説明

漏液センサ

【課題】漏液センサにおいて、漏液の検出感度を高めること。
【解決手段】第1の電極24から第2の電極25へ流れる第1の電流I1を遮断すると共に、第2の電極25から第1の電極24へ流れる第2の電流I2を通すダイオードD3と、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも高いときに第1の電流I1が流れたことを検知して、第1の電極24と第2の電極25との間の空間に漏液30が存在する旨の第1の信号S1を出力する漏液検出部22と、第2の電極25の電位が第1の電極24の電位よりも高いときに第2の電流I2が流れないことを検知して、第1のケーブル26と第2のケーブル27のいずれかに断線が発生している旨の第2の信号S2を出力する断線検出部23とを有する漏液センサ20による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液センサに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の製造工程では、純水や薬液等の様々な液体が使用される。これらの液体は、クリーンルーム内に設けられた配管を通り、各半導体製造装置に供給される。
【0003】
ここで、その配管に漏液が発生すると、純水や薬液が濡れ広がってクリーンルーム内の設備が故障したり、危険な薬液の場合には人体に害を及ぼす危険性がある。
【0004】
そのため、クリーンルームの配管やその周囲には、漏液の有無を検知するための漏液センサが設けられ、その漏液センサから漏液警報が出た場合には、クリーンルーム内から作業者を退避させたり、配管の修復等のメンテナンスを行ったりする。
【0005】
そのような漏液センサにおいては、微量の漏液を検出できるように、漏液の検出感度を高めるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−29824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
漏液センサにおいて、漏液の検出感度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点によれば、交流電源の第1の端子に、第1のケーブルを介して電気的に接続される第1の電極と、前記第1の端子とは極性が反対の前記交流電源の第2の端子に、第2のケーブルを介して電気的に接続される第2の電極と、前記第1の電極から前記第2の電極へ流れる第1の電流を遮断すると共に、前記第2の電極から前記第1の電極へ流れる第2の電流を通す整流部と、前記第1の電極の電位が前記第2の電極の電位よりも高いときに前記第1の電流が流れたことを検知して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間に漏液が存在する旨の第1の信号を出力する漏液検出部と、前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位よりも高いときに前記第2の電流が流れないことを検知して、前記第1のケーブルと前記第2のケーブルのいずれかに断線が発生している旨の第2の信号を出力する断線検出部とを有する漏液センサが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以下の開示によれば、漏液がない場合には、第1の電流は整流部によって遮断されてその値が0となるので、第1のケーブルや第2のケーブルの長さの変化が原因で第1の電流の値が変動するのを抑制できる。そのため、漏液が発生したと判断するための許容値を第1の電流に設定する場合でも、上記した第1の電流が変動して誤ってその許容値を超えるのを防止できる。その結果、当該許容値を低く設定でき、漏液の検出感度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、漏液センサの回路図である。
【図2】図2は、図1の漏液センサのセンス電流と漏液の量との関係を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る漏液センサの回路図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る漏液センサの正常時のタイミングチャートである。
【図5】図5は、断線が発生した場合における本実施形態に係る漏液センサのタイミングチャートである。
【図6】図6は、漏液が発生した場合における本実施形態に係る漏液センサのタイミングチャートである。
【図7】図7は、本実施形態に係る漏液センサにおいて、第1の電流と漏液の量との関係と、第2の電流と漏液の量との関係について示す図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る漏液センサの敷設例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の説明に先立ち、本実施形態の基礎となる事項について説明する。
【0012】
図1は、漏液センサの回路図である。
【0013】
漏液センサ1は、抵抗4によって互いに電気的に接続された第1の電極2と第2の電極3とを有する。
【0014】
そして、第1の電極2と第2の電極3は、それぞれ第1のケーブル5と第2のケーブル6を介して直流電源7の両極に電気的に接続される。
【0015】
以下に説明するように、この漏液センサ1は、漏液の有無だけでなく、各ケーブル5、6の断線も検知するように機能する。
【0016】
実使用下においては、漏液センサ1にセンス電流I0を常に流しておく。そのセンス電流I0の大きさは、抵抗4の抵抗値をR、直流電源7の電圧値をEとすれば、E/Rとなる。
【0017】
ここで、各電極2、3の間に漏液9があると、漏液9に電流パスPが形成され、当該電流パスPによって抵抗4の両端が電気的に短絡される。そのため、漏液9がある場合は、上記のセンス電流I0はE/Rよりも大きくなる。
【0018】
一方、各ケーブル5、6に断線が発生している場合には、各ケーブル5、6にセンス電流I0が流れなくなるので、当該センス電流I0の電流値は0となる。
【0019】
このように、この漏液センサ1においては、センス電流I0の大きさに基づいて、漏液9の有無や、各ケーブル5、6の断線を検知することができる。
【0020】
図2は、センス電流I0と漏液9の量との関係を示す図である。
【0021】
図2に示すように、漏液9の量が多くなるほど、各電極2、3間の抵抗が下がるため、センス電流I0が増大する。このような特性を利用して、センス電流I0に予め上限許容値IHを設定しておき、センス電流I0がその上限許容値IHを超えた場合に、漏液が発生したと判断できる。
【0022】
その上限許容値IHの値としては、例えば、漏液が発生していないとみなせる領域Aと、漏液が発生しているとみなせる領域Bとの境界における漏液の量Dでのセンス電流I0の値を採用し得る。
【0023】
一方、断線については、センス電流I0に予め下限許容値ILを設定しておき、センス電流I0がその下限許容値ILを下回った場合に、各ケーブル5、6に断線が発生したと判断できる。
【0024】
ところで、この漏液センサ1においては、センサの設置場所に応じて各ケーブル5、6の長さを調節すると、これらのケーブル5、6の総抵抗が変動してセンス電流I0も変動する。また、各ケーブル5、6の周囲の温度等によっても、センス電流I0の変動が生じうる。
【0025】
そのような変動の結果、図2のようにセンス電流I0が全体的に上側にシフトすると、漏液が発生していないとみなせる領域AにあるC点においてセンス電流I0が上限許容値IHを超えてしまう。こうなると、実際には漏液が発生していないとみなせるにも関わらず、誤って漏液が発生したと判断することになる。
【0026】
このような誤報を防止するため、この漏液センサ1においては、上限許容値IHをなるべく高い値に設定する必要がある。
【0027】
しかしながら、このように上限許容値IHを高くすると、微量の漏液を見逃してしまい、漏液の検出感度が低下してしまう。
【0028】
このように、この漏液センサ1には、漏液を高感度に検出するのが難しいという問題がある。
【0029】
本願発明者は、このような問題に鑑み、以下に説明するような実施形態に想到した。
【0030】
(本実施形態)
図3は、本実施形態に係る漏液センサの回路図である。
【0031】
この漏液センサ20は、漏液を検知するセンサ部21と、漏液検出部22と、断線検出部23とを有する。
【0032】
このうち、センサ部21には第1の電極24と第2の電極25が設けられる。その第1の電極24は、第1のケーブル26を介して、交流電源ACの第1の端子31に電気的に接続される。
【0033】
一方、第2の電極25は、第2のケーブル27、漏液検出部22、及び断線検出部23を介して、交流電源ACの第2の端子32に電気的に接続される。
【0034】
交流電源ACは、極性が互いに反対の各端子31、32に所定の周波数の交流電圧V0を出力するものであって、第2の端子を基準にしたときのその交流電圧V0の最大値は例えば10Vである。
【0035】
また、各端子31、32の間には、交流電圧V0を安定化させるために、第1のツェナーダイオードZD1と第2のツェナーダイオードZD2が直列に接続される。
【0036】
一方、漏液検出部22は、第1のダイオードD1、第1の抵抗R1、及び第1の作動増幅器OP1を備える。
【0037】
第1のダイオードD1は、アノード側が上記の第2の電極25に電気的に接続され、カソード側が第1の作動増幅器OP1の正入力端子に電気的に接続される。
【0038】
また、第1の抵抗R1は、第1の作動増幅器OP1の正入力端子と負入力端子の間に電気的に接続される。なお、その第1の抵抗R1には、第1のコンデンサC1が並列に接続される。
【0039】
更に、第1の作動増幅器OP1には、当該第1の作動増幅器OP1と協働して第1の反転増幅回路41として供する第4の抵抗R4と第5の抵抗R5が接続される。このうち、第4の抵抗R4は第1の作動増幅器OP1の負入力端子に電気的に接続される。そして、第5の抵抗R5は、第1の作動増幅器OP1の出力端と負入力端子との間に設けられる。
【0040】
この場合、第1の反転増幅回路41の電圧増幅度は、第5の抵抗R5の抵抗値と第4の抵抗R4の抵抗値との比に等しい。
【0041】
このような回路構成によれば、第1のダイオードD1を順方向に流れる第1の電流I1が第1の抵抗R1を流れ、これにより当該第1の抵抗R1の両端に第1の電位差ΔV1が生じる。
【0042】
その第1の電位差ΔVは、図3の回路構成から、第1のダイオードD1のカソードと交流電源ACの第2の端子32との電位差に等しい。
【0043】
そして、その第1の電位差ΔV1のうち、プラス側の電位が第1の作動増幅器OP1の正入力端子に入力され、マイナス側の電位が負入力端子に入力される。
【0044】
ここで、上記のように第1の作動増幅器OP1は、各抵抗R4、R5と協働して第1の反転増幅器41として機能する。そのため、第1の作動増幅器OP1は、第1の抵抗R1に第1の電流I1が流れて正入力端子の電位が負入力端子の電位よりも高くなったときに、ハイレベルの漏液検出信号S1を出力する。
【0045】
一方、断線検出部23は、第2のダイオードD2、第2の抵抗R2、第2の作動増幅器OP2、及びインバータINVを備える。
【0046】
このうち、第2のダイオードD2は、カソード側が上記の第2の電極25に電気的に接続されて、アノード側が第2の作動増幅器OP2の負入力端子に電気的に接続される。また、第2の抵抗R2は、第2の作動増幅器OP2の正入力端子と負入力端子の間に電気的に接続される。なお、その第2の抵抗R2には、第2のコンデンサC2が並列に接続される。
【0047】
更に、第2の作動増幅器OP2には、当該第2の作動増幅器OP2と協働して第2の反転増幅回路42として供する第6の抵抗R6と第7の抵抗R7が接続される。このうち、第6の抵抗R6は第2の作動増幅器OP2の負入力端子に電気的に接続される。そして、第7の抵抗R7は、第2の作動増幅器OP2の出力端と負入力端子との間に設けられる。
【0048】
この場合、第2の反転増幅回路42の電圧増幅度は、第6の抵抗R6の抵抗値と第7の抵抗R7の抵抗値との比に等しい。
【0049】
このような回路構成によれば、第2のダイオードD2を順方向に流れる第2の電流I2が第2の抵抗R2を流れ、これにより当該第2の抵抗R2の両端に第2の電位差ΔV2が生じる。
【0050】
その第2の電位差ΔVは、図3の回路構成から、第2のダイオードD2のアノードと交流電源ACの第2の端子32との電位差に等しい。
【0051】
そして、その第2の電位差ΔV2のうち、プラス側の電位が第2の作動増幅器OP2の正入力端子に入力され、マイナス側の電位が負入力端子に入力される。
【0052】
ここで、上記のように、第2の作動増幅器OP2は、各抵抗R6、R7と協働して第2の反転増幅器42として機能する。よって、第2の作動増幅器OP2から出力される出力信号S0は、第2の抵抗R2に第2の電流I2が流れて正入力端子の電位が負入力端子の電位よりも高くなったときにハイレベルになる。
【0053】
そして、その出力信号S0は、第2の作動増幅器OP2の後段のインバータINVによって反転され、出力信号S0がローレベルになったときに、インバータINVからハイレベルの断線検出信号S2が出力される。
【0054】
上記のように、漏液検出部22と断線検出部23には、それぞれ第1の電流I1と第2の電流I2が流れるが、これらの電流I1、I2は以下のようにしてセンサ部21にも流れる。
【0055】
センサ部21には、上記した各電極24、25の他に、カソード側とアノード側がそれぞれ第1の電極24と第2の電極25に電気的に接続された第3のダイオードD3が設けられる。
【0056】
その第3のダイオードD3は、第1の電極24から第2の電極25へ流れる第1の電流I1を遮断すると共に、第2の電極25から第1の電極24へ流れる第2の電流I2を選択的に通す整流部として機能する。
【0057】
なお、第3のダイオードD3に過大電流が流れるのを防止するために、第3のダイオードD3に直列に第3の抵抗R3を設けるのが好ましい。
【0058】
このようなセンサ部21によれば、各電極24、25の間における漏液30の有無や、各ケーブル26、27の断線の有無によって、電流I1、I2の通電状態が変化する。
【0059】
例えば、第1の電流I1については、各電極24、25の間に純水や薬液等の漏液30がない場合には、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも高くなっても、第3のダイオードD3の整流作用によって、各電極24、25の間に第1の電流I1が流れない。
【0060】
一方、各電極24、25の間の空間に漏液30がある場合には、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも高くなると、漏液30内に電流パスが生じるので、各電極24、25の間に第1の電流I1が流れるようになる。
【0061】
なお、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも低い場合には、漏液30の有無に関わらず、漏液検出部22の第1のダイオードD1によって第1の電流I1は阻止されるので、第1の電流I1はセンサ部21を流れない。
【0062】
一方、第2の電流I2は、第2の電極25の電位が第1の電極24の電位よりも高いときに、第3のダイオードD3を順方向に流れる。
【0063】
これに対し、第1のケーブル26と第2のケーブル27のいずれか一方に断線が発生しているときには、第2の電極25の電位が第1の電極24の電位よりも高い場合であっても、第3のダイオードD3に第2の電流I2は流れない。
【0064】
このように、各電流I1、I2がセンサ部21を流れるかどうかは、漏液30や断線の有無によって変わる。
【0065】
図4〜図6は、漏液や断線によって各電流I1、I2が上記のように変化することを説明するためのタイミングチャートである。
【0066】
なお、これらのタイミングチャートにおける各電流I1、I2の向きは、第1の電流I1については漏液30中を第1の電極24から第2の電極25に流れたときを正、第2の電流I2については第3のダイオードD3を順方向に流れたときを負としている。
【0067】
図4は、漏液30がなく、かつ、各ケーブル26、27に断線がない正常時のタイミングチャートである。
【0068】
この場合、第1の電流I1は、交流電圧V0の正負に関わらず常に0となる。その結果、漏液検出信号S1は常にローレベルとなり、作業者は漏液が発生していないと判断できる。
【0069】
一方、第2の電流I2は、交流電圧V0が負となって第2の電極25の電位が第1の電極24の電位よりも高い期間のみ流れる。このとき、既述の第2の電位差ΔV2が第2の作動増幅器OP2に入力される。また、その第2の電位差ΔV2は第2のコンデンサC2に保持されるので、交流電圧V0が正の期間においても、上記の第2の電位差ΔV2が第2の作動増幅器OP2に入力される。
【0070】
よって、第2の出力信号S2は常にローレベルとなり、作業者は断線が発生していないと判断できる。
【0071】
一方、図5は、第1のケーブル26と第2のケーブル27のいずれか一方に断線が発生した場合のタイミングチャートである。なお、図5では、漏液30は発生していない場合を想定している。
【0072】
既述のように、このように断線が発生すると、各電極24、25の電位差によらず、第2の電流I2は流れなくなる。
【0073】
よって、断線が発生した時刻T1以降は、第2の電流I2は0となり、断線検出信号S2がハイレベルとなる。この断線検出信号S2に基づいて、作業者は、第1のケーブル26と第2のケーブル27のどちらかに断線が発生していると判断することができる。
【0074】
また、図6は、各電極26、27の間に漏液30が発生している場合のタイミングチャートである。なお、図6では、各ケーブル26、27の双方に断線がない場合を想定している。
【0075】
既述のように、このように漏液30が発生すると、交流電圧V0が正となって第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも高くなったときに、第1の電流I1が流れるようになる。
【0076】
その第1の電流I1により、第1の抵抗R1の両端には既述の第1の電位差ΔV1が発生するが、当該第1の電位差ΔV1は第1のコンデンサC1に保持される。
【0077】
そのため、漏液が発生した時刻T2以降は、常に漏液検出信号S1がハイレベルとなる。作業者は、この漏液検出信号S1に基づいて、漏液30が発生していると判断することができる。
【0078】
図7は、上記した第1の電流I1と漏液30の量との関係を示す図である。なお、図7における第1の電流I1の値は、交流電圧V0が最大となり、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも最も高くなったときの値である。
【0079】
更に、図7には、第2の電流I2についても併記している。この第2の電流I2の値は、交流電圧V0が最小となり、第1の電極24の電位が第2の電極25の電位よりも最も小さくなったときの値である。
【0080】
図7に示すように、漏液30の量が多くなるほど、各電極24、25間の抵抗が下がり、第1の電流I1が増大する。
【0081】
その第1の電流I1が0よりも大きくなった時点で漏液が発生したと判断してもよいが、判断の信頼性を高めるために0よりも大きな上限許容値IHを設定し、第1の電流I1が上限許容値IHよりも大きくなったときに漏液が発生したと判断するのが好ましい。
【0082】
このためには、例えば、第1の作動増幅器OP1のオフセット電圧を調整することにより、第1の電流I1が上限許容値IHよりも大きくなった時点で、漏液検出信号S1がハイレベルになるようにすればよい。
【0083】
一方、第2の電流I2は、各ケーブル26、27に断線が発生していれば、交流電圧V0の大きさの如何に関わらず0になる。
【0084】
このように第2の電流I2が0になった時点で断線が発生したと判断してもよいが、これでは断線の発見が遅れる可能性がある。よって、早期に断線を発見するために、0よりも小さな下限許容値ILを設定し、交流電圧V0が最小のときの第2の電流I2が下限許容値ILよりも大きくなったときに断線が発生したと判断するのが好ましい。
【0085】
このためには、例えば、第2の作動増幅器OP2のオフセット電圧を調整することにより、第2の電流I2が下限許容値ILよりも大きくなった時点で、断線検出信号S2がハイレベルになるようにすればよい。
【0086】
このように、本実施形態では、交流電圧V0が正のときに流れる第1の電流I1を漏液の検出に使用し、交流電圧V0が負のときに流れる第2の電流I2を断線の検出に使用する。
【0087】
各電流I1、I2の用途をこのように区別することで、これらの電流I1、I2の各々に個別に閾値IH、ILを設定できる。
【0088】
特に、漏液検出用の第1の電流I1は、漏液が発生していない正常時には流れないため、正常時における各ケーブル26、27の長さや温度の影響を受けず、その値が常に0となる。
【0089】
このように、正常時においては、第1の電流I1が変動する懸念がないので、誤報を防止する目的で上限許容値IHを高めに設定する必要がなく、図2の場合よりも低い値に上限許容値IHを設定でき、漏液の検出感度を高めることができる。
【0090】
一方、第2の電流I2は、各ケーブル26、27の長さや温度によってその値が変動するものの、断線を検出する目的にのみ使用されるので、仮に第2の電流I2が変動したとしてもそれにより漏液の検出感度が低下することはない。
【0091】
図8は、この漏液センサ20の敷設例を示す模式図である。なお、図8において、図3で説明したのと同じ要素には同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0092】
この漏液センサ20の敷設場所は特に限定されないが、半導体装置の製造に使用されるクリーンルーム内に漏液センサ20を敷設するのが好ましい。
【0093】
クリーンルーム内には、成膜装置やエッチング装置等の半導体製造装置50が設置されている。その半導体製造装置50には配管51が接続されており、純水や薬液等の液体53が配管51を通って半導体製造装置50に供給される。
【0094】
このとき、配管51の近傍においては、配管51から液体53が漏れ出して漏液が発生する可能性が高い。よって、その配管51の近傍に、上記の漏液センサ20のセンサ部21を設けるのが好ましい。
【0095】
このような敷設方法によれば、作業者が、漏液検出部22と断線検出部23の各々から出力される漏液検出信号S1や断線検出信号S2に基づいて、配管51の漏液や各ケーブル26、27の断線の有無を判断できる。
【0096】
また、センサ部21から交流電源ACまでの距離等に応じて各ケーブル26、27の長さを調節しても、上記のように漏液の検出感度を高い状態に維持できるので、センサ部21の敷設場所によらず高感度に漏液を検出することができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、交流電源ACを利用して向きが反対の第1の電流I1と第2の電流I2を生成して、第1の電流I1については漏液の検出にのみ使用し、第2の電流I2については断線の検出にのみ使用する。このように各電流I1、I2の役割を区別することで、既述のように誤報を防止しながら漏液の検出感度を高めることが可能となる。
【0098】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0099】
(付記1) 交流電源の第1の端子に、第1のケーブルを介して電気的に接続される第1の電極と、
前記第1の端子とは極性が反対の前記交流電源の第2の端子に、第2のケーブルを介して電気的に接続される第2の電極と、
前記第1の電極から前記第2の電極へ流れる第1の電流を遮断すると共に、前記第2の電極から前記第1の電極へ流れる第2の電流を通す整流部と、
前記第1の電極の電位が前記第2の電極の電位よりも高いときに前記第1の電流が流れたことを検知して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間に漏液が存在する旨の第1の信号を出力する漏液検出部と、
前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位よりも高いときに前記第2の電流が流れないことを検知して、前記第1のケーブルと前記第2のケーブルのいずれかに断線が発生している旨の第2の信号を出力する断線検出部と、
を有することを特徴とする漏液センサ。
【0100】
(付記2) 前記漏液検出部は、
アノード側が前記第2の電極に電気的に接続されて、前記第1の電流が順方向に流れる第1のダイオードと、
前記第1のダイオードのカソードと前記交流電源の前記第2の端子との第1の電位差を増幅して前記第1の信号として出力する第1の増幅回路とを有することを特徴とする付記1に記載の漏液センサ。
【0101】
(付記3) 前記第1の増幅回路は反転増幅回路であることを特徴とする付記2に記載の漏液センサ。
【0102】
(付記4) 前記第1のダイオードのカソードと前記交流電源の第2の端子との間に第1の抵抗が設けられ、
前記第1の増幅回路は、前記第1の抵抗に前記第1の電流が流れたときに該第1の抵抗の両端に発生する前記第1の電位差を増幅して前記第1の信号として出力することを特徴とする付記2に記載の漏液センサ。
【0103】
(付記5) 前記第1の抵抗に、第1のコンデンサが並列に接続されたことを特徴とする付記4に記載の漏液センサ。
【0104】
(付記6) 前記断線検出部は、
カソード側が前記第2の電極に電気的に接続されて、前記第2の電流が順方向に流れる第2のダイオードと、
前記第2のダイオードのアノードと前記交流電源の前記第2の端子との第2の電位差を増幅して出力する第2の増幅回路と、
前記第2の増幅回路の出力を反転して前記第2の信号として出力するインバータとを有することを特徴とする付記1に記載の漏液センサ。
【0105】
(付記7) 前記第2の増幅回路は反転増幅回路であることを特徴とする付記6に記載の漏液センサ。
【0106】
(付記8) 前記第2のダイオードのアノードと前記交流電源の第2の端子との間に第2の抵抗が設けられ、
前記第2の増幅回路は、前記第2の抵抗に前記第2の電流が流れたときに該第2の抵抗の両端に発生する前記第2の電位差を増幅して出力することを特徴とする付記6に記載の漏液センサ。
【0107】
(付記9) 前記第2の抵抗に、第2のコンデンサが並列に接続されたことを特徴とする付記6に記載の漏液センサ。
【0108】
(付記10) 前記整流部は、前記第2の電流が順方向に流れる第3のダイオードであることを特徴とする付記1に記載の漏液センサ。
【符号の説明】
【0109】
1、20…漏液センサ、2、24…第1の電極、3、25…第2の電極、4…抵抗、5、26…第1のケーブル、6、27…第2のケーブル、7…直流電源、9…漏液、21…センサ部、22…漏液検出部、23…断線検出部、31…第1の端子、32…第2の端子、41…第1の反転増幅回路、42…第2の反転増幅回路、50…半導体製造装置、51…配管、53…液体、I0…センス電流、I1…第1の電流、I2…第2の電流、ZD1…第1のツェナーダイオード、ZD2…第2のツェナーダイオード、OP1…第1の作動増幅器、OP2…第2の作動増幅器、D1〜D3…第1〜第3のダイオード、R1〜R7…第1〜第7のダイオード、INV…インバータ、C1…第1のコンデンサ、C2…第2のコンデンサ、AC…交流電源、S1…漏液検出信号、S2…断線検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の第1の端子に、第1のケーブルを介して電気的に接続される第1の電極と、
前記第1の端子とは極性が反対の前記交流電源の第2の端子に、第2のケーブルを介して電気的に接続される第2の電極と、
前記第1の電極から前記第2の電極へ流れる第1の電流を遮断すると共に、前記第2の電極から前記第1の電極へ流れる第2の電流を通す整流部と、
前記第1の電極の電位が前記第2の電極の電位よりも高いときに前記第1の電流が流れたことを検知して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間に漏液が存在する旨の第1の信号を出力する漏液検出部と、
前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位よりも高いときに前記第2の電流が流れないことを検知して、前記第1のケーブルと前記第2のケーブルのいずれかに断線が発生している旨の第2の信号を出力する断線検出部と、
を有することを特徴とする漏液センサ。
【請求項2】
前記漏液検出部は、
アノード側が前記第2の電極に電気的に接続されて、前記第1の電流が順方向に流れる第1のダイオードと、
前記第1のダイオードのカソードと前記交流電源の前記第2の端子との第1の電位差を増幅して前記第1の信号として出力する第1の増幅回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の漏液センサ。
【請求項3】
前記第1のダイオードのカソードと前記交流電源の第2の端子との間に第1の抵抗が設けられ、
前記第1の増幅回路は、前記第1の抵抗に前記第1の電流が流れたときに該第1の抵抗の両端に発生する前記第1の電位差を増幅して前記第1の信号として出力することを特徴とする請求項2に記載の漏液センサ。
【請求項4】
前記断線検出部は、
カソード側が前記第2の電極に電気的に接続されて、前記第2の電流が順方向に流れる第2のダイオードと、
前記第2のダイオードのアノードと前記交流電源の前記第2の端子との第2の電位差を増幅して出力する第2の増幅回路と、
前記第2の増幅回路の出力を反転して前記第2の信号として出力するインバータとを有することを特徴とする請求項1に記載の漏液センサ。
【請求項5】
前記第2のダイオードのアノードと前記交流電源の第2の端子との間に第2の抵抗が設けられ、
前記第2の増幅回路は、前記第2の抵抗に前記第2の電流が流れたときに該第2の抵抗の両端に発生する前記第2の電位差を増幅して出力することを特徴とする請求項4に記載の漏液センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−191177(P2011−191177A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57471(P2010−57471)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】