説明

田植機の苗マット保持機構

【課題】苗マットが下方へ搬送されることを許容しつつ、植付作業中の苗マットの位置ズレを有効に防止し、確実に苗を植付爪まで搬送することが可能な苗マット保持機構を提供する。
【解決手段】苗送りベルト92により苗載台16に載置された苗マットを下方へ搬送し得るように構成された苗載台16であって、苗マット押さえ46を具備し、前記苗マット200内に突入して該苗マット200を保持する保持状態と、前記苗マット200から離間された開放状態をとり得るように苗載台16に支持された苗マット保持機構100において、苗マット保持機構100を苗マット突入部111と揺動アーム41により構成し苗マット保持機構100の可動範囲は、保持状態においては苗載台16上面と苗マット押さえ46の間の位置とし、解放状態においては苗マットにおける苗先上端よりも苗載台16側に入り込んだ位置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機の技術に関し、詳しくは、田植機の苗マット保持機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗送りベルトや苗送りローラ等により苗載台に載置された苗マットを下方へ搬送するように構成された苗載台において、苗マットの位置ズレや浮き上がりを防止するために、前記苗載台の載置面に沿う方向に常時付勢する苗マット押さえを具備した田植機の技術は公知となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−141097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、苗載台に載置された苗マットは、苗送りベルトによって下方へ搬送されるため、苗マット押さえの付勢力は、前記苗送りベルトによる苗マットの下方への搬送を許容しうる範囲内の付勢力で無ければならず、その結果、田植機の走行中における振動等によって、苗マットがずり落ち、苗付け本数のばらつきを招くおそれがあった。また、付勢力が大きすぎると、苗マットが植付爪まで搬送されず、植付爪が苗を掻き取る際に欠株ができる要因となる。
【0004】
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、苗マットが下方へ搬送されることを許容しつつ、植付作業中の苗マットの位置ズレを有効に防止し、確実に苗を植付爪まで搬送することが可能な苗マット保持機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、苗送りベルトにより苗載台に載置された苗マットを下方へ搬送し得るように構成された苗載台であって、苗マットを上方から押さえる苗マット押さえを具備し、前記苗マット内に突入して該苗マットを保持する保持状態と、前記苗マットから離間された開放状態をとり得るように苗載台に支持された苗マット保持機構において、苗マット保持機構を苗マット突入部と揺動アームにより構成し苗マット保持機構の可動範囲は、苗マット突入部の先端が苗載台に載置される苗マットに突入し、苗マットを保持している状態においては苗載台上面と苗マット押さえの間の位置とし、苗マットから離間された解放状態においては苗マットにおける苗先上端よりも苗載台側に入り込んだ位置としたものである。
【0007】
請求項2においては、前記苗マットの車輌幅方向の範囲において、前記苗マット突入部を前記苗マット押さえの左右両側に配設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、苗マットが送られるときは、苗マット突入部が送りの邪魔にならない程度に高い位置とし、突入部が苗マットに突入しているときは、苗マット押さえの苗マット押さえ面より低い位置で突入され、突入部が苗マットの根の部分に確実に突き刺さり保持することができ、苗マットの確実な送りと保持が行える。
【0010】
請求項2においては、苗マット押さえと突入部が干渉することなく、苗マットにおいて、苗マット押さえで押さえが作用しない範囲での保持が行え、保持作用を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の植付装置4を搭載した乗用田植機の一実施例を示す側面図であり、図2は同じく平面図であり、図3は本発明の植付装置4の一実施例を示す後方斜視図であり、図4は同じく正面図であり、図5は植付装置4下部を示す前方斜視図であり、図6は苗送りベルト92の駆動機構15を示す拡大前方斜視図であり、図7は揺動アーム41の支持構成を示す後方斜視図であり、図8は苗マット押さえ46と苗マット保持機構100との位置関係を示す一部断面左側面図であり、図9は同じく平面図である。
【0012】
まず、本発明の一実施例として、植付装置4が搭載される8条乗用田植機の全体構成をについて説明する。
図1及び図2に示すように、乗用田植機は走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付装置4が配置され、該走行部1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケースを介して前輪6を支持させると共に、後部にリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持している。
そして、エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9後部のダッシュボード5上に操向ハンドル14を配置し、該ボンネット9両側とその後部の車体フレーム3上を車体カバー12で覆い、操向ハンドル14後方位置に座席13を配置し、ボンネット9の両側を前ステップとし、座席13前部を中ステップとし、座席13左右両側を後ステップとしている。また、前記ボンネット9の両側には予備苗載台10・10が配設されている。
そして、前記ダッシュボード5の側部には走行変速レバー等のレバー類が、ダッシュボード5の下部のステップ上には走行用ペダル等のペダル類が配設されている。
【0013】
本実施例における植付装置4は、苗載台16や植付爪17・17やセンターフロート34やサイドフロート35や苗マット押さえ46や苗送りベルト92や苗マット保持機構100等から構成され、走行部1の後方に配設されるものである。
該苗載台16は前高後低に配設され、該苗載台16の後下部は下ガイドレール18、苗載台16の前上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持されている。詳しくは、該下ガイドレール18及び上ガイドレール19は、植付伝動フレーム20によって後述する支持フレーム65・66・・・等を介して支持されている。そして、植付伝動フレーム20より連結パイプ63を介してチェーンケース21を後方へ突出させ、該チェーンケース21の後部に一方向に回動するロータリーケース22を配置し、該ロータリーケース22の両側に一対の植付爪17・17を配置している。
【0014】
また、前記植付伝動フレーム20の前部は、ローリング支点軸68を介して前記昇降リンク機構27と連結され、該昇降リンク機構27はトップリンク25やロアリンク26等から構成されて、座席13下方に配置した図示しない昇降シリンダによって植付装置4を昇降できるようにしている。
こうして、乗用田植機は、前進走行とともに苗載台16を左右に往復摺動させ、該往復動に同期させて植付爪17・17を駆動して一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業を行う構成となっている。
本発明の植付装置4に関する説明においては、苗載台16の前上部を上流側とし、苗載台の後下部を下流側とする。
【0015】
次に、本実施例に係る植付装置4の支持構成について説明する。
図3乃至図5に示すように、苗載台16下方には、前記走行部1に儲けられたPTO軸(図示せず)に作動連結される植付入力軸75を有する植付駆動ケース61が配設されている。該植付駆動ケース61の右側面からは、車両幅方向に縦送り軸88が突設されている。
そして、植付装置4は、前記連結パイプ63や、該連結パイプ63に立設された左右一対のサイドフレーム65・65と、該サイドフレーム65・65の上部間を連結するべく車両幅方向に延びるローリングフレーム66とを備えている。
【0016】
斯かる植付装置4は、ヒッチブラケット23と、該ヒッチブラケット23に連結されるトップリンク25及びロアリンク26を含む昇降リンク機構27とを介して、前述した様に前記走行部1に昇降自在に連結されている。
さらに、植付装置4は、走行部1に対して車両幅方向揺動自在とされており、該走行部1が左右方向に傾斜しても植付装置4が水平状態に保持され得るようになっている。詳しくは、植付装置4には、植付駆動ケース61に連結される支点部材69と、下端部が前記支点部材69に連結され且つ上端部が前記ローリングフレーム66に連結される一対の左右フレーム71・71とが備えられており、該支点部材69は前記ヒッチブラケット23に車両前後方向に沿うように設けられたローリング支点軸68回りに揺動自在に支持されている。
そして、前記ヒッチブラケット23と前記左右フレームの一方との間には、ブラケット等を介して油圧ローリングシリンダ73が介設されており、該油圧ローリングシリンダ73を進退制御させることにより前記植付装置4を前記ローリング支点軸68回りに揺動させ得る構成となっている。
【0017】
以下、苗載台16上に苗マットを押さえ付ける構成について説明する。
図3に示すように、苗載台16には、上面の各条毎左右両側にリブ16a・16a・・・が設けられており、苗載台16上に載置された苗マットの両側を該リブ16a・16aによってガイドできるように構成されている。そして、それぞれのリブ16a・16a間には、苗マット押さえ46が配置されている。
苗マット押さえ46は、縦押さえ棒46a・46a・・・と横支持棒46bと支持シャフト46c等からなり、該縦押さえ棒46a・46aがリブ16a・16a間に各条二本ずつ左右平行に配置されている。そして、該縦押さえ棒46aによって、苗戴台16上の図示しない苗マットを苗載台16上面に押さえ付ける構成となっている。
【0018】
該縦押さえ棒46aの上流側(上前側)は側面視略逆V字状に構成され、先端が横支持棒46bに固設されている。該横支持棒46bは、リブ16a・16aの上流位置に立設した係止部51・51に係合されている。
【0019】
一方、縦押さえ棒46aの下流側(後下側)は、図3・図7・図8に示すように、左側面視逆Z字状に折り曲げられて、立ち上がり部46dが形成されている。そして、該立ち上がり部46dの上端は下流方向に折り曲げられ、溶接等によって支持シャフト46cに固設されている。該支持シャフト46cの両側は、苗載台16若しくはリブ16a・16aに立設されたステー50・50に支持されている。
そして、立ち上がり部46dには該立ち上がり部46dと平行に苗垂れ防止板54が固設されている。該苗垂れ防止板54は、リブ16a・16a間に形成される一対の立ち上がり部46d・46dの上下略中途部に横架されるものであって、プレート状の部材である。該苗垂れ防止板54を配設することにより、苗垂れ防止板54の直上流側に位置する苗マット上の苗が苗載台16の下流側に垂れ落ちて、後述する苗マット突入部材の上下動による苗先端の巻き込みや押しつぶし等を防止することができる。
【0020】
次に、苗送りベルト92の駆動機構15について説明する。
図3及び図4に示すように、苗載台16の上流部から下流部にかけては、該苗載台16と略同一平面状に苗送りベルト93が配設されており、該苗送りベルト92によって苗載台16に載置された苗マットを下流へ搬送する構成となっている。
図4及び図5に示すように、本実施例の植付装置4は、植付駆動ケース61内において前記植付入力軸75と図示しない前記横送り軸及び縦送り軸88が作動連結されている。詳しくは、該横送り軸と縦送り軸88は、植付駆動ケース61から車両幅方向に延設されて常時回動している駆動軸であり、一端部が前記植付駆動ケース61内において前記植付入力軸75に作動連結されて、他端部が軸受板等に枢支されている。そして、前記植付駆動ケース61内には、前記植付入力軸75から入力された駆動力の多段変速を行なう図示しない変速機構が収容されており、前記横送り軸及び縦送り軸88には変速後の駆動力が伝達されるようになっている。
【0021】
図5及び図6に示すように、縦送り軸88の略上方には第二縦送り軸31が配設されており、該第二縦送り軸31の略上方には後述するフォークカム32が回動自在に枢支されたベルト駆動軸33が配設されている。
該縦送り軸88上には、前記リブ16a・16a・・・の配設間隔と同じ間隔をあけて、換言すれば苗載台16の左右方向の往復幅と同じ間隔をあけて、2つの押動カム91・91が固設されている。
該第二縦送り軸31は、後述するように該フォークカム32の回動に合わせて¥ベルト駆動軸33を中心に円弧状に移動可能な構成となっている。
【0022】
そして、該ベルト駆動軸33には苗送りベルト92・92・・・の下端が巻回される駆動プーリ38・38・・・が固設されている。図4及び図5に示すように、苗送りベルト92は、該駆動プーリ38と該駆動プーリ38から上流方向に離間配置されたベルト従動軸上に遊嵌した従動プーリ(図示せず)とに無端上に巻回されているものであって、該駆動プーリ38によって駆動されるものである。
【0023】
図5及び図6に示すように、ベルト駆動軸33にはフォークカム32が遊嵌されており、該フォークカム32に隣接して、ベルト駆動軸33上に図示しない一方向クラッチを介してベルト駆動カム53がベルト駆動軸33上に外嵌されている。該一方向クラッチは、苗マットが下流へ搬送される方向にベルト駆動カム53が回動したときのみ、ベルト駆動カム53の駆動力をベルト駆動軸33へ伝達するものである。
【0024】
フォークカム32は、後述する作用フレーム40やリブ16aの略下方に配設されるものであって、前記苗載台16が車輌幅方向一方及び他方の移動端に到達した際に、前記縦送り軸88上の一対の押動カム91・91の一方または他方とそれぞれ当接するように、ベルト駆動軸33上に遊嵌されるものである。
つまり、該一対の押動カム91・91とフォークカム32と第二縦送り軸31とベルト駆動カム53とベルト駆動軸33とを介して、前記縦送り軸88の駆動力により前記苗送りベルト92が間欠的に駆動されるようになっている。
【0025】
詳しくは、図6に示すように、フォークカム32は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部32bと、前記押動カム91と当接する当接部32cと、後述のU字部材37が溶接される溶接部32dとが一体的に成形されて成るものである。該溶接部32dには、正面視U字状のU字部材37が溶接等によって固設されており、該U字部材37には後述する作用フレーム40の下端部が枢支されている。
尚、前記ベルト駆動部以外の作用フレーム40の下端部は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部32bと溶接部32dのみから構成される図示しない遊嵌部材、及び該溶接部32dに溶接されたU字部材37によって支持されている。
【0026】
また、ベルト駆動カム53は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部53bと、第二縦送り軸31と係合する係合部53cとが一体的に成形されて成るものである。ベルト駆動カム53の係合部53cは、フォークカム32が回動し、それと共に第二縦送り軸31が上昇してきたときに、該第二縦送り軸31と係合する形状に形成されている。
フォークカム32及びベルト駆動カム53の基部32b・53bには戻しバネ150の一端が連結されており、戻しバネ150の他端が苗載台16等に連結されることによって、フォークカム32及びベルト駆動カム53が常に左側面視反時計方向に付勢される構成となっている。
【0027】
該フォークカム32の該当接部32cと溶接部32dの分岐部に、前記第二縦送り軸31が挿通される挿通孔が設けられており、前述した様に、該挿通孔に第二縦送り軸31が挿通されており、該第二縦送り軸31に溶接されている軸側フランジ57をフォークカム32にボルト締めすることによって、第二縦送り軸31とフォークカム32とを連結固定している。
以上の構成により、苗載台16が車両幅方向に往復動するときは、第二縦送り軸31・フォークカム32・ベルト駆動軸33・ベルト駆動カム53等が苗載台16と共に横送り軸・植付駆動ケース61・縦送り軸88・押動カム91・走行部1に対して相対的に左右往復動する。
【0028】
次に、苗マットの支持機構について説明する。
該苗マット保持機構は、前記苗送りベルト92の停止時には苗マットを前記苗載台16に対して移動不能に保持し、前記苗送りベルト92が停止状態から搬送状態へ移行する搬送開始時には該苗送りベルト92が駆動される前に苗マットを移動可能状態とし、且つ、前記苗送りベルト92が搬送状態から停止状態へ移行する搬送停止時には該苗送りベルト92の駆動が停止された後に苗マットを前記苗載台16に対して移動不能に保持するものである。
【0029】
具体的には、図5・図7・図8に示すように、本実施例の苗マット保持機構は、上下動する苗マット保持部110と、該苗マット保持部110を支持して上下動させるリンク機構60とから構成され、苗載台16の下流部に配設されるものである。
該苗マット保持部110は、複数の棒状部材である苗マット突入部材111・111・・・及び車輌幅方向に横架された横軸113によって構成されており、苗マット突入部材111・111・・・の上端(基部)がそれぞれ横軸113に溶接等によって接合され、全体としてフォーク形状に形成されている。そして、該横軸113が、苗送りベルト92の駆動に合わせて、リンク機構60により上下方向に往復動するのである。
該リンク機構60は、揺動アーム41や支点フレーム39や作用フレーム40や前記駆動機構15等から構成されるものであって、前記苗マット保持部110を上下方向に往復動させるものである。
【0030】
支点フレーム39はリブ16aの上下中途部付近上面に立設されるものであり、その上端部に揺動アーム41の上流端が枢支される。該揺動アーム41は、上流側の端部が該支点フレーム39上端部に上下回動自在に枢支され、中部には作用フレーム40の上端部が枢支され、下端部が前記苗マット保持部110の横軸113の一端に固設されている。詳しくは、図7に示すように、揺動アーム41・41の下流端及び横軸113の端部が共に板状に形成されて、この板状部41b・113bをボルト等によって共締めすることにより、揺動アーム41・41の下端部に横軸113が横架されている。
該作用フレーム40は、上端部が揺動アーム41の中途部に枢支されており、リブ16aの下部付近を上下摺動自在に貫通して配設される部材であり、下端部が前記フォークカム32に溶接されているU字部材37に枢支されている。
【0031】
即ち、前記U字部材37の上下動によって作用フレーム40が上下動し、該作用フレーム40の上下動によって揺動アーム41が支点フレーム39上端を支点として回動し、その結果、苗マット保持部110が支点フレーム39上端を中心として前後上下方向へ回動する構成となっている。
前述した様に、該U字部材37はフォークカム32の回動に合わせて上下動するものであるので、フォークカム32の回動に合わせて苗マット突入部材111・111・・・が苗マットに突入したり、抜き出されたりする構成となっている。
【0032】
ここで、本実施例の植付装置4においては、3本の作用フレーム40・40・40をリブ16a・16a・16aに貫通させて、その下端部をベルト駆動軸33上に遊嵌したU字部材37・37・37に枢支している。即ち、作用フレーム40が枢支されていない残りの揺動アーム41・41・41は、作用フレーム40が枢支されている揺動アーム41に直接支持されて上下動する横軸113・113・・・を介して、間接的に上下動する構成となっている。これによって、多数の作用フレーム40を設けたり、リブ16aに多数の作用フレーム40用の孔を設ける必要がなく、製造行程及び製造コストを低減させることができる。
【0033】
斯かる構成の苗マット保持機構100は以下のように作動する。
即ち、図5乃至図8に示すように、前記苗載台16が車輌幅方向の一方の移動端と他方側の移動端との間で移動している間は、前記フォークカム32は前記押動カム91とは係合しない。ここで、前記戻しバネ150は、フォークカム32及びベルト駆動カム53を左側面視反時計方向に付勢するものであるから、作用フレーム40を下方へ引っ張る方向へ付勢するものである。つまり、本実施例の植付装置4においては、苗マット突入部材111が苗マットに突入する状態(苗マット保持状態)に付勢される構成となっている。本実施例では、戻しバネ150を用いているが、前記苗マット保持部110を保持状態に向けて直接的または間接的に付勢する付勢部材であれば良く、図6のような巻きバネに限定するものではない。
以上の構成により、苗載台16の移動中は、該苗マットの位置ずれが有効に防止される。
【0034】
そして、苗載台16が左右方向に往復動して左右何れかの端部に達すると、常時回動している縦送り軸88上の押動カム91の左右何れかの回動によってフォークカム32が持ち上げられる。即ち、フォークカム32が戻しバネ150に抗して左側面視時計回りに回動する。該フォークカム32が回動すると、該フォークカム32の回動につれて第二縦送り軸31やU字部材37が略上方に持ち上げられる。該U字部材37が持ち上げられると、作用フレーム40が上方へ押出され、その結果、揺動アーム41が持ち上げられる。該揺動アーム41が持ち上げられると、揺動アーム41に固設された横軸113が後上方へ持ち上げられて、その結果、苗マット突入部材111が苗マットから抜き出される。
【0035】
換言すれば、前記苗載台16が車輌幅方向移動端に到達すると、フォークカム32が前記押動カム91と係合するため、フォークカム32がベルト駆動軸33を支点として前記戻しバネ150の付勢力に抗して作用フレーム40を持ち上げる。該作用フレーム40は、支点フレーム39上端を中心にして、揺動アーム41を左側面視反時計方向に回動させるので、前記苗マット保持部110が保持状態から解放状態へと移行される。
【0036】
そして、押動カム91の回動に従って、更にフォークカム32が回動して第二縦送り軸31が持ち上げられると、該第二縦送り軸31がベルト駆動カム53の係合部53c下面に係合し、ベルト駆動カム53が回動する。
斯かる構成により、前記苗載台16が車輌幅方向移動端に到達した際、前記押動カム91と前記フォークカム32とが係合し、且つ、第二縦送り軸31とベルト駆動カム53とが係合している間のみ、該ベルト駆動軸33が軸線回りに回動し、前記苗載台16に載置された苗マットが前記苗送りベルト92によって所定ピッチだけ下方に搬送される構成となっている。
【0037】
つまり、前記フォークカム32は、前記ベルト駆動カム53の回動より先に右側面視反時計方向に回動し始めるため、ベルト駆動軸33が回動しはじめる前に苗マット保持部110が開放されるのである。換言すれば、苗マット突入部材111・111・・・が苗マットから抜き出されたのちに、苗送りベルト92によって苗マットが下方へ搬送される構成となっている。
なお、前述した様に、前記ベルト駆動カム53と前記ベルト駆動軸33との間には一方向クラッチが介挿されているため、ベルト駆動軸33が逆向きに回動することはなく、且つ、戻しバネ150の付勢力により、第二縦送り軸31との係合が解除された際には該ベルト駆動カム53が初期位置に戻されるようになっている。
【0038】
そして、更に押動カム91が回動すると、該押動カム91とフォークカム32との係合が解除される。そうすると、戻しバネ150の付勢力によってフォークカム32とベルト駆動カム53が右側面視時計方向に回動し、苗送りベルト92による苗マットの搬送が完了する。その後、第二縦送り軸31とベルト駆動カム53との係合が解除されて、フォークカム32やU字状部材37のみが回動する。それに合わせて作用フレーム40が下降し、苗マット突入部材111・111が苗マットに突入される。つまり、苗送りベルト92による苗マットの搬送が完了した後に、苗マット突入部材111・111が苗マットに突入される構成となっている。
以上の構成により、前記苗載台16の車輌幅方向移動端において、苗送りベルト92による苗マットの搬送が確実に行われる。
【0039】
次に発明の要部である前記苗マット保持機構100と苗マット押さえ46及び苗載台16との関係について図8を用いて説明する。
前記苗マット保持機構を構成する苗マット保持部110の苗マット突入部材111が苗マットから最も離間している際(最上昇位置)の、苗マットの下面(または苗載台上面)から苗マット突入部材111の先端までの長さはL1として表すと、このL1は、図8に示すように、苗マットの苗の中で最短の苗の丈よりも短く設定されている。つまり、移植可能とする苗の最も苗丈が短い苗の苗マットを苗載台上に載せた状態で、苗マット突入部材111を上昇させた位置では、苗マット突入部材111の先端の位置は、最も低い苗の上端よりも低い位置となるように設定されている。
なお、苗マット突入部材111は細い棒状の部材で構成され、先端は尖状に形成されてあり、それぞれの左右間隔も開けて配置されていることから、開放(上昇)状態で苗の先端と接触するようなことがあっても、苗マットが植付爪17へと送られる際の抵抗は小さく、苗送りの妨げとはならない。
【0040】
また、苗マット保持部110の苗マット突入部材111が苗マット200に進入している(苗マットに突き刺さり保持した)際の、苗マット押さえ46の縦押さえ棒46aの下面、すなわち苗マットの土を有する部分の上面から苗マット突入部材111の先端までの長さはL2で表すと、このL2は苗マットの厚さ以下に設定している。つまり、苗マット保持部110を最下降させた状態において、苗マット突入部材111の先端位置は苗載台上面よりも若干高い位置として苗マットの土の部分に入り込み、苗マット突入部材111の先端が苗マットの土の部分よりも上方に位置せず、下降したときに苗載台に当たらないようにしている。
このように構成することにより、苗マット200が下方(植付爪側)へ送られるときは、苗マット突入部材111が送りの邪魔にならない程度に高い位置とし、苗マット突入部材111が苗マット200に突入しているときは、苗マット押さえ46の縦押さえ棒46aよりも低い位置(苗載台側)に突入され、苗マットの確実な送りと保持が行える。
【0041】
また、図8、図9に示すように、前記苗マット保持部110の苗マット突入部材111は、苗マット押さえ46の縦押さえ棒46aの下端位置近傍の左右両側に配置している。つまり、苗マットが苗載台下部位置における、植付爪により数本ずつ切り取られる位置(苗取り位置)に近いその上方位置において、苗マット押さえ46の縦押さえ棒46aの下端と苗マット保持部110の複数の苗マット突入部材111が配置されて、苗マットを確実に保持できるようにしている。そして、苗マットを押さえつけている縦押さえ棒46aの下端側の両側部位置で苗マット突入部材111を苗マットの土の部分に突き刺したり抜いたりするように配設している。
【0042】
このように構成することで、苗マットが縦押さえ棒46aで押さえつけられている状態で、その両側位置に苗マット突入部材111を苗マットに突き刺すので、苗マットが移動したりズレたりすることがない。逆に、苗マット突入部材111を苗マットから抜くときには、苗マット突入部材111に苗マットが引っついて持ち上げられることがなく確実に分離できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の植付装置を搭載した乗用田植機の一実施例を示す側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明の植付装置の一実施例を示す後方斜視図。
【図4】同じく正面図。
【図5】植付装置下部を示す前方斜視図。
【図6】苗送りベルトの駆動機構を示す拡大前方斜視図。
【図7】揺動アームの支持構成を示す後方斜視図。
【図8】苗マット押さえと苗マット保持機構との位置関係を示す一部断面左側面図。
【図9】同じく平面図。
【符号の説明】
【0044】
4 植付装置
16 苗載台
32 フォークカム
37 U字部材
39 支点フレーム
40 作用フレーム
41 揺動アーム
46 苗マット押さえ
46d 立ち上がり部
54 苗垂れ防止板
53 ベルト駆動カム
92 苗送りベルト
111 苗マット突入部材
113 横軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗送りベルトにより苗載台に載置された苗マットを下方へ搬送し得るように構成された苗載台であって、苗マットを上方から押さえる苗マット押さえを具備し、前記苗マット内に突入して該苗マットを保持する保持状態と、前記苗マットから離間された開放状態をとり得るように苗載台に支持された苗マット保持機構において、
苗マット保持機構を苗マット突入部と揺動アームにより構成し苗マット保持機構の可動範囲は、苗マット突入部の先端が苗載台に載置される苗マットに突入し、苗マットを保持している状態においては苗載台上面と苗マット押さえの間の位置とし、苗マットから離間された解放状態においては苗マットにおける苗先上端よりも苗載台側に入り込んだ位置としたことを特徴とする田植機の苗マット保持機構。
【請求項2】
前記苗マットの車輌幅方向の範囲において、前記苗マット突入部を前記苗マット押さえの左右両側に配設したことを特徴とする前記請求項1に記載の田植機の苗マット保持機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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