説明

測長装置

【課題】
費用をかけずに製造可能である、測定精度が高くかつ再現性がある測長装置を提供することである。
【解決手段】
両連結部(141,142)の少なくとも一つが、少なくとも接触部(P)の領域内ではセラミック材料でできていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような例えば特許文献1、2および3に記載されているような測長装置は、長さならびに距離を測定するのに使用され、かつ座標測定装置においては、特に加工されるべき加工材料に対する工具の相対運動を測定するための加工機械において使用されるが、半導体業界においてはさらにいっそう使用されている。
【0003】
この場合、測定尺として、測定目盛を備えたスケールが使用され、このスケールは環境条件から保護された状態で測定方向で縦方向に延在しているケーシング内に設けられている。インクリメンタルにあるいは絶対的に符号化されている測定目盛は、位置決めの際に走査キャリッジにより走査される。この目的で、走査キャリッジは互いに垂直に走るスケールの二つの案内面に測定方向で縦方向に案内され、かつこれらの案内面に押し当てられる。測定長全体にわたり、走査キャリッジ−特に走査板−とスケールの間の一定の距離が維持され、これにより走査信号の良好な品質が保証されることが確実に行われるのでこの案内は実証されている。走査キャリッジの案内部は、測定されるべき対象と走査キャリッジの間で帯行体が、走査キャリッジを測定方向で硬く、かつ測定方向に対して横方向で帯行体に可撓に連結している連結体を備えていることにより、測定されるべき対象の案内部から連結解除されている。
【0004】
特許文献3において、連結体は二つの接触している連結部から成る。接触している連結部間の磨耗を減少させるために、滑動被膜が設けられている。この滑動被膜は薄い滑動箔であり、かつ例えばPTFEを含有した合成樹脂でできている。実際、帯行体に固定された従来技術による連結部は、鋼製のピンとして構成されており、このピンは帯行体の孔内で支持されている。ピンは接触点から出発して対称に形成されている。接触点をスケールの中立平面の近くにもってくるために、従ってスケールそれ自体にもってくるために、ピンの直径は極めて小さく選定されるが、それにより安定性は好ましくない影響を被る。
【0005】
測長装置への要求は常に高く、高い解像度ならびに高い精度、そして位置測定の再現性が要求される。その際、コンパクトな機械的構造がなければならず、測長装置は費用をかけずに生産しなければならない。
【特許文献1】独国特許出願公開第2845542号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3201887号明細書
【特許文献3】欧州特許第0459294号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底をなす課題は、費用をかけずに製造可能である、測定精度が高くかつ再現性がある測長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば請求項1の特徴により解決される。
【0008】
高い測定精度を得るには、測定長全体にわたり走査距離が一定であることが前提となる。
【0009】
このことは、測長装置自体、特にスケールに沿って走査キャリッジを案内することにより達せられる。測定されるべき対象物の案内の不精確とは関係のない走査キャリッジを精確な案内を行うために、対象物は帯行体に接してただ測定方向で剛性の高い連結部を介して走査キャリッジに連結されている。本発明による連結部の案内により、他の全ての方向において、測定方向での走査キャリッジの精確な案内及び運動への反作用がおこらない帯行体の運動が可能となる。摩擦特性ならびに磨耗特性は、安定性ができるだけ高く、かつ製造費用がかからない場合に最適になっている。特に長い寿命と、この長い寿命により再現可能な位置測定が達成可能である。
【0010】
従属請求項には、本発明の有利な実施形態が示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施例を用いて詳しく説明する。
【実施例】
【0012】
本発明は例えばX方向で対向して摺動可能な二つの物体の相対位置を測定することを意図した光学式測長装置である。その際、特にガラスでできた透明なスケール20は、スケール20に対してX方向に移動可能な走査キャリッジ10により走査される。スケール20は走査キャリッジ10により透過光内で走査される測定目盛21を備えている。この目的で、走査キャリッジ10は照明ユニットを有しており、この照明ユニットはスケール20の中を進み、最後には走査キャリッジ10の感光性走査センサーに当たる光束を放射する。この場合、光束はスケール20の測定目盛21により位置依存して変調される。
【0013】
スケール20はケーシング22の中に設けられており、このケーシングは測定されるべき物体、例えば工作機械の機械ベッドに再度固定されている。その際、スケール20は公知の方法で、例えば貼付けあるいは挟み込みによってケーシング22と連結している。ケーシング22は、その縦方向において測定方向Xに走るスリットを備えており、このスリットは、屋根状に傾斜したシールリップにより閉鎖されており、このシールリップにより帯行体13は剣状のセンタピースにより貫通捕捉されている。帯行体13は、取付け領域131を備えており、この取付け領域により帯行体は機械ベッドに対して摺動可能な物体、例えば工作機械のキャリッジに固定可能である。
【0014】
走査キャリッジ10はスケール20に沿って正確に平行案内するためにスケールに沿って案内されている。その目的で、走査キャリッジ10は案内部材を介して互いに垂直に整向された二つの、スケール20の面201,202に支持されている。これらの面の一つは測定目盛21を担持している面201であり、もう一方の面は、前記面に対して垂直に延在しているスケール20の短辺面202である。案内部材はスライド部材でもよいが、特に図1にただ一方だけ示してある支承されたローラー151であってもよい。
【0015】
走査キャリッジ10と帯行体13の間には、連結体14が設けられており、この連結体は走査キャリッジ10をX方向で硬く、かつ走査キャリッジに対して横方向で帯行体13に可撓に連結する。この方法により、帯行体13の誤った整向は走査キャリッジ10に伝達しない。この連結体14は、第一連結部分141を走査キャリッジ10に、かつ第二連結部分142を帯行体13に備えている。第一連結部分141の連結面F1は作動中に絶えず第二連結部分142の連結面F2に接触している。第一連結部分141はプレートであり、連結面F1は測定方向に対して垂直に整向されている平面である。第二連結部分142の連結面F2は球面に、特に球形に形成されており、従って第一連結部分141の連結面F1と第二連結部分142の連結面F2の間には点状接触部Pが生じる。
【0016】
動力部材、例えば圧縮バネ16により、両連結部分141,142の動力を伝達する連結が生じる。この機構により、測定方向Xに極度に剛性の高い連結がもたらされる。残りの5自由度は、走査キャリッジ10と帯行体13の間の相対運動の場合には妨げられない。
この相対運動により、機械案内部と、測長装置内の走査キャリッジ10の案内部との間の案内誤差により引き起こされた状態で、第一連結部分141の平らな連結面F1において
第二連結部分142の丸く曲げられた連結面F2は滑動する。
【0017】
両連結部分141,142の少なくとも一つは、少なくとも接触部Pの領域内はセラミックでできている。図示した実施例では、両連結部分141,142、すなわち走査キャリッジ10に固定された板状の第一連結部分141と、帯行体13に固定された球状の連結面F2を有する第二連結部分142がセラミックでできている。
【0018】
セラミックは非金属の無機物材料である。セラミック酸化物、特に酸化ジルコニウムを使用すると特に有利である。
【0019】
第二連結部分142は、測定方向Xに対して垂直に延在している接触面F3でもって帯行体13に支持されている。この接触面F3は、第一連結部分141の連結面F1に接触している連結面F2からX方向に間隔をおいて設けられている。第二連結部分142の球形の連結面F2は、第一連結部分141の平らな連結面F1に点状に接触しており、この点状接触部Pの箇所は、スケール20に対して間隔Aを有しており、その際この間隔Aは測定方向Xに対して垂直な方向に延びている。接触面F3は長さ部分(Ausdehnung)を測定方向に対して垂直に有しており、この長さ部分は接触部Pにより定まった位置から出発して、スケール20の方向+Zにおいては、方向−Z、従ってスケール20から遠ざかる方向におけるより何倍分も短い。これにより、第二連結部分142の接触部Pは、スケール20の中間領域の位置のできるだけ近くに、通常はスケールの中央に設けられており、それにもかかわらず第二連結部分142は、帯行体13に接して広い接触領域F3を有しており、従って高い剛性をX方向で備えている。接触点Pから出発して見られるこの非対称な形状は、材料の選択により容易に使用可能である。
【0020】
第二連結部分142は、組立を容易にするために、帯行体13に保持部材17を介して固定されている。この保持部材17は、帯行体13に設けられた接着装置の機能を有しており、この接着装置は第二連結部分142を基準位置で帯行体13に接着するために接着剤が硬化するまで確実に固定する。
【0021】
本発明の特別な長所は、連結体14が極めて高い強度と形状安定性を備えていることにあり、従って連結体が特に高い剛性を測定方向Xで備えていることにある。この長所は、一方ではもっぱら材料の選択に基づいてのみ生じ、かつ材料の選択が可能となる設計によりなお更に改善される。
【0022】
材料の選択に基づき、連結部分141,142の接触部Pにおける良好な摩擦学的特性が得られる。測定精度に影響を与える磨耗は一切発生しない。同じように、スケールを汚し、同様に走査信号の品質に不利な影響を与え、従って測定精度を低下させる磨耗は一切発生しない。
【0023】
セラミック材料を用いて、連結部分141,142を焼結製法により製造することにより、僅かな費用でもって、従って特に原価を安く、必要とされる形状と形状通りに滑らかな表面が得られる。
【0024】
本発明は、光学走査原理による測長装置に限定されてはいない。スケールの走査は静電容量性であるか、磁性であるか、あるいは誘導性であり、そのためには、測定目盛と走査センサーが対応して構成されていなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】測定方向における測長装置の部分図である。
【図2】図1による測長装置の連結部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 走査キャリッジ
13 帯行体
14 連結体
16 動力部材
20 スケール
21 測定目盛
141 第一連結部
142 第二連結部
201 案内面
202 案内面
F1 連結面
F2 連結面
P 接触部
X 測定方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの対象物の相対位置を測定するための測長装置であって、
−スケール(20)と、
−スケール(20)の目盛(21)を走査するための走査キャリッジ(10)と、
−連結体(14)とを備えており、
前記走査キャリッジ(10)が測長装置の案内面(201,202)において測定方向(X)で縦方向に案内されており、
前記連結体を介して、走査キャリッジ(10)がX方向で硬く、かつ連結体に対して横方向で帯行体(13)に連結しており、この帯行体が両対象物の一つに固定可能であり、
この場合、連結体(14)が第一連結部(141)を走査キャリッジ(10)に接して備えており、第二連結部(142)を帯行体(13)に接して備えており、第一連結部(141)の連結面(F1)が第二連結部(142)の連結面(F2)に接触している測長装置において、
両連結部(141,142)の少なくとも一つが、少なくとも接触部(P)の領域内ではセラミック材料でできていることを特徴とする測長装置。
【請求項2】
セラミック材料が酸化ジルコニウムであることを特徴とする請求項1記載の測長装置。
【請求項3】
第二連結部(142)がセラミック材料でできており、連結面(F2)が球形であることを特徴とする請求項1または2に記載の測長装置。
【請求項4】
第二連結部(142)が帯行体(13)に固定された物体であり、この物体が測定方向(X)に対して垂直に延在している接触面(F3)でもって帯行体(13)に支持されており、その際接触面(F3)が連結面(F2)から測定方向Xに間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項3記載の測長装置。
【請求項5】
−接触部(P)が点状であり、
−接触面(F3)が長さ部分を測定方向(X)に対して垂直に有しており、この長さ部分が接触部(P)により設定された位置からスケール(20)の方向(+Z)ではスケール(20)から遠ざかる方向(−Z)より何倍も短いことを特徴とする請求項4記載の測長装置。
【請求項6】
第一連結部(141)の連結面(F1)が平面であり、この平面が測定方向(X)に対して垂直に延在していることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の測長装置。
【請求項7】
動力部材(16)が設けられており、この動力部材が両連結部を接し合って押付けていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の測長装置。
【請求項8】
動力部材がバネ(16)であることを特徴とする請求項7記載の測長装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−69154(P2009−69154A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232990(P2008−232990)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】