説明

生分解性シートおよび生分解性シートシステム

【課題】長期間にわたって農業用マルチシートまたは海床ネットとして効果的に利用できる生分解性シートおよび生分解性シートシステムを提供する。
【解決手段】生分解性シート1は、生分解プラスチックからなるメッシュ状の骨格部2と、骨格部2よりも単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックからなり、骨格部2の間を埋める充填部4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌菌や微生物により分解される生分解性シートおよび生分解性シートを用いた生分解性シートシステムに関し、特に、農作物の露地栽培やハウス栽培などに利用でき、水田や畑の土壌面に敷く農業用マルチシートまたは海面養殖、内水面養殖、栽培漁業などを行なうのに利用でき、海面や海中に設けられる海床ネットに使用可能な生分解性シートおよび生分解性シートを用いた生分解性シートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雑草の生育防止や栽培地の保温のため、土壌面に敷いて使用する農業用マルチシートが知られていた。農業用マルチシートの素材として生分解プラスチックを利用すると、回収の必要が無いため非常に好適である。しかし、生分解プラスチックの分解速度がランダムであったため、シートを土壌面に固定するための固定部位が先に分解して、風に飛ばされてしまうなどの問題があった。
【0003】
この問題を解決するために特許文献1では、シート両端にパラフィンを含浸させることで、生分解速度を調整し、シートの飛散防止を試みた。しかし、この方法では、シート成形とパラフィン含浸の2段階工程を踏まなくてはならない上に、生分解速度の遅いパラフィンを土中に散らすことになる。さらに、生分解速度の遅い部位が両端にしか存在しないため、シートの飛散防止策としても完全ではない。
【0004】
また、農地と同様の問題は、養殖場などを含む海床でも生じており、必要な海岸域の海面や海中の環境を作り出すための藻場を形成したり、養殖物を波や外敵などから保護するための保護ネットとして活用でき、かつ、使用後の回収の必要のない海床ネットが求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平2000−116251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、長期間にわたって農業用マルチシートまたは海床ネットとして効果的に利用できる生分解性シートおよび生分解性シートシステムを提供することを目的の一つとする。さらに、簡易な方法で製造できる各部位の生分解速度が異なる生分解性シートおよび生分解性シートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生分解性シートは、生分解プラスチックからなるメッシュ状の骨格部と、前記骨格部よりも単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックからなり、前記骨格部の間を埋める充填部とを有することを特徴とする。
【0008】
さらに、上記生分解性シートにおいて、農業用マルチシートまたは海床ネットとして使用されることが好ましい。
【0009】
さらに、上記生分解性シートにおいて、前記骨格部または/および前記充填部の全てまたは一部が生分解プラスチック発泡体からなることが好ましい。
【0010】
さらに、上記生分解性シートにおいて、前記骨格部または/および前記充填部は、生分解プラスチック中に肥料、飼料または/および薬剤を含有してもよい。
【0011】
さらに、上記生分解性シートにおいて、周辺部に生分解プラスチックからなる突起状物を有していてもよい。
【0012】
さらに、上記生分解性シートにおいて、前記骨格部または/および前記充填部は、生分解プラスチックの単位面積あたりの樹脂重量が数段階に分けられていてもよい。
【0013】
また、本発明の生分解性シートシステムは、上記生分解性シートを生分解プラスチックからなる杭によって固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、初期はシート形状だが、シートの生分解が進むにつれてメッシュ形状となる生分解性シートであれば、シートの飛散防止および保温性の点で絶大な効果を奏することを利用したものであり、本発明の生分解性シートは、生分解プラスチックからなるメッシュ状の骨格部と、骨格部よりも単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックからなり、骨格部の間を埋める充填部とを有することにより、充填部の方が骨格部よりも早く分解されるので、初期の骨格部と充填部から構成されるシート形状から、徐々に充填部が分解され、骨格部から構成されるメッシュ形状を経て、最終的には骨格部も分解される。このように、本発明の生分解性シートにおいては、充填部と骨格部とで異なる生分解速度の生分解プラスチックが使用されており、骨格部によって形態を保持することができるので、長期間にわたってシートが飛散することを防止することができ、また、生分解速度を遅らせる別途薬品を使用する必要が無いので、環境に配慮した生分解性シートを提供することができる。
【0015】
また、かかる生分解性シートを農業用マルチシートまたは海床ネットとして使用すれば、メッシュサイズが経時的に変化するので、初期の保温効果に加えて、植物、海草、藻などの成長に合わせて、各成長段階で適切な保護効果を得ることができる。また、植物を刈り入れた後や十分な藻場に成長した後など保護効果等を必要としなくなった時点で、農業用マルチシートおよび海床ネットを生分解させて消失するようにもできるので、使用後の回収や廃棄処理が不要となる。
【0016】
さらに、生分解性シートの骨格部または/および充填部の全てまたは一部が生分解プラスチック発泡体からなることにより、保温性を高めることができる。
【0017】
さらに、生分解性シートの骨格部または/および充填部が、生分解プラスチック中に肥料、飼料または/および薬剤を含有していれば、生分解プラスチックの分解に従って、肥料、飼料または/および薬剤を効果的に徐放することができる。
【0018】
さらに、生分解性シートの周辺部に生分解プラスチックからなる突起状物を有していれば、突起状物によってシートのヘリの部分から潜り込もうとする外敵の類を防ぐのに有効である。
【0019】
さらに、骨格部または/および充填部が、生分解プラスチックの単位面積あたりの樹脂重量が数段階に分けられている場合、単位面積あたりの樹脂重量に応じて生分解速度を調整できるので、より経時的なシート形状の変化を制御することができる。
【0020】
また、これらの生分解性シートを生分解プラスチックからなる杭によって固定した生分解性シートシステムは、システム全体の部品の回収や廃棄処理が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は、本発明の生分解性シート1の一実施形態を示す概略図である。図1において、生分解性シート1は、骨格部2と充填部3とを有している。
【0022】
骨格部2は、長期間にわたって形状を保持したい部位であり、生分解性シート1の飛散を防止するため、シートの一体性を保持するようなメッシュ状に成形されている。なお、図1においては、縦横の糸から構成された四角形の目を有するメッシュ状であるが、メッシュ状は、かかる形状に限定されるものではない。例えば、メッシュ状として、放射状の糸と螺旋状の糸から構成される蜘蛛の巣状でもよいし、メッシュの目の形状が多角形、円形、楕円またはこれらの形状を組み合わせた形状であってもよい。
【0023】
骨格部2の生分解プラスチックは、メッシュの目の部分である充填部3の生分解プラスチックよりも単位面積あたりの樹脂重量が大きければ良く、発泡倍率1倍、すなわち未発泡生分解プラスチックでもよい。ここで発泡倍率は、試料密度をρf、原料となる樹脂密度をρsとすると、発泡倍率=ρs/ρfの式で定義され、単位面積あたりの樹脂重量は、樹脂密度/発泡倍率×厚みで定義される。
【0024】
また、図1に示すように、骨格部2の生分解プラスチックの単位面積あたりの樹脂重量を数段階2a〜2cに分けてもよい。図1において、最も太い骨格部2a(以下「大骨格部」と称する)は目が一番大きいメッシュの枠組みを構成し、次に太い骨格部2b(以下「中骨格部」と称する)は大骨格部2aと共に中くらいのメッシュの枠組みを構成し、一番細い骨格部2c(以下「小骨格部」と称する)は大骨格部2aおよび中骨格部2bと共に一番小さいメッシュの枠組みを構成する。そして、大骨格部2aの単位面積あたりの樹脂重量を最大とし、中骨格部2bの単位面積あたりの樹脂重量を大骨格部2aよりも小さくし、さらに、小骨格部2cの単位面積あたりの樹脂重量を中骨格部2bよりも小さくする。このようにして、経時的にメッシュの目を徐々に大きくすることができ、またハンドリングが容易になり、さらにメッシュと目の部分(充填部3)の生分解速度の差を十分に取ることができる。
【0025】
充填部3は、骨格部2よりも単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックからなり、骨格部2の間を埋めている。なお、充填部3は、図1に示すように、骨格部2の間を完全に埋めていることが保温性の点から好ましいが、骨格部2の間の少なくとも一部に存在していればよい。例えば、図2に示すように、骨格部2の間に充填部3を不完全に埋めて、開口4を設けてもよい。
【0026】
また、充填部3の生分解プラスチックの単位面積あたりの樹脂重量も、骨格部2と同じように数段階に分けてもよい。さらに、連続的に単位面積あたりの樹脂重量を変化させて骨格部2および充填部3を設けてもよい。図3(A)は、連続的に単位面積あたりの樹脂重量を変化させた生分解性シート1の概略平面図であり、図3(B)は、図3(A)のX−X断面における単位面積あたりの樹脂重量(重量/面積)の分布を示す概略図である。図3において、最も単位面積あたりの樹脂重量が大きい部分が典型的な骨格部2(図3(A)では点線で示す)となり、最も単位面積あたりの樹脂重量が小さい部分が典型的な充填部3(図3(A)ではメッシュの目の中心)となり、その中間の連続的に単位面積あたりの樹脂重量が変化する部分は、充填部の一部または骨格部の一部となる。
【0027】
骨格部2および充填部3となる生分解プラスチックとしては、自然放置で生分解するプラスチックであれば、種類は問わないが、ポリブチレンサクシネートが、その分解速度などの面から好適である。骨格部2および充填部3となる生分解プラスチックの少なくとも一部に、生分解プラスチック発泡体を利用すると、保温効果が高まるので好ましい。特に、初期のシート形状における保温性を高めるために、充填部3となる生分解プラスチックとして生分解プラスチック発泡体を利用することが好ましい。
【0028】
また、骨格部2または/および充填部3の生分解プラスチックの中に、肥料、飼料または/および薬剤を含有させてもよい。この場合、生分解性シート1の生分解とともに、肥料、飼料または/および薬剤が徐放されるので、肥料、飼料または/および薬剤の補充作業が軽減または不要となり、コスト削減になる。また、徐々に、必要な量の肥料、飼料または/および薬剤が投与されることになるので環境にもやさしい。
【0029】
図1の生分解性シート1において、単位面積あたりの樹脂重量としては、大骨格部2aを1とした場合、小骨格部2cを0.13、充填部3を0.06とすることが最も好ましい。なお、この場合、中骨格部2bの単位面積あたりの樹脂重量は1〜0.13の間とする。
【0030】
図1乃至図3の生分解性シート1は、農作物の露地栽培やハウス栽培などに利用でき、水田や畑の土壌面に敷く農業用マルチシートまたは海面養殖、内水面養殖、栽培漁業などを行なうのに利用でき、海面や海中に設けられる海床ネットとして使用することができる。生分解性シート1は、充填部3が分解されることにより、メッシュサイズが経時的に変化するので、植物、海草、藻などの成長に合わせて、各成長段階で適切な保護効果を得ることができる。また、植物を刈り入れた後や十分な藻場に成長した後など保護効果等を必要としなくなった時点で、農業用マルチシートおよび海床ネットを生分解させて消失するようにもできるので、使用後の回収や廃棄処理が不要となる。
【0031】
また、農業用マルチシートは、農地に撒いた農作物の種や苗を保温するためにも使用されるが、生分解性シート1の少なくとも一部に生分解プラスチック発泡体を使用すると、保温性に優れており好ましい。
【0032】
さらに、図4(A)に、生分解性シート1を利用した生分解性シートシステム11の概略図を示す。図4(A)において、生分解性シート1は、生分解プラスチックからなる杭12によって固定され、生分解性シートシステム11が構築されている。図4(B)は杭12の一実施形態を示す概略図である。
【0033】
図4(B)の杭12は、棒状に成形された生分解プラスチックの一方の端部12aを切削加工によって尖形とされ、他方の端部12b近傍を曲げ加工によってシートを保持できるように成形されている。図4(C)に、杭12でシート1を貫通し、杭12の端部12bによってシート1を保持している状態を示す。
【0034】
生分解性シート1の充填部(図4では図示せず)が分解されると、図4(A)に示すように、杭12によってメッシュ状のシートが支持された構造となり、農作物などにネットを張った状態となる。このため、育ち出した農作物などへの日当たりを損なうことなく、鳥獣からの侵略を防ぐ効果もある。
【0035】
また、図5(a)のように、生分解性シート1の周辺部に生分解プラスチックからなる突起状物5を付加しておくことにより、図5(b)の構造となり、生分解性シート1のヘリの部分から潜り込もうとする外敵の類をより効果的に防ぐことができる。突起状物5は、充填部3よりも単位面積あたりの樹脂重量が大きい生分解プラスチックからなることが好ましく、骨格部2と同じ単位面積あたりの樹脂重量であってもよい。特に、生分解性シート1の周辺部にも充填部3を設け、充填部3が分解されることによって、突起状物5が顕われるようにしてもよい。
【0036】
本発明の生分解性シートは、いずれの方法で製造してもよいが、図6に示すように、予め製造したメッシュ状の生分解プラスチックをシート状の生分解プラスチックに熱圧着させる方法が最も簡便である。
【0037】
図6において、押出機21から押し出された生分解プラスチック発泡体シート22に対し、予め製造したメッシュ状の生分解プラスチック23が熱圧ロール24によって熱圧着される。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を示すが、いずれの実施例においても、試料の密度を電子天秤(メトラー社製、AE−240)を用い、水中置換法により測定し、発泡倍率(原料となる樹脂密度ρs/試料密度ρf)を求めた。また、生分解性を表す分解率は、土壌表面に100mm×100mmの試料を設置し、所定試験時間後に残っている試料を目視出来る範囲で拾い集めた質量と、試験前試料質量の比で求めた。
【0039】
[実施例1]ベース樹脂として昭和高分子(株)製の樹脂密度約1.2g/cm3の脂肪族ポリエステル(商品名:ビオノーレ#3903)のペレット100部およびタルク1.6部、リン酸成分を有するエビ殻粉0.3部をドライブレンドで混合し、ホッパーより第1段の押出機に供給して溶融させ、押出機途中より炭酸ガスを3.0wt%注入した。その後、ギアポンプ、冷却押出機を通し、サーキュラーダイにてリップ幅0.2mmのダイ出口から大気中に開放し、冷却マンドレルで冷却して、平均厚さ0.47mm、幅700mm、発泡倍率約15倍の生分解プラスチック発泡体シートを製造した。製造された生分解プラスチック発泡体シートは、単位面積あたりの樹脂重量が樹脂密度(約1.2g/cm3)/発泡倍率(約15倍)×厚み(0.47mm=0.047cm)=0.0038g/cm2であり、肥料としてエビ殻粉を含有し、良好な外観を示していた。
【0040】
この生分解プラスチック発泡体シートの生分解性を試験した。図7における黒丸●のグラフが、実施例1の生分解プラスチック発泡体シートの生分解性の試験結果である。
【0041】
[実施例2]実施例1と同様の工程において、リップ幅を0.4mmとすることにより、単位面積あたりの樹脂重量0.008g/cm2、平均厚さ1.0mm、幅700mm、発泡倍率15倍であり、肥料としてエビ殻粉を含有し、良好な外観を示す生分解プラスチック発泡体シートを製造した。
【0042】
この生分解プラスチック発泡体シートの生分解性を試験した。図7における三角△のグラフが、実施例2の生分解プラスチック発泡体シートの生分解性の試験結果である。
【0043】
[実施例3]ベース樹脂として昭和高分子(株)製の樹脂密度約1.2g/cm3の脂肪族ポリエステル(商品名:ビオノーレ#3903)のペレット100部と農薬タルク1.6部をドライブレンドで混合し、ホッパーより押出機に供給して溶融させ、リップ幅0.46mmのTダイから押出し、冷却ロールで冷却して生分解プラスチックシートを製造した。なお、本実施例における農薬タルクは、タルク100部にエトフェンブロックス2部を混合担持させたものである。製造された生分解プラスチックシートは、単位面積あたりの樹脂重量0.06g/cm2、平均厚さ0.5mm、幅200mm、発泡倍率1倍であり、農薬を含有し、良好な外観を示していた。
【0044】
この生分解プラスチックシートの生分解性を試験した。図7における×印のグラフが、実施例3の生分解プラスチックシートの生分解性の試験結果である。
【0045】
図7から、実施例1の単位面積あたりの樹脂重量0.0038g/cm2の生分解プラスチック(●)は4ヶ月で分解され、実施例2の単位面積あたりの樹脂重量0.008g/cm2の生分解プラスチック(△)は6ヶ月で分解され、実施例3の単位面積あたりの樹脂重量0.06g/cm2の生分解プラスチック(×)は9ヶ月で分解されたことが確認できる。つまり、単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックの方が生分解速度が速く、単位面積あたりの樹脂重量が大きい生分解プラスチックの方が生分解速度が遅い。
【0046】
[実施例4]図8(A)に示すように、20mm幅のテープ状に切り出した実施例3の生分解プラスチック32と、20mm幅のテープ状に切り出した実施例2の生分解プラスチック33とを組み合わせ、熱圧ロールによって熱圧着してメッシュ状の生分解プラスチック31を製造した。さらに、図8(B)に示すように、メッシュ状の生分解プラスチック31と実施例1のシート状の生分解プラスチック34とを熱圧ロールによって熱圧着して生分解性シート35を製造した。生分解性シート35において、実施例3の生分解プラスチック32が位置する部分が大骨格部となり、実施例2の生分解プラスチック33が位置する部分が小骨格部となり、それらの間の実施例1の生分解プラスチック34のみからなる部分が充填部となる。
【0047】
一方、実施例3のTダイをストランドダイに変更することでΦ4mmの棒状の生分解プラスチックを製造し、長さ200mmに切り分け、図4(B)のように切削および曲げ加工することで杭を製造した。
【0048】
この生分解性シート34と杭を用いて、図4(A)に示すような生分解性シートシステムを構築し、畑に設置して農業用マルチシートとして使用した場合の経時外観観察をした結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から、3ヶ月で充填部である実施例1の生分解プラスチック34が生分解され、5ヶ月で実施例2の生分解プラスチック33からなる小骨格部も生分解され、9ヶ月で実施例3の生分解プラスチック32からなる大骨格部も生分解されたことが確認できる。
【0051】
[実施例5]ベース樹脂として昭和高分子(株)製の樹脂密度約1.2g/cm3の脂肪族ポリエステル(商品名:ビオノーレ#3903)をペレットホッパーより押出機に供給して溶融させ、Tダイから押出し、冷却ロールで冷却して、単位面積あたりの樹脂重量0.18g/cm2、平均厚さ1.5mm、幅200mm、発泡倍率1倍の生分解プラスチックシートを製造した。この生分解プラスチックシートを20mm幅のテープ状に切り出して組み合わせ、熱圧ロールによって熱圧着してメッシュ状の生分解プラスチックを製造した。
【0052】
一方、ベース樹脂として昭和高分子(株)製の樹脂密度約1.2g/cm3の脂肪族ポリエステル(商品名:ビオノーレ#3903)のペレット100部およびタルク1.6部をドライブレンドで混合し、ホッパーより第1段の押出機に供給して溶融させ、押出機途中より炭酸ガスを1.0wt%注入した。その後、ギアポンプ、冷却押出機を通し、サーキュラーダイにてリップ幅0.3mmのダイ出口から大気中に開放し、冷却マンドレルで冷却して、単位面積あたりの樹脂重量0.012g/cm2、平均厚さ0.5mm、発泡倍率5倍の生分解プラスチック発泡体シートを製造した。
【0053】
そして、上記単位面積あたりの樹脂重量0.18g/cm2のメッシュ状の生分解プラスチックと単位面積あたりの樹脂重量0.012g/cm2の生分解プラスチック発泡体シートとを熱圧ロールによって熱圧着して生分解性シートを製造した。かかる生分解性シートを深さ約3mの海床に図4(b)と同形状の鉄製の杭を用いて設置し、海床ネットとして使用した場合の経時外観観察をした結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2から、7ヶ月で充填部の生分解プラスチックが生分解され、24ヶ月で骨格部も生分解されたことが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の生分解性シートの一実施形態を示す概略図
【図2】本発明の生分解性シートの変形例を示す概略図
【図3】(A)は本発明の生分解性シートの他の変形例を示す概略図、(B)は発泡倍率の分布を示す概略図
【図4】(A)は生分解性シートを利用した生分解性シートシステムの概略図、(B)は杭の一実施形態を示す概略図、(C)は杭の使用状態を示す図
【図5】(A)は本発明の生分解性シートの変形例を示す概略図、(B)は生分解性シートシステムの変形例を示す概略図
【図6】本発明の生分解性シートの製造工程の一実施形態を示す図
【図7】生分解プラスチックの生分解性の試験結果を示す図
【図8】(A)および(B)は本発明の生分解性シートを製造する過程を説明する概略図
【符号の説明】
【0057】
1 生分解性シート
2 骨格部
2a 大骨格部
2b 中骨格部
2c 小骨格部
3 充填部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解プラスチックからなるメッシュ状の骨格部と、前記骨格部よりも単位面積あたりの樹脂重量が小さい生分解プラスチックからなり、前記骨格部の間を埋める充填部とを有することを特徴とする生分解性シート。
【請求項2】
農業用マルチシートまたは海床ネットとして使用されることを特徴とする請求項1に記載の生分解性シート。
【請求項3】
前記骨格部または/および前記充填部の全てまたは一部が生分解プラスチック発泡体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性シート。
【請求項4】
前記骨格部または/および前記充填部は、生分解プラスチック中に肥料、飼料または/および薬剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の生分解性シート。
【請求項5】
周辺部に生分解プラスチックからなる突起状物を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の生分解性シート。
【請求項6】
前記骨格部または/および前記充填部は、生分解プラスチックの単位面積あたりの樹脂重量が数段階に分けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の生分解性シート。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の生分解性シートを生分解プラスチックからなる杭によって固定したことを特徴とする生分解性シートシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−200009(P2008−200009A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42641(P2007−42641)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】