説明

無線機およびコンピュータプログラム

【課題】アマチュア無線の無線機において、簡単な構成により「受信履歴」に時刻情報を含めるようにする。
【解決手段】無線機1は、受信したパケットのヘッダ部から送信先および送信元を識別する識別子に関する情報(コールサイン)を取り出して、その内容を解析するコントローラ21を備えている。コントローラ21は、受信した無線信号についての識別子情報と、無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを不揮発性メモリ25に格納すると共に、操作部26から入力されたユーザの指示に従い、不揮発性メモリ25に格納された履歴情報を「受信履歴」として表示部28に表示する。コントローラ21は、不揮発性メモリ25に無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されていない場合には、代わりに無線信号を受信した時点からの経過時間を表示部28に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声通信を採用した無線機、およびその無線機の機能を実現するコンピュータプログラムに関する
【背景技術】
【0002】
近年、例えばアマチュア無線の世界において、より高速の通信を実現し、またクリアな音声での交信を楽しむために、音声通信のデジタル化とネットワーク化が普及しつつある。アマチュア無線のデジタル音声通信においては、音声信号は符号化されてデジタル信号に変換され、パケット化された後に送信される。
【0003】
そして音声信号がパケット化され、かつパケットのヘッダ部に送信先、送信元のコールサイン等を示すデータが付加されたことに伴い、アナログ音声通信ではできなかった多くの機能を実現できるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
アマチュア無線のデジタル音声通信化に伴って実現された機能の1つに「受信履歴」がある(例えば、非特許文献1)。この機能により、過去に受信した無線信号について、無線信号を送信した局や呼び出された局のコールサインを確認できる。
【0005】
更に、「受信履歴」によって無線機のユーザは、席を離れた時に受信した無線信号について送信元のコールサインを確認できるため、必要に応じて送信元の局と交信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−186816号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アイコム株式会社製トランシーバーID−92取扱説明書(96ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の「受信履歴」には、無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が含まれていなかったため、受信日時を確認したいユーザの要望に応えることができなかった。
【0009】
一方、デジタル音声通信を採用した無線機は、GPSレシーバを接続することによって、無線機の位置に関する情報(緯度・経度)を入手することができる。そしてこの情報には、緯度および経度を測定した時点の時刻に関する情報(年/月/日/時刻)が含まれている。従って、無線機に、時刻情報を読み取るソフトウェアがインストールされたパソコンを接続すれば、時刻情報を含む「受信履歴」をパソコンの画面に表示できる。
【0010】
しかし、無線機とパソコンを接続して使用することは不便であり、特に携帯型の無線機の場合には、パソコンを接続して使用すること自体が困難である。
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、パソコン等の外部機器を接続することなく、時刻情報を含む「受信履歴」を簡単に実現できる無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明にかかる無線機は、受信した無線信号を復調してパケットを再生し、このパケットに含まれる音声信号を復号化およびD/A変換してアナログ音声信号を再生する無線機であって、
前記パケットのヘッダ部から送信先および送信元を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラを備え、
前記コントローラは、受信した無線信号についての前記識別子に関する情報と、外部から時刻に関する情報を入手可能な場合は、その情報に基づいて作成された無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを、履歴情報としてメモリに格納すると共に、
操作部から入力されたユーザの指示に従い、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されているときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを表示部の画面に表示し、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されていないときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点からの経過時間を示す情報とを前記表示部の画面に表示することを特徴とする無線機。
【0013】
ここで、前記外部から入手可能な時刻に関する情報は、GPSレシーバの出力信号から取り出されることが好ましい。また前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報は、不揮発性メモリに格納されることが好ましい。
【0014】
また本発明にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータを、
A/D変換され符号化された音声信号を含むパケットのヘッダ部から送信先および送信元を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラとして機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コントローラは、受信した無線信号についての前記識別子に関する情報と、外部から時刻に関する情報を入手可能な場合は、その情報に基づいて作成された無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを、履歴情報としてメモリに格納すると共に、
操作部から入力されたユーザの指示に従い、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されているときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを表示部の画面に表示し、
前記メモリに無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されていないときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点からの経過時間を示す情報とを前記表示部の画面に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無線機は「受信履歴」に時間に関する情報が含まれているため、画面に表示された「受信履歴」により、いつ頃受信した無線信号であるかを簡単に確認できる。
【0016】
特に、GPSレシーバの出力から時刻情報が取り出せる場合には、年月日を含む時刻情報が「受信履歴」に含まれるため、正確な受信時刻を確認できる。
【0017】
一方、無線機にGPSレシーバが接続されていない場合、もしくは接続されていても、その出力から時刻情報を取り出せない場合には、無線信号を受信した時点からの経過時間が「受信履歴」に含まれ、この経過時間がコールサイン等と共に表示される。結果として、無線信号を受信してからどの程度経過したかを確認できるため、受信時刻を確認したいユーザの要望に十分応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかる無線機の構成を示すブロック図である。
【図2】無線機によって送信されるパケットの構成を示す図である。
【図3】「受信履歴」に含まれるデータの一例をテーブルとして示した図である。
【図4】表示部の画面に表示された「受信履歴」の例を示した図である。
【図5】「受信履歴」を作成する際の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態にかかる無線機について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<無線機の構成>
図1に、デジタル音声通信を採用した本実施の形態にかかる無線機の構成を示す。無線機1は、マイク11、スピーカ12、AF増幅器13、音声コーデック14、送信部15、送受切替部16、アンテナ17、受信部18、インターフェース部19、コントローラ21、操作部26および表示部28で構成されている。図中、太線の矢印は音声信号やデータの流れを示し、細線の矢印は制御系統の信号の流れを示している
【0021】
マイク11は、送信用の音声を入力としてアナログ音声信号を生成し、その音声信号をAF増幅器13に出力する。一方、スピーカ12は、AF増幅器13から出力されたアナログ音声信号を音声に変換する。
【0022】
AF(Audio Frequency)増幅器13は、マイク11から入力されたアナログ音声信号を増幅して音声コーデック14に供給する。また、音声コーデック14から供給された受信音声のアナログ音声信号を増幅してスピーカ12に出力する。
【0023】
音声コーデック14は、AF増幅器13から供給されたアナログ音声信号をA/D(アナログデジタル)変換および符号化して送信部15に出力する。また音声コーデック14は、受信部18から供給されたデジタル音声信号を復号化し、更にD/A(デジタルアナログ)変換した後、AF増幅器13に出力する。
【0024】
送信部15は、音声コーデック14から供給されたデジタル音声信号に無線通信用のヘッダを付すと共に、後述するPTTスイッチ27の出力に基づいて分割し、図3に示す送信用のパケットを生成する。送信部15は更に、パケットを構成するデジタルデータで搬送波を変調し、必要に応じて周波数変換を行い、送受切替部16を介してアンテナ17から送信する。パケットの構成については、後に図2を用いて詳述する。
【0025】
送受切替部16は、PTTスイッチ27が押されてオンになると送信部15からの送信信号をアンテナ17に導き、PTTスイッチ27が放されてオフになるとアンテナ17の受信信号を受信部18に導く。
【0026】
受信部18は、コントローラ21からの指示に従って受信周波数を切り替え、受信周波数に同調して増幅し、更に受信信号を復調してパケットを再生する。そして再生したパケットからヘッダ部を取り除き、音声データについては音声コーデック14に供給し、その他のデータ(例えば、イーサネット[登録商標]に準拠したパケット)についてはインターフェース部19に供給する。
【0027】
インターフェース部19は外部接続端子20に接続され、GPSレシーバ29等の外部機器から供給されるパケットを送信部15に供給する。またインターフェース部19は、受信部18から供給されたパケットを、外部接続端子20を介して外部機器(パソコン等)に供給する。
【0028】
コントローラ21は無線機1の動作を制御する。コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)22、CPU22の動作を規定するプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)23、CPU22のワークメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)24、および「受信履歴」のデータを格納する不揮発性メモリ25を備えている。
【0029】
操作部26は、種々の入力やユーザの指示をコントローラ21に伝達する。操作部26にはPTT(Pres To Talk)スイッチ27が含まれている。PTTスイッチ27は、押す(オンにする)と送受切替部16が送信側に切り替わってアンテナ17から送信が行われ、放す(オフにする)と、送受切替部16が受信側に切り替わって受信した音声信号の再生が行われる。
【0030】
表示部28は液晶ディスプレイ等で構成され、種々のデータを表示するのに用いられる。表示部28の画面には、無線機1がアマチュア無線信号を受信したこと(呼び出しがあったこと)や、送信元(自局)や送信先(相手局)のコールサイン、ニックネーム等が表示される。
【0031】
次に、図1の無線機1を用いたアマチュア無線システムについて簡単に説明する。このシステムにおいては、複数の無線機1をカバーするエリア毎にレピータが設置されており、隣接するレピータ間は、マイクロ波を使用して音声およびデータが多重化された状態で送信される。また複数のレピータで結ばれたサービスエリアをゾーンといい、複数のゾーンの間は、ゲートウェイを介してインターネットで結ばれている。
【0032】
上述のアマチュア無線システムを用いれば、以下に示すような様々な形態の交信を実現できる。
(1)各エリア内での無線機1同士の直接の交信
(2)各エリア内での無線機1同士のレピータを介した交信
(3)同一ゾーン内の異なるエリアの無線機1同士のレピータを介した交信
(4)異なるゾーンの無線機1同士のゲートウェイとインターネットを介した交信
【0033】
<パケットの構成>
次に、図2を参照して、送信部15で生成されるパケットの構成を説明する。パケットの構成は、デジタル音声通信の一連のデータをどのような順番でどのようにまとめて送信するかを示したものである。
【0034】
パケットPaは、ヘッダ部Phとデータ部Pdとで構成されている。ヘッダ部Phには、同期信号h1、フラグh2、送り先レピータのコールサインh3、送り元レピータのコールサインh4、送信先コールサインh5、送信元コールサインh6が含まれる。
【0035】
ヘッダ部Phのうち同期信号h1は入力信号の同期をとり、またこれより信号であることを表す信号である。フラグh2は、レピータ経由通信、直接通信、レピータ制御信号等を表すデータであり、複数ビットのデータで構成されている。
【0036】
送り先レピータのコールサインh3は、例えば送信先の無線機が属するエリア内のレピータのコールサイン、送り元レピータのコールサインh4は送信元の無線機が属しているレピータのコールサインである。また送信先コールサインh5は、送信する相手局の無線機のコールサイン、送信元コールサインh6は、自局の無線機のコールサインである。これらのコールサイン(h3〜h6)は、送信先および送信元の無線機、更には無線信号を中継するレピータを識別するための識別子としての役割を果たす。なお送信先コールサインh5については、不特定局を呼び出すCQとしてもよい。
【0037】
データ部Pdは、デジタル化された音声フレームd1と、小さな静止画やメモ等のデータを含むデータフレームd2が交互に配置され、最後にパケットの終わりを示す終話フレームd3が付加されている。
【0038】
<アマチュア無線の交信動作>
次に、図1および図2を参照して、アマチュア無線の交信動作を説明する。以下、代表的なケースとして、任意のエリア内の無線機1aの局が異なるエリア内の無線機1bの局を呼び出す場合について説明する。
【0039】
ユーザは交信に先立ち、無線機1aの操作部26を操作して、交信に必要な情報、例えば送信元(自局)コールサインや送り元レピータのコールサインを、不揮発性メモリ25に格納しておく。
【0040】
最初に、ユーザは無線機1aの操作部26を操作し、送信先の無線機1bに予め割り当てられたコールサインおよび送り先レピータのコールサインを指定して、呼び出しを指示する。
【0041】
操作部26から入力された情報は、コントローラ21によって送信部15に通知され、コントローラ21の指示に従って、送信部15でパケットが生成される。図2に示したようにパケットPaのヘッダ部Pdには、送り先レピータのコールサインh3、送り元レピータのコールサインh4、送信先(相手局)である無線機1bのコールサインh5、および送信元(自局)である無線機1aのコールサインh6の各情報が含まれる。
【0042】
送信部15で生成され無線信号に変換されたパケットは、送受切替部16およびアンテナ17を介して送信される。無線機1aから送信されたパケットは、指定された経路にあるレピータによって中継され、無線機1bに到達する。
【0043】
無線機1bで受信した無線信号は、アンテナ17および送受切替部16を介して受信部18に供給され、受信部18で復調されてパケットが再生される。更に、受信部18で再生されたパケットからヘッダ部が取り除かれ、データ部の内容に応じて音声コーデック14またはインターフェース部19に供給される。
【0044】
音声コーデック14に供給された音声データは復号化され、さらにアナログの音声信号に変換されてAF増幅器13に供給される。AF増幅器13で増幅された音声信号はスピーカ12から出力され、送信元のユーザの声が再生される。
【0045】
また受信部18で再生されたパケットは、コントローラ21に供給される。コントローラ21のCPU22は、ECC(Error Check Code)チェックなどにより、受信したパケットが有効なパケットであるか否かを判別する。
【0046】
CPU22は、有効と判別されたパケットのヘッダ部のデータをRAM24に格納すると共に、ヘッダ部の情報を解析する。CPU22は、解析結果に基づいて、受信したパケットの送信先コールサインや送信元コールサインを表示部28に表示する。
【0047】
<「受信履歴」に含まれるデータ>
次に、図3を参照して、「受信履歴」に含まれるデータについて説明する。図3のテーブルTaは「受信履歴」に含まれるデータの一例を示したものであり、これらのデータはコントローラ21の不揮発性メモリ25に格納される。一方、テーブルTbは、テーブルTaの各「受信履歴」に対応したカウンタのカウント数と計時中フラグの一例を示したものであり、これらのデータはRAM24に格納される。
【0048】
テーブルTaには3種類のデータD1〜D3が含まれている。データD1は受信の順番を示し、古い履歴ほど若い番号が付与されている。
【0049】
データD2は、コールサインとメッセージである。前述の図2で説明したように、受信したパケットPaのヘッダ部Phには、送り先レピータのコールサインh3、送り元レピータのコールサインh4、送信先コールサインh5、送信元コールサインh6が含まれている。これらのコールサインがデータD2に含まれる。またデータD2には、コールサイン以外に、パケットPaのデータフレームd2内のメッセージが含まれる。
【0050】
前述の非特許文献1に記載された「受信履歴」にはデータD1とD2の情報が含まれていたが、本発明の「受信履歴」には更に時刻情報のデータD3が含まれている。時刻情報は、例えば、テーブルTaの1行目に示した「2010/6/10 15:10」のように、年月日および時刻を含む情報である。
【0051】
無線機1の外部接続端子20(図1参照)にGPSレシーバ29が接続され、インターフェース部19でGPSセンテンスを含むパケットを受信している場合には、GPSセンテンスから時刻情報が読み出されて不揮発性メモリ25に格納される。
【0052】
GPSレシーバ29から出力されるGPSセンテンスには、緯度・経度に関する情報と共に、緯度・経度を測定した時点の時刻情報(年月日および時刻)が含まれている。コントローラ21は、インターフェース部19で受信したGPSセンテンスのパケットからこれらの情報を取り出し、緯度・経度情報については、操作部26に入力されたユーザの指示に従って表示部28に表示し、時刻情報(年月日および時刻)については不揮発性メモリ25に格納する。
【0053】
一方、外部接続端子20にGPSレシーバ29が接続されていない場合、もしくは接続されていてもインターフェース部19がGPSセンテンスを含むパケットを受信できない場合には、時刻情報を入手できないため、テーブルTaの3行目および4行目に示すように、不揮発性メモリ25に時刻情報がないことを示すデータが格納される。
【0054】
本発明では、このような場合に、無線信号を受信部18で受信した時点からの経過時間を計数し、テーブルTbに示すように「受信履歴」にその経過時間を加えるようにしている。
【0055】
具体的には、コントローラ21は、他局からの無線信号を受信した時点で、内蔵のカウンタの動作を開始する。そしてテーブルTaのD3に「なし」のデータが含まれている場合には、テーブルTbのデータD5のフラグを、計時中であることを示す“1”に設定すると共に、データD4にカウンタのカウント数を格納する。本実施の形態では、カウンタは3秒ごとにカウントアップされるため、テーブルTbのデータD4の3行目のカウント値「600」は、無線信号を受信してから30分経過したことを示している。
【0056】
上述したように、テーブルTaのデータD3に年月日および時刻に関する情報が含まれている場合には、「受信履歴」にその情報が含まれる。これに対し、データD3に「なし」の情報が含まれている場合には、カウンタによって計数された受信時点からの経過時間を示す情報が「受信履歴」に含まれる。
【0057】
なお、本実施の形態では、GPSレシーバ29から時刻に関する情報を取り出したが、GPSレシーバ29の代わりに電波時計を外部接続端子20に接続し、その電波時計から時刻に関する情報を取り出すようにしてもよい。この場合、電波時計から出力されるパケットに時刻に関する情報を含める必要がある。
【0058】
また、一旦GPSレシーバ29から時刻に関する情報を取得した後、その情報と前述のカウンタのカウント動作とを組み合わせて、コントローラ21内に擬似的なタイマーを生成し、無線信号を受信した時点の時刻を、このタイマーによって算出するようにしてもよい。
【0059】
更に、カウンタにより経過時間を計数している最中に、外部接続端子20にGPSレシーバ29が接続され、GPSセンテンスを含むパケットを受信可能となった場合には、GPSセンテンスに含まれる時刻から計数中のカウンタのカウント値、すなわち経過時間を逆算して無線信号を受信した時点の時刻を算出し、その時刻をテーブルTaのデータD3として不揮発性メモリ25に格納するようにしてもよい。
【0060】
<「受信履歴」の表示例>
図4に、表示部28の画面に表示された「受信履歴」の例を示す。図4(a)は、テーブルTaのデータD3に時刻情報が含まれている場合の例であり、図4(b)は、データD3に時刻情報が含まれていない場合の例である。
【0061】
ユーザが「受信履歴」を見たい場合、操作部26を操作して受信履歴の表示を指示すると、コントローラ21は、不揮発性メモリ25に格納されたテーブルTaのデータおよびRAM24に格納されたテーブルTbのデータを読み出して、表示部29の画面に「受信履歴」を表示する。
【0062】
図4(a)に示すように、テーブルTaのデータD3に時刻情報が含まれている場合、1ページ目の画面P1にコールサインが表示され、2ページ目の画面P2に受信時刻が表示される。ユーザは操作部26の操作により、矢印で示すように、表示部28の画面をP1からP2へ、またP2からP1へ切り換えることができる。
【0063】
画面P1において、上段の「RX CALL SIGN」は「受信履歴」の表示であることを示している。また「CALLER」は送信元コールサイン、「CALLED」は送信先コールサイン、「RXRPT1」は送り元レピータのコールサイン、「RXRPT2」は送り先レピータのコールサインを示す。一方、画面P2において、「YEAR」は年、「DATE」は日付、「TIME」は時刻を示す。
【0064】
図4(b)に示すように、テーブルTaのデータD3に時刻情報が含まれていない場合、1ページ目の画面P1の表示内容は変わらないが、2ページ目の画面P2に信号受信時点からの経過時間が表示される。画面P2において、「TIME」の項に表示された(−0.30)は、信号受信時点から30分経過したことを示している。
【0065】
このように、本実施の形態にかかる無線機1では、「受信履歴」に時間に関する情報が含まれているため、表示画面P2の内容により、いつ頃受信した無線信号であるかを簡単に確認できる。
【0066】
特に、GPSレシーバ29の出力から時刻情報を取り出せる場合には、表示画面P2に年月日を含む時刻情報が表示されるため、正確な受信時刻を確認できる。
【0067】
更に、GPSレシーバが接続されていない場合、もしくは接続されていても、その出力から時刻情報を取り出せない場合には、表示画面P2に無線信号を受信した時点からの経過時間が表示される。結果として、無線信号を受信してからどの程度経過したかを簡単に確認できるため、受信時刻を確認したいユーザの要望に十分応えることができる。
【0068】
なお、図4に示す表示形態は一例であり、これに限定されない。例えば、表示画面が小さい場合には、表示項目毎に画面に表示するようにしてもよい。
【0069】
<「受信履歴」作成の手順>
次に、図5のフローチャートを参照して、「受信履歴」を作成する際の手順を説明する。
【0070】
図5に示す処理の前段階として、受信部18における受信信号の復調とパケットの再生を含む一連の処理を行う必要があるが、これらの処理については説明済みであるため省略する。
【0071】
コントローラ21は、受信部18で再生されたパケットPaのデータをRAM24に格納すると共に(ステップS11)、ヘッダ部Phの情報を解析する(ステップS12)。
【0072】
コントローラ21は、ヘッダ部Phに含まれるコールサイン情報から、そのパケットが、RAM24に格納されている以前に受信したパケットと送信ルートが同じか否かを判定し、送信ルートが同じ場合(ステップS13においてYes)には、以前に受信したパケットに該当する履歴を廃棄(消去)した後(ステップS14)、ステップS15の処理に進む。一方、今回受信したパケットが以前に受信したパケットと送信ルートが異なる場合には(ステップS13においてNo)、そのままステップS15の処理に進む。
【0073】
ステップS13の処理は、同一の相手局と繰り返し交信を行う場合を想定したものであり、このような場合には、「受信履歴」に最新の受信データのみが格納される。
【0074】
次に、コントローラ21は、時刻情報が存在するか否かを確認する(ステップS15)。外部接続端子20にGPSレシーバ29が接続されており、インターフェース部19でGPSセンテンスを含むパケットを受信し、コントローラ21がGPSセンテンスから時刻情報を取り出せる場合には(ステップS16においてYes)、GPSセンテンスから取り出された時刻情報を、コントローラ21は、無線信号を受信した時点の時刻として、コールサインおよびメッセージと共に不揮発性メモリ25に書き込む(ステップS17)。
【0075】
これに対し、外部接続端子20にGPSレシーバ29が接続されていないか、接続されていても時刻情報を取り出せない場合には(ステップS16においてNo)、コントローラ21は、コールサインおよびメッセージを不揮発性メモリ25に書き込んだ後(ステップS18)、ステップS19の処理に進む。
【0076】
コントローラ21は、内蔵のカウンタの値をクリアすると共に計時中フラグに“1”をセットした後(ステップS19)、カウント動作を実行する(ステップS20)。
【0077】
コントローラ21は、カウント数が所定数を超えたか否かを判定し、所定数を超えない場合には(ステップS21でNo)カウントを継続し(ステップS20)、所定数を超えた場合には(ステップS21でYes)、計時中フラグをクリアし(ステップS22)、「受信履歴」の作成処理を終了する。
【0078】
ステップS21の処理を行う理由について説明する。カウント数が所定数を超えた場合に計時中フラグをクリアしないとカウントを継続することになる。しかし2日を超えるような時間、電源が連続してオンになっている場合には、経過時間を表示する意味が薄れ、またカウントできる範囲が有限であることから、カウンタを一旦リセットして電力の消費を押さえる。
【0079】
以上説明したように本発明の無線機1においては、「受信履歴」に時間に関する情報が含まれているため、「受信履歴」の内容を表示部28に表示することにより、いつ頃受信した無線信号であるかを確認できる。更に、外部から時刻情報を入手できない場合であっても、カウンタによりカウントされた、無線信号を受信した時点からの経過時間が画面に表示されるため、無線信号を受信してからどの程度経過したかを簡単に確認できる。
【0080】
なお、上述した実施の形態では、無線機1の電源がオフの場合にデータが消滅しないように、テーブルTaに含まれるデータを不揮発性メモリ25に格納したが、バッテリでバックアップされたRAMに格納するようにしてもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態のコントローラ21の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録媒体(例えばCD−ROM)に記録して配布したり、ネットワークで配信したりしてもよい。このコンピュータプログラムは、コンピュータの記録媒体に記録されインストールされる。
【符号の説明】
【0082】
1 無線機
11 マイク
12 スピーカ
13 AF増幅器
14 音声コーデック
15 送信部
16 送受切替部
17 アンテナ
18 受信部
19 インターフェース部
21 コントローラ
22 CPU
23 ROM
24 RAM
25 不揮発性メモリ
26 操作部
27 PTTスイッチ
28 表示部
Pa パケット
Ph ヘッド部
Pd データ部
Ta、Tb テーブル
D1〜D5 データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線信号を復調してパケットを再生し、このパケットに含まれる音声信号を復号化およびD/A変換してアナログ音声信号を再生する無線機であって、
前記パケットのヘッダ部から送信先および送信元を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラを備え、
前記コントローラは、受信した無線信号についての前記識別子に関する情報と、外部から時刻に関する情報を入手可能な場合は、その情報に基づいて作成された無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを、履歴情報としてメモリに格納すると共に、
操作部から入力されたユーザの指示に従い、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されているときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを表示部の画面に表示し、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されていないときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点からの経過時間を示す情報とを前記表示部の画面に表示することを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記外部から入手可能な時刻に関する情報は、GPSレシーバの出力信号から取り出されることを特徴とする、請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報は、不揮発性メモリに格納されることを特徴とする、請求項1または2に記載の無線機。
【請求項4】
コンピュータを、
A/D変換され符号化された音声信号を含むパケットのヘッダ部から送信先および送信元を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラとして機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コントローラは、受信した無線信号についての前記識別子に関する情報と、外部から時刻に関する情報を入手可能な場合は、その情報に基づいて作成された無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを、履歴情報としてメモリに格納すると共に、
操作部から入力されたユーザの指示に従い、
前記メモリに前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されているときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点の時刻に関する情報とを表示部の画面に表示し、
前記メモリに無線信号を受信した時点の時刻に関する情報が格納されていないときは、前記識別子に関する情報と前記無線信号を受信した時点からの経過時間を示す情報とを前記表示部の画面に表示することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44512(P2012−44512A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184908(P2010−184908)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】