説明

物体検出ユニット

【課題】物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間に対して、領域毎に、その領域に合わせた物体の検出が行える物体検出ユニットを提供する。
【解決手段】発光部31を発光させて入出口の幅方向に検出波を照射し、受光部32で反射波を検出する。記憶部5、物体の仮検出に用いる受光部32の受光光量の下限を設定する仮検出レベル、および仮検出した物体の本検出に用いる受光部32の受光光量であって、仮検出した物体までの距離に応じて下限を設定する本検出レベルを記憶する。測距部3は、受光部32で検出した反射波の受光光量が、記憶部5に記憶している仮検出レベルを超えているときに、物体を仮検出するとともに、この仮検出した物体までの距離を算出する。制御部2は、本検出レベルを用いて、仮検出した物体が物体であるかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の有無を検出する物体検出ユニットに関し、特に、扉やチェーン等の通行阻止部材で利用者の通行を制限している入出口の周辺における物体の有無を検出する物体検出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外光や、レーザ光を利用して、空間(以下、検出空間と言う。)に位置する物体を検出する物体検出ユニットが様々な装置で利用されている。物体検出ユニットは、発光素子と受光素子とを有し、発光素子を発光させることにより検出波(発光素子から出力される光。)を検出空間に照射し、この検出波が物体に当たって反射された反射波を受光素子で検出(受光)したかどうかにより、検出空間に位置する物体を検出する。
【0003】
また、物体検出ユニットは、検出空間に位置する物体までの距離(発光素子と物体との距離)の検出も行える。例えば、検出波を正弦波で出力し、検出波と反射波との位相差から物体までの距離を算出するものや、検出波をパルス波で出力し、検出波の照射時刻と反射波の受光時刻との時間差から物体までの距離を算出するものがある。
【0004】
さらに、物体までの距離と、反射波の受光強度とによって、物体の属性を推定する構成の物体検出装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−114831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、物体検出ユニットは、受光素子で外乱光を受光したり、電気的なノイズによって、検出空間に位置していない物体を誤検出することや、反対に、物体の反射率が低く、検出空間に位置している物体を検出できない(見逃す)ことがある。
【0007】
物体の有無を判断する検出レベル(受光強度)を大きくすれば、検出空間に位置していない物体の誤検出については抑えられるのであるが、検出空間に位置している物体の見逃しを増大させる。反対に、物体の有無を判断する検出レベルを小さくすれば、検出空間に位置している物体の見逃しについては抑えることはできるが、検出空間に位置していない物体の誤検出を増大させる。このため、検出空間が、位置していない物体の誤検出を抑えたい領域(誤検出抑制空間)と、位置している物体の見逃しを抑えたい領域(見逃し抑制空間)とが混在する空間であると、物体の有無を判断する検出レベルを大きくすれば、見逃し抑制空間での物体の見逃しが増加し、反対に、物体の有無を判断する検出レベルを小さくすれば、誤検抑制空間での物体の誤検出が増加する。
【0008】
例えば、利用者が通行する入出口が、この入出口に設けた扉やチェーン等を駆動して開閉される場所では、開閉時における扉やチェーン等の駆動を、入出口周辺における人物の有無に応じて制御している。すなわち、扉やチェーンで、入出口周辺にいる人物を挟み込んだり、引っ掛けたりするのを防止している。入出口の両側には、構造物が位置することから、多くの利用者は、通行の妨げになる構造物が位置しない入出口の中央を通る。言い換えれば、通行の妨げになる構造物が位置している入出口の両側部は、比較的通行する人が少ない。このことから、入出口の両側部は、通行者の誤検出を抑えたい領域になるが、入出口の中央は通行者の見逃しを抑えたい領域になる。
【0009】
この発明の目的は、物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間に対して、領域毎に、その領域に合わせた物体の検出が行える物体検出ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の物体検出ユニットは、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
この物体検出ユニットは、通行を制限する扉やチェーン等の通行阻止部材が設けられた入出口の幅方向に検出波を照射し、物体で反射された反射波を検出することにより入出口周辺に位置する物体を検出する。通行者の多くは、通行の妨げとなるポールや壁等の構造物を避け、入出口の中央部を通行する。言い換えれば、入出口の両側部を通行する通行者は、中央部に比べて比較的少ない。このことから、入出口の両側部は物体(通行者)の誤検出を抑えたい領域になり、入出口の中央部は物体(通行者)の見逃しを抑えたい領域になる。
【0012】
発光部は、光源を有する。この光源は、LEDやLD等の発光素子である。受光部は、発光部が光源により照射した検出波(照射光)が物体で反射された反射波(反射光)を受光する。受光部は、CCDやAPD等の受光素子を有する。
【0013】
記憶部は、物体の仮検出に用いる受光部の受光光量の下限を設定する仮検出レベル、および仮検出した物体の本検出に用いる受光部の受光光量であって、仮検出した物体までの距離に応じて下限を設定する本検出レベルを記憶する。また、受光部で受光される反射波の受光光量は、物体までの距離の二乗に反比例し、物体の反射率に比例する。このことから、本検出レベルは、例えば、入出口の幅方向に3つ以上に区分した領域毎に定めればよい。また、本検出レベルは、物体(通行者)の誤検出を抑えたい領域については、発光部からの距離を考慮したレベルよりも、ある程度高めに設定し、物体(通行者)の見逃しを抑えたい領域については発光部からの距離を考慮したレベルよりも、ある程度低めに設定すればよい。
【0014】
測距部は、受光部で検出した反射波の受光光量が、記憶部に記憶している仮検出レベルを超えているときに、物体を仮検出するとともに、この仮検出した物体までの距離を算出する。言い換えれば、測距部は、受光部で検出した反射波の受光光量が、記憶部に記憶している仮検出レベルに達していないとき、物体を仮検出することがなく、物体までの距離の算出にかかる処理も行わない。
【0015】
さらに、判定部は、受光光量が、測距部が算出した物体までの距離が属する区域に設定されている本検出レベルを超えているかどうかにより、仮検出した物体が物体であるか、物体でないか(物体の誤検出であるかどうか)を判定する。
【0016】
これにより、物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間に対して、領域毎に、その領域に合わせた物体の検出が精度良く行える。
【0017】
また、発光部を、光源が照射する照射光(検出波)を面照射し、受光部を、マトリクス状に配置した複数の受光素子で反射光(反射波)を面受光する構成としてもよい。また、物体形状生成部を設け、この物体形状生成部において、測距部がマトリクス状に配置した受光素子毎に算出した仮検出した物体までの距離に基づいて、発光部が照射光を面照射した照射範囲内に位置する物体の2次元形状を生成する構成としてもよい。このように構成すれば、照射範囲内に位置する検出物体の2次元形状を得ることができる。
【0018】
また、発光させている発光部の照射光(検出波)の照射方向を、直交する2軸方向に走査する走査部を設けるとともに、発光部の照射光の照射方向毎に、測距部が算出した仮検出した物体までの距離に基づいて、走査部が発光素子の照射光を走査する走査範囲内に位置する物体の2次元形状を生成する物体形状生成部を設けてもよい。このように構成しても、検出物体の2次元形状を得ることができる。
【0019】
さらには、得られた物体の2次元形状に対するパターンマッチング等で、この物体の種類を判別する物体判別部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間に対して、領域毎に、その領域に合った物体の検出精度の設定が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】駅ホームに設置したホームドアの概略の外観図である。
【図2】物体検出ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】受光素子の構成を示す図である。
【図4】仮検出レベル、および本検出レベルを示す図である。
【図5】物体検出ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図6】別の物体検出ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図7】検出空間に対する、検出波の走査を説明する図である。
【図8】別の物体検出ユニットの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態である物体検出ユニットについて説明する。
【0023】
まず、この物体検出ユニットを利用する環境について、その例を説明する。ここでは、線路への乗降客の落下を防止する落下防止柵(以下、ホームドアと言う。)を設置した駅ホームを例にする。
【0024】
図1は、駅ホームに設置したホームドアの概略の外観図である。駅ホームには、図1に示すホームドア10が、駅ホームの側端部に沿って複数並べて設置されている。図1では、ホームドア10を1つ示している。図1(A)は、ホームドアが閉している状態であり、図1(B)は、ホームドアが開している状態である。このホームドア10は、駅ホームに停車した列車に乗降する乗降客が通行する入出口の両側のそれぞれに設置した戸袋11を備えている。各戸袋11には、開閉扉12がスライド自在に取り付けられている。また、各戸袋11には、開閉扉12をスライドさせる機構部(不図示)が設けられているとともに、開閉扉12を収納する空間が形成されている。ホームドア10は、開閉扉12を入出口側にスライドさせることにより、図1(A)に示すように入出口を塞ぎ、入出口における乗降客の通行を禁止する。また、ホームドア10は、開閉扉12を戸袋11側にスライドさせ、戸袋11内に収納することにより、図1(B)に示すように入出口を開放し、入出口における乗降客の通行を許可する。
【0025】
上記説明したように、開閉扉12は、図1(A)に示す状態と、図1(B)に示す状態との間で、スライドする。
【0026】
ホームドア10は、通常、図1(A)に示す閉状態であり、駅ホームに列車が停車すると、図1(B)に示す開状態に移行する。駅ホームに停車した列車は、ドアを開する。また、列車に対する乗降客の乗降が完了すると、列車がドアを閉めるとともに、ホームドア10は開閉扉12をスライドさせて、図1(A)に示す閉状態に移行する。その後、列車は、駅ホームから発車する。
【0027】
この発明の実施形態である物体検出ユニットは、ホームドア10の入出口周辺に位置する人物を検出する。入出口の両側は、戸袋11が構造物として位置することから、多くのの利用者は、通行の妨げになる構造物(戸袋11)が位置しない入出口の中央を通る。このため、図1(B)に示す入出口の両側部である領域A、および領域Cは、通行者の誤検出を抑えたい領域である。これに対し、図1(B)に示す入出口の中央部である領域Bは、通行者の見逃しを抑えたい領域である。
【0028】
なお、ここでは、物体検出ユニット1は、以下に示すように、領域A側の戸袋11に取り付けており、領域D側の戸袋11に向けて、検出波を照射する。また、領域Dは、物体が位置する可能性が極めて低く、また、戸袋11における検出波の反射により、物体を誤検出する可能性が高い領域であることから、物体の有無を検知しない、不検出領域として設定している。
【0029】
図2は、この物体検出ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。この物体検出ユニット1は、制御部2と、測距部3と、発光部31と、受光部32と、記憶部5と、出力部6と、を備えている。物体検出ユニット1は、割り当てられている検出空間に位置する物体を検出する。検出空間は、上述したホームドア10の入出口の周辺に位置する領域A〜Cが属する空間である。また、この物体検出ユニット1は、検出した物体の外形形状から、その物体の種類を判別する。
【0030】
制御部2は、物体検出ユニット1本体各部の動作を制御するとともに、後述する処理を行い、検出空間に位置する物体の検出、および、検出した物体の種類判別を行う。
【0031】
発光部31は、光源としてLEDを有している。発光部31は、光源であるLEDを発光させ、このLEDの照射光を検出波として検出空間に面照射する。受光部32は、図3に示すように、複数のCCD33aをマトリクス状に配置した受光素子33を有し、発光部31が検出空間に照射光を面照射しているときに、その反射光(検出波)を面受光する。受光素子33は、縦方向、横方向に50〜200程度のCCD33aをマトリクス状に配置している。発光部31は、LEDの照射光を検出空間に面照射する光学系を有し、受光部32は、検出空間からの反射光を面受光するための光学系を有している。
【0032】
測距部3は、発光部31が検出空間に面照射した照射光を反射した物体までの距離(発光部31と、物体との距離)を算出する。物体までの距離の算出は、発光部31が正弦波で面照射した検出波と、受光部32が受光素子33で受光した反射波と、の位相差から物体までの距離を算出する位相差方式で行う。測距部3は、マトリクス状に配置しているCCD33a毎に、位相差方式による物体までの距離の算出を行う。位相差方式による距離の算出については、周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
記憶部5は、検出空間に位置する物体の検出に用いる、仮検出レベル、および本検出レベルを記憶している。仮検出レベルは、検出空間に位置する物体の仮検出に用いる閾値である。本検出レベルは、仮検出された物体が、外乱光や電気的ノイズ等の影響を受けて、誤検出された物体であるか、実際に存在する物体であるかの判別に用いる閾値である。仮検出レベル、および本検出レベルは、CCD33aの受光光量を規定する。
【0034】
図4は、仮検出レベル、および本検出レベルの設定例を示す図である。上述したように、駅ホームに停車した列車の乗降客の多くは、戸袋11が通行の妨げになることから、入出口の両側部付近(図1に示した領域Aや領域C)ではなく、入出口の中央部付近(図1に示した領域B)を通行する。このことから、戸袋11付近の領域Aや領域Cは、乗降客の誤検出を抑えたい領域になる。一方、2つの戸袋11の中央付近である領域Bは、乗降客の通行が多く、また、閉状態に移行している開閉扉12による乗降客や、乗降客の荷物の挟み込みを防止する観点から、乗降客や、乗降客の荷物の見逃しを抑えたい領域になる。
【0035】
この物体検出ユニット1では、領域A〜領域Cのそれぞれに対して、以下に示すように、本検出レベルを設定している。
【0036】
図4では、横軸が物体検出ユニット1を取り付けた領域A側の戸袋11から物体までの距離であり、縦軸がCCD33aの受光光量である。CCD33aにおける反射光の受光光量は、物体の反射率に比例し、物体までの距離の二乗に反比例する。仮検出レベルは、図4に示すように、CCD33aの受光光量の下限を、物体までの距離に関係なく一定の値Xに規定している。
【0037】
また、図4に破線で示す曲線Aは、反射率が80%程度の物体(例えば、表面が白い物体)で照射光が反射されたときにおけるCCD33aの受光光量を表す曲線である。また、破線で示す曲線Bは、反射率が3%程度の物体(例えば、表面が黒色のフェルト生地)で照射光が反射されたときにおけるCCD33aの受光光量を表す曲線である。上述したように、CCD33aにおける反射光の受光光量は、物体までの距離の二乗に反比例することから、曲線A、および曲線Bは、物体までの距離が長くなるにつれて、小さくなる。
【0038】
戸袋11付近の領域A、および領域Cは、乗降客の誤検出を抑えたい領域であるので、曲線Aに基づいて、本検出レベルを設定している。具体的には、領域A、および領域Cは、本検出レベルを曲線Aで示される受光光量よりも大きくしている。一方、2つの戸袋11の中央に位置する領域Bは、乗降客や、乗降客の荷物の見逃しを抑えたい領域であるので、曲線Bに基づいて、本検出レベルを設定している。具体的には、領域Bは、本検出レベルを曲線Bで示される受光光量よりも小さくしている。記憶部5は、領域毎に、その領域の範囲と、本検出レベルと、を対応づけて記憶する。
【0039】
なお、仮検出レベルXは、上述の本検出レベルの最小レベル(この例では、領域Bの本検出レベル)よりも小さい。言い換えれば、各領域A〜Cの本検出レベルは、仮検出レベルXよりも大きい。
【0040】
出力部6は、上位装置であるホームドア10に接続されており、検出空間における人物の検出結果をホームドア10に通知する。
【0041】
次に、この物体検出ユニット1の動作について説明する。図5は、物体検出ユニットの動作を示すフローチャートである。
【0042】
物体検出ユニット1は、発光部31により検出空間を面照射する(s1)。測距部3は、受光部32が有する受光素子33のCCD33a毎に、受光光量が仮検出レベルX以上であるかどうかを判定し(s2)、仮検出レベル以上であれば、物体の仮検出を行う(s3)。s3では、物体を仮検出したCCD33a毎に、この仮検出した物体までの距離を算出し、ここで算出した距離、および受光光量を対応づけて記憶部5に記憶する。
【0043】
なお、s2で受光光量が仮検出レベルX未満であると判定したCCD33aについては、s3にかかる処理を行わない。また、仮検出レベルX未満であると判定したCCD33aについては、物体が位置していないと判断する。
【0044】
物体検出ユニット1は、受光素子33の全てのCCD33aについて、s2、s3にかかる処理が完了すると、s3で物体を仮検出したCCD33a毎に、算出した物体までの距離が領域A〜領域C内であるかどうかを判定する(s5)。この物体検出ユニット1は、領域A〜領域C以外の空間については、その空間における物体の有無を検出しない。物体検出ユニット1は、s5で、算出した物体までの距離が領域A〜領域C内でないと判定すると(不検出領域であると判定すると)、以下に示す本検出処理を行うことなく、s7で物体でないと判定する。
【0045】
物体検出ユニット1は、s5で、不検出領域でない(領域A〜領域C内である)と判定すると、CCD33aの受光光量が、その物体が位置する領域(領域A〜領域C)について、記憶部5に記憶している本検出レベル以上であるかどうかを判定する(s6)。物体検出ユニット1は、s6で、CCD33aの受光光量が、その物体が位置する領域について記憶している本検出レベル未満であると判定すると、仮検出した物体を、誤検出した物体(すなわち、仮検出した物体は、物体でない。)と判定する(s7)。一方、物体検出ユニット1は、s6で、CCD33aの受光光量が、その物体が位置する領域について記憶している本検出レベル以上であると判定すると、仮検出した物体を、その位置に存在する物体であると判定(確定)する(s8)。
【0046】
物体検出ユニット1は、上述のs5〜s8にかかる処理を行うことによって、領域Aや領域Cにおいて、外乱光の影響や、電気的なノイズによって誤検出された物体を、物体として本検出するのを抑えられる。言い換えれば、領域Aや領域Cにおける物体の誤検出が抑えられる。また、領域Bにおいては、照射光が照射された物体の反射率が低い場合や、照射光が照射された物体における照射光の反射方向のズレ等によって、CCD33aでの受光量が小さくなった場合であっても、物体でないとする見逃しが抑えられる(物体であると判定できる。)。言い換えれば、領域Bにおける物体の見逃しが抑えられる。
【0047】
物体検出ユニット1は、s3で物体を仮検出した全てのCCD33aについて、s5〜s8にかかる処理を完了すると(s9)、s8で物体であると確定したCCD33aに対応する検出波の照射位置を、距離に基づいてグルーピングする(s10)。s10では、同じ物体からの反射波を検出したCCD33aをグルーピングしている。また、このグルーピングにより、検出空間に位置し、今回検出した物体毎に、その外形形状を得ることができる。
【0048】
物体検出ユニット1は、s10にかかる処理で得られた物体の外形形状から、その物体の種類を判別する(s11)。s11では、s10で得られた今回検出した物体の外形形状と、物体の種類毎に予め記憶部5に登録している外形形状と、のパターンマッチングにより、その物体の種類を判別する。例えば、記憶部5に、カバン、傘、人間の足、人間の頭等の外形形状を登録しておき、検出した物体の外形形状から、その種別を判別する。記憶部5に外形形状を登録しておく物体の種類は、この物体検出ユニット1の検出空間で検出される物体に応じて決めればよい。
【0049】
物体検出ユニット1は、今回の物体の検出結果を出力部6から上位装置であるホームドア10に出力し(s12)、s1に戻る。
【0050】
なお、ホームドア10は、物体検出ユニット1における物体の検出結果に応じて、開閉扉12の開閉動作を制御する。具体的には、物体検出ユニット1が物体を検出しているとき、開閉扉12の開閉動作を禁止する。
【0051】
このように、この物体検出ユニット1は、乗降客の誤検出を抑えたい領域Aや領域Cに対しては、曲線Aに基づいて、本検出レベルを比較的高めに設定し、乗降客や、乗降客の荷物の見逃しを抑えたい領域Bに対しては、曲線Bに基づいて、本検出レベルを比較的低めに設定している。このため、物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間であっても、領域毎に、その領域に合った物体の検出精度の設定が行える。
【0052】
なお、検出空間を区分する領域は、上述した領域A〜領域Cの3つの区分に限らず、4つ以上に区分してもよい。
【0053】
次に、この発明の別の実施形態について説明する。図6は、この物体検出ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。この物体検出ユニット1も、上述の図1に示したホームドア10の入出口周辺に位置する人物を検出する。この物体検出ユニット1は、制御部2と、測距部3と、発光部31と、受光部32と、走査部4と、記憶部5と、出力部6と、を備えている。この物体検出ユニット1も、上記の例と同様に、割り当てられている検出空間(図1に示す領域A〜領域C)に位置する物体を検出するとともに、検出した物体の外形形状から、その物体の種類を判別する。
【0054】
なお、この例の物体検出ユニット1も、上述した例と同様に、領域A側の戸袋11に取り付けており、領域D側の戸袋11に向けて、照射光(検出波)を照射する。
【0055】
制御部2は、物体検出ユニット1本体各部の動作を制御するとともに、後述する処理を行い、検出空間に位置する物体の検出、および、検出した物体の種類判別を行う。
【0056】
発光部31は、光源としてLDを有している。発光部31は、光源であるLDを発光させ、検出波(レーザ光)を検出空間に照射する。受光部32は、受光素子としてAPDを有している。受光部32のAPDは、検出空間に照射され、物体で反射された反射光(反射波)を受光する。また、測距部3は、反射光を反射した物体までの距離(発光部31のLDと、物体との距離)を算出する。物体までの距離の算出は、発光部31のLDが検出波として照射したパルス光の照射時刻と、受光部32のAPDが反射光を受光した受光時刻と、の時間差から物体までの距離を算出する時間差方式で行う。この時間差方式による距離の算出については、周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0057】
走査部4は、検出空間内において、発光部31から照射される検出波を走査する。具体的には、走査部4は、図7に示すように、検出空間に対して、発光部31のLDの照射光を主走査方向、および副走査方向に走査する。主走査方向は、ホームドア10の入出口における乗降客の通行方向であり、副走査方向は、鉛直方向である。図7では、検出空間を2次元で示しているが、実際には、紙面に対して垂直な方向(領域A側の戸袋11から領域D側の戸袋11)に延びる3次元空間である。走査部4は、直交する2軸(主走査方向、および副走査方向)について、軸毎に設けたミラー(不図示)を個別に駆動して発光部31のLDから照射される照射光の照射方向を変化させる。照射光は、紙面の前方から、後方に向けて照射される。
【0058】
記憶部5は、上記の例と同様に、検出空間に位置する物体の検出に用いる、仮検出レベル、および本検出レベルを記憶している(図4参照)。
【0059】
出力部6も、上記の例と同様に、検出空間における物体の検出結果を、接続されている上位装置に出力する。
【0060】
次に、この物体検出ユニット1の動作について説明する。図8は、物体検出ユニットの動作を示すフローチャートである。
【0061】
物体検出ユニット1は、走査部4が発光部31から照射される照射光により、検出領域の走査を開始する(s21)。s21では、走査部4は、主走査方向に照射光を走査し、1ラインの走査が完了すると、照射光の照射方向を副走査方向に1段下げて、再度照射光を主走査方向に走査する処理を繰り返すことによって、図7に示す検出空間全体を照射光で走査する処理を開始する。図7において、検出空間内に示すドットが、物体の有無を検出する点である。
【0062】
測距部3は、走査部4が走査している照射光の照射位置毎に、受光部32の受光光量が仮検出レベルX以上であるかどうかを判定し(s22)、仮検出レベル以上であれば、物体の仮検出を行う(s23)。s23では、仮検出した物体までの距離を算出し、ここで算出した距離、このときの受光部32の受光光量、および照射光の照射位置を対応づけて記憶部5に記憶する。
【0063】
なお、s22で受光部32の受光光量が仮検出レベルX未満であると判定したときには、s23にかかる処理を行わない。また、仮検出レベルX未満であると判定したときの照射光の照射位置については、物体が位置していないと判断する。
【0064】
物体検出ユニット1は、検出空間に対する2次元走査が完了すると(s24)、s23で物体を仮検出した照射光の照射位置毎に、算出した物体までの距離が領域A〜領域C内であるかどうかを判定する(s25)。この物体検出ユニット1は、領域A〜領域C以外の空間については、その空間における物体の有無を検出しない。物体検出ユニット1は、s25で、算出した物体までの距離が領域A〜領域C内でないと判定すると(不検出領域であると判定すると)、以下に示す本検出処理を行うことなく、s27で物体でないと判定する。
【0065】
物体検出ユニット1は、s25で、不検出領域でないと判定すると、受光部32の受光光量が、その物体が位置する領域(領域A〜領域C)について、記憶部5に記憶している本検出レベル以上であるかどうかを判定する(s26)。物体検出ユニット1は、s26で、受光部32の受光光量が、その物体が位置する領域について記憶している本検出レベル未満であると判定すると、仮検出した物体を、誤検出した物体(すなわち、仮検出した物体は、物体でない。)と判定する(s27)。一方、物体検出ユニット1は、s26で、受光部32の受光光量が、その物体が位置する領域について記憶している本検出レベル以上であると判定すると、仮検出した物体を、その位置に存在する物体であると判定(確定)する(s28)。
【0066】
上述のs25〜s28にかかる処理を行うことによって、領域Aや領域Cにおいて、外乱光の影響や、電気的なノイズによって誤検出された物体を、物体として本検出するのを抑えられる。言い換えれば、領域Aや領域Cにおける物体の誤検出が抑えられる。また、領域Bにおいては、照射光が照射された物体の反射率が低い場合や、照射光が照射された物体における照射光の反射方向のズレ等によって、受光部32での受光量が小さくなった場合であっても、物体でないとする見逃しが抑えられる(物体であると判定できる。)。言い換えれば、領域Bにおける物体の見逃しが抑えられる。
【0067】
物体検出ユニット1は、s23で物体を仮検出した検出波の全ての照射位置について、s25〜s28にかかる処理を完了すると(s29)、s28で物体であると確定した照射光の照射位置を、距離に基づいてグルーピングする(s30)。s30では、同じ物体からの反射光を検出した照射光の照射位置をグルーピングしている。また、このグルーピングにより、検出空間に位置し、今回検出した物体毎に、その外形形状を得ることができる。
【0068】
物体検出ユニット1は、s30にかかる処理で得られた物体の外形形状から、その物体の種類を判別し(s31)、今回の物体の検出結果を出力部6から上位装置であるホームドア10に出力し(s32)、s21に戻る。s31、およびs32にかかる処理は、それぞれ、上述したs11、s12と同じ処理である。
【0069】
なお、ホームドア10は、物体検出ユニット1における物体の検出結果に応じて、開閉扉12の開閉動作を制御する。具体的には、物体検出ユニット1が物体を検出しているとき、開閉扉12の開閉動作を禁止する。
【0070】
このように、この物体検出ユニット1も、乗降客の誤検出を抑えたい領域Aや領域Cに対しては、曲線Aに基づいて、本検出レベルを比較的高めに設定し、乗降客や、乗降客の荷物の見逃しを抑えたい領域Bに対しては、曲線Bに基づいて、本検出レベルを比較的低めに設定している。このため、物体の誤検出を抑えたい領域と、物体の見逃しを抑えたい領域とが、混在する検出空間であっても、領域毎に、その領域に合った物体の検出精度の設定が行える。
【0071】
また、検出空間を区分する領域は、上述した領域A〜領域Cの3つの区分に限らず、4つ以上に区分してもよい。
【0072】
なお、上記の例では、ホームドア10の開閉扉12は、水平方向にスライドする構成としたが、上下方向にスライドする構成あってもよい。
【0073】
また、ここでは、物体検出ユニット1は、ホームドア10における入出口周辺の物体を検出する場合を例にして説明したが、駐車場や工事現場等における入出口周辺の物体を検出するユニットとしても利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1…物体検出ユニット
2…制御部
3…測距部
4…走査部
5…記憶部
6…出力部
10…ホームドア
11…戸袋
12…開閉扉
31…発光部
32…受光部
33…受光素子
33a…CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行を制限する通行阻止部材が設けられた入出口の幅方向に検出波を照射し、物体で反射された反射波の検出することにより前記入出口周辺に位置する物体を検出する物体検出ユニットにおいて、
前記検出波として照射光を照射する光源を有する発光部と、
前記発光部が前記光源により照射した照射光が物体で反射された反射光を前記反射波として受光する受光部と、
物体の仮検出に用いる前記受光部の受光光量の下限を設定する仮検出レベル、および仮検出した物体の本検出に用いる前記受光部の受光光量であって、仮検出した物体までの距離に応じて下限を設定する本検出レベルを記憶する記憶部と、
前記受光部で受光した反射光の受光光量が、前記記憶部に記憶している前記仮検出レベルを超えているときに、物体を仮検出するとともに、この仮検出した物体までの距離を算出する測距部と、
前記受光部の受光光量が、前記測距部が算出した仮検出した物体までの距離が属する区域に設定されている前記本検出レベルを超えているかどうかにより、仮検出した物体が物体であるか、物体でないかを判定する判定部と、を備えている物体検出ユニット。
【請求項2】
前記本検出レベルは、前記入出口の幅方向に3つ以上に区分した領域毎に、仮検出した物体の本検出に用いる前記受光部の受光光量の下限を設定し、且つ、中間に位置する領域に対して設定する前記受光部の受光光量の下限が最小である、請求項1に記載の物体検出ユニット。
【請求項3】
前記発光部は、前記光源が照射する前記照射光を面照射し、
前記受光部は、マトリクス状に配置した複数の受光素子で反射光を面受光し、
前記測距部が、前記受光素子毎に算出した仮検出した物体までの距離に基づいて、前記発光部が照射光を面照射した照射範囲内に位置する物体の2次元形状を生成する物体形状生成部と、を備えた請求項1、または2に記載の物体検出ユニット。
【請求項4】
前記光源が照射した照射光の照射方向を、直交する2軸方向に走査する走査部と、
前記照射光の照射方向毎に、前記測距部が算出した仮検出した物体までの距離に基づいて、前記走査部が照射光を走査する走査範囲内に位置する物体の2次元形状を生成する物体形状生成部と、を備えた請求項1、または2に記載の物体検出ユニット。
【請求項5】
前記物体形状生成部が生成した物体の2次元形状により、その物体の種類を判別する物体判別部を備えた、請求項3、または4に記載の物体検出ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−173073(P2012−173073A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34093(P2011−34093)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】