説明

生体由来試料固定用シート及びその製造方法

【課題】多孔質膜と格子構造を形成する導体の組合せからなる生体由来試料固定用シートであって、テラヘルツ波を用いた生体由来試料の分析において、正確な分析を可能にする生体由来試料固定用シートを提供し、さらに、この生体由来試料固定用シートを容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波を用いた生体由来試料の分析に用いられる生体由来試料固定用シートであって、少なくとも多孔質樹脂膜と導体から構成され、前記導体は格子構造を形成しており、前記多孔質樹脂膜の厚みは20〜300μmであり、かつ、最大厚み及び最小厚みが、平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内であることを特徴とする生体由来試料固定用シート、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.1THzないし10THzの周波数範囲から選択される電磁波即ちテラヘルツ波を用いる生体由来試料の分析、特に抗原抗体反応による生体由来の蛋白質試料の分析において、被測定物である該生体由来試料の固定に用いられる生体由来試料固定用シートに関する。本発明は、又該生体由来試料固定用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を用いた生体由来の蛋白質試料の分析法としてはELIZA法(非特許文献1)、FIA法などが知られている。しかしこれらの方法は、酵素反応等に基づく発色・発光を信号に用いる方法であり、標識物質による被測定物の標識化が必要であり、高価な試薬、専門的な技術や知識を必要とし、測定に時間がかかるとの問題があった。
【0003】
被測定物の標識化が不要な分析方法としては、赤外線を用いた表面プラズモン共鳴法が知られている(特許文献1)。表面プラズモン共鳴法とは、ガラス基板上に金等の金属薄膜を形成したセンサチップを用い、センサチップの下面に溶液等の媒質を接触させるとともに、金属薄膜上面に種々の角度で光を入射し、反射光の変化に基づいて媒質の屈折率の変化を測定する方法である。しかし、この方法は、センサチップの作製にコストがかかるとの問題がある。
【0004】
そこで、テラヘルツ波により物質(検体)の情報の取得を行なう技術を用いて、生体由来の蛋白質試料を分析する方法が提案されており、特許文献2や非特許文献1等に開示されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)のメンブレン(高分子多孔質膜)と金属メッシュ(格子構造の金属)を組み合わせたシート上に検体を固定し、テラヘルツ波を照射してその吸収(透過率)を観測することによるストレプトアビジン−ビオチン反応の検出が開示されている。この方法は、金属メッシュはテラヘルツ波を透過するが、生体由来の蛋白質の検体がシート上に存在すると、透過スペクトルが低周波側にシフトするとの現象を利用したものである。PVDFメンブレンは、従来から、生体高分子の分析における試料の固定(メンブレン上への保持)用に使用されているが、非特許文献1に記載の方法でも、検体を固定するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−156434号公報
【特許文献2】特開2008−164594号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEICE Technical Report ED2007-205, pp99-102,(2007年11号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記技術のように、PVDFメンブレン等の多孔質膜と金属メッシュ等の格子構造の組合せからなるシートを用い、該多孔質膜表面に生体由来試料を固定し、テラヘルツ波照射による生体由来試料の分析を行った場合は、正確な測定が困難であり分析の精度が低いとの問題があった。例えば、生体由来試料の量が変化しても、テラヘルツ波の吸収が明確に変化しない場合があり、一方、メンブレン上の試料が固定される位置によりテラヘルツ波の吸収の大きさがバラツク場合があった。
【0009】
本発明は、多孔質膜と導体からなる格子構造を有する生体由来試料固定用シートであって、テラヘルツ波を用いた生体由来試料の分析において、精度の高い分析を可能にする生体由来試料固定用シートを提供することを課題とする。本発明は、又、この生体由来試料固定用シートを容易に製造することができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、前記多孔質樹脂膜の厚みを所定範囲内にするとともに、その厚みの変動範囲も所定範囲内にすることにより、前記の課題が解決されることを見出し、以下に示す構成からなる発明を完成した。
【0011】
即ち本発明は、請求項1において、テラヘルツ波を用いた生体由来試料の分析に用いられる生体由来試料固定用シートであって、前記シートは、少なくとも多孔質樹脂膜と導体から構成され、前記導体は格子構造を形成しており、前記多孔質樹脂膜の厚みは20〜300μmであり、かつ、最大厚み及び最小厚みが、平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内であることを特徴とする生体由来試料固定用シートを提供する。
【0012】
この生体由来試料固定用シートは、格子構造の導体と多孔質樹脂膜の組合せからなる。導体による格子構造の形成は、導体が格子の枠(図2における1で示される部分)を形成している状態と、導体が格子の開口部(図2における2で示される部分)を形成している状態の2通りが存在する。前者の場合を特に導体格子と呼ぶ。導体は通常金属であり、格子構造の場合は金属メッシュが典型的な例であるが、他に炭素等からなる格子も挙げることができる。この格子構造は、通常は多孔質樹脂膜の一表面側に接して設けられ、この表面側より0.1THzないし10THzの周波数範囲から選択される電磁波(テラヘルツ波)が照射される。一方、被検査試料である生体由来試料、例えば抗原又は抗体は、通常は該多孔質樹脂膜の他の表面側に固定される。
【0013】
本発明の生体由来試料固定用シートを用いた分析は、試料を固定した生体由来試料固定用シートにテラヘルツ波を照射し、その透過率、吸収率、反射率、位相差等の周波数依存性を測定することにより行うことができる。
【0014】
テラヘルツ波は導体からなる格子構造を透過することができるが、透過率や吸収率等はテラヘルツ波の周波数により変動する。従って、透過率や吸収率等の周波数依存性(スペクトル)を測定することができるが、この格子構造近傍に蛋白質等の生体由来試料が存在すると、格子構造の開口部近傍のテラヘルツ波の導波状態が変化し、透過スペクトルや吸収スペクトル等が低周波側にシフトする。本発明における生体由来試料の分析はこの現象を利用したものであり、多孔質樹脂膜の他の表面側に固定された生体由来試料(例えば、抗原、抗体の蛋白質)の有無やその種類、その量等によりスペクトルのシフトが異なることを利用して、該試料の同定、定量等を行うものである。
【0015】
格子構造の開口部の形状は矩形に限られない。形状や厚み、枠部や開口部の大きさ等は、透過スペクトルや吸収スペクトル等が安定して得られ、又蛋白質等の生体由来試料の存在によるスペクトルのシフトが明確となる範囲で設定され、特に限定されない。
【0016】
多孔質樹脂膜としては、生体由来試料を物理的又は化学的に結合、固定できる樹脂、又は生体由来試料と化学結合する官能基を結合できる樹脂からなる。例えば、同等の孔径を有する微細な孔が連続的に連なった形状を有し、一般的にはメンブレンと呼ばれているものが使用できる。メンブレンフィルターと呼ばれ市販されているフィルターもこの多孔質樹脂膜として用いることができる。
【0017】
又、多孔質樹脂膜の製法も特に限定されるものではなく、市販のメンブレンフィルターと同様な方法によって製造することもできる。本発明で使用できる多孔質樹脂膜の好適な孔径は平均孔径として0.002〜40μmの範囲であり、特に平均孔径は0.1〜10μmが好ましい。ただし、均一な孔径を有するものが好ましい。
【0018】
多孔質樹脂膜は、例えば、PVDFやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂の粉末を焼結して無孔質のフッ素樹脂膜を作製し、これを延伸して多孔質化する方法によって得ることができる。又、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムにイオンビームを照射して多孔質化する方法によっても得ることができる。
【0019】
本発明の生体由来試料固定用シートを構成する前記多孔質樹脂膜の厚みは、20〜300μmの範囲である。厚みが20μm未満の場合は、生体由来試料の固定が困難になる場合があり、その結果分析の精度が低下する。一方、厚みが300μmを超えるときは、多孔質樹脂膜によるテラヘルツ波(特に短波長側)の吸収が大きくなり、又生体由来試料と格子との距離も大きくなるので、生体由来試料の存在による透過スペクトルや吸収スペクトル等の低周波側へのシフトが不明確になり、この点から分析の精度が低下する。
【0020】
又、本発明の生体由来試料固定用シートを構成する多孔質樹脂膜の最大厚み及び最小厚みは、平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内である。多孔質樹脂膜の厚みが変動すると、同一の試料の場合であっても、透過スペクトルや吸収スペクトル等の低周波側へのシフトが変動する。最大厚み及び最小厚みを平均厚みから10%の変動範囲内とすることにより、透過スペクトルや吸収スペクトル等のシフトの変動を抑制することができ、その結果、多孔質樹脂膜上の試料が固定される位置によりスペクトルのシフトがバラツクとの問題を抑制することができる。
【0021】
本発明のシートが適用される生体由来試料の分析としては、抗原抗体反応による分析が挙げられる。抗原抗体反応は、抗体が対応する特定の抗原とのみ選択的に結合する特異性の高い反応であり、この反応を利用して抗原又は抗体の種類の同定や定量をする分析法が知られているが、本発明の生体由来試料固定用シートに抗原又は抗体を固定し、被測定試料を接触させたものについて、テラヘルツ波の透過スペクトルや吸収スペクトル等を測定すれば、抗原抗体反応の有無やその量を測定することができる。その結果、固定された抗原又は抗体と選択的に反応する蛋白質(抗原の場合は抗体、抗体の場合は抗原)の同定や定量を行うことができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記多孔質樹脂膜が、生物由来試料と化学的結合をする官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の生体由来試料固定用シートである。前記多孔質樹脂膜が、生物由来試料と化学的結合をする官能基を有することにより、より多量の生物由来試料、例えば抗原又は抗体を多孔質樹脂膜上に固定することができ、その結果より精度の高い分析を行うことができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、前記官能基が、トレシル基、トシル基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の生体由来試料固定用シートである。生物由来試料と化学的結合をする官能基としては、トレシル基、トシル基、カルボキシル基、及びアミノ基が特に好ましいものとして挙げることができる。生物由来試料と化学的結合をする官能基を2種類以上有していてもよい。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記多孔質樹脂膜が、ポリビニリデンフロライド、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる樹脂を主体とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生体由来試料固定用シートである。前記多孔質樹脂膜を構成する高分子材料は特に限定されないが、例えばニトロセルロース、再生セルロース、PVDF、ポリアミド、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリエチレン及びPTFEを例示することができる。これらの中でも、PVDF、ポリエチレン及びPTFEは、抗原又は抗体と化学的結合をする官能基を結合しやすいので好ましい。
【0025】
請求項5に記載の発明は、前記多孔質樹脂膜が、ニトロセルロースを主体とすることを特徴とする請求項1に記載の生体由来試料固定用シートである。生体由来試料の固定を、生体由来試料との化学的結合ではなく、物理的な結合による行う多孔質樹脂膜の材料としては、ニトロセルロースが好ましい。
【0026】
前記の生体由来試料固定用シートは、例えば、厚みが20〜300μmであり、最大厚み及び最小厚みが平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内である多孔質樹脂膜と一体的に導体によって格子構造を形成する工程、及び、前記多孔質樹脂膜の他の表面(格子構造が形成されていない表面)上に生物由来試料を結合させる工程を有する方法により製造することができる(請求項6)。
【0027】
多孔質樹脂膜と一体的に導体によって格子構造を形成する方法は特に限定されない。例えば、格子構造を別途形成し、多孔質樹脂膜と一体的に貼合わせる、多孔質樹脂膜中に埋め込む方法により形成してもよい。又、該表面上に導体の膜を形成し、この膜をエッチングすることにより格子の開口部を形成する方法によることもできる。導体の膜の形成は、導体が金属の場合は、メッキによることができる。
【0028】
中でも、前記多孔質樹脂膜の1表面に、導体をインクジェットプリンターにより格子状に印刷する工程を含む方法による場合は、優れた生産性で形状精度の高い格子構造を形成できるので好ましい(請求項7)。
【0029】
請求項8に記載の発明は、前記格子構造を形成する工程後、前記生物由来試料を結合させる工程前に、前記多孔質樹脂膜の他の表面上に生物由来試料と化学的結合をする官能基を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の生体由来試料固定用シートの製造方法である。多孔質樹脂膜の表面上に抗原又は抗体と化学的結合をする官能基を有する生体由来試料固定用シート(請求項2に記載の発明)を製造する場合は、格子構造を形成した後、多孔質樹脂膜に該官能基の導入が行われ、その後、導入された官能基に抗原又は抗体が化学的結合される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の生体由来試料固定用シートを用いて生体由来試料を固定し、テラヘルツ波照射により生体由来試料の分析を行うことにより、従来技術より精度が高く、バラツキの小さい分析が可能になる。この生体由来試料固定用シートは、本発明の製造方法により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の生体由来試料固定用シートの一例を模式的に示した模式断面図である。
【図2】本発明の生体由来試料固定用シートの一例を模式的に示した模式平面図である。
【図3】本発明の生体由来試料固定用シートの一例を模式的に示した模式平面図である。
【図4】本発明の生体由来試料固定用シートを用いた分析装置の一例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明を実施するための形態、特に最良の形態を、図を用いてより具体的に説明するが、本発明はこの形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を損ねない範囲で種々の変更を加えることは可能である。
【0033】
図1は、本発明の生体由来試料固定用シートの一例を模式的に示した模式断面図である。この例のシートは抗原抗体反応による分析に用いられるものである。図中1は格子構造を形成する導体であり、2は多孔質樹脂膜(メンブレン)である。図1aでは、多孔質樹脂膜2の一表面に導体1が設けられていることが表されており、導体1は、例えば、金属粉を含む分散液をインクジェットプリンターで格子状に塗布することにより形成することができる。図1bに示される例のように、導体1は、多孔質樹脂膜2内に埋め込まれていてもよい。図1中3は、抗体が固定されている位置を表す。
【0034】
多孔質樹脂膜2の、導体1が設けられている面とは反対側の面には、抗体が固定されている。抗体の固定は、メンブレン上に抗体等を付与するための公知の方法と同様に行うことができる。
【0035】
図2は、図1の生体由来試料固定用シートを、格子構造が設けられている面から見た平面図である。この例は導体格子が金属メッシュの場合であり、図2中の1は金属メッシュ、2は多孔質樹脂膜2が露出した部分、即ち金属メッシュ1の開口部である。この例のシートの代わりに、図1の導体1が図2の開口部2を構成し、図1の多孔質樹脂膜2が図2の枠部1を構成するような構造としても良い。インクジェットプリンターのような手段を用いるとこのような構造でも容易に格子構造を作成することができる。なお、この図は説明のための模式図であり、実際に使用される格子構造(金属メッシュ等)では、開口部の数は通常はるかに多い。又開口部の形状や並び方は図2の場合とは異なっていてもよい。
【0036】
図3は、図1の生体由来試料固定用シートを、導体1が設けられている面の反対側から見た平面図である。図3中点線は、その裏面に導体1の開口部があることを示している。
【0037】
図3中3は、図1と同様に、抗体が固定されている位置を表す。図3で表されるように、一枚の生体由来試料固定用シートの複数箇所に抗体等の試料を固定してもよい。又、それぞれの箇所に異なった試料を固定してもよい。ただし、テラヘルツ波は、それぞれの箇所毎に照射され、2以上の箇所に照射されないようにする必要があり、この観点から、抗体等の試料が固定される箇所の間隔が決定される。
【0038】
図4は、図1aの生体由来試料固定用シートを用い生体由来試料の分析を行う装置の一例を模式的に示す模式図である。この装置は、テラヘルツ波発振器、照射手段、試料保持部5、検出手段及び評価手段を有する。
【0039】
先ず、抗体が固定された生体由来試料固定用シートを被測定試料と接触させる。すると、該抗体と選択的に反応する抗原を含む場合のみ抗原抗体反応が生じ、その反応物がシート上に形成される。次に、このシートを分析装置の試料保持部5に設置し、テラヘルツ波をその波長を変えながら照射する。図4の例では、試料保持部5に設置された生体由来試料固定用シートに固定された抗体3Aに照射される。
【0040】
図4の例では、テラヘルツ波の吸収スペクトルが測定されるので、テラヘルツ波が透過した側に検出手段が設けられており、吸収スペクトルが測定される。抗原抗体反応が生じているか否か、その量等により検出手段で測定された吸収スペクトルが異なってくる。この吸収スペクトルは、評価手段に送られる。評価手段中には、既知の試料の吸収スペクトルが入力されており、この既知試料の吸収スペクトルと検出手段で測定された吸収スペクトルとの比較により、被測定試料の同定や定量等の評価が行われる。
【0041】
抗体3Aについての測定が終了した後は、図中の左向き矢印の方向に生体由来試料固定用シートを動かし、抗体3Bについての測定を同様に行う。なお、スペクトルとしては吸収スペクトル以外にも、透過スペクトル、反射率によるもの、位相差によるものを利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1. 導体
2. 多孔質樹脂膜
3. 抗体が固定されている位置
5. 試料保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波を用いた生体由来試料の分析に用いられる生体由来試料固定用シートであって、前記シートは、少なくとも多孔質樹脂膜と導体から構成され、前記導体は格子構造を形成しており、前記多孔質樹脂膜の厚みは20〜300μmであり、かつ、最大厚み及び最小厚みが、平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内であることを特徴とする生体由来試料固定用シート。
【請求項2】
前記多孔質樹脂膜が、生物由来試料と化学的結合をする官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の生体由来試料固定用シート。
【請求項3】
前記官能基が、トレシル基、トシル基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の生体由来試料固定用シート。
【請求項4】
前記多孔質樹脂膜が、ポリビニリデンフロライド、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる樹脂を主体とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生体由来試料固定用シート。
【請求項5】
前記多孔質樹脂膜が、ニトロセルロースを主体とすることを特徴とする請求項1に記載の生体由来試料固定用シート。
【請求項6】
厚みが20〜300μmであり、最大厚み及び最小厚みが、平均厚みに対してそれぞれ10%の変動範囲内である多孔質樹脂膜と一体的に導体によって格子構造を形成する工程、及び、前記多孔質樹脂膜の他の表面上に生物由来試料を結合させる工程を有することを特徴とする生体由来試料固定用シートの製造方法。
【請求項7】
前記格子構造を形成する工程が、前記多孔質樹脂膜の1表面に導体をインクジェットプリンターにより格子状に印刷する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の生体由来試料固定用シートの製造方法。
【請求項8】
前記格子構造を形成する工程後、前記生物由来試料を結合させる工程前に、前記多孔質樹脂膜の他の表面上に生物由来試料と化学的結合をする官能基を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の生体由来試料固定用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236868(P2010−236868A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81891(P2009−81891)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】