説明

産業用ロボット

【課題】ロボットの第1アームとワークや治具の干渉が少ない産業用ロボットを提供する。
【解決手段】 ロボットの第1アーム9を、旋回部4に対して回動する方向に、かつ第1アーム9と第2アーム12の内角と反対方向に湾曲させることにより、ロボットが治具16上に保持した箱形状のワーク17の内側で作業を行う場合、湾曲したアームの凹空間13において、干渉点18との干渉を避けることができ、ワーク底面19まで作業することができるので、従来のロボットのワーク内作業領域に比べ、広いワーク内作業領域20を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直多関節構造を有する産業用ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の垂直多関節を有する産業用ロボットは、図2に示すように、設置のためのベース101と、前記ベース101に対して旋回する旋回部102と、前記ベース101に対して旋回部102と一緒に旋回し、前記旋回部102に対して回動する第1アーム103と、前記ベース101に対して旋回部102と一緒に旋回し、前記第1アーム103に対して回動する第2アーム104を備え、第2アーム104の先端には手首回転軸105を含む三自由度を有する手首106が取り付けられていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−6271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のロボットは、第1アーム103とワーク107等が干渉することが多かった。例えば図2に示すように、ロボットが箱形状を有するワーク107の内側で作業を行う時、第1アーム103とワーク107が干渉点108で干渉するため、ロボットのワーク内作業領域109がワーク底面110まで到達せず、ロボットがワーク底面110付近において、作業を実施できない問題が発生することがあった。
【0004】
通常このような場合、治具等を用いて、ワーク107とロボットの干渉を避けるよう、ワーク107を適切な位置にセットし、作業を実施するようにしていた。
【0005】
しかし、最近の産業用ロボットの使用現場では、多品種少量生産が主流となり、ロボットは様々なワークに対して作業を行わなければならず、多種のワークに対応する治具を準備することが、製造コストの上昇を招く結果となる。このことから、ワークやワークを保持する治具との干渉の少ないロボットが求められるようになっていた。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、第1アームとワークや治具の干渉が少ない産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の産業用ロボットは、設置のためのベースと、前記ベースに対して旋回する旋回部と、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記旋回部に対して回動する第1アームと、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記第1アームに対して回動する第2アームを少なくとも備え、前記第1アームを旋回部に対して回動する方向に湾曲させたものである。
【0008】
そして、この構成により湾曲した第1アームに凹部領域ができることとなり、第1アームの凹部側において、第1アームとワーク、治具の干渉を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明では、第1アームを旋回部に対して回動する方向に湾曲させたことにより、ロボットの第1アームとワークや治具の干渉を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態1について、図1を用いて説明する。
【0011】
設置面1に取り付けられた据付台2の上面には、ベース3が固定されている。
【0012】
ベース3に載置された旋回部4は、モータと減速機からなる旋回駆動部5の動力により、設置面に垂直な旋回軸6回りにベース3に対して旋回可能に取り付けられている。
【0013】
旋回部4には、旋回軸6から外側にオフセットした位置に、旋回軸6に垂直な第1アーム回動軸7が設けられている。この第1アーム回動軸7には、旋回部4に取り付けられている第1アーム駆動部8により、旋回部4に対して回動可能な第1アーム9が旋回部4に対して取り付けられている。
【0014】
第1アーム9の他端には、第1アーム回動軸7に平行な第2アーム回動軸10が設けられている。この第2アーム回動軸10には、第2アーム駆動部11の動力で、第2アーム12が第1アーム9に対して回動可能に取り付けられている。
【0015】
前記第1アーム9は、旋回部4に対して回動する方向に、かつ第1アーム9と第2アーム12の内角と反対方向に湾曲し、内角側に凹空間13を有する形状に形成している。このとき、前記第1アーム9の重心は、第1アーム回動軸7と第2アーム回動軸10とを結ぶに線分に対してオフセットし、かつ第1アーム9と第2アーム12の内角と反対方向に位置する。
【0016】
また、第2アーム12の先端には、第2アーム回動軸10に垂直で、第2アーム回動軸10から上方にオフセットした手首回転軸14を含む三自由度を有する手首15が取り付けられている。この手首15には、溶接トーチやハンドリング装置等を取り付けることを可能とする構造となっている。
【0017】
以上の構成により、ロボットが治具16上に保持した箱形状のワーク17の内側で作業を行う場合、湾曲したアームの凹空間13において、干渉点18との干渉を避けることができ、ワーク底面19まで作業することができるので、図2に示す従来のロボットのワーク内作業領域に比べ、広いワーク内作業領域20を確保することができる。つまり、本構成のロボットは、従来のロボットに比べ、ワークや治具との干渉を少なくすることができる。
【0018】
尚、本発明の効果は、箱形状を有するワーク内側の作業に限定されるものではなく、第1アームと第1アームの動作範囲内にある障害物の干渉を少なくするものである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の産業用ロボットは、ロボットの第1アームとワークなどの干渉を少なくすることができ、産業用ロボットに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の産業用ロボットの実施の形態におけるワークを破断した側面図
【図2】従来の産業用ロボットのワークを破断した側面図
【符号の説明】
【0021】
3 ベース
4 旋回部
9 第1アーム
12 第2アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置のためのベースと、前記ベースに対して旋回する旋回部と、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記旋回部に対して回動する第1アームと、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記第1アームに対して回動する第2アームを少なくとも備え、前記第1アームを旋回部に対して回動する方向に湾曲させた産業用ロボット。
【請求項2】
前記第1アームと第2アームの内角と反対方向に湾曲させた請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
設置のためのベースと、前記ベースに対して旋回する旋回部と、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記旋回部に対して回動する第1アームと、前記ベースに対して旋回部と一緒に旋回し、前記第1アームに対して回動する第2アームを少なくとも備え、前記旋回部に対する第1アームの回動軸と前記第1アームに対する第2アームの回動軸とを結ぶに線分に対して第1アームの重心をオフセットした産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1アームと第2アームの内角と反対方向に重心を位置させた請求項3記載の産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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