説明

漏洩同軸ケーブル及び漏洩同軸ケーブルの製造方法

【課題】製造コストを上昇させることがなく、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを提供し、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを低廉なコストで製造することができるLCXの製造方法を提供する。
【解決手段】中心導体102と、中心導体102を被覆した絶縁体103と、絶縁体103の外側を覆う外部導体104とが同軸構造となされ、外部導体104に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部101が形成され、外部導体104が外被105で覆われた漏洩同軸ケーブルであって、外部導体104は、スロット部101となる開孔の形状がレジストインクにより印刷されて固着され金属を腐食させる液中に通過されることにより開孔が形成された金属テープが、絶縁体103の外周面に巻付けられて構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩同軸ケーブル及び漏洩同軸ケーブルの製造方法に関し、特に、スロット部の加工が容易化され、また、結合損失が安定化された漏洩同軸ケーブル及び漏洩同軸ケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(以下、「LCX」という。)は、図6に示すように、内部導体102、絶縁体103、外部導体104及び外被(シース)105を備えて同軸状に構成されている。このLCXは、従来より、新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり、あるいは、地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている。このようなLCX1においては、同軸内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、外部導体104上に周期的なスロット部101が設けられている。
【0003】
すなわち、LCX1の外部導体104には、ケーブル軸に対して一定周期毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット部101が設けられている。各スロット部101は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜されている。なお、各スロット部101の間隔の半分が使用周波数の半波長と一致したり、その半波長の整数倍となったときには、共振状態となる。この周波数を共振周波数と呼ぶ。
【0004】
このようなLCXを製造するには、まず、内部導体102の周囲に円柱状の絶縁体103を形成する。内部導体102は、絶縁体103の中心軸に沿って挿通された状態となる。次に、絶縁体103の外周面に、金属テープを縦添え状に巻き付ける。この金属テープには、スロット部101となる開孔が設けられている。この金属テープは、外部導体104となる。そして、この外部導体104上に外被105を形成することにより、LCXが完成する。
【0005】
特許文献1には、外部導体104となる金属テープに、金型を用いた打ち抜き法で開孔を作製することが記載されている。特許文献2には、外部導体104となる金属テープに、エンドミルを用いた切削法で開孔を作製することが記載されている。また、特許文献3には、外部導体104となる金属テープに、レーザ光で開孔を作製することが記載されている。そして、特許文献4には、外部導体104となる金属テープに、エッチング法で開孔を作製することが記載されている。
【0006】
また、LCXにおいては、結合損失をケーブルの長さ方向について安定化させることが要請されている。結合損失を安定化させるためには、非特許文献1に記載されているように、スロット部101からの放射効率を変化させればよい。この技術は、一般にグレーディングと呼ばれている。すなわち、LCXとの間隔を一定に保ちながらアンテナを移動させると、アンテナが給電側から遠ざかるにつれて、LCXの伝送損失のために、アンテナの受信電力は減少する。これを防止するために、結合損失の異なるLCXを組み合わせて、その伝送損失を補償するように、給電側から遠い部分に結合損失の小さな(電磁波漏洩量の多い)LCXを使用すれば、同一の結合損失を有するLCXのみで構成するよりも長く、かつ、受信レベル変動幅の小さい通信システムを構成することができる。非特許文献1には、結合損失の異なる3種類のLCXを使用した例が記載されている。結合損失を変化させるためには、スロット部101の形状(大きさ、太さ、角度など)を変化させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−193001号公報
【特許文献2】特開2010−073513号公報
【特許文献3】特開2003−079415号公報
【特許文献4】特開2008−278206号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「LCX通信システム」(初版、1982年発行)(岸本利彦、佐々木伸共著、コロナ社)P.27〜P.29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述したように、外部導体104となる金属テープに金型を用いた打ち抜き法で開孔を作製する場合には、金型の製作費が高価であるという問題がある。また、打ち抜き回数が増加するにしたがって金型が磨耗するため、金型を交換する必要が生じ、生産コスト上昇が招来される。また、金型の形状によって決まる同一形状、あるいは、数種類の金型による数種類の形状の開孔しか作製できないという問題がある。
【0010】
外部導体104となる金属テープにエンドミルを用いた切削法で開孔を作製する場合には、加工時間が長いという問題がある。また、切削時間が増加するにしたがってエンドミルが磨耗するため、エンドミルを交換する必要が生じ、生産コスト上昇が招来される。
【0011】
また、外部導体104となる金属テープに、レーザ光で開孔を作製する場合には、レーザ照射装置が、例えば1億円程度と極めて高額であるという問題がある。そのために、製品コストが大幅に上昇してしまう。
【0012】
そして、外部導体104となる金属テープに、エッチング法で開孔を作製する場合には、工程が複雑であるため、製品コストが上昇してしまうという問題がある。また、フォトマスクを高精度に作製しなければならず、フォトマスクの配置にも高い精度が要求されるため、製造コストの上昇を招いていた。すなわち、図7に示すように、フォトエッチングでは、まず、LCXの外部導体となる金属テープの全面にレジストを塗布する(ステップst101)。そして、別に製作したフォトマスク用の開孔パターン原版(ステップst102〜st103)を、レジストを塗布した金属テープ上に高精度に配置し(ステップst104)、パターン原版の上から露光して必要な金属部分のみを焼付けて固着させる(ステップst105)。その後、現像を行い、開孔になる部分のレジストを除去して(ステップst106)、エッチングによって開孔となる部分の金属体を腐食液によって溶かして除去する(ステップst107)という工程が必要である。また、不要なレジストは除去される(ステップst108)ため、レジスト材料の損失による資源の浪費が生ずる。
【0013】
そして、結合損失の異なるLCXを接続することによる結合損失の安定化においては、結合損失は、LCXの長さ方向に鋸状に10dB程度の変化がある。これでは、一定の結合損失のLCXのみを用いた場合よりは結合損失は安定化しているものの、完全な安定化ではない。そのため、LCXと、LCXの周囲に存在する通信相手となる無線移動端末との間において、通信速度の低下が生ずる虞があり、また、結合損失の大きい場所において、LCXと無線移動端末との間に電波障害物が入った場合には、結合損失が急激に増加して通信不能となる虞がある。
【0014】
また、結合損失の異なるLCXを接続するためには、多くの種類のLCXをいくつも布設現場に輸送しなければならず、また、LCXの接続のためにコネクタを必要とするので、コネクタの費用や取り付け作業も必要となる。したがって、このような結合損失の安定化技術においては、輸送費、材料費、工事費等のコストの上昇が招来される。
【0015】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、製造コストを上昇させることがなく、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを提供し、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを低廉なコストで製造することができるLCXの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るLCXは、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0017】
〔構成1〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成され外部導体が外被で覆われた漏洩同軸ケーブルであって、外部導体は、スロット部となる開孔の形状がレジストインクにより印刷されて固着された後金属を腐食させる液中に通過されることにより開孔が形成された金属テープが、絶縁体の外周面に巻付けられて構成されたものであることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成2〕
構成1を有する漏洩同軸ケーブルにおいて、スロット部からの漏洩電磁界の漏洩量が、ケーブルの全長に渡って連続的に変化していることを特徴とするものである。
【0019】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する漏洩同軸ケーブルにおいて、スロット部の形状がケーブル長さ方向について連続的に変化しており、漏洩電磁界の漏洩量がケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加し、ケーブル長さ方向についての漏洩電磁界の大きさの変化が抑えられていることを特徴とするものである。
【0020】
〔構成4〕
構成3を有する漏洩同軸ケーブルにおいて、ケーブル長が、ケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加する漏洩電磁界の漏洩量が急激に増加する距離に相当する長さ以下となっていることを特徴とするものである。
【0021】
〔構成5〕
構成1を有する漏洩同軸ケーブルにおいて、ケーブルの減衰量が、所望の箇所において選択的に変化していることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係るLCXの製造方法は、以下の構成を有するものである。
【0023】
〔構成6〕
中心導体を絶縁体により被覆する工程と、金属テープに漏洩電磁界形成用の複数のスロット部となる開孔の形状をレジストインクにより印刷して固着させる工程と、金属テープを金属を腐食させる液中に通過させ該金属テープに開孔を形成する工程と、金属テープを絶縁体の外周面に巻付けて外部導体とする工程と、外部導体を外被で覆う工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
構成1を有する本発明に係るLCXにおいては、外部導体は、スロット部となる開孔の形状がレジストインクにより印刷されて固着された後金属を腐食させる液中に通過されることにより開孔が形成された金属テープが、絶縁体の外周面に巻付けられて構成されたものであるので、製造コストが抑えられている。
【0025】
構成2を有する本発明に係るLCXにおいては、スロット部からの漏洩電磁界の漏洩量がケーブルの全長に渡って連続的に変化しているので、ケーブルの長さ方向について結合損失を安定化させることができる。
【0026】
構成3を有する本発明に係るLCXにおいては、スロット部の形状がケーブル長さ方向について連続的に変化しており、漏洩電磁界の漏洩量がケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加し、ケーブル長さ方向についての漏洩電磁界の大きさの変化が抑えられているので、ケーブルの長さ方向について結合損失を安定化させることができる。
【0027】
構成4を有する本発明に係るLCXにおいては、ケーブル長が、ケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加する漏洩電磁界の漏洩量が急激に増加する距離に相当する長さ以下となっているので、ケーブルの長さ方向について結合損失を安定化させることができる。
【0028】
構成5を有する本発明に係るLCXにおいては、ケーブルの減衰量が、所望の箇所において選択的に変化しているので、ケーブルの長さ方向について結合損失を所望の状態とすることができる。
【0029】
構成6を有する本発明に係るLCXの製造方法においては、金属テープに漏洩電磁界形成用の複数のスロット部となる開孔の形状をレジストインクにより印刷して固着させ、この金属テープを金属を腐食させる液中に通過させ該金属テープに開孔を形成し、この金属テープを絶縁体の外周面に巻付けて外部導体とするので、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを低廉なコストで製造することができる。
【0030】
すなわち、本発明は、製造コストを上昇させることがなく、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを提供し、また、ケーブルの長さ方向について結合損失が安定化されたLCXを低廉なコストで製造することができるLCXの製造方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るLCXの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るLCXの外部導体の構成を示す側面図である。
【図3】LCXの結合損失を測定する測定系を示す側面図である。
【図4】本発明に係るLCXにおいて測定されたアンテナ受信電力を示すグラフである。
【図5】本発明に係るLCXの結合損失を示すグラフである。
【図6】LCXの構成を示す側面図である。
【図7】従来のLCXの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図6は、LCXの構成を示す側面図である。
【0034】
本発明に係るLCXの製造方法により製造されるLCXは、図6に示すように、内部導体102、絶縁体103、外部導体104及び外被(シース)105が同軸状に構成されたものである。このLCX1においては、同軸内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、外部導体104上に周期的なスロット部101が設けられている。スロット部101は、外部導体104に、ケーブル軸に対して一定周期毎に設けられている。各スロット部101は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜されている。
【0035】
図1は、本発明に係るLCXの製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
本発明においては、図1に示すように、外部導体104にスロット部101となる開孔を形成するために、エッチング法を使用する。すなわち、レジストインクを、目的とする開孔パターンにしたがって外部導体104となる金属テープに印刷する。すなわち、ステップst1で、開孔パターン図を作製しておく。
【0037】
図2は、本発明に係るLCXの外部導体の構成を示す側面図である。
【0038】
次に、ステップst2で、図2に示すように、外部導体104となる金属テープに、開孔101が描かれたレジストパターンをレジストインク106により印刷する。このとき、開孔101の描かれたレジストパターンを金属テープに直接印刷するので、高精度のフォトマスクを作製する必要は無く、また、フォトマスクをレジスト面に高精度に配置する必要も無い。また、印刷は、インクジェットプリンタによって行うことができるので安価に行うことができる。
【0039】
さらに、レジストインク106は、開孔101となる部分を除いた領域のみに印刷(塗布)される。従来の製造方法では、金属テープの全面にレジストを塗布し、露光されない部分(開孔101となる部分)のレジストは、余分なレジストとして除去されていた。本発明においては、開孔101となる部分に余分にレジストインク106が印刷(塗布)されることがないので、資源の節約になる。
【0040】
ここで用いるレジストインクとしては、特開2009−35700号公報に記載されたチッソ株式会社製のものや、特開2010−53177号公報に記載された東京インキ株式会社製のものなどを使用することができる。
【0041】
そして、図1に示すように、ステップst3において、レジストパターンに露光し、レジストインクを硬化させて金属テープに焼き付ける。ステップst4において、金属部が露出した開孔となる箇所の金属を、エッチングにより除去して、開孔を形成する。ステップst5において、金属テープ上に残っているレジストインクを除去する。ステップst6において、開孔が形成された金属テープが完成する。この金属テープを、絶縁体103上に縦添えにして巻き付けて、外部導体104とする。
【0042】
そして、本発明に係るLCXの製造方法においては、図2に示すように、前述のようにして形成するスロット部101の形状をケーブルの長さ方向について連続的に変化させ、すなわち、連続グレーディングを行うことにより、結合損失を段階的ではなく連続的に変化させ、受信レベルの変動幅を極限まで小さくすることができる。
【0043】
すなわち、スロット部101となる開孔を前述したように作製することにより、開孔の形状を、複雑に変化させることができる。開孔の形状を微妙に変化させることにより、このLCXにおける結合損失が、ケーブル長さ方向ついて一定とすることができる。形状が微妙に変化する開孔のパターンは、CAD等により作図することができ、そのデータをコンピュータ装置に取り込んで、インクジェットプリンタにより、レジストインクを金属テープに直接印刷することができる。そして、エッチング工程により、開孔となる部分の金属を除去すれば、ケーブル長さ方向について微妙に形状が変化する開孔を形成することができる。
【0044】
また、このLCXの製造方法においては、開孔の形状を自在に変化させることができるので、漏洩電磁界の漏洩量を、所望の箇所において選択的に変化させることもできる。
【実施例】
【0045】
本発明の実施例として、外径2mmの円柱状の銅線を中心導体として、LCXを作製した。中心導体上には、発泡ポリエチレン絶縁体を押出し成形で構成し、この発泡ポリエチレン絶縁体により、外径5mmの絶縁体を形成した。
【0046】
次に、外部導体として、幅20mmのプラスチックテープ付銅テープを50m用意した。プラスチックテープ付銅テープは、厚さ0.01mmの銅テープに、強度向上のために厚さ0.06mmのプラスチックテープを貼り合わせたものであって、厚さは、0.07mmである。
【0047】
このプラスチックテープ付銅テープの銅テープ側に、光で固着するレジストインクを用いて、インクジェットプリンタにより開孔が描かれたレジストパターンを印刷して固着させた。そして、エッチングにより、スロット部となる開孔を形成した。この外部導体を、絶縁体上に縦添えして巻き付けた。
【0048】
さらに、外部導体上に、厚さ0.75mmの難燃ノンハロゲンポリエチレン樹脂を押出し成形し、この難燃ノンハロゲンポリエチレン樹脂により、外径約7mmの外被を形成した。なお、外径が約7mmとなるのは、絶縁体と外部導体との間、または、外部導体と外被との間に、若干の空気層が形成されるためである。
【0049】
このLCXの目標とする特性は、LCXから1.5m離れた地点での結合損失が80dBで、ケーブル長さ方向について一定であることとした。
【0050】
銅テープに印刷した開孔が描かれたレジストパターンは、図2に示すように、位置0mでは、LCXから1.5m離れた場所で80dBの結合損失を得るために、長さ7mm、幅2mmの細長い開孔をケーブル軸に対する角度が20度のジグザグ状に形成した。位置23mでは、1.5m離れた場所で80dBの結合損失を得るために、23m分の減衰量を補償するためにLCXの結合損失を70dBにする必要があるので、細長い開孔の形状は、長さ12mm、幅2mm、ケーブル軸に対する角度を20度とした。
【0051】
すなわち、位置0mから位置23mまでの結合損失の変化は、スロットの長さを徐々に増加させることにより補償する。そして、位置33mでは、LCXの結合損失を65dBとする必要があるので、細長い開孔の形状は、長さ12mm、幅2mm、ケーブル軸に対する角度を30度とした。位置23mから位置33mまでは、開孔のケーブル軸に対する角度を20度から30度まで徐々に変化させることにより、結合損失を連続的に減少させた。
【0052】
図3は、LCXの結合損失を測定する測定系を示す側面図である。
【0053】
次に、製作したLCXの性能を確認するために、図3に示すように、実験系を用いて結合損失を測定した。製作した50mのLCX1をコンクリート床107上に100mmほど木片108を台にして浮かして設置し、発信器109により、周波数2.4GHzのPin(W)の信号をLCXの始端に入力した。LCX1の終端には、終端抵抗器110を取り付けた。LCX1から1.5m離れた直上位置に、半波長標準ダイポールアンテナ111を、LCX1の長さ方向に垂直な方向の偏波(Eθ偏波)を受信するように配置した。
【0054】
そして、半波長標準ダイポールアンテナ111からの出力Poutを、スペクトラムアナライザ112で受信した。結合損失Lcは、LCX1ヘの入力電力Pinと、半波長標準ダイポールアンテナ111からの出力電力Poutとの比であり、Lc=−10log(Pout/Pin)(dB)で計算できる。すなわち、結合損失Lcは、LCX1からの電磁波の放射効率を示す。逆に、受信する場合は受信効率となり、数値は同じである。
【0055】
図4は、本発明に係るLCXにおいて測定されたアンテナ受信電力を示すグラフである。
【0056】
半波長標準ダイポールアンテナ111をLCX1の始端(位置0mの入射端)から、終端(位置50m)まで移動させ、連続して結合損失を測定した。Pinを0dB(1mW)とした。図4に示すように、横軸をLCX1の位置とし、縦軸をアンテナの出力電力Poutとして示すと、出力電力Poutは、多少の変動はあるものの、平均的には−80dBmとなっていた。したがって、結合損失Lcは、設計値通りの80dBが得られたことが確認された。
【0057】
図5は、本発明に係るLCXの結合損失を示すグラフである。
【0058】
図5に示すように、LCX1の位置を横軸とし、縦軸に各位置毎の結合損失、減衰量、0dBmをLCX1に入射した場合のケーブル内電力、及び、LCX1から1.5m離れた位置でのアンテナ出力をとって、LCX1の特性を確認した。
【0059】
位置0m(*1)は、LCX1ヘの信号電力の入射点である。結合損失80dBを設計値としているので、この位置でのLCXの結合損失は80dB(*2)である。LCX1の位置が進むにつれて、ケーブルの減衰量(*3)によってケーブル内電力(*4)は減少していることがわかる。この減少分を補償するために、ケーブルの結合損失(*5)を低下させている。そして、結合損失が50dBを越えると減衰量は急激に増大(*6)するので、LCX1の使用限界は、この位置の50m程度(*7)までであることがわかる。
【0060】
したがって、ケーブル長は、ケーブルの減衰量が急激に増加する手前まで、すなわち、ケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加する漏洩電磁界の漏洩量が急激に増加する距離に相当する長さ以下となっていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、漏洩同軸ケーブル及び漏洩同軸ケーブルの製造方法に適用され、特に、スロット部の加工が容易化され、また、結合損失が安定化された漏洩同軸ケーブル及び漏洩同軸ケーブルの製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0062】
1 LCX
101 スロット部
102 中心導体
103 絶縁体
104 外部導体
105 外被(シース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成され、前記外部導体が外被で覆われた漏洩同軸ケーブルであって、
前記外部導体は、前記スロット部となる開孔の形状がレジストインクにより印刷されて固着された後、金属を腐食させる液中に通過されることにより開孔が形成された金属テープが、前記絶縁体の外周面に巻付けられて構成されたものである
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項2】
前記スロット部からの漏洩電磁界の漏洩量が、ケーブルの全長に渡って連続的に変化している
ことを特徴とする請求項1記載の漏洩同軸ケーブル。
【請求項3】
前記スロット部の形状がケーブル長さ方向について連続的に変化しており、漏洩電磁界の漏洩量がケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加し、ケーブル長さ方向についての漏洩電磁界の大きさの変化が抑えられている
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の漏洩同軸ケーブル。
【請求項4】
ケーブル長が、ケーブル長さ方向について給電側から離れるにしたがって連続的に増加する漏洩電磁界の漏洩量が急激に増加する距離に相当する長さ以下となっている
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩同軸ケーブル。
【請求項5】
ケーブルの減衰量が、所望の箇所において選択的に変化している
ことを特徴とする請求項1記載の漏洩同軸ケーブル。
【請求項6】
中心導体を絶縁体により被覆する工程と、
金属テープに、漏洩電磁界形成用の複数のスロット部となる開孔の形状をレジストインクにより印刷して固着させる工程と、
前記金属テープを、金属を腐食させる液中に通過させ、該金属テープに開孔を形成する工程と、
前記金属テープを前記絶縁体の外周面に巻付けて、外部導体とする工程と、
前記外部導体を外被で覆う工程と、
を有することを特徴とする漏洩同軸ケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191402(P2012−191402A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52725(P2011−52725)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】