説明

無線基地局装置、ベースバンド信号処理装置及び基地局装置

【課題】故障したベースバンド信号カードに依存せず、継続運用可能である無線基地局を提供することを課題とする。
【解決手段】数の信号処理部を備える無線基地局装置であって、前記信号処理部は、受信ベースバンド信号中の物理チャネルに対する処理を行う、複数の物理チャネルリソースを有する物理チャネル信号処理部と、前記複数の物理チャネルリソースの1つと対応付けられ、その物理チャネルリソースからの入力信号に対する信号復号処理をそれぞれに行う、複数の信号復号処理リソースを有する信号復号処理部と、を備え、前記複数の信号復号処理リソース毎に、前記入力信号のビットエラーレートを測定する、無線基地局装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベースバンド信号処理カードにおけるハードウェア故障を自律的に検出する無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信分野の無線基地局装置において、外部から入力された信号は、ベースバンド信号処理カードの物理チャネル信号処理部のメモリを経由して、信号復号処理部に入力される。
【0003】
無線基地局装置運用中にベースバンド信号処理カードの物理チャネル信号処理部のメモリ故障等が発生した場合、信号復号処理部への入力が異常となる。そのため、ユーザの接続/通信障害を引き起こし、本現象が継続する。
【特許文献1】特開2001−298767号公報
【特許文献2】特開2003−198453号公報
【特許文献3】特開2002−246978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、無線基地局装置の立ち上げ時のみメモリチェック等を行っていた。そのため、無線基地局運用中に故障が発生しても、検出することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、故障したベースバンド信号カードに依存せず、継続運用可能である無線基地局を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために以下の手段を採用する。
【0007】
即ち、本発明は、
複数の信号処理部を備える無線基地局装置であって、
前記信号処理部は、
受信ベースバンド信号中の物理チャネルに対する処理を行う、複数の物理チャネルリソースを有する物理チャネル信号処理部と、
前記複数の物理チャネルリソースの1つと対応付けられ、その物理チャネルリソースからの入力信号に対する信号復号処理をそれぞれに行う、複数の信号復号処理リソースを有する信号復号処理部と、を備え、
前記複数の信号復号処理リソース毎に、前記入力信号のビットエラーレートを測定する、
無線基地局装置である。
【0008】
本発明によると、信号復号処理部にて、常時、入力信号のBER(Bit Error Rate)測定を信号復号処理リソース毎に行うことができる。
【0009】
また、好ましくは、本発明において、
前記信号処理部は、
前記物理チャネルリソースの1つと前記信号復号処理リソースの1つとを対応付けを記録する第1の記録部と、
前記物理チャネルリソース毎に前記ビットエラーレート測定結果を記録する第2の記
録部と、
前記第1の記録部を参照し、前記ビットエラー測定結果を前記物理チャネルリソース毎に前記第2の記録部に積算して記録するビットエラー測定機能部と、
を備える、
無線基地局装置とする。
【0010】
本発明によると、信号復号リソース毎に測定したBER測定結果を、物理チャネルリソース毎に積算収集することができる。
【0011】
また、本発明は、
受信ベースバンド信号中の物理チャネル信号に係る処理をそれぞれ行う複数の物理チャネル信号処理部と、各物理チャネル信号処理部との組をなし、対応する物理チャネル信号処理部の処理結果としての信号を格納する複数の格納部と、前記物理チャネル信号処理部及び格納部の組の1つと関連付けられ、関連付けられた格納部に格納された信号に対する復号処理をそれぞれ行う複数の信号復号処理部とを有する複数の信号処理部と、
前記各信号復号処理部で処理される信号のビットエラーレートをそれぞれ測定する測定部と、
前記ビットエラーレートの測定結果に基づいて、各信号復号処理部と関連する格納部及び物理チャネル信号処理部の組が正常か異常かを判定する判定部とを備え、
前記判定部において、異常と判定された組が1以上ある場合に、自装置が異常であると判定する
ベースバンド信号処理装置である。
【0012】
本発明によると、ベースバンド信号処理装置の故障を早期に検出することができる。
【0013】
ここで、本発明における「格納部」には、メモリが含まれる。本発明における「組」には、リソースが含まれる。本発明における「測定部」には、BER測定機能部が含まれる。本発明における「判定部」には、故障判定機能部が含まれる。
【0014】
また、本発明における「ベースバンド信号処理部」、「呼処理制御部」及び「装置監視部」には、それぞれ「ベースバンド信号処理カード」、「呼処理制御カード」及び「装置監視カード」が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、故障したベースバンド信号カードに依存せず、継続運用可能である無線基地局を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
〔実施形態〕
〈装置〉
《無線基地局装置》
図1は、無線基地局装置の構成例を示す図である。無線基地局装置100は、複数のベースバンド信号処理カード101、呼処理制御カード102及び装置監視カード103を備える。呼処理制御カード102は、呼処理割り当て管理テーブル132を有する。
【0018】
(ベースバンド信号処理カード)
図2は、無線基地局装置のベースバンド信号処理カードの構成例を示す図である。ベー
スバンド信号処理カード101は、ハードウェア240とファームウェア250とを備える。
【0019】
ベースバンド信号処理カード101のハードウェア240は、物理チャネル信号処理部222、メモリ224、信号復号処理部226を備える。
【0020】
ベースバンド信号処理カード101のファームウェア250は、BER測定機能部202、故障判定機能部204、ハードウェア呼処理制御機能部206、ハードウェアリソース管理機能部208、カード間信号送受信機能部210を備える。
【0021】
BER測定機能部202は、BER測定結果を管理するBER測定結果管理テーブル232を有する。ハードウェアリソース管理機能部208は、リソース割当を管理するリソース管理テーブル238を有する。
【0022】
図3は、無線基地局装置のベースバンド信号処理カードのハードウェア構成例を示す図である。
【0023】
ベースバンド信号処理カード101のハードウェア240は、物理チャネル信号処理部222、メモリ224、信号復号処理部226を備え、それぞれ複数のリソースを有する。
【0024】
ベースバンド信号処理カード101にユーザ信号が入力されると、物理チャネル信号処理部222でユーザ信号はデータフレーム化され、メモリ224に格納される。メモリ224に格納された信号は、信号復号処理部226でデジタル処理化(復号化)されて、出力される。
【0025】
(呼処理割り当て管理テーブル)
図4は、呼処理割り当て管理テーブルの例を示す図である。呼処理割り当て管理テーブル132は、各ベースバンド信号処理カード101の使用の可否(状態)を記録する。呼処理制御カード102は、ユーザ回線設定時に、呼処理割り当て管理テーブル132を参照し、割り当てベースバンド信号処理カードを決定する。
【0026】
(リソース管理テーブル)
図5は、リソース管理テーブルの例を示す図である。リソース管理テーブル238は、ベースバンド信号処理カード101のファームウェア250のハードウェアリソース管理機能部208で管理される。リソース管理テーブル238は、各物理チャネル信号処理リソース及び各信号復号処理リソースの使用状態を管理する。リソース管理テーブル238には、各リソースの、空き状態や、使用ユーザが格納される。また、リソース管理テーブル238を参照することで、使用中の物理チャネル信号処理リソースと信号復号処理リソースの対応関係が分かる。図5の例では、物理チャネル信号処理リソース#02と信号復号処理リソース#01とが対応していることが分かる。
【0027】
(BER測定結果管理テーブル)
図6は、BER測定結果管理テーブルの例を示す図である。BER測定結果管理テーブルは、信号復号処理部におけるBER測定の結果(信号受信数、信号受信NG数)を物理チャネル信号処理リソース毎に管理する。
【0028】
〈動作例〉
《BER測定》
図7は、BER(Bit Error Rate、ビット誤り率)測定のシーケンスの例を示す図であ
る。
【0029】
ユーザ(ユーザ#01)のユーザ回線の設定が必要になると、呼処理制御カード102は、呼処理割り当て管理テーブル132を参照し、使用可能なベースバンド信号処理カード101を抽出する。呼処理制御カード102は、その抽出したベースバンド信号処理カード101に対して、回線割り当て要求を行う(S01)。
【0030】
ベースバンド信号処理カード101のファームウェア250(図2)は、以下の処理を行う(S02)。カード間信号送受信機能部210で、回線割り当て要求を受信する。カード間信号送受信機能部210は、ハードウェア呼処理制御機能部206に対し、ユーザ#01に対する呼処理割り当てを指示する。
【0031】
ハードウェア呼処理制御機能部206は、ハードウェアリソース管理機能部208に対し、使用可能なリソースを問い合わせる。ハードウェアリソース管理機能部208は、ハードウェア呼処理制御部206からの問い合わせに対し、リソース管理テーブル238(図5)を参照し、空きリソースの中から使用可能なリソースを決定し、ハードウェア呼処理制御機能部206に通知する。また、ハードウェアリソース管理機能部208は、割り当てたリソースの情報をリソース管理テーブル238に登録する。図7の例では、物理チャネル信号処理リソース#02と、信号復号処理リソース#01とを、ユーザ#01に割り当てている。
【0032】
図7に戻って、ハードウェア呼処理制御機能部206は、ユーザ回線が設定されると、その設定された回線のリソースのBER測定を開始することをBER測定機能部202へ指示する。
【0033】
BER測定機能部202は、回線設定された信号復号処理リソース(信号復号処理部226)に対し、BER測定を行うことを指示する。当該信号復号処理リソース(信号復号処理部226)は、BER測定を開始し、信号受信数及び信号受信NG数を積算する(S04)。
【0034】
S04では、詳細には次の処理が行われる。装置監視カード103(図1)がカード間信号送受信機能部210を通じて故障判定部204(図2)に故障判定要求を送信すると、故障判定部204は、BER測定機能部202に対し、BER測定結果を要求する。
【0035】
BER測定機能部202が、信号復号処理リソース(信号復号処理部226)に対して、BER測定結果の通知を要求すると、信号復号処理リソースは、積算しているBER測定結果(信号受信数及び信号受信NG数)を、BER測定機能部202へ通知する(図7、S05)。なお、信号復号処理リソースから定期的(一定時間毎や一定信号受信数毎など)にBER測定機能部202へ通知するようにしてもよい。
【0036】
次に、S06として、以下の処理が行われる。BER測定機能部202は、ハードウェアリソース管理機能部208のリソース管理テーブル238(図5)から、当該信号復号処理リソースに対応する物理チャネル信号処理リソースを検索する。BER測定機能部202は、信号復号処理リソースから通知された信号受信数、信号受信NG数を、BER測定管理テーブル232(図6)の対応する物理チャネル信号処理リソースの欄に加算する(図7、S06)。
【0037】
ベースバンド信号処理カード101のユーザ信号は、物理チャネル信号処理部222で処理され、メモリ224を経由して、信号復号処理部226から出力される。物理チャネル信号処理部222と対になるメモリ224に故障が発生した場合、入力先の信号復号処
理部226にてユーザ信号入力が異常となりビットエラーが発生する。本メモリ224の故障検出には、信号復号処理部226へのユーザ信号入力がされる必要がある。よって、信号復号処理リソースでBER測定を実施することで、対応する物理チャネル信号処理リソースの故障を判定することができる。
【0038】
《故障判定》
図8及び図9は、ベースバンド信号処理カードの故障判定のシーケンスの例を示す図である。
【0039】
装置監視カード103は、装置の立ち上がりと同時に周期タイマを起動する(S11)。周期タイマの周期は、例えばαとする。周期タイマは、時刻0から時刻αになると、再び時刻0にリセットされる時計である。装置自身が有する時計で代用することもできる。
【0040】
呼処理制御カード102から、ベースバンド信号処理カード101へ呼処理要求がされる毎に、回線が設定される(S12)。ベースバンド信号処理カード101は、設定された回線に対するBER測定を開始し、BER測定結果を積算する(S13)。
【0041】
周期タイマが一定時間を経過する(S14;Yes)と、装置監視カード103は、それぞれのベースバンド信号処理カード101に対して、故障判定要求を行う(S15)。故障判定要求を行うと、報告待ちタイマを起動する(S16)。各ベースバンド信号処理カード101は、故障判定要求を受信すると、BER測定積算結果から故障判定を行う(S17)。各ベースバンド信号処理カード101は、故障判定結果を装置監視カード103へ通知する(S18)。装置監視カード103は、通知された故障判定結果を保存する(S19)。
【0042】
装置監視カード103は、すべてのベースバンド信号処理カード101から故障判定結果を受信したとき、又は、報告待ちタイマが一定時間経過したとき(S20;Yes)、故障カードALM化(Alarm化、アラーム化)判定を行う(S21)。ここで、ベースバ
ンド信号処理カード#01に対して、ALM化が決定されたとする。すると、装置監視カード103は、ベースバンド信号処理カード#01に対して、ALM化を要求する(S22)。
【0043】
ALM化を要求されたベースバンド信号処理カード#01は、ALM化を実施する(S23)。これにより、アラームを出し続けている状態とする。
【0044】
装置監視カード103は、呼処理制御カード102に対し、ベースバンド信号処理カード#01をALM化したことを通知する(S24)。
【0045】
また、装置監視カード103は、他のベースバンド信号処理カード101に対し、BER測定積算値のリセットを要求する(S25)。BER測定積算値のリセットを要求されたベースバンド信号処理カード101は、BER測定積算値をリセットする(S26)。
【0046】
《動作フロー》
図10及び図11は、故障判定の動作フローを示す図である。図10は、装置監視カード側の故障判定の動作フローを示す。図11は、ベースバンド信号処理カード側の故障判定の動作フローを示す。
【0047】
(リソース毎の故障判定)
図10において、装置監視カード103は、周期タイマが所定時間(故障判定監視周期α)に達すると、ベースバンド信号処理カード101に故障判定要求を送信する(S31
)。装置監視カード103は、故障判定要求をすると、報告待ちタイマを起動する(S32)。装置監視カード103は、報告待ちタイマが所定時間に達するか、すべてのベースバンド信号処理カード101から故障判定結果を受信した(S33)後に、故障カードALM化判定を行う(S34)。
【0048】
一方、図11において、ベースバンド信号処理カード101は、装置監視カード103から、故障判定要求を受信する(S41)と、物理チャネル信号処理リソース毎に故障判定を実施する(S42)。
【0049】
ベースバンド信号処理カード101のBER測定機能部202は、BER測定を実施している信号復号処理リソースに対し、BER測定結果を要求する。BER測定を実施している信号復号リソースは、BER測定機能部202に対し、BER測定結果(信号受信数、信号受信NG数)を送信する。BER測定機能部202は、受信したBER測定結果をBER測定結果管理テーブル232に保存する。
【0050】
ベースバンド信号処理カード101の故障判定機能部204は、収集した物理チャネル信号処理リソース毎のBER測定結果より、故障を判定する。最初に、BER測定結果の信号受信数が完了率判定閾値β以上か否かを判断する(S421)。
【0051】
信号受信数が完了率判定閾値β未満の場合は、BER測定のサンプル数が少ないため、正確な判断ができないと考えられる。そのため、この場合は、その物理チャネル信号処理リソースは「リソース積算中」であると判断する(S422)。
【0052】
信号受信数が完了率判定閾値β以上の場合は、BER測定のサンプル数が十分なため、故障判定の対象となる。このとき、信号受信NG数が信号受信数以上の場合は、その物理チャネル信号処理リソースを「異常リソース」と判断する。信号受信NG数が信号受信数未満の場合は、その物理チャネル信号処理リソースを「正常リソース」と判断する(S423)。
【0053】
上記したリソース毎の故障判定をまとめると、次のようになる。
【0054】
信号受信数 < 完了率判定閾値β : リソース積算中
信号受信数 ≦ 信号受信NG数 : 異常リソース
信号受信数 > 信号受信NG数 : 正常リソース
図12は、リソース毎の故障判定をまとめたテーブルを示す図である。この判定を、物理チャネル信号処理リソース毎に実施し、集計する。
【0055】
ここで、信号受信数とは、そのリソースが受信した信号のすべての数である。また、信号受信NG数とは、受信した信号のうち、正確に受信できなかったものの数である。よって、信号受信NG数が信号受信数以上になることは通常起こりえないことである。従って、信号受信NG数が信号受信数以上になったときは、物理チャネル信号処理リソースに異常が発生したとみなす。
【0056】
故障判定監視周期αと完了率判定閾値βとは、ユーザ信号の秒間トラフィック(データ量)から、適切に定義する。
【0057】
(カード故障判定)
図11に戻って、ベースバンド信号処理カード101は、物理チャネル信号処理リソース毎の判定結果を集計し、ベースバンド信号処理カードのカード故障判定を実施する(S43)。
【0058】
異常リソースが1以上存在する場合(S431;Yes)は、そのベースバンド信号処理カード101は「カード異常」であると判断する(S432)。異常リソースがなく、正常リソースが1以上存在する場合(S433;Yes)は、そのカードは「カード正常」であると判断する(S434)。また、異常リソース及び正常リソース共に存在しない場合(S433;No)は、そのカードは「カード積算中」であると判断する(S435)。
【0059】
上記したカード故障判定をまとめると、次のようになる。
【0060】
異常リソース数 ≧ 1 : カード異常
異常リソース数 = 0 かつ 正常リソース数 ≧ 1 : カード正常
異常リソース数 = 0 かつ 正常リソース数 = 0 : カード積算中
図13は、カード故障判定をまとめたテーブルを示す図である。図11に戻って、各ベースバンド信号処理カード101は、このカード故障判定を実施し、「カード異常」か「カード正常」か「カード積算中」かの故障判定結果を、装置監視カード103に送信する(S44)。
【0061】
(故障カードALM化判定)
図10において、装置監視カード103は、各ベースバンド信号処理カード101からの故障判定結果を受信すると、それを保存する。
【0062】
装置監視カード103は、報告待ちタイマが所定時間に達するか、すべてのベースバンド信号処理カード101から故障判定結果を受信した(S33)後に、故障カードALM化判定を実施する(S34)。
【0063】
装置監視カード103は、故障判定結果において「カード積算中」以外のベースバンド信号処理カード101の数が3以上か否かを判断する(S341)。
【0064】
「カード積算中」のベースバンド信号処理カード101の数が3未満の場合(S341;No)は、装置監視カード103は、周期タイマが所定の時間を経過するのを待った後、故障監視を繰り返す。
【0065】
「カード積算中」のベースバンド信号処理カード101の数が3以上の場合(S341;Yes)は、装置監視カード103は、「カード正常」のベースバンド信号処理カードが2以上かつ「カード異常」のベースバンド信号処理カードが1であるか否かを判断する(S342)。
【0066】
「カード正常」が2以上かつ「カード異常」が1である場合(S342;Yes)は、その「カード異常」のベースバンド信号処理カード101は、故障していると判断される。よって、そのベースバンド信号処理カード101は、ALM化対象となる(S343)。
【0067】
装置監視カード103は、ALM化対象となったベースバンド信号処理カード101に対し、ALM化を指示する。これにより、該当ベースバンド信号処理カード101のALM化が実施される。
【0068】
「カード正常」が2未満又は「カード異常」が1でない場合(S342;No)は、ALM化の実施を行わない。「カード異常」がない場合は、ALM化の対象となるカードが無いからである。「カード異常」が2以上の場合は、無線区間の不良であるとみなして、
ALM化の実施をしない。同時に複数のベースバンド信号処理カード101が故障することは、可能性は非常に低いからである。また、「カード正常」が複数存在する時をALM化対象とすることで、無線状況による受信品質劣化による誤判断を回避することができる。
【0069】
図14は、故障カードALM化判定のテーブルを示す図である。
【0070】
(BER測定結果リセット)
その後、装置監視カード103は、ベースバンド信号処理カード101に対し、BER測定結果の積算リセットを実施する(S35)。新たにBER測定を実施するためである。装置監視カード103は、ベースバンド信号処理カード101に、リセット要求を送信する(S351)。
【0071】
図11において、ベースバンド信号処理カード101は、装置監視カード103からリセット要求を受信する(S45)と、リソース毎にリセットをするか否かを判定する(S46)。
【0072】
ベースバンド信号処理カード101は、リソース毎に信号受信数が完了率判定閾値β以上か否かを判定する(S461)。信号受信数が完了率判定閾値β以上の場合(S461;Yes)は、BER測定機能部202で管理されるBER測定結果管理テーブル232の信号受信数及び信号受信NG数を0にリセットする(S462)。信号受信数が完了率判定閾値β未満の場合は、何もしない。
【0073】
監視カード103は、ベースバンド信号処理カード101に対し、リセット要求を送信すると、一定時間(所定時間)の経過待ちを行う(S36)。周期タイマが所定時間(一定時間)を経過すると、再び故障監視を開始する。このとき、ALM化したベースバンド信号処理カード101に対しては、故障監視を行わない。
【0074】
(呼処理割り当て回避)
図15は、呼処理割り当て回避のシーケンスを示す図である。
【0075】
装置監視カード103が、呼処理制御カード102に対し、ALM化したベースバンド信号処理カード101を、ベースバンド信号処理カード番号などで、通知する(S51)。呼処理制御カード102は、該当ベースバンド信号処理カードの呼処理割り当て管理テーブル132の状態を「使用不可」状態とする(S52)。
【0076】
呼処理割り当て管理テーブル132は、ユーザ回線設定時に割り当てベースバンド信号処理カードを決定するために参照されるため、「使用不可」状態であれば、該当ベースバンド信号処理カードに呼設定されることが回避される。
【0077】
〈実施形態の作用効果〉
本実施形態によると、故障カードを検出し、該当ベースバンド信号処理カードをALM化し、かつ、呼処理制御カードへ通知することで、故障カードに対する呼処理リソース割り当てを回避することが可能となり、故障カードに依存せず、継続運用を可能とさせている。また、装置監視カードで「カード異常」1枚時をALM化対象とすることにより、複数枚ALM化による呼処理リソース不足等を回避し、無線基地局装置として継続運用を可能としている。
【0078】
また、本実施形態によると、運用中にユーザ信号に対し、常時BER測定を実施することにより、運用中のベースバンド信号処理カード故障の早期検出を可能としている。
【0079】
さらに、本実施形態では、故障判定にBER測定結果を元に実施しているが、無線状況によりBERは劣化する為、故障の判断が非常に困難である。本実施形態によれば、ベースバンド信号処理カード、及び、装置監視カード双方にて故障判定を実施させ、各々の論理を用いることにより、判定の信頼性を向上させることができる。
【0080】
〔その他〕
上記した実施形態は、以下の発明を開示する。以下の発明は、必要に応じて適宜組み合わせることができる。
【0081】
(付記1)
複数の信号処理部を備える無線基地局装置であって、
前記信号処理部は、
受信ベースバンド信号中の物理チャネルに対する処理を行う、複数の物理チャネルリソースを有する物理チャネル信号処理部と、
前記複数の物理チャネルリソースの1つと対応付けられ、その物理チャネルリソースからの入力信号に対する信号復号処理をそれぞれに行う、複数の信号復号処理リソースを有する信号復号処理部と、を備え、
前記複数の信号復号処理リソース毎に、前記入力信号のビットエラーレートを測定する、
無線基地局装置。(1)
(付記2)
前記信号処理部は、
前記物理チャネルリソースの1つと前記信号復号処理リソースの1つとを対応付けを記録する第1の記録部と、
前記物理チャネルリソース毎に前記ビットエラーレート測定結果を記録する第2の記録部と、
前記第1の記録部を参照し、前記ビットエラー測定結果を前記物理チャネルリソース毎に前記第2の記録部に積算して記録するビットエラー測定機能部と、
を備える、
付記1に記載の無線基地局装置。(2)
(付記3)
前記信号処理部は、
一定時間毎に前記第2の記録部を参照して、前記物理チャネルリソースの異常を判定する判定部、
を備える、
付記2に記載の無線基地局装置。
【0082】
(付記4)
前記信号処理部の前記判定部は、
異常と判定された物理チャネルリソースが存在する場合、自信号処理部が異常であると判定する、
付記3に記載の無線基地局装置。
【0083】
(付記5)
装置監視部をさらに備え、
前記装置監視部は、前記信号処理部による異常判定結果を記録する、
付記4に記載の無線基地局装置。
【0084】
(付記6)
前記装置監視部は、前記信号処理部による前記異常判定結果に基づいて、故障している信号処理部を判定する、
付記5に記載の無線基地局装置。
【0085】
(付記7)
前記装置監視部は、
前記信号処理部による前記異常判定結果が、正常である信号処理部が2以上、かつ、異常である信号処理部が1である場合、
前記異常である信号処理部が故障していると判断し、
その他の場合は、信号処理部は故障していないと判断する、
付記6に記載の無線基地局装置。
【0086】
(付記8)
前記装置監視部は、前記故障している信号処理部に対し、アラーム化を指示する、
付記7に記載の無線基地局装置。
【0087】
(付記9)
呼設定を行い、呼処理割り当て管理テーブルを有する呼処理制御部を備え、
前記装置監視部は、前記故障している信号処理部を、呼処理制御部に通知し、
前記呼処理制御部は、
通知された前記故障している信号処理部を、呼処理割り当て管理テーブルに記録し、
前記故障している信号処理部に対し、呼処理割り当てを行わない、
付記8に記載の無線基地局装置。
【0088】
(付記10)
受信ベースバンド信号中の物理チャネル信号に係る処理をそれぞれ行う複数の物理チャネル信号処理部と、各物理チャネル信号処理部との組をなし、対応する物理チャネル信号処理部の処理結果としての信号を格納する複数の格納部と、前記物理チャネル信号処理部及び格納部の組の1つと関連付けられ、関連付けられた格納部に格納された信号に対する復号処理をそれぞれ行う複数の信号復号処理部とを有する複数の信号処理部と、
前記各信号復号処理部で処理される信号のビットエラーレートをそれぞれ測定する測定部と、
前記ビットエラーレートの測定結果に基づいて、各信号復号処理部と関連する格納部及び物理チャネル信号処理部の組が正常か異常かを判定する判定部とを備え、
前記判定部において、異常と判定された組が1以上ある場合に、自装置が異常であると判定する
ベースバンド信号処理装置。(3)
(付記11)
前記判定部は、前記ビットエラーレートの測定結果として、前記信号復調部での信号受信失敗数が前記格納部での信号受信数以上である場合に、当該格納部に係る組が異常であると判定する
付記10に記載のベースバンド信号処理装置。
【0089】
(付記12)
呼設定要求時に、前記組の1つが呼設定要求に応じた受信回線に割り当てられるとともに、前記信号復号処理部の1つが当該組の1つと関連付けられ、この関連付けられた信号復号処理部に対するビットエラーレートの測定を開始し、その後にリセット要求を受信するまでの間、ビットエラーレートの測定を継続する
付記10又は11に記載のベースバンド信号処理装置。(4)
(付記13)
前記判定部は、周期的に発行される故障判定要求に応じて前記判定処理を行う
付記10乃至12のいずれか1つに記載のベースバンド信号処理装置。
【0090】
(付記14)
受信ベースバンド信号中の物理チャネル信号に係る処理をそれぞれ行う複数の物理チャネル信号処理部と、各物理チャネル信号処理部と組をなし、対応する物理チャネル信号処理部の処理結果としての信号を格納する複数の格納部と、前記物理チャネル信号処理部及び格納部との1つと関連付けられ、関連付けられた格納部に格納された信号に対する信号処理をそれぞれ行う複数の信号復号処理部とを有する複数の信号処理部と、前記各信号復号処理部で処理される信号のビットエラーレートをそれぞれ測定する測定部と、前記ビットエラーレートの測定結果に基づいて、各信号復号処理部と関連する格納部及び物理チャネル信号処理部の組が正常か異常かを判定する判定部とを備え、前記判定部において異常と判定された組が1以上ある場合に、自装置が異常である旨の故障判定結果を出力する複数のベースバンド信号処理部と、
前記複数のベースバンド信号処理部の1つを用いて、呼設定要求に応じた受信回線を設定する呼処理制御部と、
所定タイミングで前記各ベースバンド信号処理部に対して呼判定結果要求を与え、前記各ベースバンド信号処理部から前記故障判定結果要求に対する前記故障判定結果を受け取り、複数のベースバンド信号処理部の1つのみが異常である旨の故障判定結果を得た場合に、その異常の故障判定結果を出力したベースバンド信号処理部を異常アラーム出力状態に遷移させるとともに、異常アラーム出力状態に遷移させたベースバンド信号処理部の識別情報を前記呼処理制御部に通知する装置監視部とを備え、
前記呼処理制御部は、前記装置監視部から前記通知を受け取った後に、新たな呼設定要求が生じた場合には、通知を受けたベースバンド信号処理部を除く複数のベースバンド信号処理部の1つを用いて受信回線を設定する
基地局装置。(5)
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】無線基地局装置の構成例を示す図である。
【図2】無線基地局装置のベースバンド信号処理カードの構成例を示す図である。
【図3】無線基地局装置のベースバンド信号処理カードのハードウェア構成例を示す図である。
【図4】呼処理割り当て管理テーブルの例を示す図である。
【図5】リソース管理テーブルの例を示す図である。
【図6】BER測定結果管理テーブルの例を示す図である。
【図7】BER測定のシーケンスの例を示す図である。
【図8】ベースバンド信号処理カードの故障判定のシーケンスの例を示す図である。
【図9】ベースバンド信号処理カードの故障判定のシーケンスの例を示す図である。
【図10】ベースバンド信号処理カードの故障判定の動作フロー(装置監視カード側)を示す図である。
【図11】ベースバンド信号処理カードの故障判定の動作フロー(ベースバンド信号処理カード側)を示す図である。
【図12】リソース毎の故障判定のテーブルを示す図である。
【図13】カード故障判定のテーブルを示す図である。
【図14】故障カードALM化判定のテーブルを示す図である。
【図15】呼処理割り当て回避のシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0092】
100 無線基地局装置
101 ベースバンド信号処理カード
102 呼処理制御カード
103 装置監視カード
132 呼処理割り当て管理テーブル
202 BER測定機能部
204 故障判定機能部
206 ハードウェア呼処理制御機能部
208 ハードウェアリソース管理機能部
210 カード間信号送受信機能部
222 物理チャネル信号処理部
224 メモリ
226 信号復号処理部
232 BER測定結果管理テーブル
238 リソース管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号処理部を備える無線基地局装置であって、
前記信号処理部は、
受信ベースバンド信号中の物理チャネルに対する処理を行う、複数の物理チャネルリソースを有する物理チャネル信号処理部と、
前記複数の物理チャネルリソースの1つと対応付けられ、その物理チャネルリソースからの入力信号に対する信号復号処理をそれぞれに行う、複数の信号復号処理リソースを有する信号復号処理部と、を備え、
前記複数の信号復号処理リソース毎に、前記入力信号のビットエラーレートを測定する、
無線基地局装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記物理チャネルリソースの1つと前記信号復号処理リソースの1つとを対応付けを記録する第1の記録部と、
前記物理チャネルリソース毎に前記ビットエラーレート測定結果を記録する第2の記録部と、
前記第1の記録部を参照し、前記ビットエラー測定結果を前記物理チャネルリソース毎に前記第2の記録部に積算して記録するビットエラー測定機能部と、
を備える、
請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
受信ベースバンド信号中の物理チャネル信号に係る処理をそれぞれ行う複数の物理チャネル信号処理部と、各物理チャネル信号処理部との組をなし、対応する物理チャネル信号処理部の処理結果としての信号を格納する複数の格納部と、前記物理チャネル信号処理部及び格納部の組の1つと関連付けられ、関連付けられた格納部に格納された信号に対する復号処理をそれぞれ行う複数の信号復号処理部とを有する複数の信号処理部と、
前記各信号復号処理部で処理される信号のビットエラーレートをそれぞれ測定する測定部と、
前記ビットエラーレートの測定結果に基づいて、各信号復号処理部と関連する格納部及び物理チャネル信号処理部の組が正常か異常かを判定する判定部とを備え、
前記判定部において、異常と判定された組が1以上ある場合に、自装置が異常であると判定する
ベースバンド信号処理装置。
【請求項4】
呼設定要求時に、前記組の1つが呼設定要求に応じた受信回線に割り当てられるとともに、前記信号復号処理部の1つが当該組の1つと関連付けられ、この関連付けられた信号復号処理部に対するビットエラーレートの測定を開始し、その後にリセット要求を受信するまでの間、ビットエラーレートの測定を継続する
請求項3に記載のベースバンド信号処理装置。
【請求項5】
受信ベースバンド信号中の物理チャネル信号に係る処理をそれぞれ行う複数の物理チャネル信号処理部と、各物理チャネル信号処理部と組をなし、対応する物理チャネル信号処理部の処理結果としての信号を格納する複数の格納部と、前記物理チャネル信号処理部及び格納部との1つと関連付けられ、関連付けられた格納部に格納された信号に対する信号処理をそれぞれ行う複数の信号復号処理部とを有する複数の信号処理部と、前記各信号復号処理部で処理される信号のビットエラーレートをそれぞれ測定する測定部と、前記ビットエラーレートの測定結果に基づいて、各信号復号処理部と関連する格納部及び物理チャネル信号処理部の組が正常か異常かを判定する判定部とを備え、前記判定部において異常
と判定された組が1以上ある場合に、自装置が異常である旨の故障判定結果を出力する複数のベースバンド信号処理部と、
前記複数のベースバンド信号処理部の1つを用いて、呼設定要求に応じた受信回線を設定する呼処理制御部と、
所定タイミングで前記各ベースバンド信号処理部に対して呼判定結果要求を与え、前記各ベースバンド信号処理部から前記故障判定結果要求に対する前記故障判定結果を受け取り、複数のベースバンド信号処理部の1つのみが異常である旨の故障判定結果を得た場合に、その異常の故障判定結果を出力したベースバンド信号処理部を異常アラーム出力状態に遷移させるとともに、異常アラーム出力状態に遷移させたベースバンド信号処理部の識別情報を前記呼処理制御部に通知する装置監視部とを備え、
前記呼処理制御部は、前記装置監視部から前記通知を受け取った後に、新たな呼設定要求が生じた場合には、通知を受けたベースバンド信号処理部を除く複数のベースバンド信号処理部の1つを用いて受信回線を設定する
基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−85568(P2008−85568A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262358(P2006−262358)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】