説明

燃料タンク

【課題】本発明の課題は、製造容易でコストが低減され、タンク側で変位、衝撃等を吸収できる燃料タンクを提供することにある。
【解決手段】本発明に関わる燃料タンクは、給油口4から燃料が供給されるフィラーチューブ3ヘの接続部2を有する燃料タンク1であって、接続部2は、弾性変形可能な変位吸収部2jを有して燃料タンク1の本体1hと一体に成形され、かつ、接続部2の一端がフィラーチューブ3に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗り物の燃料を貯留する燃料タンクの燃料供給路の構造に係る燃料タンクおよびこれを備えた乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の燃料タンクに接続され燃料の供給路のフィラーチューブの継ぎ手の役割を果たす部材としてフィラーネックチューブがある。このフィラーネックチューブは、燃料タンクとは別に製造され、各々完成品である燃料タンクとフィラーネックチューブとを組付けるのが一般的である。
【0003】
図4〜図6は、従来の燃料タンクとフィラーチューブとの接続構造を示す断面図である。
例えば、図4に示すように、樹脂製のフィラーネックチューブ102の一方端部を燃料タンク101に溶着し、フィラーネックチューブ102の他方端部に給油口105につながる樹脂製のフィラーチューブ103を溶着したものがある。
【0004】
或いは、図5に示すように、給油口205につながるジャバラ形状203jに成形した樹脂製のフィラーパイプ203を直接、樹脂製の燃料タンク201に溶着する場合もある。
或いは、図6に示すように、樹脂製の燃料タンク301の給油流入口301kに変形防止用の金属カラー304が内装される。そして、給油流入口301kの外周の外側にゴム製のフィラーチューブ302を取り付け、樹脂バンド305がフィラーチューブ302の外周外側に抜け防止用として取り付けられたものがある。
なお、本願に係る先行技術文献として、下記の特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228481号公報(段落0009〜0011、図1〜図3等)
【特許文献2】特開2010−120536号公報(段落0021、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図4に示すブロー成形の樹脂製のフィラーチューブ103の場合、燃料タンク101との結合は溶着等を用いているが、変位吸収部がないために燃料タンク101とフィラーチューブ103との結合部に過大な外力が印加される恐れがある。
【0007】
燃料タンクとの結合部への過大な外力を避けるため、図5に示す樹脂製のフィラーパイプ203にジャバラ形状203jや図6に示すゴム製のフィラーチューブ302を適用することがあるが、金属製バンド305等の別部品の適用が必要の場合があり、燃料タンクへの組付け費用も含めてコスト増の要因となる。
【0008】
また、図5に示す樹脂製のフィラーパイプ203側に変位を吸収するジャバラ形状203jを設ける場合、フィラーパイプ203の金型構造上、方向が限定される場合がある。
【0009】
本発明は上記実状に鑑み、製造容易でコストが低減され、タンク側で外力による変位、衝撃等を吸収できる燃料タンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる燃料タンクは、給油口から燃料が供給されるフィラーチューブヘの接続部を有する燃料タンクであって、前記接続部は、弾性変形可能な変位吸収部を有して前記燃料タンクの本体と一体に成形され、かつ、前記接続部の一端が前記フィラーチューブに取付けられている。
第1の本発明に関わる燃料タンクによれば、燃料タンク側で外力による変位、衝撃等を吸収することができる。
【0011】
第2の本発明に関わる燃料タンクは、第1の本発明の燃料タンクにおいて、前記接続部は螺旋状の蛇腹部を有している。
第2の本発明に関わる燃料タンクによれば、燃料タンクの型割り部に関係なく接続部を設けることができる。
【0012】
第3の本発明に関わる燃料タンクは、第1または第2の本発明の燃料タンクにおいて、前記接続部の前記燃料タンク側および前記フィラーチューブ側のいずれかの端部、または、前記フィラーチューブの前記燃料タンク側の端部に、前記フィラーチューブを介して前記燃料タンクへ供給される燃料の前記フィラーチューブ側への逆流を防止する逆流防止手段が設けられている。
第3の本発明に関わる燃料タンクによれば、部品点数を少なくすることができる。
【0013】
第4の本発明に関わる燃料タンクは、第1から第3の何れかの本発明の燃料タンクにおいて、前記燃料タンクは樹脂材料を用いてブロー成形で形成されている。
第4の本発明に関わる燃料タンクによれば、製造が容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造容易でコストが低減され、タンク側で外力による変位、衝撃等を吸収できる燃料タンクを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係わる燃料タンクへ給油するための構成を示す要部断面図である。
【図2】実施形態の燃料タンクのチューブ接続部の周辺を示す断面図である。
【図3】(a)は燃料タンクを成形するための金型の構成を示す要部断面図であり、(b)は(a)に示す燃料タンクを成形するための金型の右側面図であり、(c)は、燃料タンクを成形するための金型の一つであるネジコアの構成を示す拡大断面図である。
【図4】従来の燃料タンクとフィラーチューブとの接続構造を示す断面図である。
【図5】従来の燃料タンクとフィラーチューブとの接続構造を示す断面図である。
【図6】従来の燃料タンクとフィラーチューブとの接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる燃料タンク1へ給油するための構成を示す要部断面図である。
実施形態の燃料タンク1は、四輪等の車両7に設けられ、その燃料が貯留されるタンクである。
【0017】
四輪等の車両7の後側部には、燃料タンク1に連通するフューエル注入口4が設けられている。給油時、フューエル注入口4に給油ガン6が挿入され、燃料タンク1に給油される。
燃料タンク1には、略円筒状のチューブ接続部2が中空形状の燃料タンク本体1hから突出して一体に形成されている。燃料タンク1のチューブ接続部2にはフューエル注入口4に連結されるフィラーチューブ3が結合されている。
【0018】
換言すれば、燃料タンク1のチューブ接続部2は、燃料タンク1を樹脂材料を用いてブロー成形する際に、従来の燃料タンクとフィラーチューブとの間に設けられるフィラーネックチューブを、燃料タンク本体1hと一体に形成したものである。
【0019】
図2は、図1に示す燃料タンク1のチューブ接続部2の周辺を示す断面図である。
チューブ接続部2には、燃料タンク1の一部として一体成形する際に、車両7の振動、衝撃等の変位を吸収させるジャバラ部2jが、弾性変形可能な変位を吸収する形状である螺旋状に形成されている。
【0020】
すなわち、燃料タンク1には、成形時に同時に変位を吸収する形状の螺旋状のジャバラ部2jをもつチューブ接続部2が、燃料タンク本体1hと一体に形成される。
図1に示すように、燃料タンク1に供給された燃料のフィラーチューブ3側への逆流を阻止するシャッタバルブ5が、燃料タンク1のチューブ接続部2における燃料タンク本体1h側の端部、または、フィラーチューブ3側の端部に取り付けられる。
【0021】
なお、図1では、シャッタバルブ5が、チューブ接続部2における燃料タンク本体1h側の端部に取り付けられた場合を示しており、シャッタバルブ5が、フィラーチューブ3におけるチューブ接続部2側の端部に取り付けられた場合を二点鎖線で示している。
【0022】
樹脂製の燃料タンク1と樹脂材料で形成されたフィラーチューブ3とは、溶着で図1に示すように接合される。
シャッタバルブ5がチューブ接続部2における燃料タンク本体1h側の端部に取り付けられた場合、シャッタバルブ5は、給油中には破線で示すように開く一方、給油停止中には実線で示すように閉じて燃料タンク1内の燃料のフィラーチューブ3側への逆流を阻止する。
【0023】
このように、燃料タンク本体1hとフィラーチューブ3との間の接続部であるチューブ接続部2を燃料タンク本体1hと一体に形成することにより、燃料タンク1からフューエル注入口4までの部品点数を少なくできる。また、車両7の振動、衝撃等が発生した場合、燃料タンク1に形成されたチューブ接続部2の螺旋状のジャバラ部2jが弾性変形することにより車両7の振動、衝撃等の変位を吸収、減衰し、振動や衝撃等が燃料タンク1へ伝達するのを抑制することができる。
【0024】
次に、樹脂製の燃料タンク1の成形方法について説明する。
燃料タンク1は、前記したように、樹脂材料を用いてブロー成形によって成形される。
図3(a)は、燃料タンク1を成形するための金型Kの構成を示す要部断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す燃料タンク1を成形するための金型の右側面図であり、図3(c)は、燃料タンク1を成形するための金型Kの一つであるネジコアK3の構成を示す拡大断面図である。
【0025】
燃料タンク1を成形するための金型Kは、燃料タンク本体1hを成形するための上金型K1および下金型K2と、螺旋状のジャバラ部2jをもつチューブ接続部2を成形するための中子のネジコアK3とを有する。
チューブ接続部2を成形するためのネジコアK3は、図3(c)に示すように、チューブ接続部2の螺旋状のジャバラ部2jを形成するための螺旋状の内周面K31を有している。
【0026】
そのため、ネジコアK3は、燃料タンク1をブロー成形後に、上金型K1から図3(c)の矢印α1のように回転させることで、チューブ接続部2のジャバラ部2j、上金型K1から取り外すことができる。
このように、チューブ接続部2のジャバラ部2jを螺旋状に形成することで、ネジコアK3を回すことで上金型K1から取り外すことが可能であり、ジャバラ部2jを、型割をもつことなく成形できる利点がある。
【0027】
また、チューブ接続部2のジャバラ部2jを螺旋状に形成することで、ジャバラ部2jを、燃料タンク1の型である上金型K1と下金型K2との型割り部K0以外の場所に配置できる。そのため、チューブ接続部2を成形するネジコアK3を、金型構造上、方向が限定されず上金型K1および下金型K2の何れか任意の箇所に配置することができる。
なお、図3(a)では、ネジコアK3を上金型K1に配置した場合を示しており、二点鎖線で示した符号K3は、ネジコアK3を他の場所に配置した場合を示している。
【0028】
燃料タンク1をブロー成形するに際しては、図3(a)に示すネジコアK3がねじ込まれた上金型K1および下金型K2に形成されたダイ・ノズルK9(図3(b)参照)を通って、筒状の溶融樹脂を上金型K1と下金型K2との間に入れ、上金型K1と下金型K2とを閉じる。なお、図3(a)、(b)は、上金型K1と下金型K2とを閉じた状態を示している。
【0029】
そして、図3(c)に示すネジコアK3内にブローピンB1を挿入して、上金型K1および下金型K2内に配置された筒状の溶融樹脂の内部に高圧でエアーを吹き込んで、上金型K1、ネジコアK3および下金型K2の各内面に筒状の溶融樹脂を押し付ける。
【0030】
そして、所定時間、エアーで筒状の溶融樹脂を上金型K1、ネジコアK3および下金型K2の各内面に押し付けて固化した後に、まず、図3(c)の矢印α1のようにネジコアK3を回転させることで、ネジコアK3を上金型K1、チューブ接続部2のジャバラ部2jから取り外す。続いて、上金型K1および下金型K2を、図3(a)の矢印α2のように開き外すことで、中空成形品の燃料タンク1が成形される。
【0031】
その後、燃料タンク1に形成したチューブ接続部2の外側の端部と、フィラーチューブ3のフューエル注入口4に接続される一方端部の反対側である他方端部とを溶着することにより、図1に示すように、燃料タンク1のチューブ接続部2とフィラーチューブ3とが接続(結合)される。
【0032】
実施形態によれば、フィラーチューブ3に接続するチューブ接続部2を燃料タンク1に一体に成形するので、製造が容易であり、また、燃料タンク1とフィラーチューブ3以外の部品が不要になり、部品点数を削減できる。
また、フィラーチューブ3に接続するチューブ接続部2を燃料タンク本体1hと一体に同時成形するので、従来の燃料タンクとフィラーネックチューブとの組み付け作業等の製造工程を削減することができる。
そのため、製造コストの低減が可能である。
【0033】
さらに、チューブ接続部2のジャバラ部2jを螺旋形状に形成することにより、ネジコアK3でチューブ接続部2を成形できるので、チューブ接続部2を上金型K1および下金型K2の任意の箇所に形成することが可能である。そのため、ジャバラ部2jを上金型K1および下金型K2の型割り部に場所を制限されることがなく、製造の自由度およびジャバラ部2jの配置の自由度が向上する。
【0034】
従って、製造容易でコストが低減され、燃料タンク1の側で外力による変位、衝撃等を吸収することができる燃料タンク1およびこれを備えた車両7を実現できる。
【0035】
なお、前記実施形態で説明したシャッタバルブ5は、燃料タンク1のチューブ接続部2におけるフィラーチューブ3側の端部に設けてもよい。
また、前記実施形態では、燃料タンク1を樹脂材料で形成した場合を例示したが、変位吸収部であるジャバラ部2jを形成できる弾性変形可能な性質をもち、説明した燃料タンク1を実現できる材料であれば、樹脂にゴム系材料を混入した材料等、樹脂材料以外の材料を適宜選択して適用してもよい。
【0036】
なお、前記実施形態では、フィラーチューブ3を樹脂で形成し、燃料タンク1のチューブ接続部2と溶着で結合する場合を例示したが、フィラーチューブ3をゴムで形成し、燃料タンク1のチューブ接続部2に取り付け部品を用いて取り付けてもよい。
換言すれば、フィラーチューブ3の材質、および、燃料タンク1のチューブ接続部2とフィラーチューブ3との接続方法は、例示した以外の材質、接続方法も適宜選択可能であ
る。
また、前記実施形態で説明した構成は、ハイブリッド車等の車両に限定されず、船舶等の乗り物に幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 燃料タンク
1h 燃料タンク本体(燃料タンクの本体)
2 チューブ接続部(接続部)
2j ジャバラ部(変位吸収部、蛇腹部)
3 フィラーチューブ
4 フューエル注入口(給油口)
5 シャッタバルブ(逆流防止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口から燃料が供給されるフィラーチューブヘの接続部を有する燃料タンクであって、
前記接続部は、弾性変形可能な変位吸収部を有して前記燃料タンクの本体と一体に成形され、かつ、
前記接続部の一端が前記フィラーチューブに取付けられる
ことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記接続部は、螺旋状の蛇腹部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記接続部の前記燃料タンク側および前記フィラーチューブ側のいずれかの端部、または、前記フィラーチューブの前記燃料タンク側の端部に、前記フィラーチューブを介して前記燃料タンクへ供給される燃料の前記フィラーチューブ側への逆流を防止する逆流防止手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記燃料タンクは、樹脂材料を用いてブロー成形で形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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