサ11とセンサ12の再動作の開始タイミングを一致させることができる。
【0044】
次に、本発明に係る測距装置のさらに別の実施形態について、図5を用いて説明する。図5において測距装置100cは、すでに説明をした測距ユニット10と、測距ユニット10の動作を制御する制御CPU20cと、を有してなる。測距ユニット10は、センサ11と、センサ12と、を有してなり、位相差検出AF方式による測距処理に必要な画像データを出力する。また、制御CPU20cは、図示しない記憶装置に記憶されている測距プログラムによって動作するリセット回路21cと、同プログラムによって動作する同期検出回路22cと、を有してなる。
【0045】
リセット回路22cは、センサ11とセンサ12の動作をリセットさせるリセット信号を、センサ11とセンサ12のぞれぞれの所定のタイミングにおいて出力する回路である。リセット信号が入力されたセンサ11とセンサ12は動作をリセットし、同じタイミングで動作を再開することで、同期のとれた画像データを出力することができるようになる。
【0046】
同期検出回路21cは、センサ11と出力する第1同期信号とセンサ12が出力する第2同期信号の入力タイミングから時間差T´´を算出し、センサ11とセンサ12の同期ずれを検出する回路である。時間差T´´が所定の閾値よりも大きいとき、センサ11とセンサ12の同期ずれが生じていると判断して、センサ11とセンサ12の動作をリセットするためのリセット信号を、リセット回路21に出力するように指示をする。
【0047】
測距装置100cは、リセット回路21からセンサ11に向けたリセット信号配線と、センサ12に向けたリセット信号配線を、それぞれ別の配線としている。図5に示すように、センサ11に対してはリセット回路21cから第1リセット信号が出力される。また、センサ12に対してはリセット回路21cから第2リセット信号が出力される。
【0048】
測距装置100cは、センサ11の第1同期信号とセンサ12の第2同期信号の時間差T´´を同期検出回路22cにおいて検出し、時間差T´´に基づいて、リセット回路21cに対して第1リセット信号と第2リセット信号の出力指示を行うことで、それぞれのセンサの同期ずれに応じたリセット処理を行うことができる。これによって、複数のセンサの同期のずれを解消し、各センサから出力される画像データの同期を維持することができるようになる。
【0049】
次に、本発明に係る測距方法の実施形態について、図6のフローチャートを用いて説明する。図6においてに各処理ステップはS10、S20・・・のように表す。まず、本発明に係る測距装置の電源が投入されて動作が開始されると、第1撮像素子(センサ11)と第2撮像素子(センサ12)のリセット処理が行われる(S10)。測距装置が撮像装置に搭載されている場合は、撮像装置の電源が投入されることで測距装置の動作も開始する。測距装置の動作が開始されると、第1撮像素子(センサ11)と第2撮像素子(センサ11)のリセット処理を行う(S10)。このリセット処理は、動作開始時の同期をとるためのものである。リセット処理(S10)の後、第1撮像素子(センサ11)と第2撮像素子(センサ11)は、それぞれ画像データの出力を開始する。この画像データによって相関演算が行われて視差が算出され、被写体までの距離が算出される。距離の算出処理は所定のタイミングで適宜行われる。
【0050】
次に、測距装置が備える同期検出回路(22)が、第1撮像素子から出力される第1同期信号と、第2撮像素子から出力される第2同期信号の時間差Tを算出する(S30)。次に、算出された時間差Tが予め規定する閾値以下であるか否かの判定処理を行う(S40)。この判定処理は、同期検出回路(22)で行ってもよいし、制御CPU(20)が備える図示しない演算部で行ってもよい。時間差Tが閾値よりも小さいとき(S40のYes)、第1撮像素子と第2撮像素子センサは同期ずれを起こしていないと判定してリセット信号の出力は行わず、引き続き各同期信号の時間差を算出する処理を繰り返す。
【0051】
時間差Tが閾値よりも大きいとき(S40のNo)、すなわち、第1撮像素子と第2撮像素子の同期がずれているときは、遅延回路を備えた測距装置であれば(図4の測距装置100aを参照)、遅延回路に時間差Tを遅延量として設定する(S50)。遅延回路を備えていない測距装置であれば(図3の測距装置100、図5の測距装置100cを参照)、処理S50を行うことなく、リセット回路(21)に対してリセット信号の出力をするように、同期検出回路が指示をする(S60)。
【0052】
以上のように、本発明に係る測距装置によれば、2つの撮像素子から取得する画像データに基づいて、正確な測距をすることができるように、撮像素子の同期信号を監視して、同期ずれを検出したときには、撮像素子の動作をリセットする処理を行い、同期をとることで、同期した画像データを得ることができるので、ハイブリットAF方式に用いられる位相差検出方式の測距精度と測距処理速度を向上させることできる。また、本発明に係る測距装置を撮像装置に搭載することにより、ハイブリット方式による自動焦点機能付き撮像装置において、撮像処理を正確にかつ、素早く行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0053】
1 撮像装置
10 測距ユニット
11 第1撮像素子(センサ)
12 第2撮像素子(センサ)
20 制御CPU
21 リセット回路
22 同期検出回路
100 測距装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2001−221945号公報
【特許文献2】特許3830689号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象からの入射光を結像するレンズと、
上記レンズで結像される被写体像に応じた画像信号を出力する第1撮像素子および第2撮像素子と、
上記第1撮像素子と上記第2撮像素子のそれぞれから出力される画像信号を用いて上記測距対象までの距離を算出する測距部と、
を備えた測距装置であって、
上記第1撮像素子からの第1同期信号と上記第2撮像素子からの第2同期信号のそれぞれを取得する同期検出部と、
上記第1撮像素子に対する第1リセット信号と上記第2撮像素子に対する第2リセット信号のそれぞれを出力するリセット部と、
を有してなり、
上記リセット部は、上記同期検出部が上記第1撮像素子と上記第2撮像素子の同期のずれを検出したときに、上記第1リセット信号と上記第2リセット信号のそれぞれを同時に出力する、
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
(図3)
上記リセット部は、上記第1リセット信号と上記第2リセット信号を共通の信号線を介して上記第1撮像素子と上記第2撮像素子のそれぞれに出力する、
請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
(図4)
上記リセット部は、上記第1リセット信号と上記第2リセット信号のうち、上記第1リセット信号のみ遅延部を介して上記第1撮像素子に出力する、
請求項1記載の測距装置。
【請求項4】
(図4、図6)
上記遅延部は、リセット信号を取得してから動作開始までの時間に関する上記第1撮像素子と上記第2撮像素子の個体差に応じて設定された時間の遅延を実現する、
請求項3記載の測距装置。
【請求項5】
(図5)
上記第1リセット信号と上記第2リセット信号とは、上記リセット部から異なる信号線を介して出力される、
請求項1記載の測距装置。
【請求項6】
被写体を撮像する撮像光学系と、
上記撮像光学系による光学像を電気信号に変換する撮像素子と、
上記被写体までの距離を測距する測距装置と、
を備えた撮像装置であって、
上記測距装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の測距装置であることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163745(P2012−163745A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23685(P2011−23685)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】