説明

産業用多関節ロボットの安全性評価方法

【課題】産業用多関節ロボットのロボットアームの表皮部材の材料種毎の安全性を的確に評価することができる産業用多関節ロボットの安全性評価方法を提供する。
【解決手段】自重により傾動落下するロボットアームを模擬する模擬落下装置を用い、先ず、衝撃付与工程により、試験用表皮部材11を取り付けた落下手段10を落下させて被衝突体14に衝撃を付与する。次いで、測定工程により、材料種の異なる試験用表皮部材11毎に衝撃荷重を測定する。次いで、評価用データ生成工程により、表皮部材の材料種毎に予め採取された人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータと、測定工程により測定した試験用表皮部材の衝撃荷重に基づいて、表皮部材の材料種毎の評価用データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用多関節ロボットの関節軸による姿勢維持状態が解除されて当該関節軸を支点として自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現することにより、産業用多関節ロボットの安全性を評価する産業用多関節ロボットの安全性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用多関節ロボットは、図1に示すように、ベース部1から延びるロボットアーム2を備えている。このロボットアーム2は、複数の関節軸5,6により連結されて各関節軸5,6を介して屈曲自在とされた複数のアーム部3,4により構成されている。また、各アーム部3,4は、各関節軸5,6に組み込まれたモータ等の駆動源を制御することで屈伸動作が行われると共に、ロボットアーム2の姿勢が所定の姿勢に維持される。
【0003】
ところで、ロボットアーム2の駆動源を制御する信号が停電等により不用意に遮断された場合には、ロボットアーム2の姿勢維持状態が解除され、ロボットアーム2が例えば関節軸6を支点として自重により傾動落下するおそれがある。そして、この落下位置に、万一、人が入り込んでいた場合には、ロボットアーム2が人に接触する事態が生じるおそれもある。そこで、ロボットアーム2の落下時の安全性を向上させるために、アーム部3,4に合成樹脂製の表皮部材7を取り付けることが行われる。
【0004】
しかし、この種の表皮部材7は、ロボットアーム2による作業を阻害しないように軽量且つ薄肉であることが好ましく、安全性の向上が十分に望めないおそれがある。このため、安全性の向上に効果的な表皮部材7の材料種(材質や厚み寸法)を的確に選定する必要があり、表皮部材7の材料種の選定の一指針として、表皮部材7の材料種毎の安全性を評価するための試験を行うことが望まれている。
【0005】
この種の試験としては、自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現し、ロボットアームを被覆する表皮部材を模した試験用表皮部材が衝突した際の被衝突物の損傷度合いを確認することが挙げられる。
【0006】
そこで、下記特許文献1に見られるような自動車等の車両の衝突試験装置を用いて試験を行うことが考えられる。しかし、この衝突試験装置は、高速移動する台車を振り子状のインパクタに衝突させ、インパクタから衝撃を受ける人形の損傷度合いを確認するもので、実際の車両に近い状態での衝突を再現するためのものとなっている。このため、自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現することはできない。即ち、自重により傾動落下するロボットアームの落下速度は比較的低速である反面、落下したロボットアームに衝突した被衝突体は床面とロボットアームとの間に挟まれた状態でロボットアームの荷重が付与される。こうした状況を車両の衝突試験装置により再現することは困難であり、従って、ロボットアームの表皮部材の材料種毎の安全性を正確に評価することも困難である。
【特許文献1】特開平8−240509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、産業用多関節ロボットのロボットアームの表皮部材の材料種毎の安全性を的確に評価することができる産業用多関節ロボットの安全性評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明は、産業用多関節ロボットの安全性評価方法であって、産業用多関節ロボットの関節軸による姿勢維持状態が解除されて当該関節軸を支点として自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現する荷重変更自在の落下手段を備える模擬落下装置と、前記ロボットアームを被覆する表皮部材を模してその表皮部材に採用される材料種毎に複数用意され、前記落下手段に交換自在に取り付けられる試験用表皮部材と、人の標準的身体特性を有して前記落下手段に取り付けた試験用表皮部材が衝突する被衝突体と、該被衝突体が試験用表皮部材から受ける衝撃荷重を測定する衝撃荷重測定手段とを用い、被衝突体との接触面積が所定の面積に予め設定された試験用表皮部材を取り付けた前記落下手段を、材料種の異なる試験用表皮部材に変更する毎に落下させて被衝突体に衝撃を付与する衝撃付与工程と、該衝撃付与工程における材料種の異なる試験用表皮部材毎に前記衝撃荷重測定手段により衝撃荷重を測定する測定工程と、前記ロボットアームを被覆する表皮部材の材料種毎に予め採取された人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータと、前記測定工程により測定した試験用表皮部材の衝撃荷重に基づいて、表皮部材の材料種毎の評価用データを生成する評価用データ生成工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の安全性評価方法は、自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現する模擬落下装置と人の標準的特性を有する被衝突体とを用いるものである。模擬落下装置は落下手段により被衝突体との接触面積が所定の面積に予め設定された試験用表皮部材を被衝突体に向けて落下させる。これにより、前記衝突付与工程では、自重により傾動落下するロボットアームの表皮部材が人に衝突した状態が模擬的に再現される。
【0010】
本発明の安全性評価方法によれば、ロボットアームを被覆する表皮部材に採用される材料種毎(材質毎や厚み寸法毎)に試験用表皮部材が複数用意されていて、前記衝突付与工程により、これらの材料種の異なる試験用表皮部材を被衝突体に衝突させる。そして、前記測定工程においては、試験用表皮部材の材料種毎に衝撃荷重を測定する。こうすることにより、各試験用表皮部材の材料種と被衝突体が受ける衝撃荷重との関係を的確に把握することができる。
【0011】
本発明においては、次いで、前記評価用データ生成工程を行う。評価用データ生成工程においては、表皮部材の材料種毎に予め採取された人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータを用いる。このデータは、例えば、人の頭蓋骨の標準的強度を有する人頭部模型に対して、材料種毎に接触面積を変えながら骨折に相当する損傷が生じるまでの衝撃荷重を測定することにより得ることができる。そして、このデータによれば、骨折が生じる衝撃荷重と接触面積との関係が表皮部材の材料種毎に把握することが可能となる。そこで、前記測定工程により測定された所定の接触面積における衝撃荷重に人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータを適用し、前記衝撃付与工程において被衝突体に衝突させた試験用表皮部材毎(表皮部材の材料種毎)に評価用データを生成する。
【0012】
以上のようにして生成した評価用データによれば、実際の産業用多関節ロボットにおけるロボットアームの荷重、表皮部材の材料種、及び想定される接触面積とを確認するだけで、当該産業用多関節ロボットの安全性を極めて容易に評価することができる。或いは、実際の産業用多関節ロボットのロボットアームの荷重と想定される接触面積とを確認するだけで、当該ロボットアームに取り付ける表皮部材の材料種を的確に選定することができる。
【0013】
なお、本発明の安全性評価方法において用いられる前記模擬落下装置の具体的構成として、例えば、基台上に下端が揺動軸を介して揺動自在に連結されて起立する落下手段たる揺動アームと、該揺動アームに着脱自在に保持されて重量が変更可能なウエイト部材と、前記ロボットアームを被覆する表皮部材と同じ材料種で形成されて前記揺動アームに着脱自在且つ揺動アームの長手に沿って移動自在に保持された試験用表皮部材と、該試験用表皮部材を前記揺動アームに沿った所定位置に解除自在に固定する固定手段と、前記揺動アームを起立状態から傾動落下させる落下起動手段と、前記揺動アームが傾動落下したしたとき、試験用表皮部材が衝突する位置に前記被衝突体を支持する支持台とを備える装置を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は産業用多関節ロボットの一例を示す説明図、図2は安全性評価方法で用いた模擬落下装置の概略構成を示す説明図、図3は模擬落下装置の揺動アームを一部破断して示す側面視説明図、図4は揺動アームを一部破断して示す正面視説明図、図5は衝撃荷重測定手段を示す説明的平面図、図6は衝撃荷重測定手段の構成を示す説明図、図7は測定工程により測定された所定の接触面積における試験用表皮部材の厚み寸法毎と衝撃荷重との関係を示すグラフ、図8は人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すグラフである。
【0015】
本実施形態で用いる模擬落下装置は、図1に一例を示す産業用多関節ロボットを模擬するものである。図1に示すように、産業用多関節ロボットは、ベース部1と、このベース部1に支持されて先端に作業用工具等が連結されたロボットアーム2とを備えている。ロボットアーム2は第1アーム部3と第2アーム部4とを備えている。第1アーム部3と第2アーム部4とは第1関節軸5を介して屈伸自在に連結されている。ベース部1は第2関節軸6を介して第2アーム部4を揺動自在に連結し支持している。各関節軸5,6には、図示しないモータ等の駆動源が取り付けられている。ロボットアーム2は、駆動源を制御することで屈伸動作が行われると共に、姿勢が所定の姿勢に維持される。そして、ロボットアーム2の少なくとも第1アーム部3及び第2アーム部4には、合成樹脂製の表皮部材7を取り付けることで、ロボットアーム2が他部に接触した際の安全性を向上させることが可能となる。
【0016】
ロボットアーム2は、例えば、第2関節軸6の駆動源を制御する信号が停電等により不用意に遮断された場合には、その姿勢維持状態が解除され、第2関節軸6を支点として自重により傾動落下するおそれがある。本実施形態で用いる装置は、自重により傾動落下するロボットアーム2とそのロボットアーム2に表皮部材7を介して人が接触した際の状況を再現する。即ち、図2に示すように、本実施形態における模擬落下装置は、ロボットアーム2を模擬する揺動アーム10を備え、揺動アーム10は、その下端部を支点として一方向に傾動落下するようになっている。揺動アーム10は傾動する側に試験用表皮部材11を保持しており、その反対側にウエイト部材12を保持している。そして、揺動アーム10に保持された試験用表皮部材11の落下位置には支持台13上に支持された被衝突体14を位置させておき、試験用表皮部材11を被衝突体14に衝突させるようになっている。
【0017】
模擬落下装置の構成を更に詳しく説明する。図3及び図4に示すように、揺動アーム10は、基台15のフレーム16に回転自在に支持された揺動軸17により揺動自在に設けられている。揺動軸17は揺動アーム10の下端に一体に連結された連結部材18に回転不能に設けられている。図3に示すように、連結部材18における揺動アーム10の連結位置は、揺動軸17の直上ではなく、一方向に所定距離を存して位置している。揺動アーム10は、揺動軸17が位置する側に傾動落下し、その反対側はフレーム16に設けられたストッパ19により揺動が規制されて起立姿勢となる。図4に示すように、揺動軸17には、その回転位置を検出するためのエンコーダ20が連結されいる。
【0018】
図3及び図4に示すように、揺動アーム10の傾動落下する側には試験用表皮部材11が保持されている。試験用表皮部材11は、揺動アーム10の長手方向に延びるレール部21に沿って摺動自在の摺動部材22に着脱自在に保持されている。摺動部材22は、ボルト23の頭部24がレール部21の内部で抜け止め保持されておりナット25の締め付けにより所定位置で摺動不能に固定される。即ち、ボルト23及びナット25は本発明の固定手段を構成している。
【0019】
試験用表皮部材11は、前述したロボットアーム2の表皮部材7を模したものであって、被衝突体14との接触面積が所定の面積に予め設定されており、表皮部材7に好適に採用されることが想定される材料種毎に複数用意されている。即ち、試験用表皮部材11は、異なる合成樹脂素材毎に複数用意され、更に、当該材料毎に厚み寸法の異なるものが複数用意されている。好ましい合成樹脂素材としては、スチレン系エラストマーや発泡ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0020】
また、図3に示すように、試験用表皮部材11の衝突面を正しく揺動軸17中心で移動させるべく、摺動部材22の厚みを変更することにより、側面視において試験用表皮部材11の面が揺動軸17の軸心の直上位置に合致するように調整する。これは、産業用多関節ロボットのロボットアーム2にみたてた揺動アーム10から、表皮部材7を模擬する試験用表皮部材11の面だけが突出しないようにするためである。
【0021】
また、図3に示すように、揺動アーム10の上部側には、ウエイト支持部材26によって着脱自在に支持された複数のウエイト部材12が保持されている。ウエイト支持部材26に支持される各ウエイト部材12を増減させることで、揺動アーム10の重量を増減することができ、これによってロボットアーム2の重量に合わせることができる。
【0022】
更に、フレーム16には、揺動アーム10を起立状態から傾動落下させる落下起動手段27が設けられている。落下起動手段27は、ギヤボックス付きのモータ28(図4参照)と、このモータ28のギヤボックスを介した出力回転軸29に設けられたカム部材30とによって構成されている。モータ28によりカム部材30を回転させることにより、揺動アーム10がその背後から倒れ方向に押し出され、これによって、揺動アーム10は自重で傾動落下する。
【0023】
なお、図4に示すように、揺動アーム10の一側には、揺動アーム10を略垂直に起立する姿勢に維持するための固定ピン31が設けられている。固定ピン31は、揺動アーム10に設けられた係合部材32の挿通孔33を介して、フレーム16の挿着部材34に形成されている挿着孔35に挿着され、揺動アーム10の不用意な傾動落下を防止する。揺動アーム10を傾動落下させる際には、前記カム部材30を作動させるに先立ち固定ピン31を取り除く。
【0024】
支持台13は、図2に示すように、被衝突体14を支持する平坦な台である。被衝突体14は、人の標準的身体特性を有する模型であり、本実施形態においては、この模型において人の頭部を模擬する部分を用いる。図5に示すように、被衝突体14の載置位置には、載置板36が設けられており、この載置板36の下方には、図6に示すように、被衝突体14に付与される衝撃荷重を測定する衝撃荷重測定手段37が設けられている。衝撃荷重測定手段37は、ロードセル38と、その両側で載置板36を水平状態で案内する一対の案内ロッド39とによって構成されている。なお、衝突荷重測定手段37は、モニタMに接続され、測定された単位時間毎の荷重の記録、視覚的表示、プリントアウト、持ち運び可能な記録媒体への保存、外部記憶手段への通信等を行うことが可能になっている。
【0025】
次に、本実施形態における産業用多関節ロボットの安全性評価方法を説明する。先ず、揺動アーム10の摺動部材22に試験用表皮部材11を取り付け、ウエイト支持部材26に揺動アーム10が所望の重量となるようにウエイト部材12を取り付ける。次いで、摺動部材22を摺動させて試験用表皮部材11を所望の位置で固定する。これにより、ウエイト部材12の位置を変えることなく試験用表皮部材11の位置を所望の位置に保持させることができ、揺動アーム10を実際のロボットアーム2を想定した一定の重量として、表皮部材7の接触位置を適宜選択することができる。また、試験用表皮部材11の位置を変えることなく、ウエイト部材12の増減による揺動アーム10の重量を変更することもできる。
【0026】
続いて、支持台13の載置板36上に被衝突体14(人の模型の頭部)を載置し、更に、支持台13を移動させて、被衝突体14が試験用表皮部材11の落下位置となるように位置決めする。
【0027】
次いで、固定ピン31を取り除き、落下起動手段27のカム部材30を回転させて揺動アーム10を傾動落下させ、被衝突体14に試験用表皮部材11を衝突させて衝撃を付与する(衝撃付与工程)。このとき、被衝突体14が受けた衝撃荷重をロードセル38により測定する(測定工程)。そして、衝撃付与工程及び測定工程は、試験用表皮部材11の材料種を変更して繰り返し行われる。本実施形態においては、先ず、1種類の合成樹脂素材Aについて厚み寸法の異なる複数の試験用表皮部材11での衝撃付与工程及び測定工程を繰り返し行い、次いで、他の種類の合成樹脂素材Bについて厚み寸法の異なる複数の試験用表皮部材11での衝撃付与工程及び測定工程を繰り返し行う。これによって、各合成樹脂素材A,Bでの厚み寸法毎の衝撃荷重が測定できる。そして、このとき測定された衝撃荷重により、図7のグラフのように、所定の接触面積(図7においては4000mm2)における試験用表皮部材11の各素材A,Bについての厚み寸法(10mm〜60mm)と衝撃荷重との関係を示すことができる。
【0028】
ここで更に、図8のグラフで示されるような、予め採取された人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータを用いれば、産業用多関節ロボットの安全性を容易に評価することができる。図8のグラフにおいて示されるデータは、例えば、人の頭蓋骨の標準的強度を有する人頭部模型に対して、材料種毎に接触面積を変えながら骨折に相当する損傷が生じるまでの衝撃荷重を測定することにより得られたものであり、このデータの採取作業は、本実施形態における試験に先立って行われたものである。なお、人の頭蓋骨の標準的強度を有する人頭部模型は、例えば、米国のSawbones社にて作製されたものが使用できる。そして、このデータの採取作業においては、当該人頭部模型が壊れない程度に、即ち人頭部模型の弾性域で、荷重を加え、該人頭部模型の荷重に応じた歪を歪ゲージにて測定し、個体差がないかどうか確認する。
【0029】
図8のグラフを用いて、所定の接触面積における人体骨折相当の衝撃荷重が求められるので、図7に示す各素材A,Bについての各厚み寸法と衝撃荷重との関係に基づいて、人体骨折相当の衝撃荷重を下回る合成樹脂素材と採用可能な厚み寸法との組み合わせを評価用データhとして得ることができる(評価用データ生成工程)。
【0030】
そして、以上のようにして求められた評価データhを用いれば、実際の産業用多関節ロボットにおけるロボットアーム2の荷重、表皮部材7の材料種、及び想定される接触面積を確認するだけで、当該産業用多関節ロボットの安全性を極めて容易に評価することができる。或いは、実際の産業用多関節ロボットのロボットアーム2の荷重及び想定される接触面積を確認するだけで、当該ロボットアーム2に取り付ける表皮部材7の材料種を的確に選定することができる。
【0031】
なお、ここで産業とは、工業のみならず、第1次産業や、工業その他の第2次産業、又は第3次産業等を含む全ての産業である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】産業用多関節ロボットの一例を示す説明図。
【図2】安全性評価方法で用いた模擬落下装置の概略構成を示す説明図。
【図3】模擬落下装置の揺動アームを一部破断して示す側面視説明図。
【図4】揺動アームを一部破断して示す正面視説明図。
【図5】衝撃荷重測定手段を示す説明的平面図。
【図6】衝撃荷重測定手段の構成を示す説明図。
【図7】測定工程により測定された所定の接触面積における試験用表皮部材の厚み寸法毎と衝撃荷重との関係を示すグラフ。
【図8】人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0033】
2…ロボットアーム、5,6…関節軸、7…表皮部材、10…揺動アーム(落下手段)、11…試験用表皮部材、14…被衝突体、37…衝撃荷重測定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用多関節ロボットの安全性評価方法であって、
産業用多関節ロボットの関節軸による姿勢維持状態が解除されて当該関節軸を支点として自重により傾動落下するロボットアームを模擬的に再現する荷重変更自在の落下手段を備える模擬落下装置と、前記ロボットアームを被覆する表皮部材を模してその表皮部材に採用される材料種毎に複数用意され、前記落下手段に交換自在に取り付けられる試験用表皮部材と、人の標準的身体特性を有して前記落下手段に取り付けた試験用表皮部材が衝突する被衝突体と、該被衝突体が試験用表皮部材から受ける衝撃荷重を測定する衝撃荷重測定手段とを用い、
被衝突体との接触面積が所定の面積に予め設定された試験用表皮部材を取り付けた前記落下手段を、材料種の異なる試験用表皮部材に変更する毎に落下させて被衝突体に衝撃を付与する衝撃付与工程と、
該衝撃付与工程における材料種の異なる試験用表皮部材毎に前記衝撃荷重測定手段により衝撃荷重を測定する測定工程と、
前記ロボットアームを被覆する表皮部材の材料種毎に予め採取された人体骨折相当の衝撃荷重と接触面積との関係を示すデータと、前記測定工程により測定した試験用表皮部材の衝撃荷重に基づいて、表皮部材の材料種毎の評価用データを生成する評価用データ生成工程とを備えることを特徴とする産業用多関節ロボットの安全性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−91381(P2010−91381A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260950(P2008−260950)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】