説明

生産ライン

【課題】同種機能を有する複数の処理装置をまとめて配置するとともに、ワークの搬送経路を簡素化することを可能とした生産ラインを提供する。
【解決手段】水平方向及び垂直方向にワークを搬送する搬送装置110を設置し、搬送装置110によるワーク搬送エリア100の両側面に沿ってそれぞれ複数の処理装置群210、220を水平方向へ各別に一列を成すように配置し、各一列では、同種機能を有する処理装置211、221同士を処理階層順に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、フラットパネルディスプレイ等の生産ラインに関し、詳しくは、ワークに対して一連のパターニングプロセス処理等を繰り返し施す生産ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やフラットパネルディスプレイの生産においては、一般に、成膜工程→フォトリソ工程(レジストのパターン形成)→エッチング工程(レジストパターンの転写)→レジスト剥離工程→検査工程という一連のパターニングプロセス(これを1サイクルと呼ぶ)でワークを処理することにより、ワークに1つのパターンを形成する。このサイクルを繰り返し行ない、複数のパターンを形成することにより半導体回路が完成する。
【0003】
近年、上記半導体回路を生産する生産ラインでは、同種機能の処理装置群をまとめて配置するジョブショップレイアウトが主流となっている。同種機能の処理装置とは、機能的に同一の処理を行う処理装置であり、例えば、成膜工程を施す成膜装置同士、フォトリソ工程を施すフォトリソ装置同士などがこれに該当する。
【0004】
ジョブショップレイアウトの第1のメリットは、同種機能の処理装置をまとめて配置するので、薬液やガスの配管などの工場ユーティリティを集中して配置することができ、工場ユーティリティへの設備投資費が安くなることである。また、同種機能の処理装置をまとめて管理できるので、メンテナンス作業や作業者配置を効率的に行うことができる。
【0005】
第2のメリットは、同種機能の処理装置をまとめて配置すると、処理装置を複数工程の処理に共用することが容易となり、処理装置の台数を減らすことができることである。
【0006】
例えば、1日に1000枚の生産が課されている生産ラインにおいて、1日の平均処理能力が700枚の処理装置を複数台用いて生産を行う場合について説明する。この生産ラインで1日に1000枚生産するためには、第1工程及び第2工程のそれぞれで1000枚の処理を行う必要があり、両工程で合計2000枚の処理を行う必要がある。したがって、処理装置が第1工程及び第2工程のうちの何れか一方の工程でしか使用できないものであれば、1日の平均処理能力が700枚の処理装置を第1工程及び第2工程の各々に2台ずつ配置する必要がある。
【0007】
しかし、処理装置が第1工程及び第2工程の双方で使用できる場合は、各工程で350枚(700枚/2)を処理することができるため、処理装置を3台設置すれば各工程で1050枚の処理が可能となり、生産ライン全体で1日当たり1000枚以上(350枚×3)を生産することができる。
【0008】
したがって、後者の場合は前者の場合と比較して生産ラインから処理装置を1台削減でき、設備投資費を減らすことができる。なお、処理装置の処理能力によっては、必ずしも全ての工程で台数を減らせるという訳ではないが、工場全体としては、実際にかなりの台数を減らすことができる。
【0009】
第3のメリットは、処理装置を複数工程の処理に共用することで、トラブルやメンテナンスなどのために、生産ラインの何れかの処理装置が停止した時に、生産への悪影響を抑制することができることである。例えば、1日に1000枚の生産が課されている生産ラインにおいて、90%の稼働率で1日の平均処理能力が600枚(換言すると、1日の最大処理能力が667枚)の処理装置を4台用いて生産を行う場合について説明する。
【0010】
まず、処理装置が第1工程及び第2工程のうちの何れか一方の工程でしか使用できないものである場合は、当該処理装置は各工程で2台ずつ必要となり生産ライン全体では合計4台必要となる。この場合、処理装置1台が故障して停止すれば、故障を起こした方の工程の処理能力は、多くとも処理装置1台分の最大処理能力である667枚/日となるので、当該工程では、333枚/日の処理能力が不足することになる。しかしながら、その他の3台の処理装置が第1工程及び第2工程の双方で使用できる場合は、処理装置の1台当たりの各工程での処理能力は、333.3枚(667枚/2)となるため、生産ライン全体の処理能力としては、
333.3[枚/日] × 3[台] ≒ 1000[枚/日]
を確保でき、必要な処理枚数に対してほぼ過不足なく生産することが可能となる。
【0011】
特に、半導体やフラットパネルの生産ラインでは、トラブルやメンテナンスで停止している時間が長く、稼働率が低いので、多数の処理装置を複数工程の処理に共用できるものとすれば、一部の処理装置の故障による生産量の低下、仕掛りの増加、生産リードタイムの長期化などを防ぐことができる。
【0012】
しかしながら、各工程の処理装置をまとめて配置するジョブショップレイアウトでは、同種機能の処理装置群については、まとめて配置されているものの、非同種機能の処理装置群同士は互いに離れた場所に配置されるため、これらの間の搬送距離が長く複雑となり、搬送時間も長くなる。例えば、同種機能の処理装置群内での搬送、非同種機能の処理装置群同士の間での搬送、並びに、次の搬送先の同種機能の処理装置群内での搬送の合計3回の搬送を行う必要があり、これら搬送を行うための搬送装置への設備投資費が高くつくという問題がある。
【0013】
特に、近年のフラットパネルの基板サイズの大型化に伴って、搬送装置の設備投資費が膨大化しており、搬送距離が短く、搬送回数も少ない、より簡素な搬送システムが求められている。
【0014】
ところで、このようなジョブショップレイアウトは、通常、各工程にバッファを配置している。バッファは、必ずしも常に全ての工程で必要になるという訳ではない。例えば、あるときに何らかの原因(例えば、処理装置や搬送装置のトラブルやメンテナンスなど)で発生した仕掛りは特定の工程のバッファに溜まるが、その他の工程のバッファは空いている場合が多い。したがって、各工程で必要となり得る容量のバッファを、それぞれの工程で確保しようとすると、生産ライン全体で実際に使用するバッファよりも多くのバッファを確保することとなってしまう。
【0015】
そこで、バッファを効率的に使用して生産ライン全体のバッファの容量を抑制するために、バッファをそれぞれの工程で必要となり得る量よりも少なく確保しておき、ある工程のバッファが一杯になったときに、空いている別の工程のバッファにワークを振り替えて一時保管することが考えられる。ところが、そのようにすると、生産ライン全体のバッファ容量は削減することができるものの、ワークを別の工程のバッファに振り替えるための搬送に負担が掛かるため、搬送能力を向上させる必要性が生じ、搬送装置への設備投資費が高くついてしまうという問題が発生する。
【0016】
つぎに、特許文献1に開示されている生産ラインについて説明する。特許文献1に開示されている生産ラインは、処理装置の配置をジョブショップ形式とする一方、各処理装置間の搬送および処理はタクト制御で行うものである。さらに、ある処理装置が故障した場合には搬送経路を変更して残りの処理装置の組合せで処理できるよう、各処理装置間の搬送を自在に行えるようなライン構成としている。
【0017】
特許文献1に係る生産ラインの方式は、各ショップの処理装置の大きさや台数が揃っている場合はうまく配置できる。しかし、現実の半導体やフラットパネルディスプレイの生産ラインは、各ショップで処理装置のサイズが大きく異なり、また、各工程に配置された処理装置同士の処理タクトタイムも揃っていないので各ショップに配置される処理装置の台数も異なってくる。このため、特許文献1に係る生産ラインによれば、全ての処理装置を正方格子上にうまく配置できないので、レイアウトに不要な空間が発生する。逆に、不要な空間が発生しないようにレイアウトすると、レイアウトが歪になって、搬送経路が複雑になる。また、特許文献1に係る生産ラインの方式を採用すれば、生産ライン全体に搬送装置を張り巡らせる必要があり、搬送装置の設備投資費が高くなるという問題が生じる。
【0018】
つぎに、特許文献2に開示されている生産ラインについて説明する。特許文献2に開示されている生産ラインは、半導体形成の一連のパターニングプロセスである、成膜工程、フォトリソ工程、エッチング工程、レジスト剥離工程、検査工程のうち、フォトリソ工程を除く各工程をパターニングプロセス毎にフローショップ方式とし、基板を1枚ずつ順次受け入れて枚葉処理を行うものである。フォトリソ工程の処理装置は複数のパターニングプロセスで共用している。
【0019】
特許文献2に係る生産ラインの方式によると、フローショップ方式で接続されている各工程は、枚葉で搬送されているので、各工程間を複数枚の基板を収納したカセットで搬送する場合と比較して、カセットへの詰め込み時間が短縮でき、生産リードタイムが短くなるという利点がある。ところが、この方式では、フォトリソ工程を除く各工程をフローショップ方式で枚葉処理を行っているので、フォトリソ装置以外の処理装置において、他の処理装置との併用ができず、処理装置の台数が増加して生産効率が悪くなるという問題がある。
【0020】
また、各工程間を枚葉で搬送すると、ある処理装置が停止したときに、前後の処理装置が稼動可能な場合でも、当該前後の処理装置には基板が供給されないために処理を中断せざるを得ず、装置の稼働率が悪くなって生産数が低下するという問題もある。また、同種機能の処理装置が分散して配置されるので、薬液やガスの配管などの工場ユーティリティへの設備投資費が高くなるという問題もある。
【0021】
つぎに、特許文献3に開示されている生産ラインについて説明する。特許文献3に開示されている生産ラインでは、全工程処理の内、何度も繰り返される処理工程をグループ化して1つのモジュールとしてまとめ、1つのエリア内に設置している。特許文献3に係る生産ラインの方式では、モジュール内を連続フロー運転するので、モジュール内の処理装置が故障すると、このモジュール全体の機能が低下してしまうという問題がある。また、モジュール内の処理装置を、モジュール間で共有することができないので、生産ライン全体での処理装置の台数を削減することができないという問題もある。
【特許文献1】特開平8−181184号公報
【特許文献2】特開2000−98920号公報
【特許文献3】特開2001−353644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記のように、従来の生産ラインにはそれぞれメリットとデメリットがあり、生産効率を優先させれば、ジョブショップレイアウトのように、搬送経路が複雑になって搬送装置の設備投資費が高くなるという問題が生じ、搬送経路を簡素化して搬送効率を優先すれば、フローショップレイアウトのように、生産効率が低下するという問題が生じる。生産効率と搬送効率とを同時に満足する生産ラインは存在しなかった。
【0023】
本発明はこのような従来の生産ラインの課題を解決するためになされたものであり、同種機能を有する複数の処理装置をまとめて配置するとともに、ワークの搬送経路を簡素化することにより生産効率と搬送効率を同時に満足する生産ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明の生産ラインは、搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、水平方向及び垂直方向にワークを搬送する搬送装置が設置されており、該搬送装置によるワーク搬送エリアの両側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されている。
【0025】
搬送装置はワークを水平方向及び垂直方向に搬送するだけでよいので、搬送経路及び搬送装置の構造の簡素化、搬送効率の向上が図られる。併せて、処理装置群がワーク搬送エリアに沿って水平方向に各別に一列を成して配置されているので、各工程の処理装置の大きさや台数が揃っていなくても、多数の処理装置について効率的なレイアウトを実現することができる。
【0026】
また、同種機能を有する処理装置が同一列に配置されていることにより、複数工程での装置共有化が可能となり、生産効率が向上する。また、工場ユーティリティの集中配備が可能となり、工場ユーティリティへの設備投資費を抑えることができる。
【0027】
さらに、処理装置は、ワーク搬送エリアの両側面に沿って、同種機能を有する処理装置同士が同一列に配置され、しかも、当該列を構成する処理装置は処理階層順に配置されているため、各工程間のワークの搬送距離が短くなり、生産ライン全体の搬送距離及び搬送時間などが短縮化され、搬送効率の向上が見込まれる。
【0028】
また、本発明の生産ラインは、搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、水平方向及び垂直方向にワークを搬送する2台の搬送装置が、互いに平行なワーク搬送エリアを形成するように設置されており、前記ワーク搬送エリア同士の対向側面及び非対向側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されている。
【0029】
この構成によれば、1サイクルが多工程、例えば4工程以上からなる一連の処理にも適切に対応でき、同様に、搬送装置の簡素化、効率的なレイアウト、向上ユーティリティの集中配備など、上述した種々の利点が得られる。
【0030】
また、本発明の生産ラインは、少なくとも前記列の何れか1列には、複数階層の処理が可能な処理装置(併用処理装置)が含まれている。
【0031】
この構成によれば、当該併用処理装置と同列近隣に配置されている同じ階層を処理する処理装置が故障等により停止しても、当該故障した処理装置に代わって併用処理装置が処理を行うことができるので、生産ライン全体の生産能力の低下を抑制することができる。また、これら併用処理装置と故障した処理装置とは互いに近隣に配置されているので、搬送経路が専用処理装置から故障処理装置へ変更されても搬送距離及び搬送時間の増加を少なく抑えることができる。
【0032】
また、本発明の生産ラインは、前記ワーク搬送エリアと前記処理装置との間に、前記搬送装置がワークを待機させるためのバッファが設けられている。
【0033】
この構成によれば、ワークを処理装置からバッファへ或いはバッファから処理装置へ移動させる際の搬送距離及び搬送時間を短縮することができる。また、処理装置とバッファとの距離が短いため、あるバッファが一杯になり空いている他のバッファへワークを振り替える際にも効率的な振替搬送を実現することができる。バッファの効率的な振替搬送により、生産ライン全体で必要なバッファの数を減らすことも可能である。
【0034】
また、本発明の生産ラインは、搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、水平方向及び垂直方向にワークを搬送する2台の搬送装置が、互いに平行且つ隣接したワーク搬送エリアを形成し、且つ、ワークを相互に授受できるように設置されており、前記ワーク搬送エリア同士の非対向側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されている。
【0035】
この構成によれば、2台の搬送装置によって搬送能力を向上させることができるとともに、前記した、搬送装置の簡素化、効率的なレイアウト、工場ユーティリティの集中配備などの利点が得られる。
【0036】
また、本発明の生産ラインは、前記ワーク搬送エリア同士の間に、搬送装置がワークを待機させるためのバッファが設けられている。
【0037】
この構成によれば、ワークへの処理を終了した処理装置と次工程の処理を施す処理装置とがワーク搬送エリアを隔てて設置されており、当該次工程を処理する処理装置がワークを取り込める状態にない場合に、元の処理装置側の搬送装置は、ワーク搬送エリア同士の間に設けられたバッファにワークを待機させておくことができ、次工程の処理装置がワークを取り込める状態になると同時に、次工程の処理装置側の搬送装置が当該バッファからワークを取り出して当該次工程の処理装置へ搬送することができるので、搬送効率の向上が図られる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、同種機能を有する複数の処理装置をまとめて配置することができるとともに、ワークの搬送経路を簡素化することができる。これにより生産効率と搬送効率を同時に満足することができる。
【0039】
例えば、搬送装置はワークを水平方向及び垂直方向に搬送するだけでよいので、搬送経路の簡素化が図られる。また、同種機能を有する処理装置が同一列に配置されていることにより、複数工程での装置共有化が可能となり、生産効率が向上する。また、薬液やガスの配管などの工場ユーティリティの集中配備が可能となり、工場ユーティリティへの設備投資費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施形態における生産ラインについて、図面に基づいて説明する。図1は生産ラインL1の概略正面図、図2は生産ラインL1の2階部分の概略平面図、図3は生産ラインL1の1階部分の概略平面図、図4は生産ラインL1の概略斜視図である。
【0041】
本発明の実施形態における生産ラインL1は、搬送装置110により搬送するワークWに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成するものであり、例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ等の生産ラインに適用することができる。
【0042】
ワークWに施す前記一連の処理の例としては、半導体形成のための一連のパターニングプロセスがある。この一連のパターニングプロセスは、成膜工程、フォトリソ工程(レジストのパターン形成)、エッチング工程(レジストパターンの転写)、レジスト剥離工程及び検査工程を1サイクルとしたものであり、この一連の処理をワークに対して複数サイクル施すことによって、複数階層からなる半導体回路が形成される。
【0043】
本実施の形態では、かかる一連の処理を例に挙げて説明する。勿論、本発明は上記パターニングプロセスに限らず、搬送装置110により搬送するワークWに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであれば、その他の工程処理にて構成することも可能である。
【0044】
なお、ワークWは、被処理体であるとともに、1つの搬送単位を示している。例えば、ワークWは、1枚の基盤(被処理体)のみならず、まとめて搬送される複数枚の基板やカセットに収容された1又は複数枚の基盤によっても構成される。
【0045】
<生産ラインの構成>
生産ラインL1は、搬送装置110によりワークWが搬送されるエリアであるワーク搬送エリア100、ワーク搬送エリア100の両側面に沿って各側面に2列に配置された計4群の処理装置群210〜240、倉庫エリア300などを有する。
【0046】
ワーク搬送エリア100及び倉庫エリア300は、建屋の1階部分から2階部分に亘って2階部分のフロアを貫通して設置されている。
【0047】
処理装置群210〜240は、ワーク搬送エリア100の両側面に沿ってそれぞれ水平方向へ各別に一列を成して配置されている。処理装置群230、240は建屋の1階部分に、処理装置群210、220は建屋の2階部分に設置されている。
【0048】
なお、生産ラインL1が設置される場所は、上記したような建屋に限定されない。例えば、建屋の代わりに鋼材などで躯体を組み、上記したワーク搬送エリア100、複数の処理装置群210〜240及び倉庫エリア300の配置関係を構築してもよい。後述する実施の形態についても同様である。
【0049】
<搬送装置の構成>
搬送装置110は、処理装置群210〜240を構成する多数の処理装置211、221、231、241、242間でワークWを搬送するために、ワークWを水平方向及び垂直方向に搬送する手段を備えている。すなわち、搬送装置110はワークWを水平方向に搬送するための水平方向搬送手段111と、ワークを垂直方向に搬送するための垂直方向搬送手段112とを備える。水平方向搬送手段111及び垂直方向搬送手段112の両方を駆動することにより、斜め上方、斜め下方へのワークWの搬送も可能である。なお、このような搬送装置110がワーク搬送エリア100内に複数台設置されていてもよい。また、搬送装置110として、ワークWを水平方向に搬送する水平方向搬送装置を各フロアに設置するとともに、各フロアの水平方向搬送装置間でワークWの受け渡しをするために、フロアを貫通して垂直方向にワークWを搬送する垂直方向搬送装置を設置してもよい。
【0050】
<倉庫エリアの構成>
倉庫エリア300は、ワーク搬送エリア100と処理装置群210〜240との間に形成されている。この倉庫エリア300には、搬送装置110がワークWを待機させるためのバッファ301が各処理装置とワーク搬送エリア100との間にそれぞれ1又は複数個設けられている。バッファ301に待機させたワークWは、待機完了後、再び搬送装置110によって他の場所、例えば処理装置へ搬送される。バッファ301は、例えば、棚、箱などで構成される。なお、図1に示すように、1階に配置された処理装置群230、240と2階に配置された処理装置群210、220との境界に間隔が確保されている場合は、当該境界に面するワーク搬送エリア100の側面にバッファ301を設けてもよい。
【0051】
また、倉庫エリア300には、ローダポート302が配置されている。ローダポート302は、各処理装置と搬送エリア100との間に配置されており、搬送装置110によって処理装置前に搬送されてきたワークWを当該処理装置へ取り込んだり、当該処理装置から搬送装置110へワークWを取り出すための出入口となる。ワークWがカセットに収容されて搬送される場合は、ワークWが搬送装置110からローダポート302へ移載されると、当該処理装置は、ローダポート302内のカセットの中から基板だけを抜き取って処理装置内に取り込み、所定の処理を行う。処理終了後、当該処理装置は、ローダポート302内に残されたカセットに処理後の基盤を戻し、当該カセットはローダポート302から搬送装置110へ移載される。なお、前記移載は、図示しない移載手段により行われる。移載手段は、搬送装置110、ローダポート302内、又は処理装置の何れに設けられていても良い。
【0052】
<処理装置群の構成>
複数の処理装置群210〜240は、それぞれ、ワーク搬送エリア100の両側面に沿って、それぞれ水平方向へ各別に一列を成して配置されている。すなわち、各処理装置群210〜240を構成する処理装置も、ワーク搬送エリア100の側面に沿って配置されており、このことにより、搬送装置110との間で直接ワークWの授受ができるようになっている。また、各処理装置群210〜240からなる各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されている。つまり、同種機能を有する処理装置同士は、複数の列に分散配置されていない。さらに、各列には、何れかの処理装置がトラブルなどで停止した際に、生産ラインL1の生産能力の低下を抑制するために、同一階層を処理する処理装置が各別に複数台ずつ設置されている。
【0053】
また、各列を構成する処理装置は、生産ラインL1の上流側から下流側に向かって処理階層順に配置されている。処理階層は、処理装置がワークWに対して処理を施す階層であり、低層を処理するものほど処理階層順が先順となる。但し、第1層及び第2層の双方の処理を施すことができる処理装置などのように、複数の階層を処理できる処理装置については、当該複数の階層の平均値に従って処理階層順が決められる。例えば第1層及び第2層を処理できる処理装置は、処理できる複数の階層の平均値が1.5層であるので、処理階層順は、第1層だけを処理する処理装置と第2層だけを処理する処理装置の間となる。本実施の形態においては、複数の階層を処理できる処理装置が各列に少なくとも1台含まれている。なお、処理階層が全く同じ処理装置同士は、何れを先順として配置してもよい。
【0054】
<処理装置群の処理内容>
つぎに、処理装置群210〜240の処理内容の具体例について説明する。処理装置群210は、成膜工程を処理する成膜処理装置211、211、・・・が複数台配置されて構成されている。処理装置群220は、フォトリソ工程を処理するフォトリソ処理装置221、221、・・・が複数台配置されて構成されている。処理装置群230は、エッチング工程を処理するエッチング装置231、231、・・・が複数台配置されて構成されている。処理装置群240は、レジスト剥離工程を処理するレジスト剥離装置241、241、・・・と検査工程を処理する検査装置242、242、・・・とがそれぞれ複数台配置されて構成されている。ここで、処理装置群240は、互いに非同種機能の処理装置であるレジスト剥離装置と検査装置とを含んでいるが、このように互いに非同種機能の処理装置を含んで同一列を構成していても、同種機能を有する処理装置が同一の列に配置されており、複数の列に分散して配置されていなければ問題ない。
【0055】
なお、図面において、成膜装置群210はAで始まる名称、フォトリソ装置群220はBで始まる名称、エッチング装置群230はCで始まる名称で上流側から順に番号付けを行っている。また、処理装置群240については、レジスト剥離装置241で構成されるレジスト剥離装置群はDで始まる名称、検査装置242で構成される検査装置群はEで始まる名称で上流側から順に番号付けを行っている。以下においては、説明の便宜のため、1つの階層のみを処理できる処理装置を「専用処理装置」といい、複数の階層を処理できる処理装置を「併用処理装置」という。
【0056】
処理装置群210を構成する成膜装置211、211、・・・には、スパッタ方式やCVD方式など複数の方式の処理装置があるため、1台の成膜装置211が複数の階層の処理を行うことができない場合がある。この場合は、各階層を処理する専用処理装置(成膜装置)211をそれぞれ複数台ずつ処理階層順に配置して一列を構成する。複数階層の処理を行う併用処理装置(成膜装置)211Aを列に含めることができる場合は、併用処理装置の処理階層を平均値により定め、専用処理装置を含めた全ての処理装置(成膜装置)を処理階層順に配置して一列を構成する。例えば図2に示すように、第1層及び第2層の併用処理装置211Aは、平均処理階層が1.5層なので、処理階層が1層である第1層の専用処理装置211(複数ある場合は、最下流側にある専用処理装置211)と、処理階層が2層である第2層の専用処理装置211(複数ある場合は、最上流側の専用処理装置211)との間に配置されることとなる。
【0057】
処理装置群220を構成するフォトリソ装置221、221、・・・は、露光用のフォトマスクが処理する階層ごとに異なるため、1台のフォトリソ装置221が複数の階層の処理を行うことができない場合がある。この場合は、各階層を処理する専用処理装置(フォトリソ装置)211をそれぞれ複数台ずつ処理階層順に配置して一列を構成する。しかし、各階層の処理に必要な複数のフォトマスクを1台のフォトリソ装置に備えつけたものであれば、複数の階層を処理できる併用処理装置とすることができる。この併用処理装置(フォトリソ装置)221Aを列に含めることができる場合は、併用処理装置221Aの処理階層を平均値により定め、専用処理装置を含めた全ての処理装置(フォトリソ装置)を処理階層順に配置して一列を構成する。例えば図2に示すように、第1層及び第2層の併用処理装置221Aは、平均処理階層が1.5層なので、処理階層が1層である第1層の専用処理装置221(複数ある場合は、最下流側にある専用処理装置221)と、処理階層が2層である第2層の専用処理装置221(複数ある場合は、最上流側の専用処理装置221)との間に配置されることとなる。
【0058】
処理装置群230又は240(図3参照)についても、同様に、併用処理装置を配置しない場合は、各階層を処理する専用処理装置231、241、242をそれぞれ複数台ずつ処理階層順に配置して一列を構成し、併用処理装置を配置する場合は、併用処理装置の処理階層を平均値により定め、専用処理装置を含めた全ての処理装置を処理階層順に配置して一列を構成する。
【0059】
なお、本実施の形態においては、レジスト剥離装置241と検査装置242とは同一列に配置されているが、配置順を定める処理階層順は、同種機能を有する処理装置同士の間、すなわち、レジスト剥離装置241同士又は検査装置242同士の間で形成されていればよい。また、このように非同種機能の処理装置が同一列に複数台ずつ配置されている場合は、望ましくは、各同種装置に少なくとも1台の併用処理装置を含める。
【0060】
また、本実施の形態では、ワーク搬送エリア100の両側面に沿って、それぞれ2群の処理装置群210〜240が水平方向へ各別に一列を成して配置されているが、列の数は、これに限定されない。すなわち、ワーク搬送エリア100の両側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されていればよい。
【0061】
<ワークの処理手順>
つぎに、図5に示す工程フロー図に従って処理装置が配置された生産ラインL1によって、ワークWに回路形成処理を施す場合について説明する。この工程フロー図は、第1層〜第3層の処理階層ごとに工程を定め、工程ごとに使用する処理装置を示している。何れか1の階層及び工程で使用される専用処理装置は、1箇所のみに記載されている。例えば、A4に配置されている専用処理装置211は、第2層の成膜工程の処理のみを行う。複数の階層の同種工程で使用される併用処理装置の場合は、複数箇所に記載されている。例えば、A3に配置されている併用処理装置211Aは、第1層及び第2層の成膜工程の処理を行う。
【0062】
なお、図5に示す工程フロー図に従って処理装置が配置された生産ラインL1においては、図2に示すように、同種工程及び同一層を処理する処理装置が複数台ある場合(例えばA1〜A3に配置された成膜処理装置211)に、何れの処理装置にワークWの処理を行わせるかは、生産ラインL1が具備する制御部(不図示)によって自動的に選択されるようになっている。しかし、生産ラインL1に操作部(不図示)を設置し、生産ラインの操作員等が生産ラインL1の生産状況(処理装置の故障状況など)を考慮して当該操作部を操作することによりワークWの処理を行わせる処理装置を選択できるようにしてもよい。
【0063】
<成膜工程>
生産ラインL1の上流側端部にワークWが投入されると、制御部は所定の優先順位に従って第1層の成膜処理をさせるべき成膜装置211をA1〜A3の中から選択する。第1層の成膜処理をさせるべき成膜装置211が定まると、生産ラインL1に投入されたワークWは搬送装置110によって、選択された成膜装置211に搬送され、成膜装置とワーク搬送エリアとの接続部であるローダポート302を通じて成膜装置211内に取り込まれ、ワークWに第1層の成膜工程の処理が施される。なお、ローダポート302通過時に行われるカセットの開閉動作等については、既述しているのでここでは省略する。以下、同様に省略する。
【0064】
前記所定の優先順位は、例えば、生産ラインL1の上流側に配置された成膜装置211が下流側に配置された成膜装置211よりも優先的に選択されるように設定されている。また、単一の階層のみを処理する専用処理装置211が複数の階層を処理する併用処理装置211Aよりも優先的に選択され、専用処理装置211がワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合に、併用処理装置211Aが選択されるように設定されている。ここで、ワークWを取り込める状態にない場合とは、例えば、既にワークWを取り込んで処理を行っている最中である場合、故障中である場合、メンテナンス中である場合などがある。
【0065】
何れの成膜装置211もワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合は、搬送装置110により、一旦、空いているバッファ301にワークWを待機させる。その後、第1層の処理を行う成膜装置211の何れかがワークWを取り込める状態になったのを検出すると、当該検出された成膜装置211又は211AへワークWが搬送され、当該成膜装置によってワークWに対して第1層の成膜処理が行われる。
【0066】
<フォトリソ工程>
第1層の成膜工程の処理が終了すると、制御部は前記した所定の優先順位に従って第1層のフォトリソ処理をさせるべきフォトリソ装置221をB1〜B2の中から選択する。第1層のフォトリソ処理をさせるべきフォトリソ装置221が定まると、第1層の成膜処理が施されたワークWは、搬送装置110によって、選択されたフォトリソ装置221に搬送され、搬送装置110からローダポート302を通じてフォトリソ装置221内に取り込まれ、ワークWに対して第1層のフォトリソ工程の処理が施される。
【0067】
何れのフォトリソ装置221もワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合は、搬送装置110により、一旦、空いているバッファ301にワークWを待機させる。その後、第1層の処理を行うフォトリソ装置221の何れかがワークWを取り込める状態になったのを検出すると、当該検出されたフォトリソ装置221又は221AへワークWが搬送され、当該フォトリソ装置によってワークWに対して第1層のフォトリソ処理が行われる。
【0068】
<エッチング工程>
第1層のフォトリソ工程の処理が終了すると、制御部は前記した所定の優先順位に従って第1層のエッチング処理をさせるべきエッチング装置231をC1〜C4の中から選択する。第1層のエッチング処理をさせるべきエッチング装置231が定まると、第1層のフォトリソ処理が施されたワークWは、搬送装置110によって、選択されたエッチング装置231に搬送され、搬送装置110からローダポート302を通じてエッチング装置231内に取り込まれ、ワークWに対して第1層のエッチング工程の処理が施される。
【0069】
何れのエッチング装置231もワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合は、搬送装置110により、一旦、空いているバッファ301にワークWを待機させる。その後、第1層の処理を行うエッチング装置231の何れかがワークWを取り込める状態になったのを検出すると、当該検出されたエッチング装置231又は231AへワークWが搬送され、当該エッチング装置によってワークWに対して第1層のエッチング処理が行われる。
【0070】
<レジスト剥離工程>
第1層のエッチング工程の処理が終了すると、制御部は前記した所定の優先順位に従って第1層のレジスト剥離処理をさせるべきレジスト剥離装置241をD1〜D4の中から選択する。第1層のレジスト剥離処理をさせるべきレジスト剥離装置241が定まると、第1層のエッチング処理が施されたワークWは、搬送装置110によって、選択されたレジスト剥離装置241に搬送され、搬送装置110からローダポート302を通じてレジスト剥離装置241内に取り込まれ、ワークWに対して第1層のレジスト剥離工程の処理が施される。
【0071】
何れのレジスト剥離装置241もワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合は、搬送装置110により、一旦、空いているバッファ301にワークWを待機させる。その後、第1層の処理を行うレジスト剥離装置241の何れかがワークWを取り込める状態になったのを検出すると、当該検出されたレジスト剥離装置241又は241AへワークWが搬送され、当該レジスト剥離装置によってワークWに対して第1層のレジスト剥離処理が行われる。
【0072】
<検査工程>
第1層のレジスト剥離工程の処理が終了すると、制御部は前記した所定の優先順位に従って第1層の検査処理をさせるべき検査装置242をE1〜E2の中から選択する。第1層の検査処理をさせるべき検査装置242が定まると、第1層のレジスト剥離処理が済んだワークWは、搬送装置110によって、選択された検査装置242に搬送され、搬送装置110からローダポート302を通じて検査装置241内に取り込まれ、ワークWに対して第1層の検査工程の処理が施される。
【0073】
何れのレジスト検査装置242もワークWを取り込める状態にないと制御部によって判断された場合は、搬送装置110により、一旦、空いているバッファ301にワークWを待機させる。その後、第1層の処理を行う検査装置242の何れかがワークWを取り込める状態になったのを検出すると、当該検出された検査装置242又は242AへワークWが搬送され、当該検査装置によってワークWに対して第1層の検査処理が行われる。
【0074】
以上の工程の処理をワークWに施してワークWに対する第1層の処理が終了すると、続いて、第2層の処理、第3層の処理が順次行われる。第2層、第3層における各工程に使用される処理装置も第1の処理と同様に、前記所定の優先順位と図5の工程フロー図とに基づいて制御部により選択される。
【0075】
このようにして、生産ラインL1の上流側端部(図4の手前側)から投入されたワークWは、搬送装置110によって各処理装置間をジグザグに搬送されながら、工程フロー図及び所定の優先順位に従って選択された処理装置によって各工程の処理が施され、3階層からなる半導体回路を形成後、生産ラインL1の下流側端部(図4の奥側)から排出される。
【0076】
以上説明した生産ラインL1によれば、搬送装置110は、水平方向搬送手段111及び垂直方向搬送手段112で構成されるので、搬送装置110の構造を簡素化することができ、これにより搬送装置110の低コスト化が図られる。
【0077】
また、処理装置は、ワーク搬送エリア100の側面に沿って、同種機能を有する処理装置同士が同一列に配置され、しかも、処理装置は処理階層順に配置されているため、各工程間のワークWの搬送は、長くとも、上下に配置された処理装置群間の垂直方向移動と、近隣に配置された処理装置までの水平方向移動とで済むので、ワークWの搬送距離及び搬送時間の短縮化が図られる。
【0078】
また、バッファ301は、ワーク搬送エリアと処理装置との間に設けられているため、ワークWをバッファ301に待機させる際の搬送距離及び搬送時間も短くて済む。
【0079】
また、生産ラインL1は、水平方向に延びた搬送エリアの両側面に沿って、それぞれ処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置された構成からなるので、各工程の処理装置の大きさや台数が揃っていなくても、搬送経路を簡素化しつつ効率的なレイアウトを実現することができる。
【0080】
また、各列には複数階層を処理できる併用処理装置が各処理階層ごとに少なくとも1台設置されているので、何れかの処理装置が故障等により停止しても、併用処理装置に当該故障した処理装置が行うべき処理を行わせて、生産ラインL1全体の生産能力の低下を抑制することができる。また、そのような停止が発生しても、処理装置は、同一列に処理階層順に列設され、当該故障した処理装置の近くに併用処理装置が配置されているのでワークWを搬送する搬送装置110の搬送距離及び搬送時間の増加を少なく抑えることができる。さらに、同種機能を有する処理装置が同一列に配置されていることにより、工場ユーティリティの集中配備が可能となり、工場ユーティリティへの設備投資費を抑えることができる。
【0081】
また、各処理装置にバッファ301が近接して設けられているので、いずれの工程で処理装置の停止が発生しても、それによって発生する仕掛りをバッファ301に迅速に退避させることができる。このバッファ301の数をある程度確保して、生産ラインL1内で律速している工程の仕掛りを切らさないように運用すれば、生産ラインL1の持つ最大の生産能力を引き出すことが可能となる。
【0082】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施の形態における生産ラインL2について説明する。なお、第1の実施の形態における生産ラインL1と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図6は第2の実施の形態における生産ラインL2を示した正面図である。この生産ラインL2は、2台の搬送装置110、110を備えている。2台の搬送装置110は、互いに平行なワーク搬送エリア100を形成するように設置されている。
【0084】
処理装置群410〜460は、ワーク搬送エリア100、100同士の対向側面及び非対向側面に沿って、それぞれ水平方向(図6紙面に対して垂直方向)へ各別に一列を成して配置されている。このことにより、処理装置群410〜460を構成する処理装置は、一方又は双方の搬送装置110との間で直接ワークWの授受ができるようになっている。また、各処理装置群410〜460からなる各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されている。
【0085】
処理装置群410、460は、一方(図示左側)のワーク搬送エリア100の前記非対向側面に沿って配置されている。処理装置群430、450は、他方(図示右側)のワーク搬送エリア100の前記非対向側面に沿って配置されている。処理装置群420、450は、ワーク搬送エリア100、100同士の対向側面に沿って配置されている。処理装置群440、450、460は建屋の1階部分に、処理装置群410、420、430は建屋の2階部分に設置されている。なお、処理装置群420、450を構成する処理装置421、451は、双方のワーク搬送エリア100、100の双方の対向側面に沿って配置される必要があるので、ワーク搬送エリア100、100同士の間隔に満たない幅を有する処理装置については、当該間隔に合わせて拡幅したものを採用する必要がある。
【0086】
また、ワーク搬送エリア100、100の両側面には倉庫エリア300が設けられており、ワーク搬送エリア100及び倉庫エリア300は、建屋の1階部分から2階部分に亘って2階部分のフロアを貫通して設置されている。
【0087】
この生産ラインL2は、搬送装置110、110により搬送されるワークWに対して、複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成するものである。処理装置群410〜460は、それぞれ、複数の同種機能を有する処理装置で構成されている。第1の実施の形態と同様に、各処理装置群410〜460が各別に形成する各列には、同一階層を処理する処理装置が複数台設置されており、さらに、複数の階層を処理できる併用処理装置が各列に少なくとも1台ずつ含まれている。
<ワークに対する処理手順>
つぎに、生産ラインL2により、ワークWに対して回路形成処理を施す場合について説明する。ここでは、各工程での処理内容は具体的なもの(成膜工程、フォトリソ工程等)に特定せず、第1工程、第2工程など一般的な名称を付して説明する。なお、詳細な処理動作については、第1の実施の形態で説明したものと同様であるため、その説明は省略する。
【0088】
この生産ラインL2の上流側端部にワークWが投入されると、第1層の第1工程の処理をさせるべき処理装置411が処理装置群410の中から選択され、ワークWに第1工程の処理が施される。
【0089】
第1層の第1工程の処理が終了すると、第1層の第2工程の処理をさせるべき処理装置421が処理装置群420の中から選択され、処理装置群410が沿っているワーク搬送エリア100を形成する一方(図示左側)の搬送装置110にワークWが渡され、当該搬送装置110により、ワークWが処理装置421へ搬送され、当該処理装置421によってワークWに第1層の第2工程の処理が施される。
【0090】
第1層の第2工程の処理が終了すると、第1層の第3工程の処理をさせるべき処理装置431が処理装置群430の中から選択され、処理装置群420が沿っているワーク搬送エリア100内の搬送装置110にワークWが渡され、当該搬送装置110により、ワークWが処理装置431へ搬送され、当該処理装置431によってワークWに第1層の第3工程の処理が施される。
【0091】
第1層の第3工程の処理が終了すると、第1層の第4工程の処理をさせるべき処理装置441が処理装置群440の中から選択され、処理装置群430が沿っているワーク搬送エリア100内の搬送装置110にワークWが渡され、当該搬送装置110により、ワークWが処理装置441へ搬送され、当該処理装置441によってワークWに第1層の第4工程の処理が施される。
【0092】
第1層の第4工程の処理が終了すると、第1層の第5工程の処理をさせるべき処理装置451が処理装置群450の中から選択され、処理装置群440が沿っているワーク搬送エリア100内の搬送装置110にワークWが渡され、当該搬送装置110により、ワークWが処理装置451へ搬送され、当該処理装置451によってワークWに第1層の第5工程の処理が施される。
【0093】
第1層の第5工程の処理が終了すると、第1層の第6工程の処理をさせるべき処理装置461が処理装置群460の中から選択され、処理装置群450が沿っているワーク搬送エリア100内の搬送装置110にワークWが渡され、当該搬送装置110により、ワークWが処理装置461へ搬送され、当該処理装置461によってワークWに第1層の第6工程の処理が施される。
【0094】
このようにして、ワークWに対する第1層の処理が終了すると、続いて、第2層の処理、第3層、・・・、最上層の処理が順次同様にして行われる。第2層、第3層、・・・、最上層における各工程に使用される処理装置も第1の処理と同様に、所定の優先順位と所定の工程フローとに基づいて制御部により選択される。
【0095】
上記のようにして、生産ラインL2の上流側端部から投入されたワークWは、2台の搬送装置110、110によって各処理装置間を略螺旋状に搬送されながら、各工程の処理が施され、複数階層からなる半導体回路を形成後、生産ラインL2の下流側端部から排出される。
【0096】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施の形態における生産ラインL3について説明する。なお、第1の実施の形態における生産ラインL1と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図7は第3の実施の形態における生産ラインL3を示した正面図である。この生産ラインL3は、2台の搬送装置110、110を備えている。2台の搬送装置110は、互いに平行且つ隣接したワーク搬送エリアを形成するように設置されている。
【0098】
処理装置群210〜240は、ワーク搬送エリア100、100同士の非対向側面に沿って、それぞれ水平方向へ各別に一列を成して配置されている。このことにより、処理装置群210、230を構成する処理装置は、一方(図示左側)の搬送装置110との間で、処理装置群220、240を構成する処理装置は、他方(図示右側)の搬送装置110との間で、それぞれ直接ワークWの授受ができるようになっている。
【0099】
また、搬送装置110、110同士は、ワークWを相互に授受できるように構成されている。搬送装置110、110同士でワークWを相互に授受する際には、ワーク搬送エリア100、100同士の間に形成された倉庫エリア300に配置されている何れかの受渡ポート303を通じて行われる。すなわち、一方の搬送装置110は、何れかの受渡ポート303前までワークWを搬送し、当該受渡ポート303へワークWを移載する。同時に他方の搬送装置110も当該受渡ポート303前まで移動し、受渡ポート303内のワークWを当該他方の搬送装置110へ取り込むことによりワークWを受取る。
【0100】
また、倉庫エリア300は、ワーク搬送エリア100、100同士の対向側面及び非対向側面にそれぞれ設けられている。
【0101】
生産ラインL3は、上記2台の搬送装置110、110を備えるため、第1の実施形態に係る生産ラインL1の利点を持ち合わせたまま、搬送能力の増強が図られる。例えば、図示左側の処理装置からワーク搬送エリア100、100を隔てて図示右側の処理装置へワークWを搬送する場合に、図示右側の処理装置がワークWを取り込める状態にない場合は、図示左側の搬送装置110により、搬送エリア100、100間にある空き状態のバッファ301に当該ワークWが待機させられる。その後、図示右側の処理装置がワークWを取り込める状態になったのを検出すると、図示右側の搬送装置110により、バッファ301に待機されているワークWが取り出され、当該検出された図示右側の処理装置へワークWが搬送される。
【0102】
もし、ワーク搬送エリア100、100間にバッファ301が設けられていない場合は、ワーク搬送エリア100、100同士の非対向側面に設けられたバッファ301にワークWを待機させなければならず、同一の搬送装置によって、バッファ301へのワークの待機と、待機完了後のバッファ301からのワークWの取り出しの双方を行う必要が生じ、搬送効率が低下することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の生産ラインは、半導体製造や、液晶TV、プラズマTVなどのフラットパネル製造のように、繰り返しのパターニングプロセスがあり、複数階層の処理に処理装置を共用する生産ラインに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1の実施形態における生産ラインの概略正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における生産ラインの2階部分の概略平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における生産ラインの1階部分の概略平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における生産ラインの概略斜視図である。
【図5】処理階層ごとに工程を定め、工程ごとに使用する処理装置を定めた工程フロー図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における生産ラインの概略正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における生産ラインの概略正面図である。
【符号の説明】
【0105】
L1〜L3 生産ライン
W ワーク
100 ワーク搬送エリア
110 搬送装置
111 水平方向搬送手段
112 垂直方向搬送手段
210、220、230、240 処理装置群
211、221、231、241 処理装置
211A、221A、231A、241A 複数階層の処理が可能な処理装置
301 バッファ
302 ローダポート
303 受渡ポート
410、420、430、440、450、460 処理装置群
411、421、431、441、451、461 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、
水平方向及び垂直方向にワークを搬送する搬送装置が設置されており、
該搬送装置によるワーク搬送エリアの両側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、
前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されていることを特徴とする生産ライン。
【請求項2】
搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、
水平方向及び垂直方向にワークを搬送する2台の搬送装置が、互いに平行なワーク搬送エリアを形成するように設置されており、
前記ワーク搬送エリア同士の対向側面及び非対向側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、
前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されていることを特徴とする生産ライン。
【請求項3】
少なくとも前記列の何れか1列には、複数階層の処理が可能な処理装置が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生産ライン。
【請求項4】
前記ワーク搬送エリアと前記処理装置との間に、前記搬送装置がワークを待機させるためのバッファが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の生産ライン。
【請求項5】
搬送するワークに複数工程からなる一連の処理を繰り返し施して複数階層からなる被処理物を形成する生産ラインであって、
水平方向及び垂直方向にワークを搬送する2台の搬送装置が、互いに平行且つ隣接したワーク搬送エリアを形成し、且つ、ワークを相互に授受できるように設置されており、
前記ワーク搬送エリア同士の非対向側面に沿って、それぞれ1又は複数の処理装置群が水平方向へ各別に一列を成して配置されており、
前記各一列では、同種機能を有する処理装置同士が処理階層順に配置されていることを特徴とする生産ライン。
【請求項6】
少なくとも前記列の何れか1列には、複数階層の処理が可能な処理装置が含まれていることを特徴とする請求項5に記載の生産ライン。
【請求項7】
前記ワーク搬送エリア同士の間に、前記搬送装置がワークを待機させるためのバッファが設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の生産ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−227086(P2008−227086A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62155(P2007−62155)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】