説明

無線ネットワークのアクセスポイント

【課題】電波の輻輳や混信を防止し、且つ、セキュリティの向上を可能にした無線ネットワークのパーソナルアクセスポイントを提供する。
【解決手段】アンテナと、アンテナを介して無線端末装置との間で高周波信号を送受信する高周波回路と、高周波回路を介して無線端末装置との間でパケット通信を行う無線手順処理部と、を有する無線ネットワーク処理部と、無線端末装置の接近を高周波信号の送受信以外の要素で検出する端末検出部と、端末検出部が無線端末装置を検出していないとき無線ネットワーク処理部の機能を停止させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線端末装置と通信を行う無線ネットワークのアクセスポイントに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANは、LANケーブルを引き回すことなく端末装置をネットワークに接続することができるインフラ(公共的設備)として普及している。したがって、無線LANに用いられるアクセスポイントは、カバーエリアに入ってきた端末装置が速やかに通信できるように常時ビーコンを送信してチャンネルを監視している。また、できるだけ広いカバーエリアを確保できるように規定の空中線電力の範囲内で効率的に電波を放射できるアンテナを装備している(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−502231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のアクセスポイントでは、1台のアクセスポイントで広いエリアをカバーしようとするため、複数台の端末装置が同時にアクセスする場合があり、通信の輻輳により通信速度が低下する場合があった。また、アクセスポイントと特定の端末装置との通信であっても、他の端末装置が傍受可能であるため、通信のセキュリティを維持するためには高度な暗号化処理等が必要であった。
【0005】
また、さらに、端末装置と通信していない場合でも、ビーコン等の電波を発射しているため、電力のロスが生じ、電波が到達する範囲の他の通信や他の機器の動作に悪影響を及ぼす場合があった。
【0006】
この発明は、電波の輻輳や混信を防止し、且つ、セキュリティの向上を可能にした無線ネットワークのアクセスポイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、アンテナと、該アンテナを介して無線端末装置との間で高周波信号を送受信する高周波回路と、該高周波回路を介して前記無線端末装置との間でパケット通信を行う無線手順処理部と、を有する無線ネットワーク処理部と、前記無線端末装置の接近を、前記高周波信号の送受信以外の要素で検出する端末検出部と、前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記制御部は、前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記高周波回路を停止させることにより、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記制御部は、前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記無線手順処理部に、アクセスポイントの存在を示すビーコンパケットの前記高周波回路への入力を停止させることにより、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、前記無線端末装置が載置される端末載置部を備え、前記端末検出部は、前記無線端末装置が前記端末載置部に載置されたことを検出し、前記高周波回路および前記アンテナは、前記端末載置部上またはその近傍に存在する無線端末装置と通信可能な強度で電磁波を発生することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記制御部は、前記端末検出部が、前記無線端末装置の接近を検出している場合でも、前記無線端末装置と前記無線手順処理部との間でパケット通信の確立が失敗したとき、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、無線ネットワークのアクセスポイントをインフラとしてではなく、無線端末装置が近くに置かれたときのみ動作するパーソナルな周辺機器またはネットワークアダプタとして構成することにより、不要な電波の発射をなくして輻輳や混信を防止することができる。また、さらに電波強度を弱くしたことにより、セキュリティの向上にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態であるパーソナルアクセスポイントの外観図である。
【図2】同パーソナルアクセスポイントのブロック図である。
【図3】同パーソナルアクセスポイントの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照してこの発明の実施形態であるパーソナルアクセスポイントについて説明する。図1は同パーソナルアクセスポイントの外観斜視図である。図2は同パーソナルアクセスポイントの制御部のブロック図である。このパーソナルアクセスポイント1は、無線LANのアクセスポイントであるが、従来一般的なアクセスポイントのように部屋全体やロビーなど広いエリアをカバーするためのものではなく、利用者のデスクトップなどに置かれ、利用者が持参した1台の無線端末装置と通信するための装置として用いられるものである。
【0015】
図1において、パーソナルアクセスポイント1は、薄いプレート状の端末載置部11、および、該端末載置部11の後方に回路収容部12を有している。端末載置部11上にユーザが持参した携帯の無線端末装置2が載置される。無線端末装置2としては、wifi対応のハンドヘルドコンピュータやスマートフォンなどが用いられる。回路収容部12には、複数のLANコネクタや電源回路等が設けられている。
【0016】
端末載置部11の内部にはアンテナ13が設けられている。アンテナ13は、端末載置部11上における電界強度分布が均一で電波の飛距離が短いものが用いられる。たとえば、特開2006−19979号に記載の通信シートを用いればよい。また、アンテナ13をEBG(電磁バンドギャップ)を用いた高効率アンテナとし、送信出力を小さく絞ることによっても実現可能である。
【0017】
また、端末載置部11の略中央上面および回路収容部12の上面に光センサであるフォトトランジスタ14A,14Bがそれぞれ設けられている。端末載置部11の略中央に設けられているフォトトランジスタ14Aは、端末載置部11に無線端末装置2が載置されたとき外光が遮断される。一方、回路収容部12の上面に設けられているフォトトランジスタ14Bは、端末載置部11に無線端末装置2が載置されるか否かにかかわらず外光が入射する。端末検出部27(図2参照)は、これらフォトトランジスタ14A,Bの受光光量の差すなわち出力される光電流の差に基づいて端末載置部11に無線端末装置2が載置されたか否かを判断する。
【0018】
また、端末載置部11の左手前端部には複数(3個)のLED15が設けられている。これらLEDは電源オン時、無線端末装置検出時、リンク確立時にそれぞれ点灯する。
【0019】
図2において、パーソナルアクセスポイント1は、制御部20、ネットワーク処理部21、端末検出部27および表示部28を有している。ネットワーク処理部21は、アンテナ13、高周波回路22、無線手順処理部23、有線手順処理部24、および、アップリンク回路25、ダウンリンク回路26を有している。
【0020】
無線手順処理部23は、IEEE802.11g/nなどのプロトコルに従った手順を実行し、無線端末装置2とパケット通信を行う処理部である。有線手順処理部24は、IEEE802.3(Ethernet(登録商標))に従った処理を実行し、アップリンク回路25、ダウンリンク回路26を介した有線LANの通信を行う処理部である。無線手順処理部23と有線手順処理部24とは、互いにパケットの交換を行う。高周波回路22は、無線手順処理部23から入力されたパケットを所定チャンネルのキャリア信号に重畳してアンテナ13から送信する。また、高周波回路22は、アンテナ13から受信した信号を復調してパケットを取り出し、このパケットを無線手順処理部23に入力する。
【0021】
有線手順処理部24に接続されているアップリンク回路24は、有線LANの上流装置に接続される物理レイヤの回路である。ダウンリンク回路25は、このパーソナルアクセスポイント複数台をディジーチェーン接続する場合に下流のパーソナルアクセスポイントと接続される物理レイヤの回路である。
【0022】
端末検出部27は、上記フォトトランジスタ14Aおよびフォトトランジスタ14Bの出力(受光光量)を比較するコンパレータ等を含み、無線端末装置2を検出したとき検出信号を制御部20に対して出力する回路である。また、表示部28は上記LED15を含み、制御部20の指示に従ってLED15を点灯/消灯させる回路である。
【0023】
上記構成のパーソナルアクセスポイント1は、以下の(1)、(2)ような特徴を有している。
(1)無線端末装置2が端末載置部11に載置されていないとき、すなわち、端末検出部27が無線端末装置2を検出していないときには、無線LANアクセスポイントの機能を停止させる。この実施形態では、高周波回路22を停止させる(電源オフする)ことによってアクセスポイントの機能を停止させている。また、高周波回路22を動作させたままで無線手順処理部23にビーコンの送信を停止させてもよい。
【0024】
(2)無線LANのアクセスポイント機能がアクティブなときでも、高周波回路22の送信出力および/またはアンテナ13の特性により、通信可能範囲は端末載置部11上またはその周辺に限定され、端末載置部11に載置された無線端末装置2以外がこのアクセスポイント1の通信エリアに入ることはほぼ無い。
【0025】
(1)の特徴により、無線端末装置2と通信しないときに電波を停止して無駄な電波の放射を無くすことが可能になる。また、(2)の特徴により、広い空間に電波が放射されることが防止され、無用な電波による他の無線ネットワークや無線機器への障害を防止することができる。また、意図しない第三者、すなわち、端末載置部11に載置された無線端末装置2以外の端末装置がこのネットワークに参加することが、物理レイヤのレベルで困難であることにより、ネットワークのセキュリティをより高くすることができる。勿論、台数制限を掛ける、認証方式・暗号化方式を高度にする等の方式と併用することにより、よりセキュリティを高くすることができる。
【0026】
図3はネットワーク処理部21(特に制御部20)の動作を説明するフローチャートである。この動作は一定時間毎に実行される動作である。
【0027】
まず、S1で無線端末装置2が端末載置部11に載置されたか否か、すなわち、端末検出部27が無線端末装置2を検出したか否かを判定する。携帯無線端末2が検出された場合(S1でYES)には、無線端末装置2の検出中(載置中)である旨を示すフラグがセットされているか否かを判断する(S10)。フラグがセットされている場合(S10でYES)には、何もしないで処理を終了する。フラグがセットされていない場合(S10でNO)には、無線端末装置2が載置されたばかりであるとして、S11以下の処理を実行する。
【0028】
S11以下では、まずフラグをセットする(S11)。そして高周波回路22の電源をオンして高周波回路22の動作を開始させる(S12)。そして無線手順処理部23に動作開始を指示する(S13)。
【0029】
無線手順処理部23は、定期的(たとえば50ms毎)に自己のSSIDを含むビーコンを送信する(S14)。このビーコンに対して携帯端末装置2から一定時間以内に認証要求を受信した場合には(S15でYES)、これに応じて認証処理を実行する(S16)。認証が成功した場合には(S17でYES)、そのまま無線LANアクセスポイントの機能をアクティブにした状態で終了する。これにより、無線端末装置2はアクセスポイント1を介してネットワークにアクセスすることが可能になる。
【0030】
一方、一定時間が経過しても認証要求を受信しなかった場合(S15でNO)、および、認証が失敗に終わったとき(S17でNO)には、無線手順処理部23を停止させ(S22)、高周波回路22の電源をオフする(S23)。これにより、無線端末装置2とアクセスポイント1との無線通信は切断され通信が不可となる。通信をやりなおす場合には、一旦無線端末装置2を端末載置部11から離してフラグをリセットしたのち、再度無線端末装置2を端末載置部11に載置する動作からやりなおす必要がある。
【0031】
S1で無線端末装置2が検出されない場合(S1でNO)には、待機中であるか、すなわち、フラグがリセットされているかを判断する(S20)。フラグがリセットされている場合(S20でYES)には何もしないで処理を終了する。フラグがセットされている場合(S20でNO)には、無線端末装置2が端末載置部11から取り上げられたばかりであるとしてS21以下の処理を実行する。
【0032】
まず、フラグをリセットする(S21)。次に、無線手順処理部22を停止させ(S22)、高周波回路23の電源をオフして(S23)動作を終了する。なお、S15またはS17からの割り込みにより既にS22、S23の処理が実行されている場合にはそのまま動作を終了する。これにより、パーソナルアクセスポイント1は待機状態にもどり、無線端末装置2が端末載置部11に載置されるまで待機する。
【0033】
なお、端末検出用のセンサは、光センサ(フォトトランジスタ)に限定されない。たとえば、圧電素子等を用いた重量センサを用い、特定の無線端末装置の重量が掛かったとき無線端末装置2が載置された判定するようにしてもよい。また、重量センサと光センサを併用してもよい。
【0034】
また、端末載置部11は、図1に示すような水平なフラットベッドに限定されない。たとえば、書見台のような斜めのものであってもよい。
【0035】
また、このアクセスポイント1の用途としては、オフィスのデスクトップ用として使用可能なほか、街頭に設置されるゲームソフトダウンロード端末装置の通信部として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 パーソナルアクセスポイント
2 (携帯型の)無線端末装置
13 アンテナ
14A,B フォトトランジスタ(光センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、該アンテナを介して無線端末装置との間で高周波信号を送受信する高周波回路と、該高周波回路を介して前記無線端末装置との間でパケット通信を行う無線手順処理部と、を有する無線ネットワーク処理部と、
前記無線端末装置の接近を、前記高周波信号の送受信以外の要素で検出する端末検出部と、
前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させる制御部と、
を備えた無線ネットワークのアクセスポイント。
【請求項2】
前記制御部は、前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記高周波回路を停止させることにより、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させる請求項1に記載のアクセスポイント。
【請求項3】
前記制御部は、前記端末検出部が前記無線端末装置を検出していないとき、前記無線手順処理部に、アクセスポイントの存在を示すビーコンパケットの前記高周波回路への入力を停止させることにより、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させる請求項1に記載のアクセスポイント。
【請求項4】
前記無線端末装置が載置される端末載置部を備え、
前記端末検出部は、前記無線端末装置が前記端末載置部に載置されたことを検出し、
前記高周波回路および前記アンテナは、前記端末載置部上またはその近傍に存在する無線端末装置と通信可能な強度で電磁波を発生する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアクセスポイント。
【請求項5】
前記制御部は、前記端末検出部が、前記無線端末装置の接近を検出している場合でも、前記無線端末装置と前記無線手順処理部との間でパケット通信の確立が失敗したとき、前記無線ネットワーク処理部の機能を停止させる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアクセスポイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−114706(P2012−114706A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262429(P2010−262429)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】