説明

照明装置および表示装置

【課題】簡単な構成で、長寿命であり、しかも静音性が高く、低コストな照明装置を提供する。
【解決手段】複数のセグメント領域を有し、各セグメント領域にそれぞれ励起光の照射を受けて同一波長の光を発する蛍光体3r,3g,3bが配された蛍光体アレイ3と、複数のセグメント領域に対応して設けられ、各セグメント領域に配された蛍光体にそれぞれ励起光を照射する複数の固体光源1aと、各蛍光体からの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系4〜9と、固体光源を制御して励起光を照射する蛍光体を切り替える切替機構と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体に固体光源からの励起光を照射することで発光させる照明装置、および、その照明装置を用いた表示装置に係り、例えば、画像を拡大投影するプロジェクタに適用できる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に、ディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を用いた単板プロジェクタ装置の光源として、紫外波長のレーザ光源によって励起されるRGBの蛍光物質をセグメント毎に塗布したカラーホイールをモータによって回転させる構成のプロジェクタ用の光源装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の照明装置では、蛍光体が励起光の照射によりダメージを受けて照明光が輝度劣化すると共に、蛍光体が長時間の励起光の照射により短寿命になるという問題があった。また、モータにより高速でカラーホイールを回転する必要があるため、構成が複雑化して高コストになると共に、モータの寿命や回転による騒音が問題となることがあった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、簡単な構成で、長寿命であり、しかも静音性が高く、低コストな照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明の照明装置は、複数のセグメント領域を有し、各セグメント領域にそれぞれ励起光の照射を受けて同一波長の光を発する蛍光体(3r,3g,3b)が配された蛍光体基板(3)と、前記複数のセグメント領域に対応して設けられ、各セグメント領域に配された前記蛍光体(3r,3g,3b)にそれぞれ励起光を照射する複数の固体光源(1a)と、前記各蛍光体(3r,3g,3b)からの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系(4〜9)と、前記固体光源(1a)を制御して励起光を照射する蛍光体(3r,3g,3b)を切り替える切替機構と、を具備することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の照明装置であって、複数のグループの前記セグメント領域が設けられ、第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体(3r)がそれぞれ配され、第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体(3g)がそれぞれ配され、第3のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の同一波長の光を発する第3の蛍光体(3b)がそれぞれ配され、前記切替機構が、前記第1のグループに属する第1の蛍光体(3r)と第2のグループに属する第2の蛍光体(3g)と第3グループに属する第3の蛍光体(3b)とを切り替えることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の照明装置は、複数のグループのセグメント領域を有し、第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体(3r)がそれぞれ配され、第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体(3g)がそれぞれ配され、第3のグループに属する複数のセグメント領域に蛍光体の代わりに拡散板(P)が配された蛍光体基板(23)と、前記各セグメント領域に対応して設けられ、3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の波長の光を発し、前記第1のグループのセグメント領域と第2のグループのセグメント領域に対応するものは、前記第3の波長の光を励起光として前記第1の蛍光体(3r)および第2の蛍光体(3g)に照射し、第3のグループのセグメント領域に対応するものは、前記透明領域(P)を透過して直接第3の波長の光を照射するように構成された複数の固体光源(1b)と、前記各蛍光体(3r,3g)からの光および前記拡散板(P)を透過した光による照明領域を重ね合わせる照明光学系(4〜9)と、前記固体光源(1b)を制御して励起光を照射する前記蛍光体基板(23)上のグループを切り替える切替機構と、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の照明装置は、励起光を発する固体光源(1a)と、前記固体光源(1a)からの励起光の照射を受けて発光する蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)が配された蛍光体基板(33)と、前記固体光源(1a)と蛍光体基板(33)を相対移動させることで、前記蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)に対する前記固体光源(1a)による励起光の照射箇所をシフトするシフト機構(35)と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の照明装置であって、前記蛍光体基板(33)が交換可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の照明装置であって、前記蛍光体基板(33)が、複数のグループのセグメント領域を有し、第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体(3r1,3r2,3r3)がそれぞれ配され、第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体(3g1,3g2,3g3)がそれぞれ配され、第3のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の同一波長の光を発する第3の蛍光体(3b1,3b2,3b3)がそれぞれ配され、前記固体光源(1b)が、前記各セグメント領域に配された前記蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)にそれぞれ励起光を照射するように、前記複数のセグメント領域に対応して複数設けられ、さらに、前記各蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)からの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系(4〜9)と、前記固体光源(1a)を制御して励起光を照射する蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)を切り替える切替機構と、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の照明装置であって、前記切替機構が、前記第1のグループに属する第1の蛍光体(3r)と第2のグループに属する第2の蛍光体(3g)と第3グループに属する第3の蛍光体(3b)とを切り替えることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項4または5に記載の照明装置であって、前記蛍光体基板が、複数のグループのセグメント領域を有し、第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体(3r1,3r2,3r3)がそれぞれ配され、第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体(3g1,3g2,3g3)がそれぞれ配され、第3のグループに属する複数のセグメント領域に蛍光体の代わりに拡散板(P)が配されており、一方、前記固体光源(1b)が、3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の波長の光を発するものとして、前記各セグメント領域に対応して複数設けられ、且つ、前記第1のグループのセグメント領域と第2のグループのセグメント領域に対応するものは、前記第3の波長の光を励起光として前記第1の蛍光体(3r1,3r2,3r3)および第2の蛍光体(3g1,3g2,3g3)に照射し、第3のグループのセグメント領域に対応するものは、前記拡散板(P)を透過して直接第3の波長の光を照射するように構成され、さらに、前記各蛍光体(3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3)からの光および前記拡散板(P)を透過した光による照明領域を重ね合わせる照明光学系(4〜9)と、前記固体光源を制御して励起光を照射する前記蛍光体基板上の前記グループを切り替える切替機構と、が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明の表示装置は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の照明装置と、画像に応じて前記照明装置からの照明光を変調する表示素子(13)と、前記表示素子(13)から射出された画像をスクリーンに投影する投射光学系(15)とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3の発明の照明装置によれば、励起光を照射する蛍光体を切り替えることで、励起光の照射による蛍光体の劣化を抑えることができるので、照明光の輝度劣化を防止することができると共に、蛍光体の長寿命化を図ることができる。また、それぞれ蛍光体を配した各セグメント領域に対応させて固体光源を配置しているので、カラーホイールをモータで回転させるなどの複雑な機構が必要でなく、構成をシンプルにして、低コスト化を図ることができると共に、モータが不要であるから静音性を保つことができる。また、同じ固体光源を常時点灯状態に保つ必要がないから、固体光源の長寿命化も図ることができる。
【0016】
また、請求項4〜8の発明の照明装置によれば、所定の使用時間の経過後に、シフト機構によって蛍光体への励起光の照射位置を切り替えることにより、蛍光体をリフレッシュすることができるので、照明光の輝度劣化を抑制できると共に蛍光体の長寿命化を図ることができる。また、蛍光体基板と固体光源を相対移動させるだけなので、カラーホイールをモータで回転させるなどの複雑な機構が必要でなく、構成をシンプルにして低コスト化を図ることができると共に、モータが不要であるから静音性を保つことができる。
【0017】
従って、請求項9の表示装置によれば、請求項1〜8のいずれかの照明装置を利用するので、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の照明装置の概略構成図である。
【図2】同照明装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【図3】(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態の照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の照明装置の説明図で、(a)は同照明装置の要部の概略構成図、(b)は同照明装置に使用する蛍光体アレイの正面図である。
【図6】前記第3実施形態の照明装置の概略構成図である。
【図7】(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の第4実施形態の照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【図9】本発明の第5実施形態の照明装置に使用する蛍光体アレイとその支持機構の構成を示す正面図である。
【図10】本発明の第6実施形態の照明装置の概略構成図である。
【図11】同照明装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【図12】(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の照明装置の概略構成図、図2は同照明装置を用いた投射型表示装置の概略構成図、図3(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【0021】
この照明装置は、図1に示すように、紫外光または近紫外光(例えば、405nmレーザ)を発生する半導体レーザよりなる複数の固体光源1aを基板1k上にアレイ状に配列した光源アレイ1と、各固体光源1aの発する光をそれぞれ集光する複数のコリメータレンズ2と、透明基板3k上のコリメータレンズ2による集光面に3原色の波長帯域の光を発するR蛍光体3r、G蛍光体3g、B蛍光体3bをアレイ状に配列した蛍光体アレイ3と、各蛍光体3r,3g,3bの発する光を調整する光学要素であるコリメータレンズ4、マルチレンズアレイ5,6、マルチレンズアレイ6の射出側に配置されて入射光をほぼ直線偏光に変換する偏光変換素子7、偏光変換素子7の射出側に配置されたフィールドレンズ8,9と、から構成されている。
【0022】
蛍光体3r,3g,3bの発する光束は、コリメータレンズ4で調整された上で、マルチレンズアレイ5の基板5k上に配列した各レンズセグメント5aを通過し、マルチレンズアレイ6、フィールドレンズ8,9によって、所定の照明領域に重ね合わせられた上で、照明光として照明対象部に到達するようになっている。ここでは、コリメータレンズ4、マルチレンズアレイ5,6、フィールドレンズ8,9などの光学要素が、各蛍光体3r,3g,3bからの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系を構成している。
【0023】
また、図2に示す投射型液晶装置は、図1に示すように構成された照明装置と、画像に応じて照明装置からの照明光を変調する反射型液晶素子よりなる表示素子13と、表示素子13から射出された画像をスクリーンに投影する投射レンズ(投射光学系)15とを有しており、照明光学系による光束の重ね合わせ位置に表示素子13が配置されている。
【0024】
表示素子13と照明装置の射出側に位置するフィールドレンズ9との間には、プリポラライザ10と、偏光ビームスプリッタ(ワイヤグリッド偏光ビームスプリッタ)11と、位相補償板12とが配置されている。表示素子13は、画像信号に応じて空間的に光変調を行い、偏光ビームスプリッタ11は、変調されて入射光と直交する偏光状態に変わった光成分のみを反射する。偏光ビームスプリッタ11で反射された光は、アナライザ14(偏光板)を通過することで不要光成分を除去された上で、投射レンズ15によってスクリーンに画像として投影表示される。なお、位相補償板12は、表示素子13の直前に配置され、位相ずれ補償してコントラストを高める働きをなす。
【0025】
照明装置の構成要素について、より詳しく述べる。
【0026】
図3(b)に示すように、蛍光体アレイ3の透明基板3kには、図3(c)に示すマルチレンズアレイ5の各レンズセグメント5aに対応した複数のセグメント領域が仮想的に設定されており、各セグメント領域に、それぞれ固体光源1aからの励起光の照射を受けて光を発する蛍光体3r,3g,3bが配されている。ここでは、横方向(行方向ともいう)をX方向、縦方向(列方向ともいう)をY方向として説明する。
【0027】
この場合、複数のグループのセグメント領域が設定されており、Y方向の一番上の第1のグループに属するX方向に並ぶ複数(図示例では3つ)のセグメント領域には、励起光の照射を受けることで3原色RGB(赤緑青)のうちのR光(第1の同一波長の光)を発する第1の蛍光体3rがそれぞれ配されている。また、Y方向の上から二番目と三番目の第2のグループに属するX方向に並ぶ複数(図示例では3つ)のセグメント領域には、励起光の照射を受けることで3原色RGBのうちのG光(第2の同一波長の光)を発する第2の蛍光体3gがそれぞれ配されている。また、Y方向の一番下の第3のグループに属するX方向に並ぶ複数(図示例では3つ)のセグメント領域には、励起光の照射を受けることで3原色RGBのうちのB光(第3の同一波長の光)を発する第3の蛍光体3bがそれぞれ配されている。
【0028】
また、図3(a)に示すように、光源アレイ1上の固体光源1aは、蛍光体アレイ3の透明基板3k上に仮想的に設定された複数のセグメント領域に対応して設けられており、各セグメント領域に配された蛍光体3r,3g,3bにそれぞれ励起光(近紫外光)を照射することができるようになっている。
【0029】
また、光源アレイ1を駆動する図示略の制御部には、固体光源1aを制御して励起光を照射する蛍光体3r,3g,3bを切り替える切替機構が含まれている。ここでは、切替機構は、まず、図3(a)において、上から1行目のX方向(行方向)に並ぶ3個の固体光源(レーザ)1aを同時に駆動し、(b)の1行目に並ぶ第1のグループに属する3個の蛍光体3rを励起してR光を発光させる。次に、駆動を切り替えて、図3(a)において、上から2行目と3行目のそれぞれX方向(行方向)に並ぶ合計6個の固体光源(レーザ)1aを同時に駆動し、(b)の2行目、3行目の第2のグループに属する6個の蛍光体3gを励起してG光を発光させる。次に、駆動を切り替えて、図3(a)において、上から4行目のX方向(行方向)に並ぶ3個の固体光源(レーザ)1aを同時に駆動し、(b)の4行目に並ぶ第3のグループに属する3個の蛍光体3bを励起してB光を発光させる。
【0030】
従って、RGBの蛍光体3r,3g,3bが順次発光して、時系列に各色光が表示素子13に照射されることで、同期して時系列で動作する単板の表示素子13より射出されるRGBの画像が重ね合わされて、スクリーン上にフルカラー画像として投影される。そして、行方向を同時に光らせることで、複数個の蛍光体3r,3g,3bからの光が表示素子13に照射されるので、明るくかつムラの少ない表示像を投影することができる。
【0031】
この照明装置によれば、励起光を照射する蛍光体3r,3g,3bを切り替えることで、励起光の照射による蛍光体3r,3g,3bの劣化を抑えることができるので、照明光の輝度劣化を防止することができると共に、蛍光体3r,3g,3bの長寿命化を図ることができる。
【0032】
また、それぞれ蛍光体3r,3g,3bを配した各セグメント領域に対応させて固体光源1aを配置しているので、従来例のようにカラーホイールをモータで回転させるなどの複雑な機構が必要でなく、構成をシンプルにして、低コスト化を図ることができると共に、モータが不要であるから静音性を保つことができる。また、同じ固体光源1aを常時点灯状態に保つ必要がないから、固体光源1aの長寿命化も図ることができる。
【0033】
また、各固体光源1aの光をそれぞれコリメータレンズ2で集光して各蛍光体3r,3g,3bに照射させるので、一つ一つの蛍光体3r,3g,3bを、集光照射される部分だけに配置すれば済み、蛍光体3r,3g,3bの使用量を減らすことができて、コスト削減を図ることができる。また、固体光源1aを複数個使用することによって、一つ一つの固体光源1aのパワーを小さく抑えることができるようになるため、信頼性の面やコスト面で有利となる。
【0034】
なお、本実施形態では、固体光源1aとして半導体レーザを使用しているが、LEDを使用してもよい。
【0035】
[第2実施形態]
図4(a)〜(c)は、第2実施形態の照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【0036】
この照明装置では、光源アレイ21の固体光源1bとして、B光(450nm近傍)を発するブルーレーザを使用している。従って、RGBのうちB光は、蛍光体でなく、そのまま直接表示素子13に照射するようにしている。従って、蛍光体アレイ23の透明基板3k上には、RGに対応する蛍光体3r,3gのみを配置しており、B光に対応するセグメント領域には、蛍光体の代わりに拡散板Pを配置してある。拡散板Pを用いることで、拡散板Pから射出された光線の角度分布を蛍光体3r,3gからの射出角度分布と合わせることができる。
【0037】
この場合は、B光で蛍光体3r,3gを励起するので、変換効率が高くさらに明るい画像を表示できる。その他の構成および作用は、第1実施形態と同様である、
[第3実施形態]
図5は第3実施形態の照明装置の説明図で、図5(a)は同照明装置の要部の概略構成図、図5(b)は同照明装置に使用する蛍光体アレイの正面図である。また、図6は同の照明装置の上から見た概略構成図、図7(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【0038】
この照明装置では、各蛍光体3r,3g,3bの隣りにX方向に並べて予備の蛍光体3r,3g,3bを配置している。即ち、第1実施形態の蛍光体アレイ(蛍光体基板)33では、各セグメント領域にそれぞれ、X方向に並べて3個の蛍光体3r1,3r2,3r3(3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3)を配置している。
【0039】
そして、蛍光体アレイ33をシフト機構35によってX方向に移動させることにより、蛍光体3r,3g,3bに対する固体光源1aによる励起光の照射箇所をX方向にシフトすることができるようになっている。つまり、ある程度の使用時間が経過したら、矢印X1のように蛍光体アレイ33を移動することにより、固体光源1aによる励起光の照射箇所に位置する蛍光体3r1,3r2,3r3を順番に切り替えることができるようになっている。
【0040】
例えば、初期状態では、蛍光体3r1,3g1,3b1に励起光が照射されてR光、G光、B光を発するようにセットする。この状態で、長時間蛍光体3r1,3g1,3b1に励起光を照射し続けると、蛍光体3r1,3g1,3b1が徐々に劣化し輝度が低下する。そこで、輝度が低下した段階で、シフト機構35によって蛍光体アレイ33を矢印X1のようにシフトし、励起光が当たる蛍光体を切り替える。そうすることにより、フレッシュな蛍光体3r2,3g2,3b2を励起させることができるので、輝度が初期状態に戻り、明るい照明を行うことができる。その後は、必要に応じて、次の蛍光体3r3,3g3,3b3に切り替えればよい。
【0041】
このように予備の蛍光体を透明基板3k上に配列し、シフトすることで、長期に渡って明るい照明装置を提供することができる。また、蛍光体アレイ33を移動させるだけなので、カラーホイールをモータで回転させるなどの複雑な機構が必要でなく、構成をシンプルにして低コスト化を図ることができると共に、モータが不要であるから静音性を保つことができる。その他の構成および作用は第1実施形態と同様である。
【0042】
なお、図示例では、予備の蛍光体を離して配置した場合を示したが、予備の蛍光体をつなげて配置してもよい。その場合は、励起光を照射する蛍光体の切り替えでなく、照射位置の切り替えになる。
【0043】
[第4実施形態]
図8(a)〜(c)は、第4実施形態の照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【0044】
この照明装置は、第2実施形態と第3実施形態の特徴点を組み合わせたものであり、光源アレイ21の固体光源1bとして、B光(450nm近傍)を発するブルーレーザを使用している。また、蛍光体アレイ43の透明基板3k上には、予備の蛍光体を含めて、RGに対応する蛍光体3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3のみを配置しており、B光に対応するセグメント領域には蛍光体の代わりに拡散板Pを配置してある。
【0045】
この照明装置によれば、第2実施形態と第3実施形態の作用効果を得ることができる。
【0046】
[第5実施形態]
図9は第5実施形態の照明装置に使用する蛍光体アレイとその支持機構の構成を示す正面図である。
【0047】
この第4実施形態の照明装置では、第3実施形態において使用した蛍光体アレイ33が交換可能になっており、一定期間経過後に輝度劣化が発生した場合に、蛍光体アレイ33を引き抜いて外し、新品の蛍光体アレイ33を付け替えることができるようになっている。そのため、蛍光体アレイ33の配置箇所には、蛍光体アレイ33を着脱できる枠状のホルダ38が設けられており、蛍光体ホルダ38に対して蛍光体アレイ33をX1方向に差し込んだり、X2方向に引き抜いたりできるようになっている。
【0048】
従って、最も寿命の短い蛍光体部分のみをサービスやユーザー自身が簡易に交換できるので、総合的な製品寿命が長く、低コストの照明装置または表示装置を実現できる。
【0049】
[第6実施形態]
図10は第6実施形態の照明装置の概略構成図、図11は同照明装置を用いた投射型表示装置の概略構成図、図12(a)〜(c)は、同照明装置に使用する光源アレイ、蛍光体アレイ、マルチレンズアレイの構成をそれぞれ示す正面図である。
【0050】
上述した第3〜第5実施形態では、予備の蛍光体をX方向に並べた場合を示したが、本第6実施形態の照明装置では、蛍光体アレイ53において、予備の蛍光体をY方向に並べて配置している。即ち、各セグメント領域において、蛍光体3r1,3r2,3r3,3g1,3g2,3g3,3b1,3b2,3b3を縦に配置している。そして、シフト機構35による蛍光体アレイ53のシフト方向をY方向に設定している。
【0051】
この実施形態の照明装置においても、前記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、上記第1〜第6の実施形態において、表示素子は単板の表示素子を想定し、3原色に対応した蛍光体を順次発光させ、順次発光に同期して表示素子を面順次で動作させているが、これに限られることはない。たとえば、3原色用に表示素子を3枚使用したいわゆる3板式表示装置に適用することもできる。この場合の照明装置の動作としては、例えば、3原色に対応する蛍光体の組を複数設定し、それらの組の間で発光を切り替えることにより合成される光が白色光となるようにすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,21 光源アレイ
1a,1b 固体光源
3,23,33,43,53 蛍光体アレイ(蛍光体基板)
3r,3r1,3r2,3r3 第1の蛍光体
3g,3g1,3g2,3g3 第2の蛍光体
3b,3b1,3b2,3b3 第3のB蛍光体
4 コリメータレンズ(照明光学系)
5 マルチレンズアレイ(照明光学系)
6 マルチレンズアレイ(照明光学系)
7 偏光変換素子(照明光学系)
8 フィールドレンズ(照明光学系)
9 フィールドレンズ(照明光学系)
13 表示素子
15 投射レンズ(投射光学系)
35 シフト機構
P 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメント領域を有し、各セグメント領域にそれぞれ励起光の照射を受けて同一波長の光を発する蛍光体が配された蛍光体基板と、
前記複数のセグメント領域に対応して設けられ、各セグメント領域に配された前記蛍光体にそれぞれ励起光を照射する複数の固体光源と、
前記各蛍光体からの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系と、
前記固体光源を制御して励起光を照射する蛍光体を切り替える切替機構と、
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
複数のグループの前記セグメント領域が設けられ、
第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体がそれぞれ配され、
第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体がそれぞれ配され、
第3のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の同一波長の光を発する第3の蛍光体がそれぞれ配され、
前記切替機構が、前記第1のグループに属する第1の蛍光体と第2のグループに属する第2の蛍光体と第3グループに属する第3の蛍光体とを切り替えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
複数のグループのセグメント領域を有し、第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体がそれぞれ配され、第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体がそれぞれ配され、第3のグループに属する複数のセグメント領域に蛍光体の代わりに拡散板が配された蛍光体基板と、
前記各セグメント領域に対応して設けられ、3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の波長の光を発し、前記第1のグループのセグメント領域と第2のグループのセグメント領域に対応するものは、前記第3の波長の光を励起光として前記第1の蛍光体および第2の蛍光体に照射し、第3のグループのセグメント領域に対応するものは、前記拡散板を通過して直接第3の波長の光を照射するように構成された複数の固体光源と、
前記各蛍光体からの光および前記拡散板を透過した光による照明領域を重ね合わせる照明光学系と、
前記固体光源を制御して励起光を照射する前記蛍光体基板上のグループを切り替える切替機構と、
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
励起光を発する固体光源と、
前記固体光源からの励起光の照射を受けて発光する蛍光体が配された蛍光体基板と、
前記固体光源と蛍光体基板を相対移動させることで、前記蛍光体に対する前記固体光源による励起光の照射箇所をシフトするシフト機構と、
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置であって、
前記蛍光体基板が交換可能に設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の照明装置であって、
前記蛍光体基板が、複数のグループのセグメント領域を有し、
第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体がそれぞれ配され、
第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体がそれぞれ配され、
第3のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の同一波長の光を発する第3の蛍光体がそれぞれ配され、
前記固体光源が、前記各セグメント領域に配された前記蛍光体にそれぞれ励起光を照射するように、前記複数のセグメント領域に対応して複数設けられ、
さらに、前記各蛍光体からの光による照明領域を重ね合わせる照明光学系と、前記固体光源を制御して励起光を照射する蛍光体を切り替える切替機構と、が設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の照明装置であって、
前記切替機構が、前記第1のグループに属する第1の蛍光体と第2のグループに属する第2の蛍光体と第3グループに属する第3の蛍光体とを切り替えることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項4または5に記載の照明装置であって、
前記蛍光体基板が、複数のグループのセグメント領域を有し、
第1のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの第1の同一波長の光を発する第1の蛍光体がそれぞれ配され、
第2のグループに属する複数のセグメント領域に、励起光の照射を受けることで3原色のうちの前記第1の波長と異なる第2の同一波長の光を発する第2の蛍光体がそれぞれ配され、
第3のグループに属する複数のセグメント領域に蛍光体の代わりに拡散板が配されており、
一方、前記固体光源が、3原色のうちの前記第1の波長および第2の波長と異なる第3の波長の光を発するものとして、前記各セグメント領域に対応して複数設けられ、且つ、前記第1のグループのセグメント領域と第2のグループのセグメント領域に対応するものは、前記第3の波長の光を励起光として前記第1の蛍光体および第2の蛍光体に照射し、第3のグループのセグメント領域に対応するものは、前記拡散板を透過して直接第3の波長の光を照射するように構成され、さらに、前記各蛍光体からの光および前記拡散板を透過した光による照明領域を重ね合わせる照明光学系と、前記固体光源を制御して励起光を照射する前記蛍光体基板上の前記グループを切り替える切替機構と、が設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の照明装置と、画像に応じて前記照明装置からの照明光を変調する表示素子と、前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投射光学系とを有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−178319(P2012−178319A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41876(P2011−41876)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】