説明

炭化珪素単結晶および炭化珪素基板

【課題】 安定して製造することができる高抵抗率のSiC単結晶とこのSiC単結晶からなるSiC基板を提供する。
【解決手段】 タングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属を含有するSiC単結晶である。ここで、SiC単結晶中におけるこれらの金属の含有量が1×1014個/cm3以上1×1017個/cm3以下であることが好ましい。さらに、このSiC単結晶からなるSiC基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(SiC)単結晶およびSiC基板に関し、特に高抵抗率であるSiC単結晶とこのSiC単結晶からなるSiC基板に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、シリコン(Si)に比べてバンドギャップが約3倍、絶縁破壊電圧が約10倍、電子飽和速度が約2倍、さらに熱伝導率が約3倍大きく、Siにない物性を有している。また、SiCは熱的かつ化学的に安定な半導体材料であり、これらの物性を生かして、近年ではSiデバイスの物理的な限界を打破するパワーデバイスや高温で動作する耐環境デバイスなどへの応用が期待されている。
【0003】
また、光デバイス研究においては短波長化を目指した窒化ガリウム(GaN)系の材料開発がなされているが、SiCはGaNに対する格子不整合が他の化合物半導体に比べて格段に小さいので、SiC基板はGaN層のエピタキシャル成長用の基板として注目されている。
【0004】
このようなエレクトロニクスの分野においては、使用目的に応じて基板の電気伝導特性を制御する必要があり、例えば、半導体レーザ用の基板としては低抵抗率の基板が必要とされ、高周波デバイス用の基板としては寄生容量低減および素子分離等の理由から、高抵抗率(半絶縁性)の基板が必要とされている。
【0005】
高抵抗率のSiC基板は、例えばバナジウムを含有させることによって高抵抗率化したSiC単結晶(特許文献1〜2参照)から製造される。このバナジウムを含有させた高抵抗率のSiC単結晶は、高純度のSiC結晶粉末中に高純度のバナジウムを添加し、バナジウムをSiCと共に昇華させてSiC単結晶中にバナジウムを含有させることによって製造される。
【0006】
しかしながら、SiCに比べてバナジウムの昇華速度が大きいため、SiC単結晶の成長初期に多くのバナジウムがSiC単結晶中に取り込まれてしまい、SiC単結晶中に一様にバナジウムを含有させることができなかった。また、成長初期において、SiC単結晶中に含有されるバナジウムの量が固溶限界を超えてしまい、析出物の発生を伴って結晶性を劣化させるため、この成長初期における結晶性の劣化がその後に成長するSiC単結晶にも悪影響を及ぼしていた。その結果、高抵抗率のSiC単結晶を安定して製造することができないという問題があった。また、SiC単結晶からなるSiC基板の抵抗率にも大きなバラツキが生じてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献3においては、バナジウムを含有するSiC結晶を予め製造しておき、これを粉末状としたものを原料として改良レーリー法を用いてバナジウムを含有するSiC単結晶を再度成長させる方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、バナジウムを含有するSiC結晶を予め製造しておく必要があるため、高抵抗率のSiC単結晶を効率的に製造することができないという問題があった。
【0008】
また、上記したバナジウム添加ではなく、SiC単結晶の純度を向上させることによっても、高抵抗率のSiC基板を作製することができる。例えば、化学気相蒸着(CVD)法の延長である高温CVD法を用いて作製されたSiC単結晶は高純度になりやすい。しかしながら、高純度のSiC単結晶を得るためには、その成長プロセス(原料、成長装置等)も高純度化する必要があるが、成長プロセスを安定して高純度化し続けるのは、非常に困難であった。
【特許文献1】米国特許5611955号明細書
【特許文献2】特表2003−500321号公報
【特許文献3】特開2003−104798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、安定して製造することができる高抵抗率のSiC単結晶とこのSiC単結晶からなるSiC基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属を含有するSiC単結晶である。
【0011】
ここで、本発明のSiC単結晶においては、上記金属がタングステンとニオブであることが好ましい。
【0012】
また、本発明のSiC単結晶においては、上記金属がタングステンとモリブデンであることが好ましい。
【0013】
また、本発明のSiC単結晶においては、上記金属がニオブとモリブデンであることが好ましい。
【0014】
また、本発明のSiC単結晶においては、上記金属がタングステンとニオブとモリブデンであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のSiC単結晶においては、上記金属の含有量が1×1014個/cm3以上1×1017個/cm3以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のSiC単結晶は、ホウ素および窒素の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、上記のSiC単結晶からなるSiC基板である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安定して製造することができる高抵抗率のSiC単結晶とこのSiC単結晶からなるSiC基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、タングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属を含有するSiC単結晶である。これは、本発明者が鋭意検討した結果、タングステン、ニオブおよびモリブデンはバナジウムよりも融点が高く、バナジウムと比べてSiC単結晶の成長初期に多く取り込まれることなくSiC単結晶中に一様にこれらの金属を含有させることができ、安定して高抵抗率のSiC単結晶を製造することができることを見い出したものである。また、これらの金属はバナジウムと比べて蒸気圧が低いため、SiC単結晶中における原子間の結合がより安定する。したがって、このSiC単結晶からなるSiC基板を用いて半導体デバイスを製造する工程においてSiC基板が高温に加熱された場合であっても、これらの金属はSiC基板中において拡散しにくいことから、半導体デバイスの製造後においてもSiC基板が安定して高抵抗率を示す傾向にある。さらに、これらの金属は毒性がないため、SiC単結晶およびSiC基板を安全に製造することもできる。
【0020】
本発明のSiC単結晶には、タングステン、ニオブおよびモリブデンがそれぞれ1種類ずつ含有されていてもよく、複数組み合わせて含有されていてもよい。本発明のSiC単結晶に含有される上記金属の組み合わせとしては、タングステン−ニオブ、タングステン−モリブデン、ニオブ−モリブデン、およびタングステン−ニオブ−モリブデンがある。ここで「−」は、「−」の両側にある金属が本発明のSiC単結晶中に含有されることを意味している。
【0021】
また、本発明のSiC単結晶中に含まれるタングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属の含有量は、1×1014個/cm3以上1×1017個/cm3以下であることが好ましい。これらの金属の含有量が1×1014個/cm3未満である場合には上記金属の含有量が少なすぎてSiC単結晶が高抵抗率となりにくい傾向にあり、1×1017個/cm3よりも多い場合には上記金属の含有量が多すぎてSiC単結晶の結晶性が悪化する傾向にある。ここで、金属の含有量は、上記金属が複数組み合わされてSiC単結晶中に含有されている場合には、上記金属の総含有量のことを意味する。
【0022】
また、本発明のSiC単結晶は、ホウ素および窒素の少なくとも一方を含有することが好ましい。SiC単結晶は、一般的にSiC単結晶を構成する材料を気化させて得られた気化ガスを種基板の表面上で再結晶させることにより製造されるが、この気化ガスにホウ素または窒素が含有されている場合には、タングステン、ニオブおよびモリブデンが、ホウ素や窒素に引きずられてSiC単結晶中に入り込みやすくなるためである。
【0023】
また、本発明のSiC単結晶の25℃における抵抗率は、1×103Ωcm以上であることが好ましく、1×107Ωcm以上であることがより好ましい。本発明のSiC単結晶の25℃における抵抗率が1×103Ωcm以上である場合には絶縁性基板を必要とする半導体デバイスの基板に本発明のSiC単結晶からなるSiC基板を好適に利用することができる。また、25℃における抵抗率が1×107Ωcm以上である場合には絶縁性基板を必要とする半導体デバイスの基板に本発明のSiC単結晶からなるSiC基板をさらに好適に利用することができる。
【0024】
このような本発明のSiC単結晶の製造方法の好ましい一例としては、改良レーリー法を用いた方法がある。図1に、本発明に用いられるSiC単結晶成長装置の一例の模式的な断面図を示す。なお、本願の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0025】
図1に示す成長装置5は、石英管6の内部に設置された黒鉛製の坩堝7と、坩堝7の上端開口部を閉鎖する蓋8と、坩堝7と蓋8の周囲に設置された熱シールドのための黒鉛製のフェルト9と、石英管6の外周を取り巻くように設置されたワークコイル10とを含む。そして、SiCからなる種結晶基板1が蓋8の下面中央に取り付けられており、原料2が坩堝7の内部に充填されている。
【0026】
原料2には、SiC結晶粉末にタングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属が含有されている。また、SiC単結晶中にホウ素を含有させる場合には、さらにホウ素および/またはホウ素化合物が含有される。そして、坩堝7の内部の圧力が10-5Pa以上10-3Pa以下になるまで一旦減圧した後に、坩堝7にアルゴン(Ar)等の不活性ガスを導入し、坩堝7の内部を1×104Pa以上1×105Pa以下の圧力の不活性ガス雰囲気とする。
【0027】
そして、ワークコイル10に高周波電流を流すことによって原料2を加熱し、坩堝7の内部の圧力を1×103Pa以上8×103Pa以下まで減圧することによって原料2を気化させた混合ガスが得られる。ここで、SiC単結晶中に窒素を含有させる場合には、坩堝7の混合ガス中に窒素ガスが導入される。
【0028】
ワークコイル10による加熱は、原料2からSiC種結晶基板1にかけて次第に低温となるように温度勾配をつけて行なわれているため、SiC種結晶基板1の表面近傍に到達した混合ガスは、SiC種結晶基板1の表面上で再結晶することによって、SiC単結晶2aが成長し、SiC単結晶インゴッド3が得られる。
【0029】
そして、このSiC単結晶インゴッド3を所定の厚みに切断することによって、図2に示す円板状の高抵抗率のSiC基板4が製造される。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1に示すSiC単結晶成長装置を用いてSiC単結晶を製造した。まず、SiC結晶粉末中にタングステン(W)をSiC結晶粉末中のSiの物質量に対して4.0×10-2mol%となるように混合して原料2を作製した。そして、この原料2を坩堝7に充填した後にSiCからなる種結晶基板1が取り付けられている蓋8を被せ、種結晶基板1が坩堝7の内部に設置されるようにした。続いて、坩堝7の内部の圧力が10-5Paになるまで一旦減圧した後に、坩堝7にArガスを導入することによって坩堝7の内部を圧力1×105PaのArガス雰囲気とした。
【0031】
そして、ワークコイル10に高周波電流を流すことによって原料2を加熱し、坩堝7の内部の圧力を1.3×103Paまで減圧することによって原料2を気化させて混合ガスを得た。ここで、ワークコイル10による加熱は、原料2から種結晶基板1にかけて次第に低温となるように温度勾配をつけて行なわれた。その後、混合ガスが、種結晶基板1の表面上で再結晶することによりSiC単結晶2aが成長し、SiC単結晶インゴッド3が得られた。
【0032】
このSiC単結晶インゴッド3を400μmの厚さで切断して、口径2インチの図2に示す円板状のSiC基板4を製造した。
【0033】
そして、このSiC基板4中のWの含有量をSIMS(2次イオン質量分析法)によって測定した。また、このSiC基板の抵抗率を測定した。これらの結果を表1に示す。表1に示すように、このSiC基板中のWの含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0034】
(実施例2)
図1に示す原料2中におけるWの混合量をSiC結晶粉末中のSiの物質量に対して4.0×10-5mol%としたこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、このSiC基板中のWの含有量は1.0×1014個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1010Ωcmであった。
【0035】
(実施例3)
図1に示す原料2中におけるWの混合量をSiC結晶粉末中のSiの物質量に対して4.4×10-2mol%としたこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、このSiC基板中のWの含有量は1.1×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×109Ωcmであった。
【0036】
(実施例4)
図1に示す原料2中におけるWの混合量をSiC結晶粉末中のSiの物質量に対して3.96×10-5mol%としたこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、このSiC基板中のWの含有量は9.9×1013個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×109Ωcmであった。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、Wの含有量が1.0×1017個/cm3である実施例1のSiC基板はWの含有量が1.1×1017個/cm3である実施例3のSiC基板よりも高抵抗率を示した。これは、実施例1のSiC基板の結晶性が実施例3のSiC基板の結晶性よりも良好であったためと考えられる。
【0039】
また、Wの含有量が1.0×1014個/cm3である実施例2のSiC基板はWの含有量が9.9×1013個/cm3である実施例4のSiC基板よりも高抵抗率を示した。これは、実施例4のSiC基板のWの含有量が1.0×1014個/cm3に満たなかったためと考えられる。
【0040】
したがって、表1の結果から、SiC基板中におけるWの含有量が1×1014個/cm3以上1×1017個/cm3以下である場合には、SiC基板が高抵抗率となる傾向にあることが推察される。
【0041】
(実施例5)
Wの代わりにニオブ(Nb)を図1に示す原料2中に混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のNbの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のNbの含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0042】
(実施例6)
Wの代わりにモリブデン(Mo)を図1に示す原料2中に混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のMoの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のMoの含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0043】
(実施例7)
図1に示す原料2中に、SiC結晶粉末中のSiの物質量に対してWを2.0×10-2mol%となるように混合し、Nbを2.0×10-2mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWとNbの総含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のWとNbの総含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0044】
(実施例8)
図1に示す原料2中に、SiC結晶粉末中のSiの物質量に対してWを2.0×10-2mol%となるように混合し、Moを2.0×10-2mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWとMoの総含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のWとMoの総含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0045】
(実施例9)
図1に示す原料2中に、SiC結晶粉末中のSiの物質量に対してNbを2.0×10-2mol%となるように混合し、Moを2.0×10-2mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のNbとMoの総含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のNbとMoの総含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0046】
(実施例10)
図1に示す原料2中に、SiC結晶粉末中のSiの物質量に対してWを2.0×10-2mol%となるように混合し、Nbを1.0×10-2mol%となるように混合し、Moを1.0×10-2mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のWとNbとMoの総含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のWとNbとMoの総含有量は1.0×1017個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×1011Ωcmであった。
【0047】
(比較例1)
Wの代わりにバナジウム(V)を図1に示す原料2中に混合したこと以外は実施例1と同様にしてSiC基板を製造した。そして、実施例1と同様にして、このSiC基板中のVの含有量および抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、このSiC基板中のVの含有量は1.0×1015個/cm3であり、SiC基板の抵抗率は1.0×103Ωcmであった。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、W、NbまたはMoを含有している実施例5〜10のSiC基板は、Vが含有されている比較例1のSiC基板よりも高抵抗率を示した。これは比較例1においては、SiC単結晶の成長初期に多くのバナジウムがSiC単結晶中に取り込まれてしまうことによって、SiC単結晶中に含有されるバナジウムの量が固溶限界を超えてしまい、析出物の発生を伴ってSiC単結晶の結晶性が劣化したためと考えられる。
【0050】
また、比較例1のSiC基板中のVの含有量が少ないのは、SiC単結晶の成長初期においてVがSiC単結晶中に取り込まれすぎたため、SiC基板を得るために切断したSiC単結晶の部分にVがあまり含有されていなかったためと考えられる。
【0051】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述したように本発明によれば、安定して製造することができる高抵抗率のSiC単結晶とこのSiC単結晶からなるSiC基板を提供することができる。したがって、本発明は半導体デバイス分野における高周波デバイス、特に、動作周波数の高いスイッチング素子に好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に用いられるSiC単結晶成長装置の好ましい一例の模式的な断面図である。
【図2】本発明のSiC基板の好ましい一例の模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 種結晶基板、2 原料、2a SiC単結晶、3 SiC単結晶インゴッド、4 SiC基板、5 成長装置、6 石英管、7 坩堝、8 蓋、9 フェルト、10 ワークコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン、ニオブおよびモリブデンの群から選択された少なくとも1種類の金属を含有することを特徴とする、炭化珪素単結晶。
【請求項2】
前記金属がタングステンとニオブであることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素単結晶。
【請求項3】
前記金属がタングステンとモリブデンであることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素単結晶。
【請求項4】
前記金属がニオブとモリブデンであることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素単結晶。
【請求項5】
前記金属がタングステンとニオブとモリブデンであることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素単結晶。
【請求項6】
前記金属の含有量が1×1014個/cm3以上1×1017個/cm3以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【請求項7】
ホウ素および窒素の少なくとも一方を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の炭化珪素単結晶からなる、炭化珪素基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124247(P2006−124247A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316460(P2004−316460)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(599012835)株式会社シクスオン (10)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【Fターム(参考)】