説明

燃料供給切り換え装置を備えた燃焼装置

【課題】植物油をディーゼル燃料として利用する際に生じるエンジンの不調や破損を回避し、ディーゼルエンジンを安定的に連続運転できる燃焼装置を提供すること。
【解決手段】本発明の燃焼装置は、ディーゼルエンジン、そのディーゼルエンジンに植物油を含む第1の燃料を供給する第1の燃料供給装置、ディーゼルエンジンに軽油を含む第2の燃料を供給する第2の燃料供給装置、第1の燃料の供給と第2の燃料の供給とを切り換える燃料切り換え装置を備える。燃料供給切り換え装置により、ディーゼルエンジンの不調が生じる前に第1の燃料供給から第2の燃料供給に切り換えることによって、ディーゼルエンジンの安定的連続運転が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに供給する燃料を切り換えるための燃料供給切り換え装置を備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題の観点から、植物を原料とするバイオ燃料や食品産業や家庭から排出される廃植物油をディーゼル燃料として資源化する取り組みが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
廃植物油をディーゼル燃料として用いると、燃焼によって発生する二酸化炭素が植物油の原料となる植物に吸収されるという循環が形成されるため、軽油、重油等の化石燃料をディーゼル燃料として用いる場合に比較して、二酸化炭素排出量を削減することができる。さらに、廃植物油をディーゼル燃料として再利用する場合には、廃棄物問題を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−54744号公報
【特許文献2】特開 2008−309153号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物油をディーゼル燃料として利用する場合の問題点の一つとして、従来の化石燃料を用いた場合に比較しエンジンの不調が生じやすいことが指摘されている。エンジンの不調は、深刻な場合にはエンジン破損をも引き起こす。このため、植物油をディーゼル燃料として用いることに多くの環境的利点があるにも関わらず、エンジンを安定的に連続運転することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃焼装置は、ディーゼルエンジンと、そのディーゼルエンジンに植物油を含む第1の燃料を供給する第1の燃料供給装置と、そのディーゼルエンジンに軽油を含む第2の燃料を供給する第2の燃料供給装置と、第1の燃料の供給と第2の燃料の供給とを切り換える燃料切り換え装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
この燃焼装置は、燃料切り換え装置を制御するための制御装置を備えることが好ましい。ここで、ディーゼルエンジンが第1の燃料を所定時間使用した後で、必ず第2の燃料を所定時間使用するように、制御装置が燃料の切り換えを制御してもよい。また、ディーゼルエンジンが停止する前に、必ず第2の燃料を所定時間使用するように、制御装置が燃料の切り換えを制御してもよい。
【0008】
本発明に係る発電装置は、上記いずれかの燃焼装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、エンジンの不調や破損が生じる前に植物油を含む燃料から軽油を含む燃料に切り換えて運転することによって、植物油をディーゼル燃料として使用した場合にもディーゼルエンジンを安定的に連続運転することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である燃焼装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下実施例に限定されない。
【0012】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0013】
==燃焼装置==
本発明に係る燃焼装置は、植物油を含む燃料を用いることができるが、植物油を含む燃料を用いてディーゼルエンジンを運転した際に発生するエンジンの不調や破損を防止するため、そのようなエンジンの不具合の生じる前に軽油を含む燃料による運転に切り換えて運転することのできる燃焼装置である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態としての燃焼装置を示す図である。この燃焼装置1は、ディーゼルエンジン2と、そのディーゼルエンジンに植物油を含む第1の燃料を供給する第1の燃料供給装置3と、そのディーゼルエンジンに軽油を含む第2の燃料を供給する第2の燃料供給装置4と、第1の燃料の供給と第2の燃料の供給とを切り換える燃料切り換え装置5と、その燃料切り換え装置を制御するための制御装置6とを備えることを特徴とする。
【0015】
ディーゼルエンジン2は、気筒数、排気量、回転速度等の規模については特に制限がなく、当業者がその用途を考慮して適宜選択することができる。
【0016】
各構成部分の相互関係と作用を説明する。第1の燃料供給装置3および第2の燃料供給装置4は、燃料タンク(7、10)、燃料フィルター(8、11)、燃料配管(9、12)を各々備える。第1および第2の燃料供給装置は、燃料タンク(7、10)にそれぞれ貯蔵された第1と第2の燃料を、燃料配管(9、12)を介してディーゼルエンジン2に供給する。これらの第1と第2の燃料供給装置は、ディーゼルエンジンに燃料を供給するという機能を果たす範囲内で、当業者が必要とする各種装置を適宜備えてもよく、例えば、各燃料フィルターにおいて空気抜きのためのバルブを備えていても、また、燃料の種類によって加温が必要な場合には、燃料タンク(7、10)および燃料配管(9、12)の周囲に加温装置を備えていても、燃料を混合する混合器や混合槽を燃料タンクの上流に備えていてもよい。
【0017】
燃料切り換え装置5は、第1の燃料供給装置3と第2の燃料供給装置4からの燃料配管(9、12)を受け入れ、各燃料をディーゼルエンジン2に供給するためのバルブ(13、14)を有している。これらのバルブを開閉することによって、燃料切り換え装置6はディーゼルエンジン2への供給燃料を切り換える。この供給燃料の切り替えは、手動で行っても良いが、制御装置6によって、自動的に制御することが好ましい。
【0018】
制御装置6は、例えば、ディーゼルエンジン2が第1の燃料を所定時間使用した後で必ず第2の燃料を所定時間使用するように、燃料切り換え装置5を制御していてもよい。あるいは、ディーゼルエンジン2が停止する前に必ず第2の燃料を所定時間使用するように、燃料切り換え装置5を制御していてもよい。各所定時間は、ディーゼルエンジンの不調や破損が発生することなく連続運転できる範囲内で、使用する燃料の種類とその配合率、および、ディーゼルエンジンの種類や規模等の運転条件を考慮して当業者が適宜設定することができる。
【0019】
あるいは、エンジンの排ガスの一酸化炭素濃度や温度等を検出するための検出器を設置し、ある一定以上または以下の値で燃料供給切り換えを行うように制御装置6を設計して、燃料切り換え装置5を制御してもよい。
【0020】
第1の燃料は植物油を含む燃料であって、植物油に加えて一以上の他種の燃料を含んでもよく、その植物油含有率は特に限定されないが、従来技術に記載したような植物油の利点から、植物油の含有率が大きいほど好ましく、例えば、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0021】
植物油は、単一の種類の植物油であっても、複数の異なる植物油を混合した植物油であってもよい。植物油の種類は、植物種等を原料とする油であれば何れのものでも制限はなく、大豆油、菜種油、コーン油、胡麻油、綿実油、米油、紅花油、ひまわり油、グレープシードオイル、オリーブオイル、ヤシ油、パーム油、ジャトロファ(ナンヨウアブラギリ)油等の周知の植物油から当業者が適宜選択できる。これらの植物油の精製度はディーゼルエンジンを運転可能な範囲であれば特に制限はない。また、使用する植物油は、未使用の清澄植物油であっても、食用植物油等を回収した廃植物油であってもよい。廃植物油の場合は、食品加工などに使用したことによる混入物の除去を適宜行うことが好ましい。なお、第1の燃料に含まれる植物油以外の燃料の種類は、通常ディーゼルエンジンの運転が可能な燃料から一種以上を当業者が適宜選択することができ、重油、軽油、灯油等が例示できる。
【0022】
第2の燃料は軽油を含む燃料であり、軽油に加えて一以上の他種の燃料を含んでもよく、その軽油の含有率は特に限定されないが、エンジンの回復効果という点から、軽油の含有率が大きいほど好ましく、例えば、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。第2の燃料に含まれる軽油以外の燃料の種類は、通常ディーゼルエンジンの運転に使用することができ、なおかつ、エンジンの不調の原因とならない周知の燃料から一種類以上を当業者が適宜選択することができ、重油、灯油等が例示できるが、植物油を含有しないことが好ましい。
【0023】
==発電装置==
本発明に係る発電装置は、上記「燃焼装置」に記載した燃焼装置のいずれかを備えることを特徴とする。発電装置の構成は、当業者がその使用目的に従って適宜選択することができ、例えば、一つの発電装置が同型の燃焼装置を複数備えていても、異型の燃焼装置を複数備えていてもよい。あるいは、本発明に係る発電装置は、他の周知の燃焼装置を併備していてもよい。
【0024】
本発明の発電装置は、発電産業における発電設備以外にも、オンサイト発電を行う各種施設の構内に設置することができる。その場合には、その施設、および、その近隣で得られる廃植物油を含む第1の燃料の供給と、軽油を含む第2の燃料の供給とを適宜切り換えながら運転することにより、ディーゼルエンジンを安定的に連続運転して発電することができる。オンサイト発電を行う施設としては、給食センターやファミリーレストランチェーン等の食品加工工場が例示できる。
【実施例】
【0025】
本実施例では、本発明に係る燃焼装置において、第1の燃料として100%ジャトロファ油、第2の燃料として100%軽油を用いた。はじめに、ジャトロファ油を0.65リットル/時間の速度で供給して2kWディーゼルエンジンを、所定時間運転した。そして、燃料を軽油に切り換え、7〜10分運転を続けた後、燃焼装置を停止した。これを2日間にわたり、2回行った。
【0026】
ディーゼルエンジン運転中、排ガスの一酸化炭素濃度およびエンジンの回転数(周波数)を記録した。
【0027】
表1に示すように、ジャトロファ油を用いてディーゼルエンジンを運転中に記録した排ガスの一酸化炭素濃度は689〜821ppm(測定6回)であった。一方で、軽油に切り換えた後の排ガスの一酸化炭素濃度は502〜508ppm(測定4回)であった。また、エンジン回転数は、植物油を用いた運転時に57.0〜58.5rpm、軽油を用いた運転時に59.6〜59.8rpmであった。
【0028】
【表1】

【0029】
このように、植物油を用いた運転の際、エンジン不具合の生じる前に軽油に切り換えてディーゼルエンジンの運転を続け、その後エンジン停止した場合、ディーゼルエンジンを安定して連続運転することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 燃焼装置 2 ディーゼルエンジン
3 第1の燃料供給装置 4 第2の燃料供給装置
5 燃料供給切り換え装置 6 制御装置
7 燃料タンク 8 燃料フィルター
9 燃料配管 10 燃料タンク
11 燃料フィルター 12 燃料配管
13 バルブ 14 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンに植物油を含む第1の燃料を供給する第1の燃料供給装置と、
前記ディーゼルエンジンに軽油を含む第2の燃料を供給する第2の燃料供給装置と、
前記第1の燃料の供給と前記第2の燃料の供給とを切り換える燃料供給切り換え装置と、を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記燃料供給切り換え装置を制御するための制御装置を、さらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記ディーゼルエンジンが前記第1の燃料を所定時間使用した後で、必ず前記第2の燃料を所定時間使用するように、前記制御装置が燃料の切り換えを制御することを特徴とする、請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記ディーゼルエンジンが停止する前に、必ず前記第2の燃料を所定時間使用するように、前記制御装置が燃料の切り換えを制御することを特徴とする、請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の燃焼装置を用いることを特徴とする発電装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−236473(P2010−236473A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87074(P2009−87074)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】