説明

燃料給油管

【課題】防錆力が高く、製作精度の高い燃料給油管を提供する。
【解決手段】メッキ鋼板からなる筒状給油管本体2は、給油口2aを一端に有し、他端が燃料タンク10に接続されている。ステンレス鋼材からなる短筒状リテーナ3は、給油口2aに組み付けられ、両端が開口する第1筒部材5及び第2筒部材6からなる。第1筒部材5は、給油キャップCの雄螺子部C1と螺合する雌螺子部5aが一端開口側内周面に形成されている。第2筒部材6は、第1筒部材5の内部にその他端開口側から挿入されて雌螺子部5a手前で点溶接Swされる。第2筒部材6の反挿入側開口端は、給油ガンGのノズルG1が差し込まれる差込孔6aを構成している。差込孔6a側の外周面と第1筒部材5の他端開口側の内周面との間の隙間Sに給油管本体2の給油口2a側の端部が挿入されるようにリテーナ3を給油管本体2に嵌合させ、嵌合部分をろう付けTwで連続溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の燃料タンクにガソリン等の燃料を給油する際の通路となる燃料給油管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には、燃料タンクに燃料を給油する際の通路となる燃料給油管が設けられていて、該燃料給油管は、一端に給油口を有するとともに他端が燃料タンクに接続される筒状給油管本体と、上記給油口に組み付けられる短筒状リテーナとを備えている。上記リテーナは、上記給油管本体の給油口側に挿入されて上記給油管本体に嵌合するようになっていて、当該嵌合部分をろう付けなど連続溶接をすることにより、給油管本体の給油口に組み付けられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている燃料給油管では、車両のライフサイクルの長期化を達成するために、上記リテーナをステンレス鋼材で形成し、且つ、上記給油管本体をメッキ鋼板で形成することにより、必要な防錆力を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12893号公報(段落0013、0015及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の燃料給油管では、リテーナと給油管本体とで異種材を用いているので、重ね合わせた部分で電位差による電食が発生し易い。その際、リテーナ及び燃料給油管の重ね合わせた部分は、内側にリテーナのステンレス鋼材が位置し、外側に給油管本体のメッキ鋼板が位置しているので、腐食が始まると外側の給油管本体側から先に腐食が始まり、燃料給油管の気密が保たれなくなってしまう。
【0006】
また、リテーナには、給油キャップが旋蓋されるので、燃料給油管の製作時に、リテーナの同軸度及び真円度の精度を高める必要がある。しかし、特許文献1では、給油管本体にリテーナを組み付ける際に、連続溶接で当該リテーナの外周面に連続して高い熱量を加えるので、リテーナに熱歪みが生じ易く、燃料給油管の完成時に上記リテーナの同軸度及び真円度の精度が低くなってしまう。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防錆力が高く、製作精度の高い燃料給油管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、リテーナを2分割し、一方の筒部材に他方の筒部材を挿入して点溶接で組み付けた状態で、給油管本体の給油口側端部が一方の筒部材の内側に位置するように給油管本体と一方の筒部材とを重ね合わせて、その重なり合った部分を連続溶接することにより給油管本体にリテーナを組み付けるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、給油キャップで開閉可能に旋蓋されるとともに給油ガンのノズルが挿入される給油口を一端に有し、他端が燃料タンクに接続されるメッキ鋼板からなる筒状給油管本体と、上記給油口に組み付けられるステンレス鋼材からなる短筒状リテーナとを備えた燃料給油管において次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、上記リテーナは、両端が開口する第1及び第2筒部材からなり、上記第1筒部材には、上記給油キャップの雄螺子部と螺合する雌螺子部が一端開口側の内周面に形成され、一方、上記第2筒部材は、上記第1筒部材の内部にその他端開口側から挿入されて上記雌螺子部手前で上記第1筒部材と重なり合った状態で点溶接され、反挿入側開口端は、挿入側開口端よりも縮小されて上記給油ガンのノズルが差込み・引抜き可能に差し込まれる差込孔を構成するとともに、該差込孔側の外周面と上記第1筒部材の他端開口側の内周面との間に隙間を有し、上記隙間に上記給油管本体の給油口側の端部が挿入されるように上記リテーナを給油管本体に嵌合させ、当該嵌合部分を連続溶接することにより、上記給油管本体の給油口に上記リテーナを組み付けることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記給油管本体は、メッキ鋼板からパイプ状に成形した電縫管からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、給油管本体とリテーナとを重ね合わせた部分が、内側に給油管本体のメッキ鋼板が位置し、外側にリテーナのステンレス鋼材が位置するようになるので、異種材間の電位差による腐食が発生しても内側に位置する給油管本体から先に腐食が始まり、燃料給油管の気密が保たれ易く、防錆力の高い燃料給油管とすることができる。また、リテーナが雌螺子部を有する第1筒部材と差込孔を有する第2筒部材とに分割され、点溶接で第1筒部材に第2筒部材を組み付けるので、ろう付けのような連続溶接に比べて熱歪みが少なく、リテーナの雌螺子部の変形を極力少なくすることができる。さらには、上記第1筒部材と上記第2筒部材とが互いに重なり合い、その重なり合って剛性が高くなった部分が、給油管本体にリテーナを組み付けた状態で、リテーナの雌螺子部と連続溶接した箇所との間に位置するようになる。したがって、上記第1筒部材及び第2筒部材の重なり合った部分により、連続溶接による熱の影響が上記雌螺子部に伝わり難く、熱歪みによる雌螺子部の変形を少なくすることができ、製作精度の高い燃料給油管にすることができる。
【0013】
第2の発明では、給油管本体の給油口側端部がリテーナより内側に位置するので、電縫管からなる給油管本体に形成された溶接ビードの外側面のみ表面処理するだけで給油管本体がリテーナに沿うようになる。したがって、特許文献1の如き、給油管本体の給油口側端部がリテーナより外側に位置していて、給油管本体をリテーナに沿わすために溶接ビードの内側面を表面処理する必要がある場合に比べて溶接ビードの表面処理が容易であり、加工コストを安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料給油管と、燃料給油管が接続される燃料タンク及び給油口を旋蓋する給油キャップの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料給油管1を示す。該燃料給油管1は、車両の燃料タンク10に燃料を給油する際の燃料の通路となるものであり、給油口2aを一端に有し、他端が燃料タンク10に接続されるメッキ鋼板からなる略円形筒状の給油管本体2と、上記給油口2aに組み付けられるステンレス鋼材からなる略円形短筒状のリテーナ3と、燃料を給油する際に、上記燃料タンク10から燃料蒸気を含む空気を上記給油管本体2の一端側に抜くための細筒状ブリーザチューブ4とを備えている。
【0017】
上記給油管本体2は、肉厚一定な板状のメッキ鋼板を筒状に丸めてその継ぎ目を溶接した電縫管を用いて形成され、上記給油口2a側が拡径し、当該給油口2aは、給油キャップCで開閉可能に旋蓋されるとともに給油ガンG(図2に示す)のノズルG1が挿入されるようになっている。上記給油管本体2の継ぎ目には、図2に示すように、溶接ビードBが形成されていて、当該給油管本体2の外周面が面一となるように、溶接ビードBの外側面のみが表面処理されている。尚、上記溶接ビードBの内側面は表面処理がなされておらず、上記給油管本体2の内周面における溶接ビードB部分は盛り上がっている。
【0018】
上記リテーナ3は、ステンレス鋼材をプレス加工することにより形成されていて、両端が開口する第1筒部材5及び第2筒部材6からなっている。
【0019】
上記第1筒部材5には、上記給油キャップCの雄螺子部C1と螺合する雌螺子部5aが一端開口側の内周面に一条形成されている。
【0020】
一方、上記第2筒部材6は、上記第1筒部材5の内部にその他端開口側から挿入されて上記雌螺子部5a手前で上記第1筒部材5と重なり合った状態で外周面に沿って複数箇所を点溶接(スポット溶接)Swすることにより上記第1筒部材5に組み付けるようになっていて、反挿入側に向かうにつれて緩やかに縮径する略碗型形状をなしている。上記第2筒部材6の反挿入側開口端は、挿入側開口端よりも縮小されて上記給油ガンGのノズルG1が差込み・引抜き可能に差し込まれる差込孔6aを構成していて、該差込孔6aの中心軸は、上記第2筒部材6の軸心からずれた位置となっている。
【0021】
そして、上記第2筒部材6は、上記第1筒部材5に組み付けられた状態で、図2に示すように、上記差込孔6a側の外周面と上記第1筒部材5の他端開口側の内周面との間に隙間Sを有するようになっていて、上記隙間Sに上記給油管本体2の給油口2a側の端部が挿入されるように上記リテーナ3を給油管本体2に嵌合させ、当該嵌合部分をMIG溶接でろう付けTwによる連続溶接をすることにより、上記給油管本体2の給油口2aに上記リテーナ3を組み付けるようになっている。
【0022】
尚、本実施形態では、第1筒部材5に第2筒部材6をスポット溶接による点溶接Swで組み付けたが、これに限らず、例えば、アーク溶接で複数箇所を点溶接するようにしてもよい。
【0023】
また、上記給油管本体2に上記第1筒部材5をMIG溶接でろう付けTwによる連続溶接をすることにより組み付けたが、これに限らず、例えば、レーザ溶接、プラズマ溶接及びTIG溶接でろう付けTwによる連続溶接をしてもよいし、連続溶接であれば上記以外の施工方法でも構わない。
【0024】
次に、燃料給油管1の製造について詳述する。
【0025】
まずはじめに、プレス成形にてそれぞれ成形した上記リテーナ3の第1筒部材5及び第2筒部材6と、メッキ鋼板から形成した電縫管に所定の加工を施した給油管本体2とを用意する。
【0026】
そして、上記第2筒部材6を上記第1筒部材5の他端開口側から挿入する。しかる後、上記第2筒部材6が上記第1筒部材5の雌螺子部5a手前で上記第1筒部材5と重なり合った状態で外周面に沿って複数箇所を点溶接Swをし、上記第1筒部材5に上記第2筒部材6を組み付ける。
【0027】
次いで、上記第2筒部材6の差込孔6a側の外周面と上記第1筒部材5の他端開口側の内周面との間に形成された隙間Sに、上記給油管本体2の給油口2a側の端部が挿入されるように上記リテーナ3を給油管本体2に嵌合する。そして、上記給油管本体2の一端側外周面と上記第1筒部材5の他端縁とをMIG溶接でろう付けTwによる連続溶接をして上記給油管本体2の給油口2aに上記リテーナ3を組み付ける。
【0028】
以上より、本発明の実施形態によれば、給油管本体2とリテーナ3とを重ね合わせた部分が、内側に給油管本体2のメッキ鋼板が位置し、外側にリテーナ3のステンレス鋼材が位置するようになるので、異種材間の電位差による腐食が発生しても内側に位置する給油管本体2から先に腐食が始まり、燃料給油管1の気密が保たれ易く、防錆力の高い燃料給油管1とすることができる。また、リテーナ3が雌螺子部5aを有する第1筒部材5と差込孔6aを有する第2筒部材6とに分割され、点溶接Swで第1筒部材5に第2筒部材6を組み付けるので、ろう付けTwのような連続溶接に比べて熱歪みが少なく、リテーナ3の雌螺子部5aの変形を極力少なくすることができる。さらには、上記第1筒部材5と上記第2筒部材6とが互いに重なり合い、その重なり合って剛性が高くなった部分が、給油管本体2にリテーナ3を組み付けた状態で、リテーナ3の雌螺子部5aとろう付けTwによる連続溶接との間に位置するようになる。したがって、上記第1筒部材5及び第2筒部材6の重なり合った部分により、ろう付けTwによる連続溶接の熱の影響が上記雌螺子部5aに伝わり難く、熱歪みによる雌螺子部5aの変形を少なくすることができ、製作精度の高い燃料給油管1とすることができる。それに加えて、リテーナ3はステンレス鋼材で形成されているので、燃料給油管1全体を軽くしつつ給油口2a周縁の必要な剛性を確保することができ、当該リテーナ3に旋蓋される給油キャップCが衝突時に容易に脱落したり、破損するのを防止することができる。
【0029】
また、上記給油管本体2の給油口2a側端部がリテーナ3より内側に位置するので、電縫管からなる給油管本体2に形成された溶接ビードBの外側面のみ表面処理するだけで給油管本体2がリテーナ3に沿うようになる。したがって、特許文献1の如き、給油管本体2の給油口2a側端部がリテーナ3より外側に位置していて、給油管本体2をリテーナ3に沿わすために溶接ビードBの内側面を表面処理する必要がある場合に比べて溶接ビードBの表面処理が容易であり、加工コストを安価にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば、車両の給油口に注がれた燃料を燃料タンクまで導く燃料給油管に適している。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料給油管
2 給油管本体
2a 給油口
3 リテーナ
5 第1筒部材
5a 雌螺子部
6 第2筒部材
6a 差込孔
10 燃料タンク
C 給油キャップ
C1 雄螺子部
G 給油ガン
G1 ノズル
S 隙間
Sw 点溶接
Tw ろう付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油キャップで開閉可能に旋蓋されるとともに給油ガンのノズルが挿入される給油口を一端に有し、他端が燃料タンクに接続されるメッキ鋼板からなる筒状給油管本体と、
上記給油口に組み付けられるステンレス鋼材からなる短筒状リテーナとを備えた燃料給油管であって、
上記リテーナは、両端が開口する第1及び第2筒部材からなり、
上記第1筒部材には、上記給油キャップの雄螺子部と螺合する雌螺子部が一端開口側の内周面に形成され、
一方、上記第2筒部材は、上記第1筒部材の内部にその他端開口側から挿入されて上記雌螺子部手前で上記第1筒部材と重なり合った状態で点溶接され、反挿入側開口端は、挿入側開口端よりも縮小されて上記給油ガンのノズルが差込み・引抜き可能に差し込まれる差込孔を構成するとともに、該差込孔側の外周面と上記第1筒部材の他端開口側の内周面との間に隙間を有し、
上記隙間に上記給油管本体の給油口側の端部が挿入されるように上記リテーナを給油管本体に嵌合させ、当該嵌合部分を連続溶接することにより、上記給油管本体の給油口に上記リテーナを組み付けることを特徴とする燃料給油管。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料給油管であって、
上記給油管本体は、メッキ鋼板からパイプ状に成形した電縫管からなることを特徴とする燃料給油管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−91534(P2012−91534A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237904(P2010−237904)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(590000721)株式会社キーレックス (20)
【Fターム(参考)】