説明

燃料タンクの給油部構造

【課題】給油ガンの径が特定範囲外であっても、給油ガンからの押圧によらずに開閉弁のロックを解除可能な燃料タンクの給油部構造を得る。
【解決手段】給油口部材16には、ロックレバー30が設けられている。ロックレバー30は、特定範囲の径の給油ガンによって、フラッパバルブ20のロックを解除するロック解除位置へ移動する。操作部材44の操作によっても、ロックレバー30をロック解除位置へ移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の燃料タンクに給油するための給油部構造として、給油ノズルが挿入される給油口をフラッパバルブ等の開閉弁で開閉できるようにしたものがある、たとえば特許文献1には、開閉部材(フラッパバルブ)にロック部材を設け、所定の径の給油ノズルでロック解除起動部が押圧されるとロック部材によるロックを解除する構造が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1の構造では、所定範囲内の径の給油ノズルでロック解除起動部を押圧した場合のみ、ロック部材のロックを解除できる。したがって、所定範囲内の径のノズルが給油所等に備えられていない地域等では、開閉弁のロックを解除できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、給油ガンの径が特定範囲外であっても、給油ガンからの押圧によらずに開閉弁のロックを解除可能な燃料タンクの給油部構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、燃料タンクへの給油用の給油ガンが挿入される給油口を構成する給油口部材と、前記給油口を開閉可能な開閉弁と、前記給油口を開放する開放位置と給油口を閉塞する閉塞位置との間で回動可能に前記開閉弁を前記給油口部材に取り付けるための回動部材と、前記給油口部材に設けられ、前記開閉弁を前記閉塞位置で回動不能にロックするロック位置と、ロックすることなく回動可能とする非ロック位置との間を移動可能とされたロック部材と、特定範囲の径の給油ガンに押圧されると前記ロック部材を前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動させるロック解除部材と、操作により前記ロック部材を前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動させる操作部材と、を有する。
【0007】
この燃料タンクの給油部構造では、開閉弁が給油口部材に対し回動部材によって回動可能に取り付けられている。通常は、給油口が開閉弁によって閉塞されると共に、開閉弁がロック部材によって閉塞位置でロックされている。
【0008】
ロック部材は、開閉弁を閉塞位置で回動不能にロックするロック位置と、ロックすることなく回動可能とする非ロック位置との間を移動可能とされている。ロック解除部材は、特定範囲の径の給油ガンに押圧されるとロック部材を非ロック位置へ移動させる。ロック部材は非ロック位置では開閉弁に対するロックを解除するため、開閉弁は回動可能となる。したがって、この状態で開閉弁が給油ガンに押圧されると開閉弁が回動され、給油口が開放される。ロック部材は、特定範囲の径以外の給油ガンにより押圧されても開閉弁のロックを解除しないので、開閉弁は回動しない。すなわち、特定範囲の径以外の給油ガンの挿入を防止できる。
【0009】
また、この燃料タンクの給油部構造では、操作部材を備えている。操作部材は、操作により、ロック部材をロック位置から非ロック位置へ移動させる。したがって、給油ガンの径が特定範囲外であっても、操作により開閉弁のロックを解除し、開閉弁を開放位置へ回動させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記操作部材により前記ロック部材が前記非ロック位置に移動した状態で、ロック部材を該非ロック位置に保持する保持部材、を有する。
【0011】
したがって、操作部材によりロック部材が非ロック位置に移動した状態で、操作部材への操作を解除しても、ロック部材は非ロック位置に保持され、操作性が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ロック部材が、一端側に形成されて前記開閉弁と係合し前記ロックを行う係合部と、他端側に形成されて前記操作部材の操作時に操作部材に押圧される被押圧部と、中間部分で前記給油口部材に回転可能に支持される回転支持部と、を有する一対のロックレバーとされ、前記操作部材が、前記被押圧部を押圧することにより前記ロックレバーを前記回転支持部まわりに回転させて前記非ロック位置へ移動させる。
【0013】
したがって、ロックレバーを、中間部分の回転支持部を中心として回転させることで、ロック位置と非ロック位置の間を移動(回動)させることができる。ロック位置では、一端側に形成された係合部が開閉弁と係合して開閉弁の移動をロックする。また、操作部材の操作時には、他端側に形成された被押圧部が操作部材に押圧され、ロック位置から非ロック位置へ回動する。
【0014】
ロックレバーは一対設けられているので、たとえば1つのみ設けられた構成と比較して、開閉弁のロック状態をより確実に維持できる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記操作部材が、前記一対のロックレバーの前記被押圧部に共通で設けられている。
【0016】
このように、操作部材を一対のロックレバーに対して共通化することで、ロックレバーのそれぞれに対して操作部材を設けた構成と比較して、部品点数が少なくなる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記保持部材が、前記ロックレバーの前記被押圧部が嵌合することでロックレバーを非ロック位置に保持する嵌合部を有する。
【0018】
嵌合部にロックレバーの被押圧部が嵌合することで、ロックレバーを非ロック位置に確実に保持できる。保持部材に嵌合部を設けるだけでロックレバーを非ロック位置に保持でき、構造の複雑化を招かない。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において前記保持部材が、前記一対のロックレバーの前記被押圧部に共通で設けられている。
【0020】
このように、保持部材を一対のロックレバーに対して共通化することで、ロックレバーのそれぞれに対して保持部材を設けた構成と比較して、部品点数が少なくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成としたので、給油ガンの径が特定範囲外であっても、給油ガンからの押圧によらずに開閉弁のロックを解除可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造をフラッパバルブが閉塞位置にある状態で外側から示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造を示し、(A)が正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造を示す図2(A)の3−3線断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造をフラッパバルブのロックが解除された状態で示し、(A)が正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造をフラッパバルブが閉塞位置から開放位置へ回動する途中の状態で示し、(A)が正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第1変形例の燃料タンクの給油部構造を図2(B)と同様の断面で示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の第2変形例の燃料タンクの給油部構造を図2(B)と同様の断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、本発明の第一実施形態の燃料タンクの給油部構造(以下、単に「給油部構造」とする)12の外観形状が示されている。図1から分かるように、本実施形態では、給油口を閉塞するためのキャップが不要な構造(いわゆるキャップレスの構造)となっている。
【0024】
図示しない燃料タンクには、同じく図示しないインレットパイプの下端が接続されている。このインレットパイプの上部に、給油部構造12が適用されている。なお、本実施形態に係る燃料タンクは、ガソリン用とされている。
【0025】
インレットパイプの上部には、略円筒状の給油口部材16が設けられている。図2(B)等にも示すように、給油口部材16の内部が給油口26となっており、上端の開口部18から給油ガン28(図2(B)等参照)を給油口26に挿入し、燃料タンクに給油することが可能とされている。
【0026】
なお、以下において、単に「奥側」というときは、給油口部材16において燃料タンクに近い側(図2(B)における右側)をいい、「手前側」というときは、その反対側、すなわち、給油ガン28を挿し入れる側(図2(B)における左側)をいう。また、「径方向」というときは、略円筒状の給油口部材16の径方向をいう。
【0027】
給油口部材16の上部、すなわち給油口26の開口部18には、フラッパバルブ20が備えられている。
【0028】
フラッパバルブ20は、その上部に設けられたヒンジ22によって、給油口部材16に回動可能に取り付けられている。そして、フラッパバルブ20は、給油口26を閉塞する閉塞位置TP(実線で示す位置)と、給油口26を開放する開放位置HP(二点鎖線で示す位置)との間を回動する。開放位置HPでは、フラッパバルブ20の下部、すなわちヒンジ22が配置された側と反対側が、奥側(図2(B)では右側)に大きく移動している。なお、給油口部材16の内面には図示しないストッパが設けられており、フラッパバルブ20の回動範囲(開放位置)が所定範囲に制限されている。
【0029】
フラッパバルブ20は、開口部18よりも全体として大径とされている、図3に示すように、フラッパバルブ20の外周部分には開口部18の周縁に隙間無く密着するための環状のガスケット24(図2等では図示省略)が装着されている。フラッパバルブ20が閉塞位置TPにあるとき、ガスケット24が開口部18の周縁に給油口部材16の内側から接触して、開口部18を確実に閉塞する。
【0030】
ヒンジ22には、フラッパバルブ用バネ36(図2(B)参照)が巻きかけられている。フラッパバルブ用バネ36は、フラッパバルブ20を閉塞位置TPに向かって付勢しており、不用意に給油口26が開放されないようになっている。フラッパバルブ20は、開口部18から挿入されようとする給油ガン28で押されると、フラッパバルブ用バネ36の付勢力に抗して、開放位置HPへと移動(回動)する。
【0031】
図1及び図2(A)に示すように、給油口部材16には、一対のロックレバー30が取り付けられている。ロックレバー30のそれぞれは、給油口部材16を正面視したとき開口部18を取り囲むように湾曲されている。また、2つのロックレバー30は、同じく正面視にて、左右対称に配置されている。
【0032】
ロックレバー30のそれぞれの長手方向中間部分には支軸30Sが設けられている。支軸30Sは、本発明の回転支持部の一例であり、この支軸30Sによって、ロックレバー30が給油口部材16に対し、図2(A)に示すロック位置LPと、図4(A)及び図5(A)に示す非ロック位置UPとの間で回転可能に支持されている。給油口部材16にはロックレバー用バネ32が装着されている。ロックレバー用バネ32は、ロックレバー30のそれぞれをロック位置LPに向かって付勢している。
【0033】
ロックレバー30のそれぞれの下端側には、給油口部材16を正面視したときの中心線CL1に向かって延出された係合部30Kが形成されている。係合部30Kは、ロックレバー30がロック位置LPにあるとき、中心線CL1に近い位置となる。そして、フラッパバルブ20が閉塞位置TPにあるときに、フラッパバルブ20に設けられた被係合部20Kに係合する。この係合により、フラッパバルブ20は閉塞位置TPで回動可能にロックされる。特に、本実施形態では、係合部30Kがヒンジ22から離れた位置にある。したがって、係合部30Kがヒンジ22に近い位置にある構成と比較して、フラッパバルブ20のロック状態をより確実に維持可能となっている。
【0034】
これに対し、ロックレバー30が非ロック位置UPにあるときには、係合部30は、中心線CL1から相対的に(ロックレバー30がロック位置LPにあるときと比較して)遠い位置になる。
【0035】
ロックレバー30のそれぞれの上端側には、被押圧部30Pが形成されている。被押圧部30Pは、後述するように、操作部材44が操作されると、操作部材44のロック解除押圧片44Rに押されて図2(B)における下方へ移動し、ロックレバー30をロック位置LPから非ロック位置UPへ回転させる作用を奏する。このとき、2つの被押圧部30Pは、給油口部材16の正面視にて互いに重なっている。
【0036】
フラッパバルブ20には、ロックレバー30の係合部30Kと図2(A)における横方向に対向する一対のロック解除片38が設けられている。ロック解除片38のそれぞれは、図示しない支持部材によって、図2(A)及び図3における左右方向に移動可能に支持されている。特に、ロック解除片38が図3に示す矢印M1方向(それぞれ離間する方向)に移動すると、ロックレバー30の係合部30Kを押圧し、ロックレバー30をロック位置から非ロック位置UPへ回転させる。
【0037】
図3にも示すように、ロック解除片38は、手前側にテーパー面38Tが形成されている。2つのテーパー面38Tの間隔は、燃料タンクに本来給油される燃料(適合燃料)の給油ガンに対応した間隔とされている。したがって、適合燃料の給油ガンがテーパー面38Tにあてがわれた状態で、給油口26の内部に向かって押されると、ロック解除片38が矢印M1方向(図3参照)に移動する。これにより、ロックレバー30もロック位置LPから非ロック位置UPへ移動する。これに対し、燃料タンクに給油すべきでない燃料(不適合燃料)の給油ガンは、テーパー面38Tに接触しない(たとえ接触しても一方のテーパー面38Tのみに対する接触であり、双方のテーパー面38Tには接触しない)ため、ロックレバー30の少なくとも一方はロック位置LPを維持する。
【0038】
給油口部材16には、図2(B)にも示すように、適合燃料の給油ガン28がフラッパバルブ20にあてがわれる挿入領域SEの上方に案内部材40が設けられている。さらに、案内部材40の左右位置にも案内片42が設けられている。案内部材40及び案内片42の手前側には、給油ガン28が挿入領域SEからずれた位置で給油口26に挿入されようとしたときに、給油ガン28を挿入領域SEへ案内する傾斜案内面40Gが形成されている。
【0039】
図1、図2(A)及び(B)に示すように、給油口部材16には、案内部材40のさらに上方に、操作部材44が取り付けられている。操作部材44は、給油口部材16において、給油ガン28の挿入方向(矢印A1方向)と平行に形成された支持孔16Hに挿通された支持ピン44Sを有している。支持ピン44Sよりも奥側には、ロック解除押圧片44Rが形成され、手前側にはロック解除ボタン44Bが形成されている。ロック解除押圧片44R及びロック解除ボタン44Bのそれぞれの高さは、支持孔16Hの内径よりも長くされており、操作部材44が支持孔16Hに対し抜け止めされている。
【0040】
さらに、ロック解除押圧片44Rとロック解除ボタン44Bの間隔は、給油口部材16において支持孔16Hが形成された支持孔形成壁16Wの板厚よりも広くなっており、操作部材44は矢印A1方向及びその反対方向にスライド可能とされている。
【0041】
支持孔形成壁16Wとロック解除ボタン44Bとの間には、操作部材用バネ46が装着されている。操作部材用バネ46は、操作部材44を矢印A1と反対の方向(手前側)に付勢している。そして、ロック解除ボタン44Bを矢印A1方向に押すことで、操作部材用バネ46の付勢力に抗して、操作部材44を矢印A1方向(奥側)に移動させることができる。
【0042】
図2(B)から分かるように、操作部材44のロック解除押圧片44Rは、その下部にロック解除面44Tが形成されている。ロック解除面44Tは、奥側から手前側に向かうにしたがって給油口部材16の中心に向かって傾斜されている。ロック解除ボタン44Bを押していない状態では、ロック解除面44Tは、矢印A1方向で見てロックレバー30の被押圧部30Pと対向しているが、押圧はしていない。このため、ロックレバー30はロック位置LPに維持されている。以下、操作部材44のこの位置をロック非解除位置NPとする。
【0043】
これに対し、図4(B)に示すように、操作部材44が矢印A1方向に移動すると、ロック解除面44Tがロックレバー30の被押圧部30Pを押圧し、被押圧部30Pが図4(B)における下方に移動するため、ロックレバー30が非ロック位置UPへ移動する。以下、操作部材44のこの位置をロック解除位置RPとする。換言すれば、このように、操作部材44をロック非解除位置NPからロック解除位置RPへ移動することにより、ロックレバー30をロック位置LPから非ロック位置UPへ回転させることができるように、ロック解除面44Tが被押圧部30Pとの関係において、その構造及び位置を決められている。
【0044】
特に、本実施形態では、2つの被押圧部30Pが正面視にて重なっており、2つの被押圧部30Pに対し、操作部材44を共通化している。これにより、2つの被押圧部30Pのそれぞれに対して操作部材44を設けた構成と比較して、部品点数が少なくなっている。また、1つの操作部材44を操作するだけでロックレバー30を非ロック位置UPへ移動させることができ、操作性も高くなっている。
【0045】
給油口部材16には、操作部材44よりも下方の位置に、保持部材48が設けられている。保持部材48は、支持孔形成壁16Wよりも奥側の位置において、図示しない支持部によって、矢印A1方向及びその反対方向にスライド可能に支持されている。
【0046】
保持部材48は、給油口部材16の軸方向に延在された戻し片48Mと、この戻し片48Mと平行に設けられた係合片48K、及び、戻し片48Mと係合片48Kとを手前側で連結する連結片48Cを有している。すなわち、保持部材48は全体として、側方から見て奥側に開放された略U字状に形成されている。そして、戻し片48M、係合片48K、及び、連結片48Cによって、「嵌合部」が構成されている。
【0047】
支持孔形成壁16Wと連結片48Cとの間には、保持部材用バネ50が装着されている。保持部材用バネ50は保持部材48を矢印A1方向(奥側)に向かって付勢している。本実施形態では特に、戻し片48Mは係合片48Kよりも長く形成されており、その先端が閉塞位置TPにあるフラッパバルブ20に接触している。これにより、フラッパバルブ20が閉塞位置TPにあるときは、戻し片48Mがフラッパバルブ20に接触することで、保持部材48の矢印A1方向へのスライドが所定範囲に制限されている。
【0048】
保持部材48の係合片48Kの先端部分は、図2(B)から分かるように、ロックレバー30がロック位置LPにあるときの被押圧部30Pに対し矢印A1方向で見て対向しているが、図4に示すように、ロックレバー30が非ロック位置UPに移動すると、被押圧部30Pが下方に移動するため、連結片48Cと対向する。この状態で、図5(B)に示すように、フラッパバルブ20が閉塞位置TPから開放位置HPへと回動しようとすると、保持部材用バネ50の付勢力を受けて保持部材48が矢印A1方向に移動する。被押圧部30Pは戻し片48Mと係合片48Kとの間に嵌合された状態となる。ロックレバー30がロック位置LPに戻ろうとしても、被押圧部30Pが係合片48Kに係合するため、ロックレバー30は非ロック位置UPに保持される。
【0049】
これに対し、ロックレバー30が開放位置HPから閉塞位置TPに戻るときには、その途中で戻し片48Mに接触するため、保持部材用バネ50の付勢力に抗して保持部材48が矢印A1と反対の方向に移動される。所定位置まで保持部材48が移動すると、係合片48Kが被押圧部30Pに係合しなくなるため、ロックレバー30はロックレバー用バネ32の付勢力を受けて、ロック位置LPに回動する。
【0050】
本実施形態では、保持部材48も、2つの被押圧部30Pに対し共通化している。これにより、2つの被押圧部30Pのそれぞれに対して保持部材48を設けた構成と比較して、部品点数が少なくなっている。
【0051】
次に、本実施形態の給油部構造12の作用を説明する。
【0052】
通常状態では、図2(A)に示すように、ロックレバー用バネ32の付勢力を受けてロックレバー30がロック位置LPにあるため、係合部30Kがフラッパバルブ20の被係合部20K(図3参照)と係合している。これにより、図2(B)に示すように、フラッパバルブ20は閉塞位置TPでロックされ、不用意に回動することはない。
【0053】
以下においては、燃料タンクに給油するときに、適合燃料に対応した特定範囲の径の給油ガンがあらかじめ用意されている地域(給油ガン適合地域)と、適合燃料の給油ガンとして、径が特定範囲に無い給油ガンしか用意されていない地域(給油ガン不適合地域)に分けて、燃料タンクへの給油を説明する。
【0054】
まず、給油ガン適合地域では、適合燃料の給油ガンにより給油を行う場合、給油ガン28の先端が2つのロック解除片38のテーパー面38Tにそれぞれ接触するので、給油ガン28をさらに奥側に移動させることで、ロック解除片38を互いに離間する方向(図3の矢印M1方向)へ移動させる。これにより、ロックレバー30が非ロック位置UPへ移動される。
【0055】
ロックレバー30の非ロック位置UPへの移動により、フラッパバルブ20のロックが解除されるので、フラッパバルブ20は閉塞位置TPから開放位置HPへ回動可能となる。さらに給油ガン28を給油口26の奥側へ差し入れることで、フラッパバルブ20を開放位置HPへ移動させることができる。そして、給油口26の所定位置まで給油ガン28を差し入れた状態で、燃料タンクへの給油を行うことが可能である。
【0056】
これに対し、不適合燃料の給油ガンにより給油を行おうとしても、不適合燃料の給油ガンは、2つのロック解除片38のテーパー面38Tに同時に接触することはない。ロック解除片38はロック解除位置RPへ移動せず、ロックレバー30もロック位置LPを維持する。フラッパバルブ20のロックが維持されるので、フラッパバルブ20は閉塞位置から回動しない。すなわち、不適合燃料の給油ガンを給油口26に差し入れることはできず、いわゆる誤給油が防止される。
【0057】
次に、給油ガン不適合地域で給油する場合を考える。この場合、適合燃料の給油ガンであっても、2つのロック解除片38のテーパー面38Tの双方に同時に接触するような特定範囲の径を有していないので、ロック解除片38の2つを共にロック解除位置RPに移動させることはできず、ロックレバー30を非ロック位置UPに移動させることもできない。
【0058】
この場合には、給油者(もちろん、給油者以外の者であってもよい)が、図4(B)に示すように、操作部材44のロック解除ボタン44Bを矢印A1方向に押し、操作部材用バネ46の付勢力に抗して操作部材44を移動させる。これにより、ロック解除片38のロック解除面44Tがロックレバー30の被押圧部30Pを押圧するため、被押圧部30Pが下方に移動する。図4(A)に示すように、ロックレバー30はロック位置LPから非ロック位置UPへと回動し、フラッパバルブ20のロックが解除されるので、フラッパバルブ20は閉塞位置TPから開放位置HPへ回動可能となる。
【0059】
この状態で給油ガンをフラッパバルブ20にあてがって奥側に移動させることで、フラッパバルブ20を開放位置HPへ回動させることができる。そして、給油口26の所定位置まで給油ガンを差し入れた状態で、燃料タンクへの給油を行うことができる。
【0060】
しかも、フラッパバルブ20が開放位置HPにあるとき(厳密には、図5(B)からも分かるように、閉塞位置TPから開放位置HPに移動する途中から)、保持部材用バネ50の付勢力を受けた保持部材48が奥側(矢印A1方向)に向かって移動し、係合片48Kが被押圧部30Pに係合する。したがって、操作部材44のロック解除ボタン44Bを押し続けなくても(押す操作を止めても)、ロックレバー30を非ロック位置UPに維持できる。
【0061】
たとえば、給油ガンとして先端部分の外周にコイル状の給油ガンスプリングが巻きかけられた構造のものがあり、このような給油ガンを給油口26に抜き差しする場合に、ロックレバー30がロック位置LPにあると、係合片48Kが給油ガンスプリングに引っ掛かり、抜き差しの操作性が低下するおそれがある。本実施形態の給油部構造12では、給油ガン28を給油口26に抜き差しする間は、ロックレバー30がロック解除位置RPを維持しており、係合片48Kが給油ガンスプリングに接触する可能性が低くなるので、抜き差しの操作性に優れる。
【0062】
なお、給油ガンの径に関わらず、給油終了後は、給油ガンを給油口26から抜くと、フラッパバルブ20がフラッパバルブ用バネ36の付勢力を受けて閉塞位置TPへ回動する。このとき、フラッパバルブ20が保持部材48の戻し片48Mを押すので、保持部材用バネ50の付勢力に抗して保持部材48が矢印A1と反対の方向に移動する。そして、係合片48Kが被押圧部30Pから離れる。このため、閉塞位置TPに戻ったフラッパバルブ20に対し、ロックレバー30もロック位置LPに戻るので、係合部30Kがフラッパバルブ20の被係合部20Kに係合して、フラッパバルブ20が閉塞位置TPで再びロックされる。
【0063】
なお、本発明の保持部材の構造は、上記した保持部材48に限定されない。たとえば、図6に示す第1変形例の給油部構造72としてもよい。第1変形例では、戻し片48Mが係合片48Kと同程度の長さ(図2(B)に示した戻し片48Mよりも短い)とされているが、フラッパバルブ20には、戻し片48Mの先端と対向する突起部20Tが形成されている。したがって、フラッパバルブ20が閉塞位置TPから開放位置HPへ回動すると、突起部20Tが戻し片48Mを押すため、保持部材48が矢印A1と反対の方向に移動する。
【0064】
また、図7に示す第2変形例の給油部構造82としてもよい。第2変形例では、第1変形例と同程度に短い戻し片48Mを有すると共に、フラッパバルブ20に突起部20Tも形成されていないが、手前側に操作ノブ84が設けられている。この操作ノブ84を用いて保持部材48を矢印A1と反対の方向に移動させることができる。
【0065】
なお、第2変形例の構成では、保持部材48を矢印A1と反対の方向に戻す動作を、操作ノブ84により行っているため、戻し片48Mを省略することも可能である。
【0066】
なお、保持部材48がない構造であっても、操作部材44を有していれば、操作部材44の操作によりロックレバー30をロック解除位置RPへ移動させてフラッパバルブ20のロックを解除することが可能である。この構成では、たとえば、フラッパバルブ20が開放位置HPから閉塞位置TPへ戻るときの特定のタイミングで、操作部材44を一時的に矢印A1方向に移動させる操作を行えば、ロックレバー30も一時的にロック解除位置RPへ移動するので、フラッパバルブ20はスムーズ(ロックレバー30に引っかかることなく)に閉塞位置TPに戻る。
【0067】
いすれの例においても、本発明の「嵌合部」が、保持部材48の係合片48Kによって構成されているが、嵌合部としては係合片48Kに限定されず、たとえば、ロックレバー30の一部(被押圧部30Pに限定されない)を保持あるいは挟持することで、ロック解除位置RPに維持できる構造でもよい。
【0068】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、給油ガンの径が、特定範囲にない(2つあるいはそれ以上のロック解除片38のテーパー面38Tを同時に押すことができない)場合であっても、操作部材44を操作することで、ロックレバー30によるフラッパバルブ20のロックを解除できる。
【0069】
上記では、本発明のロック部材の例として、中間部分の支軸30Sで回転可能に給油口部材16に取り付けられた構造のもの(ロックレバー30)を挙げているが、ロック部材としては、要するに、給油口部材16に取り付けられて、フラッパバルブ20を閉塞位置でロックするロック位置と、ロックしない非ロック位置との間を移動可能となっていればよい。たとえば、スライドによるロック位置と非ロック位置とを移動するスライドロック部材であってもよい。
【0070】
また、上記では、本発明のロック解除部材として、フラッパバルブ20に設けられたロック解除片38を挙げているが、要するに、特定範囲の径の給油ガン28に押されることで、ロックレバー30(ロック部材)をロック位置LPから非ロック位置UPへ移動させることができればよい。たとえば、ロックレバー30の係合片48Kの先端に、給油ガン28に押されるとロックレバー30を非ロック位置UPに回動させるテーパー面をロック解除部材として形成し、フラッパバルブ20のロック解除片38は省略することで、部品点数を少なくしてもよい。
【0071】
上記実施形態のように、ロック部材とは別体でロック解除部材を設けると、テーパー面38Tの形状やロック解除片38の移動量等の制約が少なくなり、ロック解除時の操作性が高くなる。
【0072】
本発明の「操作部材」としても、上記したように、押圧操作によりロックレバー30を非ロック位置へ移動させるものだけでなく、引き操作、スライド操作、回転操作等によるものでもよい。さらに、押圧部材が、ロック部材(ロックレバー30)に一体的に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
12 給油部構造
16 給油口部材
18 開口部
20 フラッパバルブ(開閉弁)
20T 突起部
26 給油口
28 給油ガン
30 ロックレバー(ロック部材)
30K 係合部
30S 支軸(回転支持部)
30P 被押圧部
38 ロック解除片(ロック解除部材)
40 案内部材
44 操作部材
48 保持部材
48K 係合片(嵌合部)
48M 戻し片(嵌合部)
48C 連結片(嵌合部)
72 給油部構造
82 給油部構造
84 操作ノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクへの給油用の給油ガンが挿入される給油口を構成する給油口部材と、
前記給油口を開閉可能な開閉弁と、
前記給油口を開放する開放位置と給油口を閉塞する閉塞位置との間で回動可能に前記開閉弁を前記給油口部材に取り付けるための回動部材と、
前記給油口部材に設けられ、前記開閉弁を前記閉塞位置で回動不能にロックするロック位置と、ロックすることなく回動可能とする非ロック位置との間を移動可能とされたロック部材と、
特定範囲の径の給油ガンに押圧されると前記ロック部材を前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動させるロック解除部材と、
操作により前記ロック部材を前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動させる操作部材と、
を有する燃料タンクの給油部構造。
【請求項2】
前記操作部材により前記ロック部材が前記非ロック位置に移動した状態で、ロック部材を該非ロック位置に保持する保持部材、を有する請求項1に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項3】
前記ロック部材が、一端側に形成されて前記開閉弁と係合し前記ロックを行う係合部と、他端側に形成されて前記操作部材の操作時に操作部材に押圧される被押圧部と、中間部分で前記給油口部材に回転可能に支持される回転支持部と、を有する一対のロックレバーとされ、
前記操作部材が、前記被押圧部を押圧することにより前記ロックレバーを前記回転支持部まわりに回転させて前記非ロック位置へ移動させる請求項1又は請求項2に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項4】
前記操作部材が、前記一対のロックレバーの前記被押圧部に共通で設けられている請求項3に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項5】
前記保持部材が、前記ロックレバーの前記被押圧部が嵌合することでロックレバーを非ロック位置に保持する嵌合部を有する請求項3又は請求項4に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項6】
前記保持部材が、前記一対のロックレバーの前記被押圧部に共通で設けられている請求項5に記載の燃料タンクの給油部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1144(P2013−1144A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131178(P2011−131178)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】