説明

無線通信装置

【課題】処理対象の無線タグと対象外の無線タグとを精度よく選別する。
【解決手段】無線タグから応答されるタグ識別情報受信時の受信感度を検出する。検出された受信感度が予め設定されたしきい値以上か否かを判断する。タグ識別情報受信時の受信感度がしきい値以上であると判定された無線タグを有効として所定の処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信により、複数の無線タグに対してタグ識別情報の問合せを行い、タグ識別情報を応答した無線タグに対して所定の処理を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナを備え、このアンテナの交信領域内に存在する無線タグと電波を利用して無線通信を行うことにより、前記無線タグに実装されたメモリからデータを読み出したり上記メモリにデータを書き込んだりできる無線通信装置が開発され、既に実用化されている。各無線タグのメモリには、固有のID(タグ識別情報)が記憶されている。このため、無線通信装置を介して無線タグのIDを読み取ることにより、無線タグを個々に特定することができる。このような無線タグは、RFID(Radio Frequency Identification)等と称される。また、無線通信装置は、無線タグリーダ・ライタあるいはRFIDリーダ・ライタ等と称される。
【0003】
この種の無線通信装置を用いて無線タグにデータを書き込む場合、先ず、無線通信装置は、無線タグを特定せずに問合せ電波を送信する。すると、この問合せ電波を受信した無線タグは、応答電波を返す。応答電波は、無線タグのメモリに記憶されているIDで変調されている。そこで無線通信装置は、無線タグからの応答電波を受信すると、この応答電波を復調して無線タグのIDを検出する。しかる後、このIDを有する無線タグと1対1の無線通信を行って、データ書込みコマンドを送信する。かくして、この無線タグのメモリに所望のデータが書き込まれる。
【0004】
例えば特許文献1には、この種の無線通信装置を用いた無線タグラベル発行装置(ラベルプリンタ)が開示されている。この装置は、主としてラベル供給手段、無線通信装置、印字手段及び制御手段で構成されている。ラベル供給手段は、帯状の台紙に複数の無線タグラベルを等間隔で一列に貼り付けたラベル用紙(通常はロール状に巻回されている)を先端から繰り出して、無線通信装置のアンテナ交信領域内、さらには印字手段の印字ヘッドとプラテンとの間に無線タグラベルを1枚ずつ順次供給する。無線通信装置は、上記アンテナ交信領域内に供給された無線タグラベルの無線タグと無線通信を行って、この無線タグのメモリに必要な情報を書き込む。印字手段は、上記印字ヘッドとプラテンとの間に供給された無線タグラベルの表面に必要な情報を印字する。制御手段は、1枚の無線タグラベルの無線タグに書き込まれる情報とそのラベルの表面に印字される情報との整合性が確保されるように、ラベル供給手段、無線通信装置及び印字手段を制御する。
【特許文献1】特開2006−338179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信装置が無線通信を利用して無線タグにデータを書き込むには、ある程度の送信電力を必要とする。このため、無線通信装置のアンテナ交信領域は必要以上に広い。その結果、ラベル供給手段により前記アンテナ交信領域内に目的の無線タグを順次供給してその無線タグに必要データを書き込むようにした無線通信装置においては、ラベルの供給間隔によっては必ずしもアンテナの直近に位置する目的の無線タグだけがこのアンテナから放射される問合せ電波に応答するとは限らない。その前後に位置する目的外の無線タグが最初に応答する可能性がある。
【0006】
しかしながら、従来のこの種の無線通信装置においては、問合せ電波に最初に応答した無線タグが目的のものかそれ以外のものかを判別できなかったので、目的外の無線タグが最初に応答した場合には、その無線タグに対してデータの書込みを行っていた。このため、無線タグに書き込まれた情報とラベル表面に印刷された情報との整合性が取られていない無線タグラベルが発行される懸念があった。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、処理対象の無線タグと対象外の無線タグとを精度よく選別できる無線通信装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無線通信により、複数の無線タグに対してタグ識別情報の問合せを行い、タグ識別情報を応答した無線タグに対して所定の処理、例えばデータの書込み処理を行う無線通信装置において、無線タグから応答されるタグ識別情報受信時の受信感度を検出する受信感度検出手段と、この受信感度検出手段により検出された受信感度がしきい値以上か否かを判断する感度判断手段と、この感度判断手段によりタグ識別情報受信時の受信感度が最初にしきい値以上であると判定された無線タグを有効として、この有効とした無線タグに対してのみ所定の処理を行う実行制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる手段を講じた本発明によれば、処理対象の無線タグと対象外の無線タグとを精度よく選別できる無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、各種の物品に物品管理用ラベルとして貼付される無線タグラベルを作成するための無線タグラベル発行装置の無線タグリーダ・ライタに本発明を適用した場合である。はじめに、本実施の形態で使用される無線タグラベル用紙1について、図1乃至図2を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、無線タグラベル用紙1は、帯状の台紙2と、この台紙2の表面に、用紙搬送方向Cに一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数枚の無線タグラベル3とから構成されている。各無線タグラベル3は、図1のA−A矢視断面を拡大する図2に示すように、それぞれラベルシート4の裏面側(台紙2との接着面側)に、ICチップ5とアンテナ6とを薄いフィルムに内蔵してなる無線タグ(RFIDインレット等とも称される)7を取り付けた構造となっている。そして、ラベルシート4の表面を情報の印刷面としている。なお、図2において、符号8,9はいずれも接着剤を示している。
【0012】
無線タグ7のICチップ5は、電源生成部,復調部,変調部,メモリ部及びこれらを制御する制御部等が形成された電子回路部品である。電源生成部は、アンテナ6で受信した電波の整流と安定化を行なうことによりICチップ5の各部に電源を供給する。復調部は、アンテナ6で受信した電波を復調して制御部へ送出する。変調部は、制御部から送出されたデータを電波に変調し、アンテナ6から放射させる。制御部は、復調部で復調されたデータのメモリ部への書込みや、メモリ部からデータを読み出して変調部へ送出する。メモリ部は、データを書換え不能に記憶保持する設定エリアと、任意のデータを書き込み可能なユーザエリアとから構成されている。そして設定エリアには、予め固有のタグ識別情報であるIDが書き込まれている。
【0013】
次に、前記無線タグラベル用紙1を使用し、順次搬送される無線タグラベル3の無線タグ7に無線通信を利用して非接触でデータを書き込むとともに、その無線タグラベル3におけるラベルシート4の表面に必要な情報を非接触で印刷するようにした無線タグラベル発行装置10について説明する。
【0014】
無線タグラベル発行装置10は、ラベルホルダ(不図示)を有しており、このラベルホルダに前記無線タグラベル用紙1がロール状に巻回された状態でセットされる。ラベルホルダから繰り出された無線タグラベル用紙1の先端は、所定の搬送路に沿って剥離ローラ11に導かれる。そして、この剥離ローラ11で台紙2のみが巻回されて無線タグラベル3が剥離される。剥離ローラ11で剥離された無線タグラベル3は、ラベル発行口(不図示)から排出される。剥離ローラ11を巻回した台紙2は、巻取ローラ(不図示)によって巻き取られる。
【0015】
ラベルホルダから剥離ローラ11までの搬送路上には、無線タグラベル用紙1の長手方向の一方向である搬送方向Bの上流側、すなわちラベルホルダ側から下流側、すなわち剥離ローラ11側に向けて順に、ラベルセンサ12、無線タグリーダ・ライタ13のアンテナ14及び印刷ヘッド15が設けられている。
【0016】
ラベルセンサ12は、ラベルホルダから繰り出された無線タグラベル用紙1の無線タグラベル3を検出するものである。例えば、無線タグラベル3の後端エッジを光学的に検知することによって、無線タグラベル3を検出する。
【0017】
アンテナ14は、無線タグリーダ・ライタ13の制御により電波を放射する。また、無線タグラベル3の無線タグ7から放射される電波を受信する。無線タグリーダ・ライタ13は、アンテナ14から放射される電波が到達し得る電波到達領域内に存在する無線タグラベル3の無線タグ7からメモリデータを非接触で読取ったり、当該無線タグ7のメモリ部にデータを非接触で書き込んだりする。
【0018】
印刷ヘッド15は、ヘッド駆動部16により駆動され、無線タグラベル3の表面であるラベルシート4の印刷面に種々の情報を印刷するものである。この種の印刷ヘッド15としては、例えばサーマルヘッドが用いられる。
【0019】
無線タグラベル発行装置10は、前記ラベルセンサ12,無線タグリーダ・ライタ13、アンテナ14、印刷ヘッド15及びヘッド駆動部16の他、操作パネル17、通信インターフェイス18、搬送系駆動部19、記憶部20、本体制御部21等を備えている。操作パネル17には、各種キーや表示部等が設けられている。通信インターフェイス18には、パーソナルコンピュータ等のホスト機器が接続されている。搬送系駆動部19は、ラベルホルダにセットされた無線タグラベル用紙1を長手方向の一方向及びその逆方向へ搬送する搬送機構と、台紙2を巻き取る巻取ローラの駆動機構とを制御する。記憶部20には、通信インターフェイス18を介して入力されたラベル書込データやラベル印字データが記憶される。本体制御部21は、搬送系駆動部19、無線タグリーダ・ライタ13及びヘッド駆動部16を制御して、ラベル書込データが無線タグ7に書き込まれるとともに、ラベル印字データが印刷面に印刷された無線タグラベル3を発行させる。
【0020】
ここに、搬送系駆動部19及びこの駆動部によって駆動される搬送機構は、アンテナ14の交信領域内に無線タグ7を順次搬入するタグ搬送手段を構成する。
【0021】
図4は前記無線タグリーダ・ライタ13の要部構成を示すブロック図である。無線タグリーダ・ライタ13は、前記本体制御部21とのインターフェイス31、リーダ・ライタ制御部32、送信処理部33、受信処理部34、サーキュレータ35及びメモリ36等で構成されている。
【0022】
送信処理部33は、リーダ・ライタ制御部32から出力されるアナログの送信データ信号で所定の搬送波を変調する変調器41及びこの変調器41で変調された信号を増幅する増幅器42等で構成されている。増幅器42で増幅された信号は、サーキュレータ35を介してアンテナ13に供給され、アンテナ1から電波として放射される。
【0023】
サーキュレータ35は、送信処理部33側から入力された信号をアンテナ13に出力し、アンテナ13側から入力された信号を受信処理部34側に出力する機能を有する。アンテナ13からは、その交信領域内に存在するRFIDタグ7から受信した電波に相当する信号がサーキュレータ35に与えられる。
【0024】
受信処理部34は、サーキュレータ35を介して入力された信号を増幅する増幅器43、この増幅器43で増幅された信号から所定の搬送波成分を除去してアナログの受信データ信号を復調する復調器44、この復調器44で復調された受信データ信号のうち所定の低周波数帯の信号を通過させるLPF(Low Pass Filter)45及びこのLPF45を通過した受信データ信号の強度レベルが一定の適正レベルとなるように利得(増幅率)を調整するAGC(Automatic Gain Control)回路46等で構成されている。このAGC回路46で適正レベルに調整された受信データ信号がリーダ・ライタ制御部32に与えられる。
【0025】
リーダ・ライタ制御部32は、インターフェイス31を介して接続された本体制御部21からのコマンドに応じて送信データ信号を生成し、送信処理部33に与える機能と、受信処理部34から与えられた受信データ信号を本体制御部21で認識可能なデータに変換し、インターフェイス31を介して本体制御部21に与える機能とを有する。また、前記AGC回路46から入力される受信データ信号の強度レベルが適正レベルとなるように、AGC回路46の利得を可変するためのAGCパラメータpを生成して、AGC回路46に与える機能を有する。AGCパラメータpは、受信感度が良好であればあるほど大きな値をとるものであり、本実施の形態では、このAGCパラメータpを“0”〜“6”の7段階に設定する。
【0026】
メモリ36は、読出し専用のROM領域と、読出し及び書込みが自在なRAM領域とを有する。そして、ROM領域には、前記リーダ・ライタ制御部32の動作を制御するプログラム等が格納されている。また、RAM領域には、特に図5に示すように、開始時AGCしきい値A、最小AGCしきい値B、現在しきい値X、タグ認識時AGC値Y、認識サイクル内最大AGC値M、タグ検出済フラグF及びリトライカウンタRの各メモリエリア51〜57が形成されている。
【0027】
上記開始時AGCしきい値A及び最小AGCしきい値Bは、予め通信インターフェイス18を介して接続されたホスト機器から本体制御部21を介して任意の値(ただし6≧A≧B≧0)が設定される。最小AGCしきい値Bのメモリエリア52は、下限値記憶手段を構成する。
【0028】
本体制御部21は、例えばホスト機器から無線タグラベル3の発行ジョブが与えられると、その発行ジョブに含まれるラベル書込データとラベル印字データを記憶部20に記憶する。次いで、用紙搬送系駆動部19の起動を指令する。これにより、無線タグラベル用紙1の搬送が開始されるので、本体制御部21は、ラベルセンサ12によって無線タグラベル3が検出されるのを待機する。そして、無線タグラベル3が検出されたならば、本体制御部21は、無線タグリーダ・ライタ13にラベル書込データの書込みを指令する。
【0029】
この指令を受けた無線タグリーダ・ライタ13の制御部32は、ラベル書込みデータを記憶部36に一時的に記憶した後、図6,図7の流れ図に具体的に示される手順の処理を開始する。
【0030】
先ず、リーダ・ライタ制御部32は、ST(ステップ)1としてメモリエリア51に設定されている開始時AGCしきい値を読み出し、メモリエリア53に現在しきい値Xとしてセットする。また、メモリエリア54のタグ認識時AGC値Yを“0”とする。さらに、メモリエリア57のリトライカウンタRを“0”にリセットする。
【0031】
次に、リーダ・ライタ制御部32は、ST2としてメモリエリア55の認識サイクル内最大AGC値Mを“0”とする。また、メモリエリア56のタグ検出済フラグFを“0”にリセットする。しかる後、リーダ・ライタ制御部32は、ST3として無線タグのID読取コマンドを送信処理部33に出力する。
【0032】
これにより、送信処理部33では、変調器41にて搬送波がID読取コマンドで変調されて変調信号が生成される。そして、この変調信号が増幅器42で増幅されて、アンテナ14からID問合せ電波として放射される。
【0033】
上記ID問合せ電波は、不特定多数の無線タグで受信可能である。この問合せ電波を受信した無線タグ7は、ID応答電波を返す。ID応答電波は、無線タグ7のメモリに記憶されているIDで変調されている。ID応答電波は、アンテナ14で受信され、受信処理部34に送られる。受信処理部34では、受信電波に相当する信号が増幅器43で増幅され、復調部44にて復調される。復調されたデータ信号は無線タグ7のIDを含む。受信処理部34では、さらに、このデータ信号からLPF45にて所定の低周波数帯の信号成分が抽出され、抽出された低周波信号がAGC回路46を介してリーダ・ライタ制御部32に与えられる。
【0034】
この際、リーダ・ライタ制御部32は、AGC回路46から与えられる低周波信号の強度レベルが適正レベルになるように、AGC回路46の利得を可変するためのAGCパラメータpを生成する。そして、このAGCパラメータpをAGC回路46に与える。
【0035】
そこで、リーダ・ライタ制御部32は、ID読取コマンドを送信後、ST4として1回の書込み処理サイクル時間が経過するのを待機する。そして、この待機期間中、リーダ・ライタ制御部32は、ST5として無線タグ7のIDを検出できたか否かを判断する。そして、1回の書込み処理サイクル時間が経過する前に(ST4のNO)、AGC回路46を介して与えられた低周波信号から無線タグ7のIDを検出できたならば(ST5のYES)、リーダ・ライタ制御部32は、ST6として現時点のAGCパラメータpを検出し、メモリエリア54にタグ認識時AGC値Yとして記憶する(受信感度検出手段)。
【0036】
次に、リーダ・ライタ制御部32は、ST7としてメモリエリア54内のタグ認識時AGC値Yとメモリエリア53内の現在しきい値Xとを比較する(感度判断手段)。その結果、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上の場合には、無線タグ7のIDを検出したときの受信感度が最初に所定レベル以上で有り、この無線タグ7はアンテナ14の直近に位置していると判定できるので、リーダ・ライタ制御部32は、ST7として検出したIDを有する無線タグ7を書込み処理対象の無線タグとして認識する。そして、ST8として記憶部48からラベル書込データを読み出して、このデータの書込コマンドを送信処理部33に出力する(実行制御手段)。
【0037】
これにより、送信処理部33では、変調器41にて搬送波が書込コマンドで変調されて変調信号が生成される。そして、この変調信号が増幅器42で増幅されて、アンテナ14から書込処理用電波として放射される。
【0038】
上記書込み処理用電波は、リーダ・ライタ制御部32にてIDが認識された書込み処理対象の無線タグ7のみで受信可能である。この書込み処理用電波を受信した無線タグ7は、タグ書込みデータをメモリに書き込む。そして、書込みが終了すると、正常終了応答の電波を発信する。この応答電波は、アンテナ14で受信され、受信処理部34に送られる。受信処理部34では、受信電波に相当する信号が増幅器43で増幅され、復調部44にて復調される。さらに、この復調データ信号からLPF45にて所定の低周波数帯の信号成分が抽出され、抽出された低周波信号がAGC回路46を介してリーダ・ライタ制御部32に与えられる。
【0039】
そこでリーダ・ライタ制御部32は、書込コマンドを送信後、無線タグ7から正常終了応答を待機する。そして、正常終了応答を受信したならば、ST9としてインターフェイス部41を介して本体制御部21にデータ書込み処理の正常終了を通知して、今回の処理制御を終了する。
【0040】
本体制御部21は、無線タグリーダ・ライタ13からデータ書込み処理の正常終了通知を受けた場合には、その無線タグラベル3が印刷ヘッド15の印刷位置まで搬送されたことに同期して、ラベル印刷データを記憶部20から取得し、ヘッド駆動部16に与える。すると、印刷ヘッド15が動作して、当該無線タグラベル3の印刷面にラベル印刷データが印刷される。かくして、ラベル書込データの書込みとそれに関連付けられたラベル印刷データの印刷とが行われた無線タグラベル3は、剥離ローラ11にて台紙2から剥離された後、発行される。
【0041】
一方、図6のST7にて、タグ認識時AGC値Yと現在しきい値Xとを比較した結果、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値Xより小さい場合には、無線タグ7のIDを検出したときの受信感度が所定レベルに満たず、この無線タグ7は、アンテナ14の直近に位置していない可能性が高いので、リーダ・ライタ制御部32は、ST10としてタグ検出済フラグFを“1”にセットする。すなわち、今回の書込み処理サイクルにおいて無線タグ7のIDを認識した旨を記憶する。なお、既にタグ検出済フラグFが“1”にセットされていた場合には、この処理をジャンプする。
【0042】
次に、リーダ・ライタ制御部32は、ST11としてメモリエリア54のタグ認識時AGC値Yとメモリエリア55の認識サイクル内最大AGC値Mとを比較する。そして、タグ認識時AGC値Yが認識サイクル内最大AGC値Mより大きい場合には、メモリエリア54のタグ認識時AGC値Yを、新たな認識サイクル内最大AGC値Mとしてメモリエリア55に上書きする(受信感度記憶手段)。
【0043】
その後、リーダ・ライタ制御部32は、ST4の処理に戻り、1回の書込み処理サイクル時間が経過するのを待機する。そして、この待機時間中に、別の無線タグ7のIDを検出できたならば(ST5のYES)、リーダ・ライタ制御部32は、ST6以降の処理を再度実行する。すなわち、現時点のAGCパラメータpを検出し、メモリエリア54にタグ認識時AGC値Yとして記憶した後(受信感度検出手段)、このタグ認識時AGC値Yと現在しきい値Xとを比較する(感度判断手段)。そして、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上の場合には、ラベル書込データの書込コマンドを、IDを検出した処理対象の無線タグ宛に出力する(実行制御手段)。これに対し、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値Xより小さい場合には、タグ認識時AGC値Yと認識サイクル内最大AGC値Mとを比較する。そして、タグ認識時AGC値Yが認識サイクル内最大AGC値Mより大きい場合には、タグ認識時AGC値Yを新たな認識サイクル内最大AGC値Mとしてメモリエリア55に上書きする(受信感度記憶手段)。しかる後、1回の書込み処理サイクル時間が経過するのを待機する。
【0044】
したがって、書込み処理サイクル時間が経過する間に、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを最初に検出した場合には、直ちにその無線タグ7に対してデータの書込み処理を実行して、今回の処理制御を終了する。これに対し、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを検出できなかった場合には、タグ認識時AGC値Yの最大値が認識サイクル内最大AGC値Mとしてメモリエリア55に記憶される。
【0045】
因みに、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを最初に検出した後は、直ちにその無線タグ7に対してデータの書込み処理を実行して今回の処理制御を終了するので、書込み処理サイクル時間内にタグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上である無線タグ7のIDを続いて検出したとしても、その無線タグは無視される。
【0046】
タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを検出することなく、書込み処理サイクル時間が経過した場合には(ST4のYES)、リーダ・ライタ制御部32は、図7のST13に進む。
【0047】
ST13では、メモリエリア55の認識サイクル内最大AGC値Mとメモリエリア52の最小AGCしきい値Bとを比較する。そして、認識サイクル内最大AGC値Mが最小AGCしきい値Bより大きい場合には、ST14として認識サイクル内最大AGC値Mをメモリエリア53に上書きして、現在しきい値Xを更新する。また、認識サイクル内最大AGC値Mが最小AGCしきい値B以下の場合には、ST15として最小AGCしきい値Bをメモリエリア53に上書きして、現在しきい値Xを更新する(しきい値更新手段)。
【0048】
しかる後、リーダ・ライタ制御部32は、ST16としてリトライカウンタRを“1”だけカウントアップする。そして、ST17としてリトライカウンタRが予め設定されているリトライ回数n(nは2以上の自然数)を超えたか否かを判断する。リトライカウンタRがリトライ回数nを超えていない場合には(ST17のNO)、リーダ・ライタ制御部32は、ST2の処理に戻る。すなわち、認識サイクル内最大AGC値Mを“0”とする。また、タグ検出済フラグFを“0”にリセットする。しかる後、無線タグのID読取コマンドを、再度、送信処理部33に出力する。
【0049】
したがって、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを検出することなく、書込み処理サイクル時間が経過した場合には、現在しきい値Xを、直前の書込み処理サイクルでの最大受信感度に対応するAGC値に下方修正して、IDの問合せを再度行う。その結果、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを最初に検出した場合には、直ちにその無線タグ7に対してデータの書込み処理を実行して、今回の処理制御を終了する。
【0050】
一方、タグ認識時AGC値Yが現在しきい値X以上となる条件で無線タグ7のIDを検出することなく、リトライカウンタRがリトライ回数nを超えた場合には(ST17のYES)、リーダ・ライタ制御部32は、ST18としてタグ検出済フラグFをチェックする。そして、タグ検出済フラグFが“1”にセットされていた場合には(ST18のYES)、無線タグ7のIDを検出したものの受信感度が低かったことになるので、リーダ・ライタ制御部32は、ST19としてインターフェイス部41を介して本体制御部21にタグ不調エラーの異常終了を通知して、今回の処理制御を終了する。
【0051】
これに対し、タグ検出済フラグFが“1”にセットされていなかった場合には(ST18のNO)、無線タグ7のIDを全く検出していないことになるので、リーダ・ライタ制御部32は、ST20としてインターフェイス部41を介して本体制御部21にタグ無しエラーの異常終了を通知して、今回の処理制御を終了する。
【0052】
例えば今、開始時AGCしきい値Aとして“5”が設定され、最小AGCしきい値Bとして“2”が設定されているものとする。前述したように、AGCパラメータpは、受信感度が良好であればあるほど大きな値をとる。すなわちこの例では、無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”以上であった場合には、その無線タグ7は、アンテナ14の直近に位置し、書込み対象であると決定する。
【0053】
この例においては、アンテナ14からID問合せ電波を送信し、最初に応答した無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”以上であった場合には、その無線タグ7に対してデータ書込み処理が実行される。そして、以後、別の無線タグのIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”以上であるか否かに関わらず、それらの無線タグ7に対してデータ書込み処理は実行されない。
【0054】
また、最初に応答した無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”未満であった場合には、当該無線タグ7に対してはデータ書込み処理が実行されない。そして、次に応答した無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”以上であった場合には、その無線タグ7に対してデータ書込み処理が実行される。そして、以後、別の無線タグのIDを検出したときのAGCパラメータpが“5”以上であるか否かに関わらず、それらの無線タグ7に対してデータ書込み処理は実行されない。
【0055】
したがって、本実施の形態によれば、IDを検出したときのAGCパラメータpが開始時AGCしきい値A以上の無線タグ7だけが有効となるので、アンテナ14の直近に位置する目的の無線タグに対して確実にデータを書き込むことができる。
【0056】
ところで、ID問合せ電波を送信したが、これに応答した無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpが全て開始時AGCしきい値Aに満たない場合がある。例えば、無線タグ7自体の応答感度が悪いような場合である。このような場合には、無線タグ7のIDを検出したときのAGCパラメータpのうち最大値が現在しきい値Xとして設定される。そして、再度、ID問合せ電波が送信される。リトライ回数の範囲内で以上の処理が繰り返されるので、応答感度の悪い無線タグ7を用いた場合でも、アンテナ14に最も近い無線タグ7を書込み処理対象と決定して、データを書き込むことができる。
【0057】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、無線タグリーダ・ライタ13のメモリ36に、開始時AGCしきい値A及び最小AGCしきい値Bのメモリエリア51,52を設け、ホスト機器から任意の値を設定するようにしたが、開始時AGCしきい値A及び最小AGCしきい値Bの設定手段はこれに限定されるものではない。
【0059】
例えば、図8に示すように、開始時AGCしきい値Aと最小AGCしきい値Bとの組合せパターンを予め設定したしきい値テーブル60をメモリ36に記憶する。このしきい値テーブル60において、“No”はテーブル番号を示す。また、“A”は開始時AGCしきい値を示し、“B”は最小AGCしきい値を示す。“S”は選択フラグであり、各テーブル番号に対応した複数の選択フラグのうち、いずれか1つのみが選択状態を示す“1”にセットされる。
【0060】
図8は、AGCパラメータpが“0”〜“6”の7段階に設定されている場合のしきい値テーブル60である。開始時AGCしきい値Aは、最小AGCしきい値B以上であるので、28通りの組合せパターンが設定される。
【0061】
例えば、テーブル番号“14”の開始時AGCしきい値Aと最小AGCしきい値Bとはいずれも“4”の場合は、タグ認識時AGC値Yが“4”以上の無線タグに対してのみデータ書込み処理が実行されることを意味する。また、テーブル番号“7”の開始時AGCしきい値Aが“6”で最小AGCしきい値Bが“0”の場合は、アンテナ14の交信領域内に存在する無線タグの中で、タグ認識時AGC値Yが最大の無線タグに対してのみデータ書込み処理が実行されることを意味する。
【0062】
ユーザは、開始時AGCしきい値Aと最小AGCしきい値Bとが所望する組合せパターンとなっているテーブル番号を、例えばホスト機器を介して入力すればよい。そうすることにより、このテーブル番号に対応した選択フラグのみが“1”にセットされ、他の選択フラグSは全て“0”となる。そして、その場合は、選択フラグSが“1”にセットされている開始時AGCしきい値Aと最小AGCしきい値Bとの組合せパターンが有効となって処理される。このように、しきい値テーブル60を用いることによって、開始時AGCしきい値Aと最小AGCしきい値Bの設定作業が簡単になる。また、開始時AGCしきい値Aより大きい値を最小AGCしきい値Bとして設定してしまうようなミスを未然に防ぐことができる。
【0063】
また、前記実施の形態では、無線タグから応答されるタグ識別情報受信時の受信感度をAGCパラメータの値から検出する場合を示したが、AGCパラメータ以外の情報に基づいて受信感度を検出してもよい。
【0064】
また、本発明は、無線タグラベル発行装置の無線リーダ・ライタ13に限定されるものではない。例えば、ゲート式アンテナを備え、このアンテナ間を通過する無線タグのIDを認識するシステムの無線タグリーダに、本発明を適用してもよい。アンテナ間を通過する無線タグのIDを検出するときの受信感度はきわめて良好である。そこで、本発明を適用することによって、アンテナの近傍に存在する無線タグはそのIDを検出しても受信感度が悪いので排除し、ゲート式アンテナのアンテナ間を通過する無線タグのみを精度よく検出できるようになる。
【0065】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態で使用される無線タグラベル用紙の要部構成を示す模式図。
【図2】図1におけるA−A矢視断面図。
【図3】同実施の形態における無線タグラベル発行装置の要部構成を示すブロック図。
【図4】同実施の形態の無線タグラベル発行装置が備える無線タグリーダ・ライタの要部構成を示すブロック図。
【図5】同実施の形態において、無線タグリーダ・ライタの記憶部に形成される主要なメモリエリアを示す模式図。
【図6】同実施の形態において、無線タグリーダ・ライタの制御部が実行する主要な制御処理手順を示す流れ図。
【図7】図6に示す処理手順の1サイクル終了後を示す流れ図。
【図8】しきい値テーブルに設定されるデータの一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0067】
1…無線タグラベル用紙、3…無線タグラベル、7…無線タグ、10…無線タグラベル発行装置、13…無線タグリーダ・ライタ、14…アンテナ、15…印刷ヘッド、16…ヘッド駆動部、17…操作パネル、18…通信インターフェイス、19…搬送系駆動部、20…記憶部、21…本体制御部、41…インターフェイス部、42…リーダ・ライタ制御部、43…変調部、44…送信アンプ、45…受信アンプ、46…復調部、47…切換回路、48…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により、複数の無線タグに対してタグ識別情報の問合せを行い、タグ識別情報を応答した無線タグに対して所定の処理を行う無線通信装置において、
前記無線タグから応答されるタグ識別情報受信時の受信感度を検出する受信感度検出手段と、
この受信感度検出手段により検出された受信感度がしきい値以上か否かを判断する感度判断手段と、
この感度判断手段によりタグ識別情報受信時の受信感度が最初に前記しきい値以上であると判定された無線タグを有効として、この有効とした無線タグに対してのみ前記所定の処理を行う実行制御手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記感度判断手段によりタグ識別情報受信時の受信感度が前記しきい値未満であると判定された無線タグのタグ識別情報受信時の受信感度を記憶する受信感度記憶手段と、
この受信感度記憶手段により記憶された受信感度の最大値を新たなしきい値とするしきい値更新手段と、をさらに具備し、
1回の問合せに対して応答した全ての無線タグのタグ識別情報受信時の受信感度が前記しきい値未満であると判定された場合には、タグ識別情報の問合せを再度行い、応答した無線タグのタグ識別情報受信時の受信感度が前記しきい値更新手段により更新された新たなしきい値以上か否かを判定して、最初に新たなしきい値以上と判定された無線タグを有効として、この有効とした無線タグに対してのみ前記所定の処理を行うことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
しきい値の下限値を記憶する下限値記憶手段、をさらに具備し、
前記しきい値更新手段は、受信感度記憶手段により記憶された受信感度の最大値と前記下限値記憶手段により記憶された下限値とを比較し、前記最大値が前記下限値より大きい場合には前記最大値を新たなしきい値とし、前記最大値が前記下限値以下の場合には前記下限値を新たなしきい値とすることを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
所定の無線通信領域内に無線タグを順次搬入するタグ搬送手段、をさらに具備し、
前記実行制御手段は、前記タグ搬送手段により前記無線通信領域内に搬入される無線タグのうち前記感度判断手段によりタグ識別情報受信時の受信感度が最初に前記しきい値以上であると判定された無線タグを有効として、この有効とした無線タグに対してのみその無線タグに対してデータの書込み処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−140254(P2009−140254A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316208(P2007−316208)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】