説明

熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造

【課題】 水よけカバーを設けなくても冷蔵庫本体の上部からこぼれた水が回路基板にかかることのない簡素で安全性が高くしかも故障の少ない熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造を提供すること。
【解決手段】 本体庫外に凹部46を形成し、放熱側及び冷却側配管回路6,8を電子制御する回路基板55を凹部46の側壁に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペルチェ素子を使用して庫内を冷却する熱電モジュール式電気冷蔵庫に関し、更に詳しくは、放熱側及び冷却側配管回路を電子制御する回路基板の収納構造に関する。
【0002】
【従来の技術】冷凍システムにペルチェ素子を使用した技術は、特表平6−504361号公報に開示されている。この技術は、ペルチェ素子の放熱面と冷却面のそれぞれに熱媒体を強制循環させる熱媒体経路を熱結合し、冷却面に熱結合した熱媒体経路に介装した熱交換器により目的物を冷却したり、あるいは、放熱面に熱結合した熱媒体経路に介装した熱交換器により放熱して目的物を暖めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報に開示された技術は、熱電モジュールを使用して実用的な冷却を行うことはできるが、冷却装置の基本的な構成を開示するものに過ぎず、実際にこの技術を電気冷蔵庫等に適用するためには、改良すべき点や新たに解決しなければならない問題点も多い。
【0004】例えば、図8に示される熱電モジュール式電気冷蔵庫においては、断熱材102,104により囲繞された庫内106後方に冷却用熱交換器108あるいは他の冷却側配管回路が配置されており、断熱材102を挟んでその反対側の庫外にに放熱用熱交換器110あるいは他の放熱側配管回路が配置されている。また、冷却側及び放熱側配管回路や熱電モジュールを電子制御する回路基板112は本体後方の庫外に形成された風路114の上部に取り付けられている。
【0005】かかる構成の熱電モジュール式電気冷蔵庫にあっては、その上面に載置され水が充填された花瓶等の容器が倒れると、容器からこぼれた水が上部グリル116を介して回路基板112にかかる可能性がある。回路基板112に水がかかると漏電する虞があるので、回路基板112の上部及び側部を覆う水よけカバー118を取り付けているのが実情である。
【0006】しかしながら、水よけカバー118を設けると、部品点数及び取り付け作業が増加するばかりでなく、大量の水がこぼれると水よけカバー118があっても回路基板112が濡れる虞があった。
【0007】本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、水よけカバーを設けなくても冷蔵庫本体の上部からこぼれた水が回路基板にかかることのない簡素で安全性が高くしかも故障の少ない熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、熱電モジュールの放熱面に熱結合した放熱側配管回路と、上記熱電モジュールの冷却面に熱結合した冷却側配管回路と、各配管回路内に充填された熱媒体と、該熱媒体を各配管回路内に循環させるポンプと、放熱用および冷却用ファンとを備えた熱電モジュール式電気冷蔵庫において、本体庫外に凹部を形成するとともに、上記放熱側及び冷却側配管回路を電子制御する回路基板を上記凹部の側壁に取り付けたことを特徴とする。
【0009】また、請求項2に記載の発明は、上記凹部を本体の後方下部に形成し、上記放熱側配管回路の構成要素を上記凹部に収納するとともに上記回路基板に近接配置したことを特徴とする。
【0010】さらに、請求項3に記載の発明は、上記放熱側配管回路を構成するファンの風下側に上記回路基板を取り付けたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示されるように、本発明にかかる熱電モジュール式電気冷蔵庫Rには、熱電モジュール2を内蔵する熱交換ユニット4を介して放熱側の配管回路6と冷却側の配管回路8とが設けられており、放熱側配管回路6は熱電モジュール2の放熱面に熱結合される一方、冷却側配管回路8は熱電モジュール2の冷却面に熱結合されている。熱交換ユニット4の内部には、熱電モジュール2を挟んで二つのキャビティ10,12が形成されており、キャビティ10を含む放熱側配管回路6内と,キャビティ12を含む冷却側配管回路8内をそれぞれの熱媒体が循環する。
【0012】放熱側配管回路6は、熱交換器14とポンプ16とを有し、キャビティ10を含む閉回路を構成する一方、冷却側配管回路8についても、放熱側配管回路6と同様に、熱交換器18とポンプ20とを有し、キャビティ12を含む閉回路を構成している。各配管回路6,8の熱交換器14,18はファン22,24により送風され熱交換を行う。
【0013】図2及び図3に示されるように、本発明にかかる熱電モジュール式電気冷蔵庫Rは、公知の冷蔵庫と同様な外観を呈しており、箱型の本体26と、本体26の前面に開閉自在に取り付けられた扉28とを備えている。本体26と扉28には、公知の冷蔵庫と同様に、断熱材30,32が設けられ、閉空間の庫34が形成されている。
【0014】冷蔵庫本体26後方の庫外に取り付けられる放熱側の配管回路6について、図4及び図5を参照して更に詳述する。熱電モジュール2を内蔵する熱交換ユニット4は本体26の上部後方に取り付けられ、放熱側キャビティ10は接続管36を介して熱交換器14に接続されている。熱交換器14は、ポンプ16の上部に取り付けられたタンク38に接続管40を介して接続され、タンク38と連通するポンプ16は接続管42を介して熱交換ユニット4の放熱側キャビティ10と連通している。また、熱交換器14の上方にはファン22が取り付けられるともに、熱交換器14の下方にはドレン受け皿44が配設されている。
【0015】ここで、放熱側配管回路6の構成要素のうち、熱交換器14と、その上方に取り付けられるファン22と、ファン22の横に隣接配置されたポンプ16及びタンク38は、冷蔵庫本体26の後方下部に形成された凹部46に収容されるとともに、後部カバーパネル48により覆われており、後部カバーパネル48の上方には上部グリル50が取り付けられている。
【0016】また、熱交換器14はドレン受け皿44の上部に近接配置されており、スポンジ等の多孔質部材52の下部をドレン受け皿44に埋没させるとともに、その上部を熱交換器14の側面に接触した状態で上方に延在せしめている。
【0017】なお、54は冷蔵庫Rに電力を供給する電源コードであり、熱電モジュール2、ポンプ16,20、ファン22,24、各種ランプ、センサ等は、後部カバーパネル48と対向する凹部46の壁部に取り付けられた回路基板55により電子制御されている。
【0018】次に、冷蔵庫本体26の庫内後方に取り付けられる冷却側の配管回路8について、図6及び図7を参照して詳述する。本体26の上部後方に取り付けられた熱交換ユニット4の冷却側キャビティ12は、接続管56を介して熱交換器18に接続されている。熱交換器18は、ポンプ20の上部に取り付けられたタンク58に接続管60を介して接続され、タンク58と連通するポンプ20は接続管62を介して冷却側キャビティ12と連通している。また、熱交換器18の上方で熱交換ユニット4の前方にはファン24が取り付けられている。
【0019】ここで、放熱側配管回路6の構成要素のほとんどが収容された庫外凹部46の上方の庫内にも凹部64が形成されており、冷却側配管回路8の構成要素のほとんどは、この凹部64に収容されている。冷却側配管回路8と貯蔵室とは仕切り板66で仕切られている。
【0020】上記構成の冷蔵庫Rに給電すると、放熱側配管回路6においては、ポンプ16により熱媒体が熱交換ユニット4の放熱側キャビティ10に送り込まれ、熱電モジュール2の放熱面より吸熱する。吸熱により温度上昇した熱媒体は、熱交換器14により冷却され、冷却された熱媒体はポンプ16により再び熱交換ユニット4に供給される。
【0021】熱媒体の冷却に際し、ドレン受け皿44の近傍に穿設された多数の開口部を介してファン22により吸引された空気は図3の矢印A方向に流れて熱交換器14を通過する熱媒体を冷却し、後部カバーパネル48内の風路を通過した後、上部グリル50より上方に放出される。この時、回路基板55はファン22の風下側に配置されていることから、回路基板55の発熱部分も同時に冷却される。
【0022】一方、冷却側配管回路8においては、ポンプ20により熱媒体が熱交換ユニット4の冷却側キャビティ12に送り込まれ、熱電モジュール2の冷却面と熱交換して冷却される。冷却され温度低下した熱媒体は、熱交換器18を介して庫内を冷却した後、再び熱交換ユニット4に供給される。
【0023】庫内の冷却は、仕切り板66の上部に穿設された開口部66aを介してファン24により庫内に送り込まれる温度低下した空気により行われる。この空気は、庫内を冷却した後、仕切り板66の下部に穿設された開口部66bを介して仕切り板66後方の風路68を図3の矢印B方向に上昇し、熱交換器18を通過した後再び庫内に送り込まれる。
【0024】なお、熱交換器18を空気が通過する時に熱交換器18の表面に結露が発生するが、この結露水は仕切り板66の後方の風路68を流下し、その下方に設けられた排水管70を介してドレン受け皿44に導かれる。また、熱交換器18の周囲に発生したドレンは風路68内を下降し、排水管70を介してドレン受け皿44に導かれる。
【0025】ドレン受け皿44に回収されたドレンは、多孔質部材52により吸い上げられて、ドレン受け皿44の上方に近接配置され多孔質部材52と接触する放熱側熱交換器14の放熱により蒸発し、風路を介して上部グリル50より外部に放出される。
【0026】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。本発明のうちで請求項1に記載の発明によれば、放熱側及び冷却側配管回路を電子制御する回路基板を冷蔵庫本体の庫外に形成した凹部の側壁に取り付けたので、水よけカバーを設けなくても回路基板に水がかかる虞がない。
【0027】また、請求項2に記載の発明によれば、放熱側配管回路の構成要素を本体の後方下部に形成した凹部に収納するとともに回路基板に近接配置したので、本体後方の構造がコンパクトになり、簡素な回路基板収納構造を提供することができる。
【0028】さらに、請求項3に記載の発明によれば、放熱側配管回路を構成するファンの風下側に回路基板を取り付けたので、ファンからの送風を利用して回路基板の発熱部品を冷却することができ、構造が簡素で安全性が高く、しかも故障が減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる回路基板収納構造を採用した熱電モジュール式電気冷蔵庫の冷凍系統図である。
【図2】 図1の電気冷蔵庫の斜視図である。
【図3】 図2の電気冷蔵庫の縦断面図である。
【図4】 図2の電気冷蔵庫の放熱側配管回路の一部を示す分解斜視図である。
【図5】 図2の電気冷蔵庫の放熱側配管回路の別の一部を示す分解斜視図である。
【図6】 図2の電気冷蔵庫の冷却側配管回路の一部を示す分解斜視図である。
【図7】 図2の電気冷蔵庫の冷却側配管回路の別の一部を示す分解斜視図である。
【図8】 従来の熱電モジュール式電気冷蔵庫の縦断面図である。
【符号の説明】
2 熱電モジュール
4 熱交換ユニット
6 放熱側配管回路
8 冷却側配管回路
10,12 キャビティ
14,18 熱交換器
16,20 ポンプ
22,24 ファン
26 本体
28 扉
34 庫
44 ドレン受け皿
46,64 凹部
52 多孔質部材
55 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱電モジュールの放熱面に熱結合した放熱側配管回路と、上記熱電モジュールの冷却面に熱結合した冷却側配管回路と、各配管回路内に充填された熱媒体と、該熱媒体を各配管回路内に循環させるポンプと、放熱用および冷却用ファンとを備えた熱電モジュール式電気冷蔵庫において、本体庫外に凹部を形成するとともに、上記放熱側及び冷却側配管回路を電子制御する回路基板を上記凹部の側壁に取り付けたことを特徴とする熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造。
【請求項2】 上記凹部を本体の後方下部に形成し、上記放熱側配管回路の構成要素を上記凹部に収納するとともに上記回路基板に近接配置した請求項1に記載の熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造。
【請求項3】 上記放熱側配管回路を構成するファンの風下側に上記回路基板を取り付けた請求項1あるいは2に記載の熱電モジュール式電気冷蔵庫の回路基板収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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